(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022166272
(43)【公開日】2022-11-01
(54)【発明の名称】組成物、冷媒を保存する方法、及び冷媒の重合を抑制する方法
(51)【国際特許分類】
C09K 5/04 20060101AFI20221025BHJP
【FI】
C09K5/04 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022132345
(22)【出願日】2022-08-23
(62)【分割の表示】P 2020171566の分割
【原出願日】2020-10-09
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉村 崇
(72)【発明者】
【氏名】後藤 智行
(72)【発明者】
【氏名】四元 佑樹
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本開示は、冷媒の重合が抑制された組成物、保存方法及び重合抑制方法を目的とする。
【解決手段】(1)冷媒と(2)酸素とを含む組成物であって、(1)冷媒は、(1-1)シス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(Z))、1,1-ジフルオロエチレン(HFO-1132a)、トリフルオロエチレン(HFO-1123)、及びテトラフルオロエチレン(FO-1114)からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の成分と、(1-2)特定化学構造で表される化合物(好ましくは、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf))、並びに、トリフルオロヨードメタン(CF3I)からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の成分とを含み、(2)酸素は、体積基準で、温度25℃で、濃度が1ppm以上、10,000ppm以下である、ことを特徴とする組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)冷媒と(2)酸素とを含む組成物であって、
前記(1)冷媒は、
(1-1)シス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(Z))、1,1-ジフルオロエチレン(HFO-1132a)、トリフルオロエチレン(HFO-1123)、及びテトラフルオロエチレン(FO-1114
)からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の成分と、
(1-2)一般式(1):
【化1】
(式中、
Xa、Xb、及びXcは、水素原子、又はフッ素原子を示し、
Raは、-CH
3、-CHF
2、-CH
2F、-CF
3、-CX
d=CX
eX
f(前記X
d、X
e、X
fは、水素原子、又はフッ素原子を示す)、又は-ORb(前記Rbは、炭素数1~3の、置換基として水素原子、又は
フッ素原子を有する炭化水素基を示す)を示す。)
で表される化合物、並びに、トリフルオロヨードメタン(CF
3I)からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の成分とを含み、
前記(2)酸素は、体積基準で、温度25℃で、濃度が1ppm以上、10,000ppm以下である、ことを特徴とする組成物。
【請求項2】
冷媒全体を基準として、質量基準で、
前記冷媒(1-1)は、10%以上、90%以下であり、
前記冷媒(1-2)は、10%以上、90%以下である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
密閉容器内で、気相と液相とを有する気液状態で、(1)冷媒を保存する方法であり、
前記(1)冷媒は、
(1-1)シス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(Z))、1,1-ジフルオロエチレン(HFO-1132a)、トリフルオロエチレン(HFO-1123)、及びテトラフルオロエチレン(FO-1114
)からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の成分と、
(1-2)一般式(1):
【化2】
(式中、
Xa、Xb、及びXcは、水素原子、又はフッ素原子を示し、
Raは、-CH
3、-CHF
2、-CH
2F、-CF
3、-CX
d=CX
eX
f(前記X
d、X
e、X
fは、水素原子、又はフッ素原子を示す)、又は-ORb(前記Rbは、炭素数1~3の、置換基として水素原子、又は
フッ素原子を有する炭化水素基を示す)を示す。)
で表される化合物、並びに、トリフルオロヨードメタン(CF
3I)からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の成分とを含み、
前記気相において、(2)酸素を、体積基準で、温度25℃で、濃度1ppm以上、10,000ppm以下にする、
ことを特徴とする方法。
【請求項4】
冷媒全体を基準として、質量基準で、
前記冷媒(1-1)は、10%以上、90%以下であり、
前記冷媒(1-2)は、10%以上、90%以下である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
密閉容器内で、気相と液相とを有する気液状態で、(1)冷媒の重合を抑制する方法で
あり、
前記(1)冷媒は、
(1-1)シス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(Z))、1,1-ジフルオロエチレン(HFO-1132a)、トリフルオロエチレン(HFO-1123)、及びテトラフルオロエチレン(FO-1114
)からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の成分と、
(1-2)一般式(1):
【化3】
(式中、
Xa、Xb、及びXcは、水素原子、又はフッ素原子を示し、
Raは、-CH
3、-CHF
2、-CH
2F、-CF
3、-CX
d=CX
eX
f(前記X
d、X
e、X
fは、水素原子、又はフッ素原子を示す)、又は-ORb(前記Rbは、炭素数1~3の、置換基として水素原子、又は
フッ素原子を有する炭化水素基を示す)を示す。)
で表される化合物、並びに、トリフルオロヨードメタン(CF
3I)からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の成分とを含み、
前記気相において、(2)酸素を、体積基準で、温度25℃で、濃度1ppm以上、10,000ppm以下にする、
ことを特徴とする方法。
【請求項6】
冷媒全体を基準として、質量基準で、
前記冷媒(1-1)は、10%以上、90%以下であり、
前記冷媒(1-2)は、10%以上、90%以下である、請求項5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、組成物、冷媒を保存する方法、及び冷媒の重合を抑制する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを密閉容器内で、気相と液相とを有
する気液状態で保存する方法であって、前記気相における酸素の濃度を、温度25℃で3体
積ppm以上1,000体積ppm未満にすることとするテトラフルオロプロペンの保存方法が開示
されている。
【0003】
特許文献1には、トリフルオロエチレンを密閉された保存容器内で保存する方法であっ
て、前記保存容器内でトリフルオロエチレンを気相と液相とが共存する状態で保存し、前記気相の、温度25℃における酸素の濃度を3~1,000体積ppmに保持することとするトリフ
ルオロエチレンの保存方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6377524号
【特許文献1】特許第6421752号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、冷媒の重合が抑制された組成物、保存方法及び重合抑制方法を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、以下の項に記載の構成を包含する。
【0007】
項1.
(1)冷媒と(2)酸素とを含む組成物であって、
前記(1)冷媒は、
(1-1)シス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(Z))、1,1-ジフルオロエチレン(HFO-1132a)、トリフルオロエチレン(HFO-1123)、及びテトラフルオロエチレン(FO-1114
)からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の成分と、
(1-2)一般式(1):
【0008】
【0009】
(式中、
Xa、Xb、及びXcは、水素原子、又はフッ素原子を示し、
Raは、-CH3、-CHF2、-CH2F、-CF3、-CXd=CXeXf(前記Xd、Xe、Xfは、水素原子、又はフッ素原子を示す)、又は-ORb(前記Rbは、炭素数1~3の、置換基として水素原子、又は
フッ素原子を有する炭化水素基を示す)を示す。)
で表される化合物、並びに、トリフルオロヨードメタン(CF3I)からなる群から選ばれる
少なくとも一種以上の成分とを含み、
前記(2)酸素は、体積基準で、温度25℃で、濃度が1ppm以上、10,000ppm以下である、ことを特徴とする組成物。
【0010】
項2.
冷媒全体を基準として、質量基準で、
前記冷媒(1-1)は、10%以上、90%以下であり、
前記冷媒(1-2)は、10%以上、90%以下である、前記項1に記載の組成物。
【0011】
項3.
密閉容器内で、気相と液相とを有する気液状態で、(1)冷媒を保存する方法であり、
前記(1)冷媒は、
(1-1)シス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(Z))、1,1-ジフルオロエチレン(HFO-1132a)、トリフルオロエチレン(HFO-1123)、及びテトラフルオロエチレン(FO-1114
)からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の成分と、
(1-2)一般式(1):
【0012】
【0013】
(式中、
Xa、Xb、及びXcは、水素原子、又はフッ素原子を示し、
Raは、-CH3、-CHF2、-CH2F、-CF3、-CXd=CXeXf(前記Xd、Xe、Xfは、水素原子、又はフッ素原子を示す)、又は-ORb(前記Rbは、炭素数1~3の、置換基として水素原子、又は
フッ素原子を有する炭化水素基を示す)を示す。)
で表される化合物、並びに、トリフルオロヨードメタン(CF3I)からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の成分とを含み、
前記気相において、(2)酸素を、体積基準で、温度25℃で、濃度1ppm以上、10,000ppm以下にする、
ことを特徴とする方法。
【0014】
項4.
冷媒全体を基準として、質量基準で、
前記冷媒(1-1)は、10%以上、90%以下であり、
前記冷媒(1-2)は、10%以上、90%以下である、前記項3に記載の方法。
【0015】
項5.
密閉容器内で、気相と液相とを有する気液状態で、(1)冷媒の重合を抑制する方法で
あり、
前記(1)冷媒は、
(1-1)シス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(Z))、1,1-ジフルオロエチレン(HFO-1132a)、トリフルオロエチレン(HFO-1123)、及びテトラフルオロエチレン(FO-1114
)からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の成分と、
(1-2)一般式(1):
【0016】
【0017】
(式中、
Xa、Xb、及びXcは、水素原子、又はフッ素原子を示し、
Raは、-CH3、-CHF2、-CH2F、-CF3、-CXd=CXeXf(前記Xd、Xe、Xfは、水素原子、又はフッ素原子を示す)、又は-ORb(前記Rbは、炭素数1~3の、置換基として水素原子、又は
フッ素原子を有する炭化水素基を示す)を示す。)
で表される化合物、並びに、トリフルオロヨードメタン(CF3I)からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の成分とを含み、
前記気相において、(2)酸素を、体積基準で、温度25℃で、濃度1ppm以上、10,000ppm以下にする、
ことを特徴とする方法。
【0018】
項6.
冷媒全体を基準として、質量基準で、
前記冷媒(1-1)は、10%以上、90%以下であり、
前記冷媒(1-2)は、10%以上、90%以下である、前記項5に記載の方法。
【発明の効果】
【0019】
本開示の方法は、冷媒を良好に保存することが可能である。
【0020】
本開示の方法は、冷媒の重合を良好に抑制することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明者らは、冷媒と酸素とを含む冷媒組成物において、冷媒の保存安定性及び重合抑制を向上させるべく鋭意研究を重ねた処、冷媒として、(1-1)HFO-1132(Z)、HFO-1132a、HFO-1123、及びFO-1114からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の成分に、(1-2)一般式(1)で表される化合物、好ましくは、HFO-1234yf、及びCF3Iからなる群から選ば
れる少なくとも一種以上の成分を共存させることによりその目的を達成できることを見出した。
【0022】
以下、本開示に含まれる実施形態について詳細に説明する。
【0023】
<用語の定義>
本明細書において用語「冷媒」には、ISO817(国際標準化機構)で定められた、冷媒の種類を表すRで始まる冷媒番号(ASHRAE番号)が付された化合物が少なくとも含まれ、さ
らに冷媒番号が未だ付されていないとしても、それらと同等の冷媒としての特性を有するものが含まれる。
【0024】
冷媒は、化合物の構造の面で、「フルオロカーボン系化合物」と「非フルオロカーボン系化合物」とに大別される。「フルオロカーボン系化合物」には、ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)及びハイドロフルオロカーボン(HFC)が含まれる。「非フルオロカ
ーボン系化合物」としては、プロパン(R290)、プロピレン(R1270)、ブタン(R600)
、イソブタン(R600a)等が挙げられる。
【0025】
本明細書において、用語「冷媒を含む組成物」には、(1)冷媒そのもの(冷媒の混合
物(refrigerant mixtures)を含む)と、(2)その他の成分を更に含み、少なくとも冷
凍機油と混合することにより冷凍機用作動流体を得る為に用いることのできる組成物と、(3)冷凍機油を含む冷凍機用作動流体(refrigeration working fluid)とが少なくとも含まれる。
【0026】
本明細書においては、これら三態様のうち、(2)の組成物のことを、冷媒そのもの(
冷媒の混合物を含む)と区別して「冷媒組成物(refrigerant composition)」と表記す
る。
【0027】
本明細書においては、また、(3)の冷凍機用作動流体のことを「冷媒組成物」と区別
して「冷凍機油含有作動流体(working fluid containing refrigeration oil)」と表記する。
【0028】
本明細書において、用語「代替」は、第一の冷媒を第二の冷媒で「代替」するという文脈で用いられる場合、第一の類型として、第一の冷媒を使用して運転する為に設計された機器において、必要に応じてわずかな部品(冷凍機油、ガスケット、パッキン、膨張弁、ドライヤその他の部品のうち少なくとも一種)の変更及び機器調整のみを経るだけで、第二の冷媒を使用して、最適条件下で運転することができることを意味する。
【0029】
即ち、この類型は、同一の機器を、冷媒を「代替」して運転することを指す。この類型の「代替」の態様としては、第二の冷媒への置き換えの際に必要とされる変更乃至調整の度合いが小さい順に、「ドロップイン(drop in)代替」、「ニアリー・ドロップイン(nealy drop in)代替」及び「レトロフィット(retrofit)」があり得る。
【0030】
第二の類型として、第二の冷媒を用いて運転する為に設計された機器を、第一の冷媒の既存用途と同一の用途の為に、第二の冷媒を搭載して用いることも、用語「代替」に含まれる。この類型は、同一の用途を、冷媒を「代替」して提供することを指す。
【0031】
本明細書において用語「冷凍機(refrigerator)」とは、物、或は空間の熱を奪い去ることにより、周囲の外気よりも低い温度にし、且つこの低温を維持する装置全般のことをいう。言い換えれば、冷凍機は温度の低い方から高い方へ熱を移動させる為に、外部からエネルギーを得て仕事を行いエネルギー変換する変換装置のことをいう。
【0032】
本明細書において、用語「含有」及び「含む」は、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」、及び「のみからなる」という概念を含む。
【0033】
本明細書において、数値範囲が段階的に記載されている場合、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値と任意に組み合わせることができる。
【0034】
本明細書において、記載されている数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値又は実施例から一義的に導き出せる値に置き換えてもよい。
【0035】
本明細書において、主な冷媒は次の通り記す。
【0036】
シス-1,2-ジフルオロエチレン:HFO-1132(Z)((Z)-1,2-ジフルオロエチレン)
1,1-ジフルオロエチレン:HFO-1132a
トリフルオロエチレン:HFO-1123
テトラフルオロエチレン:FO-1114
2,3,3,3-テトラフルオロプロペン:HFO-1234yf
トリフルオロヨードメタン:CF3I
「(E/Z)」は、E体(トランス体)及び/又はZ体(シス体)を含むことを意味する。
【0037】
[1]組成物
(1)冷媒
本開示の組成物は、
(1)冷媒と(2)酸素とを含み、
前記(1)冷媒は、
(1-1)シス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(Z))、1,1-ジフルオロエチレン(HFO-1132a)、トリフルオロエチレン(HFO-1123)、及びテトラフルオロエチレン(FO-1114
)からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の成分と、
(1-2)一般式(1):
【0038】
【0039】
(式中、
Xa、Xb、及びXcは、水素原子、又はフッ素原子を示し、
Raは、-CH3、-CHF2、-CH2F、-CF3、-CXd=CXeXf(前記Xd、Xe、Xfは、水素原子、又はフッ素原子を示す)、又は-ORb(前記Rbは、炭素数1~3の、置換基として水素原子、又は
フッ素原子を有する炭化水素基を示す)を示す。)
で表される化合物、並びに、トリフルオロヨードメタン(CF3I)からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の成分とを含み、
前記(2)酸素は、体積基準で、温度25℃で、濃度が1ppm以上、10,000ppm以下である、ことを特徴とする。
【0040】
本開示の組成物は、(1)冷媒と(2)酸素とを含む冷媒組成物において、前記(1)冷
媒は、好ましくは、(1-1)、シス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(Z))、1,1-ジフ
ルオロエチレン(HFO-1132a)、トリフルオロエチレン(HFO-1123)、及びテトラフルオ
ロエチレン(FO-1114)からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の成分に、(1-2)一般式(1)で表される化合物、好ましくは、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)、及びトリフルオロヨードメタン(CF3I)からなる群から選ばれる少なくとも一種以
上の成分を共存させる。
【0041】
つまり、前記冷媒組成物は、前記(1)冷媒として、(1-1)HFO-1132(Z)、HFO-1132a、HFO-1123、及びFO-1114からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の成分;、並びに、
(1-2)一般式(1)で表される化合物、好ましくは、HFO-1234yf、及びCF3Iからなる群から選ばれる少なくとも一種以上の成分;を含む。
【0042】
本開示の組成物は、好ましくは、冷媒全体を基準として、質量基準で、前記冷媒(1-1
)は、10%以上、90%以下であり、前記冷媒(1-2)は、10%以上、90%以下である。
【0043】
本開示の組成物は、好ましくは、前記(1)冷媒を共存させる場合、冷媒全体を基準と
して、質量基準で、90%以下、10%以上の前記(1-1)HFO-1132(Z)、HFO-1132a、HFO-1123
、及びFO-1114からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の成分に、10%以上、90%以下
の(1-2)一般式(1)で表される化合物、好ましくは、HFO-1234yf、及びCF3Iからなる群から選ばれる少なくとも一種以上の成分を共存させる。
【0044】
前記(1-1)HFO-1132(Z)、HFO-1132a、HFO-1123、及びFO-1114からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の成分の冷媒は、不飽和結合を有する為、安定性が良好でなく、保存(保管)や輸送時等で、時間の経過等により、自己重合し、冷媒の品質が低下する可能性が有る。
【0045】
また、酸素を含めた条件で保存した場合、冷媒のポリマー(重合物)が生成し、圧低下を起こす可能性が有る。
【0046】
本開示の組成物は、前記(1)冷媒として、(1-1)HFO-1132(Z)、HFO-1132a、HFO-1123、及びFO-1114からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の成分に、(1-2)一般式(1
)で表される化合物、好ましくは、HFO-1234yf、及びCF3Iからなる群から選ばれる少なくとも一種以上の成分を共存させる(又は、添加する)ことにより、冷媒の混合物の重合速度を添加した化合物の重合速度程度まで低下させることが可能である。
【0047】
前記(1)冷媒は、好ましくは、冷媒全体を基準として、質量基準で、90%以下、10%以
下の前記(1-1)HFO-1132(Z)、HFO-1132a、HFO-1123、及びFO-1114からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の成分に、10%以下、90%以下(好ましい閾値)の(1-2)一般式(1)で表される化合物、好ましくは、HFO-1234yf、及びCF3Iからなる群から選ばれる少なくとも一種以上の成分を共存させることにより、圧低下を示さず、良好な保存安定性を示す。
【0048】
本開示の組成物は、前記(1)冷媒として、好ましくは、(1-1)HFO-1132(Z)、HFO-1132a、HFO-1123、及びFO-1114からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の成分を主成分
とし、(1-2)一般式(1)で表される化合物、好ましくは、HFO-1234yf、及びCF3Iからなる群から選ばれる少なくとも一種以上の成分を副成分として共存させることにより、(1-1)HFO-1132(Z)、HFO-1132a、HFO-1123、及びFO-1114からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の成分の重合速度を低下させ、(1-1)HFO-1132(Z)、HFO-1132a、HFO-1123、及
びFO-1114からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の成分の重合を抑制できる冷媒組
成物を調製することを可能とする。
【0049】
前記(1)冷媒の内、前記(1-1)HFO-1132(Z)、HFO-1132a、HFO-1123、及びFO-1114か
らなる群から選ばれる少なくとも一種以上の成分の冷媒は、重合し得る側の成分であり、前記(1-2)一般式(1)で表される化合物、好ましくは、HFO-1234yf、及びCF3Iからなる群から選ばれる少なくとも一種以上の成分は、その重合を抑制する側の成分である。
【0050】
本開示の組成物を採用することにより、(1-1)HFO-1132(Z)、HFO-1132a、HFO-1123、
及びFO-1114からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の成分の冷媒を良好に保存する
ことが可能である。
【0051】
本開示の組成物を採用することにより、(1-1)HFO-1132(Z)、HFO-1132a、HFO-1123、
及びFO-1114からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の成分の冷媒の重合を良好に抑
制することが可能である。
【0052】
前記組成物に含有させる前記(1)冷媒の製造方法は特に限定されず、例えば、公知の
製造方法によって各種冷媒を製造することができる。
【0053】
冷媒がHFO-1132(Z)である場合、HFO-1132(Z)は、1,1,2-トリフルオロエタン(HFC-143
)を、脱フッ化水素する反応、(E)及び/又は(Z)-1,2-ジクロロ-1,2-ジフルオロエチレン(CFO-1112(E/Z))を水素化する反応、或は、1-クロロ-1,2-ジフルオロエタン(HCFC-142a)の脱塩化水素する反応によって、を製造することができる。
【0054】
前記組成物に含まれる(1)冷媒の全量は、ガスクロマトグラフにより特定することが
できる。
【0055】
前記組成物に含まれる(1)冷媒は、冷媒全体を基準として、(1-1)HFO-1132(Z)、HFO-1132a、HFO-1123、及びFO-1114からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の成分;並
びに、(1-2)一般式(1)で表される化合物、好ましくは、HFO-1234yf、及びCF3Iからなる群から選ばれる少なくとも一種以上の成分;の合計(質量基準)で、好ましくは、99.5質量以上含み、より好ましくは、99.9質量以上含み、更に好ましくは、99.99質量以上含
み、特に好ましくは、99.999質量以上含む。
【0056】
前記組成物に含まれる(1)冷媒は、好ましくは、(1-1)HFO-1132(Z)、HFO-1132a、HFO-1123、及びFO-1114からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の成分;並びに、(1-2)一般式(1)で表される化合物、好ましくは、HFO-1234yf、及びCF3Iからなる群から選
ばれる少なくとも一種以上の成分;の成分のみから実質的になるものであっても良い。
【0057】
前記組成物に含まれる(1)冷媒は、(1-1)HFO-1132(Z)、HFO-1132a、HFO-1123、及びFO-1114からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の成分;並びに、(1-2)一般式(1
)で表される化合物、好ましくは、HFO-1234yf、及びCF3Iからなる群から選ばれる少なくとも一種以上の成分;の成分以外の化合物を含むものであっても良い。
【0058】
例えば、前記冷媒の製造時に混入し得る不純物(不可避不純物)を含むことができる。
【0059】
前記不純物として、例えば、HFO-1132(Z)である場合、フッ化水素、フルオロエチレン
、HFO-1123、1,1,1-トリフルオロエタン、プロピレン、アセチレン、ジフルオロメタン(HFC-32)、トリフルオロメタン、フルオロメタン、HFO-1123、1,1-ジフルオロエタン(HFC-152a)、フルオロエタン(HFC-161)、1,1,2-トリフルオロエタン(HFC-143)、2-クロロ-1,1,1-トリフルオロエタン(HCFC-133b)、1-クロロ-1,1,2-トリフルオロエタン(HCFC-133)、1,1-ジクロロ-2,2,2-トリフルオロエタン(HCFC-123)、1-クロロ-1,2-ジフル
オロエタン(HCFC-142a)、1,2-ジフルオロエタン(HFC-152)、クロロジフルオロメタン(HCFC-22)、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)、1,1,2,2-テトラフルオロエ
タン(HFC-134)、ペンタフルオロエタン(HFC-125)、HFO-1234yf、1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225ye)、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)、フルオロエチレン(HFO-1141)、3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO-1243zf)、1,1-ジフルオロエチレン(HFO-1132a)、1-クロロ-2,2-ジフルオロエチレン(HCFO-1122)、1-クロロ-1,2-ジフルオロエチレン(HCFO-1122a)、エチレン等である。
【0060】
前記組成物に含まれる(1)冷媒が、前記冷媒の不純物を含む場合、その含有量は特に
限定されず、例えば、重量換算で、0.1ppm以上、10,000ppm以下程度含んでも良い。この
範囲であれば、冷媒組成物中の冷媒の安定化作用が阻害される虞は小さい。
【0061】
本開示の組成物は、前記(1)冷媒を共存させる場合、好ましくは、冷媒全体を基準と
して、質量基準で、90%以下、10%以上の前記(1-1)HFO-1132(Z)、HFO-1132a、HFO-1123
、及びFO-1114からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の成分に、10%以上、90%以下
の(1-2)一般式(1)で表される化合物、好ましくは、HFO-1234yf、及びCF3Iからなる群から選ばれる少なくとも一種以上の成分を共存させる。
【0062】
前記(1)冷媒を共存させる場合、冷媒全体を基準として、質量基準で、より好ましく
は、90%以下、10%以上の前記(1-1)HFO-1132(Z)、HFO-1132a、HFO-1123、及びFO-1114からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の成分に、90%以下、10%以上の(1-2)一般式
(1)で表される化合物、好ましくは、HFO-1234yf、及びCF3Iからなる群から選ばれる少
なくとも一種以上の成分を共存させる。
【0063】
(2)酸素
本開示の組成物は、前記(1)冷媒を含み、冷媒と同じ用途の為に使用することができ
る。
【0064】
本開示の組成物は、(1)冷媒と(2)酸素とを含み、前記(1)冷媒を、密閉容器内で
、気相と液相とを有する気液状態で、保存又は重合抑制することが可能であり、前記(1
)冷媒に、前記気相における前記(2)酸素の濃度を、体積基準で、温度25℃で、1ppm以
上、10,000ppm以下で共存させる。
【0065】
本開示の組成物において、好ましくは、前記(2)酸素を共存させる場合、前記気相に
おける前記(2)酸素の濃度を、体積基準で、温度25℃で、1ppm以上、10,000ppm以下で共存させる工程とする。
【0066】
前記(1)冷媒の内、前記(1-1)HFO-1132(Z)、HFO-1132a、HFO-1123、及びFO-1114か
らなる群から選ばれる少なくとも一種以上の成分の冷媒は、特に、酸素を含めた条件で保存した場合、冷媒単体を保存する場合、冷媒のポリマー(重合物)が生成し、圧低下を起こす可能性が有る。
【0067】
本開示は、組成物が、前記(1)冷媒に加えて、(2)酸素を含む場合でも、(1-2)一
般式(1)で表される化合物、好ましくは、HFO-1234yf、及びCF3Iからなる群から選ばれ
る少なくとも一種以上の成分を共存させることにより、(1-1)HFO-1132(Z)、HFO-1132a
、HFO-1123、及びFO-1114からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の成分の重合速度
をHFO-1234yf程度まで低下させることが可能であり、圧低下を示さず、良好な保存安定性を示す。
【0068】
本開示の組成物は、冷媒を含む組成物を良好に保存することができ、冷媒の重合を良好に抑制することがえきる。
【0069】
本開示の組成物において、前記(1)冷媒に、前記気相における共存させる前記(2)酸素の濃度は、気体温度が25℃の場合の酸素濃度をいう。密閉容器内で、前記(1)冷媒は
、圧力下で気相と液相とが共存する状態(気液共存状態)で保持されているので、気相において、前記(1)冷媒は飽和蒸気圧を示している。前記(2)酸素の濃度は、前記(1)
冷媒の気相において、酸素の含有割合を意味する。
【0070】
前記(1)冷媒に、共存させる前記(2)酸素の濃度は、体積基準で、温度25℃で、1ppm以上であり、好ましくは、3ppm以上であり、より好ましくは、10ppm以上であり、更に好
ましくは、20ppm以上である。
【0071】
前記(1)冷媒の内、前記(1-1)HFO-1132(Z)、HFO-1132a、HFO-1123、及びFO-1114か
らなる群から選ばれる少なくとも一種以上の成分の冷媒は、酸素を含めた条件で保存した場合、冷媒単体を保存する場合、冷媒のポリマー(重合物)が生成し、圧低下を起こす可能性が有る。前記(1)冷媒に、共存させる前記(2)酸素の濃度は、許容できる酸素濃度範囲として、体積基準で、温度25℃で、好ましくは、10,000ppm以下であり、より好まし
くは、1,000ppm以下であり、更に好ましくは、100ppm以下であり、特に好ましくは、50ppm以下である。
【0072】
気相における前記(2)酸素の濃度は10,000ppm以下であることにより、前記(1-2)一
般式(1)で表される化合物、好ましくは、HFO-1234yf、及びCF3Iからなる群から選ばれ
る少なくとも一種以上の成分を共存させることにより、液相及び気相の前記(1-1)HFO-1132(Z)、HFO-1132a、HFO-1123、及びFO-1114からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の成分の重合等の反応を十分に防止することができる。
【0073】
保存容器中の前記(1)冷媒の一部が取り出され、その後、残りの前記(1)冷媒が引き続き保存容器中に保存されることが有る。その場合、保存容器中の気相の体積は増加するが、体積が増加した気相においても、その酸素濃度は、好ましくは、体積基準で、10,000ppm以下に保持される。気相の酸素濃度は、通常、液相の前記(1)冷媒中の酸素濃度と平衡状態にあり、前記(1)冷媒の一部が取り出される際に保存容器内に酸素が侵入しない
限り、気相の酸素濃度は実質的に上昇しないと考えられる。
【0074】
気相における(2)酸素の濃度は、前記(1)冷媒を加圧して液体を生成させ、この液体を、予め空気を真空脱気し、(2)酸素の濃度を、好ましくは、体積基準で、10,000ppm以下に低減させた密閉容器に注入することにより実施することができる。前記(1)冷媒の
液体を容器に注入すると、容器内の空間は、液体からの蒸気によって速やかに飽和される。そして、この様に前記(1)冷媒の飽和蒸気により満たされた気相における(2)酸素の濃度は、好ましくは、体積基準で、10,000ppm以下となる。
【0075】
尚、密閉容器を真空脱気する際には、酸素と共に窒素等の非凝縮性気体も除外されるが、非凝縮性気体の含有量の合計は、好ましくは、体積基準で、温度25.0℃で、1.5体積%(15,000ppm)を超えない量となるようにする。
【0076】
(3)冷媒組成物に含まれるその他の成分
本開示の組成物は、更に少なくとも冷凍機油と混合することにより冷凍機用作動流体を得る為に用いることができる。
【0077】
前記冷媒組成物は、前記(1)冷媒及び前記(2)酸素に加えて、更に少なくとも1種の
その他の成分を含んでも良い。前記他の成分は、例えば、水、トレーサー、空気、不純物及び副生成物からなる群より選択される少なくとも1種である。
【0078】
前記冷媒組成物において、その他の成分の含有量は、冷媒組成物全体に対して、質量基準で、好ましくは、0.01質量%以上である。前記冷媒組成物において、その他の成分の含
有量は、冷媒組成物全体に対して、質量基準で、冷媒組成物全体に対して、好ましくは、1質量%以下であり、より好ましくは、0.1質量%以下である。
【0079】
(4)冷凍機油含有作動流体
本開示の組成物は、好ましくは、更に冷凍機油を含み、冷凍機における作動流体(冷凍機油含有作動流体)として用いる。
【0080】
前記冷凍機油含有作動流体は、具体的には、冷凍機の圧縮機において使用される冷凍機油と、冷媒又は冷媒組成物とが互いに混じり合うことにより得られる。
【0081】
前記冷凍機油含有作動流体は、冷凍サイクルにおいてその組成が変化する。具体的には、冷凍機油含有作動流体の冷凍機油含量は、圧縮機内では比較的多く、圧縮機からミスト状となって吐出されて冷凍サイクルを循環し、圧縮機に戻るまでの期間では比較的少ない
。
【0082】
前記冷凍機油含有作動流体の冷凍機油含量は、圧縮機内では、好ましくは、30質量以上であり、70質量%以下である。
【0083】
前記冷凍機油含有作動流体の冷凍機油含量は、圧縮機から吐出されて再び圧縮機に戻ってくるまでの期間では、好ましくは、1質量ppm以上であり、20質量%以下であり、より好
ましくは10質量%である。
【0084】
前記冷凍機油の基油は、好ましくは、潤滑油であり、特に限定されず、例えば、冷媒等に使用される公知の潤滑油を広く採用する。
【0085】
具体的な潤滑剤として、好ましくは、ポリアルキレングリコール(PAG)、ポリオール
エステル(POE)及びポリビニルエーテル(PVE)からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の潤滑油を使用する。ポリアルキレングリコール(PAG)として、例えば、日本サン
石油株式会社製「SUNICE P56」等が挙げられる。また、ポリオールエステル(POE)とし
て、例えば、JX日鉱日石エネルギー株式会社製「Ze-GLES RB32」等が挙げられる。
【0086】
冷凍機油は、基油に加えて、好ましくは、更に少なくとも1種の添加剤を含む。添加剤
は、好ましくは、相溶化剤、紫外線蛍光染料、安定化剤、重合禁止剤、酸化防止剤、極圧剤、酸捕捉剤、酸素捕捉剤、銅不活性化剤、防錆剤、油性剤及び消泡剤からなる群より選択される少なくとも1種の成分である。
【0087】
(5)冷媒組成物及び冷凍機油含有作動流体の調製方法
本開示の組成物を調製する方法は特に限定されない。
【0088】
前記冷媒組成物を調製する方法は、好ましくは、例えば、前記(1)冷媒、(2)酸素等を、所定の配合割合で混合させる方法である。この混合において、適宜、前述の潤滑油及び/又は他の添加剤を配合することもできる。
【0089】
[2]冷媒を保存する方法
本開示の(1)冷媒を保存する方法は、密閉容器内で、気相と液相とを有する気液状態
で、(1)冷媒を保存する方法であり、
前記(1)冷媒は、
(1-1)シス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(Z))、1,1-ジフルオロエチレン(HFO-1132a)、トリフルオロエチレン(HFO-1123)、及びテトラフルオロエチレン(FO-1114
)からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の成分と、
(1-2)一般式(1):
【0090】
【0091】
(式中、
Xa、Xb、及びXcは、水素原子、又はフッ素原子を示し、
Raは、-CH3、-CHF2、-CH2F、-CF3、-CXd=CXeXf(前記Xd、Xe、Xfは、水素原子、又はフッ素原子を示す)、又は-ORb(前記Rbは、炭素数1~3の、置換基として水素原子、又は
フッ素原子を有する炭化水素基を示す)を示す。)
で表される化合物、並びに、トリフルオロヨードメタン(CF3I)からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の成分とを含み、
前記気相において、(2)酸素を、体積基準で、温度25℃で、濃度1ppm以上、10,000ppm以下にする、
ことを特徴とする方法。
【0092】
本開示の(1)冷媒を保存する方法においては、好ましくは、冷媒全体を基準として、
質量基準で、前記冷媒(1-1)は、10%以上、90%以下であり、前記冷媒(1-2)は、10%以
上、90%以下である。
【0093】
冷媒を保存する方法で使用する、冷媒、冷凍機油等の各成分は、前記組成物の項目で説明した成分を使用することができる。
【0094】
保存容器
本開示の冷媒の保存方法、又は重合抑制方法において、冷媒組成物の保存容器は、好ましくは、内部圧力下において気液共存状態で(1)冷媒を封入することができる密閉容器
を用いる。冷媒組成物の保存容器は、特別な構造又は構成材料を必要とせず、広い範囲の形態及び機能を有することができる。
【0095】
冷媒組成物の保存容器は、好ましくは、例えば、固定した保存容器である貯蔵タンク、輸送に使用される充填ボンベ、2次充填ボンベ(サービス缶)等の耐圧容器等が挙げられ
る。
【0096】
冷媒組成物の保存容器の構成材料は、好ましくは、例えば、炭素鋼、マンガン鋼、クロムモリブデン鋼その他の低合金鋼、ステンレス鋼、アルミニウム合金、等を用いる。
【0097】
[3]冷媒の重合を抑制する方法
本開示の(1)冷媒の重合を抑制する方法は、密閉容器内で、気相と液相とを有する気
液状態で、(1)冷媒の重合を抑制する方法であり、
前記(1)冷媒は、
(1-1)シス-1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132(Z))、1,1-ジフルオロエチレン(HFO-1132a)、トリフルオロエチレン(HFO-1123)、及びテトラフルオロエチレン(FO-1114
)からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の成分と、
(1-2)一般式(1):
【0098】
【0099】
(式中、
Xa、Xb、及びXcは、水素原子、又はフッ素原子を示し、
Raは、-CH3、-CHF2、-CH2F、-CF3、-CXd=CXeXf(前記Xd、Xe、Xfは、水素原子、又はフッ素原子を示す)、又は-ORb(前記Rbは、炭素数1~3の、置換基として水素原子、又は
フッ素原子を有する炭化水素基を示す)を示す。)
で表される化合物、並びに、トリフルオロヨードメタン(CF3I)からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の成分とを含み、
前記気相において、(2)酸素を、体積基準で、温度25℃で、濃度1ppm以上、10,000ppm以下にする、
ことを特徴とする方法。
【0100】
本開示の(1)冷媒の重合を抑制する方法においては、好ましくは、冷媒全体を基準と
して、質量基準で、前記冷媒(1-1)は、10%以上、90%以下であり、前記冷媒(1-2)は、10%以上、90%以下である。
【0101】
冷媒の重合を抑制する方法で使用する、冷媒、冷凍機油等の各成分は、前記組成物の項目で説明した成分を使用することができる。
【0102】
[4]冷媒組成物及び冷凍機油含有作動流体の保存方法の評価方法
本開示の冷媒を保存する方法(保存方法)、及び冷媒の重合を抑制する方法(重合抑制方法)によれば、気液状態で密閉容器内に充填された前記(1)冷媒の内、前記(1-1)HFO-1132(Z)、HFO-1132a、HFO-1123、及びFO-1114からなる群から選ばれる少なくとも一種
以上の成分の冷媒に重合等の反応が抑制されており、前記(1)冷媒の純度、及び冷媒と
しての高品質を維持することができる。
【0103】
本開示の保存方法、及び重合抑制方法によれば、密閉容器内における例えば固体状の重合生成物の生成抑制することが可能であり、バルブ等の閉塞や冷媒システムへの異物混入が生じる虞が無い。
【0104】
本開示の保存方法、及び重合抑制方法によれば、低コストで、良好に前記(1)冷媒の
重合を抑制し、保存することができる。
【0105】
本開示の保存方法、及び重合抑制方法において、冷媒の保存性の評価は、例えば、密閉容器内に、所定量の(2)酸素と共に、気液状態の前記(1)冷媒を封入し、全体を所定温度に加熱し恒温状態で所定の時間保持した後、前記(1)冷媒の液相中の反応生成物を同
定し、分析することにより行うことが可能である。
【0106】
この評価は、熱負荷をかけた加速試験に相当する。
【0107】
加熱温度は、恒温槽の設定温度範囲である-70℃以上、300℃以下の範囲に設定できる。また、加熱処理時間は任意に設定できる。反応生成物の同定・分析は、例えば、後述する実施例に記載の方法により実施することができる。
【実施例0108】
以下、実施例により本開示をより具体的に説明するが、これら実施例の態様に限定されるものではない。
【0109】
冷媒を保存する方法、及び冷媒の重合を抑制する方法
(1)重合反応における重合組成物生成量の評価方法
以下に重合反応評価において共通する実験方法を示す。
【0110】
内容積200ccのSUS316製耐圧容器(最高使用温度300℃、最高使用圧力20MPa)を密封し
、容器内の真空排気を行った。ここに、パーフルオロシクロブタン150gを入れ、さらにHFO-1123またはHFO-1132(Z)、HFO-1132a、HFO-1234yfのうち少なくとも一種類を含むガスを0.16mol入れた。容器内温が25℃となるよう水浴中に容器を入れ保温し、容器内温が安定
したことを確認して、開始剤としてビス(2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7-ドデカフルオロヘプタノイル)ペルオキシドの8mass%パーフルオロヘキサン溶液1gを入れ、重合を開始した。
25℃を保って重合を継続したのち、重合開始から2時間経過した際に内部ガスを放出する
ことにより重合を停止した。重合停止後、容器内部の固形分を取り出し、真空中で120℃
に加熱乾燥させ、重量を測定した。得られた固形物は重水素化アセトンに溶解して1H-NMR、13C-NMR、及び19F-NMRの各スペクトルを測定した。
【0111】
(1-1)HFO-1123単独の重合反応
上記の共通の方法に従い、HFO-1123 13.2gを容器内に入れて重合反応を行った。重合
反応後に得られた固形物は2.0gであった。測定されたNMRスペクトルのピーク帰属により
固形物質を同定したところ、HFO-1123のホモポリマーであることを確認した。重合反応に用いられたHFO-1123は0.024molであった。
【0112】
(1-2)HFO-1132a単独の重合反応
上記の共通の方法に従い、HFO-1132a 10.2gを容器内に入れて重合反応を行った。重合反応後に得られた固形物は3.9gであった。測定されたNMRスペクトルのピーク帰属により
固形物質を同定したところ、HFO-1132aのホモポリマーであることを確認した。重合反応
に用いられたHFO-1132aは0.061molであった。
【0113】
(1-3)HFO-1132(Z)単独の重合反応
上記の共通の方法に従い、HFO-1132(Z) 10.2gを容器内に入れて重合反応を行った。重合反応後に得られた固形物は0.7gであった。測定されたNMRスペクトルのピーク帰属によ
り固形物質を同定したところ、HFO-1132(Z)のホモポリマーであることを確認した。重合
反応に用いられたHFO-1132(Z)は0.011molであった。
【0114】
(1-4)HFO-1234yf単独の重合反応
上記の共通の方法に従い、HFO-1234yf 18.4gを容器内に入れて重合反応を行った。重
合反応後に得られた固形物は0.15gであった。測定されたNMRスペクトルのピーク帰属により固形物質を同定したところ、HFO-1234yfのホモポリマーであることを確認した。重合反応に用いられたHFO-1234yfは0.0013molであった。
【0115】
(1-5)HFO-1123とHFO-1234yf重量比37/63の重合反応
上記の共通の方法に従い、HFO-1123とHFO-1234yfの重量比37/63混合物 15.9gを容器内に入れて重合反応を行った。重合反応後に得られた固形物は0.15gであった。測定されたNMRスペクトルのピーク帰属により固形物質を同定したところ、HFO-1123とHFO-1234yfの共重合ポリマーであり、ポリマー中のモノマー組成は容器内に入れたHFO-1123とHFO-1234yfの比率とほぼ同じであることを確認した。重合反応に用いられたHFO-1123とHFO-1234yf混合物は0.0015molであった。
【0116】
(1-6)HFO-1123とHFO-1234yf重量比80/20の重合反応
上記の共通の方法に従い、HFO-1123とHFO-1234yfの重量比80/20混合物 13.9gを容器内に入れて重合反応を行った。重合反応後に得られた固形物は0.13gであった。測定されたNMRスペクトルのピーク帰属により固形物質を同定したところ、HFO-1123とHFO-1234yfの共重合ポリマーであり、ポリマー中のモノマー組成は容器内に入れたHFO-1123とHFO-1234yfの比率とほぼ同じであることを確認した。重合反応に用いられたHFO-1123とHFO-1234yf混合物は0.0015molであった。
【0117】
(1-7)HFO-1123とHFO-1234yf重量比90/10の重合反応
上記の共通の方法に従い、HFO-1123とHFO-1234yfの重量比80/20混合物 13.5gを容器内に入れて重合反応を行った。重合反応後に得られた固形物は0.14gであった。測定されたNMRスペクトルのピーク帰属により固形物質を同定したところ、HFO-1123とHFO-1234yfの共重合ポリマーであり、ポリマー中のモノマー組成は容器内に入れたHFO-1123とHFO-1234yf
の比率とほぼ同じであることを確認した。重合反応に用いられたHFO-1123とHFO-1234yf混合物は0.0017molであった。
【0118】
(1-8)HFO-1123とHFO-1234yf重量比93/7の重合反応
上記の共通の方法に従い、HFO-1123とHFO-1234yfの重量比80/20混合物 13.2gを容器内に入れて重合反応を行った。重合反応後に得られた固形物は0.14gであった。測定されたNMRスペクトルのピーク帰属により固形物質を同定したところ、HFO-1123とHFO-1234yfの共重合ポリマーであり、ポリマー中のモノマー組成は容器内に入れたHFO-1123とHFO-1234yfの比率とほぼ同じであることを確認した。重合反応に用いられたHFO-1123とHFO-1234yf混合物は0.0074molであった。
【0119】
(2)冷媒の保存又は重合抑制の評価方法
以下に保存または重合抑制の評価において共通する実験方法を示す。
【0120】
内容積40ccのSUS316製耐圧容器(最高使用温度300℃、最高使用圧力20MPa)を密封し、容器内の真空排気を行った。次いで、前記耐圧容器内に所定量の酸素を封入した後、液化された純度99.5%以上の冷媒を、所定量充填した。冷媒と酸素を共存させた容器を50℃に
保温された恒温槽内で静置し、容器内温と内圧を観測した。
【0121】
圧力は、断りが無い場合は、ゲージ圧とする。
【0122】
(2-1)HFO-1123における酸素共存の評価
上記記載の容器内に、HFO-1123を共存させた際に体積あたり14,000ppmとなるよう、25
℃で絶対圧0.1MPaの酸素を封入し、容器を液体窒素で冷却した後に、50℃においてHFO-1123の飽和蒸気圧とほぼ等しくなるよう、9.4gのHFO-1123を充填し、共存させた。容器を50℃に保温された恒温槽内に静置し、容器内温と内圧を観測した。内温が50℃に到達した際の内圧は3.65MPaであった。85時間経過した際に、内圧が減少し始めたことを確認した。
内圧減少は継続的であり、240時間経過したところ、内圧は0.65MPaとなった。恒温槽から容器を取り出し、内部ガスを放出した。内部に付着した固形物を取り出し、真空中で120
℃に加熱乾燥させ、重量を測定したところ8.3gであった。得られた固形物を重水素化アセトンに溶解して1H-NMR、13C-NMR、及び19F-NMRの各スペクトルを測定し、NMRスペクトル
のピーク帰属により固形物質を同定したところ、HFO-1123のホモポリマーであることを確認した。
【0123】
(2-2)HFO-1123における低酸素濃度の評価
上記記載の容器を液体窒素で冷却した後に、50℃においてHFO-1123の飽和蒸気圧とほぼ等しくなるよう、9.4gのHFO-1123を充填した。容器を50℃に保温された恒温槽内に静置し、容器内温と内圧を観測した。内温が50℃に到達した際の内圧は3.60MPaであった。240時間経過したところ、内圧は3.60MPaから変化がないことを確認した。恒温槽から容器を取
り出し、内部ガスを放出した。目視により内部に固形物の付着がないことを確認した。
【0124】
(2-3)HFO-1234yfにおける酸素共存の評価
上記記載の容器内に、HFO-1234yfを共存させた際に体積あたり14,000ppmとなるよう、25℃で絶対圧0.02MPaの酸素を封入し、容器を液体窒素で冷却した後に、50℃においてHFO-1123の飽和蒸気圧とほぼ等しくなるよう、3.0gのHFO-1234yfを充填し、共存させた。容器を50℃に保温された恒温槽内に静置し、容器内温と内圧を観測した。内温が50℃に到達した際の内圧は1.20MPaであった。240時間経過したところ、内圧は1.20MPaから変化がない
ことを確認した。恒温槽から容器を取り出し、内部ガスを放出した。目視により内部に固形物の付着がないことを確認した。
【0125】
(2-4)HFO-1123とHFO-1234yf重量比90/10における酸素共存の評価
上記記載の容器内に、HFO-1123を共存させた際に体積あたり14,000ppmとなるよう、25
℃で絶対圧0.09MPaの酸素を封入し、容器を液体窒素で冷却した後に、50℃においてHFO-1123とHFO-1234yf重量比90/10混合ガスの飽和蒸気圧とほぼ等しくなるよう、8.4gのHFO-1123を充填し、共存させた。容器を50℃に保温された恒温槽内に静置し、容器内温と内圧を観測した。内温が50℃に到達した際の内圧は3.40MPaであった。240時間経過したところ、内圧は3.40MPaから変化がないことを確認した。恒温槽から容器を取り出し、内部ガスを
放出した。目視により内部に固形物の付着がないことを確認した。
【0126】
(3)冷媒の保存方法又は重合抑制方法安定性試験の結果
HFO-1123とHFO-1234yfとの混合冷媒は、HFO-1123に、HFO-1234yfを共存させており、冷媒組成物に酸素が共存する場合でも、液相に実用上問題となる固形生成物であるHFO-1123のホモポリマーおよびHFO-1123とHFO-1234yfの共重合ポリマーは観察されず、重合反応が生起していないことがわかる。
【0127】
それに対して、HFO-1123のみの冷媒は、HFO-1234yfを共存させておらず、冷媒組成物に酸素が共存する場合に、HFO-1123のホモポリマーの生成が見られる。
【0128】
本開示の冷媒の保存方法又は重合抑制方法は、(1)冷媒と(2)酸素とを含む冷媒組成物における、前記(1)冷媒を、密閉容器内で、保存又は重合抑制する方法として、前記
(1)冷媒として、(1-1)HFO-1123等の成分に、(1-2)HFO-1234yf等の成分を共存させ
ることにより、前記(1)冷媒に、前記気相における前記(2)酸素の濃度を、体積基準で、温度25℃で、14,000ppm程度で共存させる場合でも、HFO-1123等を、長期に亘り、重合
反応を抑制できる、安定的な保存方法として有効であると評価できる。
【0129】
本開示の冷媒の保存方法又は重合抑制方法によれば、HFO-1123等の成分に重合等の反応を抑制することができることから、HFO-1123等の成分を、保管時、輸送時に、自己重合を抑制し、冷媒の品質が低下させずに、高品質を維持しながら、貯蔵及び輸送の方法を提供することが可能である。