IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ リンカーン メモリアル ユニバーシティーの特許一覧

特開2022-166259疾患診断、化学予防、および処置のための超長鎖ジカルボン酸の同定および使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022166259
(43)【公開日】2022-11-01
(54)【発明の名称】疾患診断、化学予防、および処置のための超長鎖ジカルボン酸の同定および使用
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/50 20060101AFI20221025BHJP
【FI】
G01N33/50 D
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022131678
(22)【出願日】2022-08-22
(62)【分割の表示】P 2019538572の分割
【原出願日】2017-10-02
(31)【優先権主張番号】15/284,219
(32)【優先日】2016-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519118371
【氏名又は名称】リンカーン メモリアル ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウッド、ポール エル.
(57)【要約】      (修正有)
【課題】腎臓がんおよび結腸直腸がんを含む(これらに限定されない)がんのあるタイプを検出するための方法における早期リスク指標として使用され得る代謝マーカーの正確な割り当ておよび同定が望まれる。
【解決手段】結腸直腸がんリスクを決定するための方法は、対象の血液試料を得ることと、血液試料から血清またはEDTA血漿を単離することと、血清またはEDTA血漿を分析して、超長鎖ジカルボン酸(VLCDCA28:4)の血漿レベルを決定することと、対象のVLCDCA28:4の決定された血漿レベルを、結腸直腸がんを有すると診断された対象のVLCDCA28:4の血漿レベルの所定の範囲と比較することと、VLCDCA28:4の決定された血漿レベルがVLCDCAの血漿レベルの所定の範囲内にある場合、結腸直腸がんリスクが存在すると決定することとを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腎臓がん、結腸直腸がん、頭頸部がん、関節リウマチ、およびその組合せからなる群から選択される疾患状態に関して、対象における疾患状態リスクを決定する方法であって、
血液試料から血清またはEDTA血漿を単離し、
前記単離された血清またはEDTA血漿からVLCDCA28:4の血漿レベルを決定し、
前記単離された血清又はEDTA血漿から前記決定されたVLCDCA28:4の血漿レベルを、前記疾患状態を有すると診断されていない複数の対象から予め決定された所定の範囲のVLCDCA28:4血漿レベルと比較し、
前記単離された血清またはEDTA血漿からの前記決定されたVLCDCA28:4の血漿レベルが、前記所定の範囲のVLCDCA28:4血漿レベルより少なくとも25%低い場合、前記疾患状態リスクが存在すると決定することと
を含む、方法。
【請求項2】
前記単離された血清またはEDTA血漿から前記決定されたVLCDCA28:4の血漿レベルが、前記所定の範囲のVLCDCA28:4血漿レベルより少なくとも50%低い、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記疾患状態が結腸直腸がんであり、前記単離された血清またはEDTA血漿から前記決定されたVLCDCA28:4の血漿レベルが、前記所定の範囲のVLCDCA28:4血漿レベルより少なくとも62%低い、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記疾患状態が結腸直腸がんであり、前記単離された血清またはEDTA血漿から前記決定されたVLCDCA28:4の血漿レベルが、前記所定の範囲のVLCDCA28:4血漿レベルより少なくとも68%低い、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記疾患状態が結腸直腸がんであり、前記単離された血清またはEDTA血漿から前記決定されたVLCDCA28:4の血漿レベルが、活動性疾患状態と診断された状態に相当する所定の範囲のVLCDCA28:4血漿レベル内にある、請求項1、3、または4に記載の方法。
【請求項6】
前記疾患状態リスクが存在すると決定された場合、前記対象の血液中のVLCDCA28:4の血漿レベルを増加させるのに十分な量の超長鎖ジカルボン酸を前記対象に投与すること
をさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記超長鎖ジカルボン酸が、28~36個の炭素と、1~4つの二重結合とを含む直鎖基を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記超長鎖ジカルボン酸が、式:
HOOC-(CH-CH=CH-CH-CH=CH-CH-CH=CH-CH-CH=CH-(CH11-COOH
を有する化合物である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記超長鎖ジカルボン酸が請求項8に記載の超長鎖ジカルボン酸のエステルである、請求項6~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記超長鎖ジカルボン酸が循環VLCDCA28:4の少なくとも8%の増加が観察されるまで前記対象に投与される、請求項6~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記超長鎖ジカルボン酸が循環VLCDCA28:4の少なくとも15%の増加が観察されるまで前記対象に投与される、請求項6~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記血液試料が静脈穿刺を通して得られる、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
28~36個の炭素超長鎖ジカルボン酸の構造を検証する方法であって、
血液試料から血清またはEDTA血漿を単離し、
前記血清またはEDTA血漿を低温環境で保存し、
1ナノモルの[2H28]ジカルボン酸16:0を含む約1ミリリットル(mL)のメタノールを前記単離された血清またはEDTA血漿と混合し、
約1mLの蒸留水および約2mlのtert-ブチルメチルエーテルを前記単離された血清またはEDTA血漿と混合し、
前記混合物から有機層を分離し、
前記有機層を乾燥し、
前記乾燥された有機層をイソプロパノール、メタノール、クロロホルム、および酢酸アンモニウムの組合せに溶解することと、
前記溶解された有機層について質量分析を行い、
陰イオンエレクトロスプレーイオン化を使用して、ジカルボン酸のアニオンを定量化して、ジカルボン酸28:4構造を検証することと
を含む、方法。
【請求項14】
イソプロパノール、メタノール、およびクロロホルムの組合せが4:2:1の比である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記酢酸アンモニウムが約15ミリモルの濃度で前記組合せ中に存在する、請求項13または14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、「疾患診断、化学予防、および処置のための超長鎖ジカルボン酸の同定および使用」と題された2016年10月3日に出願された米国非仮出願第15/284,219号の一部継続出願であり、その内容全体が参照によって本明細書に組み入れられるが、本出願と矛盾する開示または定義がある場合は、本明細書における開示または定義が優先されるものとする。
【背景技術】
【0002】
本発明の一般的発明概念は、疾患の検出に使用されるバイオマーカー化合物、より詳細には、超長鎖ジカルボン酸(以下、「VLCDCA」)、ならびに結腸直腸がんおよび腎臓がんを含む(これらに限定されない)様々な疾患の検出、化学予防、および処置のためのバイオマーカーとしてVLCDCAを使用する方法に関する。同定されたVLCDAは、ヒトに特異的な内在性の抗炎症性かつ抗増殖性の脂質である。
【0003】
がんは、異常細胞が制御されずに分裂し始め、潜在的に他の組織に侵入し得るある種の疾患である。がん細胞は、患者の血液および/またはリンパ系を通して、患者の身体の様々な部分に広がり得る。多くの種類のがんがあり、そのうち結腸直腸がんは、最も高い死亡率を有するがんの1つである。しかしながら、現在、結腸内視鏡検査などのいくつかの早期検出スクリーニングプログラムが存在し、結腸直腸がんを検出するのに有効であることが証明されているものの、多くの人は、コストおよび知覚される侵襲性のために、そのような検査を受けることに気が進まない。その結果、腎臓がんおよび結腸直腸がんを含めたあるタイプのがんを発症するリスクがより高い人を同定する、いくつかの低侵襲性血清ベース試験が開発された。
【0004】
そのような試験の1つは、結腸直腸がんまたは膵臓がんと診断された患者からの血清の非標的化リピドミクス分析を伴う。血清内の脂質抽出物をモニターして、444~555原子質量単位(amu)の間にあるいくつかの質量がある期間にわたって減少するかどうかを測定する。しかしながら、脂質は、まだ分析標準として合成されていないので、これらの脂質は、以前はビタミンE代謝物として、その後に1つのカルボキシ官能基、2~6つの二重結合、および2~4つのヒドロキシ置換を有する超長鎖ヒドロキシル化多価不飽和脂肪酸として誤って割り当てられた。結果として、これらの推測される脂質候補のいずれも、構造的仮定を検証し、これらのバイオマーカーに関する臨床アッセイの信頼性を改善するための分析標準として合成されていない。
【0005】
上記を考慮して、腎臓がんおよび結腸直腸がんを含む(これらに限定されない)がんのあるタイプを検出するための方法における早期リスク指標として使用され得る代謝マーカーの正確な割り当ておよび同定が望まれる。
【発明の概要】
【0006】
ある長鎖炭化水素バイオマーカーの質量分布の減少は、しばしばがん診断の前兆であることが見出された。したがって、同定された特定の低レベルの長鎖炭化水素バイオマーカーに関するスクリーニングは、がんリスクの早期同定のための有用なツールとして、および追加のがん試験のための指標としての可能性を有する。特に、高まったがんリスクまたは初期がん(例えば、結腸直腸がんまたは膵臓がん)は、28~30個の炭素原子、0~1つのヒドロキシ基、および1~4つの二重結合を有する、超長鎖ジカルボン酸(VLCDCA)、ならびに32~36個の炭素原子、1または2つのヒドロキシ基、および1~4つの二重結合を有するVLCDCAの存在の減衰と相関している。28個の炭素および4つの二重結合を有する1つの特定の超長鎖ジカルボン酸(VLCDCA)は、診断マーカーとして、およびがん発生に対する保護を提供するためのサプリメントとしての可能性を有する。このVLCDCA(以下、VLCDCA28:4n6として同定される)は、式(I)を有するが、二重結合の局在化に関して他の変異体を排除しない:
HOOC-(CH-CH=CH-CH-CH=CH-CH-CH=CH-CH-CH=CH-(CH11-COOH
(I)。
【0007】
様々な例示的実施形態では、本発明の一般的発明概念の態様および利点は、ジカルボン酸としてのVLCDCA28:4の検証のための方法を提供することによって達成され得、これは、一部の実施形態では、[2H4]タウリンでの1つのカルボキシル基の逐次誘導体化およびトリメチルシリルジアゾメタンでの第2のカルボキシル基のメチル化を含み得る。反応はまた、内部標準[2H28]VLCDCA26:0を含めることによってモニターされ得る。一実施形態では、VLCDCA28:4の2つのカルボキシル官能基の逐次誘導体化のために、1ミリリットルの乾燥血漿脂質抽出物に、50μLの2-クロロ-1-メチルピリジニウムヨージド(15.2mg/10ミリリットルのアセトニトリルおよび16.4μLのトリメチルアミン)を添加する。試料を15分間振盪しながら30℃で加熱し、続いて50μLの[2H4]タウリン(900μLの蒸留水および100μLのアセトニトリル中5mg)を添加する。試料をさらに2時間振盪しながら30℃で加熱した後、真空遠心分離によって乾燥させる。次に、100μLの2-プロパノールおよび20μLのトリメチルシリルジアゾメタン(ヘキサン中2M)を添加し、試料を30分間振盪しながら30℃で加熱する。次に、20μLの氷酢酸を添加して、残っているトリメチルシリルジアゾメタンを消費する。次いで、試料を真空遠心分離によって乾燥させ、15mMの酢酸アンモニウムを含有するイソプロパノール、メタノール、およびクロロホルム(4:2:1)の混合物に溶解する。混合物をネガティブESI(分解能140,000)で分析して、誘導体化脂質のアニオンをモニターする。これは、111.02931([2H4]タウリン)および14.01565(トリメチルシリルジアゾメタン)amuの添加を伴い、571.3845(446.33960+111.02931+14.01565)の生成物および0.53ppmの質量誤差でモニターされる570.3772のアニオンを生じる(図2B)。同様に、内部標準[2H28]VLCDCA26:0を[2H4]タウリンおよびトリメチルシリルジアゾメタンと順次反応させて、439.4351(314.39016+111.02931+14.01565)の生成物および0.46ppmの質量誤差でモニターされる438.4278のアニオンを生じる。
【0008】
様々な例示的実施形態例では、本一般的発明概念の態様および利点は、対象の血液試料を得ることと、血液試料から血清またはEDTA血漿を単離することと、血清またはEDTA血漿を分析して、超長鎖ジカルボン酸(VLCDCA28:4)の血漿レベルを決定することと、対象のVLCDCA28:4の決定された血漿レベルを、結腸直腸がんを有すると診断された対象のVLCDCA28:4の血漿レベルの所定の範囲と比較することと、血液試料内のVLCDCA28:4の決定された血漿レベルがVLCDCA28:4の血漿レベルの所定の範囲内にある場合、結腸直腸がんを有する対象のリスクを決定することとを含む、結腸直腸がんを有する対象リスクを決定するための方法を提供することによって達成され得る。
【0009】
一部の例示的実施形態例では、本一般的発明概念の先行するかつ/または他の態様および利点は、結腸直腸がんを有する対象リスクを決定するための方法であって、対象の血液試料を得ることと、血液試料から血清またはEDTA血漿を単離することと、血清またはEDTA血漿を分析して、VLCDCA28:4の血漿レベルを決定することと、対象のVLCDCA28:4の決定された血漿レベルを、結腸直腸がんを有すると診断された対象のVLCDCA28:4の血漿レベルの所定の範囲と比較することと、血液試料内のVLCDCA28:4の決定された血漿レベルがVLCDCA28:4の血漿レベルの所定の範囲内にある場合、対象が結腸直腸がんを有すると決定することとを包含する、方法によって達成され得る。
【0010】
一部の例示的実施形態例では、本一般的発明概念の先行するかつ/または他の態様および利点は、結腸直腸がんを有する対象を処置する方法であって、対象に結腸直腸がんを処置するのに十分な量の超長鎖ジカルボン酸を投与すること含む方法を提供することによって達成され得る。
【0011】
一部の実施形態では、超長鎖ジカルボン酸は、C28~36脂肪族基である直鎖基を含む。
【0012】
一部の実施形態では、超長鎖ジカルボン酸は、1~4つの間の二重結合を有する直鎖基を含む。
【0013】
一部の実施形態では、超長鎖ジカルボン酸は、エポキシドまたはヒドロキシ官能基を含む。
【0014】
一部の実施形態では、超長鎖ジカルボン酸は、式(I):
HOOC-(CH-CH=CH-CH-CH=CH-CH-CH=CH-CH-CH=CH-(CH11-COOH
(I)
の化合物(VLCFA28:4)である。
【0015】
一部の例示的実施形態では、本一般的発明概念の先行するかつ/または他の態様および利点は、ジカルボン酸28:4構造を検証する方法であって、対象の血液試料を得ることと、血液試料から血清またはEDTA血漿を単離することと、血清またはEDTA血漿を低温環境で保存することと、1ナノモルの[28]ジカルボン酸16:0を含む約1ミリリットル(mL)のメタノールを100マイクロリットルの血清またはEDTA血漿を含有する試料に混合することと、約1mLの蒸留水および約2mlのtert-ブチルメチルエーテルを試料と混合することと、試料から有機層を分離することと、上部有機層を乾燥させることと、乾燥された上部有機層をイソプロパノール、メタノール、クロロホルム、および酢酸アンモニウムの混合物に溶解することと、溶解物について質量分析を行うことと、陰イオンエレクトロスプレーイオン化を使用して、ジカルボン酸のアニオンを定量化することとを包含する方法を提供することによって達成され得る。
【0016】
一部の実施形態では、対象の血液試料は、静脈穿刺によって得られる。
【0017】
一部の実施形態では、低温環境は、冷蔵庫および冷凍庫を含む。
【0018】
一部の実施形態では、有機層は、約3000倍の重力の遠心力を使用して試料から分離される。
【0019】
一部の実施形態では、イソプロパノール、メタノール、およびクロロホルムの混合物は、4:2:1の比である。
【0020】
一部の実施形態では、混合物は、約15ミリモル(mM)の酢酸アンモニウムを含む。
【0021】
一部の実施形態では、質量分析は、直接注入を介して行われる。
【0022】
一部の例示的実施形態では、本一般的発明概念の先行するかつ/または他の態様および利点は、化学予防剤を低循環レベルのVLCDAを有する対象に提供する方法であって、対象に化学予防剤として働くのに十分な量の式(I):
HOOC-(CH-CH=CH-CH-CH=CH-CH-CH=CH-CH-CH=CH-(CH11-COOH
(I)
の化合物、(I)のプロドラッグ、または(I)の類似体を投与することを含む方法を供給することによって達成され得る。
【0023】
本一般的発明概念の他の例示的実施形態では、本一般的発明概念の先行するかつ/または他の態様および利点は、対象の血液試料を得ることと、血液試料から血清またはEDTA血漿を単離することと、血清またはEDTA血漿を低温環境で保存することと、1ナノモルの[28]ジカルボン酸16:0を含む約1ミリリットル(mL)のメタノールを100マイクロリットルの血清またはEDTA血漿を含有する試料に混合することと、約1mLの蒸留水および約2mlのtert-ブチルメチルエーテルを試料と混合することと、試料から有機層を分離することと、上部有機層を乾燥させることと、乾燥された上部有機層をイソプロパノール、メタノール、クロロホルム、および酢酸アンモニウムの混合物に溶解することと、溶解物について質量分析を行うことと、陰イオンエレクトロスプレーイオン化を使用して、ジカルボン酸のアニオンを定量化することとを含むジカルボン酸28:4構造を検証する方法を提供することによって達成され得る。
【0024】
対象の血液試料は、静脈穿刺によって得られ得る。低温環境は、冷蔵庫および/または冷凍庫を含み得る。
【0025】
有機層は、約3000倍の重力の遠心力を使用することによって試料から分離され得る。
【0026】
イソプロパノール、メタノール、およびクロロホルムの混合物は、4:2:1の比とすることができる。混合物は、約15ミリモル(mM)の酢酸アンモニウムを含み得る。質量分析は、直接注入を介して行われ得る。
【0027】
VLCDCA28:4は、調査したすべてのヒト生体液(血漿、滑液、胸水、脳脊髄液、および臍帯血漿)に存在する。VLCDCA28:4は、イヌ、ウシ、ウマ、または非ヒト霊長類カニクイザルもしくはアカゲザルの血漿中では検出可能ではなかった。対照的に、VLCDCA28:4レベルは、非ヒト霊長類の最も近い生きているヒト近縁種であるチンパンジーの血漿中で検出された。
【0028】
本一般的発明概念の追加の態様および利点は、以下の説明に部分的に記載されることになり、部分的には、その説明から明らかとなるか、または本一般的発明概念の実行によって習得され得る。
【0029】
他の特徴および態様は、以下の詳細な説明、図面、および特許請求の範囲から明らかになり得る。
【図面の簡単な説明】
【0030】
添付の図面を参照しながら、以下の例示的実施形態の詳細な説明を通して、多種多様な追加の実施形態がより容易に理解され認識されるであろう。
図1A】ヒト血漿から抽出されたVLCDCAのリストを示す表である。
図1B】ヒト血漿から抽出されたVLCDCAのリストを示す表である。親塊および誘導体化(カルボキシおよびヒドロキシル官能基)分子の質量が列挙されている。
図2A】対照血漿からの(1.94ppm質量誤差)445.332amuのスペクトル分子アニオンを有する親分子VLCDCA28:4の分子アニオンを示す。
図2B】対照血漿抽出物での[]タウリンでの1つのカルボキシル基の逐次誘導体化およびトリメチルシリルジアゾメタンでの第2のカルボキシル基のメチル化によって570.3772amu(0.53ppm質量誤差)の分子アニオンを有するVLCDCA28:4のジカルボキシル構造を検証するグラフである。
図2C】[]タウリンおよびトリメチルシリルジアゾメタンと順次反応させられて、0.46ppmの質量誤差でモニターされる438.4278amuのアニオンを生じる安定同位体内部標準[28]VLCDCA26:0のジカルボキシル構造を検証するグラフである。
図2D】は、ジヒドロキシVLCDCA36:2のジカルボキシル構造およびジヒドロキシ置換を検証するグラフである。対照血漿抽出物での[]タウリンでの1つのカルボキシル基の逐次誘導体化およびトリメチルシリルジアゾメタンでの第2のカルボキシル基のメチル化は、ジカルボキシル構造を検証し、一方[]無水酢酸での2つのヒドロキシ基のその後のアセチル化は、ジヒドロキシ置換を検証する。
図3A】異なる動物種の血漿中および異なるヒト生体液中のVLCDCAレベルの表である。
図3B】腎臓がんおよび結腸直腸がんと診断された患者の血漿中の減少したVLCDCA28:4血漿レベルを図示するチャートである。
図4】VLCDCA28:6のヒト生体液レベルおよび他の種の血漿中のレベルの評価を列挙する表である。
図5】ジカルボン酸のカルボンキシルエステルプロドラッグおよび相当する構造のリストを図示する表である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
ヒトの血液中のある長鎖炭化水素バイオマーカー塊の普及の減少は、しばしばがんの前兆である。したがって、低レベルの特異的な同定された長鎖炭化水素バイオマーカーに関するスクリーニングは、がんリスクの早期同定のための有用なツールとして、および追加のがん試験のための指標としての可能性を有する。特に、高まったがんリスクまたは初期がん(例えば、結腸直腸がんまたは膵臓がん)は、28~30個の炭素原子、0~1つのヒドロキシ基、および1~4つの二重結合を有する超長鎖ジカルボン酸(VLCDCA)、ならびに32~36個の炭素原子、1または2つのヒドロキシ基、および1~4つの二重結合を有するVLCDCAの非疾患対照に対する減少と相関している。
【0032】
28個の炭素および4つの二重結合を有する1つの特定の超長鎖ジカルボン酸(VLCDCA)は、診断マーカーとして、およびがん発生に対する保護を提供するためのサプリメントとしての可能性を有する。このVLCDCA(以下、VLCDCA28:4として同定される)は、式(I):
HOOC-(CH-CH=CH-CH-CH=CH-CH-CH=CH-CH-CH=CH-(CH11-COOH
(I)
を有する。
【0033】
膵臓がんまたは結腸直腸がんと診断された患者における444~555amuの間の原子質量を有するいくつかの分子の減少がモニターされたヒト血漿または血清内の脂質抽出物は、VLCDCAとして同定される。445.3323amuの原子質量を有する分子アニオンに関して、この脂質は、初めて、VLCDCA28:4として同定された。ジカルボン酸へのVLCFAの変換は、最初にミクロソームCYP4Fによる脂肪酸のω酸化、それに続くアルコールデヒドロゲナーゼを介したアルデヒドへの変換、およびCYP4Fによるまたは脂肪アルデヒドデヒドロゲナーゼによるVLCDCAへの最終変換を伴う。本発明の概念は、最大36個の炭素長のVLCDCAの特徴付けを含む。
【0034】
最大36個の炭素長までのVLCDCAは、例えば、結腸直腸がん、卵巣がん、前立腺がん、および膵臓がんなどの様々ながんの脂質バイオマーカーとして使用され得る。本一般的発明概念は、結腸直腸がんおよび膵臓がんと診断された患者からのヒト血漿または血清の脂質抽出物内の数が減少することをモニターされている、444~555amuのVLCDCAバイオマーカー塊の正確な同定を提供する。本発明の概念に従って、これらの脂質バイオマーカーは、1~4つの二重結合および0、1、または2つのヒドロキシ置換を有するVLCDCAとして同定される。
【0035】
図1Aおよび図1Bは、ヒト血漿から抽出されたVLCDCAのリストを示す表である。図1Aおよび図1Bを参照すると、連続脂肪酸伸長は、脳、脾臓、膵臓、腎臓、回腸、およびリンパ節において中程度のレベルで、および霊長類の網膜、胸腺、表皮、生殖細胞において高レベルで見出される酵素である超長鎖脂肪酸-4(ELOVL4)の伸長を伴う。これらの超長鎖脂肪酸は、スフィンゴミエリンおよびフォトファチジルコリンの脂肪酸成分としての構造的機能を遂行し、シグナル伝達の役割を果たし、ジカルボン酸の潜在的な前駆体である。
【0036】
図2Aは、[]タウリンでの1つのカルボキシル基の逐次誘導体化およびトリメチルシリルジアゾメタンでの第2のカルボキシル基のメチル化の前の、445.332amu(1.94ppm質量誤差)のスペクトル分子アニオンを有するVLCDCA28:4のグラフである。図2Bは、対照血漿の有機抽出物を[]タウリンおよびトリメチルシリルジアゾメタンと順次反応させることによって、570.3772amu(0.53ppm質量誤差)の分子アニオンを有するジカルボキシル構造(VLCDCA28:4)を検証するグラフである。図2Aおよび2Bを参照すると、1000μLの対照血漿の脂質抽出物と[]タウリンおよびトリメチルシリルジアゾメタンとの反応は、両方のカルボン酸基を誘導体化する。分子アニオン445.3323amuは、4つの二重結合を有しかつヒドロキシ置換を有さないVLCDCAとして同定される。この脂質は、5つの二重結合および2つのヒドロキシ置換を有する脂肪酸としての以前の割当てではなく、正しく同定され、ジカルボン酸28:4として割り当てられている(GTA-446)。
【0037】
ジカルボン酸28:4構造を検証する方法も開示されている。この方法は、[]タウリンおよびトリメチルシリルジアゾメタンを使用することによるVLCFA28:4における2つのカルボキシル基の誘導体化を含む。この検証方法は、静脈穿刺によって収集された血液試料を得ること、次いで、血液試料から血清またはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)血漿のいずれかの試料を単離することを含む。血清および/またはEDTA血漿の試料は、ある実施形態では、分析の前に試料が分解することを制限するために低温環境(例えば、冷蔵庫)中で保存され得るまたは凍結され得る。
【0038】
約100マイクロリットルの血清および/またはEDTA血漿の試料を、例えば、CDN Isotopes、88 Ave.Leacota、PointeClaire、QC、H9R 1H1によって供給されるタイプの1ナノモルの[28]ジカルボン酸16:0を含有する1ミリリットル(mL)のメタノールと混合して、試料混合物を形成することができる。次いで、1ミリリットルの蒸留水および2ミリリットルのtert-ブチルメチルエーテルを試料混合物に添加する。次いで、試料混合物を有機溶媒中で撹拌して、脂質画分を抽出する。例えば、試料混合物は、室温で約30分間高速(例えば、Fisher Multitube Vortexの設定値9)で振盪することによって、撹拌することができる。次いで、試料混合物を沈降させて、有機上層を試料の残部から分離する。次いで、試料混合物を試験管に移し、室温で約10分間、約3000倍の重力で遠心分離する。
【0039】
一実施形態では、試料混合物の上記沈降時に、約1ミリリットルの上部有機層を1.5ミリリットルのマイクロチューブに移し、例えば、遠心真空蒸発によって乾燥させ、その後、乾燥した上部有機層部分を、約15ミリモル(mM)の酢酸アンモニウムを含有する、それぞれ4:2:1の比でイソプロパノール、メタノール、およびクロロホルムの混合物に溶解する。次いで、サブミリのマス精度での高分解能(例えば、200原子質量単位で140,000)データ取得を、例えば、商標「Q Exactive TM」の下でThermo Scientificによって製造販売されているタイプのオービトラップ質量分析計での直接注入を介して試料に行う。しかしながら、他のタイプまたはモデルの質量分析計が使用され得る。複数の試料が方法に従って同時にプロセシングされる実施形態では、ある試料から次の試料へのゴースト効果を最小化するために、オービトラップ質量分析計への投入ラインを試料間にメタノールならびにそれぞれ3:2の比でヘキサンおよび酢酸エチルの混合物を使用して洗浄してもよい。次いで、陰イオンエレクトロスプレーイオン化では、ジカルボン酸のアニオンを定量化し、獲得された高分解能データセットから、図1に図示するように、データを減少させて、VLCDCAのリストを提供することができる。
【0040】
VLCFA28:4中の2つのカルボキシル基の検証を[]タウリンでの1つのカルボキシル基の逐次誘導体化、およびトリメチルシリルジアゾメタンでの第2のカルボキシル基のメチル化によって得た。検証方法は、約1ミリリットルの乾燥脂質抽出物を50μLの2-クロロ-1-メチルピリジニウムヨージド(15.2mg/10ミリリットルのアセトニトリルおよび16.4μLのトリメチルアミン)に添加することを含む。試料を15分間振盪しながら30℃で加熱し、続いて50μLの[]タウリン(900μLの蒸留水および100μLのアセトニトリル中5mg)を添加する。試料をさらに2時間振盪しながら30℃で加熱した後、真空遠心分離によって乾燥させる。次に、100μLの2-プロパノールおよび20μLのトリメチルシリルジアゾメタン(ヘキサン中2M)を添加し、試料を30分間振盪しながら30℃で加熱する。次に、20μLの氷酢酸を添加して、残っているトリメチルシリルジアゾメタンを消費する。次いで、試料を真空遠心分離によって乾燥させる。次いで、混合物を、約15mMの酢酸アンモニウムを含有するそれぞれ4:2:1の比のイソプロパノール、メタノール、およびクロロホルムの混合物に溶解させる。
【0041】
混合物をネガティブESI(分解能140,000)で分析して、誘導体化脂質のアニオンをモニターする。これは、111.02931([]タウリン)および14.01565(トリメチルシリルジアゾメタン)amuの添加を伴い、571.3845(446.33960+111.02931+14.01565)の生成物および0.53ppmの質量誤差でモニターされる570.3772のアニオンを生じる(図2B)。同様に、内部標準[28]VLCDCA26:0を[]タウリンおよびトリメチルシリルジアゾメタンと順次反応させて、439.4351(314.39016+111.02931+14.01565)の生成物および0.46ppmの質量誤差でモニターされる438.4278のアニオンを生じる。本発明の方法の上述の実施形態で使用される様々な量の材料は、方法が上述の実施形態による材料のおおよその比率を使用して行われるように変化し得ることが認識されるであろう。本一般的発明概念によるそのような代替の実施形態が本明細書で企図されており、本一般的発明概念から逸脱すると理解されるべきではない。さらに、本発明の方法は、一度に複数の試料を同時に検証するために使用することができ、例えば、本一般的発明概念の精神および範囲から逸脱することなく、複数の試料が上述のようにプロセシングされ得ることが企図される。
【0042】
ヒドロキシ官能基を含有するジカルボン酸の場合、様々な実施形態では、脂質は、[]タウリンでの1つのカルボキシル基の逐次誘導体化、およびトリメチルシリルジアゾメタンでの第2のカルボキシル基のメチル化を最初に受ける。次に、ヒドロキシ基を[]無水酢酸で誘導体化する。具体的には、2つのカルボン酸官能基を上記のように誘導体化する。次いで、試料を乾燥させ、75μLのピリジンおよび75μLの[]無水酢酸を添加する。試料を振盪ながら60℃で1時間加熱し、真空遠心分離によって乾燥させ、15mMの酢酸アンモニウムを含有するイソプロパノール、メタノール、およびクロロホルム(4:2:1)の混合物に溶解する。ジヒドロキシVLCDCA36:2(図1B、GTA594、PC594を参照されたい)の場合、これは、3.68ppmの質量誤差でモニターされる808.5824のアニオンを作製する(図2C)809.5896(594.48594+111.02931+14.01565+2*45.02939)の生成物を生じる。内在性VLCDCAおよびそれらの誘導体に関する塊の完全なリストは、図1Aおよび図1Bに示されている。
【0043】
代替の例示的実施形態では、データは、安定同位体内部標準のピーク面積対内在性脂質のピーク面積の比として単純に減少され得る。しかしながら、本一般的発明概念は、そこに限定されない。すなわち、代替の例示的実施形態では、分析標準が利用可能である場合、検量線が絶対定量化のために構築され得る。さらなる例示的実施形態では、VLCFAは、タンデム質量分析(MS)、または三重四重極機器でのユニット分解能質量分析を含むがこれらに限定されない他の様々な質量分析技術によって定量化され得る。しかしながら、本一般的発明概念は、そこに限定されない。さらなる例示的実施形態では、液体クロマトグラフィー、キャピラリーゾーン電気泳動、および超臨界流体クロマトグラフィーなどの様々な従来のクロマトグラフィー方法が直接注入の代替として使用され得る。しかしながら、本一般的発明概念は、そこに限定されない。
【0044】
図3Aは、異なる動物種の血漿中および異なるヒト生体液中のVLCDCAレベルの表である。これらのデータは、VLCDCAが高等霊長類の血液中にのみ存在することを示し、この脂質が後期進化的発達を表すことを示している。ヒトでは、VLCDCAは、血漿に加えて多種多様な生体液中に存在する。
【0045】
図3Bは、疾患状態を有すると診断されていない対照群のVLCDCA28:4血漿レベルに対する腎臓がん、結腸直腸がん、頭頸部がん、および関節リウマチの疾患状態を有する患者の血漿中のVLCDCA28:4血漿レベルの減少を図示するチャートである。VLCDCA28:4血漿レベルの減少は、乳がん、多形性膠芽腫、潰瘍性大腸炎、および乾癬に対しては注目されず、したがって、VLCDCA28:4血漿レベルの減少が疾患状態リスク情報を提供する能力を示している。対照群は、疾患状態を有すると診断されていない複数の対象から決定されたVLCDCA28:4血漿レベルの範囲を提供する。同様に、各個々の疾患状態に関して複数の対象において観察されたVLCDCA28:4血漿レベルは、特定の診断された疾患状態に相当するVLCDCA28:4血漿レベルの範囲を提供する。
【0046】
対照に対する約25%のVLCDCA28:4の減少は、腎臓がん、結腸直腸がん、頭頸部がん、および関節リウマチの1つまたは複数の状態に対する活動性または感受性を示している。対照に対する約50%のVLCDCA28:4の減少は、腎臓がん、結腸直腸がん、頭頸部がん、および関節リウマチの1つまたは複数の状態に対する活動性または感受性のより強力な指標である。対照に対する約62%のVLCDCA28:4の減少は、活動性結腸直腸がんまたは結腸直腸がんに対する感受性の指標である。対照に対する約68%以上のVLCDCA28:4の減少は、活動性結腸直腸がんまたは結腸直腸がんに対する感受性のより強力な指標である。
【0047】
臨床的には、444~555の間のバイオマーカー塊の減衰ががん発症前に検出されてきた。加えて、これらのバイオマーカー塊は、同定されたがん性組織を除去するための手術後に回復されず、これは、これらのバイオマーカー塊ががん性組織に由来せず、内因性の化学的保護因子を表し得ることを示唆している。
【0048】
VLCDCA28:4などの28~36個の炭素原子を有するVLCDCAを含めたこれらの因子のサプリメントは、がんまたは炎症性疾患発症に対する保護を提供するために、あるタイプのがんまたは炎症性障害を発症する疾患状態リスクを有すると同定された人々に対して提供され得る。ある例では、ヒト血漿からのこれらの同定された脂質の精製画分は、抗炎症性および抗増殖性の両方の特性を有することが観察された。VLCDAは、循環VLCDCA28:4の少なくとも8%の増加が観察されるまで、対象に投与され得る。好ましくは、VLCDAは、循環VLCDCA28:4の少なくとも15%の増加が観察されるまで、対象に投与され得る。
【0049】
同定された脂質バイオマーカーVLCDCA28:4は、VLCFAの変換によって産出される。この変換は、最初にミクロソームCYP4FによるVLCFA28:4(VLCFA28:4n6)のω酸化、それに続くアルコールデヒドロゲナーゼを介したアルデヒドへの変換、およびCYP4Fによるまたは脂肪アルデヒドデヒドロゲナーゼによるVLCDCA28:4n6への最終変換を伴う。最大26個の炭素のVLCDCAが以前に報告されているが、本方法は、最大36個の炭素長のVLCDCAの特徴付けを提供する。
【0050】
対象内の同定された脂質バイオマーカーVLCDCA28:4の血清または血漿レベルを定量化する方法は、結腸直腸、腎臓、前立腺、および膵臓がんを含むがこれらに限定されない複数のがんを発症するリスク因子としてこれらの脂質をモニターするために使用され得る。例えば、一実施形態では、VLCFAは、三連四重極機器でのユニット分解能質量分析を含めた様々な他の質量分析計でMS2によって定量化され得る。さらに、クロマトグラフィー法も直接注入法の代替として使用され得、これは、液体クロマトグラフィー、キャピラリーゾーン、電気泳動、および超臨界流体クロマトグラフィーを含み得る。しかしながら、本一般的発明概念は、そこに限定されない。
【0051】
図4は、ジカルボン酸のカルボキシルエステルプロドラッグおよび相当する構造のリストを図示する表である。さらに、同定された脂質バイオマーカーVLCDCA28:4またはVLCDCA28:4の潜在的なエステルは、がん治療薬としてまたはがん化学予防薬として使用され得るこれらの脂質の様々な医薬類似体またはプロドラッグの開発に使用され得る。
【0052】
図5は、プロドラッグの開発に使用され得る同定された脂質バイオマーカーVLCDCA28:4のモノ-およびジ-エステルを表す。同定された脂質バイオマーカーVLCDCA28:4は、担体を含む医薬組成物で、または様々な他の薬剤もしくは薬物と組み合わせて提供され得る。同定された脂質バイオマーカーVLCDCA28:4は、サプリメント、栄養補助食品で提供され得る、かつ/または他の様々な食品と組み合わせて提供され得る。同定された脂質バイオマーカーVLCDCA28:4は、がんを処置する、予防する、かつ/または軽減するのに十分な量で、結腸直腸がん、腎臓がん、前立腺がん、および膵臓がんを含むがこれらに限定されない複数のがんの少なくとも1つと診断された対象に投与され得る。
【0053】
結腸直腸がんを処置する方法
例示的実施形態では、本一般的発明概念は、結腸直腸がんを有する対象を処置する方法を提供する。代替の例示的実施形態では、本一般的発明概念は、化学予防剤および化学予防剤で低循環レベルのVLCDCAを有する対象を処置する方法も提供する。処置方法は、結腸直腸がんまたは低循環レベルのVLCDCAを有する対象に、血中を循環するVLCDCAのレベルを増加させるのに十分な量のVLCDCA、式(I)の化合物、(I)のプロドラッグ、または(I)の類似体:
HOOC-(CH-CH=CH-CH-CH=CH-CH-CH=CH-CH-CH=CH-(CH11-COOH
(I)
を投与することを含む。
【0054】
しかしながら、本一般的発明概念は、そこに限定されない。すなわち、他の例示的実施形態では、化合物(I)の構造類似体および/または化合物(I)のプロドラッグエステルも、優れたかつ/または改善されたバイオアベイラビリティ(BA)を提供するために、開発され得る。
【0055】
膵臓がんを処置する方法
他の例示的実施形態では、本一般的発明概念は、膵臓がんを有する対象を処置する方法および低循環レベルのVLCDCAを有する個人における化学予防剤として提供する。処置方法は、膵臓がんまたは低循環レベルのVLCDCAを有する対象に、血中を循環するVLCDCAのレベルを増加させるのに十分な量のVLCDCA、式(I)の化合物、(I)のプロドラッグ、または(I)の類似体:
HOOC-(CH-CH=CH-CH-CH=CH-CH-CH=CH-CH-CH=CH-(CH11-COOH
(I)
を投与することを含む。
【0056】
しかしながら、本一般的発明概念は、そこに限定されない。すなわち、他の例示的実施形態では、化合物(I)の構造類似体および/または化合物(I)のプロドラッグエステルも、優れたかつ/または改善されたバイオアベイラビリティ(BA)を提供するために、開発され得る。
【0057】
前立腺がんを処置する方法
代替の例示的実施形態では、本一般的発明概念は、前立腺がんを有する対象を処置する方法および低循環レベルのVLCDCAを有する個人における化学予防剤として提供する。処置方法は、前立腺がんまたは低循環レベルのVLCDCAを有する対象に、血中を循環するVLCDCAのレベルを増加させるのに十分な量のVLCDCA、式(I)の化合物、(I)のプロドラッグ、または(I)の類似体:
HOOC-(CH-CH=CH-CH-CH=CH-CH-CH=CH-CH-CH=CH-(CH11-COOH
(I)
を投与することを含む。
【0058】
しかしながら、本一般的発明概念は、そこに限定されない。すなわち、他の例示的実施形態では、化合物(I)の構造類似体および/または化合物(I)のプロドラッグエステルも、優れたかつ/または改善されたバイオアベイラビリティ(BA)を提供するために、開発され得る。
【0059】
他のVLCDCA(図1Aに列挙されている)、およびこれらのVLCDCAの構造類似体またはプロドラッグエステルも、血中を循環するVLCDCAのレベルを増加させ、結腸直腸がんを処置するための潜在的な治療候補である。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2022-09-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結腸直腸がんに関して、対象における疾患状態リスクを分析する方法であって、
血液試料から血清またはEDTA血漿を離し、
前記分離された血清またはEDTA血漿の一部について質量分析を行い、複数の質量ピークを含むデータセットを生成し、
前記複数の質量ピークのサブセットを前記血清またはEDTA血漿の一部内のVLCDCA28:4の存在を示すものとして同定し、
血液試料中のVLCDCA28:4のレベルを検証するための分析標準を提供し、
前記複数の質量ピークのサブセットを前記分析標準と比較して、前記複数の質量ピークのサブセットがVLCDCA28:4に対応することを確認し、
前記複数の質量ピークのサブセットの値に基づいて、前記単離された血清又はEDTA血漿からVLCDCA28:4の血漿レベルを決定し、
前記単離された血清又はEDTA血漿から前記決定されたVLCDCA28:4の血漿レベルを、前記結腸直腸がんを有すると診断されていない複数の対象から予め決定された所定の範囲のVLCDCA28:4血漿レベルと比較し、
前記単離された血清またはEDTA血漿からの前記決定されたVLCDCA28:4の血漿レベルが、前記所定の範囲のVLCDCA28:4血漿レベルより少なくとも25%低い場合、前記疾患状態リスクが存在することが示唆されると決定することと
を含む、方法。
【請求項2】
前記単離された血清またはEDTA血漿から前記決定されたVLCDCA28:4の血漿レベルが、前記所定の範囲のVLCDCA28:4血漿レベルより少なくとも50%低い、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記単離された血清またはEDTA血漿から前記決定されたVLCDCA28:4の血漿レベルが、前記所定の範囲のVLCDCA28:4血漿レベルより少なくとも62%低い、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記単離された血清またはEDTA血漿から前記決定されたVLCDCA28:4の血漿レベルが、前記所定の範囲のVLCDCA28:4血漿レベルより少なくとも68%低い、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記単離された血清またはEDTA血漿から前記決定されたVLCDCA28:4の血漿レベルが、活動性疾患状態と診断された状態に相当する所定の範囲のVLCDCA28:4血漿レベル内にある、請求項1、3、または4に記載の方法。
【請求項6】
前記血液試料が静脈穿刺を通して得られる、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0030
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0030】
添付の図面を参照しながら、以下の例示的実施形態の詳細な説明を通して、多種多様な追加の実施形態がより容易に理解され認識されるであろう。
図1A】ヒト血漿から抽出されたVLCDCAのリストを示す表である。
図1B】ヒト血漿から抽出されたVLCDCAのリストを示す表である。親塊および誘導体化(カルボキシおよびヒドロキシル官能基)分子の質量が列挙されている。
図2A】対照血漿からの(1.94ppm質量誤差)445.332amuのスペクトル分子アニオンを有する親分子VLCDCA28:4の分子アニオンを示す。
図2B】対照血漿抽出物での[]タウリンでの1つのカルボキシル基の逐次誘導体化およびトリメチルシリルジアゾメタンでの第2のカルボキシル基のメチル化によって570.3772amu(0.53ppm質量誤差)の分子アニオンを有するVLCDCA28:4のジカルボキシル構造を検証するグラフである。
図2C】[]タウリンおよびトリメチルシリルジアゾメタンと順次反応させられて、0.46ppmの質量誤差でモニターされる438.4278amuのアニオンを生じる安定同位体内部標準[28]VLCDCA26:0のジカルボキシル構造を検証するグラフである。
図3A】異なる動物種の血漿中および異なるヒト生体液中のVLCDCAレベルの表である。
図3B】腎臓がんおよび結腸直腸がんと診断された患者の血漿中の減少したVLCDCA28:4血漿レベルを図示するチャートである。
図4】VLCDCA28:6のヒト生体液レベルおよび他の種の血漿中のレベルの評価を列挙する表である。
図5】ジカルボン酸のカルボンキシルエステルプロドラッグおよび相当する構造のリストを図示する表である。
【外国語明細書】