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特開2022-166275コンデンサアノードに使用するための鎖に結合した対イオンを有する導電性ポリマーと、鎖に結合していない対イオンを有する導電性ポリマーの混合物を含む分散液
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  • 特開-コンデンサアノードに使用するための鎖に結合した対イオンを有する導電性ポリマーと、鎖に結合していない対イオンを有する導電性ポリマーの混合物を含む分散液 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022166275
(43)【公開日】2022-11-01
(54)【発明の名称】コンデンサアノードに使用するための鎖に結合した対イオンを有する導電性ポリマーと、鎖に結合していない対イオンを有する導電性ポリマーの混合物を含む分散液
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/00 20060101AFI20221025BHJP
   H01G 9/028 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
H01G9/00 290H
H01G9/028 G
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022132552
(22)【出願日】2022-08-23
(62)【分割の表示】P 2020184348の分割
【原出願日】2013-09-25
(31)【優先権主張番号】102012018976.1
(32)【優先日】2012-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】61/711,369
(32)【優先日】2012-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】515131116
【氏名又は名称】ヘレウス ドイチェラント ゲーエムベーハー ウント カンパニー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】アシュテマン カトリン
(72)【発明者】
【氏名】インテルマン マティーアス
(72)【発明者】
【氏名】メルケル ウド
(72)【発明者】
【氏名】ロイター クヌート
(72)【発明者】
【氏名】ザウター アルミン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】低い等価直列抵抗に加えて、良好なキャパシタンスおよび低温特性の両方を示す固体電解コンデンサを製造するためのプロセス、このプロセスによって得られる電子回路、コンデンサ及び分散液の使用方法を提供する。
【解決手段】自己ドープされた導電性ポリマーが、アノード体(5)の少なくとも一部の中にさらに導入される固体電解コンデンサを製造するプロセスは、電極材料(2)の電極体(1)を準備する工程を含む。該工程は、誘電体(3)が、アノード体(5)の形成下で前記電極材料(2)の1つの表面(4)を少なくとも部分的に覆う工程と、分散剤、異質ドープされた導電性ポリマー及び前記異質ドープされた導電性ポリマーと共有結合しない対イオンを含む分散液を、前記アノード体(5)の少なくとも一部の中に導入する工程と、コンデンサ本体における固体電解質(6)を得ている状態で前記分散剤を少なくとも部分的に除去する工程と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)電極材料(2)の電極体(1)を準備する工程であって、誘電体(3)が、アノード体(5)の形成下で前記電極材料(2)の1つの表面(4)を少なくとも部分的に覆う、工程と、
b)分散剤、異質ドープされた導電性ポリマーおよび前記異質ドープされた導電性ポリマーと共有結合しない対イオンを含む分散液を、前記アノード体(5)の少なくとも一部の中に導入する工程と、
c)コンデンサ本体における固体電解質(6)を得ている状態で前記分散剤を少なくとも部分的に除去する工程と、
を含む、コンデンサを製造するためのプロセスであって、
自己ドープされた導電性ポリマーが、前記アノード体(5)の少なくとも一部の中にさらに導入される、プロセス。
【請求項2】
前記異質ドープされた導電性ポリマーがポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記対イオンがポリアニオンとして存在する、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記ポリアニオンがポリスチレンスルホン酸である、請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
前記分散液が、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸のイオン錯体を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
自己ドープされたポリチオフェンが、式(I)
【化1】
(式中、
X、Yは、同一または異なり、O、S、N-Rを表し、
Zは、-(CH-CR-(CH-を表し、
は、アリール、C-C18-アルキルまたは水素を表し、
は、水素または-(CH-O-(CH-SO を表し、
は、-(CH-O-(CH-SO を表し、
は、カチオンを表し、
m、nは、同一または異なり、0~3の整数を表し、
sは、0~10の整数を表し、
pは、1~18の整数を表す)
の繰り返し単位を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
X、Yは、Oを表し、
Zは、-(CH-CR-(CH-を表し、
は、水素または-(CH-O-(CH-SO を表し、
は、-(CH-O-(CH-SO を表し、
は、カチオンを表し、
m、nは、同一または異なり、0~3の整数を表し、
sは、0~10の整数を表し、
pは、1~18の整数を表す、
請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
X、Yは、Oを表し、
Zは、-(CH)-CR-(CH-を表し、
は、水素を表し、
は、-(CH-O-(CH-SO を表し、
は、NaまたはKを表し、
nは、0または1を表し、
sは、0または1を表し、
pは、3、4または5を表す、
請求項6または7に記載のプロセス。
【請求項9】
前記分散液が、前記プロセスの工程b)に記載される前記アノード体(5)の少なくとも一部の中に導入される前に、前記自己ドープされた導電性ポリマーが、溶液または分散液の形態で前記アノード体(5)の少なくとも一部の中に導入される、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記分散液が、前記プロセスの工程b)に記載される前記アノード体(5)の少なくとも一部の中に導入された後に、前記自己ドープされた導電性ポリマーが、溶液または分散液の形態で前記アノード体(5)の少なくとも一部の中に導入される、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記自己ドープされた導電性ポリマーが、前記プロセスの工程b)に記載される前記アノード体(5)の少なくとも一部の中に導入される前記分散液の中に含まれる、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記固体電解質(6)における自己ドープされたポリマー対異質ドープされたポリマーの重量比が100:1~1:100の範囲である量で、前記自己ドープされた導電性ポリマーが前記アノード体(5)の少なくとも一部の中に導入される、請求項1~11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載のプロセスによって得られる、コンデンサ。
【請求項14】
電極材料(2)の電極体(1)を含むコンデンサであって、誘電体(3)が、前記電極材料(2)の表面(4)を少なくとも部分的に覆い、アノード体(5)を形成し、前記アノード体(5)は、異質ドープされた導電性ポリマー、前記異質ドープされた導電性ポリマーと共有結合しない対イオンおよび自己ドープされた導電性ポリマーを含む固体電解質(6)で少なくとも部分的にコーティングされる、コンデンサ。
【請求項15】
前記異質ドープされた導電性ポリマーが、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)であり、
前記対イオンが、請求項3または4に定義されている通りであり、
前記自己ドープされた導電性ポリマーが、請求項6~8のいずれか一項に定義されている通りである、請求項14に記載のコンデンサ。
【請求項16】
前記固体電解質(6)における自己ドープされたポリマー対異質ドープされたポリマーの重量比が100:1~1:100の範囲である、請求項14または15に記載のコンデンサ。
【請求項17】
請求項13~16のいずれか一項に記載のコンデンサを含む電子回路。
【請求項18】
電子回路における請求項13~17のいずれか一項に記載のコンデンサの使用。
【請求項19】
自己ドープされた導電性ポリマー、異質ドープされた導電性ポリマーおよび前記異質ドープされた導電性ポリマーと共有結合しない対イオンを含む、分散液。
【請求項20】
前記異質ドープされた導電性ポリマーが、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)であり、
前記対イオンが、請求項3または4に定義されている通りであり、
前記自己ドープされた導電性ポリマーが、請求項6~8のいずれか一項に定義されている通りである、
請求項19に記載の分散液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンデンサを製造するためのプロセス、このプロセスによって得られるコンデンサ、電子回路、コンデンサおよび分散液の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
市販の電解コンデンサは、概して、多孔性金属電極と、金属表面上の誘電体としての役割を果たす酸化物層と、この多孔性構造体の中へと導入されている電気伝導性物質、通常は固体と、外部電極(接点接続)、例えば銀層と、さらなる電気接点と封入体とから構成される。しばしば使用される電解コンデンサは、タンタル電解コンデンサであり、このタンタル電解コンデンサのアノード電極はバルブ金属のタンタルから作製され、このタンタルの上に五酸化タンタルの均一な誘電体層がアノード酸化(「形成」とも呼ばれる)によって生成されている。液体電解質または固体電解質は、コンデンサのカソードを形成する。アノード電極がバルブ金属であるアルミニウムから作製され、このアルミニウムの上に均一な電気絶縁性の酸化アルミニウム層がアノード酸化によって誘電体として生成されている、アルミニウムコンデンサが、さらに頻繁に用いられる。ここでも、液体電解質または固体電解質がコンデンサのカソードを形成する。アルミニウムコンデンサは、通常、巻回型または積層型(stack-type)コンデンサとして構築される。
【0003】
π共役ポリマーは、それらの高い電気伝導率が理由で、上記のコンデンサにおける固体電解質として特に適切である。π共役ポリマーは、導電性ポリマーまたは合成金属とも呼ばれる。πポリマーは、加工性、重量、および化学修飾によって特性を狙った設定にできることの点で、金属に勝る利点を有するので、導電性ポリマーは、ますます経済的に重要になってきている。公知のπ共役ポリマーの例は、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリフェニレンおよびポリ(p-フェニレン-ビニレン)であり、工業的に使用される特に重要なポリチオフェンはポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)である。なぜなら、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)は、その酸化された形態において、非常に高い電気伝導率を有するからである。
【0004】
導電性ポリマーに基づく固体電解質は、種々の方法で酸化物層に付与することができる。従って、特許文献1は、例えば、3,4-エチレンジオキシチオフェンからの固体電解質の調製、および電解コンデンサにおけるその使用を記載する。この刊行物の教示によれば、3,4-エチレンジオキシチオフェンは、その場で酸化物層の上へと重合される。
【0005】
しかしながら、その場重合を使用する固体電解コンデンサの製造の短所は、中でもとりわけ、プロセスの複雑さである。このように、いずれの場合も含浸、重合および適切な場合、洗浄の工程を含む重合プロセスは、概して数時間続く。特定の状況下では、爆発性のまたは有毒な溶媒もここで用いられる必要がある。固体電解コンデンサの製造のためのその場プロセスのさらなる欠点は、概して、酸化剤のアニオンまたは、適切な場合、他の単量体状アニオンが、導電性ポリマーについての対イオンとしての役割を果たすということである。しかしながら、それらアニオンの小さいサイズが原因で、これらは、十分に安定な様態でポリマーに結合されない。結果として、対イオンの拡散およびそれゆえコンデンサの等価直列抵抗(ESR)の上昇が、とりわけコンデンサの上昇した使用温度で起こる可能性がある。化学的なその場重合における高分子量の高分子対イオンの代替的使用は、十分な導電性のフィルムへとつながらず、それゆえ低ESR値にはつながらない。
【0006】
上記のその場重合に加えて、コンデンサにおける固体電解質を製造するためのプロセスであって、既に重合したチオフェンおよび対イオンとしてポリアニオンを含む分散液、例えば従来技術から知られているPEDOT/PSS分散液が、酸化物層に付与され、次いで分散剤がエバポレーションによって除去される、プロセスもまた、従来技術から知られている。
【0007】
しかしながら、このような分散液を利用することによって得られるコンデンサの欠点は、とりわけ、一方で、それらが比較的低いキャパシタンス、他方で、それらが十分でない低い温度特性によって特徴付けられることである。これに関してコンデンサの「低い温度特性」は、その電気特性値、例えば、キャパシタンス、等価直列抵抗、破壊電圧または残留電流に対する影響であるが、特に低い温度、特に-60℃未満の温度でのキャパシタンスに対する影響を意味すると理解される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0 340 512号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、コンデンサに関連して、特に固体電解コンデンサに関連して、非常に特に好ましくは従来技術から知られているアルミニウムまたはタンタルコンデンサに関連して、従来技術から生じる不都合な点を克服する目的に基づいた。
【0010】
特に、本発明は、コンデンサを製造するためのプロセスを提供する目的に基づき、これにより、最も低い可能な技術的費用で、可能な限り低い等価直列抵抗に加えて、適切なキャパシタンスおよび適切な低い温度特性の両方を示すコンデンサが提供され得る。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的を達成することに対する寄与は、
a)電極材料の電極体を準備する工程であって、誘電体が、アノード体の形成下でこの電極材料の1つの表面を少なくとも部分的に覆う、工程、
b)分散剤、異質ドープされた導電性ポリマーおよび異質ドープされた導電性ポリマーに共有結合しない対イオンを含む分散液を、アノード体の少なくとも一部の中に導入する工程、
c)コンデンサ本体において固体電解質を得ている状態で、分散剤を少なくとも部分的に除去する工程
を含み、自己ドープされた導電性ポリマーがアノード体の少なくとも一部の中にさらに導入される、コンデンサを製造するためのプロセスによってなされる。
【0012】
本発明に係るプロセスに関して、異質ドープされた導電性ポリマーおよび自己ドープされた導電性ポリマーが、アノード体の少なくとも一部の中にポリマーとして導入され、特にその場重合によりアノード体の中で一度も調製されないことが特に好ましい。
【0013】
プロセスの工程a)において、誘電体が、アノード体を形成するためにこの電極材料の1つの表面を少なくとも部分的に覆う、電極材料の電極体が最初に提供される。
【0014】
原則として、電極体は、高表面積のバルブ金属粉末をプレスし、それを焼結して通常の多孔質の電極体を得ることによって製造され得る。好ましくはバルブ金属、例えばタンタルの電気接点ワイヤもまた、慣例的にここで電気本体にプレスされる。次いで電極体は、例えば、誘電体、すなわち酸化層で電気化学的酸化によってコーティングされる。あるいは、金属箔がまた、多孔質領域を有するアノード箔を得るために電気化学的酸化によってエッチングされ、誘電体でコーティングされてもよい。巻回型コンデンサにおいて、電極体を形成する多孔質領域を有するアノード箔、およびカソード箔はセパレータによって分離され、巻かれる。
【0015】
本発明に関して、バルブ金属は、酸化層が両方の方向において等しく可能な電流を与えないこれらの金属を意味すると理解される。アノードに印加された電圧の場合、バルブ金属の酸化層は電流を遮断するが、カソードに印加された電圧の場合、大きな電流が発生し、酸化層を破壊し得る。バルブ金属としては、Be、Mg、Al、Ge、Si、Sn、Sb、Bi、Ti、Zr、Hf、V、Nb、TaおよびWならびにこれらの金属の少なくとも1種と他の元素の合金または化合物が挙げられる。最も良く知られているバルブ金属の例はAl、TaおよびNbである。バルブ金属に匹敵する電気特性を有する化合物は、酸化され得、酸化層が上記の特性を有する金属伝導性を有するものである。例えば、NbOは金属伝導性を有するが、一般にバルブ金属とみなされない。しかしながら、酸化されたNbOの層はバルブ金属酸化層の典型的な特性を有するので、NbOまたはNbOと他の元素の合金もしくは化合物が、バルブ金属に匹敵する電気特性を有するこのような化合物の典型的な例である。タンタル、アルミニウムの電極材料およびニオブまたは酸化ニオブに基づいたこれらの電極材料が好ましい。タンタルおよびアルミニウムが電極材料として非常に特に好ましい。
【0016】
しばしば、多孔質領域を有する電極体の製造に関して、バルブ金属は、例えば、粉末形態で焼結されて、通常の多孔質電極体を得ることができるか、または多孔質構造が金属本体にスタンプされる。後者は例えば箔をエッチングすることによって実施され得る。
【0017】
簡潔さのために、多孔質領域を有する本体はまた、以下において多孔質と呼ばれる。したがって、例えば、多孔質領域を有する電極体はまた、多孔質電極体と呼ばれる。一方で、多孔質本体は複数のチャネルが広がり得るので、スポンジ状である。これはしばしば、タンタルがコンデンサの構築のために使用される場合である。さらに、表面のみが、穴を有し、表面の穴の下の領域が詰まった構成を有することも可能である。このような状況はしばしば、アルミニウムがコンデンサの構築のために使用される場合に観察される。好ましくは、電極体は多孔質である。
【0018】
しばしば、このように製造された多孔質の電極体は次に、例えば、誘電体を形成するために、電圧を印加することによって、リン酸またはアジピン酸アンモニウム水溶液などの適切な電解質において酸化される。この電圧を形成するレベルは、達成される酸化層の厚さまたはコンデンサの後での使用電圧に依存する。好ましい電圧の形成は、1~500Vの範囲、特に好ましくは2~150Vの範囲、非常に特に好ましくは3~60Vの範囲である。
【0019】
概して、利用される多孔質の電極体は、好ましくは、10~90%、好ましくは30~80%、特に好ましくは50~80%の多孔性および10~10,000nm、好ましくは20~5,000nm、特に好ましくは50~3,000nmの平均孔径を有する。
【0020】
本発明に係るプロセスの特定の実施形態によれば、製造される電解コンデンサはアルミニウム巻回型コンデンサである。この場合、プロセスの工程a)において、多孔質アルミニウム箔が電極材料としてアノードに形成され、アルミニウム酸化コーティングが誘電体として形成される。このように得られたアルミニウム箔(アノード箔)には次いで、接触ワイヤが提供され、同様に接触ワイヤが提供されるさらなる任意の多孔質アルミニウム箔(カソード箔)と共に巻かれ、これらの2つの箔は、例えば、セルロースまたは好ましくは合成紙に基づいた1つ以上のセパレータによって互いに間隔をあけられる。巻かれた後、このように得られたアノード体は、例えば、接着テープによって固定される。セパレータ(複数も含む)はオーブン中で加熱することによって炭化され得る。この方法およびアルミニウム巻回型コンデンサのためのアノード体の製造様式は、従来技術から十分に知られており、例えば、米国特許第7,497,879号B2に記載されている。
【0021】
本発明に係るプロセスのさらなる特定の実施形態によれば、製造される電解コンデンサは、アルミニウム積層コンデンサまたはタンタル電解コンデンサ(「タンタルエルコ(tantalum elco)」)であり、特に、ポリマー外層を有するタンタル電解コンデンサなどは独国特許出願公開第10 2009 007594号に記載されている。
【0022】
本発明に係るプロセスの工程b)において、分散剤、異質ドープされた導電性ポリマーおよび異質ドープされた導電性ポリマーに共有結合しない対イオンを含む分散液が次いで、アノード体の少なくとも一部の中に導入される。
【0023】
本発明に関連して、「異質ドープされた(foreign-doped)導電性ポリマー」は本明細書において、ポリマー鎖に沿って正電荷を有する導電性ポリマーであって、これらの正電荷は負電荷の対イオンによって少なくとも部分的に均衡になり、これらの負電荷の対イオンは導電性ポリマーに共有結合しない(しかし、この導電性ポリマーと異なる他のモノマーまたはポリマーと共有結合できる)、導電性ポリマーを意味すると理解される。
【0024】
これと対照的に、本発明に関連して、「自己ドープされた(self-doped)導電性ポリマー」は、ポリマー鎖に沿って正電荷を有する導電性ポリマーであって、これらの正電荷は、導電性ポリマーに共有結合する負電荷の対イオンによって少なくとも部分的に均衡になる、導電性ポリマーを意味すると理解される。
【0025】
分散液は、公知のプロセス、例えば含浸、浸漬、注ぎ込み(pouring)、滴下(dripping on)、噴霧、ミスト形成(misting on)、ナイフコーティング、ブラッシングまたは印刷、例えばインクジェット印刷、スクリーン印刷またはタンポン印刷によって、多孔質領域の中へと導入される。好ましくは、この導入は、プロセスの工程a)で準備されるアノード体を当該分散液の中へと浸漬すること、したがって当該アノード体にこの分散液を含浸させることにより実施される。この分散液の中への浸漬またはこの分散液を用いた含浸は、好ましくは1秒~120分の範囲、特に好ましくは10秒~60分の範囲、最も好ましくは30秒~15分の範囲の時間の間、実施される。アノード体の中への当該分散液の導入は、例えば、増圧または減圧、振動、超音波または熱によって容易になる可能性がある。
【0026】
アノード体の中への分散液の導入は、直接的に、または接着促進剤、例えば有機官能性シランもしくはその加水分解生成物、例えば3-グリシドオキシプロピルトリアルコキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシランまたはオクチルトリエトキシシランなどのシラン、および/または1以上の他の機能層を使用して、実施することができる。
【0027】
この導入の結果として、分散液は、多孔性領域の細孔を層で覆うことがかなり少ないことが好ましい。むしろ、この細孔の空洞の表面が、この分散液で少なくとも部分的に覆われる。したがって、この分散液の中に存在する粒子は、細孔の開口部を覆う層を形成するだけでなく;細孔の表面の少なくとも一部(すべての領域であることも多い)も分散液の粒子の層で覆われる。
【0028】
本発明に関連して使用される場合、「ポリマー」という用語は、本発明に関連して、1つより多い同一または異なる繰り返し単位を有する全ての化合物を含む。
【0029】
本明細書において特に、「導電性ポリマー」は、酸化または還元によって、特に酸化によって、電気伝導性を有するπ共役ポリマーの化合物のクラスを意味すると理解される。好ましくは導電性ポリマーは、酸化によって、少なくとも0.1S cm-1のオーダーの電気伝導性を有するこれらのπ共役ポリマーを意味すると理解される。
【0030】
分散液中の異質ドープされた導電性ポリマーは、好ましくは、ポリチオフェン、ポリピロールまたはポリアニリンであるが、非常に特に好ましくはポリチオフェンである。
【0031】
これに関して、異質ドープされた導電性ポリマーが、一般式(i)もしくは(ii)の繰り返し単位または一般式(i)および(ii)の単位の組み合わせを有するポリチオフェン、好ましくは一般式(ii)の繰り返し単位を有するポリチオフェンであることが特に好ましい。
【化1】
式中、
Aは、任意に置換されたC-C-アルキレンラジカルを表し、
Rは、直鎖状もしくは分枝状の、任意に置換されたC-C18-アルキルラジカル、任意に置換されたC-C12-シクロアルキルラジカル、任意に置換されたC-C14-アリールラジカル、任意に置換されたC-C18-アラルキルラジカル、任意に置換されたC-C-ヒドロキシアルキルラジカルまたはヒドロキシルラジカルを表し、
xは、0~8の整数を表し、
複数のラジカルRがAに結合されている場合、それらは同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0032】
一般式(i)および(ii)は、x個の置換基RがアルキレンラジカルAに結合されていてもよいということを意味すると理解されるべきである。
【0033】
Aが任意に置換されたC-C-アルキレンラジカルを表し、xが0または1を表す一般式(ii)の繰り返し単位を有するポリチオフェンが特に好ましい。
【0034】
本発明に関しては、接頭辞「ポリ」は、ポリマーまたはポリチオフェンが、複数の同一のまたは異なる一般式(i)および(ii)の繰り返し単位を含有するということを意味すると理解されたい。一般式(i)および/または(ii)の繰り返し単位に加えて、ポリチオフェンは、任意に、他の繰り返し単位も含むことができるが、ポリチオフェンのすべての繰り返し単位のうちの少なくとも50%、特に好ましくは少なくとも75%、最も好ましくは少なくとも95%が一般式(i)および/または(ii)、好ましくは一般式(ii)を有することが好ましい。上記のパーセンテージの数字は、ここで、異質ドープされた導電性ポリマーにおいてモノマー単位の総数における構造式(i)および(ii)の単位の数値的量を表すことを意図する。ポリチオフェンは、全部でn個の一般式(i)および/または(ii)、好ましくは一般式(ii)の繰り返し単位を含有し、ここでnは2~2,000、好ましくは2~100の整数である。一般式(i)および/または(ii)、好ましくは一般式(ii)の繰り返し単位は、ポリチオフェンの範囲内で各々同じであってもよいし異なっていてもよい。いずれも同一の一般式(ii)の繰り返し単位を有するポリチオフェンが好ましい。
【0035】
本発明に係るプロセスの非常に特定の実施形態によれば、ポリチオフェンの全ての繰り返し単位の少なくとも50%、特に好ましくは少なくとも75%、さらにより好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは100%は、3,4-エチレンジオキシである(すなわち最も好ましいポリチオフェンはポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)である)。
【0036】
ポリチオフェンは、いずれの場合も、末端基に、Hを有することが好ましい。
【0037】
本発明に関しては、C-C-アルキレンラジカルAは、好ましくは、メチレン、エチレン、n-プロピレン、n-ブチレンまたはn-ペンチレンである。C-C18-アルキルラジカルRは、好ましくは、メチル、エチル、n-またはiso-プロピル、n-、iso-、sec-またはtert-ブチル、n-ペンチル、1-メチルブチル、2-メチルブチル、3-メチルブチル、1-エチルプロピル、1,1-ジメチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、2,2-ジメチルプロピル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、2-エチルヘキシル、n-ノニル、n-デシル、n-ウンデシル、n-ドデシル、n-トリデシル、n-テトラデシル、n-ヘキサデシルまたはn-オクタデシルなどの直鎖状もしくは分枝状のC~C18-アルキルラジカルを表し、C-C12-シクロアルキルラジカルRは、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニルまたはシクロデシルを表し、C-C14-アリールラジカルRは、例えば、フェニルまたはナフチルを表し、C-C18-アラルキルラジカルRは、例えば、ベンジル、o-、m-、p-トリル、2,3-、2,4-、2,5-、2,6-、3,4-、3,5-キシリルまたはメシチルを表す。上記の一覧は、本発明を例として記載する役割を果たすが、排他的なものであるとみなされるべきではない。
【0038】
本発明に関しては、ラジカルAおよび/またはラジカルRの任意の可能性のあるさらなる置換基は、多くの有機基、例えばアルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、アルコキシ、ハロゲン、エーテル、チオエーテル、ジスルフィド、スルホキシド、スルホン、スルホネート、アミノ、アルデヒド、ケト、カルボン酸エステル、カルボン酸、カーボネート、カルボキシレート、シアノ、アルキルシランおよびアルコキシシラン基、ならびにカルボキシアミド基である。
【0039】
異質ドープされた導電性ポリマーは、好ましくは、カチオン性であり、「カチオン性」は、単にこのポリチオフェン主鎖上に存在する電荷のみを指す。正電荷は、上記式の中には示されていない。なぜなら、それらの正確な数および位置は明確に特定できないからである。しかしながら正電荷の数は、少なくとも1であり、多くともnである(nは、このポリチオフェン内のすべての(同じまたは異なる)繰り返し単位の総数である)。
【0040】
正電荷と均衡をとるために、カチオン性ポリチオフェンは対イオンとしてアニオンを必要とし、対イオンは、単量体アニオンまたは高分子アニオンであってもよい。本発明によれば、これらの対イオンは、プロセスの工程b)に利用される分散液中に含まれ、異質ドープされた導電性ポリマーに共有結合しない。
【0041】
本発明に係るプロセスの特定の実施形態によれば、分散液に含まれる対イオンは高分子アニオンとして存在する。高分子アニオンはまた、以下においてポリアニオンと呼ばれる。ポリアニオンが利用される場合、分散液が、ポリチオフェン(異質ドープされた導電性ポリマーとして)とポリアニオン(対イオンとして)のイオン錯体、非常に特に好ましくはポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸のイオン錯体(いわゆるPEDOT/PSS錯体)を含むことが特に好ましい。
【0042】
ポリアニオンは対イオンとして単量体状アニオンよりも好ましい。なぜなら、ポリアニオンは膜形成に寄与し、かつそのサイズに起因して、熱的により安定な、電気伝導性の膜を導くからである。本明細書においては、ポリアニオンは、例えばポリアクリル酸、ポリメタクリル酸もしくはポリマレイン酸などの高分子カルボン酸のアニオン、またはポリスチレンスルホン酸およびポリビニルスルホン酸などの高分子スルホン酸のアニオンであってもよい。これらのポリカルボン酸およびポリスルホン酸は、ビニルカルボン酸およびビニルスルホン酸と他の重合性単量体(アクリル酸エステルおよびスチレンなど)との共重合体であってもよい。特に好ましくは、固体電解質は、ポリチオフェンの正電荷と均衡をとるために、高分子カルボン酸または高分子スルホン酸のアニオンを含有する。
【0043】
ポリチオフェン、特にポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)が使用される場合は、先行技術から公知のPEDOT/PSSイオン錯体の形態の錯体として結びついて存在することが好ましいポリスチレンスルホン酸(PSS)のアニオンは、ポリアニオンとして特に好ましい。このようなイオン錯体は、チオフェン単量体、好ましくは3,4-エチレンジオキシチオフェンを、水溶液中で、ポリスチレンスルホン酸の存在下で、酸化的に重合することにより得ることができる。この詳細は、例えば、「PEDOT・Principles and Applications of an Intrinsically Conductive Polymer」、Elschnerら、CRC Press(2011)における9.1.3章に見出される。
【0044】
ポリアニオンを与えるポリ酸の分子量は、好ましくは1,000~2,000,000、より好ましくは2,000~500,000である。ポリ酸またはそのアルカリ金属塩は市販されているか、または例えばポリスチレンスルホン酸およびポリアクリル酸などは、公知の方法(例えばHouben Weyl、Methoden der organischen Chemie、第E20巻、Makromolekulare Stoffe、第2部、(1987)、1141頁以下参照)によって製造することができる。
【0045】
ポリアニオンおよびポリチオフェン、特にポリスチレンスルホン酸およびポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)は、0.5:1~50:1、好ましくは1:1~30:1、特に好ましくは2:1~20:1の重量比で、分散液中に、また固体電解質中に存在し得る。ここで、導電性ポリマーの重量比は、重合の間に完全な変換が起こると仮定して、導電性ポリマーを調製するために利用されるモノマーの重量に対応する。本発明に係るコンデンサの特定の実施形態によれば、ポリスチレンスルホン酸は、異質ドープされたポリチオフェンと比較して、特にポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)と比較して過剰な重量で存在する。
【0046】
使用されるモノマーアニオンは、例えば、C-C20-アルカンスルホン酸、例えばメタン-、エタン-、プロパン-、ブタンスルホン酸または高級スルホン酸、例えばドデカンスルホン酸、脂肪族ペルフルオロスルホン酸、例えばトリフルオロメタンスルホン酸、ペルフルオロブタンスルホン酸またはペルフルオロオクタンスルホン酸、脂肪族C-C20-カルボン酸、例えば2-エチルヘキシルカルボン酸、脂肪族ペルフルオロカルボン酸、例えばトリフルオロ酢酸またはペルフルオロオクタン酸、および任意にC-C20-アルキル基により置換される芳香族スルホン酸、例えばベンゼンスルホン酸、o-トルエンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸またはドデシルベンゼンスルホン酸、およびシクロアルカンスルホン酸、例えばカンファースルホン酸、またはテトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、過塩素酸塩、ヘキサフルオロアンチモネート、ヘキサフルオロアルセネートまたはヘキサクロロアンチモネートのアニオンである。
【0047】
p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸またはカンファースルホン酸のアニオンがモノマーアニオンとして好ましい。
【0048】
異質ドープされた導電性ポリマーと対イオン、好ましくはポリアニオンのイオン錯体、特にPEDOT/PSSイオン錯体は、好ましくは粒子の形態で分散液に存在する。分散液中のこれらの粒子は、好ましくは50S/cm超の比電気伝導率を有する。これに関して、粒子の比電気伝導率は、分散液の乾燥によって粒子から生成する、乾燥状態にある膜の比電気伝導率である。好ましくは、粒子が100S/cm超、特に好ましくは300S/cm超、ある場合には、さらに500S/m超の比電気伝導率を有する分散液が用いられる。ある場合には、最大5,000S/cmの比電気伝導率を有する粒子も用いられる。
【0049】
本発明によれば、プロセスの工程b)に利用される分散液中の粒子は、好ましくは1~100nmの範囲、好ましくは1~60nmの範囲、特に好ましくは5~40nmの範囲の直径d50を有する。これに関して、直径分布のd50値は、分散液中の全ての粒子の総重量の50%が、d50値以下の直径を有するこれらの粒子に割り当てられ得ることを指す。粒子の直径は超遠心測定により決定される。一般的な手段は、Colloid Polym.Sci.267、1113-1116(1989)に記載されている。
【0050】
プロセスの工程b)に利用される分散液は好ましくは国際公開第2010/003874(A2)号の第6頁10~29行に記載されているような、金属および遷移金属に関してある純度を有する。分散液の中で金属の濃度が低いことは、固体電解質の形成の際におよびコンデンサの、後の動作において誘電体が損傷を受けないという大きな利点を有する。
【0051】
プロセスの工程b)に利用される分散液は、異質ドープされた導電性ポリマーおよび対イオンに加えて1種以上の分散剤を含み、好ましい分散剤は、水、有機溶媒または有機溶媒および水の混合物である。言及されてもよい分散剤は、例えば、以下の溶媒である:メタノール、エタノール、i-プロパノールおよびブタノールなどの脂肪族アルコール;アセトンおよびメチルエチルケトンなどの脂肪族ケトン;酢酸エチルおよび酢酸ブチルなどの脂肪族カルボン酸エステル;トルエンおよびキシレンなどの芳香族炭化水素;ヘキサン、ヘプタンおよびシクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素;塩化メチレンおよびジクロロエタンなどの塩素化炭化水素;アセトニトリルなどの脂肪族ニトリル;ジメチルスルホキシドおよびスルホランなどの脂肪族スルホキシドおよびスルホン;メチルアセトアミド、ジメチルアセトアミドおよびジメチルホルムアミドなどの脂肪族カルボン酸アミド;ジエチルエーテルおよびアニソールなどの脂肪族エーテルおよび芳香族脂肪族エーテル。さらに、水また水と上述の有機溶媒との混合物も分散剤として用いてもよい。
【0052】
好ましい分散剤は、水、またはアルコール(例えばメタノール、エタノール、i-プロパノールおよびブタノール)などの他のプロトン性溶媒、ならびに水とこれらのアルコールとの混合物であり、水は特に好ましい溶媒である。
【0053】
プロセスの工程b)に利用される分散液は、異質ドープされた導電性ポリマー、対イオンおよび分散剤の他に、界面活性物質、例えばアニオン性界面活性剤、例えばアルキルベンゼンスルホン酸および塩、パラフィンスルホネート、アルコールスルホネート、エーテルスルホネート、スルホスクシネート、リン酸エステル、アルキルエーテルカルボン酸またはカルボキシレート、カチオン性界面活性剤、例えば第四級アルキルアンモニウム塩、非イオン性界面活性剤、例えば直鎖アルコールエトキシレート、オキソアルコールエトキシレート、アルキルフェノールエトキシレートまたはアルキルポリグルコシド、あるいは接着促進剤、例えば有機官能性シランまたはその加水分解生成物、例えば3-グリシドオキシプロピルトリアルコキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシランまたはオクチルトリエトキシシラン、架橋剤、例えばメラミン化合物、ブロック化イソシアネート、官能性シラン、例えばテトラエトキシシラン、(例えばテトラエトキシシランに基づく)アルコキシシラン加水分解生成物、エポキシシラン(3-グリシドオキシプロピルトリアルコキシシラン)-、ポリウレタン、ポリアクリレートもしくはポリオレフィン分散液などの、さらなる添加物をさらに含有することができる。
【0054】
好ましくは、プロセスの工程b)に利用される分散液は、例えば電気伝導率を増大させるさらなる添加剤、例えばエーテル基を含有する化合物、例えばテトラヒドロフラン、ラクトン基を含有する化合物、例えばγ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、アミドまたはラクタム基を含有する化合物、例えばカプロラクタム、N-メチルカプロラクタム、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチルホルムアミド、N-メチルホルムアニリド、N-メチルピロリドン(NMP)、N-オクチルピロリドン、ピロリドン、スルホンおよびスルホキシド、例えばスルホラン(テトラメチレンスルホン)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、糖類または糖誘導体、例えばスクロース、グルコース、フルクトース、ラクトース、糖アルコール、例えばソルビトール、マンニトール、フラン誘導体、例えば2-フランカルボン酸、3-フランカルボン酸、グリセロール、ジグリセロール、トリグリセロールまたはテトラグリセロールを含む。
【0055】
分散液はまた、添加物質として、3つより多いアルキレン単位由来のアルキレングリコール、ジアルキレングリコール、トリアルキレングリコール、ポリアルキレングリコール、ポリグリセロールまたはこれらの化合物の少なくとも2つの混合物を含んでもよい。これに関して、分散液が、少なくとも1つのアルキレングリコール、ポリアルキレングリコール、ポリグリセロールまたはこれらの添加物質の少なくとも2つの混合物を含むことが特に好ましい。
【0056】
エチレングリコールおよびプロピレングリコールがアルキレングリコールとして特に好ましい。好ましいジアルキレングリコール、トリアルキレングリコールまたはポリアルキレングリコールは特に、エチレングリコールおよびプロピレングリコールまたはその2つのランダムコポリマーに基づいたものである。ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールが特に好ましい。ポリアルキレングリコールはまた、分枝であってもよい。ポリアルキレングリコールはさらに、末端基上で非置換であってもよく、すなわち2つの遊離ヒドロキシル基を有するか、または末端基上で1回もしくは2回官能化されてもよい。ポリアルキレングリコールまたはポリアルキレングリコール誘導体は、好ましくは、ゲル浸透クロマトグラフィーによって決定して、100~100,000g/molの範囲、特に好ましくは200~50,000g/molの範囲、最も好ましくは200~5,000の範囲の分子量を有する。ポリエチレングリコールはポリアルキレングリコールとして特に好ましい。可能な化合物は特に、「PEG300」、「PEG400」、「PEG600」、「PEG1000」、「PEG2000」または「PEG4000」という名称で知られているポリエチレングリコールである。「PEG400」および「PEG600」が特に好ましい。
【0057】
添加物質として利用され得る好ましいポリグリセロールは、独国特許出願公開第10 2011 013068号に記載されているこれらのポリグリセロールである。ジグリセロール、トリグリセロール、テトラグリセロール、ペンタグリセロール、ヘキサグリセロールおよび任意に6個より多いグリセロール単位のオリゴマーを含むポリグリセロールが特に好ましい。このようなポリグリセロールは、例えば、「ポリグリセロール-3」(約29wt%のジグリセロール、約42wt%のトリグリセロール、約19wt%のテトラグリセロール、約6wt%のペンタグリセロールおよび約4wt%の6個以上のグリセロール単位のポリグリセロールを含有する)または「ポリグリセロール-4」(約2wt%のジグリセロール、約40wt%のトリグリセロール、約35wt%のテトラグリセロール、約20wt%のペンタグリセロールおよび約8wt%の6個以上のグリセロール単位のポリグリセロールを含有する)という名称でSOLVAY CHEMICALS GmbH、Rheinberg、Germanyから得られる。
【0058】
アルキレングリコール、ポリアルキレングリコールおよび/またはポリグリセロールが特に添加物質として使用される場合、これらの物質はまた、プロセスの工程b)におけるアノード体の少なくとも一部への分散液の導入および分散剤の少なくとも部分的な除去の後のみに、アノード体の少なくとも一部に導入されてもよい。これは、例えば、アノード体を、アルキレングリコール、ポリアルキレングリコールおよび/またはポリグリセロールを含む溶液または分散液に含浸することによって実現され得る。
【0059】
これに関して、プロセスの工程b)に利用される分散液は、各場合、プロセスの工程b)に利用される分散液の総重量に基づいて、0.1~40wt%の範囲、特に好ましくは1~30wt%の範囲、最も好ましくは2~20wt%の範囲の量で、アルキレングリコール、ポリアルキレングリコール、ポリグリセロールまたはこれらの少なくとも2つの混合物を含むことが更に好ましい。
【0060】
プロセスの工程b)に利用される分散液は、添加物質として、国際公開第2009/141209(A1)号の第12頁16~34行に記載されているように、有機溶媒に可溶である1種以上の有機結合剤をさらに含んでもよい。分散液は、1~14のpHを有することができ、1~8のpHが好ましい。腐食に敏感な誘電体、例えば、酸化アルミニウムまたは酸化ニオブなどについては、誘電体が損傷を受けないように、2.5~8のpHを有する分散液が好ましい。
【0061】
pHを調整するために、国際公開第2010/003874(A2)号の第4頁13~32行に記載されているように、例えば、塩基または酸を、添加物質として、プロセスお工程b)に利用される分散液に加えることができる。分散液の膜形成を損なわず、かつより高い温度、例えばはんだ付け温度であるが、揮発性ではなく、これらの条件下で固体電解質の中に留まるこれらの添加物質、例えば2-ジメチルアミノエタノール、2,2’-イミノジエタノールまたは2,2’,2’’-ニトリロトリエタノールなどの塩基およびポリスチレンスルホン酸などの酸が好ましい。
【0062】
プロセスの工程b)に利用される分散液の粘度は、付与の方法に応じて、0.1~1,000mPas(20℃および100s-1のせん断速度で、レオメータを用いて測定される)であることができる。好ましくは、粘度は、1~500mPas、特に好ましくは5~250mPasである。アルミニウム巻回型コンデンサを製造する場合、粘度は、非常に特に好ましくは40~200mPa・sの範囲であり、一方、タンタル電解コンデンサまたはアルミニウム積層コンデンサを製造する場合、粘度は、非常に特に好ましくは5~50mPa・sの範囲である。
【0063】
プロセスの工程b)に利用される分散液の固体含有量は、各場合、分散液の総重量に基づいて、好ましくは0.01~20wt%の範囲、特に好ましくは0.1~10wt%の範囲、最も好ましくは0.25~5wt%の範囲である。PEDOT/PSS(添加物質を有さない)の固体含有量は、分散剤を除去するのに十分に高い温度(しかし、それにより固体を分解しない)にて分散液の乾燥により決定される。
【0064】
アノード体を上記の分散液に含浸した後、プロセスの工程c)において、分散液に含まれる分散剤は、少なくとも部分的に除去または硬化されるので、誘電体、したがってコンデンサ本体を完全または部分的に覆う固体電解質が形成される。これに関して、固体電解質によって誘電体を、好ましくは少なくとも50%、特に好ましくは少なくとも70%、最も好ましくは少なくとも80%覆うことが好ましく、この被覆は、独国特許出願公開第10 2005 043828号に記載されているように、120Hzにて乾燥および湿潤状態においてコンデンサのキャパシタンスの測定によって決定され得る。
【0065】
除去または硬化は、好ましくは分散液から電極体を除去し、それを乾燥することによって実施され、乾燥は、好ましくは20℃~260℃の範囲、特に好ましくは50℃~220℃の範囲、最も好ましくは80℃~200℃の範囲で実施される。プロセスの工程b)およびc)はまた、この形式で、誘電体に堆積される固体電解質の層の厚さまたは特定の要件に対する電極体における電解質の充填の程度に適合するように1回または数回反復されてもよい。
【0066】
本発明に係るプロセスは、ここで、異質ドープされた導電性ポリマーに加えて、自己ドープされた導電性ポリマーもまた、アノード体の少なくとも一部の中にさらに導入され、異質ドープされた導電性ポリマー(プロセスの工程bにおいて導入された分散液に含まれる)および自己ドープされた導電性ポリマーが、原則として各々また、アノード体の少なくとも一部の中に複数回導入されることができ、ここで特にこれらのポリマーが導入される順序が要求され得ることにより特徴付けられる。したがって、特に、自己ドープされた導電性ポリマーは、
I)プロセスの工程b)における分散液の導入前に部分的または同様に完全に、
II)プロセスの工程b)における分散液の導入後でプロセスの工程c)の前に部分的または同様に完全に、
III)プロセスの工程b)における分散液の導入後でプロセスの工程c)の後に部分的または同様に完全に、
IV)分散液に含まれるさらなる成分としてプロセスの工程b)における分散液と一緒に部分的または同様に完全に、
アノード体の少なくとも一部の中に導入されることができる。
【0067】
これに関して、上記のプロセスの変形例I)~IV)、特に、異質ドープされた導電性ポリマーおよび/または自己ドープされた導電性ポリマーは、アノード体の少なくとも一部の中に導入され、所望のように互いに混合され得る。
【0068】
本発明に係るプロセスの第1の特定の実施形態によれば、自己ドープされた導電性ポリマーは、分散液がプロセスの工程b)に係るアノード体の少なくとも一部の中に導入される前に、溶液または分散液(自己ドープされた導電性ポリマーおよび溶媒または分散液を含む)の形態、好ましくは溶液の形態でアノード体の少なくとも一部の中に導入される。これに関して、自己ドープされた導電性ポリマーを含む溶液または分散液の導入および異質ドープされた導電性ポリマーを含む分散液の導入の両方は、各場合、その後にプロセスの工程c)に係る乾燥させる工程(溶媒または分散剤を除去するため)が、1回または複数回、例えば1~40回または1~20回、実施され得る。
【0069】
本発明に係るプロセスの第2の特定の実施形態によれば、自己ドープされた導電性ポリマーは、分散液がプロセスの工程b)に係るアノード体の少なくとも一部の中に導入された後、溶液または分散液(自己ドープされた導電性ポリマーおよび溶媒または分散剤を含む)の形態、好ましくは溶液の形態でアノード体の少なくとも一部の中に導入され、ここで、自己ドープされた導電性ポリマーを含む溶液または分散液が、プロセスの工程c)の前または後に導入され得るが、好ましくはプロセスの工程c)の後に導入される。また、本発明に係るプロセスのこの実施形態において、自己ドープされた導電性ポリマーを含む溶液または分散液の導入および異質ドープされた導電性ポリマーを含む分散液の導入の両方は、各場合、その後にプロセスの工程c)に係る乾燥させる工程(例えば、溶媒または分散剤の除去)が、1回または複数回、例えば1~40回または1~20回、実施され得る。
【0070】
自己ドープされた導電性ポリマーおよび異質ドープされた導電性ポリマーの両方が、溶液または分散液の形態で、例えば含浸によって複数回、アノード体の少なくとも一部の中に導入される場合、これらのポリマーはまた、交互に導入されてもよく(すなわち、例えば第1回の含浸:自己ドープされた導電性ポリマーを含む溶液または分散液の導入、および任意に溶媒または分散剤を除去するためのプロセスの工程c)に係る乾燥させる工程;第2回の含浸:異質ドープされた導電性ポリマーを含む分散液の導入および任意に分散剤を除去するためのプロセスの工程c)に係る乾燥させる工程;第3回の含浸:自己ドープされた導電性ポリマーを含む溶液または分散液の導入および任意に溶媒または分散剤を除去するためのプロセスの工程c)に係る乾燥させる工程;第4回の含浸:異質ドープされた導電性ポリマーを含む分散液の導入および任意に分散剤を除去するためのプロセスの工程c)に係る乾燥させる工程)、また、上述の順序以外の順序が選択されてもよい。自己ドープされた導電性ポリマーを含む溶液または分散液でのx回の含浸(ここでx=1~40、好ましくは1~20)は、各場合、その後のプロセスの工程c)に係る乾燥させる工程、続いて例えば、異質ドープされた導電性ポリマーを含む分散液でのy回の含浸(ここでy=1~40、好ましくは1~20)、各場合、その後のプロセスの工程c)に係る乾燥させる工程もまた、想定される。
【0071】
本発明に係るプロセスの第1および第2の特定の実施形態の両方において、自己ドープされたポリマーおよび異質ドープされたポリマーは、プロセス条件に応じて互いとは別に導入され、適切な場合、自己ドープされた導電性ポリマーを含む層Aおよび異質ドープされた導電性ポリマーを含む層Bおよび対イオンを含む固体電解質層、特にPEDOT/PSSを含む層が並んで存在して得られる。全ての層の順序がここで可能であり、例えば、
- ABBBBB...
- BAAAAA...
- ABABAB...
- BABABA...
- ABB...BBA
- BAA...AAB
- AAA...BBB
- BBB...AAA
などである
【0072】
自己ドープされた導電性ポリマーを含む溶液または分散液が、異質ドープされた導電性ポリマーを含む分散液とは別にアノード体の少なくとも一部の中に少なくとも1回、導入される、本発明に係るプロセスの第1および第2の特定の実施形態は、特に、コンデンサがタンタル電解コンデンサまたはアルミニウム積層コンデンサである場合、有益であることが証明されている。
【0073】
本発明に係るプロセスの第3の特定の実施形態によれば、自己ドープされた導電性ポリマーは、異質ドープされた導電性ポリマーと一緒にアノード体の少なくとも一部の中に導入され、自己ドープされた導電性ポリマーは、異質ドープされた導電性ポリマーおよび対イオンを含む分散液に含まれ(その結果、以下にさらに記載される本発明に係る分散液の形態で利用される)、または自己ドープされた導電性ポリマーは、異質ドープされた導電性ポリマーおよび対イオンを含む分散液と一緒に独立した溶液または分散液の形態でアノード体の少なくとも一部の中に導入され、溶媒または分散剤は次いでプロセスの工程c)によって除去される。また、自己ドープされた導電性ポリマーが異質ドープされた導電性ポリマーと一緒にアノード体の少なくとも一部の中に導入される場合、これらの2つの成分、特に、以下にさらに記載される本発明に係る分散液は、1回または複数回、例えば1~40回または1~20回、導入され得、各々の導入は、好ましくは、各場合、その後に溶媒または分散剤を除去するためのプロセスの工程c)が実施される。
【0074】
本発明に係るプロセスの第1および第2の特定の実施形態と対照的に、本発明に係るプロセスの第3の特定の実施形態において、自己ドープされたポリマーおよび異質ドープされたポリマーが、一緒に、好ましくは、以下にさらに記載される本発明に係る分散液の形態で導入され、自己ドープされた導電性ポリマー、異質ドープされた導電性ポリマーおよび対イオン、特に自己ドープされた導電性ポリマーおよびPEDOT/PSSが、1つ以上の層で一緒に存在し、固体電解質層内で均一に分散している、固体電解質層が得られる。
【0075】
上記の本発明に係るプロセスの特定の実施形態は互いに組み合わされてもよい。
【0076】
したがって、特に、タンタル電解コンデンサに関して、以下の場合、特に有益であることが証明されている。
- 自己導電性ポリマーが、(例えば、1~10回の含浸、特に好ましくは1~5回の含浸、最も好ましくは1回の含浸によって)溶液または分散液(自己ドープされた導電性ポリマーおよび溶媒または分散剤を含む)中で、それ自体で、または例えば、一緒の溶液または分散液(自己ドープされた導電性ポリマー、異質ドープされた導電性ポリマー、対イオンおよび溶媒または分散剤を含む)の形態で異質ドープされた導電性ポリマーと一緒にアノード体の少なくとも一部の中に最初に導入される場合、ならびに
- 異質ドープされた導電性ポリマーが、(例えば1~20回の含浸、特に好ましくは1~10回の含浸によって)溶液または分散液(異質ドープされた導電性ポリマー、対イオンおよび溶媒または分散剤を含む)中でアノード体の少なくとも一部の中に導入される場合。
【0077】
アルミニウム巻回型コンデンサに関して、以下の場合、特に有益であることが証明されている。
- 自己ドープされた導電性ポリマーが、(例えば1~20回の含浸、特に好ましくは1~10回の含浸、最も好ましくは1回の含浸によって)例えば一緒の溶液または分散液(自己ドープされた導電性ポリマー、異質ドープされた導電性ポリマー、対イオンおよび溶媒または分散剤を含む)の形態で異質ドープされた導電性ポリマーと一緒にアノード体の少なくとも一部の中に導入される場合、あるいは
- 自己ドープされた導電性ポリマーが、(例えば1~20回の含浸、特に好ましくは1~10回の含浸、最も好ましくは1回の含浸によって)例えば一緒の溶液または分散液(自己ドープされた導電性ポリマー、異質ドープされた導電性ポリマー、対イオンおよび溶媒または分散剤を含む)の形態で異質ドープされた導電性ポリマーと一緒にアノード体の少なくとも一部の中に最初に導入され、次いで異質ドープされた導電性ポリマーが、(例えば1~20回の含浸、特に好ましくは1~10回の含浸によって)溶液または分散液(異質ドープされた導電性ポリマー、対イオンおよび溶媒または分散剤を含む)中でアノード体の少なくとも一部の中に導入される場合。
【0078】
欧州特許第1122274A1号に記載されているこれらの導電性ポリマーが、特に自己ドープされた導電性ポリマーとして好ましい。好ましくは、これらの自己ドープされた導電性ポリマーは、少なくとも50%の程度、さらにより好ましくは少なくとも75%の程度、さらにより好ましくは少なくとも95%の程度、最も好ましくは100%の程度、式(I)の繰り返し単位
【化2】
(式中、
X、Yは同一または異なり、O、S、N-Rを示し、
Zは、-(CH-CR-(CH-を示し、
は、アリール、C-C18-アルキルまたは水素を示し、
は、水素または-(CH-O-(CH-SO を示し、
は、-(CH-O-(CH-SO を示し、
は、カチオンを示し、
m、nは、同一または異なり、0~3の整数を示し、
sは、0~10の整数を示し、
pは、1~18の整数を示す)
を含む。
【0079】
上記の百分率の数字はこれに関して、自己ドープされた導電性ポリマーにおけるモノマー単位の総数における構造式(I)の単位の数値的含有量を表すことを意図する。
【0080】
適切なカチオンMは、例えばH、Li、Na、K、Rb、CsおよびNH である。特に適切なカチオンはNaおよびKである。
【0081】
構造式(I)の特に好ましいモノマーは、
X、YがOを示し、
Zが、-(CH-CR-(CH-を示し、
が、水素または-(CH-O-(CH-SO を示し、
が、-(CH-O-(CH-SO を示し、
が、カチオンを示し、
m、nが、同じであってもよいし異なっていてもよく、0~3の整数を示し、
sが、0~10の整数を示し、
pが、1~18の整数を示す、
モノマーである。
【0082】
構造式(I)の非常に特に好ましいモノマーは、
X、YがOを示し、
Zが、-(CH)-CR-(CH-を示し、
が、水素を示し、
が、-(CH-O-(CH-SO を示し、
が、NaまたはKを示し、
nが、0または1を示し、
sが、0または1を示し、
pが、3、4または5を示す、
モノマーである。
【0083】
モノマー化合物は公知である。それらの調製は、Chevrotら、J.Electroanal.Chem.1998、443、217-226、Leclercら、Adv.Mater.1997、9、1087-1094およびReynoldsら、Polymer Preprints 1997、38(2)、320に記載されている。酸化重合によって自己ドープされた導電性ポリマーの調製は、例えば、欧州特許第1122274A1号に記載されている水中の適切な酸化剤を用いて実施され得る。
【0084】
非常に特に好ましい自己ドープされた導電性ポリマーの実在の例としては、ポリ(4-(2,3-ジヒドロチエノ-[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イルメトキシ)-1-ブタン-スルホン酸)およびポリ(4-(2,3-ジヒドロチエノ-[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イルメトキシ)-1-プロパンスルホン酸)が挙げられる。
【0085】
自己ドープされた導電性ポリマーが、本発明に係るプロセスにおいて本発明に係る分散液の形態で異質ドープされた導電性ポリマーと一緒に利用されない場合、アノード体の少なくとも一部の中への自己ドープされた導電性ポリマーの導入は、好ましくは、アノード体の中への、自己ドープされた導電性ポリマーの溶液または分散液、好ましくは溶液の導入によって実施される。これに関して、適切な溶媒および分散液は、水、脂肪族、アルコール、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ジアセトンアルコール、エチレングリコールまたはグリセロール、脂肪族ケトン、例えばアセトンおよびメチルエチルケトン、脂肪族ニトリル、例えばアセトニトリルである。本発明によれば、これに関して、自己ドープされた導電性ポリマーが水溶液の形態で利用されることが特に好ましい。
【0086】
溶液または分散液、特にまたは本発明に係る分散液中の自己ドープされた導電性ポリマーの濃度は、各場合、溶液または分散液の総重量に基づいて、好ましくは0.1~30wt%の範囲、さらにより好ましくは0.2~20wt%の範囲、最も好ましくは0.5~10wt%の範囲である。
【0087】
本発明に係るプロセスに関して、自己ドープされた導電性ポリマーが、固体電解質における自己ドープされた導電性ポリマー対異質ドープされた導電性ポリマーの重量比が、100:1~1:100の範囲、特に好ましくは50:1~1:50の範囲、さらにより好ましくは10:1~1:10の範囲(この範囲は特にタンタル電解コンデンサに有益であることが証明されている)、最も好ましくは10:1~1:2の範囲であるような量でアノード体の少なくとも一部の中に導入されることがさらに好ましい。この重量比は、製造後、特に、自己ドープされた導電性ポリマーおよび/または異質ドープされた導電性ポリマーを含む溶液または分散液での最後の含浸後に固体電解質に存在する重量比を意味する。
【0088】
コンデンサ本体がこのように製造された後、それらは当業者に公知の方法および様式によってさらに改変されてもよい。タンタル電解コンデンサの場合、コンデンサ本体は、例えば、独国特許出願公開第10 2004 022674号または独国特許出願公開第10 2009 007594号に記載されているようにポリマー外層ならびに/あるいは独国特許出願公開第10 2005 043828号から公知のグラファイト層および銀層で覆われてもよく、一方、アルミニウム巻回型コンデンサの場合、米国特許第7,497,879号(B2)の教示に従って、コンデンサ本体は、密閉検査ガラスを備え、圧着によって機械的にきつく閉じられるアルミニウムビーカー内に導入される。コンデンサは次いで、公知のように時間が経過することによる誘電体の不具合がなくなり得る。
【0089】
上述の目的を達成することに対する寄与はまた、本発明に係るプロセスによって得ることができる、好ましくは得られたコンデンサによってなされる。好ましくは、このコンデンサは、タンタル電解コンデンサまたはアルミニウムコンデンサ、例えばアルミニウム積層コンデンサまたはアルミニウム巻回型コンデンサである。
【0090】
上述の目的を達成することに対する寄与はまた、電極材料の電極体を含むコンデンサによってなされ、誘電体はこの電極材料の表面を少なくとも部分的に覆い、アノード体を形成し、アノード体は、異質ドープされた導電性ポリマー、異質ドープされた導電性ポリマーに共有結合しない対イオンおよび自己ドープされた導電性ポリマーを含む固体電解質で少なくとも部分的にコーティングされる。
【0091】
このようなコンデンサは、例えば、上記の本発明に係るプロセスによって得ることができる。これに関して、好ましい自己ドープされた導電性ポリマー、異質ドープされた導電性ポリマーおよび異質ドープされた導電性ポリマーに共有結合しない対イオンは、好ましい自己ドープされた導電性ポリマー、異質ドープされた導電性ポリマーおよび異質ドープされた導電性ポリマーに共有結合しない対イオンとして本発明に係るプロセスに関して既に上述されているこれらのポリマーまたは対イオンである。
【0092】
本発明に係るコンデンサの好ましい実施形態によれば、固体電解質における自己ドープされた導電性ポリマー対異質ドープされた導電性ポリマーの重量比は、100:1~1:100の範囲、特に好ましくは50:1~1:50の範囲、さらにより好ましくは10:1~1:10の範囲(この範囲は、特にタンタル電解コンデンサについて有益であることが証明されている)、最も好ましくは10:1~1:2の範囲である。
【0093】
上述の目的を達成することに対するさらなる寄与はまた、本発明に係るプロセスによって得ることができるコンデンサまたは本発明に係るコンデンサを含む電子回路によってもなされる。これに関して、例えば、コンピューター(デスクトップ、ラップトップ、サーバー)の中に、コンピューター周辺機器(例えばPCカード)の中に、携帯用電子装置、例えば携帯電話、デジタルカメラまたは娯楽用電子システムの中に、娯楽用電子機器用システムの中に、例えばCD/DVDプレーヤおよびコンピューターゲーム用コンソールの中に、ナビゲーションシステムの中に、電気通信設備の中に、家電製品の中に、医療技術、例えば除細動器用の医療技術の中に、見出されるものなどの電子回路が言及されるべきである。本発明によれば、自動車用のハイブリッド推進手段または電気推進手段における電子回路の中の電子回路が特に利用され得る。この用途では、コンデンサは、特に中間コンデンサ(DCリンクコンデンサ)としての役割を果たすことができる。
【0094】
上述の目的を達成することに対する寄与はまた、電子回路における、例えば、自動車用のハイブリッド推進手段または電気推進手段における電子回路における中間コンデンサとしての、本発明に係るコンデンサまたは本発明に係るプロセスによって得ることができるコンデンサの使用によってもなされる。
【0095】
上述の目的を達成することに対する寄与はまた、自己ドープされた導電性ポリマー、異質ドープされた導電性ポリマーおよび異質ドープされた導電性ポリマーに共有結合しない対イオンを含む分散液によって達成される。これに関して、好ましい自己ドープされた導電性ポリマー、異質ドープされた導電性ポリマーおよび異質ドープされた導電性ポリマーに共有結合しない対イオンは、同様に、好ましい自己ドープされた導電性ポリマー、異質ドープされた導電性ポリマーおよび異質ドープされた導電性ポリマーに共有結合しない対イオンとして本発明に係るプロセスに関して既に上述されているこれらのポリマーまたは対イオンである。
【0096】
本発明に係る分散液の好ましい実施形態によれば、これは、
(α1)0.1~30wt%、特に好ましくは0.2~20wt%、最も好ましくは0.5~10wt%の自己ドープされた導電性ポリマー、特にPEDOT-S(4-(2,3-ジヒドロチエノ-[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イルメトキシ)-1-ブタンスルホン酸のポリマー);
(α2)0.01~15wt%、特に好ましくは0.5~10wt%、最も好ましくは0.1~5wt%の異質ドープされた導電性ポリマー、特にPEDOT;
(α3)0.01~60wt%、特に好ましくは0.05~40wt%、最も好ましくは0.1~20wt%の対イオン(異質ドープされた導電性ポリマーに共有結合しない)、特にPSS;
(α4)0.5~60wt%、特に好ましくは1~40wt%、最も好ましくは5~20wt%の少なくとも1種の添加物質(成分(α1)~(α3)および(α5)と異なる)、非常に特に好ましくはアルキレングリコール;ならびに
(α5)成分(α1)~(α5)が100wt%の合計となる量で、分散剤、好ましくは水
を含む(wt%データは各場合、分散液の総重量に関連する)。
【0097】
本発明はここで、非限定的な図および実施例を用いて、より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0098】
図1】本発明に係るプロセスによって得ることができるコンデンサの部分の断面図である。これは、通常、アルミニウムなどの多孔質電極材料2から構成される電極体1を有する。電極材料2の表面4において、誘電体3が薄層として形成され、アノード体5が多孔質のままであり、電極材料2の電極体1を含み、誘電体3が形成される。誘電体3の後、任意にさらなる層の後に、固体電解質6の層(例えば、PEDOT/PSS粒子および自己ドープされた導電性ポリマーを含む)があり、コンデンサ本体7は電極材料2の電極体1を含み、誘電体3および固体電解質6が形成される。
【発明を実施するための形態】
【0099】
測定方法
等価直列抵抗
等価直列抵抗(mΩ単位)は、LCRメーター(Agilent 4284A)を用いて、20℃で、100kHzで測定した。
【0100】
キャパシタンス
キャパシタンス(マイクロファラド単位)は、LCRメーター(Agilent 4284A)を用いて、20℃で、120kHzで測定した。
【実施例0101】
調製例1(PEDOT/PSS分散液の調製)
868gの純水および70,000g/molの平均分子量を有する330gのポリスチレンスルホン酸水溶液および3.8wt%の固体含有物を最初に、撹拌器および内部温度計を備えた2lの三ツ口フラスコ内に導入した。反応温度を20から25℃に維持した。5.1gの3,4-エチレンジオキシチオフェンを撹拌しながら加えた。溶液を30分間撹拌した。0.03gの硫酸鉄(III)および9.5gの過硫酸ナトリウムを次いで加え、溶液をさらに24時間撹拌した。反応が終了した後、無機塩を除去するために、100mlの強酸カチオン交換体および250mlの弱塩基アニオン交換体を加え、溶液をさらに2時間撹拌した。イオン交換体を濾過した。ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホネート分散液を、700バールの圧力下で高圧ホモジナイザーで10回、均質化した。分散液を続いて2.5%の固体含有物に濃縮し、次いで1,500バールの圧力下でさらに5回、さらに均質化した。
【0102】
調製例2(固体含有物およびpHの調整)
調製例1からの分散液を、純水を加えることによって2.2%の濃度に希釈し、次いでアンモニア水溶液でpH3に調整した。
【0103】
調製例3(PEDOT-S溶液の調製)
PEDOT-S溶液を調製するために、4-(2,3-ジヒドロチエノ-[3,4-b][1,4]ジオキシン-2-イルメトキシ)-1-ブタンスルホン酸(EDOT-S)のナトリウム塩を、Chevrotら(J.Electroanal.Chem.1998、443、217-226)に記載されているように調製し、モノマーとして利用した。
【0104】
0.496gのEDOT-S(1.5mmol)をアルゴン下で18mlの蒸留水に溶解した。0.97g(6.0mmol)のFeClを次いで一度に加えた。その後、溶液を室温にて8時間撹拌し、100℃にて3時間加熱し、冷却し、ワークアップした。ワークアップのために、溶液を蒸留水で約3wt%に希釈し、9gのLewatit(登録商標)S100および9gのLewatit(登録商標)MP62を加え、混合物を室温にて4時間撹拌した。イオン交換体を濾過した後、2.71%の固体含有量を有するダークブルーのポリマー溶液を得た。
【0105】
調製例4
調製例2からの90gのPEDOT/PSS分散液を10gのエチレングリコールと共に撹拌した。
【0106】
実施例1(本発明に係る分散液の調製)
調製例2からの45gのPEDOT/PSS分散液および調製例3からの45gのPEDOT-S溶液を10gのエチレングリコールと共に撹拌した。
【0107】
実施例2(本発明に係る分散液の調製)
調製例2からの81gのPEDOT/PSS分散液および調製例3からの9gのPEDOT-S溶液を、10gのエチレングリコールと共に撹拌した。
【0108】
調製例5(アルミニウム巻回型コンデンサについての電極体の製造)
131mm×5mmの寸法を有する214Vにて形成される多孔質のアルミニウム箔(アノード箔)および145mm×5mmの寸法を有する多孔質のアルミニウム箔(カソード箔)に各々接触ワイヤを提供し、次いで2つのセルロースセパレータ紙と一緒に巻き、接着テープで固定した。20個のこれらの酸化電極体を製造した。酸化電極体のセパレータ紙を次いで300℃にてオーブン中で炭化した。
【0109】
比較例1(本発明によらない固体電解質層の製造)
調製例5からの酸化電極体を、5分間、50mbarの真空下で調製例4からの分散液中に含浸した。その後、乾燥を120℃にて20分間、次いで150℃にて20分間実施した。含浸および乾燥をさらなる時間、実施した。平均電気値を表1に示す。
【0110】
実施例3(本発明に係るアルミニウム巻回型コンデンサの製造)
調製例5からの酸化電極体を、5分間、50mbarの真空下で実施例1からの分散液中に含浸した。その後、乾燥を120℃にて20分間、次いで150℃にて20分間実施した。含浸および乾燥をさらなる時間、実施した。平均電気値を表1に示す。
【0111】
実施例4(本発明に係るアルミニウム巻回型コンデンサの製造)
調製例5からの酸化電極体を、5分間、50mbarの真空下で実施例2からの分散液中に含浸した。その後、乾燥を120℃にて20分間、次いで150℃にて20分間実施した。含浸および乾燥をさらなる時間、実施した。平均電気値を表1に示す。
【0112】
【表1】
【0113】
調製例6(ポリマー外層のためのPEDOT/PSS分散液の調製)
1,736gの純水および70,000g/molの平均分子量を有する660gの水性ポリスチレンスルホン酸溶液および3.8wt%の固体含有量を、撹拌器および温度計を備える5lのガラス反応器の中に最初に導入した。反応温度を20から25℃に維持した。10.2gの3,4-エチレンジオキシチオフェンを撹拌しながら加えた。溶液を30分間撹拌した。次いで0.06gの硫酸鉄(III)および19gの過硫酸ナトリウムを加え、溶液をさらに24時間撹拌した。反応が終了した後、無機塩を除去するために、200mlの強酸カチオン交換体および500mlの弱塩基アニオン交換体を加え、溶液をさらに2時間撹拌した。イオン交換体を濾過した。得られた分散液は、その後の濃縮によって1.5%の固体含有量を達成した。
【0114】
160gのこの分散液、28gの水、6gのスルホ-ポリエステル(Eastek 1100、固体含有量30%、平均分子量10,000~15,000、Eastman)、8gのジメチルスルホキシド、1gの3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(Silquest A-187、OSi Specialties)および0.4gの湿潤剤(Dynol 604、Air Products)を、撹拌器を備えたガラスビーカー内で1時間激しく混合した。
【0115】
調製例7(架橋剤溶液の調製)
4.0gのp-トルエンスルホン酸一水和物、1.7gの1,10-ジアミノデカンおよび95.5gの水を、撹拌器を備えたガラスビーカー内で激しく混合した。
【0116】
調製例8(タンタル電解コンデンサのための電極体の製造)
18,000μFV/gの比キャパシタンスを有するタンタル粉末を、タンタルワイヤを含んだペレットに圧縮し、1.5mm×2.9mm×4.0mmの寸法を有する多孔質アノード体を形成するために焼結した。これらの多孔質アノード体のうちの5つを、コンデンサ本体を得るために、誘電体を形成するために100Vにてリン酸電解質中で陽極酸化した。
【0117】
調製例9
調製例1からの分散液を、純水を加えることによって2.08%の濃度に希釈した。96gのこの分散液を4gのジメチルスルホキシド(DMSO)と撹拌した。
【0118】
調製例10
調製例3からの溶液を、純水を加えることによって2.08%の濃度に希釈した。96gのこの分散液を4gのジメチルスルホキシド(DMSO)と撹拌した。
【0119】
実施例5(本発明に係る分散液の調製)
調製例9からの100gの溶液を、調製例10からの100gの分散液と撹拌した。
【0120】
比較例2(本発明によらない固体電解質層の製造)(VB2と称される)
調製例8からのコンデンサ本体を、1分間、調製例9からの分散液中に含浸した。その後、乾燥を120℃にて10分間実施した。含浸および乾燥をさらに9回実施した。
【0121】
次いでコンデンサ本体を調製例7からの溶液中に含浸した。その後、乾燥を120℃にて10分間実施した。次いでコンデンサ本体を調製例6からの分散液中に含浸した。その後、乾燥を120℃にて10分間実施した。
【0122】
次いでコンデンサ本体を調製例7からの溶液中に含浸した。その後、乾燥を120℃にて10分間実施した。次いでコンデンサ本体を調製例6からの分散液中に含浸した。その後、乾燥を120℃にて10分間実施した。
【0123】
次いでコンデンサ本体を調製例7からの溶液中に含浸した。その後、乾燥を120℃にて10分間実施した。次いでコンデンサ本体を調製例6からの分散液中に含浸した。その後、乾燥を120℃にて10分間実施した。
【0124】
次いでコンデンサ本体を、このように最終のコンデンサを得るためにグラファイト層、その後、銀層で覆った。
【0125】
比較例3(本発明によらない固体電解質層の製造)(VB3と称される)
コンデンサ本体の処理を比較例2に記載されているように実施したが、調製例10からの溶液を調製例9からの分散液の代わりに使用した。
【0126】
実施例6(B6と称される)
コンデンサ本体の処理を比較例2に記載されているように実施したが、実施例5からの分散液を調製例9からの分散液の代わりに使用した。
【0127】
【表2】
【符号の説明】
【0128】
1 電極体
2 電極材料
3 誘電体
4 表面
5 アノード体
6 固体電解質
7 コンデンサ本体
図1
【手続補正書】
【提出日】2022-08-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)電極材料(2)の電極体(1)を準備する工程であって、誘電体(3)が、アノード体(5)の形成下で前記電極材料(2)の1つの表面(4)を少なくとも部分的に覆う、工程と、
b)分散剤、異質ドープされた導電性ポリマーおよび前記異質ドープされた導電性ポリマーと共有結合しない対イオンを含む分散液を、前記アノード体(5)の少なくとも一部の中に導入する工程と、
c)コンデンサ本体における固体電解質(6)を得ている状態で前記分散剤を少なくとも部分的に除去する工程と、
を含む、コンデンサを製造するためのプロセスであって、
自己ドープされた導電性ポリマーが、前記アノード体(5)の少なくとも一部の中にさらに導入される、プロセス。
【請求項2】
前記異質ドープされた導電性ポリマーがポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記対イオンがポリアニオンとして存在する、請求項1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記ポリアニオンがポリスチレンスルホン酸である、請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
前記分散液が、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸のイオン錯体を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記自己ドープされた導電性ポリマーが、チオフェン環の3位の炭素原子および4位の炭素原子が酸素原子または硫黄原子に結合されているチオフェン繰り返し単位を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
自己ドープされたポリチオフェンが、式(I)
【化1】
(式中、
X、Yは、同一または異なり、O、S、N-Rを表し、
Zは、-(CH-CR-(CH-を表し、
は、アリール、C-C18-アルキルまたは水素を表し、
は、水素または-(CH-O-(CH-SO を表し、
は、-(CH-O-(CH-SO を表し、
は、カチオンを表し、
m、nは、同一または異なり、0~3の整数を表し、
sは、0~10の整数を表し、
pは、1~18の整数を表す)
の繰り返し単位を含む、請求項1~のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
X、Yは、Oを表し、
Zは、-(CH-CR-(CH-を表し、
は、水素または-(CH-O-(CH-SO を表し、
は、-(CH-O-(CH-SO を表し、
は、カチオンを表し、
m、nは、同一または異なり、0~3の整数を表し、
sは、0~10の整数を表し、
pは、1~18の整数を表す、
請求項に記載のプロセス。
【請求項9】
X、Yは、Oを表し、
Zは、-(CH)-CR-(CH-を表し、
は、水素を表し、
は、-(CH-O-(CH-SO を表し、
は、NaまたはKを表し、
nは、0または1を表し、
sは、0または1を表し、
pは、3、4または5を表す、
請求項またはに記載のプロセス。
【請求項10】
前記分散液が、前記プロセスの工程b)に記載される前記アノード体(5)の少なくとも一部の中に導入される前に、前記自己ドープされた導電性ポリマーが、溶液または分散液の形態で前記アノード体(5)の少なくとも一部の中に導入される、請求項1~のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記分散液が、前記プロセスの工程b)に記載される前記アノード体(5)の少なくとも一部の中に導入された後に、前記自己ドープされた導電性ポリマーが、溶液または分散液の形態で前記アノード体(5)の少なくとも一部の中に導入される、請求項1~のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記自己ドープされた導電性ポリマーが、前記プロセスの工程b)に記載される前記アノード体(5)の少なくとも一部の中に導入される前記分散液の中に含まれる、請求項1~のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記固体電解質(6)における自己ドープされたポリマー対異質ドープされたポリマーの重量比が100:1~1:100の範囲である量で、前記自己ドープされた導電性ポリマーが前記アノード体(5)の少なくとも一部の中に導入される、請求項1~12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
導電性ポリマーがその場重合により前記アノード体(5)の中で調製される工程を含まない、請求項1~13のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載のプロセスによって得られる、コンデンサ。
【請求項16】
電極材料(2)の電極体(1)を含むコンデンサであって、誘電体(3)が、前記電極材料(2)の表面(4)を少なくとも部分的に覆い、アノード体(5)を形成し、前記アノード体(5)は、異質ドープされた導電性ポリマー、前記異質ドープされた導電性ポリマーと共有結合しない対イオンおよび自己ドープされた導電性ポリマーを含む固体電解質(6)で少なくとも部分的にコーティングされる、コンデンサ。
【請求項17】
前記異質ドープされた導電性ポリマーが、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)であり、
前記対イオンが、ポリスチレンスルホン酸(PSS)のアニオンであり、
前記自己ドープされた導電性ポリマーが、チオフェン環の3位の炭素原子および4位の炭素原子が酸素原子または硫黄原子に結合されているチオフェン繰り返し単位を含む、請求項16に記載のコンデンサ。
【請求項18】
前記固体電解質(6)における自己ドープされたポリマー対異質ドープされたポリマーの重量比が100:1~1:100の範囲である、請求項16または17に記載のコンデンサ。
【請求項19】
請求項1518のいずれか一項に記載のコンデンサを含む電子回路。
【請求項20】
電子回路における請求項1518のいずれか一項に記載のコンデンサの使用。
【外国語明細書】