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特開2022-166190レバウディオサイドD含有晶析物の製造方法およびレバウディオサイドD含有晶析物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022166190
(43)【公開日】2022-11-01
(54)【発明の名称】レバウディオサイドD含有晶析物の製造方法およびレバウディオサイドD含有晶析物
(51)【国際特許分類】
   C07H 15/256 20060101AFI20221025BHJP
   A23L 27/00 20160101ALI20221025BHJP
   A23L 2/60 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
C07H15/256 A
A23L27/00 101A
A23L2/00 C
A23L2/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022129635
(22)【出願日】2022-08-16
(62)【分割の表示】P 2021549364の分割
【原出願日】2020-10-30
(31)【優先権主張番号】P 2019200256
(32)【優先日】2019-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100186897
【弁理士】
【氏名又は名称】平川 さやか
(74)【代理人】
【識別番号】100217663
【弁理士】
【氏名又は名称】末広 尚也
(72)【発明者】
【氏名】浦井 聡一郎
(72)【発明者】
【氏名】内海 唯
(72)【発明者】
【氏名】高柳 圭佑
(72)【発明者】
【氏名】西堀 友之
(72)【発明者】
【氏名】三井 亮輝
(72)【発明者】
【氏名】横尾 芳明
(72)【発明者】
【氏名】長尾 浩二
(57)【要約】      (修正有)
【課題】レバウディオサイドDの収率が高く、また、レバウディオサイドDを高純度で含むレバウディオサイドD含有晶析物を得ることができる、レバウディオサイドD含有晶析物の製造方法、並びにレバウディオサイドD含有晶析物を提供する。
【解決手段】ステビア植物由来の粗精製物における総ステビオール配糖体含有量が50~95質量%であり、且つ、前記粗精製物が少なくともRebAとRebDとを含有しており、前記粗精製物を、RebDの10℃での過飽和度が10以上であり且つRebAの10℃での過飽和度が18以下になるように、メタノールまたはエタノールを含む溶媒中に混合して、晶析用溶液を調製する工程、並びに、前記晶析用溶液を、攪拌しながら冷却し、RebDを析出させる工程を含む、RebD含有晶析物の製造方法とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステビア植物からの抽出物を粗精製して得られた粗精製物を用いて、1次晶析の段階からレバウディオサイドDを晶析する、レバウディオサイドD含有晶析物の製造方法であって、
前記粗精製物における総ステビオール配糖体含有量が50~95質量%であり、且つ、前記粗精製物が少なくともレバウディオサイドAとレバウディオサイドDとを含有しており、前記粗精製物におけるレバウディオサイドAの含有量が15~70質量%であり、
前記粗精製物を、レバウディオサイドDの10℃での過飽和度が10以上であり且つレバウディオサイドAの10℃での過飽和度が18以下になるように、メタノールまたはエタノールを含む溶媒中に混合して、晶析用溶液を調整する工程、並びに、
前記晶析用溶液を、攪拌しながら冷却し、レバウディオサイドDを析出させる工程を含むことを特徴とする、レバウディオサイドD含有晶析物の製造方法。
【請求項2】
前記総ステビオール配糖体が、レバウディオサイドA、レバウディオサイドB、レバウディオサイドC、レバウディオサイドD、ステビオシド、レバウディオサイドFおよびレバウディオサイドMである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記粗精製物におけるレバウディオサイドDの含有量が2~70質量%である、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記溶媒における前記メタノールまたはエタノールの濃度が99.9質量%以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記粗精製物を混合する際に、前記溶媒が40~80℃の温度に維持されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
種晶として、レバウディオサイドDを使用する、請求項1~5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記晶析用溶液を、攪拌しながら35℃以下の温度となるまで冷却し、レバウディオサイドDを析出させる、請求項1~6のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記晶析用溶液を、攪拌しながら0.002~1.37℃/分の速度で冷却し、レバウディオサイドDを析出させる、請求項1~7のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記晶析用溶液を、1~48時間の間攪拌しながら冷却し、レバウディオサイドDを析出させる、請求項1~8のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項10】
前記粗精製物が、
ステビア植物の乾燥葉を溶媒を用いて抽出して抽出物を得る、抽出工程、
前記抽出物を固液分離処理することで清澄液を得る、固液分離工程、
前記清澄液に凝集剤を添加して凝集させ、処理液を得る、凝集工程、
前記処理液を疎水性多孔質樹脂で処理する、樹脂精製工程、および
樹脂精製後の溶液を濃縮する、濃縮工程
を含む方法により得られたものである、請求項1~9のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項11】
さらに、析出したレバウディオサイドDと液相とを分離し、分離後のレバウディオサイドDを乾燥する工程を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項12】
さらに、
析出したレバウディオサイドDを分離し、乾燥して、一次晶析物を得る工程、
該一次晶析物を、レバウディオサイドDの10℃での過飽和度が10以上であり且つレバウディオサイドAの10℃での過飽和度が18以下になるように、メタノールまたはエタノールを含む溶媒中に混合して、一次晶析物溶解液を調整する工程、
前記一次晶析物溶解液を、攪拌しながら冷却し、レバウディオサイドDを析出させる工程、並びに、
析出したレバウディオサイドDを分離し、乾燥する工程
を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項13】
レバウディオサイドD含有晶析物における総ステビオール配糖体に対するレバウディオサイドDの割合が35~95質量%である、請求項1~12のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項14】
レバウディオサイドD含有晶析物における総ステビオール配糖体に対するレバウディオサイドAの割合が10~50質量%である、請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
晶析回数を一回とした場合の、粗精製物中に含まれていたレバウディオサイドDに対する晶析したレバウディオサイドDの割合が、70~99質量%である、請求項1~14のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載の製造方法により製造されたレバウディオサイドD含有晶析物を添加することを含む、飲食品の製造方法。
【請求項17】
前記飲食品が飲料である、請求項16に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レバウディオサイドDの収率が高く、また、レバウディオサイドDを高純度で含むレバウディオサイドD含有晶析物を得ることができる、レバウディオサイドD含有晶析物の製造方法、並びに、レバウディオサイドD含有晶析物に関する。
【背景技術】
【0002】
キク科ステビア(Stevia rebaudiana)の葉にはジテルペノイドの一種であるステビオール(Steviol)とよばれる二次代謝産物が含まれている。ステビオール配糖体は砂糖の約300倍もの甘味を呈することからカロリーレスの甘味料として食品産業に利用されている。肥満は国際的に深刻な社会問題となっており、健康増進および医療費削減の観点からもカロリーレスの甘味料の要望は日々大きくなっている。現在では人工的に合成されたアミノ酸誘導体のアスパルテーム(Aspartame)やアセスルファムカリウム(Acesulfame Potassium)が人工甘味料として利用されている。しかし、ステビオール配糖体のように天然に存在するカロリーレス甘味料はより安全で消費者理解(Public Acceptance)が得られやすいと期待される。
【0003】
これまでステビオール配糖体の精製に関してはいくつかの報告がなされている。例えば特許文献1は、ステビア・レバウディアナ・ベルトーニ植物の抽出物を有機溶媒の水溶液に溶かして3回以上晶析することで、レバウジオシドDを精製する方法を開示している。また、特許文献2は、ステビア・レバウディアナ植物の少なくとも1つのステビオール配糖体を含む出発材料とアルコール水溶液とを用意し、出発材料をアルコール水溶液に溶解し、約1分~約240時間の間、約24~80℃で溶液を保持し、固液分離し、乾燥して、ステビオール配糖体組成物を得る方法であって、ステビオール配糖体組成物が、20℃の水中で少なくとも0.01%の溶解度を有する、方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-507914号公報
【特許文献2】特開2019-518065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような状況から、現在、RebD晶析物の新規な製造方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、以下を提供する。
[1]ステビア植物からの抽出物を粗精製して得られた粗精製物を用いる、レバウディオサイドD含有晶析物の製造方法であって、
前記粗精製物における総ステビオール配糖体含有量が50~95質量%であり、且つ、前記粗精製物が少なくともレバウディオサイドAとレバウディオサイドDとを含有しており、
前記粗精製物を、レバウディオサイドDの10℃での過飽和度が10以上であり且つレバウディオサイドAの10℃での過飽和度が18以下になるように、メタノールまたはエタノールを含む溶媒中に混合して、晶析用溶液を調整する工程、並びに、
前記晶析用溶液を、攪拌しながら冷却し、レバウディオサイドDを析出させる工程を含むことを特徴とする、レバウディオサイドD含有晶析物の製造方法。
[2]前記総ステビオール配糖体が、レバウディオサイドA、レバウディオサイドB、レバウディオサイドC、レバウディオサイドD、ステビオシド、レバウディオサイドFおよびレバウディオサイドMである、上記[1]に記載の製造方法。
[3]前記粗精製物におけるレバウディオサイドAの含有量が5~70質量%であり、かつ、レバウディオサイドDの含有量が2~70質量%である、上記[1]または[2]に記載の製造方法。
[4]前記溶媒における前記メタノールまたはエタノールの濃度が99.9質量%以下である、上記[1]~[3]のいずれかに記載の製造方法。
[5]前記粗精製物を混合する際に、前記溶媒が40~80℃の温度に維持されている、上記[1]~[4]のいずれかに記載の製造方法。
[6]種晶として、レバウディオサイドDを使用する、上記[1]~[5]のいずれかに記載の製造方法。
[7]前記晶析用溶液を、攪拌しながら35℃以下の温度となるまで冷却し、レバウディオサイドDを析出させる、上記[1]~[6]のいずれかに記載の製造方法。
[8]前記晶析用溶液を、攪拌しながら0.002~1.37℃/分の速度で冷却し、レバウディオサイドDを析出させる、上記[1]~[7]のいずれかに記載の製造方法。
[9]前記晶析用溶液を、1~48時間の間攪拌しながら冷却し、レバウディオサイドDを析出させる、上記[1]~[8]のいずれかに記載の製造方法。
[10]前記粗精製物が、
ステビア植物の乾燥葉を溶媒を用いて抽出して抽出物を得る、抽出工程、
前記抽出物を固液分離処理することで清澄液を得る、固液分離工程、
前記清澄液に凝集剤を添加して凝集させ、処理液を得る、凝集工程、
前記処理液を疎水性多孔質樹脂で処理する、樹脂精製工程、および
樹脂精製後の溶液を濃縮する、濃縮工程
を含む方法により得られたものである、上記[1]~[9]のいずれかに記載の製造方法。
[11]さらに、析出したレバウディオサイドDと液相とを分離し、分離後のレバウディオサイドDを乾燥する工程を含む、上記[1]~[10]のいずれかに記載の製造方法。
[12]さらに、
析出したレバウディオサイドDを分離し、乾燥して、一次晶析物を得る工程、
該一次晶析物を、レバウディオサイドDの10℃での過飽和度が10以上であり且つレバウディオサイドAの10℃での過飽和度が18以下になるように、メタノールまたはエタノールを含む溶媒中に混合して、一次晶析物溶解液を調整する工程、
前記一次晶析物溶解液を、攪拌しながら冷却し、レバウディオサイドDを析出させる工程、並びに、
析出したレバウディオサイドDを分離し、乾燥する工程
を含む、上記[1]~[10]のいずれかに記載の製造方法。
[13]レバウディオサイドD含有晶析物における総ステビオール配糖体に対するレバウディオサイドDの割合が35~95質量%である、上記[1]~[12]のいずれかに記載の製造方法。
[14]レバウディオサイドD含有晶析物における総ステビオール配糖体に対するレバウディオサイドAの割合が10~50質量%である、上記[13]に記載の製造方法。
[15]晶析回数を一回とした場合の、粗精製物中に含まれていたレバウディオサイドDに対する晶析したレバウディオサイドDの割合が、70~99質量%である、上記[1]~[14]のいずれかに記載の製造方法。
[16]上記[1]~[15]のいずれかに記載の製造方法により製造された、レバウディオサイドD含有晶析物。
[17]上記[16]に記載のレバウディオサイドD含有晶析物を含む飲食品。
[18]飲料である、上記[17]に記載の飲食品。
【発明の効果】
【0007】
本発明においては、高純度、高収率でRebD含有晶析物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実験例1における、様々な濃度のエタノール溶媒における溶解度曲線を示す。
図2】実験例2における、RebD添加率と収率の関係を示す。
図3】実験例3における、エタノール溶媒の濃度がRebD晶析物の組成に与える影響を示す。
図4】実験例3における、エタノール溶媒の濃度が収量(結晶量)に与える影響を示す。
図5】実験例4における温度プロファイルを示す。
図6】実験例4における、冷却速度がRebD晶析物の組成に与える影響を示す。
図7】実験例4における、冷却速度が収量(結晶量)に与える影響を示す。
図8】実験例5における温度プロファイルを示す。
図9】実験例5における、晶析時間がRebD晶析物の組成に与える影響を示す。
図10】実験例5における、晶析時間が収量(結晶量)に与える影響を示す。
図11】実験例6における、二次晶析を行う場合のエタノール溶媒の濃度がRebD晶析物の組成に与える影響を示す。
図12】実験例6における、二次晶析を行う場合のエタノール溶媒の濃度が収量(結晶量)に与える影響を示す。
図13】実験例14における、二次晶析の際の温度プロファイルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこの実施の形態のみに限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱しない限り、様々な形態で実施をすることができる。なお、本明細書において引用した全ての文献、および公開公報、特許公報その他の特許文献は、参照として本明細書に組み込むものとする。
【0010】
本明細書において、「レバウディオサイド」、「レバウジオシド」、「Reb」および「Reb.」は同じ意味を表すものであり、いずれも「rebaudioside」を意味するものである。同様に、本明細書において、「ズルコサイド」は「dulcoside」を意味するものである。
【0011】
本発明は、ステビア植物からの抽出物を粗精製して得られた粗精製物(以下、単に粗精製物と呼ぶことがある。)を、メタノールまたはエタノールの溶媒に溶解してRebDを結晶として析出させることで、レバウディオサイドD(RebD)含有晶析物を製造する方法に関する。
【0012】
従来広く行われてきた方法では、まずステビア植物の抽出物からRebAを精製し、残った母液からRebDを精製してきた。入手可能なほとんどのステビア植物の葉に、RebDよりもRebAのほうが多く含まれているからである。しかし、本発明では、一次晶析の段階からRebDを晶析する。ステビア植物からの抽出物の粗精製物において、RebDよりもRebAのほうが高濃度で含まれていることを考慮すると、そのような粗精製物を原料として用いるにも関わらず、純度の高いRebD含有晶析物が得られるということは驚くべきことである。
【0013】
ステビア植物の葉ではRebDよりもRebAの含有量が圧倒的に多いため、従来の方法では、RebA晶析時にRebDが巻き込まれてしまうと考えられる。そのため、従来の方法において、RebA晶析後の母液からRebD精製を行ってRebD高純度製剤を得ようとする場合、RebA晶析時にRebDが巻き込まれてしまうことで、必然的に収率が低くなっていた。本発明では、RebDを目的とする精製を実施することで、上記した問題をどちらも解決し、RebDの高純度と高収率の両立を実現した。
【0014】
<粗精製>
本発明の製造方法には、ステビア植物の粗精製物を用いる。ステビア植物の粗精製物は市販品を用いてもよく、ステビア植物、特にステビア植物の葉からの抽出物を精製して得てもよい。また、粗精製物として、市販品や抽出物を粗精製して得たものに対し、さらにRebDを添加したものを用いてもよい。
ステビア植物からの抽出物を粗精製して粗精製物を得る場合、ステビア植物からの抽出物は、市販品を用いてもよく、ステビア植物、特にステビア植物の葉を抽出処理して得てもよい。粗精製物を得る好適な方法としては、
(A)ステビア植物の乾燥葉を溶媒を用いて抽出して抽出物を得る、抽出工程、
(B)抽出物を固液分離処理することで清澄液を得る、固液分離工程、
(C)清澄液に凝集剤を添加して凝集させ、処理液を得る、凝集工程、
(D)処理液を疎水性多孔質樹脂で処理する、樹脂精製工程、および
(E)樹脂精製処理後の溶液を濃縮する、濃縮工程、
を含む方法が挙げられる。以下、この方法を、本発明の粗精製方法と呼ぶことがある。各工程について以下に説明する。
【0015】
本発明の粗精製方法の一態様において、ステビア植物の乾燥葉の含水率は1~11重量%である。
【0016】
(A)ステビア植物の乾燥葉からの抽出
本発明の粗精製方法の一態様には、ステビア植物の乾燥葉を水性溶媒を用いて抽出して抽出物(抽出液)を得ることが含まれる。本明細書において、ステビア植物の乾燥葉とは、ステビア植物の新鮮葉を乾燥させることにより含水量を減らしたものをいう。ステビア植物の乾燥葉の含水率は、好ましくは1~10重量%、より好ましくは、2~8重量%、特に好ましくは3~4重量%である。ステビア植物の乾燥葉はステビオール配糖体が含まれていれば特に限定されないが、好ましくはRebDまたはレバウディオサイドM(RebM)の含有量が天然のステビア植物の乾燥葉よりも多いものが好ましい。そのようなステビア植物の乾燥葉は、例えば、国際公開第2019/074089号公報等に記載の方法で得ることができる。
【0017】
本発明の製造方法に用いるのに好ましいステビア植物の乾燥葉は、含水率が3~4重量%の場合に乾燥葉100g中に5.0~25gのステビオール配糖体を含む。他の態様における乾燥葉は、含水率が3~4重量%の場合に乾燥葉100g中に6.0~24g、7.0~23g、8.0~22g、9.0~21g、10~20gまたは11~19gのステビオール配糖体を含んでいてもよい。
【0018】
別の好ましい態様において、本発明の製造方法に用いるステビア植物の乾燥葉は、含水率が3~4重量%の場合に乾燥葉100g中に8~17gのステビオール配糖体を含む。
【0019】
本態様において好ましい乾燥葉は、含水率が3~4重量%の場合に乾燥葉100g中に0.5g以上のRebDを含む。また、他の態様に用いる好ましい乾燥葉は、含水率が3~4重量%の場合に乾燥葉100g中に0.19g以上のRebMを含む。また、他の態様に用いる好ましい乾燥葉は、含水率が3~4重量%の場合に乾燥葉100g中に3.0g以上のレバウディオサイドA(RebA)を含む。他の好ましい態様において、乾燥葉は、含水率が3~4重量%の場合に乾燥葉100g中にRebDが0.6g以上、0.7g以上、0.8g以上、1.0g以上、1.1g以上、1.2g以上、1.3g以上、1.4g以上、1.5g以上、1.6g以上、1.7g以上、1.8g以上、1.9g以上、2.0g以上、2.1g以上、2.2g以上、2.3g以上、2.4g以上、2.5g以上、2.6g以上、2.7g以上、2.8g以上、2.9g以上、3.0g以上、3.1g以上、3.2g以上、3.3g以上、3.4g以上、3.5g以上、3.6g以上、3.7g以上、3.8g以上、3.9g以上、4.0g以上、4.1g以上または4.2g以上の量で存在し、例えば、6.0g以下、5.5g以下または5.0g以下の量で存在していてもよい。あるいは、2.7~8.0g、3.2~8.0g、3.7~8.0g、4.2~8.0g、4.7~8.0g、5.2~8.0g、5.7~8.0g、6.2~8.0g、6.7~8.0g、2.7~7.5g、3.2~7.5g、3.7~7.5g、4.2~7.5g、4.7~7.5g、5.2~7.5g、5.7~7.5g、6.2~7.5g、6.7~7.5g、2.7~7.0g、3.2~7.0g、3.7~7.0g、4.2~7.0g、4.7~7.0g、5.2~7.0g、5.7~7.0g、6.2~7.0gまたは6.7~7.0gの量で存在していてもよい。他の好ましい態様において、乾燥葉には、乾燥葉100g当たりRebMが0.20g以上、0.25g以上、0.30g以上、0.35g以上、0.40g以上、0.45g以上、0.50g以上、0.55g以上、0.60g以上、0.65g以上、0.70g以上、0.75g以上、0.80g以上、0.85g以上、0.90g以上、0.95g以上、1.00g以上、1.05g以上、1.10g以上、1.15g以上、1.20g以上、1.25g以上、1.30g以上、1.35g以上、1.40g以上または1.45g以上の量で存在し、例えば、1.50g以下、1.30g以下または1.20g以下の量で存在していてもよい。他の好ましい態様において、乾燥葉には、含水率が3~4重量%の場合に乾燥葉100g中にRebAが3.0g以上、3.5g以上、4.0g以上、4.5g以上、5.0g以上、5.5g以上、6.0g以上、6.5g以上、7.0g以上、7.5g以上、8.0g以上、8.5g以上、9.0g以上、9.5g以上、10g以上、11g以上、12g以上、13g以上、または14g以上の量で存在し、例えば、17g以下、16g以下または15g以下の量で存在していてもよい。
【0020】
別の好ましい態様において、乾燥葉は、含水率が3~4重量%の場合に乾燥葉100g中にRebDが0.5~0.9gまたは0.6~0.85g含まれてもよい。RebMは、含水率が3~4重量%の乾燥葉100g中に0.2~1.5g、0.2~1.3g、0.2~1.2g、0.2~1g、0.2~0.8g、0.2~0.7g、0.3~1.5g、0.3~1.3g、0.3~1.1g、0.3~0.9g、0.3~0.7gのいずれかの量で含まれてもよい。RebAは、含水率が3~4重量%の乾燥葉100g中に3~17g、3~16g、3~15g、3~14g、3~13g、3~12g、5~17g、5~16g、5~15g、5~14g、5~13g、5~12g、6~17g、6~16g、6~15g、6~14g、6~13g、6~12g、6~11gのいずれかの量で含まれていてもよい。
【0021】
乾燥葉からのステビオール配糖体の抽出は、水やアルコール、あるいはそれらの混合溶液等の溶媒を用いて行うことができる。好ましい抽出溶媒としては、イオン交換水、純水(例えば、ミリQ水)およびエタノール水溶液などが挙げられる。抽出する際には、乾燥葉を破砕してもよく、破砕しなくてもよい。破砕する場合はボールミルなどを用いて破砕してもよい。あるいは、ニーダー抽出器(例えば、SKN-R100、三友機器株式会社製)等を用いて、抽出処理をしてもよい。
【0022】
抽出時には水性溶媒を加熱することで、より効率的にステビオール配糖体を抽出することができる。抽出する際の温度は、例えば、0~100℃、20~90℃、40~80℃、25~80℃、30~75℃、35~70℃、40~65℃または45~70℃であってもよく、好ましくは45~70℃である。
【0023】
抽出は1回だけでなく、複数回行ってもよい。複数回抽出を行うことで、葉に含まれているステビオール配糖体がより多く抽出される。効率の観点から、抽出は2回程度が好ましい。
【0024】
(B)固液分離処理
本発明の粗精製方法の一態様においては、得られた抽出液を固液分離処理することで清澄液を得ることができる。固液分離処理としては、固体と液体が十分に分離されれば特に限定されないが、例えば、遠心分離器による処理や、メッシュによる処理、フィルタープレスによる処理が挙げられる。
固液分離処理は、複数の手段を用いてもよく、例えば、第1の固液分離処理の後に第2の固液分離処理を行って清澄液を得てもよい。
【0025】
固液分離処理としては、上記した処理以外に、精密濾過膜による処理を挙げることもできる。
【0026】
(C)凝集処理
本発明の粗精製方法の一態様においては、固液分離処理によって得られた清澄液に凝集剤を添加させることで処理液を得ることができる。凝集剤としては、特に限定されず、公知の無機凝集剤や有機高分子凝集剤を用いることができる。本発明の他の態様において、凝集剤は、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、塩化鉄(III)またはその水和物、合成高分子凝集剤(ポリアクリルアミド高重合体やポリアクリルアミドの部分加水分解物など)、アルギン酸、キチン、キトサン、水酸化カルシウムから選択される1つ以上である。凝集剤としてこれらの凝集剤の1つ以上が含まれていればよく、他の凝集剤がさらに含まれていてもよい。凝集剤は2種以上のものを組み合わせて使用してもよく、例えば、水酸化カルシウムと塩化鉄の組合せ、または水酸化カルシウムと塩化鉄とキトサンとの組み合わせなどで使用してもよい。
【0027】
凝集剤の添加量は、各凝集剤について凝集が起こる量であれば特に限定されないが、例えば、清澄液に含まれる可溶性固形分に対して、3.0~50重量%の量で添加することができる。例えば、水酸化カルシウムについては清澄液中の固形分の10~30重量%に相当する量で添加することができ、好ましくは12~28重量%、より好ましくは14~25重量%の量で添加することができる。塩化鉄(III)六水和物の場合は、清澄液中の固形分の15~40重量%に相当する量で添加することができ、好ましくは18~38重量%、より好ましくは20~35重量%の量で添加することができる。0.5%(w/v)キトサン溶液の場合は、清澄液中の固形分の3.0~10重量%に相当する量で添加することができ、好ましくは4.0~8.0重量%、より好ましくは4.5~7.0重量%の量で添加することができる。
【0028】
凝集処理の際のpHは特に限定されず、凝集剤の種類によって凝集が最適化されるように適宜選択することができる。本発明の一態様において、凝集処理時の清澄液のpHは、2.0~13、3.0~13、4.0~13、5.0~13または6.0~13であってもよい。
【0029】
凝集処理の温度は特に限定されず、室温(約25℃)で加熱や冷却を行わずに実施してもよい。
【0030】
凝集処理の後、後述の樹脂精製処理の前に処理液に含まれる凝集物を除去してもよい。凝集物の除去は、ろ過等の任意の方法で行うことができる。
【0031】
凝集物の除去方法としては、上記した方法以外に遠心分離も挙げることができる。
【0032】
(D)樹脂精製処理
本発明の粗精製方法の一態様においては、凝集処理によって得られた処理液を疎水性多孔質樹脂で処理する。ステビオール配糖体は分子構造中に親水基と疎水基を持つ両親媒性であり、分子量は1,000前後である。また、pH2.5~9.0において安定であり、酸性・塩基性でもイオン化はしないことが知られている。一方、凝集処理を経た処理液にはステビオール配糖体以外の成分も大量に含まれている。理論に拘束されるものではないが、そのような成分には、鉄イオンのように分子量がステビオール配糖体と異なる成分やアミノ酸のようにイオン化する成分があり、これらの成分を、疎水性多孔質樹脂の処理によって除去することができると考えられる。
【0033】
疎水性のステビオール骨格を有するステビオール配糖体は合成樹脂に疎水結合し、捕捉される。他方、親水性の高い不純物は樹脂と結合せずスルー画分に移行し除去されるため、上記の樹脂を充填させたカラムに凝集処理を経た処理液を投入し、その後水で洗浄することでステビオール配糖体の純度は向上すると考えられる。また、低極性の溶媒によってステビオール配糖体と合成樹脂の官能基の結合は解離するから、最終的にステビオール配糖体を高収率で回収することができるという利点がある。
【0034】
本発明の粗精製方法の一態様に用いる多孔質樹脂としては、水への親和性が低い多孔質樹脂であれば特に限定されないが、例えば、スチレンとジビニルベンゼンとの共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリロニトリル、ポリアミドおよびポリカーボネートから選択される1種以上の疎水性樹脂の多孔質樹脂が好ましい。本発明の好ましい態様において、スチレンとジビニルベンゼンとの共重合体にイオン交換基の導入処理がなされていないこと(すなわちイオン交換基を持たないこと)が好ましい。一般的に、イオン交換樹脂を製造する際にはスチレンとジビニルベンゼンとを共重合させて立体的網目構造を形成した後、樹脂にイオン交換基を導入するが、「イオン交換基の導入処理がなされていない」とはこのような処理がなされていないことを意味する。
【0035】
本発明の粗精製方法の一態様において、疎水性多孔質樹脂は疎水性基を有し、疎水性基には、アリール基、アルキル基、アルキルシリル基、エステル基およびエポキシ基から選択される1つ以上が含まれる。これらから選択される1つ以上の疎水性基が含まれていれば、他の疎水性基がさらに含まれていてもよい。アリール基としては、例えば、フェニル基、ベンジル基、トリル基、キシリル基等が挙げられ、アルキル基としては、C1~20のアルキル基、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、オクタデシル基などが挙げられる。
【0036】
本発明の粗精製方法における好ましい態様において、疎水性多孔質樹脂の最頻度細孔半径は、10~200Åである。好ましい態様において、最頻度細孔半径は、10~150Å、15~100Å、または20~80Åである。このような細孔特性を有することで、ステビオール配糖体が細孔に効率的に吸着されて、他の成分と効率的に分離されると考えられる。
【0037】
なお、疎水性多孔質樹脂で処理を行う前に、陰イオン交換樹脂を用いて処理液を処理してもよい。陰イオン交換樹脂で事前に処理を行うことで、色素やカテキンなどの疎水性樹脂に結合する成分を効果的に除去することができる。そのような陰イオン交換樹脂としては、特に限定されないが、例えば、塩基性陰イオン交換樹脂が挙げられ、そのような塩基性陰イオン交換樹脂としては、官能基として1~2級アミノ基を導入した弱塩基性陰イオン交換樹脂や四級アンモニウム基(例えば、トリメチルアンモニウム基やジメチルエタノールアンモニウム基など)を有する強塩基性陰イオン交換樹脂などを用いることができる。
【0038】
(E)濃縮処理
樹脂精製処理を得た溶液は、更に濃縮処理を行って水性溶媒を除去してもよい。そのような処理は特に限定されないが、加熱によって水性溶媒を蒸発させることや、減圧乾燥によって水性溶媒を除去する方法などが挙げられる。
【0039】
濃縮処理後にはスプレードライを行ってもよい。スプレードライの温度条件は、通常、入口温度が120~200℃程度であり、出口温度が80~120℃程度である。
【0040】
(粗精製物)
本発明の製造方法に用いられる粗精製物は、粗精製物の総重量に対して50~95質量%の量の総ステビオール配糖体を含み、好適には、55~95、60~95、70~95、80~95、90~95、50~90、50~80、50~70、50~65、50~60、55~90、55~80、55~70、55~60、60~70、60~80、50~94、55~94、60~94のいずれかの量(質量%)の総ステビオール配糖体を含む。
【0041】
本願明細書において、好適には、総ステビオール配糖体は、RebA、RebB、RebC、RebD、ステビオシド、RebFおよびRebMの7種のステビオール配糖体からなる。本願明細書においては総ステビオール配糖体のことをTSGと略称することがある。
【0042】
粗精製物は、少なくともRebAおよびRebDを含む。好適には、粗精製物におけるRebAの含有量(質量%)が、5~70、15~70、20~70、25~70、35~70、45~70、55~70、65~70、5~65、5~45、5~25、15~65、25~45、40~75、45~65のいずれかであり、かつ、RebDの含有量(質量%)が1~70、2~70、5~70、15~70、25~70、35~70、45~70、55~70、65~70、1~65、1~45、1~25、2~65、2~45、2~25、5~65、5~45、5~25、15~65、25~45、40~75、45~65、1~20、1~15、1~10、1~8、2~20、2~15、2~10、2~8のいずれかである。
【0043】
別の好ましい態様において、粗精製物におけるRebAの含有量は1~30質量%であり、且つ、RebDの含有量は上述のいずれかである。
【0044】
<晶析用溶液の調製>
続いて、任意の容器、例えば、攪拌翼を備えた結晶缶に溶媒を入れ、粗精製物を溶媒中に混合し、晶析用溶液を調製する。このとき、RebAが結晶化しないように、RebAの過飽和度(10℃)を特定の範囲に設定しながら、RebDの過飽和度(10℃)を特定の範囲に設定する。そして、そのような過飽和度が達成されるような量で粗精製物を溶媒中に混合する。
なお、過飽和度(10℃)とは、10℃を基準温度とした場合の過飽和度を意味する。10℃の冷却を必須とする意図はない。
【0045】
過飽和度は、以下の式で表される。
σ=(C-C)/C
式中、σは過飽和度を、Cは、溶媒に対する物質の添加量の占める割合(ppm)を、Cは飽和溶解濃度(ppm)を示す。
なお、本明細書において、Cを単に「物質の濃度」ではなく「溶媒に対する物質の添加量の占める割合」としたのは、添加した物質が完全溶解せず懸濁状態となる場合を想定してのことである。本明細書では、添加した物質の溶解の有無及びその程度によらず、添加量の溶媒に対する割合を過飽和度の基準とする。
また、本発明においては、種晶を使用する場合があるが、過飽和度の計算に、この種晶の添加量は含めないものとする。
【0046】
本明細書において、飽和溶解度は、以下の方法で測定されるものである。すなわち、所定のメタノールまたはエタノール濃度(w/w)の溶媒100mlを容器(容量100mlまたは200ml、好適には200ml)に入れ、ウォーターバスであらかじめ液温を10℃にした後、200rpmで攪拌し、対象物質を過剰量(懸濁するまでの量)投入する。24時間後、0.45umメンブレンフィルターでろ液を獲得し、ろ液中に含まれる対象物質(RebAまたはRebD)量をLCMSにて測定する。LCMSとしては、好適には、島津社製、LCMS8050を使用する。
【0047】
RebDの過飽和度(10℃)は、10以上であり、好適には、10~200、10~180、10~160、10~140、10~120、10~100、10~80、10~60、10~40、10~20、15~200、35~200、55~200、75~200、95~200、115~200、135~200、155~200、175~200、15~180、15~160、15~140、15~120、15~100、15~80、15~60、15~40、15~20、20~180、20~160、20~140、20~120、20~100、20~80、20~60、20~40、80~180、80~160、80~140、80~120、80~100、100~180、100~160、100~140、100~120のいずれかである。
【0048】
別の好ましい態様において、RebDの過飽和度(10℃)は、10~350、20~350、50~350、10~300、20~300、50~300、10~205または20~205である。
【0049】
RebAの過飽和度(10℃)は、18以下であり、0以下も含む。本発明の一態様において、RebAの過飽和度(10℃)は、0より大きく18以下である。より好適には、3~18、3~13、3~8、5~18、7~18、9~18、11~18、13~18、15~18、17~18、5~13、7~11、5~15、7~15、9~15、11~15、13~15のいずれかである。
【0050】
別の好ましい態様において、RebAの過飽和度(10℃)は、16以下、マイナス1~16、0~16のいずれかである。
【0051】
RebAの過飽和度が小さく且つRebDの過飽和度が大きいという条件では、RebAが析出しにくくRebDが析出しやすい。RebAとRebDの過飽和度(10℃)がどちらも上記範囲内にあり、且つ、RebAの過飽和度が0より大きい場合、RebAの過飽和度σAに対するRebDの過飽和度σDの割合、σD/σAが、4以上、5以上、4~40、5~40、7~40、12~40、17~40、22~40、27~40、32~40、37~40、4~30、5~30、7~30、12~30、17~30、22~30、27~30、4~35、5~35、8~35、13~35、18~35、23~35、28~35、33~35、8~25、13~25、18~25、23~25、10~40、15~40、20~40、25~40、30~40、35~40、10~30、15~30、20~30、25~30のいずれかであることが好ましい。
【0052】
別の好ましい態様において、σD/σAは、4~100万、5~100万、4~75万、5~75万のいずれかである。
【0053】
晶析用溶液の調整に用いる溶媒は、メタノールまたはエタノールの溶媒である。好適には、メタノール水溶液またはエタノール水溶液である。より好適には、エタノールの水溶液である。特に好適には、メタノール溶媒を使用せずエタノール溶媒を使用する。「メタノール溶媒を使用せずエタノール溶媒を使用する」とは、好適には、溶媒におけるメタノール濃度が1mg/L以下、より好適には0.5mg/L以下、特に好適には0.1mg/L以下であることを意味する。なお、メタノール濃度の下限は0mg/Lである。エタノールは、メタノールよりも環境負荷が低く、加えて、人体への影響も低い。メタノールを使用する場合、製造現場において、法令に基づく換気設備及び換気能力や従業員の特殊健康診断実施が義務化されているが、エタノールにはそうした義務がないという点で工業利用上大きなメリットがある。
【0054】
粗精製物の添加量は、過飽和度が上述した範囲となるように適宜設定されるが、好適には、溶媒あたり1~30質量%、より好適には、1~25、1~20、1~15,1~10、5~30、5~25、5~20、5~15、5~10、10~30、15~30、20~30、25~29、10~25、15~20のいずれかの量(質量%)となるような量を混合する。
【0055】
別の好ましい態様において、粗精製物の添加量は、溶媒あたり1~28質量%、1~6質量%、6~25質量%または6~28質量%である。
【0056】
粗精製物の添加量は、過飽和度が上述した範囲となるように適宜設定されるが、好適には、粗精製物を、溶媒あたりのRebDが0.15~3.50、0.30~3.50、0.45~3.50、0.60~3.50、0.75~3.50、0.90~3.50、1.05~3.50、1.20~3.50、1.50~3.50、1.80~3.50、2.10~3.50、2.40~3.50、2.70~3.50、3.00~3.50、0.15~3.00、0.30~3.00、0.45~3.00、0.60~3.00、0.75~3.00、0.90~3.00、1.05~3.00、1.20~3.00、1.50~3.00、1.80~3.00、2.10~3.00、2.40~3.00、2.70~3.00、0.15~2.50、0.15~2.00、0.15~1.50、0.15~1.00、0.15~0.70、0.15~0.40、0.30~2.50、0.45~2.00、0.60~1.50、0.75~1.00のいずれかの量(質量%)となるような量で添加する。
【0057】
別の好ましい態様において、粗精製物を、溶媒あたりのRebDが0.20~3.50、0.25~3.50のいずれかの量(質量%)となるような量で添加する。
【0058】
メタノールまたはエタノールを含む溶媒の濃度(質量%)は、好適には、99.9質量%以下、より好適には、92質量%以下である。本発明の一態様において、50~99、60~99、70~99、80~99、90~99、50~89、60~79、50~92、60~92、70~92、80~92、90~92、50~82、60~72、70~90、80~90、70~80質量%のいずれかである。
【0059】
別の好ましい態様において、メタノールまたはエタノールを含む溶媒の濃度(質量%)は、73質量%以上95質量%未満、73~92質量%のいずれかである。
【0060】
粗精製物を溶媒に混合する際の溶媒の液温(℃)を40~80、42~80、44~80、46~80、48~80、50~80、52~80、57~80、62~80、67~80、72~80、40~75、40~70、40~65、40~60、40~55、40~50、42~75、44~70、46~65、48~60、50~55のいずれかに維持されていることが好ましい。
【0061】
好適には、粗精製物を溶媒に混合するに際し、あわせて種晶を混合することが好ましい。種晶としては、RebDを使用することが好ましい。種晶の粒径に特に制限はない。
【0062】
種晶を添加する場合には、種晶の溶解を回避する観点から、過飽和となっているような溶液温度であることが好ましい。
【0063】
種晶の添加量は、他の条件等に応じて適宜決定すればよいが、添加量が多いほうが収率が向上する傾向にある。好適には、下記式で表される種晶添加率Csが0.050~10.000、0.075~10.000、0.100~10.000、0.200~10.000、0.300~10.000、0.400~10.000、0.500~10.000、0.600~10.000、0.700~10.000、0.800~10.000、0.900~10.000、1.000~10.000、2.000~10.000、3.000~10.000、4.000~10.000、5.000~10.000、6.000~10.000、7.000~10.000、8.000~10.000、0.050~9.000、0.050~8.000、0.050~7.000、0.050~6.000、0.050~5.000、0.050~4.000、0.050~3.000、0.050~2.000、0.050~1.000、0.050~0.700、0.050~0.400、0.050~0.100、0.075~9.000、0.100~8.000、0.200~7.000、0.300~6.000、0.400~5.000、0.500~4.000、0.600~3.000、0.700~2.000、0.800~1.000、5.500~9.500、6.500~9.500、7.500~9.500、8.500~9.500、5.500~8.500、6.500~7.500のいずれかの値であることが好ましい。
Cs=Ws/Wth
式中、Wsは種晶量(単位:g)を、Wthは想定収量(単位:g)を示す。
th=(C-C)/1,000,000×溶媒量
式中、Cは溶媒に対するRebDの添加量の占める割合(ppm)を、
は飽和溶解度(単位:ppm)を示す。
溶媒量の単位はmlである。
Cには種晶の量は含めない。
【0064】
<析出>
任意の結晶装置、例えば円筒回転式助晶機等の助晶機にて、晶析用溶液を攪拌しながら冷却し、RebDを析出させる。
【0065】
冷却を急激に行うとRebD純度の低い晶析物が得られる可能性や、収率が向上しない虞があることから、冷却は漸次行うことが好ましい。好適な冷却速度(℃/分)は、0.002℃/分以上であり、より好適には、0.002~1.37℃/分であり、特に、0.002~1.37、0.002~0.87、0.002~0.37、0.002~0.27、0.002~0.17、0.002~0.07、0.002~0.04、0.002~0.01、0.002~0.007、0.007~1.37、0.017~1.37、0.027~1.37、0.057~1.37、0.087~1.37、0.387~1.37、0.687~1.37、0.987~1.37、0.007~0.87、0.017~0.37、0.027~0.27、0.057~0.17のいずれかである。
【0066】
別の好ましい態様において、冷却速度(℃/分)は、0.02~0.2である。
【0067】
攪拌冷却時間(単位:時間)は、種晶使用の有無等他の条件に応じて適宜設定すればよいが、収率を向上させる観点から、1~48、6~48、11~48、16~48、21~48、26~48、31~48、36~48、41~48、46~48、1~43、1~38、1~33、1~28、1~23、1~18、1~13、1~8、1~3、6~43、11~38、16~33、21~28のいずれかが好ましい。
【0068】
別の好ましい態様において、攪拌冷却時間(単位:時間)は、6~24時間、12時間以上または12~24時間である。
【0069】
析出工程における冷却温度(℃)は、種晶使用の有無等の他の条件により適宜決定されるが、3~40、6~40、9~40、12~40、15~40、18~40、21~40、24~40、27~40、30~40、33~40、20~40、35℃以下、3~35、6~35、9~35、12~35、15~35、18~35、21~35、24~35、27~35、30~35、25~35のいずれかまで冷却することが好ましい。
【0070】
別の好ましい態様において、冷却温度(℃)は、9~20℃、9~17℃、4~20℃または4~17℃まで冷却する。
【0071】
さらに、冷却開始時の温度(℃)は、30~85,40~85,50~85,60~85,70~85,30~80,30~70,30~60,30~50,30~40,40~80,40~70,40~60のいずれかが好ましい。
【0072】
攪拌速度(rpm)は、5~600,5~500,5~400,5~300,5~200,5~100,5~50,5~20,55~600,105~600,155~600,205~600,255~600,305~600,355~600,405~600,455~600,505~600,555~600,50~600,200~600,350~600,500~600,100~450,100~300,100~150,200~500,300~400のいずれかが好ましい。
【0073】
<後工程>
析出したRebDを含む固体組成物と液相とを遠心分離や濾別等により分離し、分離後のRebDを乾燥する。分離手段は、固体と液体が十分に分離されれば特に限定されないが、例えば、遠心分離器による処理や、メンブレンフィルターによる処理、メッシュによる処理が挙げられる。分離後乾燥前に、必要に応じて、晶析に用いたのと同じ溶媒等でRebD結晶に少量噴霧して表面を洗浄してもよい。
【0074】
<その他>
固液分離処理後の母液は、RebA、RebM等の他の成分の晶析に利用してもよい。
【0075】
本発明の製造方法の一態様においては、純度よりも収率をより重要視する観点から、上述の粗精製工程、晶析用溶液調製工程、析出工程および後工程を一回ずつ行い、製造完了としてもよい(一回晶析)。また、他の態様においては、RebD含有晶析物の純度をより高めるために、晶析用溶液調製工程~後工程までを複数回くりかえしてもよい(複数回晶析)。収率と純度のバランスの観点から、二回晶析が好ましい。
【0076】
<二回晶析>
二回晶析を行う場合、上述の粗精製工程~析出工程までを実施し、析出したレバウディオサイドDを分離し、乾燥して、一次晶析物を得た後、上述した粗精製物に代えて一次晶析物をレバウディオサイドDの10℃での過飽和度が10以上であり且つレバウディオサイドAの10℃での過飽和度が18以下になるように、メタノールまたはエタノールを含む溶媒中に混合して、一次晶析物溶解液を調製し、上述した晶析用溶液に代えて一次晶析物溶解液を攪拌しながら冷却し、RebDを析出させ、析出したRebDを分離し、乾燥することで、RebD含有晶析物を得ることができる。二回晶析における手順や条件は、前述した晶析手順や晶析条件と同様にしてよい。その場合、上述の説明における「粗精製物」を「一次晶析物」に読み替えるものとする。
【0077】
二回晶析では、晶析用溶液の調製に用いるメタノールまたはエタノールを含む溶媒の濃度を、一回晶析の場合に比べて低くすることで、より純度を高めることができる。また、2回目の晶析では、RebAの過飽和度を1回目よりも低く設定してもよい。
【0078】
本発明においては、晶析を何回も行っても構わないが、2回以下の少ない晶析回数でも十分に高純度の精製が可能である。そのため、欠減の減少やサイクルタイム短縮、省エネ等の様々な利点がある。
【0079】
<RebD含有晶析物>
本発明の方法により得られるRebD含有晶析物(以下、本発明のRebD含有晶析物と呼ぶことがある。)は、RebDを多く含有している。好適には、本発明のRebD含有晶析物におけるTSGに対するRebDの割合(質量%)は、35~99、45~99、55~99、65~99、75~99、85~99、35~89、35~79、35~69、35~59、35~95、45~95、55~95、65~95、75~95、85~95、40~99、50~99、60~99、70~99、80~99、90~99、40~99、40~89、40~79、40~69、40~59、50~89、60~79、40~95、50~95、60~95、70~95、80~95、90~95、40~85、40~75、40~65、40~55、50~85、60~75のいずれかである。
【0080】
本発明のRebD含有晶析物では、RebAの含有量が少ない。好適には、RebDの割合が上述した何れかの数値範囲であるという条件の下、TSGに対するRebAの割合(質量%)が、5~80、5~50、10~50、20~50、30~50、40~50、10~40、20~40、20~30、30~40、10~30、10~20、12~18、5~30、5~20、5~10のいずれかである。
【0081】
別の好ましい態様において、TSGに対するRebAの割合(質量%)は、3.5~80、3.5~35、3.5~30または3.5~12である。
【0082】
本発明の方法では、高収率でRebDを晶析できる。好適には、晶析回数を一回とした場合の、粗精製物中に含まれていたRebDに対する晶析したRebDの割合(質量%)が70~99、75~99、80~99、85~99、90~99、70~94、70~89、70~84、70~79、70~74、75~94、80~89、50~99、55~99、60~99、65~99、50~94、50~89、50~84、50~79、50~74、50~69、55~94、60~89、65~84のいずれかである。
【0083】
別の好ましい態様において、晶析回数を一回とした場合の、粗精製物中に含まれていたRebDに対する晶析したRebDの割合(質量%)は、39~85、より好適には39~82である。
【0084】
また、葉の抽出から晶析後までのRebDの回収率(総収率と呼ぶことがある。)も高く、好適には、35~90、45~90、55~90、65~90、または75~90質量%である。
【0085】
本発明のRebD含有晶析物におけるTSGの割合(質量%)は、好適には、50~99、60~99、70~99、80~99、90~99、50~90、50~70、50~60、60~80、60~90、60~70または70~80である。
別の態様において、本発明のRebD含有晶析物におけるTSGの割合(質量%)は、好適には、50以上、60以上、70以上または75以上である。
【0086】
本発明の一態様において、製造時にエタノール溶媒を使用し、メタノール溶媒を使用しなかった場合、RebD含有晶析物に含まれるメタノール量は少なく、好適には10ppm未満であり、特に好適には5ppm未満であり、最も好適には2ppm以下である。メタノール含有量は、ヘッドスペースGCMSで測定することができる。その下限値は、好ましくは1ppmである。
【0087】
別の好ましい態様において、製造時にエタノール溶媒を使用し、メタノール溶媒を使用しなかった場合、RebD含有晶析物に含まれるメタノール量の下限値は0ppmである。
【0088】
本発明の一態様において、製造時にエタノール溶媒を使用し、メタノール溶媒を使用しなかった場合、さらに、RebD含有晶析物における、エタノールに対するメタノール含有割合MeOH/EtOHもまた小さな値である。好適には、0.00010~0.00080であり、より好適には、0.00010~0.00070であり、特に好適には、0.00010~0.00050であり、最も好適には、0.00010~0.00030である。
【0089】
本発明の一態様によれば、本発明のRebD含有晶析物を甘味料組成物として用いてもよい。そのような甘味料組成物は、本発明のRebD含有晶析物に加え、ステビオール配糖体以外の他の甘味料を含んでいてもよい。他の甘味料としては、果糖、砂糖、果糖ぶどう糖液糖、ぶどう糖、麦芽糖、高果糖液糖、糖アルコール、オリゴ糖、はちみつ、サトウキビ搾汁液(黒糖蜜)、水飴、羅漢果末、羅漢果抽出物、甘草末、甘草抽出物、ソーマトコッカスダニエリ種子末、ソーマトコッカスダニエリ種子抽出物、ショ糖などの天然甘味料や、アセスルファムカリウム、スクラロース、ネオテーム、アスパルテーム、サッカリンなどの人工甘味料などが挙げられる。中でもすっきりさ、飲みやすさ、自然な味わい、適度なコク味の付与の観点から、天然甘味料を用いることが好ましく、特に、果糖、ぶどう糖、麦芽糖、ショ糖、砂糖が好適に用いられる。これら甘味成分は一種類のみ用いてもよく、また複数種類を用いてもよい。
【0090】
また、本発明の一態様によれば、本発明のRebD含有晶析物を含む飲食品、香料および医薬品(本明細書中それぞれ「本発明の飲食品」、「本発明の香料」および「本発明の医薬品」ともいう)が提供される。本発明の飲食品、香料及び医薬品は、本発明のRebD含有晶析物を含んでいれば特に限定されない。ここで飲食品とは、飲料および食品を意味し、好ましい対応において飲食品は飲料である。したがって、ある実施態様では、本発明は新規な飲料又は食品を提供する。
【0091】
本発明の飲食品、香料及び医薬品に含まれる総ステビオール配糖体の量(質量ppm)は、具体的な飲食品によって異なるが、飲料の場合、おおむね1~800質量ppmであるのが好ましく、例えば、20~750、20~700、20~650、20~600、20~550、25~550、30~550、35~550、40~550、45~550、50~550、55~550、20~540、25~540、30~540、35~540、40~540、45~540、50~540、55~540、20~530、25~530、30~530、35~530、40~530、45~530、50~530、55~530、20~520、25~520、30~520、35~520、40~520、45~520、50~520、55~520、20~510、25~510、30~510、35~510、40~510、45~510、50~510、55~510、20~505、25~505、30~505、35~505、40~505、45~505、50~505、55~505、20~500、25~500、30~500、35~500、40~500、45~500、50~500、55~500、20~495、25~495、30~495、35~495、40~495、45~495、50~495、55~495、20~490、25~490、30~490、35~490、40~490、45~490、50~490、55~490、100~400、150~400、200~400、250~400、300~400、100~150、100~200、100~250または100~300であってもよい。含有量をこの範囲とすることで適度な甘みを付与することができるという利点がある。本明細書において「ppm」とは、特に明記しない限り、「質量ppm」を意味する。
【0092】
本発明の飲食品、香料および医薬品は、さらにステビオール配糖体以外の甘味料を含んでいてもよい。そのような甘味料としては、果糖、砂糖、果糖ぶどう糖液糖、ぶどう糖、麦芽糖、ショ糖、高果糖液糖、糖アルコール、オリゴ糖、はちみつ、サトウキビ搾汁液(黒糖蜜)、水飴、羅漢果末、羅漢果抽出物、甘草末、甘草抽出物、ソーマトコッカスダニエリ種子末、ソーマトコッカスダニエリ種子抽出物などの天然甘味料や、アセスルファムカリウム、スクラロース、ネオテーム、アスパルテーム、サッカリンなどの人工甘味料などが挙げられる。中でもすっきりさ、飲みやすさ、自然な味わい、適度なコク味の付与の観点から、天然甘味料を用いることが好ましく、特に、果糖、ぶどう糖、麦芽糖、ショ糖、砂糖が好適に用いられる。これら甘味成分は一種類のみ用いてもよく、また複数種類を用いてもよい。
【0093】
本発明の食品の例としては、特に限定されるものではないが、製菓、製パン類、穀粉、麺類、飯類、農産・林産加工食品、畜産加工品、水産加工品、乳・乳製品、油脂・油脂加工品、調味料またはその他の食品素材等が挙げられる。
【0094】
本発明の飲料の例としては、特に限定されるものではないが、例えば炭酸飲料、非炭酸飲料、アルコール飲料、非アルコール飲料、ビールやノンアルコールビール等のビールテイスト飲料、コーヒー飲料、茶飲料、ココア飲料、栄養飲料、機能性飲料などが挙げられる。
【実施例0095】
以下に実験例により本発明を更に具体的に説明する。
【0096】
以下の実験例において、特記しない限り、TSGは、RebA,RebB,RebC,RebD,Stevioside,RebF,RebMの7種類を意味する。
【0097】
最適なRebD晶析条件を探るべく、まずは研究室において小規模なスケールの実験を行い、各種実験条件と結果の関係を検討した。小規模な実験は、条件と結果の大まかな関係を知るためのものである。
【0098】
<実験例1>
核発生および結晶成長の現象において、過飽和度は非常に大きな影響を与える。そこで、ステビア葉の主成分であるRebAおよびターゲット成分であるRebDの各溶媒における溶解度を測定した。
具体的には、所定のエタノール濃度(w/w)の溶媒100mlを50mlまたは100mlガラス容器(セパラブル丸底フラスコ,東京理化器械株式会社)に入れ、ウォーターバス(PCC-7000、東京理化器械株式会社)であらかじめ所定の温度にした後、200rpmで攪拌(SPZ-100、東京理化器械株式会社)し、RebA(J-100、守田化学株式会社)またはRebD(Jining Renewal&Joint International、China)を過剰量(懸濁するまでの量)投入した。24時間後、0.45umメンブレンフィルターでろ液を獲得し、ろ液中に含まれるRebAまたはRebD量をLCMS(島津社製、LCMS8050)にて測定し、溶解度曲線を作成した。結果を図1に示す。図1によれば、10℃、90%エタノール溶媒におけるRebA及びRebDの飽和溶解濃度はそれぞれ、8,250ppmと99.3ppmであった。
【0099】
<実験例2>
本実験では、溶媒に対するRebDの割合がRebDの回収率に与える影響を確認した。
【0100】
RebD一成分系での実験を行った。具体的には、未変性アルコール99.9質量%グレードを用い、これに適宜水を添加してエタノール濃度を調整し、50質量%エタノール溶媒を調製した。セパラブル丸底フラスコ(東京理化器械株式会社製)を用い、下記表の条件で、RebDを50質量%エタノール溶媒に溶解した。このとき、想定される収量に対する種晶添加率が0.05となるような量のRebDを種晶として添加した。次いで、下記条件で冷却した。
(晶析条件)
Initial Temp 45℃
End Temp 10℃
RebD Jining Renewal&
Joint Internation
al製
Agitation speed 100rpm
【表1】
種晶添加率は、下記式により算出される。
=W/Wth
式中、Wは種晶量(g)を、Wthは想定収量(g)を、Cは種晶添加率(単位無し)を示す。
th=(C-C)/1,000,000×溶媒量
式中、Cは溶媒に対するRebDの添加量(種晶の量は除く)の占める割合(ppm)を、Cは飽和溶解度(ppm)を示す。溶媒量の単位はmlである。
次いで、固液分離を行って結晶を得た。固液分離に用いたフィルターは、アドバンテック製0.45umメンブレンフィルターであった。
その後、RebD結晶を99質量%エタノールにて洗浄した。洗浄後の結晶を50℃にて乾燥した。
【0101】
結果を図2に示す。いずれの割合においても75%程度の回収率(使用したRebD量(種晶を含む)に対する回収したRebD量)を示すことがわかった。
【0102】
<実験例3>
本実験では、溶媒として用いるエタノールの濃度が、RebD晶析物のTSG(総ステビオール配糖体)組成および収量に与える影響を検討した。
【0103】
下記組成(単位:質量%)の粗精製物を用意した。この粗精製物における、TSGあたりのRebD純度は、1.8質量%であった。粗精製物におけるTSG含有量は59.7質量%であった。
【表2】
【0104】
下記量の粗精製物を、下記濃度および量のエタノール溶媒(78℃)に溶解した。
次いで、下記温度プロファイルおよび攪拌条件にて冷却し、RebD結晶を晶析した。晶析には、セパラブル丸底フラスコ(東京理化器械株式会社製)を用いた。また、エタノールとしては、未変性アルコール99.9質量%グレードを用い、これに適宜水を添加してエタノール濃度を調整した。なお、溶媒に対するRebDの比率は0.25質量%、溶媒に対するTSGの比率は13.8質量%、RebAの過飽和度(10℃)σAは5.10(90.50質量%エタノール溶媒使用時)、RebDの過飽和度(10℃)σDは24.37(90.50質量%エタノール溶媒使用時)、σD/σAは4.78(90.50質量%エタノール溶媒使用時)であった。
なお、過飽和度の算出式は以下のとおりである。初期濃度(溶媒に対する物質の添加量の占める割合)に種晶量は含まない。
σ=(初期濃度-10℃での飽和溶解度)/(10℃での飽和溶解度)
【表3】
【0105】
次いで、固液分離を行ってRebD結晶を得た。固液分離に用いたフィルターは、アドバンテック製0.45umメンブレンフィルターであった。
その後、RebD結晶を99質量%エタノールにて洗浄した。洗浄後のRebD結晶を50℃にて乾燥し、RebD晶析物が得られた。
得られたRebD晶析物とろ液の配糖体比率をLCMS(島津社製、LCMS8050)にて分析した。結果を図3および図4に示す。
【0106】
本実験の条件下においては、濃度95質量%のエタノールを使用した場合、スラリーの粘度が高くなり、固液分離ができなかった。一方、エタノール濃度が70質量%程度である場合、結晶が析出することはなかった。
図4より、エタノール濃度が低い場合、結晶の析出が悪い傾向であったが、図3は、RebD純度はエタノール濃度にあまり影響を受けないことを示唆した。本実験で採用した溶媒に対するTSGの比率(13.8%)においては最適なエタノール溶媒濃度が存在することがわかった。
【0107】
<実験例4>
冷却速度は結晶核の出現および結晶成長に大きく影響を与える。例えば、冷却速度が速い場合に、初期の少ない核の状態から結晶成長する際、過飽和が消費しきれず、核発生が優位となることが多い。一方、温度降下が遅い場合、結晶成長が優位となる。しかし、その場合、過飽和の消費速度にもよるが晶析時間は長くなる傾向にある。
本実験では冷却速度のTSG組成および収量への影響を検討した。
【0108】
具体的には、表3の条件に代えて下記表の条件を採用した点以外は、実験例3と同様にして一次晶析を行い、RebD晶析物を得た。
【表4】
【0109】
結果を図6および図7に示す。図6および図7より、温度降下速度が速い方で、TSGに対するRebD純度の低い沈殿物が得られた。また、収量も低下した。沈殿物の性状については、温度降下が速い方では粘性がある沈殿物が得られた。一方、遅いほうでは粘性は確認されなかった。
【0110】
<実験例5>
晶析時間は結晶成長に大きな影響を与えると同時に精製工程全体のタイムサイクルに影響を与える。結果として、晶析時間はコストや製品特性(収量、純度等)にも影響を与える。そのため、本実験では、晶析時間のTSG組成および収量への影響を検討した。
【0111】
具体的には、表3の条件に代えて下記表の条件を採用した点以外は、実験例3と同様にして一次晶析を行い、RebD晶析物を得た。
【表5】
【0112】
結果を図9および図10に示す。晶析時間は配糖体組成に影響を与えない一方、収量には影響を与えることがわかった。6H晶析では、晶析後のろ液からさらに結晶が析出した。このことから少なくとも12H以上の晶析時間が必要と考えた。但し、種晶使用の有無により更なる時間短縮の可能性はあると考える。
【0113】
<実験例6>
本実験では、RebDの更なる高純度化を目指すべく、一次晶析物を用いて二次晶析の実施の是非を検討した。具体的には、実験例2~5の結果を参考に、一次晶析条件を下記表のとおりに決定した。そして、表3の条件に代えて下記表の条件を採用した点以外は、実験例3と同様にして一次晶析を行い、RebD一次晶析物を得た。
【表6】
【0114】
その後、表3の条件に代えて下記表の条件を採用した点以外は、実験例3と同様にして二次晶析を行い、RebD二次晶析物を得た。なお、溶媒に対するRebDの比率は、0.56質量%であった。RebAの過飽和度(10℃)は-0.66、RebDの過飽和度(10℃)は53.6であった。
【表7】
【0115】
結果を図11および図12に示した。実験例3において一次晶析の溶媒を検討した場合と同様に、二次晶析においてもエタノール濃度が低下すると収量が減少することがわかった。
【0116】
本実験例における、最終的な結晶組成および収率情報としては、約90%の純度を達成する条件下(つまり二次晶析でのエタノール濃度70質量%)で、二次晶析まで行った場合の収率が約43質量%であった。
【0117】
<実験例7>
本実験例では、一次晶析でRebDではなくRebAを晶析させる場合について検討した。
【0118】
ステビア植物の乾燥葉を用いて抽出操作を行い、得られた抽出物を固液分離操作に供した。乾燥葉中の各ステビオール配糖体の含有率は、下記のとおりであった(単位:質量%)。本実験例で用いた乾燥葉中のTSGの含有量は、100g当たり16.6gであった。
【表8】
【0119】
固液分離後の清澄液を凝集、樹脂精製、蒸発濃縮工程に供した。その結果、下記表に示す組成(単位:質量%)を有する粗精製物が得られた。粗精製物における、TSGあたりのRebD割合は3.8質量%であった。
【表9】
【0120】
下記量の粗精製物を、下記濃度および量のエタノール溶媒(40℃)に溶解させた。なお、溶媒に対するRebDの添加率は、0.22質量%であった。
次いで、下記温度プロファイルおよび攪拌条件にて冷却し、RebA結晶を晶析した。晶析には、セパラブル丸底フラスコ(東京理化器械株式会社製)を用いた。また、エタノールとしては、未変性アルコール99.9質量%グレードを用いた。
次いで、固液分離を行ってRebA結晶を得た。固液分離に用いたフィルターは、アドバンテック製0.45umメンブレンフィルターであった。
その後、RebA結晶を99質量%エタノールにて洗浄した。洗浄後のRebA結晶を50℃にて乾燥した。
【表10】
【0121】
一次晶析物について、島津製LCMS8050を用いて分析を行った。下記表11に、一次晶析物のTSGに対する各ステビオール配糖体の比率(単位:質量%)を示す。また、表12に収率情報(単位:質量%)を記載する。TSGに対するRebA純度は98.6%、RebA収率は41.8%であった。RebA結晶には、RebD収量の11.5質量%程度が混入する結果となった。
【表11】
【表12】
【0122】
次に、一次晶析の母液より、RebD種晶を用いてRebD晶析を試みた。以下の表に示すように、TSGに対するRebD純度は94質量%以上であった。
【表13】
【0123】
<実験例8>
本実験では、研究室で行った小規模実験の結果得られた最適条件を採用してRebD晶析を行った。
【0124】
ステビア植物の乾燥葉を用いて抽出操作を行い、得られた抽出物を固液分離操作に供した。乾燥葉中の各ステビオール配糖体の含有率は、下記のとおりであった。本実験例で用いた乾燥葉中のTSGの含有量は、100g当たり8.7gであった。
【表14】
【0125】
固液分離後の清澄液を凝集、樹脂精製、蒸発濃縮工程に供した。その結果、下記表に示す組成(単位:質量%)を有する粗精製物が得られた。粗精製物における、TSGあたりのRebD割合は4.6質量%であった。粗精製物におけるTSGの割合は54.0質量%であった。
【表15】
【0126】
下記量の粗精製物(表中ではsampleと表示)を、下記濃度および量のエタノール溶媒(40℃)に溶解させた。なお、溶媒に対するTSGの比率は12.5質量%、溶媒に対するRebDの比率は0.58質量%、RebAの過飽和度(10℃)は9.98、RebDの過飽和度(10℃)は57.64であった。
次いで、下記温度プロファイルおよび攪拌条件にて冷却し、晶析した。晶析には、セパラブル丸底フラスコ(東京理化器械株式会社製)を用いた。また、エタノールとしては、未変性アルコール99.9質量%グレードを用い、これに適宜水を添加してエタノール濃度を調整した。
次いで、固液分離を行って結晶を得た。固液分離に用いたフィルターは、アドバンテック製0.45umメンブレンフィルターであった。
その後、結晶を99質量%エタノールにて洗浄した。洗浄後の結晶を50℃にて乾燥した。
【表16】
【0127】
一次晶析の結果、TSG純度(晶析物あたりのTSGの割合)76.2%、RebD純度(TSGあたりのRebDの割合)70.5%の結晶343mgを得ることができた。収率(単位工程収率)は39.5%であった。
【0128】
<実験例9>
ステビア植物の乾燥葉を用いて抽出操作を行い、得られた抽出物を固液分離操作に供した。乾燥葉において、TSGあたりの各ステビオール配糖体の割合(質量%)は、下記のとおりであった。本実験例で用いた乾燥葉中のTSGの含有量は、100g当たり11.8gであった。
【表17】
【0129】
固液分離後の清澄液を凝集、樹脂精製、蒸発濃縮工程に供した。得られたステビオール配糖体組成物をスプレードライして、粗精製物を得た。スプレードライ後の粗精製物の組成は以下のとおりである。
【表18】
【0130】
未変性アルコール99.9質量%グレードを用い、これに適宜水を添加して下記濃度および量のエタノールを調整した。
攪拌機付き晶析用容器(容量1リットル)に、エタノール溶媒を投入し、加熱した。
エタノール溶媒の温度が約55℃になったところで、容器に粗精製物を投入した。
約350rpmで攪拌しながら、温度を下げた。このとき、冷却時間(すなわち11時間)-1時間(すなわち、10時間)で均等に冷却した。
晶析終了後、固液分離を行った。固液分離に用いたフィルターは、アドバンテック製0.45umメンブレンフィルターであった。
得られた結晶を60-70℃で乾燥した。
【表19】
【0131】
単位工程収率(晶析前の粗精製物に含まれていたRebDに対する晶析したRebDの割合)は80.0質量%であった。TSG純度(晶析物に対するTSGの割合)は63.2質量%、RebD純度(TSGに対するRebDの割合)は35.8質量%であった。
【0132】
<実験例10>
本実験は、エタノール溶媒中に多くのRebAが存在する場合、すなわち、RebAの過飽和度を高く設定した場合のRebD晶析について検討したものである。
【0133】
1.抽出・固液分離
ステビア乾燥葉(含水率:3~4重量%)の15倍量(質量)のイオン交換水を60℃±5℃に加熱し、その水にステビア乾燥葉を浸した。その後、ニーダー抽出器(SKN-R100、三友機器株式会社製)で8rpmの撹拌棒で撹拌しながら60分間抽出を行った。次に、18メッシュと140メッシュのメッシュを通して濾過し、冷水を用いて熱交換器で冷却し、ろ液をディスク型遠心分離機(9150rpm(11601G)、24L/min)で固液分離して一次抽出液を得た。その間に、濾過後の葉を再び同じ条件下で抽出し、固液分離して透明な二次抽出液を得、一次抽出液に加えて、清澄液を得た。
【0134】
乾燥葉中のTSGあたりの各ステビオール配糖体の割合を、液体クロマトグラフィー質量分析法(LC/MS/MS)(島津社製、LCMS8050)によって測定した。結果を下記表に示す(単位:質量%)。
【表20】
【0135】
2.凝集
清澄液中の可溶性固形分の16.16質量%に相当する量のCa(OH)(Brix(可溶性固形分濃度)から計算)を清澄液に添加し、得られた混合液を15分間撹拌した。その後、清澄液中の可溶性固形分の28.28質量%に相当する量のFeCl・6HOを添加し、混合液を30分間撹拌し、クエン酸でpHを7に調整した後、清澄液中の可溶性固形分(g)の5.63倍に相当する体積(mL)の0.5%(w/v)キトサン溶液を添加した。この混合液を3分間強く撹拌し、2分間弱く撹拌し、そして10分間放置した。その後、電気的に中性の凝固沈殿物を遠心分離によって除去した。その結果、清澄な処理液が得られた。
【0136】
3.樹脂精製
樹脂精製としては、(i)陰イオン交換樹脂を用いた精製と(ii)疎水性多孔質樹脂(イオン交換基の導入がなされていないもの)を用いた精製とを行った。
(i)陰イオン交換樹脂を用いた精製
カラムに高多孔質の塩基性陰イオン交換樹脂(三菱ケミカル社製)を充填し、そのカラムに凝集分離後の処理液を投入して精製を行った。凝集分離後の処理液をカラムに投入したのに次いでカラムの容積の2倍量のイオン交換水で押し出し、精製されたステビオール配糖体組成物を含む溶液を回収した。この精製により、処理液中の黒色不純物や着色成分が除去された。
【0137】
(ii)疎水性多孔質樹脂を用いた精製
カラムに疎水性多孔質樹脂(三菱ケミカル社製)を充填し、そのカラムに(i)陰イオン交換樹脂を用いた精製後の試料を投入して精製を行った。疎水性多孔質樹脂としては、スチレンとジビニルベンゼンとの共重合体であって、イオン交換基を持たないものであり、最頻度細孔半径が45Åのものを用いた。上記(i)の精製後の溶液をカラムに投入後、カラムの容積の3倍量の0.01Mクエン酸水溶液、カラムの容積の3倍量の0.01M水酸化ナトリウム水溶液を用いてカラムを洗浄した。その後、カラムの容積の4倍量の60%エタノール水溶液でステビオール配糖体組成物を溶出し、回収した。
【0138】
4.蒸発濃縮
遠心式薄膜真空蒸発装置エバポール(大川原製作所製)を用いて、溶液を蒸発濃縮しながらエタノールを除去した。蒸発濃縮処理後も水が残存しており、組成物は液状であった。
【0139】
得られたステビオール配糖体組成物をスプレードライして、粗精製物を得た。スプレードライ後の粗精製物の組成(単位:質量%)は以下のとおりである。
【表21】
【0140】
下記表の条件を採用した点以外は、実験例9と同様にして晶析を行った。結果を後述の表31に示す。
【表22】
【0141】
<実験例11>
実験例10と同様にして、抽出・固液分離を行った。乾燥葉中のTSGあたりの各ステビオール配糖体の割合(質量%)を、実験例10と同様にして測定したところ、下記表のとおりであった。
【表23】
【0142】
実験例10と同様にして、凝集、樹脂精製、蒸発濃縮工程を行った。得られたステビオール配糖体組成物をスプレードライして、粗精製物を得た。スプレードライ後の粗精製物の組成(質量%)は以下のとおりである。
【表24】
【0143】
下記表の条件を採用した点以外は、実験例9と同様にして一次晶析を行った。
【表25】
【0144】
下記表の条件を採用した点以外は、一次晶析と同様にして二次晶析を行った。結果を後述の表31~33に示した。
【表26】
【0145】
<実験例12>
実験例10と同様にして、抽出・固液分離を行った。乾燥葉中のTSGあたりの各ステビオール配糖体の割合(質量%)を、実験例10と同様にして測定したところ、下記表のとおりであった。
【表27】
【0146】
実験例10と同様にして、凝集、樹脂精製、蒸発濃縮工程を行った。得られたステビオール配糖体組成物をスプレードライして、粗精製物を得た。スプレードライ後の粗精製物の組成(質量%)は以下のとおりである。
【表28】
【0147】
下記表の条件を採用した点以外は、実験例9と同様にして晶析を行った。RebAの過飽和度(10℃)は8.2、RebDの過飽和度(10℃)は160.1であった。
【表29】
【0148】
下記表の条件を採用した点以外は、一次晶析と同様にして二次晶析を行った。結果を表32と表33に示す。
【表30】
【0149】
実験例10~12で使用した粗精製物中の各種成分の純度、過飽和度、および、RebA単位工程収率・RebD単位工程収率を下記表に示す。
RebA純度、RebD純度は、島津社製、LCMS8050により測定し、TSGに対する割合(w/w)で表す。
過飽和度の計算式は前述のとおりである。過飽和度の算出にあたり、RebAとRebDの飽和溶解度(90質量%EtOH、10℃)は、それぞれ以下のとおりであった。
RebA=8270.5ppm
RebD=99.33ppm
RebA単位工程収率は、晶析に用いた原料中のRebA量に対する、晶析物中に含まれるRebA量の割合を示す。RebD単位工程収率も同様である。
【表31】
【表32】
【表33】
RebDの過飽和度にもよるが、RebA過飽和度15~18を境に、RebAの析出が激しくなると推測された。また、上記表において、いくつかの純度が100%を超えているのは、残留溶媒による重量アップか、分析誤差が原因と考えられた。
【0150】
<実験例13>
本実験は、晶析用の溶媒としてエタノール溶媒を使用したときに、メタノール溶媒使用時に比べてRebD晶析物の組成に変化が起こるかを検討したものである。
【0151】
RebD晶析物を2種類入手した。いずれもメタノール溶媒を用いて晶析されたものと考えられる。サンプルNo.1は、GLG社製RebD晶析物、サンプルNo.2は、JNRJ製RebD晶析物であった。
【0152】
また、実験例11で得られたRebD二次晶析物をサンプルNo.3とした。
【0153】
実験例10と同様にして、抽出・固液分離を行った。乾燥葉中のTSGあたりの各ステビオール配糖体の割合(質量%)を、実験例10と同様にして測定したところ、下記表のとおりであった。
【表34】
実験例10と同様にして、凝集、樹脂精製、蒸発濃縮工程を行った。得られたステビオール配糖体組成物をスプレードライして、粗精製物を得た。スプレードライ後の粗精製物の組成(質量%)は以下のとおりである。
【表35】
下記表の条件を採用した点以外は、実験例9と同様にして一次晶析を行った。RebAの過飽和度(10℃)は、16.1、RebDの過飽和度(10℃)は160.2であった。
【表36】
下記表の条件を採用した点以外は、一次晶析と同様にして二次晶析を行った。
【表37】
得られたRebD二次晶析物をサンプルNo.4とした。
【表38】
【0154】
実験例12で得られたRebD二次晶析物をサンプルNo.5とした。
【0155】
サンプルNo.4をさらに60~70℃で3日間乾燥したものをサンプルNo.6とした。
【0156】
サンプルNo.5をさらに60~70℃で3日間乾燥したものをサンプルNo.7とした。
【0157】
各サンプルを、1種ずつジメチルホルムアミドに溶解し、HS(ヘッドスペース)-GC/MSでメタノール含有量とエタノール含有量を測定した。結果を下記表に示す。
【表39】
【0158】
<実験例14>
1.抽出・固液分離
ステビア乾燥葉(含水率:9~11重量%)の15倍量(質量)の水を60~65℃に加熱し、その水にステビア乾燥葉を浸した。その後、攪拌槽(容積:400L)において攪拌羽(半径27cm×2枚×2段)を用いて75rpmで撹拌しながら60分間抽出を行った。次に、ステビア乾燥葉と水の混合物を、直径95cmのブフナー漏斗にセットした100メッシュのナイロン製メッシュに通して濾過し、珪藻土(セライト503)を加え、フィルタープレスでろ過し、精密濾過膜(孔径:10μm)でろ過することで固液分離して一次抽出液を得た。その間に、濾過後の葉を再び同じ条件下で抽出し、固液分離して透明な二次抽出液を得、一次抽出液に加えて、清澄液を得た。
【0159】
2.凝集
清澄液中の可溶性固形分の16.16質量%に相当する量のCa(OH)(Brix(可溶性固形分濃度)から計算)を清澄液に添加し、得られた混合液を15分間撹拌した。その後、清澄液中の可溶性固形分の28.28質量%に相当する量のFeCl・6HOを添加し、混合液を30分間撹拌し、クエン酸でpHを7に調整した後、清澄液中の可溶性固形分(g)の5.63倍に相当する体積(mL)の0.5%(w/v)キトサン溶液を添加した。この混合液を3分間強く撹拌し、2分間弱く撹拌し、そして10分間放置した。その後、電気的に中性の凝固沈殿物を遠心分離によって除去した。その結果、清澄な処理液が得られた。
【0160】
3.樹脂精製
樹脂精製としては、(i)陰イオン交換樹脂を用いた精製と(ii)疎水性多孔質樹脂(イオン交換基の導入がなされていないもの)を用いた精製とを行った。
(i)陰イオン交換樹脂を用いた精製
カラムに高多孔質の塩基性陰イオン交換樹脂(三菱ケミカル社製)を充填し、そのカラムに凝集分離後の処理液を投入して精製を行った。凝集分離後の処理液をカラムに投入したのに次いでカラムの容積の2倍量のイオン交換水で押し出し、精製されたステビオール配糖体組成物を含む溶液を回収した。この精製により、処理液中の黒色不純物や着色成分が除去された。
【0161】
(ii)疎水性多孔質樹脂を用いた精製
カラムに疎水性多孔質樹脂(三菱ケミカル社製)を充填し、そのカラムに(i)陰イオン交換樹脂を用いた精製後の試料を投入して精製を行った。疎水性多孔質樹脂としては、スチレンとジビニルベンゼンとの共重合体であって、イオン交換基を持たないものであり、最頻度細孔半径が45Åのものを用いた。上記(i)の精製後の溶液をカラムに投入後、カラムの容積の3倍量の0.01Mクエン酸水溶液、カラムの容積の3倍量の0.01M水酸化ナトリウム水溶液を用いてカラムを洗浄した。その後、カラムの容積の6倍量の60%エタノール水溶液でステビオール配糖体組成物を溶出し、回収した。
【0162】
4.蒸発濃縮
遠心式薄膜真空蒸発装置エバポール(大川原製作所製)を用いて、溶液を蒸発濃縮しながらエタノールを除去した。次いで、エバポレーターを用い、2段階に分けて濃縮を実施しエタノールを除去した。蒸発濃縮処理後も水が残存しており、組成物は液状であった。
【0163】
得られたステビオール配糖体組成物をスプレードライして、粗精製物を得た。スプレードライ後の粗精製物の組成(単位:質量%)は以下のとおりである。
【表40】
【0164】
未変性アルコール99.9質量%グレードを用い、これに適宜水を添加して下記濃度および量のエタノールを調整した。
セパラブルフラスコに、エタノール溶媒を投入し、加熱した。
エタノール溶媒の温度が約71℃になったところで、容器に粗精製物と種晶を投入した。なお、RebDの過飽和度(10℃)は162.854、RebAの過飽和度(10℃)は0.793であった。
攪拌しながら、温度を下げた。
晶析終了後、固液分離を行った。固液分離に用いたフィルターは、アドバンテック製0.45umメンブレンフィルターであった。
得られた結晶を60-70℃で乾燥した。
なお、種晶添加率(Cs)は0.08であった。
【表41】
【0165】
一次晶析物におけるTSG(ここでは、RebA、RebB、RebC、RebD、ステビオシド、RebF、RebM、RebN、ズルコシドA、RebI、RebG、ルブソシド、ステビオビオシド、RebE)あたりの各ステビオール配糖体の割合(質量%)は、下記表のとおりであった。また、一次晶析までのRebDの単位工程収率は86.39質量%であった。一次晶析物におけるTSGの割合は97.4質量%であった。
【表42】
【0166】
下記表の条件を採用した点以外は、一次晶析と同様にして二次晶析を行った。温度プロファイルの詳細を図13に示す。なお、RebDの過飽和度(10℃)は342.254、RebAの過飽和度(10℃)は-0.47であった。
【表43】
【0167】
二次晶析物におけるTSGあたりの各ステビオール配糖体の割合は、下記表のとおりであった。また、二次晶析までのRebDの単位工程収率は98.9質量%であった。二次晶析物におけるTSGの割合は95.9質量%であった。
【表44】
【0168】
<実験例15>
実験例10と同様にして、抽出・固液分離を行った。乾燥葉中のTSGあたりの各ステビオール配糖体の割合(質量%)を、実験例10と同様にして測定したところ、下記表のとおりであった。
【表45】
【0169】
実験例10と同様にして、凝集、樹脂精製、蒸発濃縮工程を行った。得られたステビオール配糖体組成物をスプレードライして、粗精製物を得た。スプレードライ後の粗精製物のTSG(ここではRebA、RebB、RebC、RebD、ステビオシド、RebF、RebM、RebNの8種類)あたりの各ステビオール配糖体の割合(質量%)は以下のとおりである。粗精製物あたりのTSGの割合は95.75%であった。
【表46】
【0170】
下記表の条件を採用した点以外は、実験例9と同様にして晶析を行った。RebAの過飽和度(10℃)は5.7、RebDの過飽和度(10℃)は160.1であった。
【表47】
【0171】
下記表の条件を採用した点以外は、一次晶析と同様にして二次晶析を行った。
【表48】
【0172】
実験例10~12と同様にして、各種成分の純度、過飽和度、および、RebA単位工程収率・RebD単位工程収率を算出した。下記表に結果を示す。尚、下記表において純度が100%を超えているものがあるが、これは、残留溶媒による重量アップか、分析誤差が原因と考えられた。
【表49】
【表50】
【0173】
<実験例16>
実験例10と同様にして、抽出・固液分離を行った。乾燥葉中のTSGあたりの各ステビオール配糖体の割合(質量%)を、実験例10と同様にして測定したところ、下記表のとおりであった。
【表51】
【0174】
実験例10と同様にして、凝集、樹脂精製、蒸発濃縮工程を行った。得られたステビオール配糖体組成物をスプレードライして、粗精製物を得た。スプレードライ後の粗精製物の組成(質量%)は以下のとおりである。
【表52】
【0175】
下記表の条件を採用した点以外は、実験例9と同様にして一次晶析を行った。
【表53】
【0176】
下記表の条件を採用した点以外は、一次晶析と同様にして二次晶析を行った。
【表54】
【0177】
実験例10~12と同様にして、各種成分の純度、過飽和度、および、RebA単位工程収率・RebD単位工程収率を算出した。結果を下記表に示す。なお、下記表において、一部の純度が100%を超えているのは、残留溶媒による重量アップか、分析誤差が原因と考えられた。
【表55】
【表56】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13