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特開2022-166171中性原子ビームを使用した被加工物処理のためのシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022166171
(43)【公開日】2022-11-01
(54)【発明の名称】中性原子ビームを使用した被加工物処理のためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20221025BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
H01L21/302 101C
H01L21/302 101D
H05H1/46 L
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022128945
(22)【出願日】2022-08-12
(62)【分割の表示】P 2021506535の分割
【原出願日】2019-08-05
(31)【優先権主張番号】16/055,685
(32)【優先日】2018-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】502278714
【氏名又は名称】マトソン テクノロジー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Mattson Technology, Inc.
【住所又は居所原語表記】47131 Bayside Parkway, Fremont, CA 94538, USA
(71)【出願人】
【識別番号】520111187
【氏名又は名称】ベイジン イータウン セミコンダクター テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Beijing E-Town Semiconductor Technology Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】No. 8 Building, No. 28 Jinghai Er Rd., Economic and Technical Development Zone, 100176 Beijing, China
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン イー. サヴァス
(57)【要約】      (修正有)
【課題】特徴部の底部での帯電によって典型的に引き起こされる影響である反応性イオンエッチングのラグなしで、異方性にエッチングするプラズマ処理システム及び方法を提供する。
【解決手段】プラズマチャンバは、内部のプロセスガスからプラズマを誘導して、1つ又は複数の種の負イオンを生成するプラズマ源と、1つ又は複数の負イオンを被加工物に向かって加速させるグリッド構造200と、を含む。グリッド構造は、第1のグリッドプレート210と、第2のグリッドプレート215と、第1のグリッドプレートを通って加速された電子を低減するために、第1のグリッドプレートと第2のグリッドプレートとの間に配置された1つ又は複数の磁気要素225と、1つ又は複数の種の負イオンのイオンから余分な電子を脱離させて、被加工物を処理するためのエネルギ性の中性種を生成する、グリッド構造の下流に配置された中性化器セルを含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ処理システムであって、
被加工物を支持するように構成された被加工物支持体を有する処理チャンバと、
プラズマチャンバ内のプロセスガスからプラズマを誘導して、1つまたは複数の種の負イオンを生成するように構成されたプラズマ源と、
前記1つまたは複数の負イオンを前記被加工物に向かって加速させるように構成されたグリッド構造であって、前記グリッド構造は、第1のグリッドプレートと、第2のグリッドプレートと、前記第1のグリッドプレートを通って加速された電子を低減するための、前記第1のグリッドプレートと前記第2のグリッドプレートとの間に配置された1つまたは複数の磁気要素とを含む、グリッド構造と、
前記1つまたは複数の種の負イオンのイオンから余分な電子を脱離させて、前記被加工物を処理するための1つまたは複数のエネルギ性の中性種を生成するように構成されている、前記グリッド構造の下流に配置された中性化器セルと
を含む、プラズマ処理システム。
【請求項2】
前記プラズマ源は、誘導結合プラズマ源を含む、請求項1記載のプラズマ処理システム。
【請求項3】
前記プロセスガスは、水素、塩素、またはフッ素を含む、請求項1記載のプラズマ処理システム。
【請求項4】
前記プラズマ源は、前記1つまたは複数の中性種が1つまたは複数の別個の入射角度で前記被加工物を処理するように、前記中性化器セルに対して移動可能である、請求項1記載のプラズマ処理システム。
【請求項5】
前記第1のグリッドは、第1の複数のアパーチャを含み、前記1つまたは複数の負イオンが、前記第1の複数のアパーチャを通過するようになっている、請求項1記載のプラズマ処理システム。
【請求項6】
前記第1のグリッドと前記第2のグリッドとの間に、前記負イオンの複数のビームを加速させるために十分な電位差が存在する、請求項1記載のプラズマ処理システム。
【請求項7】
前記プラズマ源は、前記負イオンの定常状態源を生成する、請求項1記載のプラズマ処理システム。
【請求項8】
前記第2のグリッドプレートは、第2の複数のアパーチャを含み、
前記第2の複数のアパーチャは、前記第1のグリッドプレートの前記第1の複数のアパーチャを通過した前記1つまたは複数の負イオンが、当該第2の複数のアパーチャの対応するアパーチャを通過するように、前記第1のグリッドプレートの前記第1の複数のアパーチャと整列している、
請求項5記載のプラズマ処理システム。
【請求項9】
前記1つまたは複数の磁気要素は、当該1つまたは複数の磁気要素の長さ寸法が、イオンの抽出方向に対して略垂直となるように、かつ前記グリッド構造の平面に対して略平行となるように、前記第1のグリッドプレートに隣接して配置されている、請求項1記載のプラズマ処理システム。
【請求項10】
前記1つまたは複数の磁気要素の長さは、前記第1の複数のアパーチャのうちの1つのアパーチャの長さよりも長い、請求項5記載のプラズマ処理システム。
【請求項11】
前記1つまたは複数の磁気要素の1つまたは複数の極面における磁場強度は、約1キロガウス以下のオーダである、請求項1記載のプラズマ処理システム。
【請求項12】
前記1つまたは複数の磁気要素の材料は、フェライト、セラミック磁石、またはその両方を含む、請求項1記載のプラズマ処理システム。
【請求項13】
前記中性化器セルは、1つもしくは複数のレーザ、1つもしくは複数のプラズマ放電、またはそれらのうちのいくつかの組み合わせを含む、請求項1記載のプラズマ処理システム。
【請求項14】
前記中性化器セルは、約10センチメートル~100センチメートルの範囲内の深さを有する、請求項1記載のプラズマ処理システム。
【請求項15】
前記中性化器セルは、中性化プラズマを使用して1つまたは複数のイオンを中性化するように構成されたプラズマベースの中性化器セルを含む、請求項1記載のプラズマ処理システム。
【請求項16】
前記1つまたは複数のイオンのエネルギは、前記中性化プラズマ内の種に関連するエネルギよりも小さい、請求項15記載のプラズマ処理システム。
【請求項17】
被加工物を処理するためのプロセスであって、
プラズマ源を使用してプラズマチャンバ内のプロセスガスからプラズマを誘導することにより、1つまたは複数の負イオンを生成するステップと、
グリッド構造を使用して、前記1つまたは複数の負イオンを前記被加工物に向かって加速させるステップであって、前記グリッド構造は、第1のグリッドプレートと、第2のグリッドプレートと、前記第1のグリッドプレートを通って加速された電子を低減するための、前記第1のグリッドプレートに隣接して配置された1つまたは複数の磁気要素とを含む、ステップと、
前記1つまたは複数の負イオンから電子を脱離させて、1つまたは複数の中性種を生成するステップと、
前記被加工物を前記1つまたは複数の中性種に曝すステップと、
を含む、プロセス。
【請求項18】
前記1つまたは複数の中性種が1つまたは複数の別個の入射角度で前記被加工物を処理するように、中性化器セルに対して前記プラズマチャンバを移動させるステップをさらに含む、請求項17記載のプロセス。
【請求項19】
前記1つまたは複数の負イオンから電子を脱離させて、1つまたは複数の中性種を生成するステップは、中性化プラズマを使用して、前記電子を脱離させるステップを含む、請求項17記載のプロセス。
【請求項20】
前記1つまたは複数の負イオンのエネルギは、前記中性化プラズマに関連するエネルギよりも小さい、請求項19記載のプロセス。
【請求項21】
前記プロセスガスは、水素、塩素、またはフッ素を含む、請求項17記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、プラズマ処理システムおよびプラズマ処理方法に関する。
【0002】
背景
プラズマ処理は、半導体産業において被加工物(例えば、半導体ウェハ)および他の基板の堆積、エッチング、レジスト除去、および関連する処理のために広く使用されている。プラズマ処理のためにプラズマ源(例えば、マイクロ波、ECR、誘導等)を使用して、被加工物を処理するための高密度プラズマおよび反応種を生成することができる。
【0003】
プラズマを使用する1つの種類のプロセスは、原子層エッチングである。原子層エッチングは、半導体デバイスを製造するための、クリティカルなエッチングを非常に高精度で実行するための技術である。原子層エッチングは、表面下の過度の損傷または不所望な変性を回避することを試みながら、薄層上で実行可能である。原子層エッチングは、別のクリティカルな層を被覆している極薄の層をエッチングするために実行可能である。原子層エッチングは、エッチングプロセスの最後に、既にエッチング済みの層の残りの少量の部分をその下にある構造を損傷することなく除去するためにも使用可能である。エッチングプロセスの最中における主な目標は、深い特徴部(例えば、コンタクトホール、深いビア、深いトレンチ、またはその他の高度に3次元の特徴部等)を、エッチングされる特徴部の底部での帯電によって典型的に引き起こされる影響である反応性イオンエッチング(RIE)のラグなしで、異方性にエッチングすることである。
【0004】
概要
本開示の実施形態の態様および利点は、以下の説明に部分的に記載されているか、以下の説明から学習可能であるか、または実施形態の実践を通じて学習可能である。
【0005】
本開示の1つの態様は、プラズマ処理システムに関する。本システムは、被加工物支持体を有する処理チャンバを含む。被加工物支持体は、被加工物を支持するように構成されている。本システムは、プラズマチャンバ内のプロセスガスからプラズマを誘導して、1つまたは複数の種の負イオンを生成するように構成されたプラズマ源を含む。本システムは、1つまたは複数の負イオンを被加工物に向かって加速させるように構成されたグリッド構造を含む。グリッド構造は、第1のグリッドプレートと、第2のグリッドプレートと、第1のグリッドプレートを通って加速された電子を低減するための、第1のグリッドプレートと第2のグリッドプレートとの間に配置された1つまたは複数の磁気要素とを含むことができる。本システムは、1つまたは複数の種の負イオンのイオンから余分な電子を脱離させて、被加工物を処理するための1つまたは複数のエネルギ性の中性種を生成するように構成されている、グリッド構造の下流に配置された中性化器セルを含むことができる。
【0006】
本開示の他の例示的な態様は、被加工物、例えば半導体ウェハのような半導体基板を処理するためのシステム、方法、および装置に関する。
【0007】
種々の実施形態の前述および他の特徴、態様、および利点は、以下の説明および添付の特許請求の範囲を参照することによってより良好に理解されるようになるであろう。本明細書に組み込まれており、かつ本明細書の一部を構成している添付の図面は、本開示の実施形態を例示するものであり、その記載と共に関連する原理を説明するために使用される。
【0008】
当業者に向けられた実施形態の詳細な説明は、本明細書に記載されており、添付の図面を参照している。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の例示的な実施形態によるプラズマ処理システムにおける例示的なプラズマチャンバを示す図である。
図2】本開示の例示的な実施形態によるプラズマ処理システムにおける例示的なグリッド構造を示す図である。
図3】本開示の例示的な実施形態によるプラズマ処理システムにおける例示的な中性化器セルを示す図である。
図4】本開示の例示的な実施形態によるプラズマ処理システムにおける例示的な処理チャンバを示す図である。
図5】本開示の例示的な実施形態によるプラズマ処理システムにおいて被加工物を処理するためのプロセスのフロー図である。
図6】本開示の例示的な実施形態によるプラズマ処理システムにおける例示的な中性化器セルを示す図である。
図7】本開示の例示的な実施形態によるプラズマ処理システムにおける例示的な中性化器セルを示す図である。
【0010】
詳細な説明
これから、複数の実施形態が詳細に参照され、そのうちの1つまたは複数の例が、図面に示されている。それぞれの例は、本開示を限定するためではなく、これらの実施形態を説明するために提供されている。実際に、本開示の範囲または思想から逸脱することなく実施形態に対して種々の修正および変形を行ってもよいことは、当業者には明らかであろう。例えば、或る1つの実施形態の一部として図示または説明された特徴を、他の実施形態と共に使用して、さらに別の実施形態を生成することができる。したがって、本開示の態様は、そのような修正および変形を網羅することが意図されている。
【0011】
本開示の例示的な態様は、表面処理およびエッチングのためのプラズマ処理システムおよび方法に関し、この表面処理およびエッチングには、半導体被加工物、光電子被加工物、フラットパネルディスプレイ、または他の適切な被加工物のような被加工物に対する、深い特徴部の異方性エッチングと、原子層エッチングとが含まれる。いくつかの実施形態では、本システムおよび本方法は、反応性イオンエッチング(RIE)のラグなしで、深い特徴部のエッチングを提供することができる。被加工物の材料は、例えば、シリコン、シリコンゲルマニウム、ガラス、プラスチック、または他の適切な材料を含むことができる。いくつかの実施形態では、被加工物は、半導体ウェハであり得る。
【0012】
エッチングシステムは、異方性の深い特徴部をパターニングするために、エネルギ性のイオン衝撃を使用することができる。いくつかのエッチングシステムは、帯電を回避するためにウェハの導電性に基づいて異方性を提供するためのイオンエネルギを増加させることができる。他のそのようなシステムは、パルスプラズマ(例えば、約1キロヘルツ(kHz)を超える周波数を有するパルスプラズマ)を使用することができ、これにより、深い特徴部の正に帯電した底部の、低エネルギの電子による中性化をもたらすことができ、これによってイオンの偏向が回避される。いくつかのパルスプラズマエッチングシステムは、負イオンと正イオンとを交互に使用することができる。なぜなら、ソース電源がオフにされると、電子が、例えばハロゲン原子にすばやく付着して負イオンを形成するからである。
【0013】
エッチングのために適したエネルギへと加速された負イオンを使用する中性原子ビームエッチングシステムには、いくつかの種類が存在する。これらの中性原子ビームエッチングシステムは、ガス分子との衝突、または細長い抽出孔の側面との衝突のいずれかにより、それぞれの負イオンの余分な電子を除去して、エネルギ性の中性原子を形成することができる。いずれのアプローチでも、負イオン衝突における角度散乱に起因して、結果的に生じる中性原子の発散角度が大きくなる。
【0014】
エッチングシステムにおいて、高バイアスRIEシステムは、しばしばイオン損傷を引き起こし、このイオン損傷により、被加工物上の脆弱な構造部に対して電気的損傷が引き起こされたり、被加工物の特徴部のエッジにファセッティングが引き起こされたりする可能性がある。正のイオン衝撃と負のイオン衝撃とを交互に使用するエッチングリアクタは、被加工物に対する正イオンの流束と負イオンの流束との発散および電流密度が異なるので、被加工物の高アスペクト比の特徴部の正味の帯電が継続してしまうという事実に悩まされる可能性がある。いくつかの中性原子ビームエッチングシステムは、アパーチャの表面に小さな入射角度で衝突するイオンと、ニュートラルとが、抽出アパーチャ表面からかなりの角度範囲で出てくるので、顕著なビーム発散を有する可能性がある。この発散の問題は、深い特徴部のためのエッチング速度および側壁プロファイルのコントロールを制限してしまう可能性がある。
【0015】
本開示の例示的な態様によれば、エッチングのためのプラズマ処理システムおよび方法は、上記の発散問題を克服することができる。
【0016】
例えば、本開示の例示的な実施形態は、負イオン抽出中の電子加速を抑制する加速グリッド構造を有する、Hイオン、Clイオン、またはFイオンのための高い抽出イオン電流密度を有するイオン源を含むことができる。本開示のいくつかの例示的な実施形態は、加速後の負イオンからの非常に効率的な電子ストリッピング(中性化とも呼ばれる)を提供し、運動量移動の衝突の回避、低減、または最小化を提供し、またそれにより、エネルギ性の中性子の非常に低いビーム発散の維持を提供することができる。これにより、優れたコントロールを有するエッチングプロセスを提供することができ、例えば、非常に深い特徴部を、ほぼ一定のコントロール可能な速度で、ほぼ真っ直ぐな側壁によって異方性エッチングして、「RIEラグ」を回避または低減することができる。いくつかの実施形態では、本開示の例示的な実施形態は、被加工物の全ての表面が適切に露出および準備され得るように、所定の範囲の角度で入射する中性子による被加工物表面上の三次元構造の表面処理を提供することができる。
【0017】
本開示の例示的な態様は、多数の技術的な効果および利点を有する。いくつかの実施形態では、本開示の例示的な実施形態は、例えば、約3ナノメートル(nm)未満~約7nmの技術におけるデバイスのパターニングのため、許容可能な側壁プロファイルのコントロールを有する異方性エッチングを実施するため、低減されたスパッタリングのため、およびマスクエロージョンのために適用可能である。本開示の例示的な実施形態の用途は、限定するわけではないが、垂直方向の深い特徴部(例えば、ホールおよびトレンチの両方)のエッチング、垂直方向の側壁の維持、および短い処理時間で所望の深さを達成するための一定のエッチング速度を含むことができる。本開示のいくつかの例示的な実施形態は、トライゲートまたは優れたプロセス特性を有する他の構造のような三次元表面構造を有する被加工物の表面処理を提供することができる。いくつかの実施形態では、本開示の例示的な実施形態は、ロジックデバイスおよびメモリデバイスの両方の高度な微細加工プロセスのための高度な反応性イオンエッチングシステムを提供することができる。
【0018】
本開示の例示的な態様によれば、プラズマ処理システムは、プラズマチャンバ内のプロセスガスからプラズマを誘導して、1つまたは複数の種の負イオンを生成するように構成されたプラズマ源を含むことができる。いくつかの実施形態では、プラズマチャンバは、第1の側では第1の真空壁によって画定可能であり、第2の側(例えば、第2の反対側)では、真空壁ではないイオン抽出構造によって画定可能である。プラズマチャンバは、少なくとも2つの隣り合う容積、例えば第1の容積および第2の容積を含有する真空チャンバであり得る。それぞれの容積の内部で、プラズマを維持することができる。組み合わせられたこれらのプラズマ容積を、このプラズマチャンバの内部に収納することができる。
【0019】
いくつかの実施形態では、プラズマチャンバの第1の容積は、第1の側では第1の真空壁に隣接可能であって、かつ第1の真空壁によって画定可能であり、第2の側では第2の容積に隣接可能であって、かつ第2の容積によって画定可能である。電磁エネルギは、少なくとも1つのアンテナを介して、主に第1の容積内のプラズマへと伝達される。プラズマチャンバの室内に、ガスを供給することができる。無線周波数(RF)発生器により、第1の容積に隣接しているか、または第1の容積の内部にあるアンテナ(例えば、プラズマ源)に供給される電力が、イオン化を引き起こして、この第1の容積内でプラズマを維持することができる。第1の容積は、第2のプラズマを含有する第2の容積によってプラズマチャンバの第2の側から離隔可能であり、第2の容積の内部では、イオン化速度の低下(例えば、第1の容積内における速度の約10%未満、例えば約1%未満)が生じる。いくつかの実施形態では、プラズマチャンバの第2の側は、イオン抽出のための複数のアパーチャを有する、真空壁ではない導電性の壁を含むことができる。
【0020】
いくつかの実施形態では、プラズマチャンバの外側に、永久磁石の第1のセットを取り付けることができる。いくつかの実施形態では、第1の容積が内部に存在しているプラズマチャンバの外壁のうちの少なくとも1つに、永久磁石の第1のセットを隣接させることができる。
【0021】
いくつかの実施形態では、プラズマを含有する第2の容積を、第1の容積に隣接させることができる。第2の容積内では、負イオンの密度を格段により高くすることができ、その一方で、正イオン形成を、主に第1の容積内で実施することができる。プラズマを含有するこの第2の容積は、プラズマチャンバの第2の側に隣接して配置可能である。低エネルギの電子が、振動励起状態にあり得るガス分子と衝突すること、および高エネルギの電子の密度が、第1の容積よりも低いことにより、第2の容積内の負のイオンの密度を高くすることができる。そのような分子は、第1の容量内でのエネルギ性の電子衝突によって振動励起状態にされた分子であり得る。
【0022】
いくつかの実施形態では、第1の容積と第2の容積との間に、磁石の第2のセット(磁気フィルタとも呼ばれる)を挿入することができ、それにより、比較的高密度の負イオンプラズマからイオン化プラズマを分離する。いくつかの実施形態では、磁気フィルタは、複数の金属管の各々の中に封入された複数の磁石を含むことができる。それぞれの管の内部の磁石は、管の長さに沿った方向に対して略垂直(例えば、垂直から約15度以下の範囲内)であるN/S極と整列可能である。いくつかの実施形態では、これらの磁石を、約2cm未満、例えば約1.5cm未満の直径を有する管の内部に適合するように、第1のセットの磁石よりも小さくすることができる。磁石を保持する管は、第1の側から第2の側への方向に対して垂直(例えば、垂直から約5度以下)な方向にプラズマチャンバを横断するように、互いに平行(例えば、平行から約5度以下)に整列可能である。磁石を含有する隣り合う管同士は、間隙によって離隔可能であり、この間隙は、約2センチメートル(cm)~約10cmの間、例えば約4cm~7cmの間であり得る。したがって、プラズマを含有する第2の容積は、永久磁石を含有する管の配列と、第2の側との間に配置可能である。この永久磁石の第2のセットは、プラズマ源によって生成された、第1の容積内のエネルギ性の電子に対する障壁として機能することができる。この磁気障壁は、エネルギ性の電子を第1の容積の内部に実質的に閉じ込めることができる。
【0023】
この磁気障壁は、第1の容積の内部のイオン化領域から到来した、衝突脱離によって負イオンを破壊するエネルギ性の電子から、第2の容積内の負イオン形成領域の内部の負イオンを保護することができる。磁石を有する管の配列を設けることにより、第2の容積の負イオン形成領域内の平均電子エネルギまたは平均電子温度を、第1の容積のイオン化領域内の平均電子エネルギまたは平均電子温度よりもはるかに低くすることができる。この平均エネルギは、第1の領域内の平均電子エネルギが約3eV~約10eVの間である場合でも、約2eV未満、例えば約1eVであるべきである。
【0024】
いくつかの実施形態では、第1の容積内のプラズマ、または第2の容積内のプラズマ、またはその両方に、プロセスガスを注入することができる。このようなプロセスガスは、水素、塩素、もしくはフッ素、またはこれらの化合物、例えば、フッ化水素(HF)、三フッ化窒素(NF)、塩化水素(HCl)、三フッ化塩素(ClF)、または他の任意の適切なプロセスガスを含むことができる。いくつかの実施形態では、不活性ガスは、この不活性ガスの励起状態がいくつかの負イオンを脱励起および破壊する可能性があるので、真空チャンバのいずれの部分にも供給されない。
【0025】
いくつかの実施形態では、プラズマ源は、静電的に遮蔽された誘導結合プラズマ源(ESICP)であり得る。このプラズマ源では、プラズマチャンバのうちの、第1の容積に隣接する少なくとも1つの壁を、誘電性材料から形成することができる。第1の容積に隣接する少なくとも1つの誘電性の壁に近接して、誘導アンテナを配置することができる。
【0026】
いくつかの実施形態では、プラズマ源の容積内でのイオン化によってプラズマを維持するために、アンテナをRF電力源に接続することができる。アンテナと、プラズマチャンバの少なくとも1つの誘電性の壁(例えば、いくつかの実施形態では、第1の壁であり得る)との間に、電気的に接地されたスロット付きのファラデーシールドを配置することができる。プラズマ源の第1の容積は、第2の側に向いた方向では、第1の容積からのエネルギ性の電子に対する磁気障壁を提供する永久磁石の第2のセットによって画定可能である。
【0027】
いくつかの実施形態では、イオン化のためのRF電力をプラズマに伝達するアンテナは、誘電性の筐体によって覆うことができるソースの容積の内部にある1つまたは複数のループから形成可能である。いくつかの実施形態では、アンテナと誘電性の筐体との間に、静電シールドまたはファラデーシールドを挿入することができる。このシールドは、電気的に接地可能であり、金属、またはシリコンもしくは炭素のような他の導電性材料、または他の適切な材料からなる板または層から形成可能である。
【0028】
本開示の例示的な態様によれば、プラズマ処理システムは、プラズマチャンバのうちの、第2の容積に隣接しているが第1の容積には隣接していない第2の側の一部または全部として、1つまたは複数の負イオンを被加工物に向かって加速させるように構成されたグリッド構造を含むことができる。グリッド構造は、第1のグリッドプレートと、第2のグリッドプレートと、第1のグリッドプレートを通って加速された電子を低減するための、第1のグリッドプレートに隣接して配置された1つまたは複数の磁気要素とを含むことができる。
【0029】
いくつかの実施形態では、第2の容積内で生成されたイオンは、負イオンを加速させる目的でプラズマチャンバの第2の側に配置されたグリッド構造へと拡散すること、または流れることができる。グリッド構造は、DC電源に接続されていて、かつ第2の容積からの負イオンを加速させるように構成された複数のグリッドプレートを含むことができる。
【0030】
いくつかの実施形態では、第1のグリッドプレート(または導電性の壁)は、プラズマチャンバの第2の側においてプラズマ境界を形成することができる。第1のグリッドプレートまたは導電性の壁は、真空壁ではないが、複数のアパーチャを有することができ、これらのアパーチャは、丸い孔、細長い孔、または長いスロット(長さが幅の少なくとも2倍を超える)であり、これらの丸い孔、細長い孔、または長いスロットを通って、第2容積内のプラズマから抽出されたイオンが加速される。
【0031】
いくつかの実施形態では、第1のグリッドプレートは、プラズマチャンバの導電性部分(例えば、金属)に電気的に接続可能であり、プラズマチャンバの導電性部分と同じ電位に維持可能である。いくつかの実施形態では、電位は、接地基準電位とは異なっていてもよい。いくつかの実施形態では、プラズマチャンバの電位は、約-1キロボルト~約-20ボルトの間の電位を有するアース接地に対して負であり得る。
【0032】
いくつかの実施形態では、第2のグリッドプレートは、加速構造を含むことができる。第2のグリッドプレートは、第1のグリッドプレートとほぼ同じサイズであり得る。第2のグリッドプレートは、第1のグリッドプレートに近接して配置可能であり、第2の容積から離れる方向に、第2のグリッドプレートの厚さよりも小さい距離(例えば、約2センチメートル未満)を置いて、第1のグリッドプレートから離間可能である。
【0033】
いくつかの実施形態では、第2のグリッドプレートは、第1のグリッドプレートに対して正の電位に結合可能である。第1のグリッドプレートは、接地に対して負または正であり得る。いくつかの実施形態では、第2のグリッドは、下流のプラズマからの正イオンが加速されてソースに戻ることを防止するために、接地に対してわずかに正であり得る。第2のグリッドプレートのこの正の電位は、第1のグリッドプレートと第2のグリッドプレートの間に電場を設定することができ、この電場は、負イオンを抽出して加速させる。いくつかの実施形態では、第1のグリッドプレートまたはプラズマチャンバの導電性部分に直流電源を接続することができる。第2のグリッドプレートには、別個の直流電源を接続することができる。直流電源は、第2のグリッドプレート上の電圧を維持することができ、この電圧は、第1のグリッドプレートに対して正であり、接地基準電位に対して負である。
【0034】
いくつかの実施形態では、第2のグリッドプレートは、第1のグリッドプレートの第1の複数のアパーチャと整列している複数のアパーチャを含むことができ、これにより、第1のグリッドプレートの第1の複数のアパーチャを通過する1つまたは複数の負イオンは、第2の複数のアパーチャの対応するアパーチャを通過するようになる。複数のアパーチャは、抽出スロットまたは抽出孔であり得る。いくつかの実施形態では、第2のグリッドプレートの複数のアパーチャは、第1のグリッドプレートの複数のアパーチャと同じ形状を有することができる。いくつかの実施形態では、第2のグリッドプレートの複数のアパーチャは、第1のグリッドプレートに対して垂直(例えば、垂直から約15度以下)な方向で、第1のグリッドプレートの対応するアパーチャと整列可能である。
【0035】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数の磁気要素は、第1のグリッドプレート(または第2のグリッドプレート)に隣接して配置された永久磁石であってよく、第2の容積の内部のプラズマからの電子が、第1のグリッドプレートのアパーチャを通って加速されることを防止している。
【0036】
いくつかの実施形態では、これらの磁気要素を、各自の磁化方向に対して垂直(例えば、垂直から約5度以下の範囲内)な方向に沿って形状が細長くなるようにし、長さ寸法がイオンの抽出方向および/またはイオンの加速方向に対して垂直(例えば、垂直から約5度以下)になるように取り付けることができる。
【0037】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数の磁気要素の長さは、第1のグリッドプレートの複数のアパーチャのうちの1つのアパーチャの長さよりも長い。例えば、磁気要素の長手方向に沿った長さを、アパーチャ(例えば、スロット、孔)の長さよりも長くすることができ、または第1のグリッドプレートおよび/または第2のグリッドプレートの隣り合うアパーチャ同士の中心から中心までの間隔よりも長くすることができる。複数の磁気要素が端から端まで配置されている場合には、これらの磁気要素の磁場が整列されるように、磁気要素を短くしてもよい。
【0038】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数の磁気要素の1つまたは複数の極面における磁場強度は、約1キロガウス以下のオーダである。磁気要素は、中程度の透磁率(μ)、すなわち、自由空間の透磁率(μ)の約10000倍以下の透磁率を有する強磁性材料を含むことができる。いくつかの実施形態では、磁気要素の材料は、フェライト、セラミック磁石、鉄ベースの材料、またはそれらのいくつかの組み合わせを含むことができる。
【0039】
いくつかの実施形態では、磁石は、第1のグリッドプレートまたは第2のグリッドプレートの上、近傍、またはこれら2つのプレートの間に取り付けられる際に、磁石のアパーチャの中心における磁石の磁場の方向が、アパーチャの中心でのイオンの抽出方向に対して垂直(例えば、垂直から約5度以下)となり得るように、かつ第1のグリッドプレートおよび/または第2のグリッドプレートの平面に対して平行(例えば、平行から約5度以下)となり得るように整列可能である。したがって、この磁場により、負イオン形成プラズマから抽出された電子を、軌道運動において実質的に遅延させ、グリッド構造を通過する負イオンと一緒に加速されないようにすることができる。
【0040】
いくつかの実施形態では、磁石は、約100ガウスを超える磁場が、負イオン形成プラズマの容積内に約20mmを超えて延在しないように取り付け可能である。グリッドのうちの孔を有していない領域の背後において、磁石をイオン衝突から保護することができる。いくつかの実施形態では、磁石は、プラズマ熱が第1のグリッドプレートへと流れる際に、またはイオン/中性子が第2のグリッドプレートを加熱する際に磁石が加熱されないように、グリッドまたは他の冷却構造の上に取り付け可能である。それによって磁石を、これらの磁石の磁化に影響を与える温度に到達することから保護することができる。
【0041】
いくつかの実施形態では、プラズマ処理システムは、第3のグリッドプレートをさらに含むことができ、第3のグリッドプレートは、第1の容積および第2の容積から離れる方向に第2のグリッドプレートを超えたところに配置可能である。いくつかの実施形態では、第3のグリッドプレートは、DC電源により、接地電位または接地電位に非常に近似した電位に維持可能である。第3のグリッドプレートは、第2のグリッドプレートのアパーチャとほぼ同じ形状および同じ位置を有するアパーチャ(例えば、孔またはスロット)を含むことができ、これにより、第2のグリッドプレートを通って到来したイオンが、第3のグリッドプレートのアパーチャと、使用されている場合には後続のグリッドプレートのアパーチャとを通過し得るようになっている。第3のグリッドプレートおよび後続のグリッドプレートの目的は、粒子が、最後のグリッドを超えたところの容積からこの最後のグリッドのアパーチャを通ってその手前のグリッドのアパーチャと、場合により第1のグリッドプレートのアパーチャとを通ってプラズマ領域内へと逆流するように加速されることを抑制することであり得る。いくつかの実施形態では、第3のグリッドは、接地に対してわずかに負である電位に維持されている。このことは、中性化器領域から電子が逆向きに加速されることを低減するために役立つ。いくつかの実施形態では、永久磁石を、第2のグリッドと第3のグリッドとの間に配置してもよく、第1のグリッドプレートおよび第2のグリッドプレートのアパーチャにおける当該永久磁石の磁場が、第1のグリッドプレートおよび第2のグリッドプレートの大部分の表面に対してほぼ平行(10度以内)になるように整列させてもよい。このことは、第2の容積からグリッドのアパーチャを通過する電子の抽出および加速を抑制するために役立つ。いくつかの実施形態では、第2のグリッドの電位は、第3のグリッドの電位に対してわずかに正であり、これにより、中性化器容積内のイオンが、プラズマ源へと逆方向に加速されることもなくなる。このようにして、磁場によるか、またはグリッドプレートの電位の設定によるか、またはその両方によるかに拘わらず、中性化器領域からの粒子の逆向きの加速を低減することができる。いくつかの実施形態では、前述の磁石は、中性化器セルのような下流領域からグリッド構造またはプラズマ源への電子の「逆向き」の加速を抑制するという効果を有することもできる。
【0042】
本開示の例示的な態様によれば、プラズマ処理システムは、1つまたは複数の種類の負イオンを中性化して、被加工物を処理するための1つまたは複数の種類の中性種を生成するように構成されている、グリッド構造の下流に配置された中性化器セルを含むことができる。いくつかの実施形態では、第3のグリッドから出てくるイオンの方向が、処理される被加工物上の垂線に対して平行から約1度以内になり得るように、プラズマチャンバを中性化器セルに対して回転させることが可能であり得る。さらに、いくつかの実施形態では、そのような回転能力を使用して、1つまたは複数の中性種が、処理される被加工物上に構築される垂線に対して1つまたは複数の入射角度で被加工物を処理可能となるようにしてもよい。
【0043】
いくつかの実施形態では、中性化器セルは、約10センチメートル~約100センチメートル、いくつかの実施形態では約20センチメートル~約50センチメートルの範囲内の深さ(例えば、中性化器セルを通過するビームの進行方向に沿った寸法)を有することができる。負イオンは、グリッド構造から出た後に、中性化器セルを通過する。いくつかの実施形態における中性化器セルは、放射源からの強力な電磁放射を含み、この強力な電磁放射は、負イオン上の余分な電子を、この負イオンから脱離させることができる。いくつかの実施形態では、放射源は、放射源のスペクトルの帯域において非常に高い反射率(例えば、約95%を超える)を有するミラーと共に、1つまたは複数のレーザを含むことができる。例えば、放射源は、グリッド構造において加速されて当該領域を通過している特定の種類の負イオンから電子を光脱離させるために適した波長のレーザであり得る。そのような放射は、効率的な中性化を提供することができる。なぜなら、この放射は、中性化器セルの容積を繰り返し通過することができ、中性化領域を画定するミラーにより何度も反射されて、中性化器セルの内部に効果的に閉じ込められるからである。これにより、電子を脱離させるためにそれぞれの光子が使用される確率が何倍にも増加する。
【0044】
いくつかの実施形態では、中性化器セルは、プラズマを含有することができ、ガス圧力は、約3パスカル(約23ミリトール)以下であり、いくつかの実施形態では約1パスカル(7.6ミリトール)未満である。いくつかの実施形態における前述のプラズマは、約3eVを超える電子温度と、1011電子/cmを超える密度とを有することができる。
【0045】
いくつかの実施形態では、中性化器セルは、グリッド構造から出てきた負イオンが中性化器セルの内部の室内容積を通過するように、第3のグリッドプレートまたは最後のグリッドプレートに近接して配置可能である。中性化器セルは、ミラーを含むことができ、このミラーは、中性化器セルの側面に配置されており、この側面は、最後のグリッドプレートのアパーチャから出てきた負イオンビームレットから離隔されており、したがって、いずれのアパーチャからのイオンまたは高速中性原子も、このミラーには当たらないようになっている。したがって、最後のグリッドプレートから到来した負イオンは、所望の波長帯域にエネルギの集中部を有する強力な放射が横断している領域を通過することとなる。そのような帯域は、光子のエネルギが、ビーム内の負イオンの種のうちの1つの過剰な電子を脱離させるために十分であるような任意の波長を含むことができる。ミラーは、その高反射性の表面が負イオンに面するように配置可能であり、所望の波長の放射を高効率で、例えば約99%を超える効率で反射するような材料からなる。純粋な光脱離中性化器の場合には、中性化器セル内のプラズマの密度は、比較的低くてもよい-典型的には、このプラズマ内には、負イオンビームの空間電荷がプラズマ中の正イオンによって完全に補償されるために十分な密度の正イオンが存在しているべきである。そのような正イオンの密度は、いくつかの実施形態では、特に、第3のグリッドのアパーチャから流出する負イオンの中に、ClまたはFのような負イオンがある場合には、10イオン/cm以上のオーダであり得る。このような中性化器プラズマは、正イオンの密度よりも低い密度の電子を有することができる。なぜなら、ビーム内の負イオンが、その容積内の負の電荷の一部を提供して、プラズマ内の正イオンの電荷を補償するからである。
【0046】
いくつかの実施形態では、中性化器セルは、所望の波長帯域の高強度の放射を有するように動作可能であり、これにより、負イオンが中性化器セルを横断する際に、電子を脱離させるために十分なエネルギを有する光子がほぼ全ての負イオンに当たるようになっている。約1000ナノメートル未満の光の波長は、Hイオンから電子を脱離させるために十分なエネルギを有することができ、約250nm未満の波長は、FおよびClイオンから電子を脱離させるために十分であり得る。したがって、大多数の負イオンから余剰の電子を脱離させることができ、これにより、中性化器セルに入った負イオンのうちのかなりの割合が、中性化器セルに入った負イオンとほぼ同じ運動エネルギを有する中性原子として出ることが可能となり、一旦、余剰の電子が負イオンから脱離されると、中性原子は、偏向または散乱される可能性がなくなる。さらに、電子の質量は、イオンの質量よりもはるかに小さいので、脱離プロセスにおける負イオンの散乱は最小である。このようにして、光中性化からの高速中性原子(例えば、H、F、またはCl)のビームを、効果的に単エネルギ性かつほぼ単一指向性にすることができ、含まれている中性物質のうち、ビームの平均方向から逸脱した運動方向を有するものは、ごくわずかになる。被加工物を照射するため、かつ被加工物の表面上での処理を実行するために、ほぼ単エネルギ性の中性原子の高指向性かつ均一な流束を提供することが可能となる。いくつかの実施形態では、被加工物をエッチングするためにビームを使用して、これにより、被加工物表面の露出領域の少なくとも1つの原子単層の材料を、被加工物表面から除去することができる。
【0047】
いくつかの実施形態では、放射源は、前述の両方の波長範囲の電磁(EM)放射を生成するために効率的な固体レーザであり得る。このようなレーザは、前述の全ての種類のイオンに対して、1keV未満のエネルギによって負イオンからの電子脱離の確率を高めるために適した強度を効率的に生成することができる。なぜなら、これらのイオンは、ビーム内のイオンの集団を光子が完全に中性化するために中性化器領域内において十分な時間を費やすようになるからである。
【0048】
本開示の例示的な態様によれば、プラズマ処理システムは、被加工物支持体を有する処理チャンバを含むことができる。被加工物支持体は、被加工物を支持するように構成可能である。いくつかの実施形態では、被加工物支持体は、被加工物のための物理的な支持を提供することができ、被加工物の位置を維持し、エネルギ性の中性原子が中性化器セルから出てきた後のエネルギ性の中性原子の衝突ビームに対して、表面の向きをいくらか変化させることを可能にする。いくつかの実施形態では、処理チャンバは、ジンバルまたはベアリングを含むことができ、このジンバルまたはベアリングは、被加工物支持体を傾斜および回転させることができ、これにより、被加工物全体にわたって所望のビーム入射角度を達成することが可能となる。
【0049】
いくつかの実施形態では、処理チャンバは、約300ミリメートル(mm)、例えば350mmより大きくてよく、被加工物支持体の直径は、少なくとも約300mmであってよい。いくつかの実施形態では、処理チャンバは、処理チャンバ内の適切な低ガス圧力を維持するために、ダクトを介して真空ポンプに接続されたポートを有することができる。いくつかの実施形態では、被加工物は、約300mmの直径を有する結晶シリコンから形成可能である。しかしながら、いくつかの実施形態では、他の直径(例えば、200mm、450mm等)も考えられる。ガス源は、プラズマ源からグリッド構造を通って到来した後、中性化器領域を通行するガス、および被加工物表面から到来したガス種、ならびに中性化器のための他のガス源、または-場合によっては被加工物から発生したガスをパージまたは希釈するための-被加工物処理容積に注入されるガスのための他のガス源を含むことができる。
【0050】
いくつかの実施形態では、処理チャンバに、不活性ガスまたは他の処理ガスが供給される。いくつかの実施形態では、そのような不活性ガスは、ヘリウムまたはアルゴンを含むことができる。いくつかの実施形態では、ガスは、窒素のようなキャリアガスであり得る。上記のいくつかのガスは、窒素ガス、ヘリウムガス、またはアルゴンガスであるかどうかに拘わらず、プラズマチャンバに拡散して戻り、分子ガスは、第1の容積内または第2の容積内の気相化学に影響を与えることができる。いくつかの実施形態では、被加工物処理チャンバまたは中性化チャンバに供給されるガスは、水素ガスであり得るか、またはフッ化水素(HF)、三フッ化窒素(NF)、塩化水素(HCl)、フッ素(F)、塩素(Cl)、もしくは他の適切なガスのような、フッ素含有ガスもしくは塩素含有ガスであり得る。このようなガスは、被加工物表面に中性エッチャント種を提供することを支援するだけでなく、プラズマ源チャンバ内での負イオン形成のための原料を提供することを支援することもできる。いくつかの実施形態では、処理チャンバ内の圧力を、プラズマチャンバ内(例えば、第1の容積内または第2の容積内の両方)のガス圧力よりも低くすることができる。いくつかの実施形態では、特定のガス供給条件下において、被加工物処理容積内のガス圧力を、プラズマ源チャンバ内のガス圧力よりも高くすることができる。その場合には、プラズマおよび/または中性化器領域に供給されるガスは、プラズマ源におけるイオン化のために加速グリッド構造を通ってガス種も提供する。いくつかの実施形態では、プラズマ源チャンバに、直接的にガスを注入しなくてもよく、その一方で、中性化器チャンバおよび/またはウェハ処理容積には、ガスが注入される。
【0051】
いくつかの実施形態では、イオンを供給するためのプラズマ源は、プラズマ電子の電子サイクロトロン共鳴(ECR)加熱を使用するマイクロ波源であり得る。この種類のプラズマ源は、非常に効率的であり、分子ガス種のイオン化および励起の両方を生成することができる。いくつかの実施形態では、ECR源における磁場軸線の向きは、第1の壁からグリッド構造への方向に対して垂直(例えば、いくつかの実施形態では、垂直から約5度以下)に形成可能である。このような構成では、約2.45GHzのマイクロ波周波数で電子のための共鳴条件を生成する磁場は、共鳴領域において約875ガウスの磁場になり得る。この強力な磁場は、エネルギ性の電子を閉じ込め、これらの電子がグリッド構造の近傍の容積へと急速に拡散することを阻止し、これにより、グリッド構造に隣接する負イオン形成領域が、低減された電子温度を有するようにし、これによって高密度の負イオンをもたらす。いくつかの実施形態では、この磁場を、イオン化容積内のプラズマの共鳴生成のために使用して、磁気閉じ込めロッドを必要とすることなくプラズマチャンバをイオン化容積と負イオン形成領域とに分割することができる。
【0052】
いくつかの実施形態では、ECR源は、2つの大きなソレノイドを使用することができ、これら2つの大きなソレノイドは、互いに距離を置いて、円筒形のプラズマチャンバの各々の側に配置されている。この構成は、ヘルムホルツ構成とも呼ばれ、このヘルムホルツ構成は、プラズマチャンバの対称軸線に対して垂直(例えば、垂直から約15度以下)な対称軸線を有するソレノイド磁場を生成する。共鳴場条件は、磁場の対称軸線の近傍のソレノイド間の中間点またはその近傍にあり得る。この構成では、マイクロ波は、プラズマチャンバの軸線に沿って後方から誘電性の窓を通ってプラズマチャンバへと供給可能である。この構成は、電子が加熱されるプラズマ内の領域と、負イオン形成が実施される場所との間にかなりの距離を含むことができる。
【0053】
いくつかの実施形態では、電磁石のセットの軸線上の磁場は、抽出グリッドプレート(例えば、第1のグリッドプレート)の表面での負イオンの抽出方向に対して略垂直(例えば、垂直から約5度以下)な方向であってよく、これにより、磁場は、グリッドプレートを通過する電子の加速を抑制することができ、その一方で、負のイオンを実質的に偏向することなく加速させることができる。いくつかの実施形態では、アパーチャでの磁場強度は、第1のグリッドプレートの抽出アパーチャにおいて、約20ガウス~約1000ガウスの間、例えば100ガウス~500ガウスの間であり得る。
【0054】
本開示のこれらの例示的な実施形態に対して、変形および修正を行うことができる。本明細書で使用される場合には、単数形の“a”、“and”、および“the”は、文脈が別段の指示をしない限り、複数の指示対象を含む。「第1」、「第2」、「第3」、および「第4」の使用は、識別子として使用され、処理の順序に関する。例示的な態様は、例示および説明の目的で「基板」、「ウェハ」、または「被加工物」を参照しながら説明されている場合がある。本明細書に提示されている本開示を使用する当業者は、本開示の例示的な態様が、任意の適切な被加工物と共に使用可能であることを理解するであろう。「約」という用語は、数値と組み合わせて使用されている場合には、記載されている数値の20%以内を指す。「略垂直」という用語の使用は、垂直から約15度以内を指す。「略平行」という用語の使用は、平行から約15度以内を指す。
【0055】
これから、本開示の例示的な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本開示の例示的な実施形態によるプラズマ処理システムにおける例示的なプラズマチャンバ100を示す。図1に示されているように、プラズマチャンバ100は、第1の側110では第1の真空壁によって画定されており、第2の側115では、真空壁ではないグリッド構造(図2に図示)によって画定されている。プラズマチャンバ100は、イオン化が主に実施される第1の容積120と、負イオン形成が主に実施される第2の容積125とを含む。プラズマチャンバ100の第1の容積120は、第1の側110では第1の真空壁に隣接可能であって、かつ第1の真空壁によって画定可能であり、第2の側115では第2の容積125に隣接可能であって、かつ第2の容積125によって画定可能である。第1の容積120は、イオン化プラズマ(図示せず)を含み、第2の容積125は、負イオン含有プラズマ(図示せず)を含む。
【0056】
いくつかの実施形態では、第1の容積120が内部に存在しているプラズマチャンバ100の外壁のうちの少なくとも1つに、磁石130の第1のセットを隣接させることができる。例えば、磁石130の第1のセットを、第1の側110と、第1の側壁135と、第2の側壁140とに隣接させることができる。いくつかの実施形態では、磁石130の第1のセットは、永久磁石であり得る。例えば、磁石130の第1のセットは、プラズマチャンバ100と実質的に同様の形状を有する磁気リングのセットを形成することができる。いくつかの実施形態では、磁石130の第1のセットは、列から列へと極性が交互になっている複数の列の形態で構成可能である。
【0057】
いくつかの実施形態では、第1の容積120と第2の容積125との間に、磁石145の第2のセット(磁気フィルタとも呼ばれる)を挿入することができ、それにより、磁石145の第2のセットは、負イオンプラズマからイオン化プラズマを分離し、したがって、第1の容積120のイオン化領域内の平均電子エネルギまたは平均電子温度は、第2の容積よりもはるかに大きくなっている。いくつかの実施形態では、第1の容積内の電子温度は、第2の容積内の電子温度の2倍よりも高温であり得る。いくつかの実施形態では、磁石145の第2のセットは、永久磁石であり得る。いくつかの実施形態では、磁石145の第2のセットの各々を、管150(例えば、金属管、水冷ロッド等)に収容することができる。いくつかの実施形態では、磁気フィルタ145は、複数の金属管150の各々の中に封入されて線形に配置された複数の磁石145を含むことができる。いくつかの実施形態では、それぞれの管150の内部の磁石145は、管150の長さに沿った方向に対して略垂直(例えば、垂直から約15度以下の範囲内)であるN/S極と整列可能である。いくつかの実施形態では、磁石145の第2のセットの各々を、約0.5インチ未満の直径を有する管150のような管150の内部に適合するように、磁石130の第1のセットの各々よりも小さくすることができる。
【0058】
磁石145の第2のセットを保持する管150は、第1の側110から第2の側115への方向に対して垂直(例えば、垂直から約15度以下)な方向にプラズマチャンバ100を横断するように、互いに平行(例えば、平行から約15度以下)に整列可能である。磁石145の第2のセットを含有する隣り合う管150同士は、間隙によって離隔可能である。いくつかの実施形態では、この間隙は、約2センチメートル(cm)~約10cmの間であり得る。したがって、プラズマを含有する第2の容積125は、磁石145の第2のセットを含有する管150の配列と、第2の側115との間に配置可能である。
【0059】
磁石145の第2のセットは、プラズマ源155によって生成された、第1の容積120内のエネルギ性の電子に対する障壁として機能する磁場を提供することができる。この磁気障壁は、衝突脱離によって負イオンを破壊するおそれのある、第1の容積120から到来する可能性のあるエネルギ性の電子から、第2の容積125を保護することができる。磁石145の第2のセットを含有する管150の配列を設けることにより、第2の容積125の負イオン形成領域内の平均電子エネルギまたは平均電子温度を、第1の容積120のイオン化領域内の平均電子エネルギまたは平均電子温度よりもはるかに低くすることができる。いくつかの実施形態では、第1の容積内の電子温度は、高密度の負イオンを含有する第2の容積内の電子温度の2倍よりも高温であり得る。この磁気フィルタと、結果的に生じる電子温度の差とにより、第2の容積内で負イオンが電子衝撃によって破壊される速度が大幅に低下するので、このようなイオンをより多く抽出および加速させることができる。いくつかの実施形態では、負イオン形成領域内の平均電子エネルギは、約2eV未満、例えば約1.5eV未満であり得る。水素イオンが抽出されるべきいくつかの実施形態では、第2の容積内の平均電子エネルギは、有利には約1.0eV未満であり得る。第1の容積内、すなわち正イオン形成領域内の平均電子エネルギは、約2.5eV超、例えば約3eV超であり得る。
【0060】
いくつかの実施形態では、第1の容積120に隣接する少なくとも1つの誘電性の壁(例えば、135および/または140)に近接して、プラズマ源155のための励起アンテナが配置されている。励起アンテナ155と、少なくとも1つの誘電性の真空壁(例えば、135および/または140)との間に、ファラデー(静電)シールド160を配置することができる。ファラデーシールド160は、電気的に接地可能であり、金属、またはシリコンもしくは炭素のような他の導電性材料、または他の適切な材料からなる板または層から形成可能である。いくつかの実施形態では、ファラデーシールド160は、プラズマチャンバ100のソース対称軸線165を中心にして対称(例えば、平行から約15度以下の範囲内)に配置可能である。ファラデーシールド160には、スロットを付けることができる。例えば、ファラデーシールド160には、ソース対称軸線165に対して平行にスロットを付けることができる。
【0061】
図2は、本開示の例示的な実施形態によるプラズマ処理システムにおける例示的なグリッド構造200を示す。グリッド構造200は、1つまたは複数の種類の負イオンを被加工物に向かって加速させるように構成可能である。いくつかの実施形態では、グリッド構造200は、第1のグリッドプレート210と、第2のグリッドプレート215と、第3のグリッドプレート220と、第1のグリッドプレート210を通って加速された電子を低減するための、第1のグリッドプレート210と第2のグリッドプレートとの間に配置された磁気要素225のセットとを含む。いくつかの実施形態では、磁石を、第1のグリッドプレートまたは第2のグリッドプレートの内部に埋め込んで配置してもよい。いくつかの実施形態では、磁石を、第2のグリッドと第3のグリッドとの間に配置してもよい。いくつかの実施形態では、第2の容積125内で生成されたイオンは、負イオンを加速させる目的でプラズマチャンバ100の第2の側115に配置されたグリッド構造200へと拡散すること、または流れることができる。グリッド構造200は、第2の容積125からの負イオンを加速させるように構成された複数のグリッドプレート210,215,220を含むことができる。
【0062】
第1のグリッドプレート210は、図1に示されているようなプラズマチャンバ100の第2の側115においてプラズマ境界を形成する。第1のグリッドプレート210は、真空壁ではないが、複数のアパーチャ230を有する。アパーチャ230は、丸い孔、細長い孔、または長いスロットであってよく、これらの丸い孔、細長い孔、または長いスロットを通って、第2の容積125内の負イオン形成プラズマから抽出されたイオンが加速される。
【0063】
いくつかの実施形態では、第1のグリッドプレート210は、プラズマチャンバ100の導電性部分(例えば、金属)に電気的に接続可能であり、プラズマチャンバ100の導電性部分と同じ電位に維持可能である。いくつかの実施形態では、チャンバの前述の導電性部分は、好ましくは、第1の容積および第2の容積の両方においてプラズマと接触しているべきである。例えば、プラズマチャンバ100の導電性部分は、第1の側壁135および/または第2の側壁140を含むことができる。電位は、接地基準電位とは異なっていてもよい。第1のグリッドプレート210に隣接する第2の容積125は、高密度の負イオンを有するプラズマを含有することができる。負イオンは、第1のグリッドプレート210のアパーチャ230を通って抽出可能であり、グリッド構造200によって加速可能である。
【0064】
第2のグリッドプレート215は、第1のグリッドプレート210とほぼ同じサイズである。第2のグリッドプレート215は、第1のグリッドプレート210に近接して配置されており、いくつかの実施形態では、第2の容積125から離れる方向に、第2のグリッドプレートの厚さよりも小さい距離(例えば、約2センチメートル未満)を置いて、第1のグリッドプレート210から離間されている。
【0065】
いくつかの実施形態では、第2のグリッドプレート215は、第1のグリッドプレート210の第1の複数のアパーチャ230と整列している第2の複数のアパーチャ235を含むことができ、これにより、第1のグリッドプレート210のアパーチャ230を通過する1つまたは複数の負イオンは、第2の複数のアパーチャ235の対応するアパーチャ235を通過するようになる。第2のグリッドプレート215のアパーチャ235は、抽出スロットまたは抽出孔であり得る。第2のグリッドプレート215のアパーチャ235は、第1のグリッドプレート210のアパーチャ230とほぼ同じ形状を有しており、第1のグリッドプレート210に対して略垂直(例えば、垂直から約15度以下の範囲内)な方向で、第1のグリッドプレート210の対応するアパーチャ230と整列されている。
【0066】
いくつかの実施形態では、第2のグリッドプレート215は、第1のグリッドプレート210に対して正の電位に結合可能である。この正の電位は、第1のグリッドプレート210と第2のグリッドプレート215との間に電場を設定することができる。この電場は、第2の容積125内のプラズマから負イオンを抽出することができる。いくつかの実施形態では、第2のグリッドプレート215に直流電源を接続することができる。直流電源は、第2のグリッドプレート215上の電圧を維持することができ、この電圧は、第1のグリッドプレート210に対して正であり、いくつかの実施形態では、接地基準電位に対して負であり得る。
【0067】
磁気要素225のセットは、第1のグリッドプレート210と第2のグリッドプレートとの間に配置されており、第2の容積125の内部のプラズマからの電子が、第1のグリッドプレート210のアパーチャ230を通って加速されることを防止している。いくつかの実施形態では、磁気要素225のセットは、永久磁石であり得る。いくつかの実施形態では、これらの磁気要素225を、各自の磁化方向に対して垂直(例えば、垂直から約15度以下)な方向に沿って形状が細長くなるようにし、長さ寸法がイオンの抽出方向および/またはイオンの加速方向に対して垂直(例えば、垂直から約15度以下)になるように取り付けることができる。磁気要素の長さ240は、第1のグリッドプレート210のアパーチャの長さ245よりも長い。例えば、磁気要素の長手方向に沿った長さ240を、アパーチャ(例えば、スロット、孔)の長さ245よりも長くすることができ、または第1のグリッドプレートおよび/または第2のグリッドプレートの隣り合うアパーチャ同士の中心から中心までの間隔よりも長くすることができる。いくつかの実施形態では、磁石を、第1のグリッドまたは第2のグリッドの中に埋め込むことができ、これにより、スリットの両側にある磁石同士の間の間隙を最小化することができる。さらに、電子加速の抑制が最も効果的になるように、スリット内の磁場は、グリッドプレートのグロススケールの表面に対してほぼ平行である。
【0068】
いくつかの実施形態では、磁気要素225の1つまたは複数の極面における磁場強度は、約1キロガウス以下のオーダである。磁気要素225のセットは、中程度の透磁率(μ)、すなわち、自由空間の透磁率(μ)の約10000倍以下の透磁率を有する強磁性材料を含むことができる。いくつかの実施形態では、磁気要素225のセットの材料は、フェライト、セラミック磁石、鉄ベースの材料、またはそれらのいくつかの組み合わせを含むことができる。
【0069】
いくつかの実施形態では、磁気要素225セットは、第1のグリッドプレート210または第2のグリッドプレート215の上、近傍、もしくは間に取り付けられる際に、またはいずれかのグリッドプレートの内部に埋め込まれる際に、アパーチャの中心における磁場の方向が、アパーチャ230の中心でのイオンの抽出方向に対して垂直(例えば、垂直から約10度以下の範囲内)となり得るように、かつ第1のグリッドプレート210および/または第2のグリッドプレート215の平面に対して平行(例えば、平行から約15度以下)となり得るように整列可能である。したがって、この磁場により、基板に損傷を与えるおそれのある、負イオン形成プラズマから抽出された電子を、軌道運動において実質的に遅延させ、グリッド構造200を通過する負イオンと一緒に加速されないようにすることができる。
【0070】
いくつかの実施形態では、磁気要素225のセットは、(例えば、約100ガウスを超える)有意な磁場が、負イオン形成プラズマの容積内に約5センチメートルを超えて延在しないように取り付け可能である。いくつかの実施形態では、有意な磁場は、負イオン形成プラズマの容積内に約2センチメートルを超えては延在しない。グリッドのうちの孔を有していない領域の背後において、磁気要素225のセットをイオン衝突から保護することができる。いくつかの実施形態では、磁気要素225のセットは、プラズマ熱が第1のグリッドプレート210へと流れる際に、またはイオン/中性子が第2のグリッドプレート215を加熱する際に磁石が加熱されないように、グリッドまたは他の冷却構造の上に取り付け可能である。それによって磁気要素225のセットを、これらの磁気要素225の磁化に影響を与える温度に到達することから保護することができる。いくつかの実施形態では、磁気要素225のセットは、図3の中性化器セル300のような下流領域から図1のグリッド構造200またはプラズマチャンバ100への電子の「逆向き」の加速を抑制するという効果を有することもできる。
【0071】
第3のグリッドプレート220は、第1の容積120および第2の容積125から離れる方向に第2のグリッドプレート215を超えたところに配置されている。第3のグリッドプレート220は、第2のグリッドプレート215の第2の複数のアパーチャ235とほぼ同じ形状および同じ位置を有するアパーチャ250(例えば、孔またはスロット)を含み、これにより、第2のグリッドプレート215を通って到来したイオンが、第3のグリッドプレート220のアパーチャ250を通過するようになっている。いくつかの実施形態では、第3のグリッドプレート220は、電気的に接地可能であるか、またはDC電源により、接地電位に近似するように維持可能である。いくつかの実施形態では、第3のグリッドプレート220は、接地電位に対して適度な量(|V3,B|≦約25V)だけ負にバイアスされている場合、負に帯電した粒子が、第3のグリッドプレート220を超えたところの容積からアパーチャ230,235,250を通って図1のプラズマチャンバ100内へと逆流するように加速されることを抑制することができる。さらに、第3のグリッドが負にバイアスされると共に、第2のグリッドが第3のグリッドに対して適度な量(|V2,B|≦約25V)だけ正にバイアスされている場合には、このことは、負のイオンが、第3のグリッドの後方の領域から負イオンの抽出元である第2の容積内へと逆流するように逆向きに加速されることを、さらに抑制することができる。
【0072】
図3は、本開示の例示的な実施形態によるプラズマ処理システムにおける例示的な中性化器セル300を示す。中性化器セル300は、1つまたは複数の種類の負イオンから電子を脱離させて、被加工物を処理するための1つまたは複数の種類の中性種を生成するように構成可能である。中性化器セル300は、図2のグリッド構造200の下流に配置可能である。いくつかの実施形態では、中性化器セル300は、約10センチメートル~約100センチメートル、例えば約20センチメートル~約50センチメートルの範囲内の深さ(例えば、中性化器セル300を通過するビームの進行方向に沿った寸法)を有することができる。
【0073】
いくつかの実施形態では、第1のグリッド、第2のグリッド、および第3のグリッドを含むプラズマチャンバ100は、第3のグリッドの表面に対して平行な軸線を中心にして回転可能であってよく、なお、この軸線は、第3のグリッドの直径であり、スリットアパーチャの長手方向に対して垂直であってよい。プラズマチャンバ100は、1つまたは複数の中性種が、プラズマチャンバ100の軸線に対して平行に中性化器を通過するように、ソースを中性化器セル300に対して回転させ、これにより、1つまたは複数の中性種は、法線方向の入射角度でも、非法線方向の小さな入射角度(約15°以下)でも、被加工物に衝突できるようになる。
【0074】
中性化器セルは、負イオンから余分な電子を脱離させることができる1つまたは複数の帯域の波長を有する、1つまたは複数の放射源310からの強力な電磁(EM)放射を含むことができる。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の放射源310は、1つもしくは複数のレーザ、または強力なEM放射を生成する1つもしくは複数のプラズマ放電、またはそのような放射の任意の効率的な高強度の放射源を含むことができる。EM放射は、中性化器の容積のうちの、負イオンが通過する部分を照明すべきであり、吸収されなかった放射は、好ましくはミラーによって反射されて、負イオンビームが貫通する容積を通るように戻されるべきである。例えば、1つまたは複数の放射源310は、図2のグリッド構造200のようなグリッド構造において加速された特定の種類の負イオンから電子を光脱離させるために適した波長のレーザであり得る。そのような放射は、効率的な中性化を提供することができる。なぜなら、円周状のミラー320のおかげで、この放射は、中性化器セル300の容積を繰り返し通過することができ、何度も反射されて、中性化器セル300の内部に部分的に閉じ込められるからである。中性化器セル300は、グリッド構造200から出てきた負イオンが中性化器セル300を通過するように、第3のグリッドプレート220に近接して配置されている。
【0075】
中性化器セル300は、ミラー320を含み、このミラー320は、中性化器セル300の周縁部に配置されており、この周縁部は、第3のグリッドプレート220のアパーチャ250から出てきた負イオンビームレットから離隔されており、したがって、いずれのアパーチャ250からの非散乱イオンまたは高速中性原子も、このミラー320には当たらないようになっている。ミラー320は、負イオンビームが第3のグリッドから出てきた後に、その高反射性の表面がこの負イオンビームに面するように配置されており、また、ミラー320は、所望の波長の放射を高効率で(例えば、約99%を超える効率で)反射するような材料からなる。したがって、第3のグリッドプレート220から到来した負イオンは、強力な放射が繰り返し横断している中性化器領域を通過することとなる。
【0076】
いくつかの実施形態では、中性化器セル300は、所望の波長帯域の高強度の放射を有するように動作可能であり、これにより、負イオンが中性化器セル300を横断する際に、電子を脱離させるために十分なエネルギを有するこのような帯域の光子がほぼ全ての負イオンに当たるようになっている。所望の波長帯域の前述の放射において、光子は、中性化器セルを通過するこれらの種類の負イオンから余分な電子を脱離させるために十分に大きい(10-18cm以上の)断面積を有する。周縁状のミラーのおかげで、この放射のいくつかの光子を複数回反射させて、ビーム容積を十分な回数通過させることができ、これにより、負イオンから電子を脱離させる確率が高くなる。したがって、大多数の負イオンから余剰の電子を脱離させることができ、これにより、中性化器セル300に入った負イオンのうちのかなりの割合が、中性化器セル300に入った負イオンとほぼ同じ運動エネルギを有する中性原子として出ることが可能となり、中性原子が、電場または磁場によって偏向または散乱される可能性がなくなる。このようにして、高速中性原子(例えば、H、F、またはCl)のビームを、効果的に単エネルギ性かつほぼ単一指向性にすることができ、含まれている中性物質のうち、ビームの平均方向から数度以上逸脱した運動方向を有するものは、ごくわずかになる。被加工物を照射するため、かつ被加工物の表面上での処理を実行するために、ほぼ単エネルギ性の中性原子の高指向性かつ均一な流束を提供することが可能となる。
【0077】
図4は、本開示の例示的な実施形態によるプラズマ処理システムにおける例示的な処理チャンバ400を示す。被加工物支持体410は、被加工物(図示せず)のための物理的な支持を提供して、被加工物の位置を維持し、エネルギ性の中性原子が中性化器セル300から出てきた後のエネルギ性の中性原子の衝突ビームに対して、表面の向きをいくらか変化させることを可能にする。例えば、処理チャンバ400は、ジンバルまたはベアリング430を含むことができ、このジンバルまたはベアリング430は、被加工物支持体410を傾斜および回転させ、これにより、被加工物全体にわたって所望のビーム入射角度を達成することが可能となる。処理チャンバ400は、処理チャンバ400内の適切なガス圧力、例えば適切な低ガス圧力を維持するために、ダクトを介して真空ポンプ420に接続されたポートを有する。いくつかの実施形態では、被加工物支持体は、被加工物に対して垂直な軸線を中心とした回転、および被加工物の中心での回転をさらに可能にし、-それにより、被加工物を横断するビーム入射の平均化を提供する。
【0078】
いくつかの実施形態では、処理チャンバは、約300ミリメートル(mm)より大きくてよく、被加工物支持体の直径は、少なくとも約300mmであってよい。いくつかの実施形態では、処理チャンバは、少なくとも約350mmの内径を有することができる。いくつかの実施形態では、被加工物は、約300mmの直径を有する結晶シリコンから形成可能である。しかしながら、他の直径(例えば、200mm、450mm等)も考えられる。
【0079】
いくつかの実施形態では、処理チャンバ400に、不活性ガスまたは他の処理ガスを供給することができる。例えば、ガス源は、プラズマチャンバ100からグリッド構造200を通って到来した後、中性化領域300を通行するガス、および/または被加工物表面から到来したガス種を含むことができる。いくつかの実施形態では、そのような不活性ガスは、ヘリウムまたはアルゴンを含むことができる。いくつかの実施形態では、ガスは、窒素のようなキャリアガスであり得る。ヘリウムガスまたはアルゴンガスは、プラズマチャンバ100に拡散して戻ることができ、分子ガスは、第1の容積120内または第2の容積125内の気相化学に影響を与えることができる。いくつかの実施形態では、処理チャンバ400に供給されるガスは、水素ガスであり得るか、またはフッ化水素(HF)、三フッ化窒素(NF)、塩化水素(HCl)、フッ素(F)、塩素(Cl)、もしくは他の適切なガスのような、フッ素含有ガスもしくは塩素含有ガスであり得る。このようなガスは、負イオンのソースになることができ、したがって、被加工物表面に中性エッチャント種を提供することを支援する。いくつかの実施形態では、処理チャンバ400内の圧力を、プラズマチャンバ100内(例えば、第1の容積120内または第2の容積125内の両方)のガス圧力よりも低くすることができる。いくつかの実施形態では、プラズマチャンバ内のガス圧力を、中性化器領域または基板処理領域内のガス圧力よりも低くすることができる。
【0080】
図5は、本開示の例示的な実施形態によるプラズマ処理システムにおいて被加工物を処理するためのプロセス(500)のフロー図を示す。プロセス(500)は、プラズマ処理システムを使用して実施可能である。しかしながら、以下で詳細に説明するように、本開示の例示的な態様によるプロセス(500)を、本開示の範囲から逸脱することなく、他のプラズマベースの処理システムを使用して実施してもよい。図5は、例示および説明の目的で、特定の順序で実行されるステップを示している。本明細書において提供される開示を使用する当業者は、本明細書に記載されている方法の任意の種々のステップを、本開示の範囲から逸脱することなく、種々の手法で省略、拡張、同時実行、再配置、および/または修正してもよいことを理解するであろう。さらに、本開示の範囲から逸脱することなく、種々の追加的なステップ(図示せず)を実行してもよい。
【0081】
(510)において、本プロセスは、プラズマ源を使用してプラズマチャンバ内のプロセスガスからプラズマを誘導することにより、1つまたは複数の種類の負イオンを生成することを含むことができる。例えば、図1の例示的な実施形態では、プラズマ源155は、プラズマチャンバ100内にプラズマを誘導して、1つまたは複数の負イオンを生成する。負イオン形成は、主に、図1のプラズマチャンバ100の第2の容積125内で実施可能である。低エネルギの電子が、振動励起状態にあり得るガス分子と衝突することにより、第2の容積125内で負イオンを高速に形成することができる。そのような分子は、第1の容積120内でのエネルギ性の電子衝突によって振動励起状態にされた分子であり得る。
【0082】
(520)において、本プロセスは、図2のグリッド構造200を使用して、1つまたは複数の種類の負イオンを被加工物に向かって加速させることを含むことができる。負イオンは、第1の容積内に実質的に閉じ込められているエネルギ性の電子の衝撃によって破壊されないので、第2の容積から高電流密度で抽出可能である。いくつかの実施形態では、第2の容積125内で生成されたイオンは、負イオンを加速させる目的でプラズマチャンバ100の第2の側115に配置されたグリッド構造200へと拡散すること、または流れることができる。グリッド構造200は、第2の容積125からの負イオンを加速させるように構成された複数のグリッドプレート210,215,220を含むことができる。例えば、図2の例示的な実施形態では、グリッド構造200は、第1のグリッドプレート210と、第2のグリッドプレート215と、第1のグリッドプレート210を通って加速された電子を低減するための、第1のグリッドプレート210に隣接して配置された1つまたは複数の磁気要素225とを含む。グリッド構造200は、第2のグリッドプレートから出てきた1つまたは複数の種類の負イオンをさらに加速または減速させるための第3のグリッドプレート220も含む。例えば、第3のグリッドプレート220は、帯電した粒子が、第3のグリッドプレート220を超えたところの容積からアパーチャ230,235,250を通って図1のプラズマチャンバ100内へと、例えば第2の容積125内または第1の容積120内へと逆流するように逆向きに加速されることを抑制するというさらなる機能を有することができる。前述したように、第3のグリッドプレートがアース接地に対して約25ボルト以下だけ負にバイアスされていて、かつ第2のグリッドプレートがアース接地に対して少なくとも約10ボルトだけ正にバイアスされている場合には、グリッドによって中性化器領域内のプラズマからプラズマ源の容積へと逆向きに加速される電子または正イオンは、ごくわずかになる。このことは、電力の浪費と、第1のグリッドおよび第2のグリッドの不所望な加熱とを回避するためには非常に望ましいことであろう。
【0083】
(530)において、本プロセスは、1つまたは複数の種の負イオンから電子を脱離させて、1つまたは複数の中性種を生成することを含むことができる。例えば、図3の例示的な実施形態では、中性化器セル300は、複数の放射源310を含み、これらの放射源310は、負イオン上の余分な電子をこのイオンから脱離させて、1つまたは複数の中性種を生成する。いくつかの実施形態では、中性化器セル300は、所望の波長帯域の高強度の放射を有するように動作可能であり、これにより、負イオンが中性化器セル300を横断する際に、電子を脱離させるために十分なエネルギを有する光子がほぼ全ての負イオンに当たるようになっている。したがって、大多数の負イオンから余剰の電子を脱離させることができ、これにより、中性化器セル300に入った負イオンのうちのかなりの割合が、中性化器セル300に入った負イオンとほぼ同じ運動エネルギを有する中性原子として出ることが可能となり、中性原子が、処理領域内またはウェハ上の電場によって偏向または散乱される可能性がなくなる。例えば、いくつかの実施形態では、1つまたは複数の放射源310は、負イオン上の余分な電子をこのイオンから脱離させることができる。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の放射源310は、1つもしくは複数のレーザ、1つもしくは複数のプラズマ放電、またはそれらのいくつかの組み合わせを含むことができる。例えば、1つまたは複数の放射源310は、図2のグリッド構造200のようなグリッド構造において加速された特定の種類の負イオンから電子を光脱離させるために適した波長のレーザであり得る。
【0084】
(540)において、本プロセスは、1つまたは複数の中性種が1つまたは複数の入射角度で被加工物を処理するように、プラズマチャンバを中性化器セルに対して回転させることを含むことができる。例えば、プラズマ処理システムは、1つまたは複数の中性種が1つまたは複数の入射角度で処理チャンバ400内の被加工物を処理するように、プラズマチャンバ100を中性化器セル300に対して回転させることができる。例えば、被加工物の全ての表面が適切に露出および準備され得るように、所定の範囲の角度で入射する中性子による被加工物表面上の三次元構造の表面処理を提供するために、プラズマチャンバを移動させることができる。回転は、基板表面に対して垂直に入射する中性子ビームを提供するためにも役立つことができる。なぜなら、グリッドによる電子加速を抑制するために使用される磁場により、負イオンは、各自の経路においてわずかに曲がり、第1のグリッドプレートまたは第2のグリッドプレートに対して垂直に加速されなくなるようにもなるからである。
【0085】
(550)において、本プロセスは、被加工物を1つまたは複数の中性種に曝すことを含むことができる。例えば、図4の例示的な実施形態では、被加工物支持体410は、被加工物のための物理的な支持を提供して、被加工物の位置を維持し、エネルギ性の中性原子が中性化器セル300から出てきた後のエネルギ性の中性原子の衝突ビームに対して、表面の向きをいくらか変化させることを可能にする。例えば、被加工物をエッチングするためにビームを使用して、これにより、被加工物表面の露出領域の少なくとも1つの原子単層の材料を、被加工物表面から除去することができる。
【0086】
図6は、本開示の例示的な実施形態によるプラズマ処理システムにおいて使用することができる例示的なプラズマベースの中性化器セル600を示す。いくつかの実施形態では、中性化器セル600は、図3に示されている中性化器セルの代わりに使用可能である。いくつかの実施形態では、中性化器セル300は、ビーム内の負イオンの大部分から余分な電子を衝突脱離させる熱電子(約3eVを超える平均電子エネルギ)を有する高密度プラズマを含むことができ、この際、プラズマによって生成される十分にエネルギ性である光子も、ビーム内の負イオンから電子を脱離させるために貢献する。このプラズマ中性化は、負の水素イオンから電子を脱離させるためには特に効果的であるが、FイオンおよびClイオンから電子を脱離させるためにはさほど効果的ではない。
【0087】
いくつかの実施形態では、前述のプラズマを通過するビーム内の任意の負イオンから余分な電子を衝突脱離させるための大きな断面積を得るために十分な平均エネルギの十分な密度の電子を有するプラズマによって、中性化器セルを充填することができる。前述の電子密度は、好ましくは、約1011電子/cmより大きくてよく、前述の平均電子エネルギは、好ましくは、Hイオンビームの場合には約3eVより大きくてよく、ClおよびFイオンの場合には約4eVより大きくてよい。いくつかの実施形態における前述のプラズマのガス組成は、負イオンビームを形成するためのガス源と同じである。これらの実施形態における中性化器内のエネルギ性の電子は、中性化器を通過する負イオンの速度よりも少なくとも1桁以上速い熱速度を有するので、負イオンの速度がこの同じプラズマを通過する電子の熱速度よりも高速であった場合に生じていたであろう電子脱離の確率よりも、電子脱離の確率が格段に高くなる。なぜなら、イオンの速度が緩慢であることにより、これらのイオンが中性化器領域内において費やす時間が長くなるからであり、また、プラズマ内の電子の熱エネルギが電子の衝撃脱離のために十分であるからである。さらに、直前に説明したようなプラズマ中性化器のために反射性のミラーを使用した場合には、プラズマからのEM放射を、周縁状のミラーにより反射させて中性化器容積へと戻すことができ、これにより、放射は、ビーム内の負イオンからの電子脱離の確率を高めることができる。これにより、中性子の割合を改善し、中性子を生成する効率を改善することができる。
【0088】
図6を参照すると、中性化器セル600は、中性化プラズマからのエネルギ性の電子を使用して、1つまたは複数の負イオンを中性化して、被加工物を処理するための1つまたは複数の中性種を生成するように構成可能である。中性化器セル600は、図2のグリッド構造200の下流に配置可能である。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の中性種が法線方向の入射角度で、または必要に応じて、法線方向の入射角度とは異なる範囲の入射角度で被加工物を処理し得るように、プラズマチャンバ100を中性化器セル600に対して回転させることができる。いくつかの実施形態では、中性化器セル600は、約10センチメートル~約100センチメートルの範囲内の深さ(例えば、中性化器セル600を通過するビームの進行方向に沿った寸法)を有することができる。いくつかの実施形態では、中性化器セル600は、約40センチメートル~約60センチメートルの範囲内の幅(例えば、中性化器セル600を通過するビームの進行方向に対して垂直方向における寸法、例えば、直径)を有することができる。いくつかの実施形態では、中性化器セル600は、実質的に円筒形であり得る。例えば、中性化器セル600は、実質的に円形または楕円形の断面プロファイルを有することができる。
【0089】
中性化器セル600は、中性化器セル600の円周の周りに配置された1つまたは複数の磁気要素610を含むことができる。例えば、1つまたは複数の磁気要素610は、中性化器セル600の側壁と、中性化器セル内でプラズマを生成するために使用されるコイル620との間に配置可能である。1つまたは複数の磁気要素610は、任意の適切な形状および/または構成を有することができる。例えば、いくつかの実施形態では、1つまたは複数の磁気要素610は、中性化器セル600の深さに沿って(すなわち、円筒形の中性化器セル600によって定義される中心軸線に対して平行に)延在する1つまたは複数の磁気バーまたは磁気ロッドを含むことができる。
【0090】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数の磁気要素610は、交互の極性を有するように構成可能である。例えば、第1の磁気要素610は、当該第1の磁気要素610のN極が中性化器セル600の第1の端部に近接するように、かつ/または面するように構成可能である。第1の磁気要素610の直接的に隣接する第2の磁気要素610は、当該第2の磁気要素のS極が中性化器セル600の第1の端部に近接するように、かつ/または面するように構成可能である。本開示によれば、1つまたは複数の磁気要素610のための他の任意の適切な構成を使用してもよい。
【0091】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数の磁気要素610は、永久磁石を含むことができる。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の磁気要素610は、電磁石を含むことができる。
【0092】
1つまたは複数の磁気要素610は、中性化器セル600の内側に磁場を生成するように構成可能である。例えば、中性化器セル600の側壁の近傍において実質的な大きさを有するように、磁場を構成することができる。追加的および/または代替的に、磁場が、中性化器セル600の容積の中心において約10ガウス未満の大きさを有するようにしてもよい。例えば、中性化器セルを通過するビームの進行方向に対して垂直な、約350ミリメートルの直径を有する円筒形の容積内において約10ガウス未満の大きさを有するように、磁場を構成してもよい。例えば、磁場の大きさが約10ガウス未満である容積は、ビームが中性化器セル600を通過することができる容積であり得る。いくつかの実施形態では、磁場は、線形のマルチカスプ磁場であり得る。
【0093】
中性化器セル600は、中性化プラズマ602を生成するように構成可能である。例えば、中性化器セル600は、誘導結合された中性化プラズマ602を生成および/または維持するように構成された静電シールドアンテナのようなアンテナ620を含むことができる。アンテナ620は、RF源622に結合可能である。いくつかの実施形態では、アンテナ620は、適切な整合ネットワーク624を介してRF源622に結合可能である。アンテナ620は、中性化器セル600の側壁の周りに配置可能である。例えば、アンテナ620は、中性化器セル600と実質的に同様の形状を有することができる。本開示によれば、アンテナ620の任意の適切な形状および/または構成を使用してもよい。追加的および/または代替的に、中性化プラズマ602を維持するために、マイクロ波エネルギを使用してもよい。
【0094】
本開示によれば、中性化プラズマ602は、任意の適切な組成を有することができる。例えば、中性化プラズマ602を生成するために、プロセスガスを、1つまたは複数の入口(図示せず)を介してプラズマに注入可能である。このようなプロセスガスは、水素、塩素、もしくはフッ素、またはこれらの化合物、例えば、フッ化水素(HF)、三フッ化窒素(NF)、塩化水素(HCl)、三フッ化塩素(ClF)、または他の任意の適切なプロセスガスを含むことができる。いくつかの実施形態では、中性化器セル600内のプロセスガスの所望の圧力および/または組成を維持するために、1つまたは複数の真空ポンプ(図示せず)を使用することができる。追加的および/または代替的に、中性化プラズマ602を生成するために使用されるガスは、プラズマ源からグリッド構造(例えば、図2のグリッド構造200)を通過して中性化器セル600の室内に入り、中性化器セル600の内部でイオン化されて、中性化プラズマ600を生成および/または維持することができる。
【0095】
中性化プラズマ602からの電子は、中性化器セル600を通過したビーム内の負イオンと衝突して、負イオンから電子を脱離させることができる。本開示のいくつかの実施形態によれば、中性化器セル600が、イオンを高効率で中性化することが望ましい場合がある。例えば、ビームは、中性化器セル600を通過した後、正または負のイオンを殆どまたは全く有していないほぼ完全に中性の粒子を含むべきである。例えば、電子脱離の速度と、中性化器セル600を通過する負イオンの移動時間との積は、少なくとも約2、例えば約4以上であることが望ましい場合がある。これは、負イオンの残りの割合が約e-2未満、例えば約e-4未満であることに相当し得る。別の例として、正イオンのイオン化率と、中性化器セル600を通過するビームの移動時間との積が、1よりはるかに小さいこと、例えば約0.2であることが望ましい場合がある。FおよびClの両方の余分な電子の電子衝撃脱離のための断面積は、10-15cm未満であり、断面積が最大になる電子エネルギは、30eVを超えているので、負のフッ素または塩素ビームのためにプラズマ中性化器を使用することは、負の水素イオンビームのためにプラズマ中性化器を使用するときほど有用にはならない場合がある。なぜなら、このような中性化器の長さおよび密度は、負の水素イオンの場合よりもはるかに大きくなり得るからである。プラズマ中性化器の効率を改善するための1つの方法は、中性化器プラズマ領域の周囲全てにUV放射のためのミラーを配置することである。これにより、強力なプラズマ放射が反射されて負イオンビーム内へと戻され、これによって電子脱離の速度が増加する。プラズマが十分に高密度かつ高温である場合には、これにより、脱離速度を格段に改善することができ、負のフッ素または塩素イオンのための中性化領域の長さを短縮することができる。
【0096】
本開示の例示的な実施形態によれば、中性化器セル600を通過するビームは、100キロ電子ボルト未満の、例えば約10電子ボルトのエネルギを有するビームのような、低エネルギのビームであり得る。例えば、低エネルギのビームは、約6eVを超えるエネルギを有する電子が含まれた中性化プラズマ中に、電子脱離の確率が高いHイオンを含むことができる。このようにすると、中性化器セル600のサイズを、より高エネルギの負イオンビームのためのプラズマ中性化器と比較して、長さに関して縮小することが可能となる。
【0097】
図7は、本開示の例示的な実施形態によるプラズマ処理システムにおいて使用される例示的なプラズマベースの中性化器セル700を示す。中性化器セル700は、図3および図6に示されている中性化器セルの代わりに使用可能である。図7を参照すると、中性化器セル700は、1つまたは複数の負イオンを中性化して、被加工物を処理するための1つまたは複数の中性種を生成するように構成可能である。中性化器セル700は、図2のグリッド構造200の下流に配置可能である。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の中性種が法線方向の入射角度で、または1つもしくは複数の入射角度で被加工物を処理するように、プラズマチャンバ100を中性化器セル700に対して移動(例えば、回転)させることができる。いくつかの実施形態では、中性化器セル700は、約10センチメートル~約100センチメートルの範囲内の深さ(例えば、中性化器セル700を通過するビームの進行方向に沿った寸法)、例えば約30cm~50cmの間の深さを有することができる。いくつかの実施形態では、中性化器セル700は、約40センチメートル~約60センチメートルの範囲内の幅(例えば、中性化器セル700を通過するビームの進行方向に対して垂直方向における寸法、例えば、直径)を有することができる。いくつかの実施形態では、中性化器セル700は、実質的に円筒形であり得る。例えば、中性化器セル700は、実質的に円形または楕円形の断面プロファイルを有することができる。
【0098】
中性化器セル700は、中性化器セル700の円周の周りに配置された1つまたは複数の磁気要素710を含むことができる。例えば、1つまたは複数の磁気要素710は、中性化器セルの側壁に近接して配置可能である。1つまたは複数の磁気要素710は、任意の適切な形状および/または構成を有することができる。例えば、いくつかの実施形態では、1つまたは複数の磁気要素710は、中性化器セル700の深さに沿って(すなわち、円筒形の中性化器セル700によって定義される中心軸線に対して平行に)延在する1つまたは複数の磁気バーまたは磁気ロッドを含むことができる。
【0099】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数の磁気要素710は、交互の極性を有するように構成可能である。例えば、第1の磁気要素710は、当該第1の磁気要素710のN極が中性化器セル700の第1の端部に近接するように構成可能である。第1の磁気要素710に直接的に隣接する第2の磁気要素710は、当該第2の磁気要素のS極が中性化器セル700の第1の端部に近接するように構成可能である。本開示によれば、1つまたは複数の磁気要素710のための他の任意の適切な構成を使用してもよい。
【0100】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数の磁気要素710は、永久磁石を含むことができる。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の磁気要素710は、電磁石を含むことができる。
【0101】
1つまたは複数の磁気要素710は、主に中性化器セル700の内側の壁の近傍で磁場を生成するように構成可能である。例えば、中性化器セル700の側壁の近傍においてのみ実質的な大きさを有するように、磁場を構成することができる。追加的および/または代替的に、磁場が、中性化器セル700の容積の中心において約30ガウス未満の大きさを有するようにしてもよい。例えば、中性化器セルを通過するビームの進行方向に対して垂直な、約350ミリメートルの直径を有する円筒形の容積内のどこでも約10ガウス未満の大きさを有するように、磁場を構成してもよい。いくつかの実施形態では、磁場は、線形のマルチカスプ磁場であり得る。
【0102】
中性化器セル700は、中性化プラズマ702を生成するように構成可能である。例えば、中性化器セル700は、誘導結合された中性化プラズマ702を生成および/または維持するように構成された1つまたは複数のアンテナ720を含むことができる。1つまたは複数のアンテナ720の各々は、1つまたは複数のRF源722の各々に結合可能である。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のアンテナ720のうちの2つ以上を、同じRF源722に結合してもよい。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のアンテナ720は、適切な整合ネットワーク(図示せず)を介して1つまたは複数のRF源722に結合可能である。1つまたは複数のアンテナ720は、中性化器セル700の内部の側壁に近接して配置可能である。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のアンテナ720は、中性化器セル700の側壁の内部に部分的に延在することができる。1つまたは複数のアンテナ720は、中性化器セル700の側壁の周りを実質的に取り巻くことができる。例えば、1つまたは複数のアンテナ720は、約ゼロの大きさを有する1つまたは複数の磁気要素710によって生成される磁場の容積の完全に外側に配置可能である。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のアンテナ720は、中性化器セル700を通過するビームとの干渉を回避するために、中性化器セル700の中心にある350ミリメートルの円筒形の容積の完全に外側に配置可能である。本開示によれば、1つまたは複数のアンテナ720の任意の適切な形状および/または構成を使用してもよい。追加的および/または代替的に、中性化プラズマ702を維持するために、マイクロ波エネルギを使用してもよい。
【0103】
本開示によれば、中性化プラズマ702は、任意の適切な組成を有することができる。例えば、中性化プラズマ702を生成するために、プロセスガスを、1つまたは複数の入口(図示せず)を介してプラズマに注入可能である。このようなプロセスガスは、水素、塩素、もしくはフッ素、またはこれらの化合物、例えば、フッ化水素(HF)、三フッ化窒素(NF)、塩化水素(HCl)、三フッ化塩素(ClF)、または他の任意の適切なプロセスガスを含むことができる。いくつかの実施形態では、中性化器セル700内のプロセスガスの所望の圧力および/または組成を維持するために、1つまたは複数の真空ポンプ(図示せず)を使用することができる。追加的および/または代替的に、中性化プラズマ702を生成するために使用されるガスは、グリッド構造(例えば、図2のグリッド構造200)から中性化器セル700の室内へと通過し、中性化器セル700の内部でイオン化されて、中性化プラズマ700を生成および/または維持することができる。
【0104】
中性化プラズマ702からの電子は、中性化器セル700を通過したビーム内の負イオンと衝突して、負イオンから電子を脱離させることができる。本開示のいくつかの実施形態によれば、中性化器セル700が、イオンを高効率で中性化することが望ましい場合がある。例えば、ビームは、中性化器セル700を通過した後、正または負のイオンを殆どまたは全く有していないほぼ完全に中性の粒子を含むべきである。例えば、電子脱離の速度と、中性化器セル700を通過する負イオンの移動時間との積は、少なくとも約2、例えば約4以上であることが望ましい場合がある。これは、負イオンの残りの割合が約e-2未満、例えば約e-4未満であることに相当し得る。別の例として、正イオンのイオン化率と、中性化器セル700を通過するビームの移動時間との積が、1未満であることが望ましい場合がある。
【0105】
本開示の例示的な実施形態によれば、中性化器セル700を通過するビームは、10キロ電子ボルト(keV)未満の、例えば約1keV未満のエネルギを有するビームのような、低エネルギのビームであり得る。例えば、低エネルギのビームは、約10電子ボルトを超えるエネルギを有する電子が含まれた中性化プラズマ中に、電子脱離の確率が高いH、Cl、および/またはFイオンを含むことができる。このようにすると、中性化器セル700のサイズを、従来のプラズマ中性化技術よりも格段に縮小することが可能となる。
【0106】
本発明の主題を、本主題の特定の例示的な実施形態に関して詳細に説明してきたが、当業者は、前述したことを理解すれば、そのような実施形態に対する代替形態、変形形態、および等価形態を容易に生成できることを理解するであろう。したがって、本開示の範囲は、限定するためではなく例示するためものであり、本主題の開示は、当業者には容易に明らかであるように、本発明の主題に対するそのような修正形態、変形形態、および/または追加形態を包含することを排除しているわけではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2022-08-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ処理システムであって、
被加工物を支持するように構成された被加工物支持体を有する処理チャンバと、
プラズマチャンバ内のプロセスガスからプラズマを誘導して、負イオンを含む1つまたは複数の種を生成するように構成されたプラズマ源であって、前記プラズマ源は第1の複数の永久磁石を含み、前記第1の複数の永久磁石は磁気リングのセットを形成し、前記プラズマチャンバは第1の容積と第2の容積とを含む、プラズマ源と、
前記負イオンを前記被加工物に向かって加速させるように構成されたグリッド構造であって、前記グリッド構造は、第1のグリッドプレートと、第2のグリッドプレートと、前記第1のグリッドプレートと前記第2のグリッドプレートとの間に配置された第2の複数の永久磁石とを含み、前記第1のグリッドプレートは前記プラズマチャンバのプラズマ境界を形成し、前記第1のグリッドプレートは前記プラズマチャンバの導電性部分に電気的に接続され、前記プラズマチャンバの前記導電性部分と同じ電位に維持されている、グリッド構造と、
前記負イオンのイオンから余分な電子を脱離させて、前記被加工物を処理するための1つまたは複数のエネルギ性の中性種を生成するように構成されている、前記グリッド構造の下流に配置された中性化器セルと、
を含む、プラズマ処理システム。
【請求項2】
前記プラズマ源は、誘導結合プラズマ源を含む、請求項1記載のプラズマ処理システム。
【請求項3】
前記プロセスガスは、水素、塩素、またはフッ素を含む、請求項1記載のプラズマ処理システム。
【請求項4】
前記第1のグリッドプレートは、第1の複数のアパーチャを含み、前記負イオンが、前記第1の複数のアパーチャを通過するようになっている、請求項1記載のプラズマ処理システム。
【請求項5】
前記第1のグリッドプレートと前記第2のグリッドプレートとの間に、前記負イオンの複数のビームを加速させるために十分な電位差が存在する、請求項1記載のプラズマ処理システム。
【請求項6】
前記グリッド構造が、第3のグリッドプレートを含む、請求項1記載のプラズマ処理システム。
【請求項7】
前記第2のグリッドプレートは、第2の複数のアパーチャを含み、
前記第2の複数のアパーチャは、前記第1のグリッドプレートの前記第1の複数のアパーチャを通過した前記負イオンが、当該第2の複数のアパーチャの対応するアパーチャを通過するように、前記第1のグリッドプレートの前記第1の複数のアパーチャと整列している、
請求項4記載のプラズマ処理システム。
【請求項8】
前記第2の複数の永久磁石のそれぞれは、イオンの抽出方向に対して略垂直、かつ前記グリッド構造の平面に対して略平行な長さ寸法を有する、請求項4記載のプラズマ処理システム。
【請求項9】
前記第2の複数の永久磁石のそれぞれの前記長さ寸法は、前記第1の複数のアパーチャのうちの1つのアパーチャの長さよりも長い、請求項8記載のプラズマ処理システム。
【請求項10】
前記1つまたは複数の磁気要素の1つまたは複数の極面における磁場強度は、約1キロガウス以下のオーダである、請求項1記載のプラズマ処理システム。
【請求項11】
前記中性化器セルは、約10センチメートル~100センチメートルの範囲内の深さを有する、請求項1記載のプラズマ処理システム。
【請求項12】
前記第1のグリッドプレートは、前記第2の容積に隣接する前記プラズマチャンバの側を形成する、請求項1記載のプラズマ処理システム。
【外国語明細書】