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特開2022-166159VEGFアンタゴニストを含む液体組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022166159
(43)【公開日】2022-11-01
(54)【発明の名称】VEGFアンタゴニストを含む液体組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/02 20060101AFI20221025BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20221025BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20221025BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20221025BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20221025BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20221025BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20221025BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20221025BHJP
   C07K 19/00 20060101ALN20221025BHJP
   C07K 16/00 20060101ALN20221025BHJP
   C07K 14/71 20060101ALN20221025BHJP
【FI】
A61K38/02
A61P43/00 111
A61P27/02 ZNA
A61K9/08
A61K47/02
A61K47/12
A61K47/18
A61K47/10
C07K19/00
C07K16/00
C07K14/71
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022128071
(22)【出願日】2022-08-10
(62)【分割の表示】P 2020534166の分割
【原出願日】2018-12-18
(31)【優先権主張番号】10-2017-0178693
(32)【優先日】2017-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】517453553
【氏名又は名称】サムスン バイオエピス カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100177426
【弁理士】
【氏名又は名称】粟野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】キム イネ
(72)【発明者】
【氏名】ジュン ヨンソク
(72)【発明者】
【氏名】ジャン ヨンミン
(72)【発明者】
【氏名】ユ ウォンジュン
(72)【発明者】
【氏名】リ ジェミン
(72)【発明者】
【氏名】キム ヨングク
(57)【要約】      (修正有)
【課題】タンパク質薬物の安定性を増強する安定化用組成物、及びそれを含むタンパク質薬物の安定な液体組成物を提供する。
【解決手段】タンパク質薬物の安定な液体組成物は、(1)5mg/ml~100mg/mlのタンパク質;(2)pH4~8の緩衝液;及び(3)安定剤、を含み、前記緩衝液は、リン酸、酢酸、クエン酸、コハク酸、前記酸の薬学的に許容される塩、及びヒスチジンからなる群から選択される少なくとも1つを含み、かつ塩化ナトリウムを含まない。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む液体組成物:
(1)5mg/ml~100mg/mlのタンパク質;
(2)pH4~8の緩衝液;及び
(3)安定剤、
であって、前記緩衝液は、リン酸、酢酸、クエン酸、コハク酸、前記酸の薬学的に許容される塩、及びヒスチジンからなる群から選択される少なくとも1つを含み、
かつ前記安定剤は、塩化ナトリウムを含まない、液体組成物。
【請求項2】
前記安定剤が、トレハロース、スクロース、及びマンニトールからなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1に記載の液体組成物。
【請求項3】
前記タンパク質の量が、20mg/ml~60mg/mlである、請求項1に記載の液体組成物。
【請求項4】
前記緩衝液のpHが、5.2~7.2である、請求項1に記載の液体組成物。
【請求項5】
前記組成物中の緩衝液の濃度が、1~50mMである、請求項1に記載の液体組成物。
【請求項6】
前記組成物中の緩衝液の濃度が、1~20mMである、請求項5に記載の液体組成物。
【請求項7】
前記安定剤が、1~20%(w/v)トレハロース、1~20%(w/v)スクロース、及び0.5~10%(w/v)マンニトールからなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項2に記載の液体組成物。
【請求項8】
前記安定剤が、5~12%(w/v)トレハロース、5~12%(w/v)スクロース、及び2~7%(w/v)マンニトールからなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項7に記載の液体組成物。
【請求項9】
前記安定剤が、5~12%(w/v)スクロースを含む、請求項8に記載の液体組成物。
【請求項10】
前記緩衝液が、1~20mMリン酸ナトリウムを含む、請求項1に記載の液体組成物。
【請求項11】
前記安定剤が、5~12%(w/v)トレハロース、5~12%(w/v)スクロース、及び2~7%(w/v)マンニトールからなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項10に記載の液体組成物。
【請求項12】
前記安定剤が、5~12%(w/v)スクロースを含む、請求項11に記載の液体組成物。
【請求項13】
前記緩衝液が、1~20mMのヒスチジンを含む、請求項1に記載の液体組成物。
【請求項14】
前記安定剤が、5~12%(w/v)トレハロース、5~12%(w/v)スクロース、及び2~7%(w/v)マンニトールからなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項13に記載の液体組成物。
【請求項15】
前記安定剤が、5~12%(w/v)スクロースを含む、請求項14に記載の液体組成物。
【請求項16】
界面活性剤をさらに含む、請求項1に記載の液体組成物。
【請求項17】
前記界面活性剤が、全組成物に基づいて、0.001~3%(w/v)の量で含まれる、請求項16に記載の液体組成物。
【請求項18】
水性かつ等張性である、請求項1に記載の液体組成物。
【請求項19】
前記組成物が、水性であり、かつ200~400mOsm/kgの浸透圧を有する、請求項1に記載の液体組成物。
【請求項20】
前記タンパク質が、10~500kDaの分子量を有する、請求項1~19のいずれか一項に記載の液体組成物。
【請求項21】
前記タンパク質が、VEGFアンタゴニストである、請求項1~19のいずれか一項に記載の液体組成物。
【請求項22】
前記VEGFアンタゴニストが、アフリベルセプトである、請求項21に記載の液体組成物。
【請求項23】
硝子体内投与用である、請求項22に記載の液体組成物。
【請求項24】
請求項23に記載の液体組成物を含む、硝子体内投与用注射剤。
【請求項25】
以下を含む、液体組成物
(1)30mg/ml~50mg/mlのアフリベルセプト;
(2)pH5.2~7.2の緩衝液;
(3)安定剤;及び
(4)0.01~0.1%(w/v)の界面活性剤、
であって、前記緩衝液は、1~20mMリン酸ナトリウム、1~20mMヒスチジン、又はそれらの組合せであり、
かつ前記安定剤は、塩化ナトリウムを含まない、液体組成物。
【請求項26】
安定剤が、5~12%(w/v)トレハロース、5~12%(w/v)スクロース、及び2~7%(w/v)マンニトールからなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項25に記載の液体組成物。。
【請求項27】
安定剤が、5~12%(w/v)スクロースを含む、請求項26に記載の液体組成物。
【請求項28】
硝子体内投与用である、請求項25~27のいずれか一項に記載の液体組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
タンパク質の安定化された液体製剤が提供され、それは、リン酸、ヒスチジン、若しくはそれらの組合せ、及び安定剤を含む緩衝液を含む、タンパク質の安定化用組成物であって、当該安定剤は、トレハロース、スクロース及びマンニトールからなり群から選択される少なくとも1つを含み、かつ/又は塩化ナトリウムを含まない、組成物;当該安定化用組成物及びタンパク質を含む安定化された液体組成物;及び当該安定化用組成物を用いた安定化された液体組成物の調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
融合タンパク質薬物は、一般的なタンパク質薬物よりも分子量が大きく、構造が複雑なため、物理化学的不安定性をより引き起こしやすく、それゆえ、適切な製剤の開発が要求される。タンパク質薬物の化学的及び物理的安定性は、pH条件、緩衝液の選択、タンパク質の濃度、賦形剤及び温度等の種々の条件によって最適化することができる。融合タンパク質の安定性を確実にし、融合タンパク質の薬理活性を維持することができる製剤の開発のために、緩衝液の改変、pH最適化及び安定剤添加等といった種々の手段が使用されてきていた。
【0003】
黄斑変性治療薬であるEYLEA(登録商標)(アフリベルセプト)は、40mg/mLアフリベルセプト、pH6.2、10mMリン酸ナトリウム、40mM NaCl、5%(w/v)スクロース、及び0.03%(w/v)ポリソルベート20の組成を有する液体製剤薬物である。眼内薬物の場合、可視以下粒子(sub-visible particles)の規制基準は、他の一般的なバイオ医薬品のそれらよりも厳格であり(表1を参照)、したがって、粒子的側面を考慮した製剤を開発する必要がある。。
【0004】
【表1】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本開示は、タンパク質薬物の安定性を増強する安定化用組成物、及びそれを含むタンパク質薬物の安定な液体組成物を提供する。
【0006】
実施形態は、以下を含む、タンパク質薬物の安定化用組成物を、提供する:
リン酸ナトリウム、ヒスチジン、又はそれらの組合せを含む緩衝液、及び
塩化ナトリウムを含まない、かつ/又はトレハロース、スクロース、マンニトール及びそれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つを含む、安定剤。
【0007】
別の実施形態は、タンパク質;リン酸ナトリウム、ヒスチジン、又はそれらの組合せを含む緩衝液;塩化ナトリウムを含まない、かつ/又はトレハロース、スクロース、マンニトール、及びそれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つを含む安定剤、を含む液体組成物を提供する。
【0008】
例えば、液体組成物は、以下を含んでいてもよく
(1)5mg/ml~100mg/mlのタンパク質;
(2)pH4~8の緩衝液;及び
(3)安定剤、
ここで、緩衝液はリン酸ナトリウム、ヒスチジン、又はそれらの組合せを含み、
かつ、安定剤は塩化ナトリウムを含まない、かつ/又はトレハロース、スクロース及びマンニトールからなる群から選択される少なくとも1つを含む。
液体組成物は、界面活性剤を、例えば、全組成物に基づいて0.01~3%(w/v)の量でさらに含んでもよい。
【0009】
別の実施形態は、液体組成物を含む医薬組成物を提供する。
【0010】
例えば、液体組成物又は医薬組成物について、タンパク質は、10~500kDa、10~400kDa、10~300kDa、10~200kDa、又は10~150kDaの分子量を有するものであってもよい。一実施形態では、タンパク質は、VEGFアンタゴニストであってもよく、例えば、アフリベルセプト(約97~115kDaの分子量を有する)、ベバシズマブ(約149kDaの分子量を有する)、ラニビズマブ(約48kDaの分子量を有する)等からなる群から選択される少なくとも1つであってもよい。
【0011】
タンパク質がVEGFアンタゴニスト、例えば、アフリベルセプト、ベバシズマブ、ラニビズマブ等からなる群から選択される1以上である場合、医薬組成物は、眼科用組成物であってもよく、特に、硝子体内投与用非経口製剤であってもよい。
【0012】
液体組成物又は医薬組成物は、硝子体内投与用であってもよい。
【0013】
なお別の実施形態は、タンパク質を安定化する方法又は安定化水性液体組成物を調製する方法であって、方法がタンパク質を安定化用組成物と混合する工程を含む方法を、提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本明細書では、タンパク質の安定性を増強するための安定化用組成物、それを含むタンパク質の安定な液体組成物、タンパク質を含む安定な水性液体組成物の調製方法、及びタンパク質の安定化方法が、提供される。
【0015】
一実施形態は、リン酸ナトリウム、ヒスチジン、又はそれらの組合せを含む緩衝液、及び塩化ナトリウムを含まない、かつ/又はトレハロース、スクロース、及びマンニトールからなる群から選択される少なくとも1つを含む安定剤を含む、タンパク質の安定化用組成物を、提供する。
【0016】
別の実施形態は、以下を含む液体組成物を、提供する
(1)タンパク質;
(2)リン酸ナトリウム、ヒスチジン又はそれらの組合せを含む緩衝液;及び
(3)塩化ナトリウムを含まない、かつ/又はトレハロース、スクロース、及びマンニトールからなる群から選択される1以上を含む、安定剤。
【0017】
液体組成物中のタンパク質含有量は、5mg/ml~100mg/ml、5mg/ml~80mg/ml、5mg/ml~60mg/ml、5mg/ml~50mg/ml、10mg/ml~100mg/ml、10mg/ml~80mg/ml、10mg/ml~60mg/ml、10mg/ml~50mg/ml、20mg/ml~100mg/ml、20mg/ml~80mg/ml、20mg/ml~60mg/ml、20mg/ml~50mg/ml、30mg/ml~100mg/ml、30mg/ml~80mg/ml、30mg/mlから60mg/ml、又は30mg/ml~50mg/mlであってもよく、例えば、5mg/ml、10mg/ml、20mg/ml、30mg/ml、40mg/ml、50mg/ml、60mg/ml、70mg/ml、80mg/ml、90mg/ml、又は100mg/mlであってもよい。
【0018】
緩衝液は、pH4~8、例えば、pH5.2~7.5、pH5.2~7.2、pH5.2~7、pH5.2~6.8、pH5.2~6.6、pH5.2~6.4、pH5.2~6.2、pH5.5~7.5、pH5.5~7.2、pH5.5~7、pH5.5~6.8、pH5.5~6.6、pH5.5~6.4、pH5.5~6.2、pH5.8~7.5、pH5.8~7.2、pH5.8~7、pH5.8~6.8、pH5.8~6.6、pH5.8~6.4、pH5.8~6.2、又はpH6.2の1つであってもよい。
【0019】
緩衝液は、リン酸、酢酸、クエン酸、コハク酸、当該酸の薬学的に許容される塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等)、及びヒスチジンからなる群から選択される1以上を含んでもよい。一実施形態において、緩衝液は、リン酸ナトリウム、ヒスチジン、又はそれらの組合せを含んでもよい。緩衝液は、全液体組成物に基づいて、約1mM~約50mM、約1mM~約40mM、約1mM~約30mM、約1mM~約20mM、約1mM~約15mM、1mM~約12mM、約5mM~約50mM、約5mM~約40mM、約5mM~約30mM、約5mM~約20mM、約5mM~約15mM、約5mM~約12mM、約8mM~約50mM、約8mM~約40mM、約8mM~約30mM、約8mM~約20mM、約8mM~約15mM、約8mM~約12mM、又は10mMの濃度で含まれてもよい。
【0020】
一実施形態では、安定剤は塩化ナトリウムを含まなくてもよい。
【0021】
他の実施形態において、安定剤は、トレハロース、スクロース、マンニトール、及びそれらの組合せからなる群から選択される1以上であってもよい。例えば、安定剤は、1~20%(w/v)、1~15%(w/v)、1~10%(w/v)、5~20%(w/v)、5~15%(w/v)、5~10%(w/v)、7.8~20%(w/v)、7.8~15%(w/v)、7.8~10%(w/v)、7.8~8.2%(w/v)、又は8%(w/v)のトレハロース;1~20%(w/v)、1~15%(w/v)、1~10%(w/v)、5~20%(w/v)、5~15%(w/v)、5~10%(w/v)、7.8~20%(w/v)、7.8~15%(w/v)、7.8~10%(w/v)、7.8~8.2%(w/v)、又は8%(w/v)のスクロース;及び0.5~10%(w/v)、0.5~7.5%(w/v)、0.5~5%(w/v)、1~10%(w/v)、1~7.5%(w/v)、1~5%(w/v)、3~10%(w/v)、3~7.5%(w/v)、3~5%(w/v)、4~5%(w/v)、又は4.5%(w/v)のマンニトールからなる群から選択される1以上を含んでもよい。
【0022】
特定の実施形態では、液体組成物が緩衝剤としてリン酸ナトリウムを含む、又は緩衝剤としてリン酸塩(例えば、リン酸ナトリウム)及び安定剤としてスクロースを含む場合、
液体組成物は、塩化ナトリウムを含まなくてもよい。
【0023】
液体組成物は、タンパク質、緩衝剤及び安定剤の上記の内容物、及び残留水性媒体(例えば、水(精製水)、生理食塩水、注射水等)を含んでもよい。
【0024】
一実施形態では、液体組成物は、界面活性剤を、全液体組成物に基づいて、例えば、0.001~3%(w/v)、0.001~2%(w/v)、0.001~1%(w/v)、0.001~0.5%(w/v)、0.001~0.1%(w/v)、0.001~0.05%(w/v)、0.01~3%(w/v)、0.01~2%(w/v)、0.01~1%(w/v)、0.01~0.5%(w/v)、0.01~0.1%(w/v)、0.01~0.05%(w/v)、又は0.03%(w/v)の量で、さらに含んでもよい。界面活性剤は、液体組成物媒体中にタンパク質を均一に分散させることができる任意の薬学的に許容される界面活性剤であってもよい。界面活性剤は、非イオン性界面活性剤;例えば、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート))、ポリソルベート40(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート)、ポリソルベート60(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート)、ポリソルベート80(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート)からなる群から選択される少なくとも1つであってもよく、ここで、ポリオキシエチレンの後ろの数値、つまり(20)は、オキシエチレン基(-(CHCHO)-);ポロキサマー(PEO-PPO-PEOコポリマー;PEO:ポリ(エチレンオキシド)、PPO:ポリ(プロピレンオキシド))、ポリエチレン-ポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレン化合物(例えば、ポリオキシエチレン-ステアレート、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(アルキル:C~C30)、ポリオキシエチレンモノラウリルエーテル、アルキルフェニルポリオキシエチレンコポリマー(アルキル:C~C30)等)、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)等の総数を意味する。例えば、界面活性剤は、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート20)であってもよい。
【0025】
本明細書で提供される液体組成物は、生存組織と等張であってもよい。例えば、液体組成物の浸透圧は、約200mOsm/kg~約400mOsm/kg、例えば、約250mOsm/kg~約300mOsm/kgであってもよい。そのような浸透圧は、安定剤によって調整されてもよい。
【0026】
本明細書で提供される液体組成物の導電率は、約0.1mS/cm以上、例えば、約0.1mS/cm~約10mS/cm、約0.1mS/cm~約7mS/cm、約1mS/cm~約10mS/cm、約1mS/cm~約7mS/cm、約2.5mS/cm~約10mS/cm、約2.5mS/cm~約7mS/cm、約5mS/cm~約10mS/cm、又は約5mS/cm~約7mS/cmであってもよい。
【0027】
本明細書で提供される液体組成物において、タンパク質は、タンパク質薬物、例えば、10~500kDa、10~400kDa、10~300kDa、10~200kDa、又は10~150kDaの分子量を有するタンパク質(例えば、融合タンパク質)であってもよい。一実施形態では、タンパク質は、VEGF(血管内皮増殖因子)アンタゴニスト、例えば、ヒトVEGF受容体1及びVEGF受容体2の細胞外ドメインに由来するVEGF結合部位とヒトIgG1のFc領域が融合したVEGF特異的融合タンパク質であってもよい。特定の実施形態では、VEGF特異的融合タンパク質は、ヒトVEGF受容体1(Flt1)の免疫グロブリン様(Ig)ドメイン2とヒトVEGF受容体2(Flt1又はFlt4)のIgドメイン3とを含む領域と、ヒトIgG1のFc領域が融合した、タンパク質であってもよい;例えば、VEGF特異的融合タンパク質は、配列番号1の以下のアミノ酸配列を有するアフリベルセプトであってもよい。
【0028】
アフリベルセプトアミノ酸配列(配列番号1)
SDTGRPFVEM YSEIPEIIHM TEGRELVIPC RVTSPNITVT LKKFPLDTLI PDGKRIIWDS RKGFIISNAT YKEIGLLTCE ATVNGHLYKT NYLTHRQTNT IIDVVLSPSH
GIELSVGEKL VLNCTARTEL NVGIDFNWEY PSSKHQHKKL VNRDLKTQSG SEMKKFLSTL TIDGVTRSDQ GLYTCAASSG LMTKKNSTFV RVHEKDKTHT CPPCPAPELL GGPSVFLFPP KPKDTLMISR TPEVTCVVVD VSHEDPEVKF NWYVDGVEVH NAKTKPREEQ YNSTYRVVSV LTVLHQDWLN GKEYKCKVSN KALPAPIEKT ISKAKGQPRE PQVYTLPPSR DELTKNQVSL TCLVKGFYPS DIAVEWESNG QPENNYKTTP PVLDSDGSFF LYSKLTVDKS RWQQGNVFSC SVMHEALHNH YTQKSLSLSP G
(ジスルフィド架橋:30-79;124-185;246-306;352-410、二量体:211;214)
【0029】
融合タンパク質は、組換え又は合成により生成されてもよい。
【0030】
本明細書で提供される液体組成物は、約40℃の高温で4週間以上安定に維持されてもよい。
【0031】
用語「安定性が優れている」又は「安定して維持される」とは、物理的、化学的及び/又は生物学的特性及び/又は組成物中のタンパク質の構造が貯蔵の最中に維持できること(例えば、貯蔵の最中、低タンパク質ポリマー形成率、低タンパク質凝集率、低タンパク質分解率、及び/又は低変性率等)を意味してもよい。タンパク質の安定性を測定するための種々の分析技術は、関連する技術分野で周知である。
【0032】
例えば、本明細書で提供される液体組成物は、タンパク質(抗体)含有量が40mg/mlの場合、40℃で4週間貯蔵の最中に従来のSEC(サイズ排除クロマトグラフィー)で測定された、タンパク質ポリマー形成率又は凝集率(高分子量%(w/v);%HMW)の変化(貯蔵4週目での%HMW-0週目(貯蔵開始)での%HMW)は、約9未満、例えば、約8.8以下又は約8.3以下であるが、これらに限定されない。
【0033】
別の実施形態は、液体組成物を含む医薬組成物を提供する。医薬組成物は、医薬的に許容される担体、希釈剤、及び/又は賦形剤をさらに含んでもよい。薬学的に許容される担体は、従来使用されているものであり、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水(例えば、精製水)、食塩水、シロップ、メチルセルロース、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウム、鉱油等からなる群から選択される1以上を含んでもよいが、これらに限定されない。
【0034】
液体組成物又は医薬組成物は、経口又は非経口経路で投与してもよい。非経口投与(例えば注射)の場合、それは、静脈内投与、皮下投与、筋肉内投与、腹腔内投与、内皮投与、局所投与、鼻腔内投与、肺内投与、直腸内投与、腫瘍内投与、硝子体内投与等により投与してもよい。
【0035】
特定の実施形態では、液体組成物又は医薬組成物は、上記のVEGFアンタゴニストを含む点眼溶液であってもよく、この場合、眼の硝子体液に投与される非経口製剤であってもよい。
【0036】
別の実施形態は、タンパク質を前述の安定化用組成物と混合する工程を含む、タンパク質を安定化する方法又は安定化された液体組成物を調製する方法を提供する。
【0037】
特定の実施形態において、以下を混合する工程を含む、タンパク質を安定化する方法又は安定化された水性液体組成物を調製する方法が提供される
(1)タンパク質;
(2)リン酸ナトリウム、ヒスチジン、又はそれらの組合せを含む緩衝液;
(3)塩化ナトリウムを含まない、かつ/又はトレハロース、スクロース及びマンニトールからなる群から選択される1以上を含む、安定剤;そして
(4)任意で、界面活性剤。
【0038】
タンパク質の安定化方法又は安定化された水性液体組成物の調製方法に使用される各成分の種類及び含有量の具体的な説明は、上述と同じである。
【発明の効果】
【0039】
本発明は、融合タンパク質といったタンパク質が物理的、化学的及び/又は生物学的有効性を長期間安定して維持できるようにする安定化用の組成物及び液体製剤を提供することにより、タンパク質の貯蔵中に起こり得る、ポリマー及び/又は凝集体の生成ならびにフラグメントの生成及び/又は荷電変異体への変性を阻害し、それによりタンパク質の薬理効果を長期間維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1図1は、実施例2で測定された試験組成物の40℃での4週間の貯蔵中の4週間の4週間の%HMW(高分子量%)変化率(Δ%HMW)を示すグラフである。
図2図2は、実施例2で測定された試験組成物を40℃での4週間の貯蔵中の4週間の△%HMW結果に基づいて、Minitab(Minitab、バージョン17)を用いて統計的に有意な因子を分析した結果を示すグラフである。
図3図3は、実施例3で測定された試験組成物の40℃での4週間の貯蔵中の4週間のΔ%酸性結果に基づいて、Minitabを用いて統計的に有意な因子を分析した結果を示すグラフである。
図4図4は、実施例4で測定された試験組成物の40℃での4週間の貯蔵中の4週間の%RPA(相対効力活性)変化率(Δ%RPA)結果に基づいて、Minitabを用いて統計的に有意な因子を分析した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、実施例及び試験例を通じて本発明をより詳細に説明する。しかしながら、これらの実施例及び試験例は、本発明を例示することを意図しており、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例0042】
(実施例1.液体組成物の調製)
VEFGアンタゴニストとして機能する融合タンパク質である、タンパク質薬物としてのアフリベルセプト(ヒトVEGF受容体1及び2の細胞外ドメインに由来するVEGF結合部位とヒトIgG1のFc領域の融合タンパク質;CAS番号:862111-32-8;配列番号1)を用いて、タンパク質薬物の液体組成物1~14を、以下の表2の組成物として調製した:
【0043】
【表2】
【0044】
(実施例2.HMW含有量(%)の測定)
実施例1で調製した組成物1~14の安定性を試験するために、組成物中のタンパク質薬物の凝集度を示す%HMW(%高分子量;重量に基づく)を、タンパク質薬剤濃度40mg/mL、pH6.2、40℃の条件で4週間の貯蔵の最中にSE-HPLCで測定した。
【0045】
より具体的には、モノマー検出時よりも早く検出された物質をHMWと定義し、%HMWを流量1.0mL/min、注入時間17分の条件でHPLC(Waters 2695 separation module alliance)及びカラム(東ソー、TSK-gel G3000 SWXL)を用いて測定した(%HMW=Area/AreaTOTAL×100)。
【0046】
測定された%HMW(初期%HMW、第4週%HMW、Δ%HMW(第4週%HMW-初期%HMW))を表3に示し、第4週%HMWを図1に示す(P:Na-リン酸、H:ヒスチジン、T:トレハロース、S:スクロース、M:マンニトール):
【0047】
【表3】
【0048】
表3及び図1に示すように、安定剤としてスクロース、トレハロース又はマンニトールを含むすべての試験組成物において、第4週での%HMW及び第4週での%HMWの増加率(初期の%HMWと比較して(0週))の両方は、対照(EYLEA(登録商標)及びEYLEA(登録商標)組成物適用製剤)のそれらよりも低かった。
【0049】
表3に示されるΔ%HMWの結果に基づく統計的に有意な要因を分析した結果が図2に示される。図2において、△%HMWに有意に影響を与えた因子が安定剤としてのマンニトール、スクロース、及びトレハロースであることが確認された。図2に示すように、緩衝液の種類による大きな違いはなく、安定剤の場合、デキストロースを用いた組成物と比較して、マンニトール、スクロース又はトレハロースを用いたほうが、%HMWが低いことが示された。
【0050】
上記のようにΔ%HMWを低下させることが確認された安定剤としてのマンニトール、スクロース、又はトレハロースを含む製剤について、上記と同様の試験を繰り返し行った
(n=3)、そして得られた結果を表4に示す:
【0051】
【表4】
【0052】
表4に示すように、安定剤としてマンニトール、スクロース、又はトレハロースを含む製剤は、対照と比較して低いΔ%HMWを示し、優れた安定性を有し、そのような優れた安定性が繰り返し達成されたことを示した。
【0053】
(実施例3.酸性成分(%)と主要成分(%)の測定)
表5に示すように、組成物1-10(タンパク質薬物濃度:40mg/mL;pH6.2;界面活性剤:0.03%(w/v)PS20)を、優れた安定化効果が実施例1及び表3で確認された安定剤としてのマンニトール、スクロース、又はトレハロースを用いて、及び対照の安定剤としてのデキストロースを用いて、調製した。これらの組成物の安定性をテストするために、組成物中のタンパク質薬物の変性度を示す%酸性(%酸性バリアント含有量;重量に基づく)及び%メイン(電荷バリアントアスペクトの初期状態の表面電荷を維持するタンパク質の含有量(重量に基づく))を、40℃で4週間貯蔵中に、画像化キャピラリー等電点電気泳動(icIEF)を用いて測定した。
【0054】
より具体的には、%酸性、%塩基性、及び%メインは、酵素(シアリダーゼA、Sigma-Aldrich)を処理した後、icIEF装置(Protein simple、iCE3)を用いてサンプル注入時間110秒、2000psiのサンプル注入圧力の条件下で、インキュベートされたサンプルの酸性、メイン、及び塩基性アイソフォームを分析することにより測定した。
【0055】
測定された%酸性及び%メイン(初期、第4週、第4週の結果-初期結果(Δ%酸性及びΔ%メイン))を表5に示す:
【0056】
【表5】
【0057】
表5に示すように、試験組成物のすべては、安定剤としてデキストロースを含む比較組成物と比較して、%酸性及び%メインの両方でより低い変化度を示した、このことは、試験組成物が増加した安定性を有したことを示す。
【0058】
表5の結果に基づいて決定された統計的に有意な因子が分析された、結果を図3に示す。図3に示すように、緩衝液の種類による△%酸性の有意差がないことが確認されたが、デキストロースを除いてすべての安定剤が△%酸性に有意に影響を与えた。
【0059】
(実施例4.アフリベルセプトのVEGF結合効力の測定)
実施例1で調製した表2の組成物1~14中の薬理活性成分であるアフリベルセプトの活性の維持を試験するために、VEFGに対する組成物中のアフリベルセプトの%RBA(相対結合活性)及び%RPA(相対効力活性)を、タンパク質薬物濃度40mg/mL
、pH6.2、40℃の条件で4週間貯蔵の最中に測定した。
【0060】
より具体的には、%RBAは、以下の方法で測定した:MaxiSorp96ウェルプレート(Nunc)上へのVEGF165コーティング(洗浄及びブロッキングを含む;R&D system)を行った後、アフリベルセプト及び二次抗体(Sigma)をその上に順番にロードし、次いで、TMB ELISA物質溶液(Thermo Fisher Scientific)を処理し; その後、ELISAリーダー(SpectraMax)を用いて%RBA(相対効力分)を測定した。
【0061】
40℃で0週及び4週で測定した%RBA並びに4週間の%RBA変化率(Δ%RBA)を、表6に示す。
【0062】
【表6】
【0063】
表6に示すように、%RBA減少率が、安定剤としてデキストロースを含む組成物を除いて、すべてのテストした組成物において対照のそれより低いか又は同等のレベルであったことが示され、そのような結果は、試験したすべての組成物において、アフリベルセプトがVEGFへの結合活性を十分に維持したことを示した。
【0064】
また、%RPAは、以下の方法で測定した:アフリベルセプトとVEGFが順番にロー
ドされた96ウェルプレート中にKDR293細胞(Promega)をロードしてインキュベートした後、%RPA(相対効力分析)をEnvisionマイクロプレートリーダー(Perkin Elmer、Envision 2014)を用いて分析した。
【0065】
40℃で0週及び4週で測定した%RPA並びに4週間の%RPA変化率(Δ%RPA)を、表7に示す。
【0066】
【表7】
【0067】
表7に示すように、安定剤としてデキストロースを含む組成物を除いて、すべての試験した組成物の%RPAの低下率は、対照のそれより低いか又は同等であった、このことは、VEGF中和キャパシティに対するアフリベルセプトの相対的力価が すべての試験した組成物で十分に維持することができることを提示する。
【0068】
統計的に有意な因子を表7における%RPA結果に基づいて分析した、得られた結果を図4に示す。図4に示すように、試験したすべての緩衝液は、対照と比較して同様又は改善された%RPA減少を示し、安定剤の場合、デキストロースを除くすべての試験した安定剤は、対照と比較して同様又はより少ない%RPA減少を示した。
【0069】
(実施例5.6種類の組成物の安定性の測定)
実施例1で調製した組成物のうち、実施例2~4で優れた安定性が確認された6種類の組成物(表2における組成物4、5、6、8、9及び10)の%メインを、CE-SDS(キャピラリー電気泳動ドデシル硫酸ナトリウム)を用いて測定した(40℃、4週間)。
【0070】
より具体的には、%メインは、以下の方法で測定した:SDSサンプルバッファー(AB Sciex)とBME(2-メルカプトエタノール、Sigma Aldrich)を混合したサンプル(混合比:約1:50(v:v)を70℃で熱処理した後、CE分析機器(Beckman Coulter、PA800 plus)及び32 karat
software(Beckman Coulter)を用いて、220nm未満で検
出された%全タンパク質面積を分析した。
【0071】
40℃で0週及び4週で測定した%メイン並びに4週間の%メイン変化率(Δ%メイン)を、表8に示す:
【0072】
【表8】
【0073】
表8に示されるように、テストされた6つの組成物の%メイン減少は、対照のそれと同等又はそれより低かった。そのような結果は、すべてのテストされた6つの組成物が、対照と同等又はそれより高い安定性を有していたことを示した。
図1
図2
図3
図4
【配列表】
2022166159000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2022-09-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【外国語明細書】