(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022166212
(43)【公開日】2022-11-01
(54)【発明の名称】眼科手術用デバイス及び方法
(51)【国際特許分類】
A61F 9/007 20060101AFI20221025BHJP
【FI】
A61F9/007 130B
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022130245
(22)【出願日】2022-08-17
(62)【分割の表示】P 2019559693の分割
【原出願日】2018-05-03
(31)【優先権主張番号】62/597,826
(32)【優先日】2017-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/501,710
(32)【優先日】2017-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519152940
【氏名又は名称】カール・ツァイス・メディテック・キャタラクト・テクノロジー・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Carl Zeiss Meditec Cataract Technology Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(72)【発明者】
【氏名】ルーク・ダブリュー・クラウゾン
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・ピー・シャラー
(72)【発明者】
【氏名】スコット・チャムネス
(72)【発明者】
【氏名】ブレンダン・リース
(57)【要約】 (修正有)
【課題】眼内手術中の水晶体及び他の組織の眼内の断片化及び除去のための方法及びデバイスを提供する。
【解決手段】眼科処置を実行するためのデバイス2は、ハンドヘルド部分と、ハンドヘルド部分に連結され、真空源に動作可能に連結されたルーメン6を含む遠位の細長い部材を含む。細長い部材に動作可能に連結された駆動機構は、細長い部材を振動させるように構成されている。使用中、デバイスは、眼からルーメンを通して眼科物質を吸引するように構成されている。駆動機構は、引き込み速度プロファイルで細長い部材を近位方向に引き込み、伸長速度プロファイルで細長い部材を遠位方向に前進させる。引き込み速度プロファイルは、伸長速度プロファイルと異なる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼内で眼科処置を実行するためのデバイスであって、
ハンドヘルド部分と、
前記ハンドヘルド部分に連結された遠位の細長い部材であって、真空源に動作可能に連結されたルーメンを含む遠位の細長い部材と、
前記細長い部材に動作可能に連結され、前記細長い部材を振動させるように構成された駆動機構とを含み、
使用中、前記眼から前記ルーメンを通して眼科物質を吸引するように構成され、
使用中、前記駆動機構は、引き込み速度プロファイルで前記細長い部材を近位方向に引き込み、伸長速度プロファイルで前記細長い部材を遠位方向に前進させることができ、更に、前記引き込み速度プロファイルは、前記伸長速度プロファイルと異なる、デバイス。
【請求項2】
前記引き込み速度プロファイルからの前記細長い部材の平均引き込み速度は、前記伸長速度プロファイルからの前記細長い部材の平均伸長速度よりも小さい、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記細長い部材に動作可能に連結された前記駆動機構は、前記細長い部材を非対称的に振動させるように構成される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記伸長速度プロファイルは、最大伸長速度を含み、前記引き込み速度プロファイルは、最大引き込み速度を含み、更に前記最大引き込み速度は、前記最大伸長速度よりも小さい、請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
前記細長い部材の前記最大引き込み速度は、キャビテーション気泡が前記眼内に生成される閾値速度未満である、請求項4に記載のデバイス。
【請求項6】
前記細長い部材の遠位先端部は、移動距離を画定するために、前記ハンドヘルド部分に対して完全に引き込まれた構成から完全に伸長した構成に移動するように構成される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記移動距離は、約0.05mmから1.0mmの間である、請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
吸引のパルスは、前記細長い部材が前記遠位方向に前進するときに、前記移動距離の少なくとも一部の途中で、前記細長い部材の前記ルーメンを通して引き出される、請求項6に記載のデバイス。
【請求項9】
吸引のパルスは、前記細長い部材が前記近位方向に引っ込むときに、前記移動距離の少なくとも一部の途中で、前記細長い部材の前記ルーメンを通して引き出される、請求項6に記載のデバイス。
【請求項10】
前記移動距離を調整するように構成されたアクチュエータを更に備える、請求項6に記載のデバイス。
【請求項11】
前記アクチュエータは、使用者によって機械的に調整されるように構成される、請求項10に記載のデバイス。
【請求項12】
前記デバイスは、使用者の入力に応答する制御プロセッサを更に備え、前記制御プロセッサは、前記駆動機構の1つ以上の態様を制御する、請求項6に記載のデバイス。
【請求項13】
前記1つ以上の態様は、前記移動距離、吸引パルス周波数、又は伸長及び引き込みサイクルの周波数を含む、請求項12に記載のデバイス。
【請求項14】
前記制御プロセッサは、プログラム可能であり、使用者の入力を受け入れて、前記伸長速度プロファイル及び前記引き込み速度プロファイルのうちの少なくとも1つの態様を調整する、請求項12に記載のデバイス。
【請求項15】
前記制御プロセッサは、プログラム可能であり、使用者の入力を受け入れて、最大伸長速度及び最大引き込み速度のうちの少なくとも1つを調整する、請求項12に記載のデバイス。
【請求項16】
前記制御プロセッサは、プログラム可能であり、使用者の入力を受け入れて、引き込み速度制限を設定する、請求項12に記載のデバイス。
【請求項17】
前記制御プロセッサは、プログラム可能であり、前記デバイスでの入力によってプログラムされるように構成される、請求項12に記載のデバイス。
【請求項18】
前記制御プロセッサは、プログラム可能であり、外部コンピューティングデバイスによって遠隔でプログラムされるように構成される、請求項12に記載のデバイス。
【請求項19】
前記制御プロセッサは、メモリに保存されたプログラム命令に従って動作し、前記プログラム命令は、前記細長い部材の前記伸長速度プロファイル及び前記細長い部材の前記引き込み速度プロファイルのうちの少なくとも一方を規定する、請求項12に記載のデバイス。
【請求項20】
前記プログラム命令を保存する前記メモリは、水晶体超音波乳化吸引システムの一部を含む、請求項19に記載のデバイス。
【請求項21】
前記細長い部材の前記伸長速度プロファイル及び前記細長い部材の前記引き込み速度プロファイルのうちの少なくとも一方は、ハードウェアへの1つ以上の変更を通じて調整可能であり、前記ハードウェアは前記制御プロセッサと動作可能に通信する、請求項12に記載のデバイス。
【請求項22】
前記ハードウェアは、水晶体超音波乳化吸引システムの一部を含む、請求項21に記載のデバイス。
【請求項23】
前記駆動機構は、空気圧式、電磁式、圧電式、又は機械式である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項24】
前記駆動機構は、前記細長い部材の非正弦運動パターンを形成する電圧周波数に従って前記細長い部材を振動させるように構成された圧電素子を備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項25】
前記圧電素子に送信される前記電圧周波数は、略非正弦波形を有する、請求項24に記載のデバイス。
【請求項26】
前記圧電素子に送信される前記電圧周波数は、略非正弦波形を形成する干渉を生成するように構成された2つ以上の重なり合う正弦波形を含む、請求項24に記載のデバイス。
【請求項27】
前記電圧周波数は、前記電圧周波数により前記圧電素子が膨張し得るよりも遅く前記圧電素子を収縮させる、請求項24に記載のデバイス。
【請求項28】
前記駆動機構は、前記細長い部材に動作可能に連結されたカム機構を備え、
前記カム機構の第1の量の回転は、前記引き込み速度プロファイルに沿って前記近位方向に前記細長い部材を引き込むように構成され、
前記カム機構の第2の量の回転は、前記伸長速度プロファイルに沿って前記遠位方向に前記細長い部材を前進させるように構成される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項29】
前記引き込み速度プロファイルは、少なくとも部分的に、前記カム機構の回転速度の関数である、請求項28に記載のデバイス。
【請求項30】
前記駆動機構は、前記カム機構によって圧縮されるように構成されたバネを更に備え、前記カム機構の前記第1の量の回転は、前記バネを圧縮し、前記カム機構の前記第2の量の回転は、前記バネを圧縮から解放する、請求項28に記載のデバイス。
【請求項31】
前記伸長速度プロファイルは、前記バネの力と内側の細長い部材の質量の関数である、請求項30に記載のデバイス。
【請求項32】
前記細長い部材は、壁と、前記壁を貫通するポートとを備え、前記ポートは切断面を有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項33】
前記細長い部材は、切断先端部を備える、請求項1に記載のデバイス。
【請求項34】
前記切断先端部に斜角が付けられている、請求項33に記載のデバイス。
【請求項35】
前記切断先端部は、第1の寸法を有する前記ルーメンからの遠位開口部を備え、前記第1の寸法は、前記細長い部材の前記ルーメンの第2の内側断面寸法よりも小さい、請求項33に記載のデバイス。
【請求項36】
前記切断先端部の前記遠位開口部は、第1の領域を有し、前記第1の領域は、前記細長い部材の前記ルーメンの第2の内部断面積よりも小さい、請求項35に記載のデバイス。
【請求項37】
外側チューブルーメンを含む外側チューブを更に備え、前記細長い部材は、前記外側チューブルーメン内に配置される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項38】
前記眼科物質は、前記外側チューブルーメンを通して吸引される、請求項37に記載のデバイス。
【請求項39】
前記眼科物質は、前記外側チューブルーメン及び前記細長い部材の前記ルーメンの両方を通して吸引される、請求項37に記載のデバイス。
【請求項40】
最外チューブルーメンを含む最外チューブを更に備え、前記外側チューブは、前記最外チューブルーメン内に配置される、請求項37に記載のデバイス。
【請求項41】
前記最外チューブは、灌注液を前記眼に送達するための1つ以上のポートを含む、請求項40に記載のデバイス。
【請求項42】
前記最外チューブが弾性物質を含む、請求項40に記載のデバイス。
【請求項43】
前記細長い部材は、前記細長い部材の長手方向軸に沿って繰り返し前進し及び引き込まれることができる、請求項1に記載のデバイス。
【請求項44】
前記細長い部材は、前記細長い部材の長手方向軸に対して楕円経路に沿って繰り返し前進し及び引き込まれることができる、請求項1に記載のデバイス。
【請求項45】
前記細長い部材は、前記細長い部材の長手方向軸に対して非直線経路に沿って繰り返し前進し及び引き込まれることができる、請求項1に記載のデバイス。
【請求項46】
前記非直線経路は曲線状である、請求項45に記載のデバイス。
【請求項47】
前記非直線経路は楕円形である、請求項45に記載のデバイス。
【請求項48】
前記細長い部材は、ねじり振動する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項49】
前記伸長速度プロファイルは、ねじり振動によって生成される第1の角回転速度プロファイルを含み、前記引き込み速度プロファイルは、第2の異なる角回転速度プロファイルを含む、請求項48に記載のデバイス。
【請求項50】
前記真空源は、前記細長い部材の前記ルーメンの遠位部分にパルス真空を送達する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項51】
前記真空源は、前記ハンドヘルド部分のハウジング内に配置される、請求項50に記載のデバイス。
【請求項52】
前記真空源は、前記ハンドヘルド部分のハウジング上に配置される、請求項50に記載のデバイス。
【請求項53】
前記駆動機構は、前記真空源が前記パルス真空を送達する間、前記細長い部材を繰り返し前進し及び引っ込む、請求項50に記載のデバイス。
【請求項54】
前記細長い部材が1回の前進及び1回の引き込みの単一サイクルを完了した後、前記真空源は、少なくとも1つの真空パルスを前記ルーメンの前記遠位部分に送達する、請求項50に記載のデバイス。
【請求項55】
前記細長い部材が1回の前進及び1回の引き込みの単一サイクルを経由するとき、前記真空源が複数の真空パルスを前記ルーメンの前記遠位部分に送達する、請求項50に記載のデバイス。
【請求項56】
各真空パルスの後に、正圧逆流のパルスを生成する、請求項50に記載のデバイス。
【請求項57】
前記細長い部材が1回の前進及び1回の引き込みの振動サイクルを経由するとき、前記真空源は、少なくとも1つの真空パルスを前記ルーメンの前記遠位部分に送達する、請求項50に記載のデバイス。
【請求項58】
前記細長い部材が前記振動サイクル中に引っ込むときに、前記真空源は、少なくとも1つの真空パルスを前記ルーメンの前記遠位部分に送達する、請求項57に記載のデバイス。
【請求項59】
前記細長い部材が前記振動サイクル中に前進するときに、前記真空源は、少なくとも1つの真空パルスを前記ルーメンの前記遠位部分に送達する、請求項57に記載のデバイス。
【請求項60】
前記眼科物質は、断片化された水晶体物質又は乳化された水晶体物質のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項61】
前記眼科物質は、硝子体物質を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項62】
前記駆動機構は、超音波である振動周波数で前記細長い部材を振動させるように構成される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項63】
前記駆動機構は、約20,000Hzよりも大きい振動周波数で前記細長い部材を振動させるように構成される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項64】
前記駆動機構は、約0.5Hzから約5000Hzの間の振動周波数で前記細長い部材を振動させるように構成される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項65】
前記振動周波数は、制御プロセッサへの入力を介して使用者によって選択可能であり、前記制御プロセッサは、前記駆動機構と動作可能に通信する、請求項64に記載のデバイス。
【請求項66】
眼内で眼科処置を実行するための方法であって、
デバイスの遠位部分を前記眼の前房に挿入するステップであって、前記デバイスは、
不連続な負圧のパルスを生成し、不連続な正圧のパルスを生成するように構成された真空源を含むハンドヘルド部分であって、前記不連続な負圧のパルスは、前記不連続な正圧のパルスによって分散され、周波数を有する、ハンドヘルド部分と、
前記ハンドヘルド部分に連結され、前記遠位部分の一部を形成する遠位の細長い部材であって、細長いシャフトの遠位端領域に内側ルーメン及び開口部を有する細長い部材と、を更に含む、ステップと、
前記デバイスの前記遠位部分で前記眼の水晶体にアクセスするステップと、
前記デバイスを作動させて、前記細長い部材の前記内側ルーメンを通る前記不連続な負圧のパルスを生成し、前記周波数で前記開口部を介して第1の量の物質を前記内側ルーメン内に吸引するとともに、前記不連続な負圧のパルスが散在する前記不連続な正圧のパルスを生成し、前記内側ルーメンから前記開口部を通って第2の量の物質を前記周波数で放出するステップと、を含み、
前記第2の量は、前記第1の量よりも実質的に少ない、方法。
【請求項67】
眼内で眼科処置を実行するためのデバイスであって、
ハンドヘルド部分と、
前記ハンドヘルド部分に連結された遠位の細長い部材であって、前記細長い部分の遠位端領域にルーメン及び開口部を含む遠位の細長い部材と、
前記細長い部材の前記遠位端領域の前記開口部と流体連通する真空源とを含み、
前記真空源は、前記ルーメンの前記遠位端領域に不連続な負圧のパルスを送達するように構成される、デバイス。
【請求項68】
前記真空源は、前記ハンドヘルド部分の内部に配置されたポンプを備える、請求項67に記載のデバイス。
【請求項69】
前記ポンプは、
入口開口部及び出口開口部を有する少なくとも1つのポンピングチャンバであって、前記入口開口部が前記細長い部材の前記ルーメンと流体連通する、少なくとも1つのポンピングチャンバと、
前記少なくとも1つのポンピングチャンバ内に配置されたピストンと、
前記少なくとも1つのポンピングチャンバ内の前記ピストンを振動させて、前記不連続な負圧のパルスを生成するように構成される駆動機構とを含む、請求項68に記載のデバイス。
【請求項70】
前記負圧は、10inHgから約30inHgまでである、請求項67に記載のデバイス。
【請求項71】
前記不連続な負圧のパルスは、約1Hzから約100Hzの間のサイクリング周波数を有する、請求項67に記載のデバイス。
【請求項72】
第1の負圧のパルスは、入口開口部を介して、前記ハンドヘルド部分内に配置された少なくとも1つのポンピングチャンバに、前記細長い部材の前記ルーメンから第1の量の流体を引き込み、前記少なくとも1つのポンピングチャンバ内の第1の正圧のパルスは、前記第1の量の流体を前記少なくとも1つのポンピングチャンバから出口開口部を通して排出する、請求項67に記載のデバイス。
【請求項73】
前記第1の量の流体の体積は、約0.1mLと約1.0mLとの間である、請求項72に記載のデバイス。
【請求項74】
前記少なくとも1つのポンピングチャンバ内の第1の方向へのピストンの動きは、前記第1の負圧のパルスを生成し、第2の反対方向への前記ピストンの動きは、前記第1の正圧のパルスを生成する、請求項72に記載のデバイス。
【請求項75】
前記入口開口部内に配置されたコンプライアンス性の弁を更に備える、請求項74に記載のデバイス。
【請求項76】
前記第2の反対方向への第2の距離の前記ピストンの動きは、前記入口開口部を密閉し、前記コンプライアンス性の弁を介して前記細長い部材の前記ルーメンに前記第1の正圧のパルスの量を伝送する、請求項75に記載のデバイス。
【請求項77】
伝送された前記量により、第2の量の流体が前記細長い部材の前記遠位端領域の前記開口部から排出される、請求項76に記載のデバイス。
【請求項78】
前記出口開口部は、弁によって調節される、請求項72に記載のデバイス。
【請求項79】
前記弁は、ボール型逆止弁である、請求項78に記載のデバイス。
【請求項80】
前記出口開口部は、排出チャンバと流体連通している、請求項78に記載のデバイス。
【請求項81】
前記細長い部材に動作可能に連結され、前記細長い部材を振動させるように構成された駆動機構を更に備える、請求項67に記載のデバイス。
【請求項82】
使用中、前記駆動機構は、引き込み速度プロファイルで前記細長い部材を近位方向に引き込み、伸長速度プロファイルで前記細長い部材を遠位方向に前進させることができ、更に前記引き込み速度プロファイルが前記伸長速度プロファイルと異なる、請求項81に記載のデバイス。
【請求項83】
前記引き込み速度プロファイルからの前記細長い部材の平均引き込み速度は、前記伸長速度プロファイルからの前記細長い部材の平均伸長速度よりも小さい、請求項82に記載のデバイス。
【請求項84】
前記細長い部材に動作可能に連結された前記駆動機構は、前記細長い部材を非対称的に振動させるように構成される、請求項81に記載のデバイス。
【請求項85】
伸長速度プロファイルは最大伸長速度を含み、前記引き込み速度プロファイルは最大引き込み速度を含み、更に前記最大引き込み速度は前記最大伸長速度よりも小さい、請求項84に記載のデバイス。
【請求項86】
前記細長い部材の前記最大引き込み速度は、キャビテーション気泡が前記眼内に生成される閾値速度未満である、請求項82に記載のデバイス。
【請求項87】
前記細長い部材の遠位先端部は、移動距離を画定するために、前記ハンドヘルド部分に対して完全に引き込まれた構成から完全に伸長した構成に移動するように構成される、請求項82に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2017年5月4日に出願された同時係属中の米国仮特許出願第62/501,710号及び2017年12月12日に出願された同62/597,826号の優先権を主張する。仮出願の開示は、その全体が参照により組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本技術は、一般に、眼科手術用デバイス及び方法に関し、そのような処置の1つは、ヒトの眼からの水晶体の除去である。より具体的には、本技術は、眼科手術における水晶体組織又は他の組織の断片化、捕捉、及び摘出に関する。
【背景技術】
【0003】
ある特定のタイプの従来の眼科手術では、眼から摘出できるように、水晶体組織と眼内水晶体などの固体眼内物体を断片に分割する必要がある。例えば、白内障手術のための水晶体の摘出は、最も一般的な外来手術分野の1つであり、米国だけで年間300万件以上が行われている。白内障手術中に一般的に使用される水晶体摘出方法は水晶体超音波乳化吸引術(phacoemulsification)であり、水晶体超音波乳化吸引術は、超音波エネルギーを使用して水晶体を破壊して、その後吸引して水晶体の破片を器具から除去することを含む。水晶体の断片化と摘出の他の方法としては、フック、ナイフ、又はレーザーなどの器具を使用して水晶体を断片に分割し、その後、ab interno法で角膜の切開部から摘出する方法を挙げることができる。白内障手術では、通常2.8~3.0mmを超えない眼の切開部から白内障を除去できるようにするため、水晶体組織の眼内のab interno断片化が非常に重要である。
【0004】
一部の水晶体摘出技術の欠点は、特に水晶体超音波乳化吸引術の使用に伴う水晶体の吸引による望ましくない合併症である。水晶体超音波乳化吸引術中の超音波エネルギーと量が多いことは乱流を発生させる可能性があり、角膜内皮などの眼内の組織に有害な影響を与える可能性がある。
【0005】
更に、ある特定の吸引と吸気の構成には、水晶体超音波乳化吸引術の場合のように大きな資本設備が必要であるか、又は、すべての手術環境、特に未開発の地域では利用できない壁の真空といった特定のリソースが必要な場合がある。従来の吸引デバイスは、独立したチューブ又はカニューレであっても、水晶体超音波乳化吸引ユニット(「水晶体超音波乳化吸引システム」)などの別のデバイスと関連付けられていてもよい。水晶体システムの流量制御と圧力制御には、通常、メインコンソールによる電子制御が必要である。ハンドピースからメインコンソールまで延びる吸引ラインを有するハンドピースが使用される。また、ハンドピースは、通常、単純な重力供給又はコンソールに取り付けられた流体バッグ/カートリッジを備えたメインコンソールによって制御される流れによって駆動される吸気を伴う吸気ラインも有する。
【0006】
水晶体デバイス及びリモート真空源を使用する他のデバイスの別の問題は、吸引ラインが長いことである。これは、ガスや圧縮性組織など、処置中に圧縮性物質が含まれることが多いことを意味する。圧縮性物質の長い吸引ラインは、吸引のオンとオフを切り替えるときに先端での吸引の応答性に影響する。応答性の問題は、吸引を開始及び停止するときの圧力の変化にも応答する手動で変形可能/コンプライアンス性のホース及びラインによって悪化し、先端での吸引の開始と終了を更に遅らせる。いくつかのシステムの更に別の問題は、廃棄エンクロージャも真空圧に曝されているため、容器とその中のガス又は他の圧縮性物質も圧力の変化に反応し、先端での吸引の開始と終了の遅延を更に促し、いくつかのシステムの低応答性の一因となる。
【0007】
眼から物質を吸引する従来の方法及びデバイスに関する更に別の問題は、処置中に吸引開口部が容易に詰まる可能性があることである。吸引を停止し、必要に応じて、眼の中の別の器具で物質を個別に除去しなければならない。処置を停止し、遠位開口部の詰まりを取り除く必要があるため、処置時間が長くなり、眼内の器具を不要に操作する必要がある。
【0008】
一部のデバイスの最後の問題は、システムのコストと複雑さである。コストのかかる制御コンソールと電子制御システムを必要としないものなど、パフォーマンスが同じかより良い低コストの代替品も望ましい代替品となる。
【発明の概要】
【0009】
一態様では、眼内で眼科処置を実行するためのデバイスが説明される。本デバイスは、ハンドヘルド部分と、ハンドヘルド部分に連結された遠位の細長い部材とを含む。遠位の細長い部材は、真空源に動作可能に連結されたルーメンを含む。本デバイスは、細長い部材に動作可能に連結され、細長い部材を振動させるように構成された駆動機構を含む。使用中、本デバイスは、眼からルーメンを通して眼科物質を吸引するように構成され、駆動機構は、引き込み速度プロファイルで細長い部材を近位方向に引き込み、伸長速度プロファイルで細長い部材を遠位方向に前進させることができる。引き込み速度プロファイルは、伸長速度プロファイルと異なる。
【0010】
引き込み速度プロファイルからの細長い部材の平均引き込み速度は、伸長速度プロファイルからの細長い部材の平均伸長速度よりも小さくてもよい。細長い部材に動作可能に連結された駆動機構は、細長い部材を非対称的に振動させるように構成されてもよい。伸長速度プロファイルは、最大伸長速度を含むことができ、引き込み速度プロファイルは、最大引き込み速度を含むことができる。最大引き込み速度は、最大伸長速度より小さくてもよい。細長い部材の最大引き込み速度は、キャビテーション気泡が眼内に生成される閾値速度未満であることができる。
【0011】
細長い部材の遠位先端部は、移動距離を画定するために、ハンドヘルド部分に対して完全に引き込まれた構成から完全に伸長した構成に移動するように構成されてもよい。移動距離は、約0.05mmから1.0mmの間であることができる。吸引のパルスは、細長い部材が遠位方向に前進するときに、移動距離の少なくとも一部の途中で、細長い部材のルーメンを通して引き出されてもよい。吸引のパルスは、細長い部材が近位方向に引っ込むときに、移動距離の少なくとも一部の途中で、細長い部材のルーメンを通して引き出されてもよい。本デバイスは、移動距離を調整するように構成されたアクチュエータを更に備えてもよい。アクチュエータは、使用者によって機械的に調整されるように構成されてもよい。
【0012】
本デバイスは、使用者の入力に応答する制御プロセッサを更に備える。制御プロセッサは、駆動機構の1つ以上の態様を制御することができる。1つ以上の態様は、移動距離、吸引パルス周波数、又は伸長及び引き込みサイクルの周波数を含むことができる。制御プロセッサは、プログラム可能であり、使用者の入力を受け入れて、伸長速度プロファイル及び引き込み速度プロファイルのうちの少なくとも1つの態様を調整することができる。制御プロセッサは、プログラム可能であり、使用者の入力を受け入れて、最大伸長速度及び最大引き込み速度のうちの少なくとも1つを調整することができる。制御プロセッサは、プログラム可能であり、使用者の入力を受け入れて、引き込み速度制限を設定することができる。制御プロセッサは、プログラム可能であり、デバイスでの入力によってプログラムされるように構成されてもよい。制御プロセッサは、プログラム可能であり、外部コンピューティングデバイスによって遠隔でプログラムされるように構成されてもよい。制御プロセッサは、メモリに保存されたプログラム命令に従って動作することができ、プログラム命令は、細長い部材の伸長速度プロファイル及び細長い部材の引き込み速度プロファイルのうちの少なくとも一方を規定する。プログラム命令を保存するメモリは、水晶体超音波乳化吸引システムの一部を含むことができる。細長い部材の伸長速度プロファイル及び細長い部材の引き込み速度プロファイルのうちの少なくとも一方は、ハードウェアへの1つ以上の変更を通じて調整可能であり、ハードウェアは制御プロセッサと動作可能に通信することができる。ハードウェアは、水晶体超音波乳化吸引システムの一部を含むことができる。
【0013】
駆動機構は、空気圧式、電磁式、圧電式、又は機械式であってもよい。駆動機構は、細長い部材の非正弦運動パターンを形成する電圧周波数に従って細長い部材を振動させるように構成された圧電素子を含むことができる。圧電素子に送信される電圧周波数は、略非正弦波形を有することができる。圧電素子に送信される電圧周波数は、略非正弦波形を形成する干渉を生成するように構成された2つ以上の重なり合う正弦波形を含むことができる。電圧周波数は、電圧周波数により圧電素子が膨張し得るよりも遅く圧電素子を収縮させることができる。
【0014】
駆動機構は、細長い部材に動作可能に連結されたカム機構を含むことができる。カム機構の第1の量の回転は、引き込み速度プロファイルに沿って近位方向に細長い部材を引き込むことができる。カム機構の第2の量の回転は、伸長速度プロファイルに沿って遠位方向に細長い部材を前進させることができる。引き込み速度プロファイルは、少なくとも部分的に、カム機構の回転速度の関数であってもよい。駆動機構は、カム機構によって圧縮されるように構成されたバネを更に含むことができる。カム機構の第1の量の回転は、バネを圧縮し、カム機構の第2の量の回転は、バネを圧縮から解放することができる。伸長速度プロファイルは、バネの力と内側の細長い部材の質量の関数であることができる。
【0015】
細長い部材は、壁と、壁を貫通するポートとを含むことができ、ポートは切断面を有してもよい。細長い部材は、切断先端部を含むことができる。切断先端部には斜角が付けられてもよい。切断先端部は、第1の寸法を有するルーメンからの遠位開口部を含むことができ、第1の寸法は、細長い部材のルーメンの第2の内側断面寸法よりも小さい。切断先端部の遠位開口部は、第1の領域を有することができ、第1の領域は、細長い部材のルーメンの第2の内部断面積よりも小さい。
【0016】
本デバイスは、外側チューブルーメンを含む外側チューブを更に含むことができる。細長い部材は、外側チューブルーメン内に配置されてもよい。眼科物質は、外側チューブルーメンを通して吸引されてもよい。眼科物質は、外側チューブルーメン及び細長い部材のルーメンの両方を通して吸引されてもよい。本デバイスは、最外チューブルーメンを含む最外チューブを更に含むことができる。外側チューブは、最外チューブルーメン内に配置されてもよい。最外チューブは、灌注液を眼に送達するための1つ以上のポートを含むことができる。最外チューブが弾性物質を含むことができる。
【0017】
細長い部材は、細長い部材の長手方向軸に沿って繰り返し前進し及び引き込まれることができる。細長い部材は、細長い部材の長手方向軸に対して楕円経路に沿って繰り返し前進し及び引き込まれることができる。細長い部材は、細長い部材の長手方向軸に対して非直線経路に沿って繰り返し前進し及び引き込まれることができる。非直線経路は、曲線状であることができる。非直線経路は、楕円形であることができる。細長い部材は、ねじり振動する(torsionally oscillated)ことができる。伸長速度プロファイルは、ねじり振動によって生成される第1の角回転速度プロファイルを含むことができる。引き込み速度プロファイルは、第2の異なる角回転速度プロファイルを含むことができる。
【0018】
真空源は、細長い部材のルーメンの遠位部分にパルス真空(pulsed vacuum)を送達することができる。真空源は、ハンドヘルド部分のハウジング内に配置されてもよい。真空源は、ハンドヘルド部分のハウジング上に配置されてもよい。駆動機構は、真空源がパルス真空を送達する間、細長い部材を繰り返し前進し及び引っ込むことができる。細長い部材が1回の前進及び1回の引き込みの単一サイクルを完了すると、真空源は、少なくとも1つの真空パルスをルーメンの遠位部分に送達することができる。細長い部材が1回の前進及び1回の引き込みの単一サイクルを経由するとき、真空源は、複数の真空パルスをルーメンの遠位部分に送達することができる。各真空パルスの後に、本デバイスは、正圧逆流のパルスを生成することができる。細長い部材が1回の前進及び1回の引き込みの振動サイクルを経由するとき、真空源は、少なくとも1つの真空パルスをルーメンの遠位部分に送達することができる。細長い部材が振動サイクル中に引っ込むときに、真空源は、少なくとも1つの真空パルスをルーメンの遠位部分に送達することができる。細長い部材が振動サイクル中に前進するときに、真空源は、少なくとも1つの真空パルスをルーメンの遠位部分に送達することができる。
【0019】
眼科物質は、断片化された水晶体物質又は乳化された水晶体物質のうちの少なくとも1つを含むことができる。眼科物質は、硝子体物質を含むことができる。駆動機構は、超音波である振動周波数で細長い部材を振動させるように構成されてもよい。駆動機構は、約20,000Hzよりも大きい振動周波数で細長い部材を振動させるように構成されてもよい。駆動機構は、約0.5Hzから約5000Hzの間の振動周波数で細長い部材を振動させるように構成されてもよい。振動周波数は、制御プロセッサへの入力を介して使用者によって選択可能であり、制御プロセッサは、駆動機構と動作可能に通信する。
【0020】
相互に関連する態様では、眼内で眼科処置を実行するための方法が説明される。本方法は、デバイスの遠位部分を眼の前房に挿入するステップと、デバイスの遠位部分で眼の水晶体にアクセスするステップとを含む。本デバイスは、不連続な負圧のパルスを生成し、不連続な正圧のパルスを生成するように構成された真空源を有するハンドヘルド部分を含む。不連続な負圧のパルスは、不連続な正圧のパルスによって分散され、かつ、周波数を有する。本デバイスは、ハンドヘルド部分に連結され、遠位部分の一部を形成する遠位の細長い部材を含む。細長い部材は、細長いシャフトの遠位端領域に内側ルーメン及び開口部を有する。本方法は、本デバイスを作動させて、細長い部材の内側ルーメンを通る不連続な負圧のパルスを生成し、周波数で開口部を介して第1の量の物質を内側ルーメン内に吸引するとともに、不連続な負圧のパルスが散在する不連続な正圧のパルスを生成し、内側ルーメンから開口部を通って第2の量の物質を周波数で放出するステップを更に含む。第2の量は、第1の量よりも実質的に少ない。
【0021】
相互に関連する態様では、ハンドヘルド部分と、ハンドヘルド部分に連結された遠位の細長い部材とを含む、眼内で眼科処置を実行するためのデバイスが説明される。遠位の細長い部材は、細長い部分の遠位端領域にルーメンと開口部とを含む。本デバイスは、細長い部材の遠位端領域の開口部と流体連通する真空源を含む。真空源は、ルーメンの遠位端領域に不連続な負圧のパルスを送達するように構成される。
【0022】
真空源は、ハンドヘルド部分の内部に配置されたポンプを含むことができる。ポンプは、入口開口部と出口開口部とを有する少なくとも1つのポンピングチャンバを含むことができ、入口開口部は、細長い部材のルーメンと流体連通する。ポンプは、少なくとも1つのポンピングチャンバ内に配置されたピストンと、少なくとも1つのポンピングチャンバ内のピストンを振動させて、不連続な負圧のパルスを生成するように構成される駆動機構とを含むことができる。負圧は、10inHgから約30inHgまでであることができる。不連続な負圧のパルスは、約1Hzから約100Hzの間のサイクリング周波数を有することができる。第1の負圧のパルスは、入口開口部を介して、ハンドヘルド部分内に配置された少なくとも1つのポンピングチャンバに、細長い部材のルーメンから第1の量の流体を引き込むことができる。少なくとも1つのポンピングチャンバ内の第1の正圧のパルスは、第1の量の流体を少なくとも1つのポンピングチャンバから出口開口部を通して排出することができる。第1の量の流体の体積は、約0.1mLから約1.0mLまでであることができる。少なくとも1つのポンピングチャンバ内の第1の方向へのピストンの動きは、第1の負圧のパルスを生成することができる。第2の反対方向へのピストンの動きは、第1の正圧のパルスを生成することができる。コンプライアンス性の弁は、入口開口部内に配置されてもよい。第2の反対方向への第2の距離のピストンの動きは、入口開口部を密閉し、コンプライアンス性の弁を介して細長い部材のルーメンに第1の正圧のパルスの量を伝送することができる。伝送された量により、第2の量の流体が細長い部材の遠位端領域の開口部から排出されてもよい。出口開口部は、弁によって調節されてもよい。弁は、ボール型逆止弁であることができる。出口開口部は、排出チャンバと流体連通していてもよい。
【0023】
本デバイスは、細長い部材に動作可能に連結され、細長い部材を振動させるように構成された駆動機構を更に含んでもよい。使用中、駆動機構は、引き込み速度プロファイルで細長い部材を近位方向に引き込み、伸長速度プロファイルで細長い部材を遠位方向に前進させることができる。引き込み速度プロファイルは、伸長速度プロファイルと異なっていてもよい。引き込み速度プロファイルからの細長い部材の平均引き込み速度は、伸長速度プロファイルからの細長い部材の平均伸長速度より小さくてもよい。細長い部材に動作可能に連結された駆動機構は、細長い部材を非対称的に振動させるように構成されることができる。伸長速度プロファイルは、最大伸長速度を含むことができ、引き込み速度プロファイルは、最大引き込み速度を含むことができる。最大引き込み速度は、最大伸長速度より小さくてもよい。細長い部材の最大引き込み速度は、キャビテーション気泡が眼内に生成される閾値速度未満であってもよい。細長い部材の遠位先端部は、移動距離を画定するために、ハンドヘルド部分に対して完全に引き込まれた構成から完全に伸長した構成に移動するように構成されることができる。
【0024】
いくつかの変形形態では、上記の方法、装置、デバイス、及びシステムの任意の実行可能な組み合わせに、以下の1つ以上を任意選択で含めることができる。方法、装置、デバイス、及びシステムの詳細は、添付の図面及び以下の説明に記載されている。他の特徴及び利点は、説明及び図面から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
これからこれら及び他の態様を、以下の図面を参照して詳細に説明する。一般的に言えば、これらの図は、絶対的な意味でも比較的にも縮尺通りではなく、例示を目的としている。また、特徴及び要素の相対的な配置は、例示を明確にするために修正されている場合がある。
【0026】
【
図1】物質を吸引するためのデバイスを示す図である。
【
図2】物質を吸引するための別のデバイスを示す図である。
【
図3A】物質を吸引するための更に別のデバイスを示す図である。
【
図3B】ベローズを使用した代替吸引源を示す図である。
【
図4】ベンチャーを使用した更に別の吸引デバイスを示す図である。
【
図5】吸引源としてブラダを有する更に別の吸引デバイスを示す図である。
【
図6A】シャフトの開口部を覆い、点線位置の収納位置にある流量リストリクタを示す図である。
【
図6B】点線の位置が作業位置を示している、シャフトに対して長手方向に移動可能な流量リストリクタを示す図である。
【
図6C】Y字形アームを有する代替シャフトを示す図である。
【
図8A】シャフトのルーメン内の収縮位置にある組織マニピュレータを示す図である。
【
図8B】ループ間に伸びるフィラメントで拡張された組織マニピュレータを示す図である。
【
図8C】フィラメントが除去されたループの別の図である。
【
図9】一体的に形成された中間要素を備えた別の組織マニピュレータを示す図である。
【
図10】一体的に形成された中間要素を備えた別の組織マニピュレータを示す図である。
【
図11】ループ内に網状物質を有する更に別の組織マニピュレータを示す図である。
【
図12】一体的に形成された凹状要素を備えたループを有する更に別の組織マニピュレータを示す図である。
【
図13】回転カッターを備えた更に別の組織マニピュレータを示す図である。
【
図14】網状物質を備えた別の組織マニピュレータを示す図である。
【
図15】更に別の組織マニピュレータを示す図である。
【
図16】2つの対向するバスケットを有する組織マニピュレータを示す図である。
【
図17】入れ子位置にある対向するバスケットを示す図である。
【
図18A】眼の中の物質を切断するためのデバイスを示す図である。
【
図18C】デバイスによって形成されたループを拡張するように変形した細長い要素を備えた
図18Aのデバイスを示す図である。
【
図19】完全に拡張されて水晶体嚢内に配置され、ループが拡張されたときに水晶体嚢と水晶体との間を前進する
図18A~18Dのデバイスを示す図である。
【
図20A】収縮位置にある別の切断デバイスを示す図である。
【
図20B】シャフトの近位端に対して遠位端が向きを変えて部分的に拡張された
図20Aのデバイスを示す図である。
【
図20C】遠位に前進するデバイスによって形成されるループを示す図である。
【
図21B】細長い要素の近位端もシャフトに対する向きを変えている拡張されたループを示す図である。
【
図22A】閉位置にある吸引経路に沿った弁を用いて、眼から物質を吸引するための別のデバイスを示す図である。
【
図23A】静止位置又はオフ位置にあるフットペダルを有するアクチュエータを示す図である。
【
図23B】完全にオン位置にあるアクチュエータを示す図である。
【
図24A】弁の最大遠位変位を画定するための調節可能なストップを備えた代替実施形態を示す図である。
【
図24B】弁の最大遠位変位を画定するための調節可能なストップを備えた代替実施形態を示す図である。
【
図25A】カムの形態の調節可能なストップを備えた別の代替実施形態を示す図である。
【
図25B】カムの形態の調節可能なストップを備えた別の代替実施形態を示す図である。
【
図26】主要ルーメンに連結された逆行性チャネルに配置された逆行性流れ要素を示す図である。
【
図27A】眼から物質を切断及び吸引するためのデバイスの実装形態の断面図である。
【
図27B】眼から物質を切断及び吸引するためのデバイスの実装形態の断面図である。
【
図28A】眼から物質を切断及び吸引するためのデバイスの実装形態の側面図である。
【
図28B】眼から物質を切断及び吸引するためのデバイスの実装形態の側面図である。
【
図29A】眼から物質を切断及び吸引するためのデバイスの相互に関連する実装形態の斜視図である。
【
図29B】眼から物質を切断及び吸引するためのデバイスの相互に関連する実装形態の断面図である。
【
図29C】振動駆動機構の実装形態に連結された細長い部材の斜視図である。
【
図29G】伸長状態での内側及び外側チューブを有する細長い部材の部分的な図である。
【
図29H】引き込み状態での内側及び外側チューブを有する細長い部材の部分的な図である。
【
図30A】従来の水晶体超音波乳化吸引システムの細長い部材の対称的な正弦波運動プロファイルである。
【
図30B】細長い部材の非対称の非正弦波運動プロファイルである。
【
図30C】伸長速度プロファイルが細長い部材の引き込み速度プロファイルと同じである細長い部材の対称運動プロファイルである。
【
図30D】伸長速度プロファイルが細長い部材の引き込み速度プロファイルと異なる細長い部材の非対称運動プロファイルである。
【
図30E】プロファイルが異なる細長い部材の伸長速度プロファイル及び引き込み速度プロファイルの追加の例を示すグラフである。
【
図30F】プロファイルが異なる細長い部材の伸長速度プロファイル及び引き込み速度プロファイルの追加の例を示すグラフである。
【
図30G】伸長速度プロファイル(上部パネル)に対する細長い部材の遠位先端部の非正弦波運動(下部パネル)を示すグラフである。
【
図31A】真空プロファイルの実装形態を示す図である。
【
図31B】細長い部材の非対称の非正弦波運動プロファイル(実線)と、細長い部材を通る吸引の真空プロファイル(破線)との間の重なりを示すグラフである。
【
図31C】細長い部材の非対称の非正弦波運動プロファイル(実線)と、細長い部材を通る吸引の真空プロファイル(破線)との間の重なりを示すグラフである。
【
図32A】細長い部材を有するデバイスの斜視図である。
【
図33A】細長い部材を有するデバイスの作動のある段階を示す図である。
【
図33B】細長い部材を有するデバイスの作動の別の段階を示す図である。
【
図33C】細長い部材を有するデバイスの作動の更に別の段階を示す図である。
【
図34C】作動の更に別の段階における
図33A~33Cのデバイスの部分図である。
【
図35C】作動の更に別の段階における
図33A~33Cのデバイスの部分図である。
【0027】
図面は例示にすぎず、縮尺通りであることを意図していないことを理解されたい。本明細書で説明されるデバイスは、必ずしも各図に示されていない特徴を含む場合があることを理解すべきである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本明細書に記載されているのは、眼内手術中の水晶体及び他の組織の眼内の断片化及び除去のための方法及びデバイスである。本明細書に記載のデバイスは、他の眼球構造を損傷することなく前房から組織を摘出することを可能にする。本明細書に記載のデバイス及び方法は、資本集約度の低い設備で吸気又は吸引が可能である。
【0029】
様々な実施形態において、レンズ組織を係合及び断片化し、最小限に低侵的なab interno法で眼からの除去を支援するように設計された、切断ストリング、フィラメント、スネア、バスケット、バッグ、ループ、及び他のデバイスを使用する眼科手術デバイスが説明されている。他の実施形態では、眼からの流体の吸気及び吸引のためのデバイス及び方法が説明されている。本明細書に記載の吸引デバイスは、長さのある手動で変形可能/コンプライアンス性の吸引ラインを備えた遠隔吸引を使用するデバイスと比較して、応答性が改善されている。また、一態様では、使用者が(手動で)動力を供給でき、電子制御を必要としないハンドヘルドデバイスが提供される。デバイスは更に、わずかな吸引量の短い吸引経路を有することができる。デバイスには、ハンドヘルド吸引源を含めることができ、それにより、ハンドピースからコンソールへのホースの必要性がなくなる。これにより、ラインの長さが大幅に短くなり、また、圧縮又は膨張して応答性が低下し得る吸引圧力を受ける物質の量も減少する。いくつかの実装形態では、本明細書に記載のデバイスは、すべて同じハンドヘルドデバイス内で切断、断片化、注入、及び/又は吸引機能を提供する「オールインワン」デバイスであり得る。
【0030】
本明細書に記載のデバイスは、物質を吸引経路から廃棄エンクロージャ内にパージするパージ機構を含むことができる。パージ機構は、吸引デバイスの一部であっても、別個の機構であってもよい。特定の態様では、パージ機構は、物質を吸引方向とは反対の方向に廃棄エンクロージャに押し込むプランジャである。弁は、一方向弁でもよいが、物質を廃棄エンクロージャに入れることができる。弁(又は一方向弁)は、使用中に物質が吸引経路に沿って吸引されるときに、物質が廃棄エンクロージャに入るのを防ぐこともできる。処置の間に吸引経路をパージすると、遠隔吸引システムへの長い流体ラインを持つシステムと比較して、吸引経路内の物質の体積が減少する。吸引ラインのパージは、吸引時間の間に発生する場合があり、また、吸引圧力も生成する可動要素を使用して達成される場合がある。特定の態様では、可動要素は、手動で設定されるバネ仕掛けのプランジャであってもよい。
【0031】
更に別の態様では、吸引デバイスは、吸引経路内に可動要素を含むことができる。例えば、吸引デバイスは、手動で作動されるバネ仕掛けのプランジャであってもよい。本明細書では、ブラダ及び/若しくはバルーンを備えた空気圧システム、変形可能な壁及びローラーシステム、又はベンチュリなどの吸引圧力を生成するための他の任意の適切なシステムを含む他の吸引デバイスを検討する。吸引デバイスの可動要素を使用して吸引経路をパージすることもできるが、2つの機能を分離して異なる方法で実行することもできる。
【0032】
更に別の態様では、弁をハンドヘルドユニットに連結し、吸引経路に沿って配置することができる。弁はワイヤに連結され、バネが弁に作用して弁を閉じるようにする。ワイヤは、ワイヤと弁の動きを制御するフットペダルを含み得るアクチュエータに連結されている。フットペダルも吸引源に動作可能に連結されているため、使用者によるフットペダルの動きにより真空源が制御される。(フットペダルを押すことにより)アクチュエータが最初に作動すると、アクチュエータは変位の第1段階中に弁を部分開位置に移動させる。アクチュエータは、真空又は吸引源を制御して、第1段階中にアクチュエータの変位が増加するにつれて真空圧力を徐々に増加させる。第1段階中、吸引圧力は、少なくとも570mmHgであり得る目標圧力又は最大圧力まで増加され得る。別の言い方をすれば、アクチュエータは、変位の第1段階中に目標圧力に達するまで、弁が半分以下しか開かないように制御する。アクチュエータは、第1段階に続く第2段階の変位を有してもよい。第2段階は、弁が部分開位置から次第に開き、アクチュエータの変位が増加するにつれて流れの断面領域を増加させることにより実行され得る。あるいは、第2段階中、アクチュエータは弁を制御して、第1の位置と第2の位置との間で弁を動かす(後述)などの任意の適切な方法で、少なくとも1Hzの速度で周期的に開口部に加えられる吸引圧力(及び流量)を増減する。第2段階は、吸引圧力が一定で実行されてもよく、最大であってもよい。
【0033】
アクチュエータは、変位の第2段階に続く変位の第3段階を有してもよい。動作の第3段階では、弁を可変デューティサイクルで初期(又は第1の)位置と第2の位置との間で移動させて、時間平均流量を調整し、吸引源圧力も一定及び/又は最大のままにし得る。第1の位置は、第2の位置よりも断面の流れ領域が小さくなっている。使用者がより多くの流量を必要とするため、弁が第2の位置又はその近くに保持される時間が長くなる。これは、2つの位置間のデューティサイクルの増加に対応し、第2の位置のデューティサイクルは第1の位置に対して増加する。少なくとも1Hzのパルスレートが適切な場合がある。別の言い方をすれば、第3段階中にデューティサイクルがシフトすると、アクチュエータの変位が増加するにつれて、弁は、弁が第1の位置よりも第2の位置に近くなる時間が増加する。別法として、パルスレートデューティサイクルを一定に保ちながら、第1の位置と第2の位置との間の距離を大きくすることで、第3段階中のアクチュエータの変位を増加させて、同じ効果を達成でき、それにより、各サイクル中に、開口のより多くが露出し、したがって、通常、より多い体積の流量が達成される。アクチュエータの変位の増加により、第3段階中に弁の第2の位置が増加し、断面の流れ領域が増加する。別の言い方をすれば、第3段階中のアクチュエータの変位の増加により、第1の位置と第2の位置との間の距離が増加し、それにより、開口のより多くが露出し、したがって、通常、より多い体積の流量の吸引が達成される。
【0034】
本明細書に記載のデバイス及び方法は、遠位開口部の近くの物質を制限するリストリクタを提供することにより、詰まる可能性を減らすことができる。リストリクタは、遠位開口部に入ることができる物質を制限することにより、詰まりの可能性を減らす。リストリクタは、開口部の中及び周囲から物質を除去し、同様に物質を集めるために(縦方向及び/又は回転方向に)移動可能であってもよい。デバイスはまた、遠位先端部に近位の領域の内径と比較して減少した内径を有する遠位先端部を有する細長い部材を含むことができることを理解されたい。ルーメン(lumen)のサイズと比較して遠位先端部の開口部のサイズを狭くすることにより、詰まりを軽減できる。
【0035】
本明細書に記載されるのは、組織マニピュレータ及び組織を操作する方法である。組織マニピュレータは、遠位開口部を備えたルーメンを有するシャフトを備えている。第1のループは、第1の脚部と第2の脚部とを有し、第1及び第2の脚部の少なくとも一方がルーメンを通って延びている。第1のループは、第1及び第2の脚部の少なくとも一方がルーメンを通って前進し、ルーメンの遠位開口部から出るときに、収縮位置から拡張位置まで移動可能である。第2のループは、第1の脚部と第2の脚部とを有し、第1及び第2の脚部の少なくとも一方がルーメンを通って延びている。第2のループは、第1及び第2の脚部の少なくとも一方がルーメンを通って前進し、ルーメンの遠位開口部から出るときに、収縮位置から拡張位置まで移動可能である。シャフトは、シャフトの遠位端を眼の中に導入するためのサイズにすることができる。
【0036】
第1のループは、領域を最大化する方向で画定された領域を区切る不偏の形状を持つことができる。この領域は、同じ領域の円の直径に等しい有効直径を有する。第1のループは、収縮位置から拡張位置に移動するときに、不偏形状に向かって移動する。第1のループの領域の有効直径は4.5mm~6.5mmであり、又は拡張位置で5.0mm~6.0mmになり得る。第2のループの不偏形状の有効直径は、第1及び/又は第2のループの拡張位置の有効直径の20%以内であり得る。このようにして、第1及び/又は第2のループはソフトな展開を提供し、使用中柔軟である。超弾性物質の使用により、第1及び第2のループの柔軟性が更に向上する。この目的のために、第1及び第2のループは、約0.003インチから約0.006インチの直径を有する超弾性ワイヤで形成され得るが、任意の適切な断面形状で任意のサイズが使用され得る。
【0037】
組織マニピュレータはまた、第1のループと第2のループとの間に配置された中間要素を含んでもよい。中間要素は、第1のループと第2のループとの間に位置する第3のループであってもよい。中間要素は、第1のループと第2のループとの間に延びる相互接続要素を含むことができる。相互接続要素は、第1のループ及び第2のループと一体的に形成されてもよい。あるいは、相互接続要素は、第1のループと第2のループとの間に延びる可撓性フィラメントであってもよい。第3のループには、第1と第2のループの特徴があってもよい。
【0038】
第1及び第2のループは、制御された量の露出面をその間に提供し、制御された量の物質を制御し、場合によって切断する。第1のループと第2のループとの間の露出面は15mm3~60mm3の領域を有する。別の言い方をすれば、第1のループと第2のループとの間の露出面は、拡張位置(又は同じ場合もあるため、不偏位置)での有効直径の3~10倍である。第1のループと第2のループとの間の露出面は、第1及び第2のループの方向軸に対して半径方向内向きに見たときに、2~8、2~6、2~4、又はちょうど2個の独立したセルを有し得る。露出面は、第1及び第2のループ間で拡張され、ループに対して半径方向内向きに見たときに、中間要素の表面積よりも少なくとも4倍大きい面積を有する。このように、中間要素は、一部のネット型デバイスと比較して、過剰な量のスペースを占有しない。
【0039】
デバイスは、第1のループが拡張されたときにシャフトの遠位端から延びる第1の支持要素を含むことができる。第1の支持要素は、自由端まで延びる細長い要素であってもよい。第1のループの面積を最大にする向きに沿って第1のループを見るとき、第1の支持要素は、第1のループの領域内に位置する自由端で位置決めされる。同じ方法で第2のループと協働する第2の支持要素も提供され得る。第1のループ及び/又は第2のループは、第1のループへの第1の接続から第1のループへの第2の接続まで延びる少なくとも1つの相互接続要素を有する場合もあり、所望の用途に応じてそのような相互接続要素を実質的に含まない場合もある。
【0040】
更に別の態様では、組織マニピュレータは、バスケットを形成するために第1のループに連結された凹状要素を有することができる。凹状要素は、第1及び第2の脚部から独立してルーメン内で移動可能な他端を備えた第1のループと一体的に形成された一端を有してもよい。あるいは、両端がループと一体的に形成されてもよい。別の凹状要素を有する第2のループを設けて、2つのバスケットが、入れ子状の位置と、2つのバスケットが互いに対向する位置との間で、互いに対して移動可能な、別のバスケットを形成することができる。
【0041】
使用中、デバイスは、眼の内部にシャフトの遠位端及び遠位開口部を備えた状態で眼に導入される。第1のループが拡張され、第2のループも拡張される(同時に又は独立して)。物質は、第1及び/又は第2のループ内に配置され、その後、第1及び/又は第2のループが物質の周りに収縮されて、物質を収容、操作、又は切断する。更に、物質、流体、及び切断された物質をそのルーメン内又は別のルーメン内に吸引するために、吸引源をルーメンに連結してもよい。この方法は、あらゆる目的のために本明細書に明示的に組み込まれているデバイスのすべての特徴を含んでもよい。
【0042】
展開時に負荷で細長い要素を付勢することにより外側に曲がった細長い要素を有するシャフトを有する別のデバイスが提供される。ループは、第1のシャフト部分(細長い要素の第1の端部に連結)と第2のシャフト部分(細長い要素の第2の端部に連結)が第1の位置から第2の位置まで互いに対して移動すると、収縮位置から拡張位置に移動できる。物質はループ内に配置され、ループを収縮して切断する。ループは、ループが水晶体嚢と水晶体嚢内に含まれる水晶体全体との間で進むように拡張されてもよい。
【0043】
細長い要素は、第1及び第2の可撓性部分を有することができ、それらの間には、可撓性部分よりも曲がり方が少なくとも1.5倍堅い中間部分がある。別の態様では、第1の端部は、展開されると、シャフトの近位端に対して向きが変化し得る。向きの変化は、第1及び第2のシャフト部分が第1の位置から第2の位置に移動するときに、角度(向き)が少なくとも120度又は180度+/-45度変化するように、第1の端部をシャフトに単にピン止めするか、そうでなければ回転可能に連結することによって提供できる。また、シャフトの遠位端は、ループが拡張されたときにシャフトの近位部分に対して向きが変化する可撓性部分を含んでもよい。遠位端は、少なくとも30度だけ向きを変えることができる。第1の端部は、ループが収縮位置から拡張位置に移動するときに、ループがシャフトの遠位端を越えて遠位に進むように回転する。第2の端部はまた、シャフトに回転可能に連結されてもよく、又は可撓性部分を含んでもよい。第1の可撓性部分又は第1の端部のすべての態様の使用及び考察は、第2の端部にも等しく適用可能であり、本明細書に具体的に組み込まれる。更に、柔軟な第1の端部と回転可能な第2の端部など、第1の端部と第2の端部の混合物も明確に組み込まれる。
【0044】
ハンドピースに接続されたときに吸引をもたらすように真空を作り出すために、プランジャデバイスを押し下げてもよい。白内障手術中は、眼に平衡塩溶液(BSS)を供給し、流体やその他の物質を除去するために吸引を供給することが望ましい。ある特定の眼科手術用先端部は、二重ルーメン設計により流体を吸気及び吸引することができる。これらのデバイスは、吸引及び加圧BSS流体の供給に接続されている。本明細書で説明するのは、単純な機構を介して吸引又はBSS加圧流体を提供する能力を含むデバイスであり、そのいくつかは手動で動力供給又は調整することができる。ハンドピースはまた、吊りバッグなどの加圧BSS源、又はバネ仕掛けのシリンジなどの他の任意の数の加圧源に接続されてもよい。あるいは、ベローズ機構、ダイアフラムポンプ、ベンチュリポンプ、エントラップメントポンプ、容積式ポンプ、再生ポンプ、運動量移送ポンプ、解放された真空の密閉容器、マイクロポンプなど、真空は他の任意の数の機構によって供給され得る。ハンドピースに接続されると、吸引が先端に供給され、吸引が行われる。一実施形態では、ターキーベイスターなどの圧縮可能な球状部分を使用して吸引をもたらすことができる。使用者は、指で球状部分を押し下げ、球状部分から指を離すことで吸引量を制御できる。他のレバー機構は、ハンドヘルド器具内に真空を更に生成する場合がある。いくつかの実施形態では、看護師又は助手は、ハンドヘルド器具に接続されたデバイスで真空を作り出すことができる。例えば、フットペダルを使用して、外科医のデバイスに接続する吸引を作り出すことができる。ハンドピースには、回収された流体を入れ、ハンドピース内又はハンドピース外に保管する廃棄物容器をいくつでも入れることができる。様々な真空機構は、使用者又は助手による手動の操作など、任意の数の方法で動力を供給できる。この実施形態では、使用者は、処置を開始する前にバネ仕掛けのプランジャを押し下げ、弁又は他の入力機構で真空量を制御するなどして、エネルギーをデバイスに「チャージ」することができる。いくつかの実施形態では、BSS加圧供給は、ハンドピースに連結されてもよく、真空と同時に又は別個に「チャージ」されてもよい。例えば、外科医は、外科医が処置中に単一のボタン又は複数のボタンで両方の放出を制御できるように、真空及びBSS流体にバネ力を作り出す1つのプランジャを押し下げることができる。他の実施形態では、BSSは吊りバッグ又は他の加圧システム内にあり得、ハンドピースに配管されてもよい。
【0045】
いくつかの実施形態では、ハンドピースは、吸引又は吸気される流体の速度若しくは圧力を外科医が更に選択できるようにするための流量制御弁を含むことができる。外科医は、チューブを特定の量だけ圧縮するか、ボール弁を特定の量だけ開くノブ、又は他の任意の数の流れ制御機構を回転させることにより、所望の流れの量を調整できる。デバイスはまた、デバイスが吸気又は吸引しているときに、調整するために押すことができるボタンを含んでもよい。外科医がボタンを押す量は、それ自体可変流量を制御する。吸気と吸引を制御するための単一のボタン、又はそれぞれの個別のボタンがある。本明細書でボタンが説明される場合、ボタンは、複数の機能を作動させるための多方向のボタンであり得ることを理解されたい。同様に、デバイスは、デバイスの様々な機能(すなわち、吸引、吸気、切断など)にアクセスするために、複数のボタンを組み込むことができる。ボタンは単に使用者の制御インターフェースを意味し、任意の数のインターフェースが考えられることを理解されたい。更に、制御インターフェースはハンドヘルドデバイス自体にある場合もあれば、別の場所にある場合もある。例えば、フットペダルを使用して流れを制御してもよいし、別の手で保持された別個のデバイスを使用してもよい。
【0046】
いくつかの実施形態では、デバイスは、吸気及び吸引のための二重のルーメン設計を含み得る。他の実施形態では、3つ以上のルーメンがあってもよく、ルーメンが同心円状に配向されてもよい。
【0047】
様々な他の実施形態では、レンズ組織の除去又は断片化のためのデバイス及び方法が説明されている。スネア又はループに取り付けられたバッグ又はメッシュを組み込んで、全体又は部分的に断片化されたレンズ組織をつかむことができる。バッグとメッシュを使用して、穿刺を通して組織を眼から引き抜くことができる。いくつかの実施形態では、水晶体の断片が捕捉された後、別個のツールをバッグ又はメッシュに挿入でき、別個のツールを使用して組織をより小さな断片に破壊することができる。例えば、回転カッター器具を別のデバイスで挿入するか、バッグデバイスのルーメンに挿入するかして、組織をバッグ又は容器内に入れたまま小さな断片に切断することで、穿刺を通して引き出すことができる。
【0048】
他の実施形態では、様々なバスケットを使用して、水晶体物質を捕捉し、それを眼から引っ張るか、物質を、吸引できる更に小さな断片に砕くかする。各実施形態において、バッグ及びメッシュ及びバスケットは、任意の数の物質で作られていてもよい。例えば、ニチノール物質を使用し、適切な向きに成形することができる。ニチノールなどのある特定の物質は、複数の形状間で弾性的に変更でき、小さなプロファイルを介して眼に入り、眼内で拡大して水晶体物質を捕捉するために使用される。小銭入れ、膨張バルーン、湾曲バッグなど、任意の数の形状が考えられる。デバイスは、ステンレス鋼、ニチノール、生体適合性プラスチックなどの任意の複数の物質で構成されてもよい。更に、ニチノールは、その超弾性状態若しくは形状記憶状態のいずれか、又は複数の構成要素において両方で使用できる。
【0049】
いくつかの実施形態では、水晶体を複数の断片に機械的に断片化するために、カッター及びオーガーなどが使用されてもよい。これらのデバイスは、水晶体物質を吸引するための統合された吸引を更に含んでもよい。
【0050】
上述の態様は、本明細書で説明されるすべての適切な実施形態に適用可能である。したがって、上述のニチノールの使用は、本明細書に記載のいずれかの切断フィラメント、要素又はデバイスに関するすべての適切な態様に適用可能である。同様に、上記の吸引デバイスの任意の態様は、本明細書に記載のすべての吸引実施形態に等しく適用可能である。最後に、各デバイス及び方法を使用する特徴、態様、ならびに方法は、本明細書に記載の他のデバイス及び方法(切断することを含む)にも等しく適用可能であり、そのような特徴はすべて本明細書に明示的に組み込まれる。
【0051】
ここで図面を参照すると、
図1は、眼の処置中に物質を除去するためのデバイス2を示している。デバイス2は、ルーメン6を通ってルーメン6の遠位端12又はその近くでルーメン6から開口部8まで延びる吸引経路4を有する。開口部8は、水晶体嚢内の水晶体破片などの物質を眼から除去するために眼内に配置することができる。吸引源14を吸引経路4に連結して、物質を開口部8に引き込むことができる。吸引源14は、摺動シール18を有するプランジャ29に連結された手動の仕掛けのあるバネ16であり得る。本明細書で、他の適切な吸引源を検討する。吸引源14は、遠位端領域近くのデバイス2のハンドヘルド部分内に配置することができ、短い吸引経路4及びこのような短い経路の利点、ならびに吸引経路4内の小さな吸引体積部を実現する。
【0052】
吸引経路4は、近位吸引体積部21及び遠位吸引体積部23を有することができる。近位吸引体積部21は、吸引源14による吸引圧力の影響下に実質的にあるので、システムは、ある意味で処置中いつでも物質を吸引するように準備又は「用意」される。吸引経路4の近位吸引体積部21は、25ml未満であり得、既にデバイス2のアクチュエータ20の近位の吸引圧力下にあり得る。近位吸引体積部21は、アクチュエータ20と吸引源14(この場合は摺動シール18)との間の吸引経路4の体積部によって画定することができる。吸引経路4の遠位吸引体積部23も小さい。これは、アクチュエータ20が開口部8の比較的近くに配置されているためである。いくつかの実装形態では、遠位吸引体積部23は2ml未満であり得る。アクチュエータ20は、多くの異なる位置に移動可能であってもよく、使用者による所望の吸引量を可能にするために連続的に可変であってもよい。本明細書では、アクチュエータ20という用語は、吸引経路4に作用する要素を指すために使用される。アクチュエータ20は、スライダ、スイッチ、ボタン、又は手動又は他の方法で作動するように構成された他のタイプの物理的要素などの1つ以上の入力を含むことができる。入力は、デバイスのハンドヘルド構成要素上に直接配置され、アクチュエータ20と直接インターフェースしていてもよく、又は入力はアクチュエータ20から離れていてもよい。いくつかの実装形態では、ボタンはアクチュエータ20に直接作用し、それ自体が弾性特性を有してもよい。入力は、スライダ、スイッチ、ボタン、又はその他のタイプのアクチュエータであるかにかかわらず、デバイスの複数の機能にアクセスするため多方向入力であってもよく、又はデバイスが複数の入力各々を特定の機能(すなわち、吸引、注入、切断など)を作動させる能力に組み込むこともできる。
【0053】
吸引源14は、物質を開口部8に吸引経路4を通して引き込むために、矢印Aで示される方向に変位可能な可動要素を含むことができる。以下により詳細に説明するように、可動要素は、方向Aとは反対方向に変位して、物質を吸引経路4から廃棄エンクロージャ40に移動させる。吸引源14の構成は変えることができる。いくつかの実装形態では、可動要素がハンドヘルドユニットの一部であるという点で、吸引源14をハンドヘルドにすることができる。デバイスはまた、電子制御部及び電動部品を備えないこともあり得、バネ16が手動仕掛けである(伸長される)という点で使用者によって動力を供給されるのでさえあり得る。可動要素は、摺動シール18を有するプランジャ29を含むことができる。バネ16をプランジャ29に連結して、バネ仕掛けで可動要素に手動で荷重をかけることができる。可動要素の構成は、ピストン、プラグ、ストッパー、ボール、又はブラダやバルーンなどの壁の可動部分を含めて様々である。一旦荷重をかけると、可動要素のプランジャ29及び摺動シール18は、バネ16が完全に弛緩するか、さもなければ拘束されるまで継続的に吸引圧力を加える。
【0054】
アクチュエータ20は、吸引経路4のための弁として機能することができ、吸引経路4の変形可能部分31に作用することができる。開口部8は、アクチュエータ20を作動させるときに開口部8を吸引圧力に曝すことにより吸引圧力を加えることができるという点で、吸引圧力に曝すことができる。あるいは、開口部8は、吸引デバイス自体を作動させるときに吸引圧力に曝されてもよい。例えば、デバイス2のバネ仕掛けの機構でさえも、吸引圧力が加えられ、解放されるように、制御装置(図示せず)に連結されており、加えられた場合、開口部8を吸引圧力に曝して物質を開口部8に引き込むことができる。アクチュエータ20は、少なくとも2つの異なる開位置の間で変形可能部分31を多少変形させるために、単に多かれ少なかれ押すだけで、連続的に可変であり得る。
図1は、変形可能部分31の変形量を単に変化させることによる、完全開位置と完全閉位置との間の連続可変アクチュエータ20を示している。
【0055】
廃棄エンクロージャ40は、吸引経路4に連結され、吸引経路4から物質を受け取る。一方向弁などの弁42を、廃棄エンクロージャ40と吸引経路4との間に配置することができる。弁42は、物質が廃棄エンクロージャ40に移動することを可能にし、吸引動作中に廃棄エンクロージャ40を隔離する。弁42は、例えば、弁42の一方の側が他方に対して流体圧力が増加すると、必要に応じて自動的に開閉する作動弁又は受動的一方向弁であってもよい。弁42は、物質の圧縮性が本明細書に記載のシステムの応答性に影響を及ぼさないように、廃棄エンクロージャ40を隔離する。吸引経路4は、注射器と同様又は同一に、眼の外側の部分で、直径が大きくなる場合がある。更に、吸引経路4は、様々な形状のいずれかを取ることができる。廃棄エンクロージャ40は、例えば、テーブル伝統的なハンガー、又は他の任意の適切な構造により、独立して支持されるように構成される。更に、廃棄エンクロージャ40は、ハンドヘルド又は遠隔配置することができる。廃棄エンクロージャ40は、吸引経路4から廃棄エンクロージャ40まで延びる廃棄ルーメン45を有する。上述のように、弁42(又は一方向弁)は、廃棄エンクロージャ40を吸引圧力から隔離し、それにより、使用中の廃棄エンクロージャ40によるいずれの圧力応答をも防止する。
【0056】
デバイス2は、吸引経路4がハンドヘルドであり、吸引源14もハンドヘルドであるという点で、かなりの程度がハンドヘルドであり得る。吸引源14は、吸引機からのチューブなどを含む必要はないが、吸引圧力を生成する機械的な供給源を画定する。本明細書では、いくつかの吸引機構のいずれかが考慮されることを理解されたい。例えば、チューブ、空気圧システム、ブラダ又はベンチュリを備えたローラーを使用して、吸引圧力を生成することができる。吸引経路4はまた、半分以上が手動で変形不能であるか、少なくとも90%が手動で変形不可能でさえあり得る。リモート吸引デバイスを備えたほとんどのシステムには、圧力の変化に反応し、応答性を更に低下させる可能性がある、手動で変形可能なチューブとホースが含まれている。吸引経路4は、応答性を更に改善するために小さくてもよい。この目的のために、吸引経路4は、20cm未満の長さ(縦)L、又は25ml未満、更には15ml未満の体積部を有し得る。
【0057】
上述のように、本明細書に記載のデバイスは、眼から物質を除去するのに特に有用である。そのようなものとして、ルーメン6は適切なサイズにされ得る。吸引経路4は、ルーメン6を有するシャフト51を含む。ルーメン6は、眼へ導入するための大きさであり、シャフト51の外周(又は直径)の断面積が0.8mm2以下である長手方向軸を有し、一方でルーメンは、最小0.28mm2の断面積を有する。
【0058】
プランジャ29と摺動シール18を操作して、吸引経路4を手動でパージすることができる。吸引経路4をパージすると、吸引が再開されたときに吸引経路4内の物質が減少する。パージ機構55は、可動要素(例えば、プランジャ29及び摺動シール18)であってもよく、又は物質を吸引経路4から廃棄エンクロージャ40に移動させる別個の要素であってもよい。一態様では、パージ機構55は、矢印Aで示すように、吸引経路4に沿って物質を吸引するのとは反対方向に、吸引経路4を通して物質を移動させる。弁42は、可動要素が前進したとき、吸引経路4から廃棄エンクロージャ40への流れを可能にする。パージ機構55はまた、吸引デバイス14の一部を形成する可動要素とは別個の要素を含んでもよく、吸引源14から完全に独立していてもよい。本明細書で定義されるように、吸引経路4は、可動要素によって占有される体積部を含む。例えば、摺動シール18は、吸引経路4は本質的に長さ及び体積が変化しながら、完全に引き込まれた位置と完全に前進した位置との間を移動する。本明細書で使用される場合、吸引経路の定義された長さ及び体積は、吸引源14によってそこに含まれる最小体積で定義されるものとする。したがって、長さと体積は、長さと体積を最小化するプランジャ/可動要素の最も前進した位置によって定義される。
【0059】
本明細書で説明するように、ガスなどの「圧縮可能な」物質は、同伴ガス及び物質に加えられる吸引圧力が、ガス及び物質を低い吸引圧力下でわずかに(圧縮というより)膨張させ得るという点で、物質の「膨張性」を指す場合もある。ガスの圧縮性(又は膨張性)と圧力応答性への影響は、通常、ガスの「圧縮性」の問題と見なされ、本明細書でもそのように説明されており、この用語はガス及び物質の膨張性にも当てはまることが理解される。ホースとラインに関し、吸引圧力による圧縮に抗う能力は、典型的には圧力の変動にも機械的に応答する手動で変形可能な物質を備えたそのようなシステムの応答性に関連する物質特性である。
【0060】
図2を参照すると、処置中に物質を除去するための相互に関係するデバイス102が示されている。この実装形態では、吸引源114は、バネ105に手動で荷重をかけたプランジャ103を含むことができる。バネ105には、ハウジング109に取り付けられた旋回レバー107で荷重をかけることができる。廃棄エンクロージャ111は、デバイス102とともにハンドヘルドであるように、ハウジング109に及びハウジング109内に取り付けることができる。レバー107を押すと、プランジャ103が前進し、吸引経路4内の物質を廃棄エンクロージャ111にパージする。第1の弁113及び第2の弁115(一方向弁であってもよい)は、ルーメンを介した吸引及び廃棄エンクロージャ111への物質のパージを可能にする。
【0061】
レバー107は、一旦前進すると選択的にロック及びロック解除することができ、又は使用者はレバー107に圧力を加え続けて吸引を本質的に停止することができる。吸引が再び望まれる場合、レバー107は、生成される吸引の量を変えるために可変圧力で解放されてもよい。あるいは、第1の弁113は、吸引経路を開閉するために作動されるボタンなどのインターフェース120を含むことができる。インターフェース120は、本明細書で説明されるアクチュエータとして機能することができ、吸引経路の近位体積部117を遠位体積部119から分離する。第1の弁113は、本明細書で説明する使用のために、弁113に沿った吸引経路の変形可能部分131上に形成することができ、変形可能部分及びアクチュエータのそのような使用はすべて本明細書に明示的に組み込まれる。第2の弁115(一方向弁であってもよい)は、廃棄エンクロージャ111への流れを調整する。
図1に示されるように、灌注液121の供給源は、灌注液121の供給源を使用して眼を灌注するためにシャフト51に連結されてもよい。灌注液121の供給源は、重力供給バッグ又は水晶体超音波乳化吸引システムなどの流体送達システムの一部であってもよい。灌注ルーメン123は、灌注液を送達するために眼に配置された開口部125を有する。
【0062】
図3A~3Bを参照すると、同一又は類似の参照番号が同一又は類似の構造を指す別の吸引デバイス302が示されている。吸引源314は、バネ316で手動で荷重をかけたプランジャ329に連結された摺動シール318を含む可動要素を含むことができる。この実装形態では、吸引源314は、ハンドヘルドハウジング330から離れていることが示されている。バネ316には手動で荷重をかける。平衡塩溶液のバッグなどの灌注源121は、灌注ルーメン323に連結することができる。弁325は、灌注液の流れを制御することができる。アクチュエータ320は、上記のアクチュエータ20と同じ方法で使用され、吸引経路は変形可能部分331を含み、これらの要素のすべての態様及び方法は本明細書に明示的に組み込まれる。プランジャ329及び摺動シール318が前進するとき、物質が廃棄エンクロージャ340に移動することで、吸引経路のパージも同様に達成される。廃棄エンクロージャ340への流れを制御するために、上記と同じ方法で弁342を設けることができ、これらの態様の論述も本明細書に組み込まれる。
【0063】
図3A~3Bを参照すると、吸引源314は、フットペダルを用いて足で作動させることができる(プランジャではなく)ベローズ350である可動要素も含むことができる。ベローズ350は、フットペダルが押し下げられた後、ベローズ350が吸引をもたらすように、開位置に付勢される。他の実施形態と同様に、ベローズ350が使用者の足によって圧縮されると、本明細書で説明する吸引経路の一部を構成してもいるベローズ350内の物質は、廃棄エンクロージャ340に移動する。
【0064】
図4を参照すると、同一又は類似の参照番号が同一又は類似の構造を指す更に別の吸引デバイス402が示されている。デバイス402は、加圧ガス源408に連結されたベンチュリ406を有する。ベンチュリ406は、加圧ガスを廃棄エンクロージャ440に向け、これはまた、吸引経路404内の物質も廃棄エンクロージャ440に向ける。ベンチュリ406は、吸引経路404に沿って吸引圧力を生成する吸引源としても機能する。吸引経路404は、ベンチュリ406と連通するチャンバ415を含むため、ベンチュリ406によってチャンバ415内に吸引圧力が生成される。ベンチュリ406は、枢動レバー421で開閉される。
【0065】
図5を参照すると、同一又は類似の参照番号が同一又は類似の構造を指す、別の吸引デバイス502が示されている。吸引源514は、使用者によって手動で変形されるように構成されたブラダ531である可動要素529を有する。圧縮されると、圧縮がブラダ531で維持されて、吸引が停止され、吸引の発生を減少させる。別の言い方をすれば、ブラダ531は、不偏状態から圧縮状態に移動し、使用者が圧縮を解除して、開口部508への物質の吸引を開始する。不偏状態から圧縮状態へのブラダ531の動きは、物質を吸引経路504(ブラダの内部体積部を含む)から廃棄エンクロージャ540に移動させることもできる。第1の弁513はまた、ボタンなどのインターフェース520を含むことができ、その結果、第1の弁513は、本明細書に記載のアクチュエータとして機能し、近位体積部(すなわち、弁513の近位)を吸引経路504の遠位体積部(すなわち、弁513の遠位)から分離する。第1の弁513は、本明細書で説明されるように、弁513に沿った吸引経路504の変形可能部分の上に形成されてもよい。第2の弁543(一方向弁でもよい)は、廃棄エンクロージャ540への流れを調整する。灌注源547には、アクチュエータ(図示せず)に連結されたバネ仕掛けの送達機構549を設けることもできる。
【0066】
本明細書に記載の吸引デバイスのすべての態様及び方法は、他の吸引デバイスに適用可能であり、そのような方法及び態様はすべて、各々に対し他のものから明示的に組み込まれる。例えば、吸引経路の長さ及び体積、ならびにルーメン及びシャフトの寸法は、本明細書で説明される他の適切な実施形態のそれぞれに適用可能である。
【0067】
ここで
図6A~6C及び
図7を参照すると、眼から物質を吸引するための吸引先端部600が示されている。吸引先端部600は、取り外し可能であろうとデバイスと一体であろうと、本明細書に記載のデバイスの前端に配置されて、詰まりの問題を減らすサイズに、吸引される物質を制限することができる。吸引先端部600は、シャフト602を通って延びるルーメン604を備えたシャフト602を含むことができる。シャフト602の遠位開口部608は、開口部608のサイズを最大化する開口軸OAによって画定される領域を有する。開口領域OAは、円形、楕円形、又は任意の他の適切な形状であってもよい。開口領域OAは、開口領域と同じ面積を有する円に相当する直径として画定される有効直径を画定する。シャフト602の遠位開口部608は、ルーメン604の内径よりも小さくすることができ、それにより、シャフト602内部の詰まりに関する問題を軽減する。
【0068】
吸引先端部600はまた、開口軸OAに沿って見たときに遠位開口部608上に延びるリストリクタ610を含むことができる。リストリクタ610は、シャフト602から延びる支持アーム612を有する。リストリクタ610は、
図7に示すように、開口軸OAに沿って見たときに、ストップ614が遠位開口部から間隔を空けて遠位開口部上方に配置される、支持アーム612に取り付けられたストップ614を有し得る。リストリクタ610は、開口軸に沿って測定され、開口軸OAに沿って見たときに遠位開口部608と位置合わせされている有効直径の、0.80から1.10倍、又は0.85から1.00倍、遠位開口部608から離間している。リストリクタ610はまた、使用を妨げないように、シャフト602の遠位端から短い距離だけ任意に延びていてもよい。この目的のために、リストリクタ610は、開口軸に沿って測定された遠位開口部608から有効直径の1.5倍を超えない範囲で延びる遠位端615を有し得る。リストリクタ610は、開口軸OAに沿って見たときの遠位開口部608の面積の0.1~1.2倍であり得る、開口軸OAに沿って見たときの面積を有する。したがって、開口部608からの物質の移動、収集、又は除去にあまり関心がない場合、リストリクタ610はいくらか小さくてもよい。
【0069】
支持アーム612は、
図7に示されるように、開口軸OAに沿って見たときに90度以下の角度範囲Bを有してもよい。遠位開口部608は、開口軸OAに沿って見たときに、遠位開口部608とリストリクタ610上のストップ614との間の支持アーム612から離れて、障害物がない場合がある。リストリクタ610は、リストリクタ610が
図6Bの点線の位置によって示される作業位置にあるとき、遠位開口部608に通じる供給開口部622を形成する。供給開口部622は、リストリクタ610と開口部608の周りのシャフト623の遠位端との間に延在し、それらによって画定される表面626を画定する。表面626は、本質的に、支持アーム612の一方の側から他方の側まで延びる細長い表面であってもよい。このようにすると、表面626の平均の長さは有効直径の2.5~3.5倍である。表面626は、有効直径の0.8から1.1倍の幅を有し得る。
【0070】
支持アーム612は、点線及び実線の位置で示されるように、支持アーム612の長手方向又は回転位置を調整するために、シャフト602に対して長手方向及び/又は回転可能に移動可能であってもよい。支持アーム612は、作業位置(上で定義した通り)から変位位置まで移動可能であり、作業位置は、物質を遠位開口部608に吸引するときに使用される位置である。シャフト602は、長手方向軸LAを有し、リストリクタ610は、回転及び/又は長手方向に変位可能な支持アーム612とともに形成される。リストリクタ610は、変位位置が物質を遠位開口部608に向かって移動させるように形成され得る。リストリクタ610はまた、吸引される物質を収集するか、さもなければ編成するのを助けるために外側に延びてもよい。リストリクタ610は、開口軸OAに沿って測定された遠位開口部608から少なくとも2つの有効直径である位置に移動可能であってもよい。
【0071】
リストリクタ610は、本明細書ではインターロック又は独立したルーメンが考慮されるが、いくつかの実施形態ではリストリクタ610がシャフト上方でルーメンの外側にある限り、例えば同心円状にシャフト上方に取り付けることができる。リストリクタ610は、
図6Aの点線の位置に示すように、リストリクタ610全体が遠位開口部608の近位に位置し、任意で完全にルーメン604の外側に位置する収納位置に移動可能である。したがって、使用者は、例えば、開口部を詰まらせる可能性が低い場合に、制限なしに吸引デバイスを使用することを選択してもよい。リストリクタ610は、収納位置にあるときに変形してもよく、このため、リストリクタ610は、リビングヒンジ640を有し、支持アーム612は、収納位置で変形するリビングヒンジ640の一部又は全部を形成する。
【0072】
ストップ614は、支持アーム612の遠位端が単にストップ614を形成するという点で、支持アーム612の一部であってもよい。更に、リストリクタ610は、単にシャフトの伸長部の一部であってもよい。最後に、リストリクタ610及びリストリクタ610に関連する方法は、水晶体の切断及び/又は除去に関連するものを含む、本明細書に記載の他のデバイスのいずれかとともに使用され得る。更に、デバイスは、切断デバイスの周りにシールを形成するY字形アーム642及び適切なコネクタ641を単に提供することにより、本明細書に記載のデバイスのいずれかのルーメンを通して使用されてもよい。したがって、ルーメンは、本明細書に記載される任意のルーメンの代替物であり得、組み合わせて水晶体を切断し物質を吸引する方法、及び任意の吸引デバイスに連結される任意の水晶体切断デバイスを含むデバイスの組み合わせは本明細書に具体的に組み込まれる。例えば、
図6B及び6Cを参照すると、シールは、本明細書に記載の切断デバイス(又は別の切断デバイス)のいずれかが導入され得るルーメン及び吸引経路のYアーム642に施される。
図6Bは、Yアーム上ではなく中央に配置されたシールを示しているので、切断デバイスは、切断デバイスとシャフトとの間の環状空間内を吸引しながらルーメンを通って直接延びる。更に、同心又は別個であり得る灌注ルーメンを提供することができ、本明細書に記載の任意の方法又は組み合わせた方法で、灌注のプロセスを実施することができ、そのような方法は、1つ以上の実施形態に示されるように具体的に本明細書に組み込まれ、示されていないものに明示的に組み込まれる。
【0073】
使用中、白内障手術を含む眼のあらゆる処置のために、シャフトの遠位端が眼に配置される。白内障手術中、吸引を使用して白内障の一部を取り除く。物質を遠位開口部に引き込む吸引を適用することにより、物質を遠位開口部に吸引することができる。リストリクタ610は、遠位開口部への無制限の流れを可能にする従来の吸引デバイスと比較して、遠位開口部の詰まりを減らすのに役立ち得る。上述のように、従来の方法の問題は、吸引開口部よりも大きい物質が自由に開口部に接近し、したがって開口部を詰まらせることである。吸引を停止し、必要に応じて、物質を別の器具で個別に除去する必要がある。以下により詳細に説明するように、リストリクタであろうと他の機構であろうと提供することにより、詰まりの可能性を低減するデバイスが本明細書に記載される。本明細書に記載のデバイスは、独立型吸引デバイス、再使用可能な水晶体乳液先端部、又は任意の吸引デバイスの使い捨て態様を含む任意のデバイスとともに使用できることを理解されたい。
【0074】
別の態様では、組織マニピュレータ及び組織を操作する方法が、説明されている。組織マニピュレータは、本明細書の他の箇所で説明するように、別個の外科用デバイス又は吸引を組み込んだ外科用デバイスに配置することができる。
図8A~8Cは、ルーメン664及び遠位開口部668を備えたシャフト662を有する組織マニピュレータ660の実装形態を示している。吸引源は、組織マニピュレータ660と一緒に、又は別個に吸引が使用されて、ルーメン664に連結されてもよい。灌注は、本明細書に組み込まれている他のシャフトとともに供給することもでき、そのような組み込みは本明細書で明示的に提供される。組織マニピュレータ660は、複数のループを含むことができる。いくつかの実装形態では、第1のループ670は、第1の脚部672及び第2の脚部674を有し、第1及び第2の脚部672、674の少なくとも一方がルーメン664を通って延びる。第1のループ670は、第1及び第2の脚部672、674がルーメン664を通って前進し、遠位開口部668から出るときに、
図8Aの収縮位置から
図8Bの拡張位置まで移動可能である。第2のループ676もまた、第1の脚部678及び第2の脚部680を有し、第1及び第2の脚部678、680がルーメン664を通って延びる。第2のループ676もまた、第1及び第2の脚部がルーメンを通って前進し、遠位開口部668から出るときに、収縮位置から拡張位置まで移動可能である。シャフト662は、シャフトの遠位端を眼の中に導入するための大きさにすることができる。
【0075】
第1のループ670は、領域を最大化する方向ORで画定された領域を区切る不偏の形状を持つことができる。この領域は、同じ領域の円の直径に等しい有効直径を有する。第1のループ670は、収縮位置から拡張位置に移動するときに、不偏形状に向かって移動する。第1のループ670の領域の有効直径は、4.5mmから6.5mmであってもよいし、5.0mmから6.0mmであってもよい。第1及び/又は第2のループ670、676の不偏形状の有効直径は、それぞれ第1及び/又は第2のループ670、676の拡張位置の有効直径の20%以内であり得る。このようにして、第1及び/又は第2のループ670、676は、柔らかい展開を提供し、使用中に柔軟である。超弾性物質の使用により、第1及び第2のループ670、676の柔軟性が更に向上する。この目的のために、第1及び第2のループ670、676は、約0.003インチから約0.006インチの直径を有する超弾性ワイヤで形成され得るが、任意の適切な断面形状を有する任意のサイズが使用され得る。
【0076】
第1及び第2のループ670、676はそれぞれ、各方向に沿って見たときに拡張位置にあるときに、第1のループ670及び第2のループ676の面積を最大化する方向OAによって画定される。第1及び/又は第2のループ670、676の方向は、シャフト662の遠位端で長手方向軸LAに対して垂直から45度以内であってもよい。第1及び第2のループ670、676が拡張位置にあり、その間の体積が48~84mm3であるとき、第1のループ670は第2のループ676から間隔を空けてその間に体積Vを画定することができる。以下により詳細に説明されるように、組織マニピュレータ660の複数のループは、ループの拡張中に、又はループの拡張に続く別個のステップで、互いに間隔を空けられ得る。
【0077】
組織マニピュレータ660は、第1のループ670と第2のループ676との間に配置された中間要素又は第3のループ682も含み得る。中間要素682は、第1のループ670と第2のループ676との間に延びる相互接続要素681を含むことができる。相互接続要素681は、
図9及び10に示されるように、第1のループ670及び第2のループ676と一体的に形成された要素であってもよい。あるいは、相互接続要素681は、
図8Bに示されるように、第1のループ670と第2のループ676との間に延びる可撓性フィラメントであってもよい。第3ループ682は、第1のループ670及び第2のループ676の特徴を有し得る。第3のループ682の面積を最大化する方向OAは、長手方向軸LAに対して垂直から30度以内であり得る。
【0078】
第1及び第2のループ670、676は、制御された量の露出表面をその間に提供し、制御された量の物質を制御し、任意に切断する。第1のループ670と第2のループ676の間の露出面ESは15mm2~60mm2の領域を有する。別の言い方をすれば、第1のループ670と第2のループ676との間の露出面は、拡張位置(又は同じ場合もあるため、不偏位置)での有効直径の3~10倍である。
【0079】
第1のループ670と第2のループ676との間の露出面は、第1及び第2のループ670、676の方向軸に対して半径方向内向きに見たときに、2~8、2~6、2~4、又はちょうど2個の独立したセルを有し得る。露出面ESは、露出面ESを第1及び第2のループ670、676に対して半径方向内向きに見たときに、第1のループ670と第2のループ676との間に位置する中間要素682の面積よりも少なくとも4倍大きい面積を有する。このように、中間要素682は、一部のネット型デバイスと比較して、過剰な量のスペースを占有しない。
【0080】
第1のループ670はまた、ループの少なくとも80%が第2のループ676から1.5~3.5mmになるように形成されてもよい。また、第1及び第2のループ670、676(及び任意の中間要素682)は、収縮したときにその中に含まれる物質を切断するように構成されてもよい。
【0081】
再び
図8Bに関して、デバイス660は、第1のループ670が拡張位置にあるときにシャフトの遠位端から延びる第1の支持要素690を含むことができる。第1の支持要素690は、自由端691まで延びる細長い要素であってもよい。第1のループ670の面積を最大にする向きOAに沿って第1のループ670を見るとき、第1の支持要素690は、第1のループ670の領域内に位置する自由端691で位置決めされる。第1のループ670は、拡張位置にあるときに有効直径を有し、一方で第1の支持要素690は第1のループ670の領域に延びるため、方向OAに沿って見たとき自由端691が第1のループ670の有効直径の0.05から0.30倍で第1のループ670内に位置する。同じ方法で第2のループ676と協働する第2の支持要素692も、提供され得る。
【0082】
図11を参照すると、第1のループ670及び/又は第2のループ676は、ループ上の第1の接続696から同一のループへの第2の接続697まで延びる少なくとも1つの相互接続要素695を有する場合もあり、所望の用途に応じて任意のそのような相互接続要素を実質的に含まない場合もある。例えば、
図11に示されるようなネット状の材料が提供され得るか、ループが相互接続要素を含まず、その結果、開放領域が自由になり得る。第1のループ670のすべての議論及び制限は、第2の支持体692に適用可能な第1の支持体690の議論と一緒に、第1のループ670、第2のループ676及び第3のループ682に当てはまる。第1の支持体690は、第1のループ670から独立して又は同時に延びてもよい。第1の支持体690は、ループによって形成された開口領域内に延びることにより、第1のループ670内に物質を固定するのに役立つ。
【0083】
第1及び第2のループの第1及び第2の脚部は、ルーメン内で移動可能であってもよい。あるいは、第1のループ670の第1の脚部672及び第2の脚部674は、ルーメンを通って延びるアクチュエータに連結され、それにより、アクチュエータの動きが、第1の脚部672及び第2の脚部674を収縮位置と拡張位置との間で動かす。第2のループ676の第1の脚部678及び第2の脚部680は、ルーメンを通って延びるアクチュエータに連結され、それにより、アクチュエータの動きが、第1の脚部678及び第2の脚部680を収縮位置と拡張位置との間で動かす。第1のループ670及び/又は第2のループ676は、拡張位置で遠位開口部に対し完全に遠位に配置されてもよい。第1のループ670及び第2のループ676は、収縮位置にあるとき、超弾性範囲内の超弾性物質を含むことができる。
【0084】
図12を参照すると、組織マニピュレータ700は、物質を受け入れるバスケット706を形成するために第1のループ704に連結された凹状要素702を有することができる。凹状要素702は、第1のループ704の第1の脚部714及び第2の脚部716から独立したシャフト713のルーメン712内で移動可能な他端710とともに、第1のループ704と一体に形成された一端708を有し得る。交差要素715もまた、第1のループ704と一体的に形成され、また、凹状要素702と一体的に形成されてもよい。あるいは、両端708、710は、ループ704と一体的に形成されてもよい。
【0085】
別の組織マニピュレータ700Aが
図13に示されており、同一の参照番号は同一又は類似の構造を指す。2~3個の凹状要素702Aであり得る凹状要素702A。マニピュレータ700Aは、第1の脚部714A及び第2の脚部716Aを備えた第1のループ704Aを有する。凹状要素702Aの第1の端部708aはループ704Aと一体に形成されてもよく、一方、第2の端部710Aはルーメン712A内で独立して移動可能であってもよい。ループ704A及び凹状要素702Aは、3対1を超える幅対厚さ比を有するリボン形状の材料で作られて、1対1比を有するワイヤと比較してより閉じたバスケット706Aを作成してもよい。
図14を参照すると、別の組織マニピュレータ700Bが示されており、同一又は類似の参照番号は同一又は類似の構造を指している。マニピュレータ700Bは、ネット703である凹状要素702Bを備えた第1のループ704Bを有する。ネット703は、ループ704Bに一体的に形成されるか、ループ704Bに取り付けた別個の要素であってもよい。
【0086】
図15を参照すると、別の組織マニピュレータ700Cが示されており、同一又は類似の参照番号は同一又は類似の構造を指している。マニピュレータ700Cは、第1の端部708Cに一体的に形成された2~3個の凹要素702Cであり得る凹要素702Cを備えた第1のループ704Cを有し、シャフト713C内のルーメン712C内で独立して移動可能な第2の端部710C、又はループ704Cに取り付けられている別個の要素を有し得る。マニピュレータ700Cは、ループの任意の2つの側の間に相互接続要素がなく、凹状要素702C間に相互接続要素を含まなくてもよい。
【0087】
図16及び17を参照すると、別の組織マニピュレータ700Dが
図16に示されており、同一の参照番号は同一又は類似の構造を指す。組織マニピュレータ700Dは、それぞれ対応する凹状要素702D及び702Eを備えた第1のループ708D及び第2のループ708Eを有する。第1のバスケット706D及び第2のバスケット706Eは、
図17の入れ子位置と、
図16に示すように2つのバスケットが互いに対向する位置との間で移動可能である。
【0088】
再び
図12を参照すると、組織マニピュレータ700が更に説明され、本明細書で説明されるすべての態様は他の組織マニピュレータ700A~700Dすべてに適用可能であり、それぞれに明示的に組み込まれることが理解される。ループ704は、領域を最大化する方向OAで画定された領域を区切る不偏形状を有する。この領域は、同じ領域の円の直径に等しい有効直径を有する。第1のループ704は、収縮位置から拡張位置に移動するときに、不偏形状に向かって移動する。第1のループ704は、4.5mmから6.5mm又は5.0mmから6.0mmの有効直径を有し得る。本明細書では他のサイズも考慮されることを理解されたい。本明細書で使用される場合、ループの「領域」は、領域を最大化する方向OAによって決定される。第1のループは、シャフト713の遠位端で長手方向軸LAに対して垂直から45度以内にある第1のループ方向で拡張される。
【0089】
再び
図13を参照すると、本明細書に記載のデバイス及び方法のいずれかとともに使用できる回転カッター740が示されている。回転カッター740は、一連の歯746、鋭利な縁、隆起スパイク、又は他の任意の適切な形状であり得る遠位端744に切断要素742を有する。本明細書で使用する場合の回転とは、本発明の範囲から逸脱することなく、一方向に回転し、次に逆の方向に戻って回転することを意味する場合がある。回転カッター740は、望みに応じて使用するために独立して位置決め及び移動することができ、又は点線の作業位置750によって示される作業位置に固定することができる。回転カッター740は、作業位置750にあるときにシャフト713Aの遠位端751からくぼませることができるため、回転カッター740がシャフト713Aの遠位端で開口部754から露出しない。本明細書に記載の組織操作デバイスは、回転カッター740と係合するように組織を押す、引く、絞る、又は他の方法で操作するために使用されてもよい。回転カッター740は、物質をその中に吸引するための吸引ルーメン752を更に有してもよい。
【0090】
ここで
図18A~18D及び
図19を参照すると、眼内の物質を切断し、特定の用途において、水晶体嚢内に収容されている間に水晶体全体を切断するための切断デバイス800が示されている。切断デバイス800は、
図18Aの第1の位置と
図19の第2の位置との間で互いに対して移動可能な第1のシャフト部分804及び第2のシャフト部分806を備えたシャフト802を有する。細長い要素808は、第1のシャフト部分804に連結された第1の端部810と、第2のシャフト部分806に連結された第2の端部812とを有する。切断デバイス800は、ループ814を形成し、細長い要素808の少なくとも一部は、シャフト802とともにループ814を形成する。ループ814は、第1及び第2のシャフト部804、806が第1の位置から第2の位置に移動すると、
図18Aの収縮位置から
図19の拡張位置に移動する。ループ814は、水晶体嚢と水晶体全体との間でループ814を進めるために拡張されてもよい。物質はループ814の開放領域813に配置され、その後ループ804を収縮することにより切断する。
【0091】
細長い要素808は、水晶体嚢内の水晶体全体の切断を容易にする方法で拡張する。細長い要素808は、第1の可撓性部分820と、任意選択で、その間に中間部分824を有する第2の可撓性部分822とを有してもよい。細長い要素808は、
図18Cに示されるように最初に横方向外向きに拡張する。第1及び第2の可撓性部分820、822が曲がり始めると、ループ814は、中間部分824からそれぞれ近位及び遠位に延びる近位部分826及び遠位部分828を有する。可撓性部分は、中間部分824よりも曲がりにおいて少なくとも1.5倍硬くてもよい。更に、
図18Aに示されるように収縮されるとき、細長い要素808は、ループを偏向及び拡張するように細長い要素808が変形された状態で、不偏位置にあり得る。細長い要素808はまた、細長い要素808を変形させるのに必要な力を小さくしつつ、拡張位置への移動を容易にするプリセット形状を有してもよい。
【0092】
ここで
図20A~20C及び
図21A~21Bを参照すると、眼内の物質を切断するための別の切断デバイス900が示され、これは特定の用途では、水晶体の前面を露出する開口部OP(嚢切開など)を通して水晶体全体WLを水晶体嚢CB内で切断するためのものである(
図19を参照)。シャフト902は、デバイス900によって形成されるループ908が収縮位置から拡張位置に移動するように、
図20Aと
図20Bの位置の間で互いに対して移動可能な第1のシャフト部分904と第2のシャフト部分906を有する。細長い要素910は、第1のシャフト部分904に連結された第1の端部912と、第2のシャフト部分906に連結された第2の端部914とを有する。ループ908は、少なくとも部分的に細長い要素910によって形成され、ループ908はまた、シャフト902の一部によっても形成されている。
【0093】
ループ908は、第1及び第2のシャフト部分904、906が第1の位置から第2の位置に移動するとき、第1の端部912が、細長い要素910の第2の端部914に隣接するシャフト902に対して少なくとも120度の角度CAだけ変化する縦方向LFEを有するように拡張される。
図21Aは、約180度の角度CAを示している。
【0094】
シャフト902は、可撓性遠位端920も含むことができ、細長い要素910の第1の端部912はシャフト902の可撓性遠位端920に連結されている。シャフト902の可撓性遠位端920は、第2の端部914に隣接するシャフト902の長手方向に対する第1の端部912の方向の変化に寄与し得る。可撓性遠位端920は、第1及び第2のシャフト部分が第1の位置から第2の位置に移動するとき、少なくとも30度の角度COだけ向きを変えることができる。
【0095】
細長い要素910の第1の端部912は、第1の端部912が少なくとも120度の角度で第1のシャフト部分904に対して回転するようにピン止め接続を有してもよく、第1及び第2のシャフト部分が第1の位置から第2の位置に移動するとき、180度±45度であってもよい。ループ908は、ループ908が収縮位置から拡張位置に移動するときに、シャフト902の遠位端を越えて遠位に前進する遠位部分930を有する。ループ908が収縮位置から拡張位置に移動するときに、ループ908がシャフト902の遠位端を越えて遠位に前進するように、細長い要素の第1の端部912は向きを変える。第2の端部914は、第2のシャフト部分906へのピン接続934などの回転可能な接続932を有することもできる。第2の端部914は、第1及び第2のシャフト部904、906が第1の位置から第2の位置に移動するときに、第2の端部に隣接するシャフトに対して90度±45度だけ回転して向きを変えることができる。細長い要素912は、
図21A及び
図21Bの位置に変形された細長い要素912とともに、
図20Aの不偏位置にあり得る。もちろん、細長い要素912は、
図21Bと同様のプリセット形状を有してもよい。
【0096】
図22A、22B、23A、及び23Bを参照すると、眼から物質を吸引するための別のデバイス940が示されている。以下により詳細に説明するように、デバイス940は、パルス真空及び選択的にパルス間で短い逆流を伴うパルス真空を適用するように構成される。このパルス真空構成により、前房の虚脱を引き起こすことなく、より大きな吸引ルーメン直径を通して完全な真空圧をかけることができる。したがって、完全な真空を適用することができるが、真空は、例えば弁により短いパルスで適用される。本明細書に記載される他の吸引デバイスのすべての方法及び物理的特性は、デバイス940に等しく適用可能であり、そのような使用及び特性はすべて、本明細書に明示的に組み込まれる。例えば、吸引経路の体積部、ルーメンのサイズ、遠位吸引体積部、及び使用方法はすべて本明細書に明示的に組み込まれている。
【0097】
デバイス940は、ハンドヘルドユニット960のハウジング962に連結され、そこから延びる細長いシャフト961を有するハンドヘルドユニット960を含むことができる。ルーメン963は、シャフト961を通って遠位端965の開口部964まで延びる。ルーメン963は、吸引源から開口部964まで延びる吸引経路966の一部を画定する。吸引経路966は、吸引源及び遠位吸引体積部967による吸引圧力の影響下で吸引体積部を画定する。吸引源は、ハンドヘルドユニット960内、上、又はそれに取り付けることができる。
【0098】
デバイス940は、ハンドヘルドユニット960に連結され、吸引経路966に沿って配置された弁968を有する。弁968は、吸引経路966を遮断する
図22Aの閉位置から、弁968によって提供される最大の吸引経路を画定する完全に開いた位置まで移動可能である。
図22Bは、部分的に開いている弁を示している。弁968は、以下に説明するように、閉位置と完全開位置との間の任意の位置に配置することもできる。弁968は、吸引経路966を開閉するために弁968によって開閉される開口970に対して移動可能である。弁968は、弁968を動かして配置するために使用されるワイヤ972に連結された可動要素971であり得る。バネ973が弁968に作用して、弁968を閉じた状態に付勢する。
【0099】
ワイヤ972は、弁968を変位及び位置決めするように構成された
図23A及び23Bに示されるアクチュエータ942に連結され得る。アクチュエータ942は、以下で説明するように使用するためのフットペダル944を含むことができる。他の任意の適切なアクチュエータ942も同様に使用され得る。例えば、アクチュエータ942は、ハンドヘルドユニット960上に配置することができ、又はアクチュエータはハンドヘルドユニット960から離れた位置に置くことができる。フットペダル944は、
図23Aに示されるように吸引が供給されないという点で、オフ又は静止位置にあり得る。フットペダル944は、ベース947に取り付けられた支持体に連結された第1のピボット945を有する。フットペダル944は、リンケージ950の第1の端部949の近くに位置する第2のピボット948を有し、フットペダル944の動きを減衰させるための緩衝器(図示せず)を含んでもよい。リンケージ950の第2の端部951はピボット939を有し、フットペダル944の位置を示すセンサ941を含むことができる。フットペダル944が踏み込まれると、変位量は、回転位置センサ941などの任意の適切な方法で測定され得る。リンケージ950の第2の端部951は、ベース947に対して摺動可能な支持スレッド946に取り付けることができる。
【0100】
アクチュエータ942は、スライダ958に連結された接続アーム957を駆動するモータ956を有することができる。スライダ958は、モータ956の制御が弁968の位置を制御するように、ワイヤ972(
図23A及び23Bを参照)に連結されている。アクチュエータ942は、真空源974にも連結され、真空源974は、任意の適切な源であり得、例えば、吸引源は、ポンプ、ベンチュリを含み得るか、本明細書の他の箇所で説明されるようなバネ仕掛けのプランジャを備えたシリンジであり得る。吸引源は、本明細書の他の箇所で説明するようにハンドヘルド部分内にあってもよく、ハンドヘルド部分から離れていてもよい。アクチュエータ942は、任意の適切な方法で、本明細書の他の箇所で説明されるように、吸引の大きさを制御する。弁968は、閉位置と完全開位置との間の部分開位置に移動可能であり、その間の任意の位置に配置することができる。部分開位置は、完全開位置の断面の流れ領域の5~15%である断面の流れ領域を有することができる。本明細書で使用する場合、開口率は、開口970に対する弁968の長手方向位置に概ね比例する。部分開位置はまた、完全開位置の断面の流れ領域の15%未満の開位置であり得る。
【0101】
支持スレッド946は、フットペダル944が変位したときに横方向に変位するようにベース947に摺動可能に取り付けられている。支持スレッド946はまた、モータ956も担持する。真空源974は、コネクタに連結されたルーメン(図示せず)とは無関係にワイヤ972が移動できるように、ベース947に独立して取り付けられている。制御システム991は、モータ956及び真空源974に連結されて、本明細書で説明されるようにこれらの構成要素のそれぞれを制御する。
【0102】
アクチュエータ942は、弁968及び吸引源974に動作可能に連結され、任意の従来の方法で操作され得る。例えば、弁968は、第1の位置と、より多くの開口970を露出する第2の位置との間を移動して、吸引圧力を定期的に増減させることができる。
【0103】
別の態様によれば、アクチュエータ942は、今説明したように、弁968及び吸引源974も制御することができる。アクチュエータ942が最初に
図23Aの位置から変位されると、アクチュエータ942は、オフ位置からのアクチュエータ942の変位の第1段階中に弁968を部分開位置に移動させる。第1段階の間、真空源974は、アクチュエータ942の変位が増大するにつれて真空/吸引の圧力を増大させる。弁968は、真空圧力が570mmHgであり得る、目標最大圧力(目標圧力760mmHg)の少なくとも75%に達するまで、部分開位置にとどまり得る。第1段階はまた、目標圧力に達するまで継続し得る。別の言い方をすれば、アクチュエータ942は、アクチュエータ942の変位の第1段階中に目標圧力に達するまで、弁968が半分以下しか開かないように制御する。目標圧力はまた、結果が本明細書に記載の方法で目標圧力に到達している限り、実際の圧力に関係なく完全な吸引圧力に達するまで、圧力を調整せずに吸引圧力を増加させるだけで、到達させてもよい。
【0104】
一旦目標圧力に到達すると、アクチュエータ942(例えばフットペダル944)のさらなる変位は、少なくとも1Hz(又は1~10Hz)の速度で吸引圧力が増減する変位の第2段階を画定する。第2段階中、弁968は第1の位置と第2の位置との間を移動し、第2の位置は流路に沿って第1の位置よりも大きな断面の流れ領域を提供する。第1の位置は、部分開位置でも閉位置でもよく、同様に、第2の位置は、第1の位置よりも大きな流れ面積を提供する限り、完全開位置又は他の中間位置でもよい。弁968が第1の位置で開いているとき、第1の位置の断面の流れ領域は、弁968の完全開位置に関連する断面の流れ領域の少なくとも5%、又は5~15%であり得る。第1段階と第2段階は、吸引圧力を即座に調整/サイクルする一部のシステムと方法を改善できる。第1段階は、所望の吸引圧力を確立するのに役立つ場合があり、これは次に、周期的/定期的又は調整された第2段階に移行する。
【0105】
アクチュエータ942は、第2段階に続く(又は第1段階の直後に)変位の第3段階を有してもよい。第3段階中、アクチュエータ942はまた、第1の位置と第2の位置との間に弁968を移動させ、弁968の第2の位置は流路に沿って第1の位置よりも大きな断面の流れ領域を提供する。操作の第3段階は、弁を第1の位置と第2の位置との間で移動させ、第2の位置は第1の位置よりも大きな断面の流れ領域を有する。アクチュエータ942の変位が増加すると、デューティサイクルが増加し、それにより、弁968が、第1の位置よりも第2の位置に近づいている時間が増加する。弁968は、この操作段階中に少なくとも1Hzの速度で移動することが好ましい。
【0106】
あるいは、アクチュエータ942は、弁968に動作可能に連結されているため、第3段階中のアクチュエータ942の変位の増加により、弁968の第2の位置が、吸引経路の増加する断面の流れ領域(例えば、露出される開口の増加量)を画定する。第1の位置は、第3段階中は同じままであり得、部分開位置であり得る。別の言い方をすると、第3段階中、アクチュエータ942は弁968に動作可能に連結されているため、アクチュエータ942(フットペダル944)の変位の増加により、第1の位置と第2の位置との間の距離が増加し、それにより、各サイクル中に開口のより多くが露出する。第2及び第3段階中は、真空源を完全な吸引圧力に維持することができる。本明細書で使用される場合、用語「第1」、「第2」及び「第3」は、特に特許請求の範囲において交換され得る。例えば、特許請求の範囲は、記載されたばかりの第2段階が省略された場合、記載されたばかりの第1及び第3段階を第1及び第2として列挙するように形成され得る。更に、第2段階は、第3段階の開始時に第2段階が確立されるという点で、第3段階の一部を形成してもよい。
【0107】
弁968はまた、吸引経路と反対方向に吸引経路を通して物質を移動させることにより吸引経路をパージするために、吸引経路に沿って移動可能であってもよい。この目的のために、弁968は、弁968が吸引と反対の方向、すなわち吸引経路を通って開口部964に向かって遠位方向に物質を押すように、閉位置を超えて遠位に移動可能である。弁968は、(第1の位置から第2の位置へ、そして第1の位置へ戻る)移動の各サイクル中に吸引と反対方向に物質を変位させることができる。吸引経路内の物質は、この方法でパージされ、吸引経路に引っ掛かった、又は先端に付着した物質を取り除くのに役立つ。弁968の変位は、弁968によって変位される体積部を画定するストップ975によって制限される。
【0108】
図24A~24Bを参照すると、弁968Aの最大変位を調整し、したがって弁968Aによって変位される体積部を調整する調整可能なストップ975Aを有する別のデバイス940Aが示されている。調節可能なストップ975Aは、調節可能なストップ975Aの位置を調節するために使用者によって手動で操作可能なつまみねじ976に連結されている。ストップ975Aは、弁968Aの空洞977に配置され、弁968Aがストップ975Aに接触するとき、弁968Aの動きを制限する。
図25A~25Bを参照すると、弁968Bに係合するカム978に連結された調整可能なストップ975Bを有する別のデバイス940Bが示されている。カム978は、使用者がダイヤル986を使って回転させて、弁968Bの最大変位及び変位した物質の体積を調整する。
【0109】
調整可能なストップ975A、975Bは、オンデマンドパージ機能も提供する。例えば、ストップ975A、975Bは、最大遠位変位が弁の閉位置に対応するように最初に配置されてもよい。例えば、ルーメン内の又は遠位端に付着した物質を取り除くために逆行パージが望まれる場合、ストップ975A、975Bは、閉位置を超えた遠位の移動を可能にする位置に移動することができる。弁968が閉位置を超えて遠位方向に移動すると、弁968はOリング979に沿った吸引経路でシールし、それにより、物質を吸引と反対方向に(すなわち、遠位開口部に向かって)移動させるときに、弁968が容積式ポンプのように動作する。また、弁968は、(物質を反対方向に移動させた後)物質を吸引方向に引き込み、それにより、弁968が吸引方向に容積式ポンプのように動作し、開口970が開くときに逆流中の吸引の流れの再確立を支援できる。
【0110】
眼内の物質を吸引するための更に別のデバイス940Cが
図26に示されている。デバイス940Cは、ルーメン981に流体的に連結された逆行性流れチャネル980を含み、逆行性流れ要素982は、逆方向流れチャネル980を介してルーメン981を反対方向に流体を移動させて、ルーメン981及び遠位端に付着した物質を取り除くように構成される。逆行性要素982は、プランジャ/ピストン983、ブラダ、又は流体を動かすための他の任意の適切な機構であり得る。ピストン983は、つまみアクチュエータ984に連結されているが、他の任意の適切なアクチュエータを使用してもよい。
図24A~24B及び25A~25Bのデバイスの調節可能なストップ975A、975B、ならびに
図26の逆行性流れチャネル980及び逆行性流れ要素982は、
図22及び
図23のデバイス940(又は本明細書に記載の他の任意の適切なデバイス)に組み込むことができ、このような組み合わせには、組み合わせに適用可能であり、明示的に本明細書に組み込まれる他のデバイスのすべての使用、方法、及び特性が含まれる。
【0111】
本明細書では、眼の処置中に標的部位に存在する物質の切断、断片化、乳化、吸引、及び/又は吸気を含むがこれらに限定されない眼科処置に有用な1つ以上の機能を実行するように構成された様々なデバイスについて説明する。本明細書で使用される場合、「物質」には、流体(眼から若しくは眼に提供される)、組織、又はレンズ状組織、硝子体組織、細胞などの組織の断片、及び眼の処置(白内障処置、硝子体切除処置など)の間に存在し得るその他の任意の流体若しくは組織又はその他の物質が含まれる場合がある。真空を適用するように構成された本明細書に記載のデバイスは、流体を送達するように構成されてもよい。本明細書に記載される、真空を適用し、及び/又は流体を送達するデバイスは、手術部位内及び手術部位の近くで物質を切断、断片化、乳化、又は別の方法でより小さくするように構成されてもよい。真空の適用を可能にする本明細書に記載のデバイスは、散在するパルス正圧の有無にかかわらず、パルス真空を使用してその真空を提供できる。
【0112】
本明細書に記載されるデバイスの様々な特徴及び機能は、それらが組み合わされて明示的に説明されていない場合でも、本明細書に記載される1つ以上のデバイスに適用され得る。本明細書に記載のデバイスの様々な特徴及び機能は、水晶体超音波乳化吸引システム、硝子体切除システム、及び白内障手術又は硝子体切除手術などの実施に有用な他のツールを含むがそれらに限定されない、手術部位又はその近くの組織を切断、断片化、乳化、又はそうでなければ衝撃を与えるのにも有用な、当技術分野で知られている従来のデバイス及びシステムに適用できることも理解されたい。
【0113】
図27A~27H及び
図28A~28Nは、眼の処置中に物質を切断及び吸引するように構成されたデバイスの相互に関連する実装形態を示している。これらのデバイスは、透明角膜切開を通して、最小限に侵襲的なab interno法で白内障手術を行うことができる。本明細書に記載するデバイスは、眼から水晶体を除去するため、より少ない操作と少ないエネルギーに依拠している。デバイスは、水晶体超音波乳化吸引をほとんど又はまったく伴わずに、小さな切開部を介して簡単に除去できる単一の切断によって、より小さな水晶体片を作成するように構成されている。本明細書に記載のデバイスは、水晶体超音波乳化吸引をほとんど又は全く伴わずに、in situで水晶体を切断して同じデバイスで吸引によって除去できる小さな水晶体破片にするように構成されたオールインワンデバイスであり得る。
【0114】
図27A~27Hは、ハンドヘルドユニット2760のハウジング2762に連結され、そこから長手方向に延びる遠位の細長い部材又はシャフト2761を有するハンドヘルドユニット2760を含むデバイス2700を示す。シャフト2761の少なくとも遠位端領域は、白内障処置中などに、眼内の物質を切断、吸引、及び/又は注入するために、最小限に侵襲的な方法で眼に挿入されるように構成される。シャフト2761は、振動するように構成された細長い部材であり得る。
【0115】
本明細書で使用される場合、「振動」又は「振動運動」は、パターンに従って発生し、正弦波である必要がない任意の周期的、反復運動を含むことができる。振動運動は、ハンドヘルドユニットに対して前後に生じる往復摺動運動を含むことができる。振動運動は、その長手方向軸に沿って細長い部材を繰り返し前進及び引き込むことを含むことができる。繰り返される前進及び引き込みは、長手方向軸に沿って起こり得るが、振動運動がとる経路は直線である必要はない。移動経路は、楕円経路又は曲線経路に沿って非直線的に(すなわち、移動の少なくとも一部の間に長手方向軸から離れて)生じる可能性がある。移動経路は、デバイスの長手方向軸を中心に回転、軌道、ねじれ、又は細長い部材が前後及び左右に移動する三次元の動きを含む、デバイスの長手方向軸に対する他のタイプの動きであり得る。振動運動には、振動のサイクルのどこで運動が起こるかに応じて変化する可能性のある反復運動パターンのプロファイルが含まれる。以下でより詳細に説明されるように、振動運動はプロファイルが非対称であり得る。
【0116】
本明細書では、細長い部材の様々な構成のいずれかが考慮される。いくつかの実装形態では、細長い部材は、振動する細長い部材を通して流体を送達及び/又は吸引できるように、それを通って伸びる内側ルーメンを有する管状の振動する細長い部材を含むことができる。他の実装形態では、振動する細長い部材は管状ではなく、代わりに中実要素として形成される。この実装形態において、振動する細長い部材は、外側管状部材内、及び治療部位に流体を受容及び/又は送達するようにサイズ決めされたシャフト間のギャップで往復運動することができる。細長い部材が内側部材及び外側部材を有すると記載されている場合、細長い部材は、物質を切断及び吸引するためにハンドヘルドユニットに対して振動するように構成された単一の管状要素で形成することもできる。細長い部材が、外側の管状部材内に同軸に配置された内側の細長い部材を有するものとして記載されている場合、内側の細長い部材は中実のロッドであり、内側ルーメンを含む必要はない。いくつかの実装形態では、細長い部材は、針先を含むことができる鋭利な切断先端部又は斜端を有する。
【0117】
「針」又は「針先」という用語の使用は、細長い部材が、注射針のようにそれを通って延びるルーメンを有することを意味する必要はない。例えば、鋭利な針先を有する細長い部材は、外側管状部材を通って延びる中実要素であり得、外側管状部材のルーメンを通して吸引力が加えられるため、流体と組織が内側及び外側部材の間に延びる環状のギャップに引き込まれるようにする。他の実装形態では、細長い部材は、組織を切断するように構成された内側ルーメン及び遠位縁部を有する切断チューブである。遠位縁は鋭くすることができ、チューブへの開口部は、細長い部材の細長い軸に対してある角度で、又は細長い部材の細長い軸に対して垂直に切断することができる。切断チューブは、眼の水晶体の物質、水晶体断片、及び/又は眼からの流体などの物質をそれを通して吸引するように構成された内側ルーメンを有することができる。したがって、吸引力は、内側の細長い部材の内側ルーメンを通して加えられ得る。しかしながら、吸引力は、管状外側部材のルーメンを通しても加えられ得る。管状外側部材と内側部材との間のギャップは、例えば、約0.001インチから約0.100インチまで変化し得る。いくつかの実装形態では、ルーメンを有する内側の細長い部材と外側管状部材を通るルーメンの両方を通して吸引力を加えることができる。
【0118】
再び
図27A~27Hに関して、シャフト2761は、細長い部材2755が外側チューブ2759内で相互に摺動するように外側チューブ2759を通って延びて、外側チューブ2759内で同軸に配置された細長い部材2755を有することができるという点で、硝子体切除様式の切断要素であり得る。この様式の切断要素は、上記の
図6A~6Cに示すような先端と比較して、より硬い水晶体物質を切り刻んで除去するのに特に役立つ。外側チューブ2759は、ハウジング2762の遠位端領域に連結された静止管状要素であり得る。外側チューブ2759は、リテーナ2743によってハウジング2762の遠位端領域の内部に固定的に連結することができる。リテーナ2743は、リテーナが外側チューブ2759の近位端領域の周りに配置されるように、外側チューブ2759をそれを通して受け入れるように構成されたドーナツ型要素とすることができる。細長い部材2755もチューブ状要素とすることができるが、外側チューブ2759とは異なり、外側チューブ2759のルーメン内で振動させることができるように移動可能である。細長い部材2755の遠位先端部は、切断エッジ2754に形成され得る。いくつかの実装形態では、切断エッジ2754は、短く鋭利な斜端である(
図27C~27Dを参照)。外側チューブ2759及び細長い部材2755のそれぞれは、それぞれの遠位端領域の近くに開口部2753、2758を有することができる。いくつかの実装形態では、開口部2753、2758は、それぞれの側壁を通して形成される(
図27C~27Dを参照)。総じて、細長い部材2755の切断エッジ2754及び外側チューブ2759の開口部2753は、ポート2764を形成する。ポート2764は、外側チューブ2759に対する細長い部材2755の位置に応じてサイズを変えることができる。操作中、組織は、ポート2764を介してシャフト2761に入り、細長い部材2755が外側チューブ2759内で往復運動するとき、切断エッジ2754によって切開され得る。
【0119】
デバイス2700は、例えば、前房へのシャフトの挿入中に、開口部2753、2758上を摺動するための取り外し可能又は引き込み可能な外側シースを含むことができる。挿入中、シャフトの切断領域はシースで覆われたままになり、切断前に切開部又は他の眼の組織に引っ掛かることを防げる。挿入後、操作者が切断及び/又は吸引を開始する準備ができたら、シースを引き込むか、さもなければ取り外すことができる。引き込みは、使用者によって手動で行われ、又は、切断及び/又は吸引の作動時にデバイスによって自動的に引き込まれてもよい。切断/吸引が完了し、器具を眼から取り外す準備ができた後、シースを遠位方向に進めて、再び開口部2753、2758を覆うことができる。
【0120】
シャフト2761は、外側チューブ2759を通って延びる振動する細長い部材2755を含むものとして上述されている。外側チューブ2759は静止していてもよく、それにより、角膜切開又はそれを通ってシャフト2761が延びる他の組織が、細長い部材2755の振動運動による衝撃から保護される。シャフト2761は、外側チューブ2759なしで振動する単一の管状の細長い部材2755を含むことができる。しかしながら、シャフト2761は、例えば、細長い部材2755の振動運動に曝されることによる組織損傷から角膜を保護するために、振動する細長い部材2755の少なくとも一部を囲む保護シースを含むことが好ましい。保護シースは、シリコン又はより剛性の高い金属製ハイポチューブなどの弾性材料から形成することができる。保護シースは交換可能及び/又は引き込み可能であってもよい。保護シースの長さは様々である。保護シースは、シャフト2761が角膜切開を通って延びる領域を覆うように構成された最小の長さを有することができる。シースの色は、シースの長さに関する情報と、それがどのような目的に役立つかを提供できる。使用者は、振動する細長部材2755を覆い、例えば切断後の研磨又は清掃のために、処置中に異なる種類の先端部を使用することができる。保護シースの長さを長くすると、振動のストロークの半分がカバーでき、眼に対してより柔らかくなる。保護シースは、例えば組織がシャフト2761の端を「ロリポップ」するのを防ぐことにより、シャフトのルーメンの詰まりを防ぐのにも役立ち得る。
【0121】
本明細書の他の箇所に記載されるように、シャフト2761は、作業部位に灌注を送達するように構成された灌注スリーブを含むこともできる。灌注スリーブは、保護シースの少なくとも一部を覆うことができる。灌注スリーブと保護シースは、ハンドヘルドユニット2760から外れるように取り外し可能である。いくつかの実装形態では、灌注スリーブと保護シースは、単一のユニットとして(例えば、取り外し可能なキャップの一部として)一緒にハウジングから取り外されるか、個別に取り外される。一般的に、シャフト2761(存在する場合、保護シースと灌注スリーブを含む)は、角膜切開サイズを最小化するための眼への最小限に低侵襲的な処置に適した最大断面直径を有する。いくつかの実装形態では、遠位シャフト2761の最大断面直径は約1.25mmである。最大断面直径は、この直径より小さくても大きくてもよく、例えば、直径約2mm以下、直径約3mm以下、直径約4mmまで、又は直径約5mmまでであってよい。本明細書の他の箇所で説明するように、シャフト2761からの遠位開口部は、詰まりの問題を軽減するために、シャフト2761を通って延びるルーメンの内径に対してより小さい内径を有することができる。いくつかの実装形態では、シャフト2761の公称内径と遠位開口部の内径との間の差は、約0.003インチから約0.006インチの間であり得る。いくつかの実装形態では、シャフト2761は、約0.0375インチの公称内径を有し得、これは遠位開口部で約0.033インチまで狭くなる。したがって、先端部の直径よりも小さい眼組織片は、シャフト2761のルーメンに吸引され、遠位開口部の内径よりもルーメンの残りの内径が大きいため、ルーメン内に入ると塞がる又は詰まる可能性が低くなる。
【0122】
細長い部材2755は、細長い部材2755に動作可能に連結された駆動機構によって、ハンドヘルド部分に対して振動させることができる。駆動機構は、電気、圧電、電磁気、油圧、空気圧、機械式、又は当技術分野で知られている他の種類の駆動機構など、様々であり得る。いくつかの実装形態では、細長い部材2755は、ハウジング2762の内部に含まれるモータ2756を含む駆動機構によって往復運動する。モータ2756の構成は、様々な回転モータ、ステッピングモータ、ACモータ、DCモータ、圧電モータ、ボイスコイルモータ、又は他のモータのいずれかなど、様々であり得る。
【0123】
いくつかの実装形態では、駆動機構は、回転カム2769の近位端に(直接又はモータカプラー2789を介して)連結されたギアヘッド2752を有するギアモータなどのモータ2756を含む。回転カム2769は、反対側の端部で、カム従動子2787に連結することができ、カム従動子2787は、細長い部材2755の近位端に固定的に連結される。ギアヘッド2752を駆動して回転カム2769を回転させることができ、これにより、モータ2756の回転運動がカム従動子2787の直線運動、したがって細長い部材2755の直線運動に変換される。
【0124】
いくつかの実装形態では、
図27E~27Hに示すように、回転カム2769は、ギアヘッド2752を受け入れるように構成された近位端にボア2789を有するほぼ円筒形の要素であり得る。カム従動子2787は、回転カム2769の遠位端を受け入れるように構成された近位端にボア2790を有することができる。回転カム2769は、バレルカムであり得る。カム2769の遠位端の外面は、カム従動子2787の対応するピン要素2793を受け入れるように構成されたチャネル2792を有する。ギアヘッド2752がデバイスの長手方向軸の周りにカム2769を回すと、ピン要素2793は、カム2769の外面の周りのチャネル2792を通って移動する。カム2769の外面のチャネル2792は、カム2769の第1の近位端領域から遠位端領域に向かって、次に遠位端領域から第1の近位端領域に向かって戻る楕円形の経路をたどる。回転中にピン要素2793がチャネル2792を通って移動すると、カム従動子2787は、デバイスの長手方向軸に沿って軸方向に移動するように促される。カム従動子2787は、少なくともわずかな回転の間、遠位方向に移動する。次いで、カム従動子2787は、少なくとも別のわずかな回転の間、近位方向に移動する。したがって、カム2769の完全な回転は、カム従動子2787及び細長い部材2755の軸方向の往復運動を提供する。本明細書では、細長い部材の振動運動を作り出すための他の駆動機構が考慮されることを理解されたい。
【0125】
再び
図27A~27Dに関して、細長い部材2755は、外側チューブ2759によって少なくとも部分的に覆われ得る。外側チューブ2759は、例えば、リテーナ2743によってハウジング2762に固定的に連結されてもよい。振動する細長い部材2755は、ポート2764に引き込まれた水晶体物質の小片を切断するために、切断エッジ2754と開口部2756との間に水晶体物質を閉じ込めることができる。シャフト2761の遠位端2765の近くのポート2764は、ポート2764から続く吸引経路を形成するルーメン2763と連通する。吸引経路を形成するルーメン2763は、細長い部材2755を通って、及び/又は細長い部材2755と外側チューブ2759との間に延びることができる。いくつかの実装形態では、ルーメン2763は、細長い部材2755を通って近位開口部2788まで延びる。
図27Bに最もよく示されているように、細長い部材2755は、近位端領域でカム従動子2787に連結することができる。細長い部材2755は、近位開口部2788が真空マニホールド2774のチャンバ2789と連通するように、ハンドヘルドユニット2760の内部に位置する真空マニホールド2774を通って延びる。近位開口部2788は、細長い部材2755の振動運動中、このチャンバ2789内に維持される。真空が真空マニホールド2774内に適用されて、切開された組織を眼からルーメン2763を通して吸引する。切開された組織は、ポート2764でルーメン2763に入り、近位開口部2788を通してルーメン2763を出る。運動に対する低い抵抗を提供する摺動式Oリングなどの複数のシール2794は、シャフト2761の周りの流体の通過を防止及び/又は実質的に減少させることができる。デバイス2700は、デバイス2700が本明細書の他の箇所で説明するような完全にハンドヘルド型のデバイスであるように、ハンドヘルドユニット2760から離れているか、又はハンドヘルドユニット2760の内部にある吸引源に連結することができる。また、本明細書の他の箇所で説明されるように、細長い部材2755は、外側チューブ2759を含む必要はなく、それ自体で組織の断片化を実行することができる。いくつかの実装形態では、細長い部材2755は、ポートが切断面を有する壁を通るポート2764を有する壁を含むことができる。他の実装形態では、細長い部材2755は、斜角が付けられた切断先端部などの切断先端部を含むことができる。切断先端部は、細長い部材2755を通って延びるルーメンからの遠位開口部を含むことができる。眼科物質(ocular material)は、細長い部材2755のルーメン、外側チューブ2759のルーメン、又は両方のルーメンを通して吸引され得る。
【0126】
ポート2764は、眼組織を完全に切り刻んで吸引するために最適化された幅を有することができる。いくつかの実装形態では、ポート2764の軸方向の長さは0.05インチ超、最大約0.175インチであり得る。ポート2764の幅は、0.015~0.06インチの範囲であり得る。完全な真空状態(例えば、約15inHgから最大約inHg)でのより広いポート2764は、前房虚脱のリスクを高める可能性がある。したがって、本明細書の他の箇所で説明するように、真空は、例えば、1つ以上の弁の作動により、負圧のパルスで適用することができる。更に、負圧のパルス間に正圧を加えることにより、負圧のサイクルに短い逆流を散在させることができる。本明細書の他の箇所で説明されているように、負圧パルスと正圧パルスのサイクルは非常に速く(例えば1Hz)、非常に小さい体積(例えば5cc)であり得る。
【0127】
上述のように、本明細書で説明するデバイスは、ボタン、スライダ、スイッチ、又は他の入力などの1つ以上の使用者入力又はアクチュエータを含むことができる。1つ以上の使用者入力は、デバイス自体で、デバイスから離れて、又はその両方でし得る。デバイスは、デバイスの各機能を作動させるための個別の入力を含むことができる(すなわち、吸引、例えばパルス間の逆流を伴うパルス真空、切断、注入を含む)。あるいは、入力は、デバイスの複数の機能を作動させるための多方向ボタンであり得る。例えば、デバイスは真空及び切断用に構成できる。1つ以上の入力により、真空のみの機能及び真空プラス切断機能を作動させることができる。一般に、真空なしでの切断は望ましくないが、本明細書では切断のみの機能も考慮される。例としてであって限定するものではないが、使用者は第1のボタンを作動させるか、ボタンを第1の位置に配置して、真空のみの機能をオンにすることができる。第1のボタンを作動させた後、使用者は第2のボタンを作動させるか、ボタンを第2の位置に配置して、真空プラス切断機能をオンにできる。その後、使用者は真空を継続しながら切断を開始できる。一部の実装形態では、第2のボタンの作動は、第1のボタンが作動された後にのみ可能である。以下でより詳細に説明する別の実装形態では、入力は、真空を両方オンにして細長い部材を振動させるように構成された第1の位置(すなわち、真空プラス切断機能)と、細長い部材を通る真空が続く間、細長い部材の振動を一時停止するように構成された第2の位置を持つ多方向アクチュエータであってもよい。
【0128】
図28A~28Nは、デバイス2700の完全ハンドヘルドの実装形態を示している。デバイス2700は、ハウジング2762に連結され、そこから長手方向に延びる遠位の細長い部材又はシャフト2761を有するハンドヘルドユニット2760を含む。シャフト2761は、ハンドヘルドユニット2760に対して相互に摺動するように構成された振動する細長い部材であり得る。本明細書の他の箇所で説明されるように、シャフト2761は、回転、軌道などを含む他の種類の運動を受けるように構成され得る。加えて、振動する細長い部材は管状であり得、流体が振動する細長い部材を通して送達及び/又は吸引され得るように、それを通って延びる内側ルーメンを有し得る。他の実装形態では、振動する細長い部材は管状ではなく、代わりに中実要素として形成される。この実装形態において、振動する細長い部材は、外側管状部材内、及び治療部位に流体を受容及び/又は送達するようにサイズ決めされたシャフト間のギャップで往復運動することができる。
【0129】
再び
図28A~28Nに関して、シャフト2761は、上記のように往復、振動する方法で細長い部材2755を摺動させるように構成された駆動機構に動作可能に連結された外側チューブ2759を通って延びて同軸に配置される細長い部材2755を有する硝子体切除様式の切断要素であり得る。シャフト2761の遠位端2765の近くのポート2764は、ポート2764から真空マニホールド2774に向かう吸引経路を形成するルーメン2763と連通する。ルーメン2763は、細長い部材2755を通って細長い部材2755の近位開口部2788まで延びることができる。他の実装形態では、ルーメン2763は、外側チューブ2759の内面と細長い部材2755の外面との間の外側チューブ2759を通って、ルーメン2763から近位開口部2788まで延びることができる。近位開口部2788は、真空マニホールド2774の真空チャンバ2703と連通している。真空を真空マニホールド2774内に適用して、切開された組織をルーメン2763を通して眼から吸引し、ルーメン2763からの物質を真空チャンバ2703に全部移すようにすることができる。
【0130】
上述のように、デバイス2700は、ハンドヘルドユニット2760の内部にある吸引源又は真空源を含むことができる。真空源は、ベローズ機構、ダイアフラムポンプ、ベンチュリポンプ、エントラップメントポンプ、容積式ポンプ、再生ポンプ、運動量移送ポンプ、マイクロポンプなどを含むがこれらに限定されない、様々な構成のいずれかを有するポンプであり得る。真空源は、ピストンポンプに限定される必要はなく、細長い部材のルーメン内に負圧を生成するように構成された様々な機構のいずれかを組み込むことができる。
【0131】
図28E~28Kに最もよく示されるように、真空マニホールド2774は、真空マニホールド2774の真空チャンバ2703がピストンマニホールド2798の1つ以上のポンピングチャンバ2705と流体連通するように、ピストンマニホールド2798に連結することができる。ピストンマニホールド2798は、デバイスの近位端内に配置されたモータ2756などの駆動機構によって動力が供給されるそれぞれのポンピングチャンバ2705内で移動可能なピストン2799を収容する。モータ2756によって動力が供給される1つ以上のピストン2799は、シャフト2761を介した物質の吸引のために、真空チャンバ2703と同様にポンピングチャンバ2705内に真空を生成する。実装形態では、デバイス2700は、それぞれのポンピングチャンバ2705内に移動可能に配置された1つ、2つ、又は3つのピストン2799を含むことができる。任意の数のピストン2799をそれぞれのポンピングチャンバ2705内に配置できることを理解されたい。それらのポンピングチャンバ2705内で前後に跳ね返る複数のピストン2799は、負圧のパルスで細長い部材のルーメンの遠位部分に送達される拍動性の真空又は完全真空を作り出す。拍動性の真空は、前房の崩壊のリスクなしに、遠位シャフト2761を介した完全な真空の適用を可能にする。
【0132】
いくつかの実装形態では、負圧のサイクルは、真空の減少又は真空なしの短期間によって散在する、短期間の真空を含む。いくつかの実装形態では、負圧のサイクルは、短期間の正圧によって散在する短期間の真空を含み、それにより、ピストン運動の各サイクル中に遠位シャフト2761を通る流体の短時間の逆流をもたらす。真空のパルス間に正圧が適用されるかどうかに関係なく、拍動性の真空は、約10inHgから最大約30inHgの間であり得、好ましくは可能な限り完全な真空に近い、細長いシャフトを通る不連続な負圧のパルスを生成する。いくつかの実装形態では、デバイスは、サイクリング周波数で細長い部材の内側ルーメンを通る不連続な負圧のパルスを生成することができる。デバイスは、同じサイクリング周波数を有する不連続な正圧のパルスを生成することもできる。したがって、不連続な負圧のパルスは、不連続な正圧のパルスによって散在している。パルスのサイクリング周波数は、例えば、少なくとも約0.5Hzから約5000Hzまで、又は1Hzから4000Hzの間、又は約10Hzから約2000Hzの間の比較的高い周波数であり得る。不連続な負圧のパルスは、サイクリング周波数で開口部を通して内側ルーメンに第1の量の物質を吸引する。不連続な正圧のパルスは、開口部を通して内側ルーメンからサイクリング周波数で第2の量の物質を排出する。サイクルごとに移動される物質の体積は様々であるが、一般的には比較的小さく、例えば約0.1mLから約1.0mLまで、又は約0.5mLである。いくつかの実装形態では、パルスごとに除去される流体の公称量は約100マイクロリットル、又は10マイクロリットルから最大約1000マイクロリットルの間である。物質の第2の量は、この流体量の一般的な範囲内の物質の第1の量よりも実質的に少ない可能性がある。不連続な負圧のパルスは、同じ周波数での真空の減少、真空なし、又は正圧の不連続な期間によって散在する可能性がある。
【0133】
真空チャンバ2703は、一方向弁2707によって調節されるそれぞれの開口部2706を介して1つ以上のポンピングチャンバ2705と流体連通するように構成される。一方向弁2707の構成は、ダックビル弁、ボール逆止弁、リフト逆止弁、ストップ逆止弁、及び単一方向の流体の流れ及び反対方向の流体の遮断流を可能にする他の種類の弁など、様々であり得る。ポンピングチャンバ2705内の第1の方向でのピストン2799の動きは、眼からの物質がシャフト2761のルーメン2763に引き込まれ、真空チャンバ2703に全部移され、ポンピングチャンバ2705へ一方向弁2707を通して引っ張られるように真空を作り出す。ポンピングチャンバ2705内での第2の反対方向でのピストン2799の動きは、ポンピングチャンバ2705からシステムの外へ物質を排出する。物質は、本明細書の他の箇所で説明するように、システムから、出口ポートに連結された廃棄エンクロージャに排出することができる。
【0134】
真空マニホールド2774は、更に排出チャンバ2709を含むことができる。排出チャンバ2709は、システムに引き込まれた物質がシャフト2761を通して押し戻されることなくシステムからパージされ得るように、真空チャンバ2703から密閉されている。チャンバ2703と2709との間のシールは、1つ以上のOリング2794によって提供され得る。上述のように、真空チャンバ2703は、開口部2706内に配置されたそれぞれの一方向弁2707を介して1つ以上のポンピングチャンバ2705と流体連通するように構成される(
図28Lを参照)。排出チャンバ2709は、それぞれの弁2713によって調節される他の開口部2711を介して1つ以上のポンピングチャンバ2705のそれぞれと流体連通している(
図28Mを参照)。弁2713の構成は、ボール型逆止弁など、様々であり得る。上述のように、それぞれのポンピングチャンバ2705内の第1の方向(例えば、デバイス2700の近位端に向かう)でのピストン2799の移動は、弁2707を介して真空チャンバ2703からポンピングチャンバ2705に物質を引き込む。それぞれのポンピングチャンバ2705内で第2の反対方向(例えば、デバイス2700の遠位端に向かう)でのピストン2799の移動は、物質を弁開口部2711を通して排出チャンバ2709に押し込む。この物質のパージ中に、1つ以上のポンピングチャンバ2705と真空チャンバ2703との間の一方向弁2707は、真空チャンバ2703、ルーメン2763への物質の逆流、及び切断先端部からの流出を防ぐ。しかしながら、1つ以上のポンピングチャンバ2705と排出チャンバ2709との間の開口部2711によって、少なくとも流れが弁2713により遮断されるまで、物質が排出チャンバ2709に自由に入り、最終的に排出チャンバ2709の出口ポート2715から出るようにできる。上述のように、近位方向でのピストン2799の移動は、ポンピングチャンバ2705内に真空を作り出す。弁2713のボール2717は、ポンピングチャンバ2705と排出チャンバ2709との間の開口部2711から離れるようにバネ2719によって近位に押され、それにより弁2713を開く。ピストン2799が遠位方向に移動すると、ポンピングチャンバ2705内で流体圧力が高まり、チャンバ内の流体圧力が増加し、物質が弁2713の開口部2711に向かって付勢される。弁2713のボール2717は、バネ2719が圧縮され、ボール2717が弁開口部2711に押し付けられて弁を閉じるように、バネ2719に対して遠位に押される(
図28Mを参照)。ポンピングチャンバ2705は、弁2713を閉じると実質的に物質を欠く。いくつかの実装形態では、ダックビル弁のようなシリコン弁のように、弁の1つ以上がわずかにコンプライアンス性であってもよい。コンプライアンス性の弁は、逆の正圧がかかると変形する場合がある。真空チャンバ2703とポンピングチャンバ2705との間の弁がコンプライアンス性の弁である場合、ピストンが遠位に移動し、ポンピングチャンバ2705から物質を排出するために正圧を生成するので、正圧はコンプライアンス性の弁の変形を引き起こす可能性がある。変形は、シャフト2761からの少量の流体の小さなパージ又は逆流を引き起こす可能性がある。この逆流は、ピストン2799の前後のサイクルごとに発生する可能性がある。いくつかの実施形態において、逆流は、ポンピングチャンバ2705の設計によって更に最適化され得る。ポンピングチャンバ2705において、ポンピングチャンバ2705を排出チャンバ2709に接続する出口開口部は、例えば、チャンバの側面に配置され、ピストン2799が出口開口部を越えて移動できるように構成されてもよい。この実施形態では、ピストン2799が出口開口部を越えて遠位に移動した後、流体排出のための他の経路はない。したがって、ピストン2799が遠位方向に移動し続けると、弁2713を閉じた後、ポンピングチャンバ2705内に正圧のモーメントが生じ、シャフト2761の遠位端で物質の短時間の逆流が生じる。
【0135】
図28J及び
図28Nにも最もよく示されるように、ピストン2799の各々は、ピストンヘッド2723a、2723bの間に延びるバネ2701によって囲まれた細長い中央ピストンロッド2721を含むことができる。遠位ピストンヘッド2723a及び摺動Oリングシール2794は、ポンピングチャンバ2705内に配置される。ピストンロッド2721、バネ2701、及び近位ピストンヘッド2723bは、ポンピングチャンバ2705の近位に位置するピストンマニホールド2798内のピストンチャンバ2704内に配置される。遠位ピストンヘッド2723a、摺動シール2794、及びピストンロッド2721は、ポンピングチャンバ2705内で近位端領域から遠位端領域まで摺動して、真空圧力を生成することができる。ポンピングチャンバ2705は、ピストンチャンバ2704及びバネ2701の外側寸法よりも小さい内側寸法を有する。したがって、ピストン2799がポンピングチャンバ2705の遠位端領域に向かって移動すると、バネ2701は、近位ピストンヘッド2723bとポンピングチャンバ2705の下端との間のピストンチャンバ2704内で圧縮される。
【0136】
バネ2701は、ポンピングチャンバ2705の近位端に向かって近位にピストン2799を駆り立てるように付勢されている。ピストン2799の近位に配置された回転カム2769は、ピストン2799をそれぞれのポンピングチャンバ2705の遠位端に向かって遠位に押しやるように構成される。カム2769が回転すると、ピストン2799の近位ピストンヘッド2723bに対して遠位方向の力が順次加えられる。ひいてはピストン2799のバネ2701が、順番に圧縮される。カム2769が更に回転すると、近位ピストンヘッド2723に対する遠位方向の力が順次除去され、バネ2701がピストン2799を順次後方に押して、一方向弁2707を介して各ポンピングチャンバ2705内に真空を生成する。
【0137】
図28J~28K及び
図28E~28Gに最もよく示されるように、モータ2756のギアヘッド2752は、モータカプラー2795を介して回転カム2769に連結され得る。モータカプラー2795は、ギアヘッド2752及び遠位端上の1つ以上の突起2796を受けるように構成された近位端にボア2789を有することができる。突起2796は、カム2769の近位端上の対応する楔形突起2797に当接して係合するように構成される。ギアヘッド2752が回転すると、カム2769が回転する。カム2769の遠位端は、ピストン2799の往復直線運動を提供するように構成されたカム表面2725を有する。カム表面2725は、楕円形、偏心、卵形、又はカタツムリ形であり得る。カム2769の回転の第1の部分の間、近位ピストンヘッド2723bは、カム表面2725の傾斜部分に沿って摺動し、ピストン2799は、デバイスの長手方向軸に沿って遠位に移動する。カム2769の回転の第2の部分の間、近位ピストンヘッド2723bは、カム2769によるピストン2799に対する遠位方向の力が解放されるように、カム表面2725を越えて摺動する。ピストンロッド2721を囲むバネ2701は、近位ピストンヘッド2723bをピストンチャンバ2704の近位端領域に向かって近位方向に付勢する。したがって、カム2769の完全な回転により、各ピストン2799の連続的な軸方向の動きが可能になる。細長い部材2755の移動は、以下により詳細に説明されるように、同様の回転カム機構を使用して生じ得る。
【0138】
図28Nに最もよく示されているように、ピストンストップ2727は、ピストンマニホールド2798の近位端領域に連結することができる。ピストンストップ2727は、回転カム2769を取り囲むほぼ円筒形の要素であり得る。ピストンストップ2727の遠位端領域は、ピストンマニホールド2798の各ピストンチャンバ2704の近位端領域に突出するように構成された1つ以上の突起2729を画定することができる。突起2729は、それぞれのピストンチャンバ2704の最も近位の端部領域に配置されたときに、それぞれのピストン2799の近位ピストンヘッド2723bに当接する。例えば、デバイス2700が3つのピストンチャンバ2704に配置された3つのピストン2799を含む場合、ピストンストップ2727は3つのピストン2799のそれぞれの近位ピストンヘッド2723bに当接するように構成された3つの突起2729を含む。ピストンストップ2727は、バネ2701の膨張時に近位方向へのピストン2799の直線移動、したがって達成可能なポンピングチャンバ2705の全体積に、ハードストップを提供する。ピストンチャンバ2704内の突起2729の相対位置は調整可能であり得る。いくつかの実装形態では、調整リング2730をピストンストップ2727の外面の周りに配置し、ハンドヘルド部分2760のハウジング内の1つ以上の窓2731を通じて使用者が利用できるようにすることができる(
図28A~28Bを参照)。調節リング2730は、ピストンストップ2727の外面上の対応するピン2732と係合するように構成されたねじ切り内面を有することができる。ピン2732は、ピストンストップ2727がデバイスの長手方向軸に沿って軸方向に移動するように、調整リング2730のねじ山内を摺動するように構成される。ピストンストップ2727がピストンマニホールド2798に対して更に遠位に位置するように調整されると、突起2729はピストンチャンバ2704内に更に延び、バネ2701の拡張時に近位方向へのピストン2799の直線移動を制限する。これにより、ポンピングチャンバ2705のサイズが制限される。ピストンストップ2727がピストンマニホールド2798に対してより近位に位置するように調整されると、突起2729はピストンチャンバ2704から引き出され、バネ2701の拡張時に近位方向へのピストン2799の直線移動を制限しない(又はより少ない程度に制限する)。これにより、ポンピングチャンバ2705のサイズが最大化される。
【0139】
デバイス2700のハンドヘルド部分2760は、比較的剛性の軽量材料で形成することができる。ハンドヘルド部分2760の少なくとも一部は、デバイス2700が再利用されるように構成された耐久性部分(例えば、モータ2756及び関連構成要素)及び使い捨て部分(例えば、ヒトの組織又は流体と接触する構成要素)を含むように、取り外し可能であり得る。いくつかの実装形態では、ハンドヘルド部分2760は、耐久性のある後部ハウジング部分と連結するように構成された使い捨ての前部ハウジング部分を含む。2つのハウジング部分は、ねじ山、スナップロックなどの様々な機構を使用して一緒に連結することができる。連結機構は、2つのハウジング部分を連結解除するように構成された解放ボタンを含むことができる。
【0140】
上述のように、拍動性の真空の量は、ピストンのハードストップなどで、後方方向へのピストンの移動を制限することにより調整できる。いくつかの実装形態では、使い捨て部分と再利用可能部分の相対的な関係は調整可能であり、順次、ピストンが後方に移動できる距離を制限できる。例えば、再使用可能部分が使い捨て部分上に更に配置されると、ピストンの移動はピストンのハードストップにより更に制限される。ピストンストップの位置は、複数の選択可能な真空設定を提供するために調整可能である。一部の手順、又は手順のある特定のステップでは、他の手順又は手順のステップよりも高い圧力がより望ましい場合がある。より高い圧力は、例えば、ピストンがサイクルごとにより長い距離を移動し、最大真空が達成されるように、より広い設定にピストンストップを作動させることにより選択できる。いくつかの実装形態では、アジャスタをクリックすることにより、ピストンストップの位置を「高真空」位置と「低真空」位置との間で切り替えることができる。他の実装形態では、位置決めされたピストンストップは、使用中に便利に選択される複数の真空設定のいずれかに「ダイアルイン」することができる。
【0141】
いくつかの実装形態では、真空源が真空の突然の上昇を引き起こして、真空プロファイルを形成し、パルス真空の適用中に角膜及び眼を効果的に上下に「跳ね返らせる」ことができる。例えば、ピストン2799が後方に跳ね上げられると、それにより真空が突然上昇し、「鋸歯」に似た真空プロファイルを形成する(すなわち、吸引-一時停止-吸引)。それぞれのポンピングチャンバ2705内のピストン2799の後方への移動を制限することで、ピストンが後方に跳ね返されるたびに生じる吸引の影響又は衝撃の量を減らすことができる。これにより、ピストンの制限から、ピストンが移動するたびに生じる最大の吸引が制限され、この急激な吸引が眼に与える影響が軽減される。ピストン2799の後方への移動ごとに生じる吸引力は、500mmHgより大きく、最大約700mmHgになる。
【0142】
いくつかの実装形態では、閾値真空に到達したかどうかに応じて、シャフト2761を自動的にバイパスする特徴を組み込むことにより、デバイスが最大真空の達成を制限される。例えば、抽気弁又は他のバイパス機構を組み込んで、閾値量の真空がシャフト2761の遠位開口部及び眼内に適用されるのを防ぐことができる。吸引をオン又はオフにするバイパスは、たとえシャフト2761への開口部が詰まっている場合でも、眼の内部で生成できる真空の最大量を制限できる。このバイパスは、閉塞の場合に真空が構築されるのを防ぎ、その閉塞を除去する際のサージを少なくすることができる。バイパス機構は、使用者が最大真空又は最大真空未満を適用する可能性を望むかどうかを選択できるように、調整可能又は選択可能にすることができる。
【0143】
上述のように、シャフト2761は、作業部位に灌注を送達するように構成された灌注スリーブを含むことができる。
図32A~32Bは、シャフト2761の遠位端領域の近くに灌注スリーブ3127を有するデバイスの実装形態を示している。灌注スリーブ3127は、使用中に灌注ルーメン3123から眼に流体を送達するように構成された1つ以上の灌注開口部3125を含むことができる。いくつかの実装形態では、デバイスは灌注流路と連通するコンプライアンス性の要素を組み込むことができる。コンプライアンス性の要素は、灌注ルーメン3123からの流体の量を保存するように構成されたバルーン又は他の充填可能な要素又はリザーバであり得る。コンプライアンス性の要素は灌注液で満たすことができるため、シャフト2761の遠位開口部を塞ぎ、真空がシャフト2761に突然突入した場合、コンプライアンス性の要素に蓄積された灌注液は、増加した真空により除去された体積を満たすために利用可能であり得る。コンプライアンス性の要素からの流体は、負圧の増加時に眼の中に引っ張られ、眼内の圧力のバランスを維持して、前房の損傷又は崩壊を回避することができる。
【0144】
本明細書の他の箇所で説明されるように、本明細書に記載のデバイスの細長い部材又はシャフトは、細長い部材に動作可能に連結される駆動機構によってデバイスのハンドヘルド部分に対して振動させることができる。駆動機構は、ハウジングを通って伸びるケーブルを介して、又は1つ以上のバッテリーで動力供給できる。動力は、トリガー、ボタン、スライダ、ダイヤル、キーパッド、タッチスクリーン、フットスイッチ、又は本明細書の他の箇所に記載の他の入力デバイスなどの1つ以上のアクチュエータ又は入力を介してデバイス2700に印加することができる。入力と動力は、デバイス自体に配置することも、デバイスから離れて配置することもできる。デバイスは、使用者の入力及び動力に応答する制御プロセッサを更に含むことができる。制御プロセッサは、駆動機構の1つ以上の態様を制御できる。制御プロセッサはプログラム可能で、使用者の入力を受け入れてデバイスの様々な調整可能な機能を調整できる(すなわち、細長い部材の移動距離、細長い部材の振動周波数、細長い部材の伸長速度プロファイル、引き込み速度プロファイル、最大伸長速度、最大引き込み速度、真空レベルなど)。制御プロセッサは、デバイス自体の入力によってプログラムすることも、入力を備えた外部コンピューティングデバイスなどによって遠隔でプログラムすることもできる。制御プロセッサは、メモリに保存されているプログラム命令に従って操作できる。
【0145】
駆動機構の制御は、モーション制御装置、電子速度制御装置などを使用して完了することができる。アクチュエータ又はモーション制御装置の入力は、切断及び/又は真空を開始するためのオン/オフタイプの入力にすることができる。あるいは、モーション制御装置の入力は、例えば、入力の作動の程度に応じてモータ2756をより高速に回転させる多方向入力であってもよい(例えば、ボタンを更に押す、ダイヤルをダイヤルアップする、タッチパッドに表示されたキーをタップする、又はハウジングに対する方向にさらなる距離を摺動する)。以下でより詳細に説明するように、入力の作動時に最小及び/又は最大速度を有するように、制御装置をプログラムすることができる(例えば、遠隔で又はデバイス自体に)。
【0146】
図33A~33Cは、デバイスの様々な機能を制御するように構成されたデバイス上の、トリガーなどの多方向入力3125の実装形態の異なる構成を示している。入力3125は、デバイスの1つ以上の機能をオン又はオフ(又は増加又は減少)するように構成された複数の位置を有することができる。例えば、入力3125は、
図33Aに示すように静止位置を有することができる。使用者は、入力3125を作動させて、デバイスの少なくとも1つ以上の機能を開始又は増加させるように構成された第1の作動位置(例えば、部分的に押し下げられた位置)に移動することができる(
図33Bを参照)。第1の作動位置は、遠位シャフト2761の真空と振動の両方をオンにすることができ、それにより真空プラス切断機能を提供する。入力3125は、デバイスの1つ以上の機能を一時停止又は減少させるように構成された第2の作動位置(例えば、完全に押し下げられた位置)を有することができる(
図33Cを参照)。例えば、第2の作動位置にある入力3125は、シャフト2761を通る真空が継続している間、シャフト2761の振動を一時中断させることができ、それによって真空のみの機能を提供する。
【0147】
本明細書では、入力の様々な構成が考察される。例示的な構成として、入力3125は、入力3125が複数の位置の1つに作動するときにデバイスの長手方向軸に沿って移動可能なロッド3127に連結するように機械的であり得る(
図33B~33Cに示す)。例えば、入力3125が静止位置から第1の作動位置に移動すると、入力3125は、ロッド3127の近位端がデバイスのハンドヘルド部分の近位部分に第1の距離だけ延びるようにロッド3127を移動できる。(
図33B)。入力3125が第1の作動位置から第2の作動位置に移動すると、入力3125は、ロッド3127の近位端がデバイスのハンドヘルド部分の近位部分に第2の距離だけ延びるようにロッド3127を移動できる(
図33C)。ロッド3127の近位端は、例えばポテンショメータによって細長いシャフト2761を振動させるように構成されたモータの速度を変更するように構成されたデバイスのハンドヘルド部分内の要素と相互作用することができる。
【0148】
ロッド3127は、振動の速度を変えることに加えて、シャフト2761の動きを完全に防ぐことができる。上述のように、ロッド3127の動きは、ポテンショメータ又は他の特徴と相互作用することにより、ロッド3127にモータの速度を変化させることができる。ロッド3127の近位方向Pへの移動は、シャフト2761を近位方向にも移動させることができ、それにより、シャフト2761の近位端が、シャフト2761を振動させるように構成された駆動機構と相互作用することを防止する(例えば、歯をカム運動させる)。
図34A~34Cは、
図33A~33C及び
図35A~35Cに対応する。各図は、アクチュエータ3125及びロッド3127の動きがカム機構に対するシャフト2761の動きにどのように影響するかを示している。
図34Aに示されるアクチュエータ3125の静止状態では、ロッド3127は最遠位位置にあり、シャフト2761の近位スプライン3162から離れるように移動する。通常の動作下で、本明細書の他の箇所で説明されるように、回転カム3169は連続的に回転することができる。回転するとき、回転カム3169は、カム従動子3190の歯3132を係合させ、ステップ3933(
図35A~35Cを参照)に達するまでカッタースプライン3162を効果的に後方に引き、その時点でバネ3135の力が、シャフト2761を前方又は遠位方向Dに付勢する。シャフト2761は、カム3169が回転すると前後に振動する。アクチュエータ3125が完全に作動すると、ロッド3127の特徴3163がシャフト2761のスプライン3162と係合するまで、ロッド3127が近位方向Pに更に移動する(
図34C及び35Cを参照)。ロッド3127はスプラインを近位に引っ張る。この運動は、カム3169をカム従動子3190から外し、歯3132が係合してシャフト2761の動きが生じないようにする。
【0149】
いくつかの実装形態では、デバイス2700は、機器への唯一のリンケージが動力用であり得るオールインワンデバイスである。したがって、オールインワンデバイスには、制御用のフットペダルやその他のリンケージがない場合がある。
【0150】
デバイス2700はバッテリー駆動でもよい。バッテリーは、モジュールの取り外し可能な電池パック内など、内部に、又はハウジングの領域に連結されて、ハウジングの領域内に組み込むことができる。バッテリーは、異なる化学組成又は特性を持つことができる。例えば、バッテリーには鉛酸、ニッケルカドミウム、ニッケル金属水素化物、酸化銀、酸化水銀、リチウムイオン、リチウムイオンポリマー、又はその他のリチウム化学物質が含まれ得る。デバイスには、再充電のためにDC電源ポート、誘導、太陽電池などのいずれかを使用する再充電可能なバッテリーを含めることもできる。本明細書では、手術室で使用するために医療機器に動力を供給するための当技術分野で知られている動力システムも考慮されるべきである。いくつかの実装形態では、ハンドルのサイズを大きくする可能性のある、ハンドル上又はハンドル内に取り付けられたバッテリーパックではなく、バッテリーパックは、処置中に、器具を掴む使用者の腕や腕の手首などの別の場所に据え付けられてもよい。短いケーブルコネクタは、使用中にこのリンケージのみがデバイス2700のハンドルから延びるように、取り付けられたバッテリーパックをデバイスに接続することができる。したがって、フットペダル又は他のテザリング接続をデバイス2700にリンクする必要はない。これにより、使用中にケーブルやその他のテザーを引っ張る心配をせずに、使用者に携帯性、柔軟性、移動の自由を提供できる。
【0151】
上述のように、本明細書に記載のデバイスは、眼内の物質を切断、吸引、及び/又は注入するために、最小限に侵襲的な方法で眼に挿入されるように構成されたシャフトを含むことができる。シャフトは、組織片を捕捉及び切断するように構成された側面開口部を備えた外側部材を通って延びる中空の細長い部材を有する硝子体切除様式の切断要素であり得る。シャフトはまた、水晶体超音波乳化吸引(「水晶体」)様式の先端部を含むことができ、これはまた、外側部材の有無にかかわらず可動の細長い部材を含む。細長い部材の振動運動は、本明細書の他の箇所で説明される回転カム要素など、様々な機構のいずれかを使用して発生させることができる。振動運動は、角膜内皮細胞などの繊細な眼組織に対する水晶体超音波乳化吸引に典型的な有害な影響を回避する方法で作り出すことができる。
【0152】
水晶体超音波乳化吸引術は、1)機械的ジャックハンマー、2)キャビテーションという2つの主な作用方法を組み込むことができる。ジャックハンマーの場合、先端部の振動運動が機械的に水晶体組織に高速でノックし、組織を更に小さな破片に分解する。キャビテーションは、先端部の振動運動中に真空と流体の泡の作成を伴う。水晶体先端部が流体内で引っ込むと、その移動速度が非常に大きいため、キャビテーションが発生するか、又は引っ込む先端部によって生成された真空を生成し、ガスが流体から引き出されるときに気泡が形成される。これらの気泡は、非常に高い温度(例えば3000°C)及び非常に高い圧力(例えば10,000atm)で破裂する。一般に、高温と高圧の組み合わせが水晶体組織の破片の分解に役立つと考えられている。キャビテーションが水晶体物質の分解に果たす役割は議論の余地があるが、キャビテーションが果たす役割は、白内障手術中の水晶体超音波乳化吸引術が周囲の水晶体組織に及ぼす悪影響の背後にある主要なドライバーとしてではない。高温、衝撃波、及び眼内のフリーラジカルの生成は、角膜内皮細胞の健康にとって懸念事項である。
【0153】
実装形態において、本明細書に記載のデバイスの1つ以上は、水晶体超音波乳化吸引術中のキャビテーションの問題を低減、減衰、又は防止するように動くように構成された振動先端部を含むことができる。振動先端部は、拍動性の真空を適用するためにハンドル内に真空源を有する「オールインワン」タイプのデバイスに組み込むことができる。あるいは、振動先端部は、拍動性の真空を遠隔で適用するように構成された別のデバイスに関連して使用されるデバイスに組み込むことができる。上述のように、本明細書に記載のデバイスの様々な特徴及び機能は、手術部位又はその近くの組織の切断、断片化、乳化、又はその他の衝撃に有用であることが当技術分野で知られている従来のデバイス及びシステムに適用することができる。例えば、本明細書に記載の拍動性の真空及び/又は非対称運動プロファイルは、当技術分野で知られている水晶体超音波乳化吸引システム及び硝子体切除システムに組み込むことができる。例えば、本明細書で説明される特徴は、超音波周波数範囲(例えば、20,000Hz以上)で細長いシャフトの振動を引き起こすために従来使用されている水晶体超音波乳化吸引システムの追加のハードウェア又はソフトウェア特徴として組み込むことができる。
【0154】
図29A~29Cは、遠位シャフト2961に連結されたハンドヘルド部分2960を有するデバイス2900の実装形態を示している。遠位シャフト2961は、ハンドヘルド部分2960に対して振動するように構成された細長い部材2955を含むことができる。細長い部材2955は、管状外側部材2959を通って延びることができるが、そうである必要はない(
図29G~29Hを参照)。細長い部材2955は、遠位先端部2965を含むことができる。デバイス2900は、遠位シャフト2961に動作可能に連結され、先端部2965の動きを駆動するように構成された駆動機構を含むことができる。以下により詳細に説明されるように、駆動機構は、細長い部材に動作可能に連結され、細長い部材を振動させるように構成され得る。使用中、駆動機構は、引き込み速度プロファイルで細長い部材を近位方向に引き込み、伸長速度プロファイルで細長い部材を遠位方向に前進させることができる。引き込み速度プロファイルは、伸長速度プロファイルと異なる場合がある。
【0155】
いくつかの実装形態では、細長い部材2955をハブ2987に接続することができる。ハブ2987は、回転カム2969と係合するその遠位表面上にカム表面2992を有することができる。ハブ2987の近位表面は、ハブ2987を遠位に押すバネ2935に接続することができる。遠位シャフト2961は、外側部材2959を通って延びる細長い部材2955を含むことができるが、外側部材2959は不要であることを理解されたい。細長い部材2955はまた、細長い部材2955及びハブ2987が回転するのを防ぐ長方形ブロックなどの方向ロック特徴2928に接続される。回転カム2969が回転すると、カム表面2992によりハブ2987が近位方向に移動し、バネ2935が更に圧縮される。カム表面2992は、ハブ2987が回転のある特定の点で再び前方(すなわち、遠位)に落ちることを可能にするステップ2933を有する。この時点で、バネ2935は、カム表面2992が再び係合するまでハブ2987を迅速に前方に押す。そのような機構により、細長い部材の先端部2965は、少なくとも部分的に回転カム2969の回転速度の関数である引き込み速度プロファイルで引っ込むことができる。回転カム2969の回転速度は、最大の先端部引き込み速度が「キャビテーション閾値速度」未満に留まるように制御して、眼内にキャビテーション気泡を生成することができる。次いで、細長い部材の先端部2965は、少なくとも部分的にバネ2935の力及び先端アセンブリの質量の関数である伸長速度プロファイルで伸長することができる。このようにして、平均引き込み速度は遅く、すなわちキャビテーション閾値を下回ってもよいが、平均伸展速度は速く、すなわち典型的な水晶体超音波乳化吸引用先端部の平均引き込み速度に近いか、それより高くてもよい。したがって、キャビテーションの有害な影響を実質的に回避しながら、機械的なジャックハンマーの利点を実現できる。
【0156】
図30A及び30Cは、従来の水晶体超音波乳化吸引用先端部の典型的な運動プロファイルを示している。従来の水晶体超音波乳化吸引用先端部は、先端部の平均速度が近位引き込み中と遠位伸長中と実質的に同じである、実質的に正弦波状の運動プロファイルを有する(
図30A参照)。対照的に、本明細書に記載のデバイスの振動する細長い部材は、概ね非正弦運動プロファイルを有し、引き込み速度プロファイルの平均先端部速度と伸長速度プロファイルの平均先端部速度は、実質的に異なり、全体的な非対称運動プロファイルを振動する細長い部材に提供できる(
図30Bを参照)。更に、従来の水晶体超音波乳化吸引用先端部は、伸長速度プロファイルEの最大先端部速度(V
maxE)と実質的に同じである引き込み速度プロファイルRの最大先端部速度(V
maxR)を有するため、それらの運動プロファイルは実質的に重なる(
図30Cを参照)。本明細書に記載のデバイスの振動する細長い部材は、伸長速度プロファイルEの最大先端部速度(V
maxE)よりも実質的に低い引き込み速度プロファイルRの最大先端部速度(V
maxR)を有するため、それらの運動プロファイルは実質的に重ならない(
図30Dを参照)。
【0157】
図30Cは、伸長速度及び引き込み速度のプロファイルが実質的に同じである従来の水晶体超音波乳化吸引術によって提供される運動プロファイルを示している。例えば、0.1mmの振幅速度を有する40,000Hzの水晶体超音波乳化吸引マシンは、時間T
1が約0.0125msである場合、約12.6メートル/秒のV
maxを有し得る。
図30Dは、本明細書に記載のデバイスによって提供される運動プロファイルを示している。V
maxEは、従来の水晶体超音波乳化吸引マシンのV
maxEと実質的に同じであってもよいが、V
maxRは、時間T
2で完全な引き込みが完了するように実質的に低くてもよい。したがって、デバイスのV
avgが低くなる可能性がある。
【0158】
図30E~30Fは、本明細書で考察される追加の非対称運動プロファイルを示す。伸長速度Eは、そのストロークの限界に到達するまでバネ力が細長い部材を前方に強要するので、V
maxEまで直線的に増加することができ、引き込む前に落ちてゼロに戻る。細長い部材が引き込まれる(例えば、カムが回転して細長い部材をほぼ一定の速度で引き戻す)と、引き込み速度RはV
maxRに増加してから、停止するまで減速する。引き込み速度プロファイルRはプラトーを形成することができ、その間、引き込み速度はほぼ一定である。引き込み段階は、伸長段階を完了するのにかかった時間T
1よりも長い時間T
2で完了する。伸長段階と引き込み段階との間に、滞留期間又は一時停止を含めることができる。V
maxEは、従来の水晶体超音波乳化吸引マシンとほぼ同じにすることができる(例えば、約8から12メートル/秒)。V
maxRは、従来の水晶体超音波乳化吸引マシンよりもはるかに低くすることができる(例えば、約0.02メートル/秒未満)。伸長及び引き込みの速度は変化する可能性があり、多数の非正弦波先端部運動プロファイルのいずれかが本明細書で考慮されることを理解されたい。いくつかの実装形態では、V
maxEは約2メートル/秒から50メートル/秒の間であり得、V
maxRは約0.001メートル/秒から2メートル/秒の間であり得る。
【0159】
従来の水晶体超音波乳化吸引術では、可動の細長い部材の速度プロファイル及び移動プロファイルは一般に正弦波である。つまり、細長い部材の遠位先端部の動きは、例えば圧電結晶への供給電圧に対応する正弦波のパターンで振動する。したがって、遠位先端部の速度も、運動プロファイルの微分として正弦波状に振動する。
図30Gは、伸長及び引き込み速度プロファイル(上部パネル)に対する細長い部材の遠位先端部の非正弦波運動(下部パネル)の実装形態を示す。速度プロファイルと対応する運動プロファイルの両方が、非正弦波として示されている。遠位先端部は、伸長サイクルと引き込みサイクルとの間に滞留時間を持つことができる。t
0とt
1との間で、遠位先端部は、正弦波又は他の任意のプロファイルであり得る速度プロファイルで前方に延びることができる。t
1で、遠位先端部は、t
1とt
2との間の滞留期間停止することができる。滞留期間は約0.050ミリ秒、又は約0.001ミリ秒と0.025ミリ秒の間であり得る。t
2で、遠位先端部は、正弦曲線にやはり従い得る速度プロファイルで引っ込むことができる。遠位先端部の動きは、その最も伸長した位置に滞留を持つ正弦波に似ている。
【0160】
例えば、
図30Gに示すような非正弦波のパターンは、キャビテーションの可能性を減らすことができる。これは、滞留時間により、伸長中の細長い部材の動きによって変位する眼の流体が、細長い部材の引き込みが始まる前に運動量ゼロ状態に戻るためである。従来の正弦波パターンでは、細長い部材は、流体を遠位先端部から押し出し、その後直ちに引っ込むが、流体はまだ遠位先端部から離れて移動している可能性があるため、遠位先端部への流体の相対速度によるキャビテーションの可能性が高くなる。遠位先端部自体が引っ込み始めている間に眼の流体が運動量によって先端部から運び去られている場合、遠位先端部に対する流体の相対速度は、より高い。滞留期間により、遠位先端部が引っ込み始める前に、変位している流体が運動量ゼロ又は速度ゼロの状態に戻ることができる。この実装形態において、伸長速度プロファイル及び引き込み速度プロファイルは類似又は同一であってもよいが、全体的な速度プロファイル及び遠位先端部の動きは非正弦波である。本明細書では他の実装形態も考えられる。例えば、細長い部材は、通常の正弦波パターンよりも完全に伸長した位置に近づくにつれて、徐々に遅くなる可能性がある。細長い部材が引っ込むと、プロファイルはより対称的な経路をたどる。他の任意の数の非正弦波パターンが考慮される。
【0161】
本明細書で使用される場合、「非正弦波」という用語は、振動運動の単純な正弦波パターンに従わない運動又は速度プロファイルとして定義できることを理解されたい。単純な正弦波は、単一の周波数、単一の位相シフト、単一の振幅で定義できる。正弦波を加算又は減算することにより、ある特定の複雑なプロファイルを生成できる。ただし、これらの複雑なプロファイルは、その加算又は減算が単純な正弦波パターンに従わないために、非正弦波と見なされる場合もある。
【0162】
駆動機構は、引き込み速度プロファイルが伸長速度プロファイルと異なるように、引き込み速度プロファイルで細長い部材を近位方向に引き込み、伸長速度プロファイルで細長い部材を遠位方向に前進させることができる。引き込み速度プロファイルからの細長い部材の平均引き込み速度は、伸長速度プロファイルからの細長い部材の平均伸長速度よりも遅くなり得る。したがって、細長い部材に動作可能に連結された駆動機構は、細長い部材を非対称に振動させるように構成される。伸長速度プロファイルEはVmaxEを含むことができ、引き込み速度プロファイルRはVmaxRを含むことができ、ここでVmaxRはVmaxEよりも小さい。細長い部材のVmaxRは、一般に、眼にキャビテーション気泡が生成される閾値速度未満に保たれる。本開示を任意の特定の閾値速度に限定することなく、当業者は、キャビテーション気泡が発生する可能性のある引き込みの理論速度が一般に約5メートル/秒であることを理解するであろう。したがって、細長い部材のVmaxRは、約5メートル/秒未満に維持することができる。
【0163】
従来の水晶体超音波乳化吸引システムによって駆動される細長い部材の振動運動は、運動中の通常の損失(例えば、摩擦又は他の環境要因による)のためにある程度の変動性を有する場合がある。この変動は、引き込み速度プロファイルと伸長速度プロファイルが同一又は完全に正弦波ではないように、引き込み中及び伸長中に達成される平均速度に影響を与える可能性がある。ただし、構成要素部品の移動中のこの通常の変動は、意図的に加工又は発生するように設計されていない(すなわち、メモリに保存されたプログラム命令に従って動作する制御プロセッサ、又はサイクリング位相に応じて異なる速度を実現するように設計された制御プロセッサと動作可能に通信するハードウェア)。したがって、運動中の速度の通常の変動は、非対称運動プロファイルに寄与している、又は非対称運動プロファイルをもたらしているとは見なされません。本明細書で説明する非対称運動プロファイルは、偶然の変動だけでなく、各サイクリング中に実質的に再現可能となるように意図的に加工された又は設計された運動プロファイルである。
【0164】
本明細書の他の箇所で説明されるように、デバイスの真空源は、不連続な負圧のパルスを提供するように構成され得る。細長い部材が遠位方向に移動するときの伸長の少なくとも一部の間、及び/又は細長い部材が近位部に移動するときの引き込みの少なくとも一部の間、細長い部材のルーメンを通して吸引パルスを引き込むことができる。
図31Aは、細長い部材のルーメンの遠位端領域を通して適用される拍動性真空の経時的な真空プロファイルの実装形態を示す。本明細書の他の箇所で説明するように、真空源は、それぞれのポンピングチャンバ内で連続的に移動して真空の減少期間によって散在する真空の増加期間を作り出すように構成される複数のピストンを有するポンプを含むことができる。いくつかの実装形態では、真空の増加は、真空プロファイルを提供する真空の減少よりも速く発生する可能性がある。遠位シャフトのルーメンを通して適用される拍動性真空プロファイルは、ある特定の運動段階中に負圧期間の少なくとも一部が適用されるように、切断を実行する細長い部材の運動プロファイルと同期させることができる。
図31B~31Cは、細長い部材を通して加えられる負圧の周期(破線)に対する細長い部材の動き(実線)を示す。負圧の周期(すなわち、真空パルス)は、細長い部材の前方ストローク又は遠位伸長Eの少なくとも一部、遠位伸長E後かつ近位引き込みR前の滞留時間、及び/又は細長い部材の近位引き込みRの少なくとも一部の間に生じ得る。例えば、
図31Bは、細長い部材の伸長Eの間に生じる真空圧の第1のパルス、及び伸長Eの後であって引き込みRの前の滞留時間を示している。真空圧の第1のパルスは引き込みR段階の間に終了し、真空の第2のパルスは、同じ引き込み段階が終了する前に開始及び終了する。
図31Cは、真空圧力の第1のパルスが、細長い部材の伸長Eの間に始まり、細長い部材の引き込みRの間、及び細長い部材の第2の伸長Eの間に維持される別の実装形態を示す。
図31Bは、先端部の運動の約2倍の周波数を有する真空パルスを示し、
図31Cは、真空パルスの約2倍の周波数を有する先端部の運動を示す。
図31B及び
図31Cは両方とも、伸長E及び引き込みRの一部の間に発生する真空パルスを示している。本明細書では、任意の数の様々な相対周波数が考慮され、これらは相対速度プロファイル及び真空プロファイルのいくつかの例の説明であることを理解されたい。
【0165】
先端部2965の変位又は移動距離は変動し得るが、一般に、当技術分野で公知の水晶体超音波乳化吸引用先端部よりも大きい。典型的な水晶体超音波乳化吸引用先端部は、約0.1mm程度の先端部変位を持ち、約20~40kHzの周波数で動く。本明細書に記載の先端部2965は、より大きな変位距離及びより低い周波数を有することができる。例えば、先端部2965によって達成される変位は、約10~2,000Hzの周波数で約0.05mm~1.0mmの間であり得る。このように、本明細書に記載のデバイスは超音波でなくてもよく、白内障手術中に眼に有害な影響を伴う熱を発生させない可能性がある。いくつかの実装形態では、先端2965はバネ2935によって前方に押される。ストローク距離を長くすると、眼組織への衝撃時に先端部がより高い最終速度VmaxEを達成できるようになる。
【0166】
いくつかの実装形態では、デバイス2900は、細長い部材2955上に延びる外側チューブ2959を有することができる(
図29G~29Hを参照)。内側及び外側部材2955、2959の相対的な長さは、遠位方向に完全に伸びて完全に伸長した構成を形成するとき、細長い部材2955の遠位先端部2965が外側部材2959の遠位端を越えて延びるようにすることができる。完全に伸長した構成の細長い部材2955の遠位先端部は、外側部材2959の遠位開口部の遠位に配置される。完全に伸長した構成における外側部材2959の遠位開口部と細長い部材2955の遠位先端部との間の距離は、伸長距離Dを画定する。細長い部材2955は、完全に引き込まれた位置にあるとき、外側部材2959に完全に引っ込む。細長い部材2955の遠位先端部が、外側部材2959に対して、完全に引き込まれた構成から完全に伸長した構成まで移動する距離は、移動距離を画定する。伸長距離は、例えば、移動距離の半分など、移動距離より小さくすることができる。いくつかの構成では、移動距離は約0.05mmから約1.0mmの間であり、伸長距離は約0.1mmから約0.5mmの間である。したがって、細長い部材2955の遠位先端部2965は、その運動プロファイルの一部についてのみ水晶体物質に露出することができる。例えば、細長い部材2955は、完全に引き込まれた位置から約0.5mm前方に延び、このストロークの約半分が外側部材2959内にあって、細長い部材2955のストロークの最後の0.25mmのみが外側部材2959を超えて延びるようにしてもよい。このようにして、細長い部材2955は、水晶体物質に衝突する前に高速まで加速することができる。細長い部材2955を外側部材2959内に完全に引き込むことは、外側部材2959内に引き込み、水晶体物質が細長い部材2955の遠位先端部2965に「ロリポップ」するのを防止するため、細長い部材2955の遠位先端部2965から水晶体物質を分離するのに役立ち得るという点でさらなる利点を提供する。
【0167】
細長い部材2955の振動運動を引き起こすように構成された細長い部材2955に動作可能に連結された駆動機構は、本明細書の他の箇所で説明されるように変化し得る。いくつかの実装形態では、細長い要素2955は、バネ要素2935を組み込んだ駆動機構によって駆動することができる。しかし、本明細書で論じられる非対称又は非正弦波の様式で細長い部材2955を駆動するために、本明細書では他のエネルギー様式が考慮される。例えば、細長部材2955は、機械的、液圧的、空気圧的、電磁気的に、又は以下に説明する圧電駆動システムを介して駆動することができる。当業者は、本明細書に記載されるように細長い部材を動かすために様々な駆動機構を実施するのに必要な構造を理解するであろう。
【0168】
いくつかの実装形態では、デバイスの駆動機構は、ハブ2987を前後に駆動するなどして、細長い部材を駆動するように構成された圧電素子を組み込むことができる。圧電素子は、サイズを小さくしたり大きくしたりすることで、電圧の変化に対応できる。圧電素子に接続された高周波電圧は、供給電圧の周波数に一致する先端部2965の運動プロファイルを生成できる。圧電素子に送られる電圧信号の形状は一般に非正弦波である可能性があり、したがって、本明細書の他の箇所で説明するように、先端2965は一般に非正弦波パターンで移動する。電圧は、圧電素子を拡張させ得るよりもゆっくりと収縮させる波形を持っている場合がある。これにより、伸長ストロークよりも引き込みストロークで先端部2965がゆっくりと移動する。圧電素子に供給される電圧波形に基づいて、任意の数の運動プロファイルを指令することができる。例えば、2つ以上の重なり合う電圧正弦波を圧電素子に供給して、非正弦波形状が生成されるように干渉効果を生成できる。
【0169】
さらなる実装形態では、機構と様式の組み合わせがデバイスに組み込まれ、非正弦運動プロファイルで細長い部材を駆動する。例えば、電磁コイルは、コイルに電流を流すとフェライトコアが前方に移動するように構成できる。コアは、電磁コイルによって前方に駆動されるように構成できるが、その後、圧縮されたバネの力によって後方に(すなわち、近位に)収縮する。したがって、コイルを流れる電流が増加すると、コアが前方に駆動される。電流が減少すると、コアは後方に引っ込む。このように、コアはカッター部材に接続され、コイル内の電流の突然の増加によって前方への伸長が迅速に実行できるようになるが、引き込みは圧縮バネの力により遅くなり得る。
【0170】
本明細書で説明するデバイスは、トリガー、ボタン、スライダ、ダイヤル、キーパッド、スイッチ、タッチスクリーン、フットペダルなどの1つ以上の入力、あるいは細長い部材を通る流体の振動、吸引、及び/若しくは注入を活性化、修正、又は別の状態になるように引き込まれ、プレスされ、絞られ、スライドされ、タップされ、又は他の方法で作動され得る他の入力を使用して作動させることができる。アクチュエータは、デバイス自体に組み込むことも、デバイスから離れていることもできるが、独自の入力を持つ外部コンピューティングデバイスなどのデバイスと有線又は無線で通信できる。本明細書の他の箇所で説明するように、1つ以上のデバイスの入力は、トリガーが作動するにつれて(例えば、モータの回転を上げることにより)駆動部材に細長い部材の振動周波数を増加させる位置に、使用者により促すことができる。
【0171】
本明細書で説明するデバイスはまた、入力の作動時に特定の作用において制限をかけるようにプログラムすることもできる。例えば、駆動機構は、入力の作動時に最小及び/若しくは最大速度を有するようにプログラムすることができ、又は流体の注入及び吸引の場合、デバイスは、入力の作動時、最小及び/若しくは最大の流体圧力を有するようにプログラムすることができる。したがって、本明細書に記載のデバイスは、使用者が調整可能な入力と、入力の作動時にデバイスの1つ以上の態様に影響を与える事前にプログラムされた命令を使用してプログラムできる。
【0172】
本明細書で説明するデバイスは、駆動機構の1つ以上の構成要素、真空源、又は外部コンピューティングデバイスを含むデバイスの他の構成要素と動作可能に通信する制御装置を含むことができる。制御装置は、少なくとも1つのプロセッサとメモリデバイスを含むことができる。メモリは、使用者入力データを受信及び保存するように構成できる。メモリは、データを保存し、そのデータをプロセッサなどのデバイスの1つ以上の他の構成要素と通信できる任意の種類のメモリにすることができる。メモリは、フラッシュメモリ、SRAM、ROM、DRAM、RAM、EPROM、動的記憶装置などのうちの1つ以上であり得る。メモリは、デバイスの使用目的に関連する1つ以上の使用者定義プロファイルを保存するように構成できる。メモリは、使用者情報、使用履歴、行われた測定などを保存するように構成できる。
【0173】
本明細書で説明するデバイスは、制御装置などのデバイスの1つ以上の構成要素と動作可能に通信する通信モジュールを含むことができる。通信モジュールは、通信モジュールを有する外部コンピューティングデバイスと通信することができる。デバイスの通信モジュールと外部コンピューティングデバイスとの間の接続には、RS22接続、USB、Firewire(登録商標)接続、独自の接続、又は外部のコンピューティングデバイスへの情報の受信及び/若しくは送信をするように構成されたその他の任意の適切な種類の有線接続などの有線通信ポートが含まれ得る。通信モジュールはまた、例えば、デバイスの操作に関して情報を外部コンピューティングデバイス上にリアルタイムで表示するために、及び/又はデバイスのプログラミングを制御するために無線リンクを介してデバイスと外部コンピューティングデバイスとの間に情報を供給することができるように、無線通信ポートも含むことができる。例えば、使用者は外部コンピューティングデバイスでデバイスのモータ2756の速度プロファイルをプログラムできる。外部コンピューティングデバイスを使用して、デバイスの任意の様々な調整やプログラミングを実行できる。ワイヤレス接続は、Bluetooth(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)、無線周波数、ZigBee(登録商標)通信プロトコル、赤外線、又は携帯電話システムなど、任意の適切なワイヤレスシステムを使用でき、受信した情報の発信元を検証するためにコーディング又は認証を使用することもできる。ワイヤレス接続は、独自の様々なワイヤレス接続プロトコルのいずれでもよい。デバイスが通信する外部コンピューティングデバイスは、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、スマートフォン、又は使用者の入力を通信及び受信可能なその他のデバイスを含むがそれらに限定されず、様々であり得る。
【0174】
プロセッサ、メモリ、ストレージデバイス、入/出力デバイスは、システムバスを介して相互接続できる。プロセッサは、システム内で実行するための命令を処理できる。そのような実行された命令は、デバイスの使用に関連して本明細書で説明されるプロセスの1つ以上を実装することができる。制御装置のプロセッサは、シングルスレッドプロセッサ又はマルチスレッドプロセッサであり得る。制御装置のプロセッサは、メモリ及び/又はストレージデバイスに保存された命令を処理して、デバイスの操作に関する情報の出力を使用者に提供することができる。
【0175】
デバイスの1つ以上の態様を使用者がプログラムできる。例えば、駆動機構の1つ以上の態様を使用者がプログラムして、細長い部材の移動距離、細長い部材の振動周波数、最大伸長速度(VmaxE)、最小伸長速度(VminE)、最大引き込み速度(VmaxR)、最小引き込み速度(VminR)、平均伸長速度(VavgE)、平均引き込み速度(VavgR)、又はモーションプロファイルの他のいずれかの態様を含むがこれらに限定されない細長い部材の動きを制御できる。いくつかの実装形態では、各サイクルで細長い部材が移動する距離は、その振動の振幅が約0.5Hzから約5000Hzの範囲内、又は約10Hzから約2000Hzの範囲内で選択できるように、調整可能にプログラムすることができる。振動の振幅は、超音波より小さく、例えば、約20,000Hz未満、又は超音波範囲内(例えば、約20,000Hzから約120,000Hz、ギガヘルツ範囲まで)であり得る。
【0176】
真空源の1つ以上の態様はまた、吸引流量、最小真空圧力、最大真空圧力、真空パルスの周波数、又は真空プロファイルの他の任意の態様を含むがこれらに限定されない、細長い部材の遠位端領域で適用される真空を制御するために使用者によってプログラムすることもできる。いくつかの実装形態では、吸引流量は、約5~100ml/分の範囲内で調整可能にプログラムすることができる。
【0177】
本明細書で説明されるデバイスは、1つ以上の態様が使用者による手動入力に従って手動で制御及び/又は調整されるように、使用することができる。本明細書で説明されるデバイスは、1つ以上の態様を制御するようにプログラムすることができる。制御装置は、デバイスの1つ以上の態様を調整又は制限するようにプログラムできるソフトウェアを含むことができる。したがって、制御装置によって実行されるソフトウェアは、使用中にいずれの使用者の入力もなしでデバイスのある特定の態様を提供できる。実装形態では、調整又はプログラミングは、デバイス内又は外部コンピューターデバイス上のソフトウェアによって制御される制御装置を介して行うことができる。使用者は、BlueTooth(登録商標)などのワイヤレス接続を介してデバイスと通信する外部コンピューティングデバイスを介して、遠隔で制御装置をプログラムできる。
【0178】
また、本明細書に記載の真空パルスを伴う又は伴わない非対称運動プロファイルは、白内障手術及び硝子体切除に通常使用される既知の水晶体超音波乳化吸引システムに適用できることも理解されたい。超音波周波数で細長い部材を動かして水晶体物質を除去するように構成された従来の水晶体超音波乳化吸引システムは、例えば非対称運動を引き起こすある特定の電圧を提供する回路により、ソフトウェア又はハードウェアを介して、本明細書に記載の1つ以上の運動プロファイル及び/又は真空プロファイルを実装できる。したがって、本明細書に記載の非対称運動プロファイル及びパルス真空プロファイルは、超音波周波数で振動するように構成された機械に適用することができる。
【0179】
本明細書に記載の主題の態様は、デジタル電子回路、集積回路、特別に設計されたASIC(特定用途向け集積回路)、コンピュータハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、及び/又はそれらの組み合わせで実現され得る。これらの様々な実装形態には、ストレージシステム、少なくとも1つの入力デバイス、及び少なくとも1つの出力デバイスから信号、データ、及び命令を受信するように、またそこに信号、データ、及び命令を伝送するように連結された、特殊用途又は汎用であり得る少なくとも1つのプログラマブルプロセッサを含むプログラマブルシステム上で実行ならびに/あるいは解釈可能な1つ以上のコンピュータプログラムでの実装形態が含まれ得る。
【0180】
これらのコンピュータプログラム(プログラム、ソフトウェア、ソフトウェアアプリケーション、又はコードとして知られる)には、プログラマブルプロセッサのマシン命令が含まれ、高レベルの手続き型及び/又はオブジェクト指向プログラミング言語、及び/又はアセンブリ/機械語が実装され得る。本明細書で使用される場合、「機械可読媒体」という用語は、機械の命令及び/又は機械の命令を機械可読信号として受信する機械可読媒体を含むプログラム可能なプロセッサへのデータを提供するために使用される任意のコンピュータプログラム製品、装置、及び/又はデバイス(例えば、磁気ディスク、光ディスク、メモリ、プログラマブルロジックデバイス(PLD))を指す。「機械可読信号」という用語は、機械の命令及び/又はデータをプログラム可能プロセッサに提供するために使用される任意の信号を指す。
【0181】
様々な実装形態において、説明は図を参照して行われる。ただし、ある特定の実装形態は、これらの特定の詳細の1つ以上を伴わないで、又は他の既知の方法及び構成と組み合わせて実施することができる。説明では、実装形態の完全な理解を提供するために、具体的な構成、寸法、及びプロセスなど、多くの具体的な詳細が示されている。他の例では、説明を不必要に不明瞭にしないために、周知のプロセス及び製造技術は特に詳細には説明されていない。本明細書を通じて「一実施形態」、「実施形態」、「一実装形態」、「実装形態」などへの言及は、説明された特定の特徴、構造、構成、又は特性が少なくとも1つの実施形態又は実装形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体の様々な場所における「一実施形態」、「実施形態」、「一実装形態」、「実装形態」などの語句の出現は、必ずしも同じ実施形態又は実装形態を指しているわけではない。更に、特定の特徴、構造、構成、又は特性は、1つ以上の実装形態において任意の適切な方法で組み合わせることができる。
【0182】
説明全体での相対的な用語の使用は、相対的な位置又は方向を示す場合がある。例えば、「遠位」は、基準点から離れた第1の方向を示してもよい。同様に、「近位」は、第1の方向と反対の第2の方向の位置を示してもよい。ただし、このような用語は、相対的な参照フレームを確立するために提供されており、固定する送達システムの使用又は方向を様々な実装形態で説明されている特定の構成に限定することを意図してはいない。
【0183】
本明細書は多くの詳細を含むが、これらは、特許請求の範囲又は請求される可能性のある範囲に対する限定として解釈されるべきではなく、むしろ特定の実施形態に特有の特徴の説明として解釈されるべきである。別個の実施形態の文脈で本明細書に記載されるある特定の特徴は、単一の実施形態において組み合わせて実装することもできる。逆に、単一の実施形態の文脈で説明される様々な特徴は、複数の実施形態で別々に、又は任意の適切なサブコンビネーションで実装することもできる。更に、ある特定の組み合わせで作用するものとして特徴を上記で説明し、最初にそのように特許請求する場合さえもあるが、場合によっては、特許請求される組み合わせからの1つ以上の特徴を、特許請求される組み合わせから削除することができ、特許請求される組み合わせはサブコンビネーション又はサブコンビネーションのバリエーションに向けられ得る。同様に、操作は図面に特定の順序で描かれているが、これは、望ましい結果を達成するために、そのような操作を示された特定の順序又は順番で実行すること、又はすべての説明された操作を実行することを要求するものとして理解されるべきではない。いくつかの例と実装形態のみが開示されている。開示された内容に基づいて、説明した例と実装形態、及び他の実装形態に対する変形、修正、及び拡張を行うことができる。
【0184】
上記の説明及び特許請求の範囲では、「少なくとも1つの」又は「1つ以上の」などの語句が出現し、その後に連言的な要素又は特徴の列挙が続く場合がある。用語「及び/又は」もまた、2つ以上の要素又は特徴の列挙中に出現し得る。それが使用される文脈によって暗黙的又は明示的に否定されない限り、そのような語句は、列挙された要素又は特徴のいずれかを個別に、又は言及された要素又は特徴のいずれかを他の言及された要素又は特徴のいずれかと組み合わせて意味することを意図している。例えば、語句「A及びBのうちの少なくとも1つ」、「A及びBのうちの1つ以上」、及び「A及び/又はB」はそれぞれ、「A単独、B単独、又はA及びBを一緒に」を意味することを意図している。同様の解釈は、3つ以上の項目を含む列挙にも当てはまる。例えば、語句「A、B、及びCのうちの少なくとも1つ」、「A、B、及びCのうちの1つ以上」、及び「A、B、及び/又はC」は、それぞれ「A単独、B単独、C単独、AとBを一緒に、AとCを一緒に、BとCを一緒に、又はAとBとCを一緒に」を意味することを意図している。
【0185】
上記及び特許請求の範囲における「に基づく」という用語の使用は、言及されていない特徴又は要素も許容されるように、「少なくとも部分的に基づく」ことを意味することを意図している。
【手続補正書】
【提出日】2022-08-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼内で眼科処置を実行するためのデバイスであって、
前記デバイスは、ハンドヘルド部分を備え、
前記ハンドヘルド部分は、遠位の使い捨て部分に解放可能に連結可能な近位の再使用可能部分を含み、
前記近位の再使用可能部分は、
モータと、
前記モータを前記遠位の使い捨て部分に解放可能かつ動作可能に連結する回転可能なカプラーとを含み、
前記遠位の使い捨て部分は、遠位の細長い部材と、前記モータによって駆動される真空源とを含み、
前記細長い部材は、前記細長い部材の遠位端領域にルーメンと開口部とを含み、
前記真空源は、前記開口部と流体連通し、
前記真空源は、複数のピストンを備え、
前記複数のピストンの各ピストンは、複数のポンピングチャンバのうちの専用の1つの中で延在し、
前記真空源は、前記ルーメンの前記遠位端領域に不連続な負圧のパルスを送達するように構成される、
デバイス。
【請求項2】
前記複数のポンピングチャンバのそれぞれは、入口開口部と出口開口部とを備え、
前記入口開口部は、前記細長い部材の前記ルーメンと流体連通する、
請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記負圧は、254mmHgから約762mmHgまでである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記不連続な負圧のパルスは、約1Hzから約100Hzの間のサイクリング周波数を有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
第1の負圧のパルスは、入口開口部を介して、前記複数のポンピングチャンバの第1のポンピングチャンバ内に、前記細長い部材の前記ルーメンから第1の量の流体を引き込み、
前記第1のポンピングチャンバ内の第1の正圧のパルスは、前記第1の量の流体を前記第1のポンピングチャンバから出口開口部を通して排出する、
請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記第1の量の流体の体積は、約0.1mLと約1.0mLとの間である、請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
前記第1のポンピングチャンバ内の第1の方向への前記複数のピストンの第1のピストンの動きは、前記第1の負圧のパルスを生成し、反対の第2の方向への前記第1のピストンの動きは、前記第1の正圧のパルスを生成する、請求項5に記載のデバイス。
【請求項8】
前記入口開口部内に配置されたコンプライアンス性の弁を更に備える、請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
前記反対の第2の方向への第2の距離の前記第1のピストンの動きは、前記入口開口部を密閉し、前記コンプライアンス性の弁を介して前記細長い部材の前記ルーメンに、ある量の前記第1の正圧のパルスを伝送する、請求項8に記載のデバイス。
【請求項10】
伝送された前記量により、第2の量の流体が、前記細長い部材の前記遠位端領域の前記開口部から排出される、請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
前記出口開口部は、弁によって調節される、請求項5に記載のデバイス。
【請求項12】
前記弁は、ボール型逆止弁である、請求項11に記載のデバイス。
【請求項13】
前記出口開口部は、排出チャンバと流体連通している、請求項11に記載のデバイス。
【請求項14】
前記細長い部材に動作可能に連結され、前記モータに動作可能に連結された回転カム機構を更に備え、
前記回転カム機構は、前記細長い部材を振動させるように構成された、請求項1に記載のデバイス。
【請求項15】
使用中、前記回転カム機構は、前記細長い部材を、引き込み速度プロファイルで近位方向に移動させ、伸長速度プロファイルで遠位方向に移動させて往復運動させ、
更に、前記引き込み速度プロファイルは、前記伸長速度プロファイルと異なる、
請求項14に記載のデバイス。
【請求項16】
前記引き込み速度プロファイルからの前記細長い部材の平均引き込み速度は、前記伸長速度プロファイルからの前記細長い部材の平均伸長速度よりも小さい、請求項15に記載のデバイス。
【請求項17】
前記細長い部材に動作可能に連結された前記回転カム機構は、前記細長い部材を非対称的に振動させるように構成される、請求項14に記載のデバイス。
【請求項18】
前記伸長速度プロファイルは、最大伸長速度を含み、前記引き込み速度プロファイルは、最大引き込み速度を含み、更に前記最大引き込み速度は、前記最大伸長速度よりも小さい、請求項15に記載のデバイス。
【請求項19】
遠位方向の力を加えて前記複数のピストンを順次遠位に押すように前記複数のピストンに動作可能に連結された回転カムを更に備え、
前記不連続な負圧のパルスは、前記ピストンが近位方向に後退して前記遠位方向の力が除去されることに基づいて真空が突然上昇したときに生成される、
請求項1に記載のデバイス。
【外国語明細書】