(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022166262
(43)【公開日】2022-11-01
(54)【発明の名称】自動車を通気するための空気流装置
(51)【国際特許分類】
B60H 1/32 20060101AFI20221025BHJP
F24F 13/02 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
B60H1/32 626Z
F24F13/02 D
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022131767
(22)【出願日】2022-08-22
(62)【分割の表示】P 2020119114の分割
【原出願日】2020-07-10
(31)【優先権主張番号】10 2019 119 740.6
(32)【優先日】2019-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】510238096
【氏名又は名称】ドクター エンジニール ハー ツェー エフ ポルシェ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Dr. Ing. h.c. F. Porsche Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Porscheplatz 1, D-70435 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100202647
【弁理士】
【氏名又は名称】寺町 健司
(72)【発明者】
【氏名】トマス グロシェプフ
(72)【発明者】
【氏名】ヤニク シュティンバッハ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】自動車を通気するために空気流の制御を改善すること。
【解決手段】本発明は、空気流を適切に制御するための少なくとも1個のフラップ要素(2)を備えた、自動車を通気するための空気流装置(1)に関する。このフラップ要素(2)は少なくとも一部が可撓性に形成され、且つその上及び/又はその中に配置された少なくとも1個の形状記憶要素(3)によって変形可能である。そして、フラップ要素(2)が中立位置から2つの方向に曲げられ得るよう、フラップ要素(2)の中心面(12)の両側に、それぞれ少なくとも1個の形状記憶要素(3)が配置されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気流を適切に制御するための少なくとも1個のフラップ要素(2)を備え、このフラップ要素(2)が可撓性材料によって形成されており、前記フラップ要素(2)がその上及び/又はその中に配置された少なくとも1個の形状記憶要素(3)によって変形可能であり、前記フラップ要素(2)が中立位置から2つの方向に曲げられ得るよう、前記フラップ要素(2)の中心面(12)の両側に、それぞれ少なくとも1個の形状記憶要素(3)が配置されている、自動車を通気するための空気流装置(1)。
【請求項2】
前記フラップ要素(2)が前記形状記憶要素(3)の通電によって変形可能であることを特徴とする請求項1に記載の空気流装置(1)。
【請求項3】
前記フラップ要素(2)を変形するために、少なくとも1個の前記形状記憶要素(3)が短縮され、少なくとも1個の他の形状記憶要素(3)が伸びるか又はこの形状記憶要素の少なくとも一部が前記フラップ要素(2)と相対的に少なくとも自在変形することを特徴とする請求項1又は2に記載の空気流装置(1)。
【請求項4】
前記フラップ要素(2)と前記形状記憶要素(3)は少なくとも一部が、破壊せずには取り外しができないように互いに連結されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の空気流装置(1)。
【請求項5】
前記形状記憶要素(3)が前記フラップ要素(2)の材料内に射出成形され、及び/又はこのフラップ要素によって押出し被覆されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の空気流装置(1)。
【請求項6】
前記形状記憶要素(3)が少なくとも1本の線材(13)を備えているか又はこのような線材として形成されていることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の空気流装置(1)。
【請求項7】
前記フラップ要素(2)が少なくとも1個のダクトシステム(5)内に配置された少なくとも1個のフラップ(22)として及び/又は少なくとも1個のダクトシステム(5)の少なくとも1つの壁区間(32)として形成されていることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の空気流装置(1)。
【請求項8】
ダクトシステム(5)の少なくとも1つのダクト区間(15)が少なくとも部分的に閉鎖可能又は開放可能であり及び/又は空気がダクトシステム(5)の少なくとも1つの所定のダクト区間(15)内に方向を変えることができるように、前記フラップ要素(2)が前記形状記憶要素(3)によって変形可能であることを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の空気流装置(1)。
【請求項9】
前記フラップ要素(2)がダクトシステム(5)の流れ断面内に配置され、且つ流れ断面を少なくとも2つの流路(25)に分割し、前記フラップ要素(2)の変形によってその都度1つの流路(25)が少なくとも部分的に閉鎖可能及び/又は開放可能であることを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の空気流装置(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気流を適切に制御するための少なくとも1個のフラップ要素を備えた、自動車を通気するための空気流装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の乗客室を適切に通気するために、空気を案内するダクトのほとんどがフラップによって開閉されるか或いは空気が所定のダクト内へ方向を変えられる。そのために、フラップは通常、ダクト内に揺動可能に軸承され、且つ適当な機構を介して駆動装置に連結されている。この駆動装置は通常は電気的に形成され、ほとんどが電動機である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
これに対して、本発明の課題は、自動車を通気するために空気流の制御を改善することである。解決策は好ましくはより簡単で、特に低コストで、好ましくは故障しにくく、そして例えば少ない部品で実現できるようにすべきである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題は、請求項1の特徴を有する空気流装置によって解決される。本発明の有利な発展形態は従属請求項の対象である。本発明の他の効果と特徴は、概括的な説明と実施の形態の説明から明らかになる。
【0005】
本発明に係る空気流装置は、自動車、特に少なくとも乗客室の通気を行う働きをする。空気流装置は、特に通気のための空気流を適切に制御するための少なくとも1個のフラップ要素を備えている。その際、フラップ要素は少なくとも一部が可撓性に形成されている。フラップ要素は、その上及び/又はその中に配置された少なくとも1個の形状記憶要素によって変形可能、好ましくは弾性変形可能である。
【0006】
本発明に係る空気流装置はたくさんの利点を生じる。形状記憶要素によって適切に変形可能な可撓性のフラップ要素は重要な利点を生じる。それによって、空気流を制御するためのフラップ要素の、きわめて簡単で同時に非常に適切でそして確実な調節が可能になる。本発明は構造的に簡単に且つ低コストで実現可能である。本発明においてフラップ要素自体が変形することも有利である。従って、フラップ要素と駆動装置の間で力を伝達するための高価で故障しやすい機構と、フラップの揺動軸承部を省略することができる。
【0007】
フラップ要素は好ましくは形状記憶要素の通電によって変形可能である。これはフラップ要素のきわめて簡単且つ確実な変形を生じる。従って、形状記憶要素の通電と、それによって生じるフラップ要素の変形とによって、空気流を適切に制御することができる。特に、通電によって形状記憶要素が短縮されるか又は縮小する。その際、電流は形状記憶要素自体を通って流れ、形状を変更し、特に短縮する。しかし、通電によって形状記憶要素が伸長するか又は膨張するようにすることもできる。形状記憶要素は特に導電性である。形状記憶要素を通電によって加熱することができる。これは温度変更可能又は変形可能な形状記憶要素の場合にきわめて有利である。
【0008】
形状記憶要素は特に、電流の作用を受けてフラップ要素を変形、特に曲げるために適するように形成されている。形状記憶要素は特に、フラップ要素が形状記憶要素の変形に追従して形状記憶要素と共に変形するように、フラップ要素上及び/又はフラップ要素内に配置されている。形状記憶要素は通電しないでひとりでに及び/又はフラップ要素によって供される力によって再び静止位置又は出発位置に戻ることができる。形状記憶要素は通電しないと再び伸びるか又は大きくなる。しかし、形状記憶要素を通電しないで短縮又は縮小することもできる。
【0009】
形状記憶要素は形状記憶合金であるか又は少なくとも1つのこのような形状記憶合金を含んでいる。形状記憶要素は記憶金属とも呼ばれるか又はこのような記憶金属を含んでいる。形状記憶要素は特にSMA(英語でShape Memory Alloy)であるか又は少なくとも1つのこのようなSMAを含んでいる。他の種類の形状記憶材料を用いることもできる。
【0010】
きわめて有利な実施形では、フラップ要素の中心面の両側に、それぞれ少なくとも1個の形状記憶要素が配置されている。これは、フラップ要素を静止位置から二つの方向に適切に曲げることができるという利点がある。従って、1個のフラップ要素によって、複数の異なる空気制御が可能である。特に、少なくとも1個の形状記憶要素の通電によって、フラップ要素を第1方向に曲げることができる。特に、少なくとも1個の他の形状記憶要素の通電によって、フラップ要素を他の方向に曲げることができる。
【0011】
特に、中心面の両側にそれぞれ少なくとも1個の形状記憶要素がフラップ要素上に及び/又はフラップ要素内に配置されている。特に、フラップ要素は少なくとも2個の形状記憶要素の間に配置されている。特に、形状記憶要素は中心面の外側又は中心からずれた位置に配置されている。以下において形状記憶要素の実施形について説明するときに、この実施形は特に少なくとも2個の形状記憶要素についてのものである。フラップ要素の中心面の片側にのみ、少なくとも1個の形状記憶要素を配置することができる。
【0012】
有利な実施形では、フラップ要素を変形するために、少なくとも1個の形状記憶要素が特に通電によって短くなり、その際少なくとも1個の他の形状記憶要素が伸びる。その際、少なくとも1個の他の形状記憶要素がフラップ要素と相対的に少なくとも一部が少なくとも自在変形し、それによって好ましくはその寸法又は長さをほぼ保つことができるようにしてもよい。
【0013】
フラップ要素と相対的な自在変形は特に、少なくとも1個の自在変形部によって行われる。特に、少なくとも1個の形状記憶要素の少なくとも一部が自在変形部によってフラップ要素に連結されている。特に、少なくとも2個の形状記憶要素がそれぞれ1個のこのような自在変形部を装備している。その際、自在変形部は特に、フラップ要素からの通電されていない形状記憶要素の突き出しを許容する。それによって、通電されていない形状記憶要素はフラップ要素を曲げるときに好ましくは伸びないか又は少しだけしか伸びない。特に、自在変形部が短縮方向でロックするので、通電した形状記憶要素の短縮によってフラップ要素を曲げることができる。中心面の両側にそれぞれ少なくとも1個の形状記憶要素が配置されていると、形状記憶要素は両側にそれぞれ少なくとも1個の自在変形部を備えていてもよいし、また中心面の片側にのみ自在変形部を設けてもよい。
【0014】
フラップ要素と少なくとも1個の形状記憶要素は少なくとも一部が、破壊せずには取り外しができないように相互連結可能である。特に、形状記憶要素はフラップ要素の材料継目に埋め込まれている。これは簡単に製作可能で信頼性のある連結部と力伝達部を生じる。特に、形状記憶要素はフラップ要素と材料一体的に結合され、例えば接着されている。形状記憶要素は特にフラップ要素上に固定されている。しかし、形状記憶要素とフラップ要素は取り外し可能に相互連結及び特に破壊せずに取り外しできるように相互連結することができる。
【0015】
特に有利な実施形では、少なくとも1個の形状記憶要素がフラップ要素の材料内に一緒に射出成形され、及び/又はこのフラップ要素の材料によって押出し被覆されている。特に、形状被覆要素はフラップ要素の製作時に一緒に射出成形され、及び/又は押出し被覆される。これは、きわめて簡単で低コストの製作を可能にする。材料は好ましくは合成樹脂である。材料は特に可撓性、好ましくは弾性である。
【0016】
すべての実施形において、少なくとも1個の形状記憶要素が少なくとも1本の線材を備えているか又はこのような線材として形成されているときわめて有利である。特に、形状記憶要素は多数の線材を備えているか又はこの多数の線材によって提供される。線材の連結物、例えば編物、網状物及び/又は織物であってもよい。形状記憶要素が面状の形を有し、例えば層又は板又はフィルム又は薄板として形状記憶要素を形成することもできる。
【0017】
特に有利な実施形では、フラップ要素が少なくとも1個のフラップとして形成されているか又は少なくとも1個のこのようなフラップを備えている。フラップは特に少なくとも1個のダクトシステム内に配置されている。本発明の範囲内において、フラップ要素とは、好ましくは適したすべての流れ案内要素であると理解される。
【0018】
同様に有利な実施形では、フラップ要素は少なくとも1個のダクトシステムの少なくとも1つの壁区間として形成されているか又は少なくとも1つのこのような壁区間を備えている。特に、壁区間は少なくとも部分的に可撓性に形成されている。壁区間は特に少なくとも1つの(ハウジング)壁部を備えている。フラップ要素は壁部と一体に形成されているか又はこの壁部内に組み込まれている。ラップ要素はダクトシステムの少なくとも1つの区間と一体に、特に少なくとも1つの壁部と一体に形成されているか又はこの壁部に組み込まれている。壁区間として形成されたフラップ要素は好ましくはダクトシステムの壁部に動かぬように組み込まれ、好ましくはこの壁部と一体に形成されている。
【0019】
特に、空気流装置は、特に複数のダクト区間を有する少なくとも1個のダクトシステムを備えている。ダクト区間は特に少なくとも1つの流路を有するか又はこのような流路の一部である。ダクトシステム、特にダクト区間又は流路は特に、壁部によって取り囲まれている。フラップ要素は特にダクトシステム内の空気流を適切に制御するために役立つ。
【0020】
有利な発展形態では、ダクトシステムの少なくとも1つのダクト区間が少なくとも部分的に閉鎖可能又は開放可能であるように、フラップ要素が少なくとも1個の形状記憶要素によって変形可能である。ダクトの少なくとも1つの所定のダクト区間内で空気の方向を変えることができるように、フラップ要素が少なくとも1個の形状記憶要素によって変形可能であると有利である。その際好ましくは、空気がダクトシステムの異なるダクト区間内に案内されるか又は方向を変えられる。その際、ダクトシステムは特に前述したダクトシステムである。特に、フラップ要素は、ダクトシステムの少なくとも1つのダクト区間を少なくとも部分的に閉鎖又は開放し、及び/又は空気をダクトシステムの少なくとも1つのダクト区間に案内するために適していて、そのように形成されている。
【0021】
フラップ要素がダクトシステムの流れ断面内に配置されていると有利である。特に、フラップ要素は流れ断面を少なくとも2つの流路に分割する。その際、フラップ要素の変形によって、好ましくはその都度1つの流路が少なくとも部分的に閉鎖可能及び/又は開放可能である。このような実施形では、本発明は、流れをきわめて確実に且つ簡単に分配又は遮断することができる。その際、ダクトシステムは特に前述のダクトシステムである。その際、フラップ要素は壁区間として形成可能である。その際、流路は特にダクト区間と一致している。
【0022】
空気流装置は、流出器とも言う少なくとも1つの吹出し器、好ましくは少なくとも1つの個人用吹出し器を備えることができるか又はこのような吹出し器として形成可能である。その際、フラップ要素は好ましくは流出器内の空気流及び/又は流出器から出る空気流を適切に制御する働きをする。特に、フラップ要素によって、吹出し器内の空気流を適切に方向変更可能及び/又は少なくとも部分的に遮断可能又は開放可能である。さらに、フラップ要素によって、吹出し器の少なくとも1つの出口で空気流を適切に方向変更可能及び/又は少なくとも部分的に遮断可能である。
【0023】
出願人は、本発明に係る空気流装置を備えた自動車の請求を留保する。その際、空気流装置は好ましくは前述のように形成されている。このような自動車はたくさんの利点と、特に空調装置のための改善された簡単な空気案内を生じる。
【0024】
特に、形状記憶要素は中心面の外で又は中心から外れたところでフラップ要素上に及び/又はフラップ要素内に配置されている。特に、形状記憶要素はフラップ要素の縁の面内に及び/又は縁に配置されている。特に、フラップ要素は少なくとも1つの可撓性区間を有する。特に、フラップ要素は可撓性区間上に及び/又は可撓性区間内に配置された少なくとも1つの形状記憶要素によって変形可能である。
【0025】
特に、フラップ要素は形状記憶要素によって適切に変形可能である。特に、フラップ要素は可撓性又は撓曲性を有するように形成されている。特に、フラップ要素は可撓性で好ましくは弾性の材料から作られている。特に、フラップ要素は形状記憶要素によって、中心面が湾曲するように曲げられる。
【0026】
特に、フラップ要素は剛性に形成されてはいない。特に、フラップ要素は形状記憶要素によって軸承回転軸の回りに回転又は揺動しない。
【0027】
本発明の他の効果と特徴は、添付の図を参照して説明する実施の形態から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明に係る空気流装置を切断して示す概略的な側面図である。
【
図2】
図1の空気流装置の通電状態又は方向変更状態を示す。
【
図3】空気流装置の実施形を切断して示す側面図である。
【
図4】
図3の空気流装置の通電状態又は方向変更状態を示す。
【
図5】空気流装置の他の実施形を切断して示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、自動車の(乗客用)室内を通気するための本発明に係る空気流装置1を示す。通気は例えば暖められた空気及び/又は冷やされた空気によって行われる。そのために、空気流装置1は例えば空調設備に流体接続されているか又はこのような空調設備の一部である。通気とは本発明では、換気通風又は換気運転であると理解される。
【0030】
空気流装置1はフラップ22として形成された可撓性のフラップ要素2を備えている。フラップ要素2はその一端が空気流装置1の略示した部品、例えばここには示していないダクトシステム5の壁区間に固定されているか又はそれに組み込まれている。
【0031】
フラップ要素2は例えば線材13として形成された2本の形状記憶要素3を装備している。空気流装置1のダクトシステム内の空気流を制御し、例えば空気流を遮断又は方向変更するために、フラップ要素2は形状記憶要素3の通電によって変形させることが可能である。通電のための電気的な接触部はここには示していない。
【0032】
空気流装置1は例えば吹出し器10、特に個人用吹出し器として形成されている。吹出し器10内で、1個又は複数のフラップ要素2を使用することができる。このフラップ要素は空気を吹出し器10の異なるダクト区間に案内するか又は1つのダクト区間を閉鎖する。
【0033】
形状記憶要素3はここではフラップ要素2の中心面12の両側に配置されている。形状記憶要素3はここではフラップ要素2に直接射出成形されているか又はフラップ要素によって押出し被覆されている。
【0034】
図2には、フラップ要素2を備えた
図1の空気流装置1の方向変更状態が示してある。そのために、上側の形状記憶要素3に通電され、それによってこの上側の形状記憶要素が短くなっている。従って、形状がひずみ、フラップ要素2が上方に曲げられる。下側の形状記憶要素3は相応して伸長するか又は自在変形する。
【0035】
このような自在変形のために、一方又は両方の形状記憶要素3が自在変形部4によってフラップ要素2に部分的に連結されている。図示した実施形では、例えば下側の形状記憶要素3が自在変形部4を備えている。
【0036】
上側の形状記憶要素3が通電によって短縮され、フラップ要素2が上側に曲がると、下側の形状記憶要素3の長さは自在変形部4によって変化せずそのままである。下側の形状記憶要素3の通電の際、自在変形部4は好ましくは自在変形を止めるように形成されている。フラップ要素2は通電した下側の形状記憶要素3の短縮によって下側に曲げられる。このような自在変形部4は上側の形状記憶要素3にも設けることができる。
【0037】
図3と
図4は、フラップ要素2がダクトシステム5内に壁区間32として組み込まれた空気流装置1の実施形を示している。ここには、ダクトシステム5のうち、ダクト区間15が示してある。このダクト区間では、フラップ要素2が流れ断面内に配置され、この流れ断面を2つの流路25に分割している。空気流は矢印によって示してある。図示した空気流装置1は例えば吹出し器10として形成可能である。
【0038】
フラップ要素は実質的に
図1と
図2を参照して説明したように形成されている。フラップ要素は通電可能な2個の形状記憶要素3を備えている。この形状記憶要素はフラップ要素2の中心面の上方と下方に配置されている。組み込まれたこのようなフラップ要素2により、異なる流路25を生じるための、ダクト区間15の中央における分離をきわめて簡単に行うことができる。
【0039】
図3は中立位置のフラップ要素2又は通電していない状態のフラップ要素2を示している。それによって、空気は両流路25に沿って流れることができる。
【0040】
図4には、上側の形状記憶要素3の通電によって生じる方向変更位置にあるフラップ要素2が示してある。それによってフラップ要素2が上方に曲がり、上側の流路25を閉鎖している。それによって、空気は下側の流路25を通って流れる。空気の流れ方向を上側の流路25に変えるときには、下側の形状記憶要素3に通電される。それによって、この形状記憶要素3が短縮され、フラップ要素2が下方に湾曲する。
【0041】
図5には、空気流装置1の実施形が示してある。この場合、フラップ要素2は可撓性のフラップ22として形成され、ダクトシステム5のダクト区間15の壁に固定されている。その際、フラップ22はダクト区間15内の流路を閉鎖又は開放する働きをする。しかし、図示したフラップ装置は壁区間32として形成されたフラップ要素2によって実現することも可能である。
【0042】
その際、フラップ要素2は例えば
図1と
図2を参照して説明したように2つの形状記憶要素3を備えている。図示した状態では、上側の形状記憶要素3に通電され、それによってフラップ要素2が上側に曲げられる。従って、フラップ22はダクト断面を閉鎖することができる。中立位置では又は形状記憶要素3に通電しないときには、フラップ要素2はダクト区間15の壁に接触するので、流路が開放される。
【0043】
しかし、フラップ要素2が中心線の上方に配置された形状記憶要素3だけを備えていてもよい。その場合、フラップ要素2は特に形状記憶要素3に通電せずに、ひとりでにその静止位置に再び戻る。しかし、静止位置に達するようにするために、下側の形状記憶要素3に通電してもよい。
【0044】
提案した発明によって、空気流装置1、特に吹出し器10内でのフラップ制御が大幅に改善される。可撓性のフラップ要素2と、形状記憶要素3の通電によるフラップ要素の適切な変形とによって、簡単且つ低コストで、さらにきわめて確実な空気制御を実現することができる。その際、本発明はフラップ要素22のための複雑で故障しやすい制御機構を必要としない。そのために、壁区間32を可撓性に形成することと、少なくとも1個の形状記憶要素3を装備することがきわめて簡単に可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 空気流装置
2 フラップ要素
3 形状記憶要素
4 自在変形部
5 ダクトシステム
10 吹出し器
12 中心面
13 線材
15 ダクト区間
22 フラップ
25 流路
32 壁区間