IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.の特許一覧

特開2022-166287金属表面上にプラスチックオーバーモールドする方法、及びプラスチック-金属ハイブリッド部品
<>
  • 特開-金属表面上にプラスチックオーバーモールドする方法、及びプラスチック-金属ハイブリッド部品 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022166287
(43)【公開日】2022-11-01
(54)【発明の名称】金属表面上にプラスチックオーバーモールドする方法、及びプラスチック-金属ハイブリッド部品
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/14 20060101AFI20221025BHJP
   C08K 7/14 20060101ALI20221025BHJP
   C08L 67/00 20060101ALI20221025BHJP
   C08L 77/00 20060101ALI20221025BHJP
   C08L 81/02 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
B29C45/14
C08K7/14
C08L67/00
C08L77/00
C08L81/02
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022133209
(22)【出願日】2022-08-24
(62)【分割の表示】P 2019564027の分割
【原出願日】2018-06-11
(31)【優先権主張番号】17176096.0
(32)【優先日】2017-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2017/088639
(32)【優先日】2017-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】503220392
【氏名又は名称】ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】DSM IP ASSETS B.V.
【住所又は居所原語表記】Het Overloon 1, NL-6411 TE Heerlen,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン ダー ブルクト, フランク ピーター テオドルス ヨハネス
(72)【発明者】
【氏名】リャオ, リュオグ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】より高い接合強度及び/又はより低い脆性を示すプラスチック-金属ハイブリッド製品を製造する方法および製品を提供する。
【解決手段】本発明は、ナノ成形技術(NMT)により金属表面上にプラスチックオーバーモールドによってプラスチック-金属ハイブリッド部品を製造する方法であって、成形可能なプラスチック材料が、熱可塑性ポリアミド、又は熱可塑性ポリエステル、又はそれらのブレンド、及びホウ素ケイ素ガラス繊維を含むポリマー組成物である、方法に関する。本発明は、前記方法によって得られるプラスチック-金属ハイブリッド部品であって、金属部品が、熱可塑性ポリアミド、又は熱可塑性ポリエステル、又はそれらのブレンド、及びホウ素ケイ素ガラス繊維を含むポリマー組成物によってオーバーモールドされる、プラスチック-金属ハイブリッド部品にも関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ成形技術(NMT)によって金属表面上にプラスチックオーバーモールドすることによる、プラスチック-金属ハイブリッド部品を製造する方法であって、
(i)ナノサイズ寸法の表面不規則性の表面部分を有する金属基材を提供する工程;
(ii)ポリマー組成物を提供する工程;
(iii)前記金属基材の表面不規則性を有する前記表面部分の少なくとも一部に直接、前記ポリマー組成物を成形することによって、前記金属基材上にプラスチック構造を形成する工程;を含み、
前記ポリマー組成物が、
(A)熱可塑性ポリアミド、ポリフェニレンスルフィド(PPS)及び熱可塑性ポリエステル、又はそれらのブレンドから選択される熱可塑性ポリマー;及び
(B)二酸化ケイ素(SiO)と三酸化二ホウ素(B)とを主に含むケイ素-ホウ素ガラス繊維;を含む、方法。
【請求項2】
前記金属基材が、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金、鉄、鋼、マグネシウム、及びマグネシウム合金からなる群から選択される材料から形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程i)の前に、クロム酸、リン酸、硫酸、シュウ酸、及びホウ酸からなる群から選択される陽極酸化剤を用いて、前記金属基材を陽極酸化する工程を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ケイ素-ホウ素ガラス繊維が、前記ケイ素-ホウ素ガラス繊維の重量に対して少なくとも90重量%の合わせた量で、二酸化ケイ素及び三酸化二ホウ素を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ケイ素-ホウ素ガラス繊維が:
(a)SiO65~85重量%;(b)B15~30重量%;(c)酸化ナトリウム(NaO)又は酸化カリウム(KO)又はそれらの組み合わせ0~4重量%;及び(d)他の成分0~4重量%;からなり;前記重量パーセンテージ(重量%)が、前記ケイ素-ホウ素ガラス繊維の重量に対するパーセンテージである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記組成物が、前記ケイ素-ホウ素ガラス繊維の重量に対して最大で30重量%、好ましくは最大で15重量%の量でEガラス繊維を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記組成物が、
(A)群(A)の前記熱可塑性ポリマー30~90重量%、及び
(B)前記ケイ素-ホウ素ガラス繊維10~70重量%;を含み、
前記重量パーセンテージ(重量%)が、前記組成物の全重量に対するパーセンテージである、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記熱可塑性ポリマー(A)が、
脂肪族ポリアミド、半結晶性半芳香族ポリアミド又は非晶質半芳香族ポリアミド、又はそれらのブレンド、好ましくは半結晶性半芳香族ポリアミドと非晶質半芳香族ポリアミドとのブレンド、又は
ポリブチレンテレフタレート(PBT)、又はポリエチレンテレフタレート(PET)、又はそれらのブレンド、好ましくはPBTとPETとのブレンドを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリマー組成物が、
(A.1)前記半結晶性半芳香族ポリアミド30~70重量%、及び
(A.2)前記非晶質半芳香族ポリアミド10~40重量%;
(B)前記ケイ素-ホウ素ガラス繊維20~70重量%;
を含み、
前記重量パーセンテージ(重量%)が、前記組成物の全重量に対するパーセンテージである、請求項89に記載の方法。
【請求項10】
前記ポリマー組成物が、
(A.3)PBT30~70重量%
(A.4)PET10~40重量%;
(B)前記ケイ素-ホウ素ガラス繊維20~70重量%;
を含み、
前記重量パーセンテージ(重量%)が、前記組成物の全重量に対するパーセンテージである、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記ポリマー組成物が、
(A)前記熱可塑性ポリマー30~80重量%;
(B)ホウ素ケイ素ガラス繊維20~70重量%;
(C)少なくとも1つの他の成分0~30重量%、好ましくは0.1~20重量%;
からなり、
前記重量パーセンテージが、前記組成物の全重量に対するパーセンテージである、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記ポリマー組成物が、レーザーダイレクトストラクチャリング(LDS)添加剤を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
ナノサイズ寸法の表面不規則性を有する表面部分を有する金属部品と接合されたプラスチック材料を含む、プラスチック-金属ハイブリッド部品であって、
前記プラスチック材料が、
(A)熱可塑性ポリアミド、ポリフェニレンスルフィド(PPS)及び熱可塑性ポリエステル、又はそれらのブレンドから選択される熱可塑性ポリマー;及び
(B)二酸化ケイ素(SiO)及び三酸化二ホウ素(B)を主に含むケイ素-ホウ素ガラス繊維;
を含むポリマー組成物である、プラスチック-金属ハイブリッド部品。
【請求項14】
請求項1~4のいずれか一項に記載の方法によって得られる、請求項14に記載のプラスチック-金属ハイブリッド部品。
【請求項15】
前記ポリマー組成物が、請求項5~12のいずれか一項に記載の組成を有する、請求項13又は14に記載のプラスチック-金属ハイブリッド部品。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、ナノ成形技術(NMT)によって金属表面にプラスチックオーバーモールドすることによって、プラスチック-金属ハイブリッド部品を製造する方法に関する。本発明は、ナノ成形技術(NMT)プロセスによって得られるプラスチック-金属ハイブリッド部品にも関し、そのハイブリッド部品は、金属部品の表面部分に接合されたプラスチック材料を含む。
【0002】
ナノ成形技術は、プラスチック材料が金属部品に接合されて、いわゆるプラスチック-金属ハイブリッド部品が形成される技術であり、金属-プラスチック境界面での接合強度が、金属の前処理から得られ、又は金属の前処理によって高められ、その結果、ナノサイズ寸法の表面不規則性を有する表面部分が生じる。かかる不規則性は、約数ナノメートルから数百ナノメートルまでの範囲の寸法を有し、適切には、超微細な凸凹、くぼみ、突起、しぼ及び細孔の形状を有する。
【0003】
NMT金属前処理に関して、様々な技術及び処理工程の様々な組み合わせを適用することができる。主に使用されるNMTプロセスは、いわゆる「T処理」を含むプロセスである。Taisei Plasによって開発されたT処理において、金属シートをアルカリ性溶液に浸すことによって、金属が微細エッチングされる。アルカリ性溶液はT溶液と示され、浸漬工程はT処理工程と示される。適切には、アルカリ性溶液は、アンモニア又はヒドラジンなどの水溶性アミンの水溶液である。一般に、かかる溶液はpH約11で適用される。かかるプロセスは、例えば米国特許出願公開第20060257624A1号明細書、CN1717323A号明細書、CN1492804A号明細書、CN101341023A号明細書、CN101631671A号明細書、及び米国特許出願公開第2014065472A1号明細書に記載されている。最後の文書には、アンモニア水又はヒドラジン溶液中でのエッチング工程後に得られるアルミニウム合金が、20~80nm周期の超微細な凹凸又は20~80nmの超微細なくぼみ又は突起を特徴とする表面を有した。
【0004】
他のNMT金属前処理方法は、陽極処理を含む。陽極処理において、金属は、酸性溶液中で陽極酸化されて、多孔質金属酸化物仕上げを有する腐食層が形成され、プラスチック材料を有する、ある種の相互浸透構造が形成される。かかるプロセスは、例えば米国特許出願公開第20140363660A1号明細書及び欧州特許出願公開第2572876A1号明細書に記載されている。後者の文書には、陽極酸化によって形成されるアルミニウム合金の一例が記載されており、その合金は、穴の開いた表面で覆われており、その開口部は、電子顕微鏡観察で測定される数平均内径10~80nmを有する。
【0005】
これらのプロセスのそれぞれを、複数の工程と組み合わせてもよく、例えば他のエッチング、中和及びすすぎ工程と、且つ/又は金属基材がプラスチック材料でオーバーモールドされる前に金属基材に塗布されるプライマーの使用と組み合わせてもよい。最後に、金属部品が金型内に挿入され、樹脂が射出され、処理表面に直接接合される。
【0006】
米国特許第8858854B1号明細書によれば、陽極処理は、多段階前処理工程を含むNMTプロセスに対する特定の利点を有し、脱脂剤、酸溶液、塩基溶液を含む複数の化学物質浴に金属部品をさらし、最後にT溶液に浸し、希釈水中ですすぐ。米国特許第8858854B1号明細書の用語法において、NMTは、T処理工程を含むプロセスに限定される。
【0007】
本発明において、「ナノ成形技術(NMT)」及び「NMTプロセス」という用語は、ナノサイズ寸法の表面不規則性を有する表面部分の金属が得られる、前処理プロセスにかけられた金属のいずれかのオーバーモールドと理解され、したがって、米国特許第8858854B1号明細書の陽極酸化法及びTaisei PlasのT処理溶液の両方、並びに他の代替法を含む。
【0008】
NMT技術によって製造されるプラスチック-金属ハイブリッド部品で最も広く使用されるポリマーは、ポリブチレンテレフタレート(PBT)及びポリフェニレンスルフィド(PPS)である。米国特許出願公開第2014065472A1号明細書/米国特許第9166212B1号明細書において、樹脂組成物が主成分としてPBT又はPPSを含有し、任意選択的に異なるポリマーと配合され、さらにガラス繊維を10~40質量%含有した場合、それは、アルミニウム合金との非常に強い接合強度を示すことが言及されている。アルミニウム及び樹脂組成物はどちらも板状であり、0.5~0.8cmの面積で互いに結合された状態で、せん断破壊は25~30MPaであった。異なるポリアミドが配合された樹脂組成物の場合には、せん断破壊は20~30MPaであった。米国特許出願公開第2014065472A1号明細書/米国特許第9166212B1号明細書のプラスチック-金属ハイブリッド部品の金属表面を製造するために、「T処理」工程に続いて、更なるアミン吸着工程が適用された。
【0009】
上記の欧州特許出願公開第572876A1号明細書には、PA-66/6T/6I(重量比12/62/26)及びガラス繊維30重量%を含むポリアミド組成物が、異なるNMT金属表面に適用された。金属処理がT処理を含む場合、孔径は25nmであった。陽極処理の場合には、孔径は17nmであった。どちらのハイブリッドシステムについても、結合力は25.5MPaであると測定された。
【0010】
種々のプロセスの縮小化及び自動化の重要性の高まりを鑑みて、異なる部品の機能を統合するため、且つかかるアセンブリにおける異なる部品間の連結を向上させるために、集成製品の部品の数を減らす必要がある。NMTプロセスは、一体化プロセスによって集成されるプラスチック部品と金属部品を組み合わせるのに非常に有用な技術であって、ナノ成形技術を介して適切な結合力に同時に達し、金属表面にプラスチック材料をオーバーモールドすることによって、一工程で成形且つ集成することを含む技術を提供する。
【0011】
これに関して、NMTは、レーザーダイレクトストラクチャリング(LDS)プロセス、ポリマー組成物中のLDS添加剤の活性化によって、プラスチック担体上に導電性パターンが適用されるプロセス、と組み合わせるのに非常に向いている。NMTとLDSを組み合わせたプロセス及び製品は、CN-105694447-A号明細書から知られている。この特許出願には、NMT(ナノ成形技術)に使用され、且つLDS(レーザーダイレクトストラクチャリング)機能を有するポリアミド樹脂組成物が記載されている。この組成物は、ポリアミド、レーザーダイレクトストラクチャリング添加剤、任意選択的に更なる成分、例えばガラス繊維、無機結晶ウィスカ、安定剤、強化剤、及び潤滑剤を含む。ポリアミドは、PA9T、PA6T/6I/66又はPA6T/6などの半芳香族半結晶性ポリアミド(PPA)である。
【0012】
プラスチック材料が繊維強化ポリマー組成物である、プラスチック-金属ハイブリッド部品の問題は一般に、結合力がまだ低すぎる、又は材料が脆すぎる、又はその両方であることである。例えば、耐衝撃性改良剤の添加によって、脆性が向上され得る場合、これは通常、プラスチック部品の剛性、さらにNMT接合強度の著しい低下を引き起こす。さらに、補強剤としてのガラス繊維の有効性は、例えば、二酸化チタンなどの研摩成分、及びレーザーダイレクトストラクチャリング(LDS)添加剤、及び他の硬質粒子充填剤の存在によって低減され得る。
【0013】
したがって、上記の問題が低減された、つまりより高い接合強度及び/又はより低い脆性を示す、プラスチック-金属ハイブリッド部品、及びかかる部品を製造する方法が必要とされている。
【0014】
この目的は、本発明による方法で達成され、且つかかる方法によって得られる、本発明によるプラスチック-金属ハイブリッド部品で達成される。
【0015】
本発明による方法は、ナノ成形技術(NMT)によって金属表面に成形可能なプラスチック材料をオーバーモールドすることによる、プラスチック-金属ハイブリッド部品の製造であって、
(i)ナノサイズ寸法の表面不規則性の表面部分を有する金属基材を提供する工程;
(ii)ポリマー組成物を提供する工程;
(iii)金属基材の表面不規則性を有する表面部分の少なくとも一部に直接、前記ポリマー組成物を成形することによって、金属基材上にプラスチック構造を形成する工程;
を含み、
そのポリマー組成物が、
(A)熱可塑性ポリアミド、PPS又は熱可塑性ポリエステル、又はそのいずれかのブレンドから選択される熱可塑性ポリマー;及び
(B)二酸化ケイ素(SiO)と三酸化二ホウ素(B)を主に含むケイ素-ホウ素ガラス繊維;を含む、製造に関する。
【0016】
本発明の効果は、ケイ素-ホウ素ガラス繊維の代わりに、Eガラスベースの強化用繊維を含む、相当する組成物で製造されたプラスチック-金属ハイブリッド部品と比べて、引張り強さが大きく保たれると共に脆性が低減されると同時に、しばしば耐衝撃性及び結合力も向上することである。
【0017】
本明細書において、ポリマー組成物は適切には、ナノサイズ寸法の表面不規則性を有する表面部分の少なくとも一部に成形される。金属基材は、ナノサイズ寸法の表面不規則性を有する複数の表面部分も有し得て、少なくとも1つの表面部分、又はその少なくとも一部が、ポリアミド組成物でオーバーモールドされる。
【0018】
ナノサイズ寸法の表面不規則性を有する表面部分を有する金属基材については、NMT技術に適したいずれかの金属基材が本発明において用いられ得る。
【0019】
本発明による方法で使用される金属基材の製造に適用される前処理プロセスは、ナノサイズ寸法の表面不規則性を有する表面部分を製造するのに適したいずれかのプロセスであり得る。適切には、かかるプロセスは、複数の前処理工程を含む。適切には、NMTプロセスで適用される前処理工程は、
- 脱脂剤で処理する工程;
- アルカリ性エッチング材料で処理する工程;
- 酸中和剤で処理する工程;
- 水溶性アミンの水溶液で処理する工程;
- 酸化的成分で処理する工程;
- 陽極酸化工程;及び
- プライマー材料で処理する工程;
からなる群から選択される1つ又は複数の前処理工程を含む。
【0020】
NMTプロセスが、水溶性アミンの水溶液で処理する(いわゆるT処理)工程を含む実施形態において、水溶液は好ましくは、水性アンモニウム又はヒドラジン溶液である。
【0021】
NMTプロセスが、金属基材を陽極酸化する前処理工程を含む実施形態において、この目的に適したいずれかの陽極酸化剤を使用することができる。好ましくは、陽極酸化剤は、クロム酸、リン酸、硫酸、シュウ酸、及びホウ酸からなる群から選択される。プライマー材料が使用される場合、前記プライマー材料は適切には、オルガノシラン、チタン酸塩、アルミン酸塩、リン酸塩、及びジルコン酸塩からなる群から選択される。
【0022】
前処理プロセスは適切には、次の前処理工程の間に1つ又は複数のすすぎ工程を含む。
【0023】
ナノサイズの表面不規則性は適切には、凹凸、くぼみ、突起、しぼ又は細孔、又はそのいずれかの組み合わせを含む。また適切には、ナノサイズの表面不規則性は、10~100nmの範囲の寸法を有する。寸法は、その不規則性の一部の幅、長さ、高さ、直径を含む。
【0024】
本発明による方法における金属基材は原則的に、前処理プロセスによって改質され得、且つプラスチック材料によってオーバーモールドされ得る、いずれかの金属基材であることができる。金属基材は通常、予定される用途の必要条件に応じて選択され、形成されるだろう。適切には、金属基材は、打抜板金基材である。また、その金属基材が構成される金属は、自由に選択され得る。好ましくは、金属基材は、アルミニウム、アルミニウム合金(例えば5052アルミニウム)、チタン、チタン合金、鉄、鋼(例えばステンレス鋼)、マグネシウム、及びマグネシウム合金からなる群から選択される材料から形成されるか、又はその材料からなる。
【0025】
本発明による組成物は、本明細書においてケイ素-ホウ素ガラス繊維と呼ばれる、二酸化ケイ素(SiO)及び三酸化二ホウ素(B)を主に含む、ガラス繊維を含む。主に含むの「主に」という用語は、本明細書において二酸化ケイ素(SiO)及び三酸化二ホウ素(B)がガラス繊維中の主成分であると理解される。ケイ素-ホウ素ガラス繊維は、かかる成分以外の更なる成分を含み得るが、仮に存在する場合には、かかる成分は、二酸化ケイ素及び二酸化ホウ素のそれぞれよりも少ない、合わせた量で存在する。適切には、ケイ素-ホウ素ガラス繊維は、ケイ素-ホウ素ガラス繊維の重量に対して少なくとも90重量%の合わせた量で、二酸化ケイ素及び三酸化二ホウ素を含む。特定の実施形態において、ケイ素-ホウ素ガラス繊維は、(a)SiO65~85重量%;(b)B2O315~30重量%;(c)酸化ナトリウム(NaO)又は酸化カリウム(KO)、又はそれらの組み合わせ0~4重量%;及び(d)他の成分0~4重量%からなる。更なる実施形態において、ケイ素-ホウ素ガラス繊維は、(a)SiO70~80重量%;(b)B18~27重量%;(c)NaO又はKO、又はそれらの組み合わせ0~3重量%;及び(d)他の成分0~3重量%からなる。その一例は、(a)SiO70~80重量%;(b)B20~25重量%;(c)NaO又はKO、又はそれらの組み合わせ0~2重量%;及び(d)他の成分0~2重量%;からなるケイ素-ホウ素ガラス繊維である。本明細書において、重量パーセンテージ(重量%)、つまり(a)~(d)の重量パーセンテージは、ケイ素-ホウ素ガラス繊維の重量に対するパーセンテージである。
【0026】
繊維は本明細書において、少なくとも10のアスペクト比L/W(長さ/幅)を有する材料であると理解される。繊維は通常、長さ、幅及び厚さの寸法を有する細長い本体を有し、前記本体の長さ寸法は、幅及び厚さの横断寸法よりもかなり長い。本明細書において「幅」という用語は、横断方向の断面で測定される最も長い寸法と理解され、本明細書において厚さという用語は、横断方向の断面で測定される最も短い寸法と理解される。
【0027】
ケイ素-ホウ素ガラス繊維は、円形又は不規則な形状(つまり、異なる幅及び厚さを有する非円形)、例えば豆形、楕円形、長楕円形、又は厚さよりも大きな幅を有する長方形の様々な断面を有し得る。さらに具体的には、本発明による組成物中のケイ素-ホウ素繊維は適切には、少なくとも15の長さ/幅(L/W)比によって定義されるアスペクト比を有する。特定の実施形態において、ガラス繊維は、少なくとも20の数平均アスペクト比L/Wを有する。ガラス繊維は適切には、円形断面を有する。本明細書において、その幅及び厚さは同じであり、共に直径と呼ばれる。繊維、例えば非円形及びフラットガラス繊維は、様々な寸法の断面も有し得る。適切には、繊維は、範囲5~20μm、より詳細には7~15μm、例えば8μm、又は10μm又は13μmの直径の円形断面を有する。その代わりとして、繊維は、範囲5~30μm、より詳細には7~20μm、例えば8μm、又は10μm、又は13μm、又は15μmの幅の非円形断面を有する。非円形断面のガラス繊維は、例えば、1/2~1/6のアスペクト比を有し得る。本明細書において、アスペクト比は、断面の最も短い直径(厚さT)と最も長い直径(幅W)のT/W比である。
【0028】
プロセスにおいて使用されるポリマー組成物及び本発明によるプラスチック-金属ハイブリッド部品は、広い範囲にわたって異なる量で、熱可塑性ポリアミド、熱可塑性ポリエステル、又はPPS、又はそのいずれかのブレンドから選択される熱可塑性ポリマー(本明細書において成分Aとも呼ばれる)及びケイ素-ホウ素繊維(本明細書において成分Bとも呼ばれる)を含み得る。適切には、組成物は、範囲30~90重量%の量で、例えば範囲35~80重量%、より詳細には40~70重量%の量で熱可塑性ポリマー(A)を含む。ケイ素-ホウ素ガラス繊維は適切には、範囲10~70重量%、例えば範囲20~60重量%の量で存在する。ケイ素-ホウ素ガラス繊維の量は、例えば、25重量%、30重量%、40重量%、50重量%又は65重量%である。本明細書において、重量パーセンテージ(重量%)は、組成物の全重量に対するパーセンテージである。
【0029】
本発明で使用されるポリマー組成物は、熱可塑性ポリアミド、熱可塑性ポリエステル及びポリフェニレンスルフィド(PPS)、又はそれらのブレンドから選択される熱可塑性ポリマー(A)を含む。本明細書において、熱可塑性ポリマー(A)は適切には、
- 脂肪族ポリアミド、半結晶性半芳香族ポリアミド又は非晶質半芳香族ポリアミド、又はそれらのブレンド、好ましくは半結晶性半芳香族ポリアミドと非晶質半芳香族ポリアミドのブレンド、又は
- ポリブチレンテレフタレート(PBT)、又はポリエチレンテレフタレート(PET)、又はそれらのブレンド、好ましくはPBTとPETのブレンドを含む。
【0030】
熱可塑性ポリマーにおける「熱可塑性」という用語は本明細書において、範囲180℃~360℃の融解温度(Tm)を有する半結晶性ポリマー、又は範囲125℃~300℃のガラス転移温度(Tg)を有する非晶質ポリマーと理解される。ケイ素-ホウ素ガラス繊維と組み合わせた組成物中の熱可塑性ポリマーの効果は、溶融混合プロセスによって組成物を製造することができること、且つNMT成形品を製造するために組成物を溶融加工することができることである。
【0031】
半結晶性ポリアミド及び半結晶性ポリエステルにおける「半結晶性」という用語は本明細書において、ポリアミド又はポリエステルが、融解温度(Tm)及び融解エンタルピー(ΔHm)、並びにガラス転移温度(Tg)を有することと理解される。本明細書において、半結晶性ポリアミド、並びに半結晶性ポリエステルは、少なくとも5J/g、好ましくは少なくとも10J/g、またさらに好ましくは少なくとも25J/gの融解エンタルピーを有する。5J/g未満の融解エンタルピーを有するポリマーは非晶質ポリマーであると理解される。
【0032】
「融解エンタルピー」(ΔHm)という用語は本明細書において、N雰囲気内で予備乾燥させた試料について、ISO-11357-1/3,2011に準拠して、予備乾燥された試料について、N雰囲気中で加熱及び冷却速度20℃/分でDSC法によって測定される融解エンタルピーと理解される。本明細書において(ΔHm)は、第2加熱サイクルにおける融解ピーク下の面積から計算されている。
【0033】
「融解温度」という用語は本明細書において、ISO-11357-1/3,2011に準拠して、予備乾燥された試料について、N雰囲気中で加熱及び冷却速度20℃/分で示差走査熱量測定(DSC)法によって測定される温度と理解される。本明細書においてTmは、第2加熱サイクルにおける最も高い融解ピークのピーク値からの温度である。
【0034】
「ガラス転移温度」(Tg)という用語は本明細書において、ISO-11357-1/2,2011に準拠して、予備乾燥された試料について、N雰囲気中で加熱及び冷却速度20℃/分でDSC法によって測定される温度と理解される。本明細書において、Tgは、第2加熱サイクルに関する親熱曲線の変曲点に対応する親熱曲線の1次導関数(温度に関する)のピークの値から計算されている。
【0035】
本発明による方法の、且つ本発明によるプラスチック-金属ハイブリッド部品の好ましい一実施形態において、ポリマー組成物は、半結晶性半芳香族ポリアミド(sc-PPA)と非晶質半芳香族ポリアミド(am-PPA)のブレンドを含む。本明細書において、sc-PPA及びam-PPAは、広い範囲にわたって異なる量で使用され得る。その利点は、半結晶性半芳香族ポリアミド(sc-PPA)を含むが、非晶質半芳香族ポリアミド(am-PPA)を含まない相当する組成物と比較して、プラスチック-金属ハイブリッド部品の結合力が向上することである。
【0036】
半芳香族ポリアミドとは本明細書において、芳香族基を含有する少なくとも1つのモノマーと、少なくとも1つの脂肪族又は脂環式モノマーとを含むモノマーから誘導されるポリアミドと理解される。適切には、本発明で使用される半芳香族ポリアミドは、芳香族基を含有するモノマー約10~約75モル%から誘導される。したがって、好ましくは、残りのモノマーの約25~約90モル%が脂肪族及び/又は脂環式モノマーである。
【0037】
半結晶性半芳香族ポリアミドは適切には、約270℃以上の融解温度を有する。好ましくは、融解温度(Tm)は少なくとも280℃、さらに好ましくは280~350℃の範囲、又はより良くは300~340℃である。適切には、半結晶性半芳香族ポリアミドは、少なくとも15J/g、好ましくは少なくとも25J/g、さらに好ましくは少なくとも35J/gの融解エンタルピーを有する。本明細書において、融解エンタルピーは、半結晶性半芳香族ポリアミドの重量に対して表される。ポリアミドにおける芳香族モノマー、例えばテレフタル酸及び/又は短鎖ジアミンのより高い含有量を使用することによって、より高い融解温度及びより高いTgを一般に達成することができる。ポリアミド成形用組成物を製造する当業者であれば、かかるポリアミドを製造且つ選択することができるだろう。
【0038】
芳香族基を含有する適切なモノマーの例は、テレフタル酸及びその誘導体、イソフタル酸及びその誘導体、ナフタレンジカルボン酸及びその誘導体、C~C20芳香族ジアミン、p-キシリレンジアミン及びm-キシリレンジアミンである。
【0039】
好ましくは、本発明による組成物は、テレフタル酸又はその誘導体のうちの1つを含むモノマーから誘導される半結晶性半芳香族ポリアミドを含む。
【0040】
半結晶性半芳香族ポリアミドはさらに、1種又は複数種の異なるモノマー、芳香族、脂肪族又は脂環式モノマーのいずれかを含有し得る。半芳香族ポリアミドがさらにそれから誘導され得る、脂肪族又は脂環式化合物の例としては、脂肪族及び脂環式ジカルボン酸、並びにその誘導体、脂肪族C~C20アルキレンジアミン及び/又はC~C20脂環式ジアミン、及びアミノ酸及びラクタムが挙げられる。適切な脂肪族ジカルボン酸は、例えば、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸及び/又はドデカン2酸である。適切なジアミンとしては、ブタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン;2-メチルペンタメチレンジアミン;2-メチルオクタメチレンジアミン;トリメチルヘキサメチレン-ジアミン;1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン;1,10-ジアミノデカン及び1,12-ジアミノドデカンが挙げられる。適切なラクタム及びアミノ酸の例は、11-アミノドデカン酸、カプロラクタム、及びラウロラクタムである。
【0041】
適切な半結晶性半芳香族ポリアミドの例としては、ポリ(m-キシレンアジポアミド)(ポリアミドMXD,6)、ポリ(ドデカメチレンテレフタルアミド)(ポリアミド12,T)、ポリ(デカメチレンテレフタルアミド)(ポリアミド10,T)、ポリ(ノナメチレンテレフタルアミド)(ポリアミド9,T)、ヘキサメチレンアジポアミド/ヘキサメチレンテレフタルアミドコポリアミド(ポリアミド6,T/6,6)、ヘキサメチレンテレフタルアミド/2-メチルペンタメチレンテレフタルアミドコポリアミド(ポリアミド6,T/D,T)、ヘキサメチレンアジポアミド/ヘキサメチレンテレフタルアミド/ヘキサメチレンイソフタルアミドコポリアミド(ポリアミド6,6/6,T/6,I)、ポリ(カプロラクタム-ヘキサメチレンテレフタルアミド)(ポリアミド6/6,T)、ヘキサメチレンテレフタルアミド/ヘキサメチレンイソフタルアミド(6,T/6,I)コポリマー、ポリアミド10,T/10,12、ポリアミド10T/10,10等が挙げられる。
【0042】
好ましくは、半結晶性半芳香族ポリアミドは、PA-XT又はPA-XT/YT表記法によって表されるポリフタルアミドであり、そのポリアミドは、テレフタル酸(T)及び1つ又は複数の直鎖状脂肪族ジアミンから誘導される反復単位で構成される。その適切な例は、PA-8T、PA-9T、PA-10T、PA-11T、PA5T/6T、PA4T/6T、及びそのいずれかのコポリマーである。
【0043】
本発明の好ましい実施形態において、半結晶性半芳香族ポリアミドは、5,000g/molを超える、好ましくは7,500~50,000g/mol、さらに好ましくは10,000~25,000g/molの範囲の数平均分子量(Mn)を有する。これは、組成物が機械的性質と流動性の良好なバランスを有するという利点を有する。
【0044】
適切な非晶質半芳香族ポリアミドの例は、PA-XI(Xは、脂肪族ジアミンである)、及びその非晶質コポリアミド(PA-XI/YT)であり、例えばPA-6I及びPA-8I、及びPA-6I/6T又はPA-8I/8T(例えばPA-6I/6T70/30)などである。好ましくは、非晶質半芳香族ポリアミドは、非晶質PA-6I/6Tを含む、又はからなる。
【0045】
好ましい実施形態において、ポリマー組成物は、
(A.1)半結晶性半芳香族ポリアミドを30~70重量%;
(A.2)非晶質半芳香族ポリアミドを10~40重量%;
(B)ケイ素-ホウ素ガラス繊維を20~70重量%;
を含み、重量パーセンテージ(重量%)は、組成物の全重量に対するパーセンテージである。
【0046】
他の好ましい実施形態において、ポリマー組成物は、PBTとPETのブレンドを含む。その効果は、ケイ素-ホウ酸塩ガラス繊維の次に、ポリエステル成分としてPBTを含み、PETを含まない相当する組成物と比べて、金属部品とプラスチック部品との境界面での結合力が増加することである。
【0047】
適切には、PBT、PET及びケイ素-ホウ素ガラス繊維は、以下の量:
(A.3)PBT30~80重量%、
(A.4)PET10~40重量%、及び
(B)ケイ素-ホウ素ガラス繊維10~70重量%
で、ポリマー組成物によって含まれる。
【0048】
本明細書において、重量パーセンテージ(重量%)は、組成物の全重量に対するパーセンテージであり、成分A~Bの合計は最大で100重量%である。
【0049】
熱可塑性ポリマー(A)及びケイ素-ホウ素繊維(B)の次に、組成物は他の成分を含み得る。
【0050】
組成物は、成分A及びBの次に、1種又は複数種の更なる成分を含み得る。かかる成分は、補助添加剤及びプラスチック-金属ハイブリッド部品での使用に適した他のいずれかの成分から選択され得る。その量は、広い範囲にわたって様々であり得る。その1種又は複数種の更なる成分は共に、成分Cと呼ばれる。
【0051】
これに関して、組成物は適切には、補強剤、難燃剤、難燃相乗剤、及び他の特性の向上に適した当業者に公知の熱可塑性成形用組成物の補助添加剤から選択される少なくとも1種類の成分を含む。適切な補助添加剤としては、酸捕捉剤、可塑剤、安定剤(例えば、熱安定剤、酸化的安定剤又は酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤及び化学安定剤など)、加工助剤(例えば、離型剤、核剤、潤滑剤、発泡剤など)、顔料及び着色剤(例えば、カーボンブラック、他の顔料、染料など)及び帯電防止剤が挙げられる。
【0052】
本明細書において、補強剤は適切には、繊維又は充填剤、又はそれらの組み合わせを含む。より詳細には、繊維及び充填剤は好ましくは、無機材料からなる材料から選択される。その例としては、以下の繊維強化材:ガラス繊維、炭素繊維、及びその混合物が挙げられる。組成物が含み得る適切な無機充填剤の例としては、ガラスビーズ、ガラスフレーク、カオリン、粘土、タルク、マイカ、珪灰石、炭酸カルシウム、シリカ及びチタン酸カリウムのうちの1つ又は複数が挙げられる。
【0053】
繊維強化材、及び繊維強化材の下で本明細書に記載のガラス繊維は、ケイ素-ホウ素ガラス繊維とは異なる繊維強化材及びガラス繊維であることを意味することに留意のこと。その例はEガラス繊維である。
【0054】
組成物がEガラス繊維を含む場合には、好ましくはEガラス繊維は、ケイ素-ホウ素ガラス繊維の重量に対して最大で30重量%、好ましくは最大で15重量%の量で存在する。
【0055】
上述のように、繊維は本明細書において、少なくとも10のアスペクト比L/W(長さ/幅)を有する材料であると理解される。適切には、繊維補強剤は、少なくとも15、好ましくは少なくとも20のL/Dを有する。充填剤は本明細書において、10未満のアスペクト比L/Wを有する材料であると理解される。適切には、無機充填剤は、5未満のL/Wを有する。アスペクト比L/Wにおいて、Lは、個々の繊維又は粒子の長さであり、Wは、個々の繊維又は粒子の幅である。
【0056】
適切には、成分Cの量は0~30重量%の範囲である。それに応じて、AとBを合わせた量は適切には、少なくとも70重量%である。本明細書において、すべての重量パーセンテージ(重量%)が、組成物の全重量に対するパーセンテージである。
【0057】
好ましい実施形態において、本発明による方法で使用され、且つ製造されるそのNMT成形品において使用される組成物は:
(A)熱可塑性ポリマー30~80重量%;
(B)ホウ素ケイ素ガラス繊維20~70重量%;
(C)少なくとも1つの他の成分0~30重量%、好ましくは0.1~20重量%;
からなる。
【0058】
本明細書において、重量パーセンテージ(重量%)は、組成物の全重量に対するパーセンテージであり、A~Dの合計は100重量%である。
【0059】
他の成分Cの総量は、例えば約1~2重量%、約5重量%、約10重量%、又は約20重量%であり得る。好ましくは、組成物は、少なくとも1つの更なる成分を含み、Cの量は、0.1~20重量%、さらに好ましくは0.5~10重量%、又はさらに1~5重量%の範囲である。それに応じて、A及びBは、80~99.9重量%、90~99.5重量%、又は95~99重量%の範囲の合わせた量で存在する。
【0060】
本発明による方法の特定の好ましい実施形態において、ポリマー組成物は、レーザーダイレクトストラクチャリング(LDS)添加剤を含む。ケイ素-ホウ素ガラス繊維と併せてLDS添加剤を含む組成物の効果は、Eガラスベースの強化用繊維を含む、相当する組成物と比べて、引張り強さが大きく保たれると共に引張伸びが増加していることである。
【0061】
本発明による方法では適切には、NMT接合プロセスの工程とレーザーダイレクトストラクチャリング(LDS)プロセスの工程を組み合わせる。この組み合わせは好ましい実施形態を構成する。この実施形態に従って、プロセスは、工程(i)~(iii)の次に、
(iv)金属基材上に形成されたプラスチック構造の表面部分にレーザービームをかけ、それによってレーザービームがかけられた表面部分が活性化される工程;及び
(v)工程(iv)で得られた活性化表面部分を含むプラスチック-金属ハイブリッド部品を無電解めっきプロセスにかけて、それによって、活性化表面部分上に金属ベースの導電性パターンが形成される工程;
を含む。
【0062】
LDSプロセスに関して、その目的は、レーザーエッチング加工表面の形成、及びそれに続くめっきプロセス中にめっき金属層を形成することによって、成形品上に導電路を作ることである。導電路は、無電解めっきプロセスによって、例えば銅めっきプロセスなどの標準プロセスの適用によって形成することができる。使用され得る他の無電解めっきプロセスとしては、限定されないが、金めっき、ニッケルめっき、銀めっき、亜鉛めっき、スズめっき等が挙げられる。かかるプロセスにおいて、次のめっきプロセスのために、レーザー照射によってポリマー表面が活性化される。LDS添加剤を含む物品がレーザーにかけられた時に、その表面が活性化される。理論に束縛されることなく、レーザーで活性化される間に、金属錯体は金属原子核へと崩壊すると思われる。レーザーは部品上に回路パターンを描き、埋め込み金属粒子を含有する粗面が残される。これらの粒子はめっきプロセスの核として作用し、メタライゼーションプロセスにおいてメタライゼーション層の付着を可能にする。めっき層のめっき速度及び付着は、重要な評価基準である。
【0063】
LDS添加剤は、レーザーダイレクトストラクチャリングプロセスで組成物を使用することができるように選択される。LDSプロセスにおいて、LDS添加剤を含む熱可塑性組成物で製造された物品にレーザービームを照射して、熱可塑性組成物の表面にてLDS添加剤からの金属原子を活性化する。したがってLDS添加剤は、レーザービームを照射すると、金属原子が活性化され且つ照射され、且つレーザービームが照射されていない部分では、金属原子が照射されないように選択される。さらに、LDS添加剤は、レーザービームを照射した後にエッチング部分がめっきされて、導電性構造を形成することができるように選択される。本明細書で使用される「めっきすることができる」とは、レーザーエッチング部分上に実質的に均一な金属めっき層をめっきすることができ、且つレーザーパラメーターの広いプロセス窓を示す、材料を意味する。
【0064】
本発明において有用なLDS添加剤の例としては、限定されないが、スピネルベースの金属酸化物及び銅塩、又は前述のLDS添加剤の少なくとも1つを含む組み合わせが挙げられる。適切な銅塩の例は、水酸化リン酸銅、リン酸銅、硫酸銅、チオシアン酸銅(I)である。スピネルベースの金属酸化物は一般に、重金属混合物をベースとし、例えば式CuCr2O4の銅クロム酸化物スピネル、ニッケルフェライト、例えば式NiFe2O4のスピネル、亜鉛フェライト、例えば式ZnFe2O4のスピネル、及びニッケル亜鉛フェライト、例えば式ZnNi(1-x)Fe2O4(xは0~1の数である)のスピネルなどである。
【0065】
好ましい実施形態において、LDS添加剤は、重金属混合物酸化物スピネル、より詳細には銅クロム酸化物スピネル又はニッケル亜鉛フェライト、又はそれらの組み合わせである。適切には、ニッケル亜鉛フェライトは、式ZnNi(1-x)Fe2O4(xは、0.25~0.75の範囲の数である)のスピネルである。
【0066】
LDS添加剤は適切には、範囲1.0~10重量%の量で存在する。より詳細には、その量は、組成物の全重量に対して、2~9.5重量%の範囲、又は3~9重量%の範囲、又は4~8.5重量%の範囲である。
【0067】
本発明は、ナノ成形技術(NMT)プロセスによって得られる金属部品の表面部分に接合された、プラスチック材料を含むプラスチック-金属ハイブリッド部品にも関する。本発明によるプラスチック-金属ハイブリッド部品において、プラスチック材料は、
(A)熱可塑性ポリアミド、ポリフェニレンスルフィド(PPS)及び熱可塑性ポリエステル、又はそれらのブレンドから選択される熱可塑性ポリマー;及び
(B)二酸化ケイ素(SiO)及び三酸化二ホウ素(B)を主に含む、ケイ素-ホウ素ガラス繊維;
を含むポリマー組成物、又は上述のそのいずれかの特定の、若しくは好ましい実施形態である。
【0068】
本発明によるプラスチック-金属ハイブリッド部品は、本発明による方法、又は本明細書において上述のその特定の若しくは好ましい実施形態、又は修正形態によって得られる、いずれかの金属ハイブリッド部品であり得る。
【0069】
特に好ましい実施形態において、プラスチック-金属ハイブリッド部品は、ISO19095に準拠した方法によって23℃及び引張速度10mm/分にて測定された、40~70MPaの範囲、例えば45~65MPaの範囲の、金属部品とプラスチック材料との結合力を有する。結合力は、例えば約50MPa、又は約55MPa以下、又は前記値の間、又は前記値を超える力であり得る。結合力が高いほど、製品設計者はプラスチック-金属ハイブリッド部品をより汎用的に、且つ柔軟にデザインすることができる。
【0070】
本発明によるプラスチック-金属ハイブリッド部品及びその種々の実施形態は適切には、医療分野、自動車産業、航空宇宙産業、軍事産業、アンテナ、センサー、セキュリティーハウジング、及びコネクターにおいて使用される。したがって、本発明は、本発明によるプラスチック-金属ハイブリッド部品を含む、アンテナ、センサー、セキュリティーハウジング、及びコネクターにも関する。本発明は特に、電気及び電子機能が構造金属部品と一体化される用途に、例えばモバイル電子デバイス用の金属バックフレーム及びミドルフレームと一体化されるアンテナ又はセンサーに適している。
【0071】
本発明はさらに、以下の実施例及び比較実験でさらに例証される。
【0072】
[材料]
sc-PPA-A 半結晶性半芳香族ポリアミド、PA6T/4T/66ベース、融解温度325℃、ガラス転移温度125℃;
PBT ポリブチレンテレフタレート、m-クレゾール中で相対溶液粘度(RSV)1.85を有するグレード
GF-A Eガラス繊維(φ10μm)、熱可塑性成形組成物に対して標準グレード
GF-B ケイ素-ホウ素ガラス繊維(φ10μm)、(SiO 75重量%;B 22重量%;他の酸化物3重量%)
LDS添加剤 CuCrOxスピネル(Shephardブラック)
その他 補助添加剤:熱安定剤(HS)及びカラーマスターバッチCabot PA3785(カーボンブラック)(MB)
金属プレート アルミニウムプレート、グレードAI6063、測定値18mm×45mm×1.6mm;エタノールで脱脂し、アルカリ性溶液でエッチングし、酸性溶液で中和し、且つアンモニア水溶液で微細エッチング(いわゆる、T処理)することを含むプロセスによって予備処理された。
【0073】
[組成物の製造]
sc-PPAをベースとする2種類のガラス繊維強化組成物及びPBT及びLDS添加剤をベースとする2種類のガラス繊維強化組成物を、表1の比較実験A及び実施例Iの配合に従って製造した。標準配合条件を用いて二軸スクリュー押出機で製造を行った。
【0074】
[比較実験A及び実施例Iによる組成物での金属プレートのオーバーモールド]
140℃に設定された金型に金属プレートを入れた後に、金属プレートをオーバーモールドし、ポリアミド組成物の融解温度を20℃超える溶融温度で射出成形機からポリアミド組成物を射出することによって、試験試料を作成した。
【0075】
ポリアミド組成物を射出成形した後、したがって金属ハイブリッド部品の形成後に、得られた金属-プラスチックハイブリッド部品を取り出した。
【0076】
[比較実験B及び実施例IIの組成物での金属プレートのオーバーモールド]
90℃に設定された金型に金属プレートを入れた後に、金属プレートをオーバーモールドし、270℃の溶融温度で射出成形機からPBT/LDS組成物を射出することによって、試験試料を作成した。
【0077】
PBT/LDS組成物を射出成形した後、したがって金属ハイブリッド部品の形成後に、得られた金属-プラスチックハイブリッド部品を取り出した。
【0078】
試験試料は以下の寸法を有した:プレートのサイズは18mm×45mm×1.6mmであった。プラスチック部品のサイズは10mm×45mm×3mmであった。重なっている接合部分は0.482cmであった。金属部品とプラスチック部品の形状及び相対的な位置を図1に概略的に示す。
【図面の簡単な説明】
【0079】
図1】試験試料の概略図であり、黒色の部品(A)がプラスチック部品であり、灰色の部品(B)が金属部品である。
【0080】
[試験方法]
[溶液相対粘度]
PBTのRSV(溶液相対粘度)をISO1628-5に準拠して分析した。この方法では、毛管粘度計を用いたm-クレゾール中の希釈溶液中のPBTの粘度の決定が記載されている。PBT試料を135℃で15分間溶解し、m-クレゾール中で希釈し;濃度は、25℃のm-クレゾール100g中に1グラムであった。m-クレゾールの流下時間及びPBT溶液の流下時間を25℃で測定した。これらの測定値からRSVを計算した。
【0081】
[接合強度の試験法]
23℃及び引張速度10mm/分にてISO19095に準拠した方法によって、プラスチック-金属アセンブリにおける接着境界面の接合強度を測定した。その結果は表1に含まれている。
【0082】
【表1】

図1
【手続補正書】
【提出日】2022-09-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【外国語明細書】