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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022166223
(43)【公開日】2022-11-01
(54)【発明の名称】水性点眼液
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7084 20060101AFI20221025BHJP
   A61K 31/155 20060101ALI20221025BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20221025BHJP
   A61P 27/00 20060101ALI20221025BHJP
   A61P 27/04 20060101ALI20221025BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
A61K31/7084
A61K31/155
A61K9/08
A61P27/00
A61P27/04
A61K47/18
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022130503
(22)【出願日】2022-08-18
(62)【分割の表示】P 2020173120の分割
【原出願日】2015-12-25
(31)【優先権主張番号】P 2014263003
(32)【優先日】2014-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2015114595
(32)【優先日】2015-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000177634
【氏名又は名称】参天製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(74)【代理人】
【識別番号】100158414
【弁理士】
【氏名又は名称】秦野 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100191710
【弁理士】
【氏名又は名称】馬渡 洋介
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 孝司
(72)【発明者】
【氏名】松本 直樹
(72)【発明者】
【氏名】小川 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】若林 祐喜久
(72)【発明者】
【氏名】神村 明日香
(72)【発明者】
【氏名】大下 善弘
(72)【発明者】
【氏名】中澤 仁志
(72)【発明者】
【氏名】松岡 功
(57)【要約】      (修正有)
【課題】防腐効果を有する塩化ベンザルコニウムを含まず、安全性がより高いジクアホソル点眼液を提供する。
【解決手段】0.1~10%(w/v)の濃度のジクアホソルまたはその塩、及び0.0001~0.1%(w/v)の濃度のクロルヘキシジングルコン酸塩を好適例とするクロルヘキシジン類を含有する水性点眼液とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、0.1~10%(w/v)の濃度のジクアホソルまたはその塩を含有する水性点眼液(以下、ジクアホソル点眼液ともいう)であって、0.0001~0.1%(w/v)の濃度のクロルヘキシジン類を含有する水性点眼液に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、点眼液には、開封後一定期間にわたり何回も使用するタイプ(マルチドーズ型点眼液)と1回使い切りタイプ(ユニットドーズ型点眼液)がある。特に、マルチドーズ型点眼液には、使用時の微生物汚染等による製品の腐敗を防止し、点眼液の保存安定性を確保するために、防腐剤が含まれることが一般的である。
【0003】
防腐剤としては、優れた防腐効果を有する塩化ベンザルコニウム(以下、BAKともいう)が汎用されている。一方、BAKを高濃度で使用すると角膜障害を引き起こす可能性が知られている。また、BAKを含有する点眼液を使用者がソフトコンタクトレンズ装用中に点眼するとBAKがコンタクトレンズに接触してソフトコンタクトレンズそのものを変形させるなどの悪影響を及ぼすことも指摘されている。そのため、ソフトコンタクトレンズ装用中はBAKを含有する点眼液を点眼することは通常禁止されている。
【0004】
ところで、ジクアホソルはP,P-ジ(ウリジン-5’)四リン酸、UpU等とも呼ばれるプリン受容体アゴニストであり、我が国においては、3%(w/v)の濃度のジクアホソルナトリウムを含有する点眼液(製品名:ジクアス(登録商標)点眼液3%)として、ドライアイ治療に使用されている。そのジクアス(登録商標)点眼液3%には、上記の理由によりBAKが含まれている。
【0005】
また、特許文献1には、0.1~10%(w/v)の濃度のジクアホソルまたはその塩および0.0001~1%(w/v)の濃度のキレート剤を含有する水性点眼液が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013-227291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、BAKを含まず、安全性がより高いジクアホソル点眼液を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、0.1~10%(w/v)の濃度のジクアホソルまたはその塩、および0.0001~0.1%(w/v)の濃度のクロルヘキシジン類を含有する水性点眼液(以下、本点眼液ともいう)が、優れた保存効力を有することを見出し、本発明に至った。さらに、本発明者らは、本点眼液がソフトコンタクトレンズの変形を抑制することを見出した。また、本発明者らは、本点眼液が、BAKを含有する点眼液およびジクアホソルまたはその塩を含まないクロルヘキシジン類を含有する点眼液よりも、培養した不死化ヒト角膜上皮細胞において高い生細胞活性を示すことを見出した。また、本発明者らは、本点眼液がソフトコンタクトレンズ装用眼において、顕著にNIBUT(非侵襲涙液層破壊時間)を上昇させること、すなわち、ソフトコンタクトレンズ装用眼において、涙液層を安定化させることを見出した。一方で、人工涙液ではそのような効果は認められなかった。ソフトコンタクトレンズ装用によるドライアイ症状の発生/悪化は、涙液層の安定性の低下に起因するものであることから、本点眼液による涙液層の安定化はソフトコンタクトレンズ装用眼における、ドライアイの予防および/または治療に有用である。また、本点眼液は、ソフトコンタクトレンズ装用眼における、眼乾燥感および/または眼不快感の予防および/または治療にも有用である。
【0009】
すなわち、本発明は、以下に掲げる、水性点眼液を提供する。
(1)0.1~10%(w/v)の濃度のジクアホソルまたはその塩、および0.0001~0.1%(w/v)の濃度のクロルヘキシジン類を含有する水性点眼液。
(2)クロルヘキシジン類が、クロルヘキシジングルコン酸塩である、(1)に記載の水性点眼液。
(3)点眼液中のクロルヘキシジン類の濃度が、0.0005~0.05%(w/v)である、(1)または(2)に記載の水性点眼液。
(4)点眼液中のクロルヘキシジン類の濃度が、0.001~0.005%(w/v)である、(1)または(2)に記載の水性点眼液。
(5)点眼液中のジクアホソルまたはその塩の濃度が、3%(w/v)である、(1)~(4)のいずれかに記載の水性点眼液。
(6)さらに、キレート剤を含有する、(1)~(5)のいずれかに記載の水性点眼液。
(7)キレート剤がエデト酸またはその塩である、(6)に記載の水性点眼液。
(8)ソフトコンタクトレンズ用である、(1)~(7)のいずれかに記載の水性点眼液。
(9)ソフトコンタクトレンズがシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズである、(8)に記載の水性点眼液。
【0010】
また、本発明は、以下に掲げる、ソフトコンタクトレンズの変形を抑制する方法を提供する。
(10)(1)~(7)のいずれかに記載の水性点眼液による、ソフトコンタクトレンズの変形を抑制する方法。
【0011】
さらに、本発明は、以下にも関する。
(11)0.1~10%(w/v)の濃度のジクアホソルまたはその塩、および0.0001~0.1%(w/v)の濃度のクロルヘキシジン類を含有する、ドライアイの予防および/または治療用の水性点眼液。
(12)0.1~10%(w/v)の濃度のジクアホソルまたはその塩、および0.0001~0.1%(w/v)の濃度のクロルヘキシジン類を含有する水性点眼液のドライアイの予防および/または治療における使用。
(13)0.1~10%(w/v)の濃度のジクアホソルまたはその塩、および0.0001~0.1%(w/v)の濃度のクロルヘキシジン類を含有する水性点眼液を投与することを含む、ドライアイを予防および/または治療する方法。
【0012】
また、本発明は、以下に掲げる、水性点眼液を提供する。
(14)ソフトコンタクトレンズ装用眼における、ドライアイの予防および/または治療のための、(1)~(7)のいずれかに記載の水性点眼液。
(15)ソフトコンタクトレンズ装用眼における、涙液層の安定性を向上させるための、(1)~(7)のいずれかに記載の水性点眼液。
(16)ソフトコンタクトレンズ装用眼における、眼乾燥感または眼不快感の予防または治療のための、(1)~(7)のいずれかに記載の水性点眼液。
(17)ソフトコンタクトレンズがシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズである、(14)~(16)のいずれかに記載の水性点眼液。
【発明の効果】
【0013】
後述する試験例の結果から明らかなように、本点眼液は、優れた保存効力を有する。さらに、本点眼液が、ソフトコンタクトレンズの変形を抑制することから、ソフトコンタクトレンズ用として使用することができる。また、本点眼液は、BAKを含有する点眼液およびジクアホソルまたはその塩を含まないクロルヘキシジン類を含有する点眼液よりも、培養した不死化ヒト角膜上皮細胞において高い生細胞活性を示す。よって、本点眼液は、生体、特に角結膜上皮に対する安全性がより高く、ドライアイのような角結膜上皮が不安定な疾患に用いるのに有用である。また、本点眼液は、ソフトコンタクトレンズ装用眼において、顕著にNIBUTを上昇させる。一方、人工涙液ではそのような効果は認められない。すなわち、本点眼液は、ソフトコンタクトレンズ装用眼において、涙液層を安定化させる。ソフトコンタクトレンズ装用によるドライアイ症状の発生/悪化は、涙液層の安定性の低下に起因するものであることから、本点眼液による涙液層の安定化はソフトコンタクトレンズ装用眼における、ドライアイの予防および/または治療に有用である。また、本点眼液は、ソフトコンタクトレンズ装用眼における、眼乾燥感および/または眼不快感の予防および/または治療にも有用である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、試験例3において、角膜上皮細胞による細胞障害性試験の結果を示す図である。
図2図2は、試験例4において、NIBUT上昇作用の評価試験1の結果を示す図である。
図3図3は、試験例5において、NIBUT上昇作用の評価試験2の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に関してさらに詳しく説明する。
【0016】
ジクアホソルは、下記化学構造式で示される化合物である。
【0017】
【化1】
【0018】
「ジクアホソルの塩」としては、医薬として許容される塩であれば特に制限はなく、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛などとの金属塩;塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸などの無機酸との塩;酢酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、クエン酸、酒石酸、アジピン酸、グルコン酸、グルコヘプト酸、グルクロン酸、テレフタル酸、メタンスルホン酸、乳酸、馬尿酸、1,2-エタンジスルホン酸、イセチオン酸、ラクトビオン酸、オレイン酸、パモ酸、ポリガラクツロン酸、ステアリン酸、タンニン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、硫酸ラウリルエステル、硫酸メチル、ナフタレンスルホン酸、スルホサリチル酸などの有機酸との塩;臭化メチル、ヨウ化メチルなどとの四級アンモニウム塩;臭素イオン、塩素イオン、ヨウ素イオンなどのハロゲンイオンとの塩;アンモニアとの塩;トリエチレンジアミン、2-アミノエタノール、2,2-イミノビス(エタノール)、1-デオキシ-1-(メチルアミノ)-2-D-ソルビトール、2-アミノ-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール、プロカイン、N,N-ビス(フェニルメチル)-1,2-エタンジアミンなどの有機アミンとの塩などが挙げられる。
【0019】
本発明において、「ジクアホソルまたはその塩」には、ジクアホソル(フリー体)またはその塩の水和物および有機溶媒和物も含まれる。
【0020】
ジクアホソルまたはその塩に、結晶多形および結晶多形群(結晶多形システム)が存在する場合には、それらの結晶多形体および結晶多形群(結晶多形システム)も本発明の範囲に含まれる。ここで、結晶多形群(結晶多形システム)とは、それらの結晶の製造、晶出、保存などの条件および状態により、結晶形が変化する場合の各段階における個々の結晶形およびその過程全体を意味する。
【0021】
本発明の「ジクアホソルまたはその塩」として好ましいのはジクアホソルのナトリウム塩であり、下記化学構造式で示されるジクアホソル四ナトリウム塩(以下、単に「ジクアホソルナトリウム」ともいう)が特に好ましい。
【0022】
【化2】
【0023】
ジクアホソルまたはその塩については、特表2001-510484号公報に開示された方法などにより製造することができる。
【0024】
本点眼液はジクアホソルまたはその塩以外の有効成分を含有することもできるが、好ましくは、ジクアホソルまたはその塩を唯一の有効成分として含有する。
【0025】
本点眼液中のジクアホソルまたはその塩の濃度は、0.1~10%(w/v)であるが、1~10%(w/v)であることが好ましく、3%(w/v)であることが特に好ましい。
【0026】
本発明において、「水性点眼液」とは水を溶媒(基剤)とする点眼液を意味する。
【0027】
本発明において、「クロルヘキシジン類」には、クロルヘキシジンおよびその塩が含まれる。クロルヘキシジンは、下記化学構造式で示される化合物であり、1,1’-ヘキサメチレンビス[5-(4-クロロフェニル)ビグアニド]とも称される化合物である。
【0028】
【化3】
【0029】
本発明において、上記クロルヘキシジン類の内、「クロルヘキシジンの塩」としては、医薬として許容される塩であれば特に制限はなく、具体的には、有機酸塩[例えば、モノカルボン酸塩(酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、酪酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩等)、多価カルボン酸塩(フマル酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、マロン酸塩等)、オキシカルボン酸塩(グルコン酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩等)、有機スルホン酸塩(メタンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、トシル酸塩等)等]、無機酸塩(例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩等)、有機塩基との塩(例えば、メチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、ピペラジン、ピロリジン、トリピリジン、ピコリン等の有機アミンとの塩等)、無機塩基との塩[例えば、アンモニウム塩;アルカリ金属(ナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属(カルシウム、マグネシウム等)、アルミニウム等の金属との塩等]等が挙げられる。これらの塩の中でも、好ましくは有機酸塩および/または無機酸塩、より好ましくはオキシカルボン酸塩、モノカルボン酸塩および/または無機酸塩、更に好ましくはグルコン酸塩、酢酸塩および/または塩酸塩、特に好ましくはグルコン酸塩が挙げられる。これらのクロルヘキシジンの塩は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0030】
クロルヘキシジンおよびその塩は、公知の方法により合成してもよく、市販品として入手することもできる。
【0031】
本点眼液中のクロルヘキシジン類の濃度は、0.0001~0.1%であるが、0.0005~0.05%(w/v)であることが好ましく、0.001~0.005%(w/v)であることが特に好ましい。
【0032】
本発明において、「キレート剤」とは、金属イオンをキレート化する化合物であれば特に制限はされないが、例えば、エデト酸(エチレンジアミン四酢酸)、エデト酸一ナトリウム、エデト酸二ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、エデト酸四ナトリウム、エデト酸二カリウム、エデト酸三カリウム、エデト酸四カリウムなどのエデト酸またはその塩;クエン酸、クエン酸一ナトリウム、クエン酸二ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸一カリウム、クエン酸二カリウム、クエン酸三カリウムなどのクエン酸またはその塩;メタリン酸、メタリン酸ナトリウム、メタリン酸カリウムなどのメタリン酸またはその塩;ピロリン酸、ピロリン酸四ナトリウム、ピロリン酸四カリウムなどのピロリン酸またはその塩;ポリリン酸、ポリリン酸ナトリウム、ポリリン酸カリウムなどのポリリン酸またはその塩;リンゴ酸一ナトリウム、リンゴ酸二ナトリウム、リンゴ酸一カリウム、リンゴ酸二カリウムなどのリンゴ酸またはその塩;酒石酸ナトリウム、酒石酸カリウム、酒石酸カリウムナトリウムなどの酒石酸またはその塩;フィチン酸ナトリウム、フィチン酸カリウムなどのフィチン酸またはその塩、などを挙げることができる。なお、本発明において、「エデト酸、クエン酸、メタリン酸、ピロリン酸、ポリリン酸、リンゴ酸、酒石酸、フィチン酸およびそれらの塩」には、それぞれのフリー体またはそれらの塩の水和物および有機溶媒和物も含まれるものとする。
【0033】
本発明において、キレート剤は、エデト酸、エデト酸の塩(エデト酸塩)、クエン酸、クエン酸の塩(クエン酸塩)、メタリン酸、メタリン酸の塩(メタリン酸塩)、ポリリン酸、ポリリン酸の塩(ポリリン酸塩)が好ましく、エデト酸のナトリウム塩(エデト酸二ナトリウム水和物などの水和物を含む)、クエン酸(クエン酸一水和物などの水和物を含む)、メタリン酸のナトリウム塩(メタリン酸ナトリウム)、ポリリン酸のナトリウム塩(ポリリン酸ナトリウム)が特に好ましい。
【0034】
本発明において、エデト酸塩としても最も好ましいのは、エデト酸二ナトリウム水和物(以下、単に「エデト酸ナトリウム水和物」ともいう)である。
【0035】
また、これらのキレート剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0036】
本点眼液中のキレート剤の濃度は、例えば0.0001~1%(w/v)であるが、0.0005~0.5%(w/v)が好ましく、0.001~0.1%(w/v)が特に好ましい。
【0037】
本発明における水性点眼液には、必要に応じて非イオン性界面活性剤を配合することができる。非イオン性界面活性剤としては、医薬として許容される範囲内であれば特に制限されるものでないが、例えば、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ショ糖脂肪酸エステルなどが挙げられる。ポリオキシエチレン脂肪酸エステルとしては、ステアリン酸ポリオキシル40などが挙げられ、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、ポリソルベート80、ポリソルベート60、ポリソルベート40、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレート、ポリソルベート65などが挙げられ、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体としては、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油10、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、ポリオキシル5ヒマシ油、ポリオキシル9ヒマシ油、ポリオキシル15ヒマシ油、ポリオキシル35ヒマシ油、ポリオキシル40ヒマシ油などが挙げられ、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールとしては、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール、ポリオキシエチレン(42)ポリオキシプロピレン(67)グリコール、ポリオキシエチレン(54)ポリオキシプロピレン(39)グリコール、ポリオキシエチレン(196)ポリオキシプロピレン(67)グリコール、ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(20)グリコールなどが挙げられる。
【0038】
本発明において、非イオン性界面活性剤として、例えばポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが挙げられ、好ましくはポリソルベート80、ポリソルベート60、ポリソルベート40、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレート、ポリソルベート65などが挙げられ、特に好ましくはポリソルベート80が挙げられる。
【0039】
また、これらの非イオン性界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
【0040】
本点眼液中の非イオン性界面活性剤の濃度は、例えば0.0001~10%(w/v)であるが、0.0005~1%(w/v)が好ましく、0.0005~0.1%(w/v)が特に好ましい。
【0041】
本点眼液には、汎用されている技術を用い、必要に応じて製薬学的に許容される添加剤を添加することができ、例えば、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、酢酸ナトリウム、イプシロン-アミノカプロン酸などの緩衝化剤;塩化ナトリウム、塩化カリウム、濃グリセリンなどの等張化剤などを必要に応じて選択し、添加することができる。
【0042】
本点眼液のpHは眼科製剤に許容される範囲内にあればよいが、通常4~8の範囲内が好ましい。本点眼液には、適宜、塩酸や水酸化ナトリウムなどのpH調節剤を添加することができる。
【0043】
本点眼液は、ソフトコンタクトレンズ用として、ソフトコンタクトレンズ装着時にも使用することができる。ソフトコンタクトレンズとしては、例えば、ヒドロキシエチルメタクリレートを主成分とするコンタクトレンズまたはシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズなどが挙げられる。
【0044】
本点眼液の適用対象となるソフトコンタクトレンズの種類については特に制限されるものでなく、また、イオン性または非イオン性、含水性または非含水性の別を問わない。例えば、繰り返し使用されるレンズの他、1日使い捨て用レンズ、1週間使い捨て用レンズ、2週間使い捨て用レンズなどの現在市販されているまたは将来市販されるすべてのソフトコンタクトレンズに適用可能である。
【0045】
本点眼液、本点眼液の用法は、剤型、投与すべき患者の症状の軽重、年令、体重、医師の判断などに応じて適宜変えることができるが、例えば、剤形として点眼剤を選択した場合には、1日1~10回、好ましくは1日2~8回、より好ましくは1日4~6回に分けて眼局所に投与することができる。
【0046】
ドライアイは「様々な要因による涙液および角結膜上皮の慢性疾患であり、眼不快感や視覚異常を伴う疾患」と定義づけられ、乾性角結膜炎(KCS)はドライアイに含まれる。本発明においては、ソフトコンタクトレンズ装用を原因とするドライアイ症状の発生もドライアイに含まれるものとする。
【0047】
ドライアイ症状には、眼乾燥感、眼不快感、眼疲労感、鈍重感、羞明感、眼痛、霧視(かすみ目)などの自覚症状の他、充血、角結膜上皮障害などの他覚所見も含まれる。
【0048】
ドライアイの病因については不明点も多いが、シェーグレン症候群;先天性無涙腺症;サルコイドーシス;骨髄移植による移植片対宿主病(GVHD:Graft Versus Host Disease);眼類天疱瘡;スティーブンス・ジョンソン症候群;トラコーマなどを原因とする涙器閉塞;糖尿病;角膜屈折矯正手術(LASIK:Laser(-assisted) in Situ Keratomileusis)などを原因とする反射性分泌の低下;meibom腺機能不全;、眼瞼炎などを原因とする油層減少;眼球突出、兎眼などを原因とする瞬目不全または閉瞼不全;胚細胞からのムチン分泌低下;VDT作業などがその原因であると報告されている。
【0049】
本点眼液は、「ドライアイの予防および/または治療」に使用することができる。
【0050】
本発明において、「ドライアイの予防および/または治療」とは、ドライアイに伴う病的症状および/または所見を予防および/または治療もしくは改善することと定義づけられ、ドライアイに伴う眼乾燥感、眼不快感、眼疲労感、鈍重感、羞明感、眼痛、霧視(かすみ目)などの自覚症状の予防および/または治療もしくは改善を意味するだけでなく、ドライアイに伴う充血、角結膜上皮障害などの予防および/または治療もしくは改善も含まれる。また、「ドライアイの予防および/または治療」には、ソフトコンタクトレンズ装用眼における涙液層の安定性の向上によってドライアイ症状を予防および/または治療もしくは改善せしめることも含まれる。なお、ドライアイ症状の予防および/または治療もしくは改善には、ドライアイ患者がソフトコンタクトレンズ装用することで悪化するに至ったドライアイ症状の予防および/または治療もしくは改善、ソフトコンタクトレンズ装用そのものにより発生するに至ったドライアイ症状の予防および/または治療もしくは改善をも意味する。
【0051】
本発明において、涙液層の安定性の向上とは、涙液が量的または質的に改善されることを意味する。なお、涙液層の安定性はBUT(涙液層破壊時間)を測定することで確認することができる。BUTの中でも、染色液等の負荷をかけずに、より自然の状態に近い測定したものをNIBUT(非侵襲涙液層破壊時間)という。
【0052】
本発明において、「ソフトコンタクトレンズ装用眼における、眼乾燥感または眼不快感の予防または治療」とは、ソフトコンタクトレンズ装用による涙液層の不安定化に伴う眼乾燥感または眼不快感の予防または治療や前記不安定化を原因とする角結膜上皮障害により引き起こされる眼乾燥感または眼不快感の予防または治療を意味する。
【実施例0053】
以下に、保存効力試験、ソフトコンタクトレンズの変形抑制評価試験、角膜上皮細胞による細胞障害性試験およびNIBUT上昇作用の評価試験の結果を示すが、これらの例は本発明をよりよく理解するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。なお、CLはコンタクトレンズ、SCLはソフトコンタクトレンズの略である。
【0054】
試験例1.保存効力試験
表1に示す処方の点眼液1~6について、保存効力試験を行った。
【0055】
(試料調製)
点眼液1:
表1に示す処方に従って、点眼液1を調製した。具体的には、ジクアホソルナトリウム(3g)、リン酸水素ナトリウム水和物(0.2g)、塩化ナトリウム(0.39g)、塩化カリウム(0.15g)、エデト酸ナトリウム水和物(0.01g)、ポリソルベート80(0.0005g)およびクロルヘキシジングルコン酸塩(0.002g)を水に溶解して100mLとし、pH調節剤を添加して、pH7.2とした。
【0056】
点眼液2~6:
表1に示す処方に従って、点眼液1と同様に点眼液2~6の各点眼液を調製した。
【0057】
【表1】
【0058】
(試験方法)
保存効力試験は、第十六改正日本薬局方の保存効力試験法に準拠して行なった。本試験では、試験菌として、Esherichia Coli(E.coli)、Pseudomonas aeruginosa(P.aeruginosa)、Staphylococcus aureus(S.aureus)、Candida albicans(C.albicans)およびAspergillus brasiliensis(A.brasiliensis)を用いた。
【0059】
(試験結果)
試験結果を表2に示す。
【0060】
【表2】
【0061】
なお、表2の試験結果は検査時の生菌数が接種した菌数に比べてどの程度減少したかをlog reductionで示しており、たとえば「1」の場合には、検査時の生菌数が接種菌数の10%に減少したことを示している。
【0062】
表2に示された通り、点眼液1~6は、日本薬局方の保存効力試験基準に適合することが示された。
【0063】
(考察)
上記の結果から、本点眼液は、優れた保存効力を有することが示された。
【0064】
試験例2.ソフトコンタクトレンズの変形抑制評価試験
点眼液4を使用して、ソフトコンタクトレンズに及ぼす影響について検討した。
【0065】
(試料調製)
表1に示す処方に従って、点眼液1と同様に点眼液4を調製した。
【0066】
(試験方法)
表3に示すFDAによるコンタクトレンズ分類のうち、グループIVに該当するコンタクトレンズ(2weekアキュビュー(登録商標))を点眼液4に24時間浸漬し、前後でのコンタクトレンズの直径、ベースカーブの変化量を算出し、以下の表4に示す判定基準を満たすか否か検討した。また、試験終了後の各コンタクトレンズの性状を観察した。なお、当該判定基準は、厚生労働省告示第349号 視力補正用コンタクトレンズ基準(平成13年10月5日)に基づき設定した。
【0067】
【表3】
【0068】
(判定基準)
【0069】
【表4】
【0070】
(結果)
結果を表5に示す。
【0071】
【表5】
【0072】
表5に示すように、長時間浸漬後のコンタクトレンズは判定基準を満たした。よって、点眼液4は、ソフトコンタクトレンズの変形を抑制することが示された。
【0073】
(考察)
上記の結果から、本点眼液は、ソフトコンタクトレンズの変形を抑制することから、ソフトコンタクトレンズ用として使用することができる。
【0074】
試験例3.角膜上皮細胞による細胞障害性試験
本点眼液が角膜上皮細胞に及ぼす影響を検討するため、角膜上皮細胞による細胞障害性試験を行った。
【0075】
(試料調製)
表6に示す処方に従って、点眼液1と同様に点眼液7、8、9、10を調製した。
【0076】
【表6】
【0077】
(試験方法)
SV40不死化ヒト角膜上皮細胞(HCE-T:理化学研究所、バイオリソースセンター、Cell No.:RCB2280)を96ウエルプレートに播種(1×10細胞/ウエル)し、10%FBS含有D-MEM/F12培地で1日培養した。翌日、培地を点眼液7、点眼液8、点眼液9または点眼液10に交換した後、前記角膜上皮細胞を15分間培養した。Cell Proliferation Assay Kit)(Promega社製、カタログ番号:G3580)を用いて、生細胞活性(490nmの吸光度に相当する)を測定した。
【0078】
(結果)
試験結果を図1に示す。
【0079】
図1から明らかなように、クロルヘキシジングルコン酸塩を含有するジクアホソル点眼液(点眼液7)が、BAKを含有する点眼液(点眼液9、点眼液10)およびジクアホソルまたはその塩を含まないクロルヘキシジン類を含有する点眼液(点眼液8)よりも、培養した不死化ヒト角膜上皮細胞において高い生細胞活性を示した。
【0080】
(考察)
本点眼液は、培養した不死化ヒト角膜上皮細胞において高い生細胞活性を示すことから、生体、特に角結膜上皮に対する安全性がより高く、ドライアイのような角結膜上皮が不安定な疾患に用いるのに有用である。
【0081】
試験例4.NIBUT上昇作用の評価試験1
ソフトコンタクトレンズ装用により、涙液層の安定性が低下した眼における、ジクアホソル点眼液のNIBUTを検討した。
【0082】
(試料調製)
表1に示す処方に従って、点眼液1と同様に点眼液4を調製した。
【0083】
(試験方法)
ソフトコンタクトレンズ(製品名:メニコンソフトMA(登録商標))を装用したカニクイザルの眼に、点眼液4(20μL/眼)を点眼する前、および点眼15、30、45、60分後のNIBUTをドライアイ観察装置(DR-1、コーワ)で測定した。対照薬として人工涙液(製品名:ソフトサンティア(登録商標))を用いた(N=10~11眼)。
【0084】
(結果)
試験結果を図2に示す。図2から明らかなように、ソフトコンタクトレンズ装用眼に点眼液4を点眼すると、点眼60分後までの全測定ポイントで、点眼前と比較して顕著なNIBUTの上昇が認められた。一方、人工涙液点眼ではNIBUTの上昇が認められなかった。
【0085】
(考察)
上記の結果から、本点眼液は、ソフトコンタクトレンズ装用による涙液層の安定性の低下を改善することが示された。本点眼液のこのような効果は、一般にドライアイ治療に用いられる人工涙液と比較しても、顕著なものであった。よって、本点眼液は、ソフトコンタクトレンズ装用眼における、ドライアイの予防および/または治療に有用である。また、本点眼液は、ソフトコンタクトレンズ装用眼における、眼乾燥感および/または眼不快感の予防および/または治療にも有用である。
【0086】
試験例5.NIBUT上昇作用の評価試験2
ソフトコンタクトレンズ装用により、涙液層の安定性が低下した眼における、ジクアホソル点眼液のNIBUTを検討した。
【0087】
(試料調製)
表1に示す処方に従って、点眼液1と同様に点眼液4を調製した。
【0088】
(試験方法)
ソフトコンタクトレンズ(製品名:メニコンソフトMA(登録商標))を装用したカニクイザルの眼に、点眼液4(20μL/眼)を点眼する前、および点眼5、15、30、45、60分後のNIBUTをドライアイ観察装置(DR-1、コーワ)で測定した。対照薬として人工涙液(製品名:ソフトサンティア(登録商標))、ヒアルロン酸ナトリウム(製品名:ヒアレイン(登録商標)ミニ点眼液0.1%)を用いた(N=11眼)。
【0089】
(結果)
試験結果を図3に示す。図3から明らかなように、ソフトコンタクトレンズ装用眼に点眼液4を点眼すると、点眼60分後までの全測定ポイントで、点眼前と比較して顕著なNIBUTの上昇が認められた。一方、人工涙液点眼ではNIBUTの上昇が認められなかった。また、ヒアルロン酸ナトリウム点眼では点眼5分後NIBUTの上昇が認められたものの、その上昇作用は点眼液4より低く、点眼15分後以降はNIBUTの上昇が認められなかった。
【0090】
(考察)
上記の結果から、本点眼液は、ソフトコンタクトレンズ装用による涙液層の安定性の低下を改善することが示された。本点眼液のこのような効果は、一般にドライアイ治療に用いられる人工涙液およびヒアルロン酸ナトリウム点眼液と比較しても、顕著なものであった。よって、本点眼液は、ソフトコンタクトレンズ装用眼における、ドライアイの予防および/または治療に有用である。また、本点眼液は、ソフトコンタクトレンズ装用眼における、眼乾燥感および/または眼不快感の予防および/または治療にも有用である。
【0091】
試験例6.NIBUT上昇作用の比較試験
ソフトコンタクトレンズ装用により、涙液層の安定性が低下した眼における、本点眼液とBAK含有点眼液(ジクアホソルナトリウムおよびBAKを含有する点眼液)のNIBUTを比較検討した。
【0092】
(試料調製)
表1に示す処方に従って、点眼液1と同様に点眼液4を調製した。
また、比較例として、点眼液4のクロルヘキシジングルコン酸塩の代わりにBAKを含有する点眼液11を調製した。具体的には、ジクアホソルナトリウム(3g)、リン酸水素ナトリウム水和物(0.2g)、塩化ナトリウム(0.41g)、塩化カリウム(0.15g)およびBAK(0.0075g)を水に溶解して100mLとし、pH調節剤を添加して、pH7.5とした。点眼液4と点眼液11は、共に同一濃度の有効成分(ジクアホソルナトリウム)を含有する点眼液である。また、点眼液4と点眼液11は、共に日本薬局方の保存効力試験基準に適合し、同等の保存効力を有する点眼液である。
【0093】
(試験方法)
ソフトコンタクトレンズ(製品名:メニコンソフトMA(登録商標))を装用したカニクイザルの眼に、点眼液4、点眼液11(20μL/眼)を点眼する前、および点眼30分後のNIBUTをドライアイ観察装置(DR-1、コーワ)で測定した(N=11眼)。
【0094】
(結果)
試験結果を表7に示す。
【0095】
【表7】
【0096】
日本薬局方の保存効力試験基準に適合し、同等の保存効力を有する、本点眼液(点眼液4)とBAK含有点眼液(点眼液11)の点眼30分後におけるNIBUTを測定し、比較検討した結果、本点眼液はBAK含有点眼液よりも高いNIBUT上昇作用を有することが示された。
【0097】
(考察)
上記の結果から、本点眼液はBAK含有点眼液よりもソフトコンタクトレンズ装用による涙液層の安定性の低下を改善することが示された。
【0098】
[製剤例]
製剤例を挙げて本発明の薬剤をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの製剤例にのみ限定されるものではない。
【0099】
(処方例1:点眼剤(3%(w/v)))
100mL中
ジクアホソルナトリウム 3g
リン酸水素ナトリウム水和物 0.1~0.5g
塩化ナトリウム 0.01~1g
塩化カリウム 0.01~1g
エデト酸ナトリウム水和物 0.0001~0.1g
クロルヘキシジングルコン酸塩 0.0001~0.1g
滅菌精製水 適量
滅菌精製水にジクアホソルナトリウムおよびそれ以外の上記成分を加え、これらを十分に混合することで上記点眼剤を調製できる。
【0100】
(処方例2:点眼剤(3%(w/v)))
100mL中
ジクアホソルナトリウム 3g
リン酸水素ナトリウム水和物 0.1~0.5g
塩化ナトリウム 0.01~1g
塩化カリウム 0.01~1g
エデト酸ナトリウム水和物 0.0001~0.1g
クロルヘキシジングルコン酸塩 0.0001~0.1g
ポリソルベート80 0.0001~0.1g
滅菌精製水 適量
滅菌精製水にジクアホソルナトリウムおよびそれ以外の上記成分を加え、これらを十分に混合することで上記点眼剤を調製できる。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本点眼液は、優れた保存効力を有する。さらに、本点眼液が、ソフトコンタクトレンズの変形を抑制することから、ソフトコンタクトレンズ用として使用することができる。また、本点眼液は、BAKを含有する点眼液およびジクアホソルまたはその塩を含まないクロルヘキシジン類を含有する点眼液よりも、培養した不死化ヒト角膜上皮細胞において高い生細胞活性を示す。よって、本点眼液は、生体、特に角結膜上皮に対する安全性がより高く、ドライアイのような角結膜上皮が不安定な疾患に用いるのに有用である。また、本点眼液は、ソフトコンタクトレンズ装用眼において顕著にNIBUTを上昇させる。一方、人工涙液ではそのような効果は認められない。すなわち、本点眼液は、ソフトコンタクトレンズ装用眼において涙液層を安定化させる。ソフトコンタクトレンズ装用によるドライアイ症状の発生/悪化は、涙液層の安定性の低下に起因するものであることから、本点眼液による涙液層の安定化はソフトコンタクトレンズ装用眼における、ドライアイの予防および/または治療に有用である。また、本点眼液は、ソフトコンタクトレンズ装用眼における、眼乾燥感および/または眼不快感の予防および/または治療にも有用である。
図1
図2
図3