(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022166291
(43)【公開日】2022-11-01
(54)【発明の名称】免疫を再構成するための造血ニッチの再現
(51)【国際特許分類】
A61K 38/18 20060101AFI20221025BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20221025BHJP
A61L 27/54 20060101ALI20221025BHJP
A61L 27/56 20060101ALI20221025BHJP
A61K 9/00 20060101ALI20221025BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20221025BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20221025BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20221025BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20221025BHJP
A61K 38/20 20060101ALI20221025BHJP
A61K 45/08 20060101ALI20221025BHJP
A61L 27/52 20060101ALI20221025BHJP
A61L 27/20 20060101ALI20221025BHJP
A61L 27/18 20060101ALI20221025BHJP
A61L 27/16 20060101ALI20221025BHJP
A61L 27/24 20060101ALI20221025BHJP
A61L 27/22 20060101ALI20221025BHJP
【FI】
A61K38/18
A61P37/02
A61L27/54
A61L27/56
A61K9/00
A61K9/06
A61K47/36
A61K38/16
A61K38/17
A61K38/20
A61K45/08
A61L27/52
A61L27/20
A61L27/18
A61L27/16
A61L27/24
A61L27/22
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022133258
(22)【出願日】2022-08-24
(62)【分割の表示】P 2018537510の分割
【原出願日】2017-02-06
(31)【優先権主張番号】62/292,288
(32)【優先日】2016-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.プルロニック
(71)【出願人】
【識別番号】507044516
【氏名又は名称】プレジデント アンド フェローズ オブ ハーバード カレッジ
(71)【出願人】
【識別番号】514291680
【氏名又は名称】ザ ジェネラル ホスピタル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ニサーグ ジェイ. シャー
(72)【発明者】
【氏名】ティン-ユ シー
(72)【発明者】
【氏名】アンジェロ マオ
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド ジェイ. ムーニー
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド ティー. スカデン
(57)【要約】
【課題】免疫を再構成するための造血ニッチの再現の提供。
【解決手段】1種または複数種の細胞分化因子および1種または複数種の成長因子を含む足場材料(例えば、多孔性のアルギネートヒドロゲル足場)を用いて骨髄間質を再現する組成物および関連方法が開示される。そのような方法および組成物は、移植された細胞の生着を改善できるならびに造血幹細胞移植後のリンパ球の発生および適応免疫の再構成を選択的に駆動できる異所性の小結節または部位の形成を促進する。本発明は、例えば、多孔性の植え込み可能な足場材料、1種または複数種の成長因子および1種または複数種の分化因子ならびに任意選択で1種または複数種のホーミング因子を含む、組成物を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2016年2月6日に出願された米国仮出願第62/292,288号の利益を主張し、その教示全体が本明細書に参照によって組み込まれる。
【0002】
政府援助
本発明は、国立衛生研究所によって授与された補助金番号NIH HL129903、NIH EB015498およびNIH EB014703、ならびに国立科学財団によって授与されたNSF1000099416のもとの政府援助により行われた。政府は、本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
造血幹細胞移植(HSCT)を受けた患者における長期間の免疫不全は、依然として、多発性骨髄腫および白血病などの生命を脅かす血液または骨髄の疾患を管理する際の最も重大な障害の1つである。移植の前に、レシピエントは、罹患細胞を破壊するために、コンディショニングの細胞傷害性放射線照射および化学療法レジメンを受ける。そのコンディショニングプロセスの副作用が、適応免疫系のTおよびB細胞が破壊された結果としての重度のリンパ球減少症である。深刻な移植後の免疫不全は、T細胞数およびB細胞数の激減ならびにそれらの多様性の低下を特徴とし、1~2年間持続し得る。免疫不全に関連する重度の日和見感染症(約30%)、がんの再発(急性骨髄性白血病の場合、>50%)および移植片対宿主病(GVHD)(約40%)が、HSCTを受けた患者における最も一般的な合併症であり、罹患および死亡の原因である。
【0004】
HSCT後の免疫系の再構成を改善するために有用な新規の組成物および方法が必要とされている。HSCTに関連するリスクを低下させることおよび患者の転帰を改善することができる組成物および方法も必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の要旨
被験体、例えば、幹細胞移植後の被験体の免疫系の再構成を補助するために有用な新規の組成物および関連する方法が、本明細書中に開示される。そのような組成物は、移植された幹細胞および前駆細胞の生着を高め、およびそれによって被験体の免疫系の再構成を補助するために、被験体に投与され得る。
【0006】
ある特定の実施形態において、本明細書中に開示される組成物は、被験体に投与され得るかまたはその他の方法で被験体に植え込まれ得る(例えば、被験体のリンパ節のまたはリンパ節の周囲の1つまたはそれを超える部位の皮下に植え込まれ得る)1種または複数種の足場材料(例えば、多孔性の植え込み可能な足場材料)を含む。そのような組成物は、1種または複数種の成長因子、1種または複数種のホーミング因子および1種または複数種の分化因子をさらに含み得る。
【0007】
ある特定の態様において、足場材料は、ヒドロゲル(例えば、クリオゲル(cryogel))であるかまたはそれを含む。ある特定の実施形態において、足場材料は、骨誘導性である。ある特定の実施形態において、足場材料は、アルギネート(例えば、陰イオン性アルギネート)を含む。いくつかの実施形態において、足場材料は、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、PLGAポリマー、アルギネートおよびアルギネート誘導体、ポリカプロラクトン、リン酸カルシウム系材料、ゼラチン、コラーゲン、フィブリン、ヒアルロン酸、ラミニンリッチゲル、アガロース、天然多糖類および合成多糖類、ポリアミノ酸、ポリペプチド、ポリエステル、ポリ酸無水物、ポリホスファジン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(アルキレンオキシド)、ポリ(アリルアミン)(PAM)、ポリ(アクリレート)、改変スチレンポリマー、プルロニックポリオール、ポロキサマー(polyoxamers)、ポリ(ウロン酸)、ポリ(ビニルピロリドン)およびそれらの任意の組み合わせまたは共重合体からなる群より選択される。
【0008】
本明細書中に開示される組成物および足場材料は、1種または複数種の成長因子を送達するための(例えば、インビボにおいて1種または複数種の成長因子を送達するための)キャリアまたはビヒクルとして有用である。組成物の投与後または植え込み後に、そのような組成物に含まれる1種または複数種の成長因子は、投与された足場材料上または投与された足場材料の周囲において組織(例えば、骨組織)の形成を促進し、それによって、小結節を形成する。ある特定の態様において、その成長因子の1種または複数種は、骨形成タンパク質(BMP)(例えば、BMP-2)を含む。例えば、その成長因子の1種または複数種は、BMP-2、BMP-4、BMP-6、BMP-7、BMP-12、BMP-14、TGF-β、IGF-1、FGF-2およびPDGFからなる群より選択され得る。いくつかの実施形態において、その成長因子の1種または複数種は、足場材料に被包され得る(例えば、被包されて、約7~14日間にわたって足場材料から放出され得る)。いくつかの実施形態において、成長因子のそのような1種または複数種(例えば、BMP-2)は、長期間(例えば、約7~30日間またはそれより長い期間、約17~18日間)にわたって足場材料から放出される。
【0009】
本明細書中に開示される組成物および足場材料は、1種または複数種の分化因子のためのキャリアまたはビヒクルとしても働き得る。ある特定の態様において、企図される分化因子は、幹細胞または前駆細胞(例えば、移植されたHSC)から1種または複数種の所望の細胞型への分化を誘導または促進する。例えば、その分化因子の1種または複数種は、本明細書中に開示される組成物に組み込まれて、移植された幹細胞または前駆細胞からリンパ系細胞への分化を促進し得る。いくつかの実施形態において、その分化因子の1種または複数種は、Notch受容体に結合する(例えば、その分化因子の1種または複数種は、Notch-1、Notch-2、Notch-3およびNotch-4からなる群より選択されるNotch受容体に結合し得る)。ある特定の態様において、その分化因子の1種または複数種は、Delta様1、Delta様3、Delta様4、Jagged1およびJagged2からなる群より選択される。
【0010】
いくつかの実施形態において、その分化因子の1種または複数種は、サイトカイン(例えば、インターロイキン-7(IL-7)およびインターロイキン-15(IL-15)からなる群より選択されるサイトカイン)を含む。いくつかの実施形態において、そのサイトカインの1種または複数種は、足場材料に被包され得る。ある特定の態様において、そのサイトカインの1種または複数種は、長期間(例えば、約7~30日間またはそれより長い期間、約17~18日間)にわたって足場材料から放出される。
【0011】
ある特定の実施形態において、その分化因子の1種または複数種は、足場材料に共有結合的に結合されている。例えば、ある分化因子は、アルギネート足場材料から放出されるのではなく、アルギネート骨格に共有結合的に結合され、被験体に組成物を植え込んだ後に形成する小結節内に保持され得る。分化因子を足場材料に共有結合的に結合するかまたは連結することによって、そのような分化因子は、被験体に組成物を投与した後に形成する小結節内に保持され、ゆえに、本明細書中で企図されるような移植された幹細胞または前駆細胞の分化を促進するために利用可能である。ある特定の実施形態において、1種または複数種の分化因子は、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)および1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)化学を利用して、足場材料に結合体化される。当該分野で公知の分化因子を共有結合的に結合するかまたは連結する任意の方法を用いてよく、それらの方法は、限定されない。“Bioconjugate Techniques Bioconjugate Techniques(Third Addition)”,Greg T.Hermanson,Academic,Greg T.Hermanson,Academic Press,2013 Press,2013を参照のこと。
【0012】
ある特定の実施形態において、本明細書中に開示される組成物および足場材料は、1種または複数種のホーミング因子を含む。ある特定の態様において、本明細書中に開示される組成物にそのようなホーミング因子を含めることにより、移植された幹細胞および/または前駆細胞(例えば、HSC)の、植え込まれた組成物または小結節へのホーミングが促進される。ある特定の態様において、そのようなホーミング因子は、移植された幹細胞または前駆細胞(例えば、HSC)の、植え込まれた組成物または小結節への浸潤を促進する。いくつかの実施形態において、そのホーミング因子の1種または複数種は、幹細胞分化因子(SDF-1)を含む。ある特定の実施形態において、そのホーミング因子の1種または複数種は、上記材料に被包されている。ある特定の実施形態において、そのホーミング因子の1種または複数種は、長期間(例えば、約7~30日間またはそれより長い期間、約17~18日間)にわたって上記材料から放出される。
【0013】
いくつかの実施形態において、約0.01nmol~1000nmol、約0.1nmol~100nmolまたは1nmol~約10nmolの1種または複数種の成長因子、1種または複数種のホーミング因子および1種または複数種の分化因子が、足場材料に結合体化される。
【0014】
いくつかの実施形態において、本発明は、免疫系の再構成の補助または支援を必要とする被験体の免疫系の再構成を補助または支援する方法に関し、そのような方法は、投与された足場材料上または投与された足場材料の周囲において組織の形成を促進して小結節を形成する1種または複数種の成長因子;その小結節への移植された幹細胞または前駆細胞の浸潤を促進する1種または複数種のホーミング因子;および移植された幹細胞または前駆細胞からリンパ系細胞への分化を促進する1種または複数種の分化因子を含む足場材料を含む組成物をその被験体に投与することによって、その被験体の免疫系の再構成を補助するかまたは支援する工程を含む。いくつかの実施形態において、その被験体は、血液障害を処置するために細胞傷害性放射線照射(cytoxic radiation)および/または化学療法を受けたことがある。
【0015】
ある特定の実施形態において、本明細書中に開示される本発明は、異所性造血幹細胞ニッチの形成を必要とする被験体において異所性造血幹細胞ニッチを形成する方法に関し、そのような方法は、投与された足場材料上または投与された足場材料の周囲において組織の形成を促進して小結節を形成する1種または複数種の成長因子;その小結節への移植された造血幹細胞の浸潤を促進する1種または複数種のホーミング因子;および移植された幹細胞または前駆細胞から1種または複数種のリンパ系細胞または骨髄系細胞への分化を促進する1種または複数種の分化因子を含む足場材料を含む組成物をその被験体に投与することによって、その被験体において異所性造血幹細胞ニッチを形成する工程を含む。
【0016】
なおも他の実施形態において、本発明は、幹細胞ニッチにおける移植された造血幹細胞の生着の改善を必要とする被験体の、幹細胞ニッチにおける移植された造血幹細胞の生着を改善する方法に関し、その方法は、投与された足場材料上または投与された足場材料の周囲において組織の形成を促進して小結節を形成する1種または複数種の成長因子;その小結節への移植された造血幹細胞の浸潤を促進する1種または複数種のホーミング因子;および移植された幹細胞または前駆細胞から1種または複数種のリンパ系細胞または骨髄系細胞への分化を促進する1種または複数種の分化因子(例えば、CD4+、CD8+およびMac-1+/GR-1+リンパ系細胞または骨髄系細胞のうちの1種または複数種の)を含む足場材料を含む組成物をその被験体に投与することによって、その被験体の幹細胞ニッチにおける移植された造血幹細胞の生着を改善する工程を含む。
【0017】
ある特定の実施形態において、本明細書中に開示される本発明は、生着すべき移植された幹細胞および前駆細胞のための部位の増加(例えば、1つまたはそれを超える部位の数または体積の増加)を必要とする被験体において、生着すべき移植された幹細胞および前駆細胞のための部位を増加させる方法に関し、そのような方法は、投与された足場材料上または投与された足場材料の周囲において組織の形成を促進して小結節を形成する1種または複数種の成長因子;その小結節への移植された幹細胞および前駆細胞の浸潤を促進する1種または複数種のホーミング因子;および移植された幹細胞および前駆細胞から1種または複数種のリンパ系細胞または骨髄系細胞(例えば、CD4+、CD8+およびMac-1+/GR-1+リンパ系細胞または骨髄系細胞のうちの1種または複数種)への分化を促進する1種または複数種の分化因子を含む足場材料を含む組成物をその被験体に投与することによって、その被験体において生着すべき移植された幹細胞および前駆細胞の部位を増加させる工程を含む。
【0018】
ある特定の態様において、本発明の方法に従って使用するための企図される足場材料は、ヒドロゲル材料(例えば、クリオゲル材料)を含む。いくつかの実施形態において、足場材料は、アルギネート(例えば、陰イオン性アルギネートを含む足場材料)を含む。いくつかの実施形態において、足場材料は、骨誘導性である。ある特定の実施形態において、足場材料は、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、PLGAポリマー、アルギネートおよびアルギネート誘導体、ポリカプロラクトン、リン酸カルシウム系材料、ゼラチン、コラーゲン、フィブリン、ヒアルロン酸、ラミニンリッチゲル、アガロース、天然多糖類および合成多糖類、ポリアミノ酸、ポリペプチド、ポリエステル、ポリ酸無水物、ポリホスファジン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(アルキレンオキシド)、ポリ(アリルアミン)(PAM)、ポリ(アクリレート)、改変スチレンポリマー、プルロニックポリオール、ポロキサマー、ポリ(ウロン酸)、ポリ(ビニルピロリドン)およびそれらの任意の組み合わせまたは共重合体からなる群より選択される。
【0019】
本明細書中に開示される組成物および方法は、通常、被験体に組成物を投与する工程を企図する。ある特定の態様において、そのような投与工程は、組成物を被験体に植え込む工程を含む(例えば、組成物は皮下に植え込まれ得る)。例えば、いくつかの実施形態において、本明細書中に開示される組成物は、幹細胞移植に先だって(例えば、幹細胞移植の約5日前、7日前、10日前、14日前、18日前、21日前、24日前、28日前、30日前、35日前、42日前またはそれより前)、被験体のリンパ節またはリンパ節の周囲の1つまたはそれを超える部位に皮下投与され得る。
【0020】
前述の方法のいずれかに従って使用するための組成物は、1種または複数種の成長因子を含み得る。例えば、そのような成長因子(例えば、BMP-2)は、足場材料によって被包され得、投与された組成物においてまたはその周囲において、小結節(例えば、骨小結節)の形成を促進し得る。ある特定の態様において、その成長因子の1種または複数種は、骨形成タンパク質(BMP)を含む。いくつかの実施形態において、その成長因子の1種または複数種は、BMP-2、BMP-4、BMP-6、BMP-7、BMP-12およびBMP-14からなる群より選択される。ある特定の態様において、その成長因子の1種または複数種は、上記材料に被包されている。ある特定の態様において、その成長因子の1種または複数種は、長期間(例えば、約7~30日間またはそれより長い期間)にわたって上記材料から放出される。
【0021】
前述の方法のいずれかに従って使用するための組成物は、1種または複数種の分化因子も含み得る。そのような分化因子は、インビボにおいて、移植された幹細胞および前駆細胞(例えば、移植されたHSC)の分化を促進するために使用され得る。例えば、いくつかの態様において、その分化因子の1種または複数種は、インビボにおいて、移植された幹細胞および前駆細胞(例えば、移植されたHSC)のリンパ球産生を促進する。
【0022】
ある特定の態様において、その分化因子の1種または複数種は、Notch受容体に結合する組成物を含む。ある特定の態様において、Notch受容体は、Notch-1、Notch-2、Notch-3およびNotch-4からなる群より選択される。いくつかの実施形態において、その分化因子の1種または複数種は、Delta様1、Delta様3、Delta様4、Jagged1およびJagged2からなる群より選択される。
【0023】
いくつかの実施形態において、その分化因子の1種または複数種は、サイトカインを含む。例えば、その分化因子の1種または複数種は、IL7およびIL-15からなるサイトカインの群から選択され得る。
【0024】
いくつかの実施形態において、その分化因子の1種または複数種(例えば、サイトカイン)は、上記材料に被包されている。いくつかの実施形態において、その分化因子の1種または複数種(例えば、サイトカイン)は、約7~30日間にわたって上記材料から放出される。あるいは、いくつかの実施形態において、その分化因子の1種または複数種は、上記材料に共有結合的に結合されている。
【0025】
前述の方法のいずれかに従って使用するための組成物は、1種または複数種のホーミング因子も含み得る。いくつかの実施形態において、そのホーミング因子の1種または複数種は、幹細胞分化因子(SDF-1)を含む。ある特定の実施形態において、そのホーミング因子の1種または複数種は、上記材料に被包されている。いくつかの実施形態において、そのホーミング因子の1種または複数種は、約7~30日間にわたって上記材料から放出される。
【0026】
本明細書中に開示される組成物および方法は、被験体(例えば、投与または植え込みを必要とする被験体)における投与または植え込みに適している。例えば、そのような組成物および方法は、幹細胞移植を受けたことがある被験体および/または免疫無防備状態の被験体の処置に有用であり得る。
【0027】
本発明の上記で論じられたならびに他の多くの特徴および付随する利点は、以下の本発明の詳細な記載を参照することによってより理解されるようになる。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
多孔性の植え込み可能な足場材料、1種または複数種の成長因子および1種または複数種の分化因子ならびに任意選択で1種または複数種のホーミング因子を含む、組成物。
(項目2)
前記材料が、ヒドロゲルである、項目1に記載の組成物。
(項目3)
前記材料が、アルギネートを含む、項目1~2に記載の組成物。
(項目4)
前記材料が、陰イオン性アルギネートを含む、項目1~3に記載の組成物。
(項目5)
前記材料が、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、PLGAポリマー、アルギネートおよびアルギネート誘導体、ポリカプロラクトン、リン酸カルシウム系材料、ゼラチン、コラーゲン、フィブリン、ヒアルロン酸、ラミニンリッチゲル、アガロース、天然多糖類および合成多糖類、ポリアミノ酸、ポリペプチド、ポリエステル、ポリ酸無水物、ポリホスファジン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(アルキレンオキシド)、ポリ(アリルアミン)(PAM)、ポリ(アクリレート)、改変スチレンポリマー、プルロニックポリオール、ポロキサマー、ポリ(ウロン酸)、ポリ(ビニルピロリドン)およびそれらの任意の組み合わせまたは共重合体からなる群より選択される、項目1~2に記載の組成物。
(項目6)
前記成長因子の1種または複数種が、骨形成タンパク質(BMP)を含む、項目1~5に記載の組成物。
(項目7)
前記成長因子の1種または複数種が、BMP-2、BMP-4、BMP-6、BMP-7、BMP-12およびBMP-14からなる群より選択される、項目1~6に記載の組成物。
(項目8)
前記成長因子の1種または複数種が、BMP-2を含む、項目1~6に記載の組成物。(項目9)
前記成長因子の1種または複数種が、前記材料に被包されている、項目1~8に記載の組成物。
(項目10)
前記成長因子の1種または複数種が、約7~30日間にわたって前記材料から放出される、項目1~8に記載の組成物。
(項目11)
前記分化因子の1種または複数種が、Notch受容体に結合する、項目1~10に記載の組成物。
(項目12)
前記Notch受容体が、Notch-1、Notch-2、Notch-3およびNotch-4からなる群より選択される、項目11に記載の組成物。
(項目13)
前記分化因子の1種または複数種が、Delta様1、Delta様3、Delta様4、Jagged1およびJagged2からなる群より選択される、項目1~12に記載の組成物。
(項目14)
前記分化因子の1種または複数種が、前記材料に共有結合的に結合されているか、または該材料に共有結合的に結合されたつなぎ鎖に共有結合的に結合されている、項目1~13に記載の組成物。
(項目15)
前記分化因子の1種または複数種が、サイトカインを含む、項目1~14に記載の組成物。
(項目16)
前記サイトカインが、インターロイキン-7(IL-7)を含む、項目15に記載の組成物。
(項目17)
前記サイトカインが、前記材料に被包されている、項目15に記載の組成物。
(項目18)
前記サイトカインが、約7~30日間にわたって前記材料から放出される、項目1~17に記載の組成物。
(項目19)
前記ホーミング因子の1種または複数種が、幹細胞分化因子(SDF-1)を含む、項目1~18に記載の組成物。
(項目20)
前記ホーミング因子の1種または複数種が、前記材料に被包されている、項目1~19に記載の組成物。
(項目21)
前記ホーミング因子の1種または複数種が、約7~30日間にわたって前記材料から放出される、項目1~20に記載の組成物。
(項目22)
免疫系の再構成を必要とする被験体の免疫系の再構成を補助する方法であって、該方法は、
投与された足場材料上または投与された足場材料の周囲において組織の形成を促進して小結節を形成する1種または複数種の成長因子;
移植された幹細胞からリンパ系細胞への分化を促進する1種または複数種の分化因子;および任意選択で
該小結節への移植された幹細胞の浸潤を促進する1種または複数種のホーミング因子
を含む該足場材料を含む組成物を該被験体に投与することによって、
該被験体の該免疫系の再構成を補助する工程
を含む、方法。
(項目23)
異所性造血幹細胞ニッチの形成を必要とする被験体において異所性造血幹細胞ニッチを形成する方法であって、該方法は、
投与された足場材料上または投与された足場材料の周囲において組織の形成を促進して小結節を形成する1種または複数種の成長因子;
移植された幹細胞から1種または複数種のリンパ系細胞または骨髄系細胞への分化を促進する1種または複数種の分化因子;および任意選択で
該小結節への移植された造血幹細胞の浸潤を促進する1種または複数種のホーミング因子を含む該足場材料を含む組成物を該被験体に投与することによって、
該被験体において異所性造血幹細胞ニッチを形成する工程
を含む、方法。
(項目24)
幹細胞ニッチにおける移植された造血幹細胞の生着の改善を必要とする被験体の、幹細胞ニッチにおける移植された造血幹細胞の生着を改善する方法であって、該方法は、
投与された足場材料上または投与された足場材料の周囲において組織の形成を促進して小結節を形成する1種または複数種の成長因子;
移植された該幹細胞から1種または複数種のリンパ系細胞または骨髄系細胞への分化を促進する1種または複数種の分化因子;および任意選択で
該小結節への移植された該造血幹細胞の浸潤を促進する1種または複数種のホーミング因子
を含む該足場材料を含む組成物を該被験体に投与することによって、
該被験体の該幹細胞ニッチにおける移植された該造血幹細胞の生着を改善する工程
を含む、方法。
(項目25)
生着すべき移植された幹細胞のための部位の増加を必要とする被験体において、生着すべき移植された幹細胞のための部位を増加させる方法であって、該方法は、
投与された足場材料上または投与された足場材料の周囲において組織の形成を促進して小結節を形成する1種または複数種の成長因子;
移植された該幹細胞から1種または複数種のリンパ系細胞または骨髄系細胞への分化を促進する1種または複数種の分化因子;および任意選択で
該小結節への移植された該幹細胞の浸潤を促進する1種または複数種のホーミング因子
を含む該足場材料を含む組成物を該被験体に投与することによって、
該被験体において生着すべき移植された該幹細胞のための部位を増加させる工程
を含む、方法。
(項目26)
前記足場材料が、ヒドロゲル材料を含む、項目22~25に記載の方法。
(項目27)
前記足場材料が、アルギネートを含む、項目22~26に記載の方法。
(項目28)
前記足場材料が、陰イオン性アルギネートを含む、項目22~27に記載の方法。
(項目29)
前記足場材料が、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、PLGAポリマー、アルギネートおよびアルギネート誘導体、ポリカプロラクトン、リン酸カルシウム系材料、ゼラチン、コラーゲン、フィブリン、ヒアルロン酸、ラミニンリッチゲル、アガロース、天然多糖類および合成多糖類、ポリアミノ酸、ポリペプチド、ポリエステル、ポリ酸無水物、ポリホスファジン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(アルキレンオキシド)、ポリ(アリルアミン)(PAM)、ポリ(アクリレート)、改変スチレンポリマー、プルロニックポリオール、ポロキサマー、ポリ(ウロン酸)、ポリ(ビニルピロリドン)およびそれらの任意の組み合わせまたは共重合体からなる群より選択される、項目22~25に記載の方法。
(項目30)
前記被験体への前記組成物の投与が、該被験体における該組成物の植え込みを含む、項目22~29に記載の方法。
(項目31)
前記組成物が、皮下に植え込まれる、項目30に記載の方法。
(項目32)
前記成長因子の1種または複数種が、骨形成タンパク質(BMP)を含む、項目22~31に記載の方法。
(項目33)
前記成長因子の1種または複数種が、BMP-2、BMP-4、BMP-6、BMP-7、BMP-12およびBMP-14からなる群より選択される、項目22~32に記載の方法。
(項目34)
前記成長因子の1種または複数種が、BMP-2を含む、項目22~32に記載の方法。
(項目35)
前記成長因子の1種または複数種が、前記材料に被包されている、項目22~34に記載の方法。
(項目36)
前記成長因子の1種または複数種が、約7~30日間にわたって前記材料から放出される、項目22~35に記載の方法。
(項目37)
前記分化因子の1種または複数種が、Notch受容体に結合する組成物を含む、項目22~36に記載の方法。
(項目38)
前記Notch受容体が、Notch-1、Notch-2、Notch-3およびNotch-4からなる群より選択される、項目37に記載の方法。
(項目39)
前記分化因子の1種または複数種が、Delta様1、Delta様3、Delta様4、Jagged1およびJagged2からなる群より選択される、項目22~38に記載の方法。
(項目40)
前記分化因子の1種または複数種が、前記材料に共有結合的に結合されているか、または該材料に共有結合的に結合されたつなぎ鎖に共有結合的に結合されている、項目22~39に記載の方法。
(項目41)
前記分化因子の1種または複数種が、サイトカインを含む、項目22~40に記載の方法。
(項目42)
前記サイトカインが、インターロイキン-7(IL-7)を含む、項目41に記載の方法。
(項目43)
前記サイトカインが、前記材料に被包されている、項目22~42に記載の方法。
(項目44)
前記サイトカインが、約7~30日間にわたって前記材料から放出される、項目22~43に記載の方法。
(項目45)
前記ホーミング因子の1種または複数種が、幹細胞分化因子(SDF-1)を含む、項目22~44に記載の方法。
(項目46)
前記ホーミング因子の1種または複数種が、前記材料に被包されている、項目22~45に記載の方法。
(項目47)
前記ホーミング因子の1種または複数種が、約7~30日間にわたって前記材料から放出される、項目22~46に記載の方法。
(項目48)
前記分化因子の1種または複数種が、移植された前記幹細胞においてリンパ球産生を促進する、項目22~47に記載の方法。
(項目49)
前記被験体が、幹細胞移植を受けたことがある、項目22~48に記載の方法。
(項目50)
前記被験体が、免疫無防備状態である、項目22~49に記載の方法。
(項目51)
前記リンパ系細胞および骨髄系細胞の1種または複数種が、CD4+、CD8+およびMac-1+/GR-1+である、項目22~50に記載の方法。
【0028】
特許または出願ファイルは、色つきで作成された少なくとも1つの図面を含む。色つきの図面を含むこの特許または特許出願公報のコピーは、要請および必要な料金の支払いに応じて、当局によって提供される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態の一般的なアプローチ全体を描写している。
図1に描写されているように、骨小結節を形成する注射可能なタンパク質-ポリマーヒドロゲルは、インビボにおいて、移植された造血幹細胞(HSC)をリクルートする。リクルートされた細胞であるHSCは、ヒドロゲル中に存在する分化因子に提示されて、リンパ球への分化が駆動された。
【0030】
【
図2A】
図2A~2Eは、本発明に従って形成された異所性の骨小結節を表している。
図2Aは、ヒドロゲル内に被包された成長因子(BMP-2)の放出を図示しており、
図2B(上段)は、約1~2週間にわたって放出された、ヒドロゲル内に被包された成長因子(BMP-2)の放出をグラフで示している。
図2B(中段)は、約1~2週間にわたる、ヒドロゲルからのBMP-2と分化因子Delta様4(DLL-4)との両方の放出を示しており、
図2B(下段)は、約1~2週間にわたってヒドロゲルから放出されたBMP-2および分化因子インターロイキン-7(IL-7)の累積量を示している。
図2Cは、皮下の骨小結節(赤色矢印)を表している。
図2Dは、骨小結節の3次元マイクロ-コンピュータ断層撮影像を表している。
図2Eは、骨、アルギネートおよび骨髄を示している、切除された骨小結節のサフラニンOで染色された組織学的検査の切片を表している。
【
図2B】
図2A~2Eは、本発明に従って形成された異所性の骨小結節を表している。
図2Aは、ヒドロゲル内に被包された成長因子(BMP-2)の放出を図示しており、
図2B(上段)は、約1~2週間にわたって放出された、ヒドロゲル内に被包された成長因子(BMP-2)の放出をグラフで示している。
図2B(中段)は、約1~2週間にわたる、ヒドロゲルからのBMP-2と分化因子Delta様4(DLL-4)との両方の放出を示しており、
図2B(下段)は、約1~2週間にわたってヒドロゲルから放出されたBMP-2および分化因子インターロイキン-7(IL-7)の累積量を示している。
図2Cは、皮下の骨小結節(赤色矢印)を表している。
図2Dは、骨小結節の3次元マイクロ-コンピュータ断層撮影像を表している。
図2Eは、骨、アルギネートおよび骨髄を示している、切除された骨小結節のサフラニンOで染色された組織学的検査の切片を表している。
【
図2C】
図2A~2Eは、本発明に従って形成された異所性の骨小結節を表している。
図2Aは、ヒドロゲル内に被包された成長因子(BMP-2)の放出を図示しており、
図2B(上段)は、約1~2週間にわたって放出された、ヒドロゲル内に被包された成長因子(BMP-2)の放出をグラフで示している。
図2B(中段)は、約1~2週間にわたる、ヒドロゲルからのBMP-2と分化因子Delta様4(DLL-4)との両方の放出を示しており、
図2B(下段)は、約1~2週間にわたってヒドロゲルから放出されたBMP-2および分化因子インターロイキン-7(IL-7)の累積量を示している。
図2Cは、皮下の骨小結節(赤色矢印)を表している。
図2Dは、骨小結節の3次元マイクロ-コンピュータ断層撮影像を表している。
図2Eは、骨、アルギネートおよび骨髄を示している、切除された骨小結節のサフラニンOで染色された組織学的検査の切片を表している。
【
図2D】
図2A~2Eは、本発明に従って形成された異所性の骨小結節を表している。
図2Aは、ヒドロゲル内に被包された成長因子(BMP-2)の放出を図示しており、
図2B(上段)は、約1~2週間にわたって放出された、ヒドロゲル内に被包された成長因子(BMP-2)の放出をグラフで示している。
図2B(中段)は、約1~2週間にわたる、ヒドロゲルからのBMP-2と分化因子Delta様4(DLL-4)との両方の放出を示しており、
図2B(下段)は、約1~2週間にわたってヒドロゲルから放出されたBMP-2および分化因子インターロイキン-7(IL-7)の累積量を示している。
図2Cは、皮下の骨小結節(赤色矢印)を表している。
図2Dは、骨小結節の3次元マイクロ-コンピュータ断層撮影像を表している。
図2Eは、骨、アルギネートおよび骨髄を示している、切除された骨小結節のサフラニンOで染色された組織学的検査の切片を表している。
【
図2E】
図2A~2Eは、本発明に従って形成された異所性の骨小結節を表している。
図2Aは、ヒドロゲル内に被包された成長因子(BMP-2)の放出を図示しており、
図2B(上段)は、約1~2週間にわたって放出された、ヒドロゲル内に被包された成長因子(BMP-2)の放出をグラフで示している。
図2B(中段)は、約1~2週間にわたる、ヒドロゲルからのBMP-2と分化因子Delta様4(DLL-4)との両方の放出を示しており、
図2B(下段)は、約1~2週間にわたってヒドロゲルから放出されたBMP-2および分化因子インターロイキン-7(IL-7)の累積量を示している。
図2Cは、皮下の骨小結節(赤色矢印)を表している。
図2Dは、骨小結節の3次元マイクロ-コンピュータ断層撮影像を表している。
図2Eは、骨、アルギネートおよび骨髄を示している、切除された骨小結節のサフラニンOで染色された組織学的検査の切片を表している。
【0031】
【
図3A】
図3Aおよび3Bは、本発明にかかるヒドロゲルによって媒介されるリンパ球産生を表している。
図3Aは、骨小結節を形成するヒドロゲルの存在下においてインビトロで培養された単離されたLKS細胞が、固定化され、繋ぎ留められたDLL-4の存在下において分化を示したことを実証している(n=9,
***P<0.001,
**P<0.01,ns=有意でない)。
図3Bは、インビボにおいて、異所性の骨小結節が、致死線量以下を照射されたマウスにおいてT細胞(CD3+)およびB細胞(B220+)の再構成を加速させることを例示している。骨髄性細胞(Mac-1+Gr-1+)集団の再構成の動態に変化はなかった。
【
図3B】
図3Aおよび3Bは、本発明にかかるヒドロゲルによって媒介されるリンパ球産生を表している。
図3Aは、骨小結節を形成するヒドロゲルの存在下においてインビトロで培養された単離されたLKS細胞が、固定化され、繋ぎ留められたDLL-4の存在下において分化を示したことを実証している(n=9,
***P<0.001,
**P<0.01,ns=有意でない)。
図3Bは、インビボにおいて、異所性の骨小結節が、致死線量以下を照射されたマウスにおいてT細胞(CD3+)およびB細胞(B220+)の再構成を加速させることを例示している。骨髄性細胞(Mac-1+Gr-1+)集団の再構成の動態に変化はなかった。
【0032】
【
図4A】
図4Aおよび4Bは、造血幹細胞移植(HSCT)後の免疫再構成の特徴づけを表している。
図4Aに示されているように、BMP-2/DLL-4を含むヒドロゲルは、T細胞およびB細胞枯渇移植片によるHSCT後のT細胞およびB細胞の回復を有意に加速させた。
図4Bは、HSCTの2週間後の免疫レパートリーの解析結果を表しており、BMP-2/DLL-4ヒドロゲルを用いたとき、より多くのVJ組換え事象がCD3+T細胞において生じたことを示している。
【
図4B】
図4Aおよび4Bは、造血幹細胞移植(HSCT)後の免疫再構成の特徴づけを表している。
図4Aに示されているように、BMP-2/DLL-4を含むヒドロゲルは、T細胞およびB細胞枯渇移植片によるHSCT後のT細胞およびB細胞の回復を有意に加速させた。
図4Bは、HSCTの2週間後の免疫レパートリーの解析結果を表しており、BMP-2/DLL-4ヒドロゲルを用いたとき、より多くのVJ組換え事象がCD3+T細胞において生じたことを示している。
【0033】
【
図5】
図5は、白血病および骨髄腫を含む血液障害に対する従来のHBSC処置を示している。上列は、血液障害を有する患者が、宿主の血液細胞を根絶するために放射線照射処置を受けた後、血液幹細胞移植によって血液および免疫系の再構成を受けている様子を示している。下列は、血液障害患者からの血液サンプル;正常な骨髄および照射された骨髄;ならびに血液幹細胞移植の数週間以内の骨髄性細胞の再増殖および移植の数ヶ月後から数年後のTおよびB細胞の再増殖を示している。
【0034】
【
図6】
図6は、HSC、および本明細書中に記載されるようなDLL-4を含むヒドロゲルをマウスに植え込んで免疫再構成を加速させる概略を説明している。
【0035】
【
図7】
図7は、本明細書中に記載されるようなヒドロゲルのための構成要素を示している。上列は、DLL4-PEG
2k-MAおよびBMP-2を示している。中列は、EDC/NHS化学および2-アミノエチルメタクリレート(AEMA)を用いたアルギネートおよびPEGのメチル化を説明している。下列は、低温重合による、本明細書中に記載されるようなマクロ多孔性クリオゲルの形成を説明している。
【0036】
【
図8】
図8Aは、インビトロにおける血液幹細胞の培養および解析の概略を示している。
図8Bは、COOHによる官能化の程度、ならびにT細胞、B細胞、骨髄性細胞、CLPおよびCMPの相対的な細胞存在量を図示している。
【0037】
【
図9】
図9は、インビトロにおける異なるCLP/T細胞動態がDLL-4依存的であることを示している。左側のグラフは、BMP-2およびDLL-4を含むヒドロゲルと接触された細胞についてのデータを提供している。右側のグラフは、BMP-2を含むヒドロゲルと接触された細胞についてのデータを提供している。
【0038】
【
図10】
図10は、照射されたマウスへのGFP+細胞を用いた細胞移植の概略を示している。
【0039】
【
図11】
図11は、BMP-2放出が、移植された細胞数をクリオゲル内において増加させることを示している。
【0040】
【
図12】
図12は、BMP-2およびDLL-4がCLP細胞数をクリオゲル内において増加させることを示している。
【0041】
【
図13】
図13Aは、BMP-2が異所性の骨髄小結節を誘導することを示している。
図13Bは、本明細書中に開示される方法によって成長させた異所性の骨髄小結節の写真である。
図13Cは、本明細書中に開示される方法によって成長させた皮下組織における骨小結節の写真である。
【0042】
【
図14】
図14は、移植のみを受けたマウス(左のグラフ)、移植+BMP-2を含むヒドロゲルを受けたマウス(中央のグラフ)ならびに移植+BMP-2およびDLL-4を含むヒドロゲルを受けたマウス(右のグラフ)における、照射の0~60日後のT細胞、B細胞および骨髄性細胞の数を示している。
【0043】
【
図15】
図15は、TCRβにおけるCDR1~3の配列決定が細胞の多様性のスナップショットを提供し得ることを説明している。
【0044】
【
図16】
図16は、照射されていない、移植のみ、移植+BMP-2を含むヒドロゲル、ならびに移植+BMP-2およびDLL-4を含むヒドロゲルについてのTCRレパートリー解析を示している。
【0045】
【
図17】
図17Aは、胸腺の産生量を測定するためのsjTREC解析の概略を示している。
図17Bは、照射されていない、移植のみ、移植+BMP-2を含むヒドロゲル、ならびに移植+BMP-2およびDLL-4を含むヒドロゲルについてのsjTREC/mg胸腺を示している。
【0046】
【
図18】
図18Aは、1ヶ月間の免疫再構成の後の致死量以下のウイルス注射チャレンジの概略を示している。
図18Bは、照射されていないマウス、移植のみを受けたマウス、移植+BMP-2を含むヒドロゲルを受けたマウス、ならびに移植+BMP-2およびDLL-4を含むヒドロゲルを受けたマウスに対するウイルスチャレンジ後の生存率を示している。
【発明を実施するための形態】
【0047】
発明の詳細な説明
造血幹細胞移植(HSCT)の後の基本的な課題は、自己免疫障害をもたらし得る過増殖反応を回避しながら新たな免疫学的応答を発生させることに関する。幹細胞レベルでは、骨髄ニッチに存在し、細胞および周辺のマトリックスを含む造血幹細胞(HSC)から、免疫系は生じる。骨髄は、リンパ系の発生の支援を通じた一次リンパ系器官としての役割に加えて、成熟した様々なリンパ系細胞型のための宿主として作用する。骨髄は、HSCの再生能およびHSCから免疫細胞への分化能に影響し、新しいT細胞およびB細胞のための前駆細胞集団を提供する。
【0048】
造血幹細胞移植(HSCT)のコンディショニングプロセスは、骨髄ニッチを損ない、免疫系の再構成に直接影響するドナー細胞の生着を支援する能力を損なう。その結果として、移植レシピエントの免疫細胞の絶対数を一過性に増加させるために、時折、免疫調節性小分子、治療的タンパク質、および精製されたドナーT細胞の注入が用いられる;しかしながら、これらの方法は、ドナー細胞のクローン増殖および活性化に依拠し、TおよびB細胞レパートリーの多様性を回復させない。
【0049】
内在性の骨髄とは対照的に、本発明は、概して、被験体(例えば、異所性の骨髄ニッチまたは小結節の発生を必要とする哺乳動物被験体)に本明細書中に開示される組成物を投与した後または植え込んだ後に形成する異所性の骨髄ニッチまたは小結節の発生に関わる組成物および方法に関する。例えば、ある特定の態様において、本発明は、多孔性の植え込み可能な足場材料、ならびにリンパ球産生を指定するおよび移植されたHSCからリンパ系細胞(CLP)への分化を促進する1種または複数種の分化因子を含む組成物に関し、それによって、被験体の免疫系の再構成を補助する。ゆえに、適切な抗原に対して免疫応答を開始できるナイーブ免疫細胞の内因性の発生によって、広範な長期にわたる免疫がもたらされる。
【0050】
本明細書中に開示される組成物は、被験体に投与され得るかまたはその他の方法で植え込まれ得る1種または複数種の足場材料(例えば、多孔性の植え込み可能な足場材料)を含む。例えば、ある特定の実施形態において、本明細書中に開示される組成物は、足場材料内に充填され得るかまたは足場材料によって被包され得る1種または複数種の成長因子を含み、それを被験体(例えば、免疫無防備状態の被験体)に投与した後、そのような組成物は、投与された足場材料上または投与された足場材料の周囲において組織(例えば、骨組織)の形成を促進して、異所性の骨髄ニッチとして機能する小結節を形成する。したがって、ある特定の態様において、本明細書中に開示される足場材料は、1種または複数種の成長因子、分化因子、ホーミング因子、サイトカイン、ケモカインおよび他の任意の作用物質のための送達ビヒクルを提供する。
【0051】
ある特定の実施形態において、足場材料は、ポリマー(例えば、3次元ポリマー系)を含む。ある特定の実施形態において、足場材料は、骨誘導性である。ある特定の態様において、足場材料は、アルギネート(例えば、陰イオン性アルギネート)であるかまたはそれを含む。いくつかの実施形態において、足場材料は、ヒドロゲルの形態である。
【0052】
いくつかの実施形態において、足場材料は、クリオゲルの形態である。クリオゲルは、クリオトロピック(cryotropic)ゲル化(またはクリオゲル化)の技法を用いて生成される高度に多孔性の互いにつながった構造を有する材料の1クラスである。クリオゲル化は、重合架橋反応が準凍結(quasi-frozen)反応溶液中で行われる技法である。マクロモノマー(macromoner)(例えば、MA-アルギネート)溶液の凍結中に、氷から排出されたマクロモノマーおよび開始剤系(例えば、APS/TEMED)が、氷晶間のチャネル内に集まり(concentrate)、その結果、上記反応がこ
れらの未凍結液体チャネル内でのみ生じる。重合の後、および氷の融解後、多孔性材料が生成される。そのミクロ構造は、形成された氷のネガティブレプリカである。氷晶は、ポロゲン(porogen)として作用する。ポアサイズは、クリオゲル化プロセスの温度を変更することによって調整される。例えば、クリオゲル化プロセスは、代表的には、溶液を-20℃で急速凍結することによって行われる。その温度を例えば-80℃に低下させると、より多くの氷晶が生じ、より小さいポアがもたらされる。いくつかの実施形態において、クリオゲルは、少なくともメタクリル化(MA)-アルギネートおよびMA-PEGの低温重合によって生成される。いくつかの実施形態において、クリオゲルは、少なくともMA-アルギネート、分化因子およびMA-PEGの低温重合によって生成される。いくつかの実施形態において、分化因子は、つなぎ鎖(例えば、PEG、PEG2k)およびMA基をさらに含む。いくつかの実施形態において、分化因子は、DLL4-PEG2k-MAである。いくつかの実施形態において、低温重合は、クリオゲルに被包されるべき作用物質の存在下において行われる。いくつかの実施形態において、その作用物質は、1種または複数種の成長因子、分化因子、ホーミング因子、サイトカインおよびケモカインである。いくつかの実施形態において、その作用物質は、BMP(例えば、BMP-2)である。
【0053】
クリオゲルは、少なくとも75%のポア、例えば、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%もしくは99%またはそれを超えるポアを含み得る。それらのポアは、互いにつながっている。それらのポアが互いにつながっていることにより、水(ならびに細胞および化合物などの他の組成物)がその構造を通過して出入りすることが可能になる。完全に水和した状態では、その組成物は、少なくとも90%の水(例えば、90~99%、少なくとも92%、95%、97%、99%またはそれを超える)水を含む。例えば、クリオゲルの体積の少なくとも90%(例えば、少なくとも92%、95%、97%、99%またはそれを超える)は、ポア内に含まれる液体(例えば、水)でできている。圧縮されたまたは脱水したヒドロゲルでは、その水の最大50%、60%、70%が非存在であり、例えば、クリオゲルは、25%未満(20%、15%、10%、5%またはそれ未満)の水を含む。
【0054】
本発明のクリオゲルは、細胞が通過できるほど大きいポアを含み得る。例えば、クリオゲルは、直径が20~500μm、例えば、20~300μm、30~150μm、50~500μm、50~450μm、100~400μm、200~500μmのポアを含む。いくつかの場合において、水和したポアサイズは、1~500μm(例えば、10~400μm、20~300μm、50~250μm)である。
【0055】
いくつかの実施形態において、クリオゲルは、アミノ、ビニル、アルデヒド、チオール、シラン、カルボキシル、アジド、アルキンからなる群より選択される官能基の付加によってさらに官能化される。あるいは、クリオゲルは、さらなる架橋剤(例えば、複数アームポリマー、塩、アルデヒドなど)の付加によってさらに官能化される。溶媒は、水性溶媒、特に酸性またはアルカリ性溶媒であり得る。水性溶媒は、水混和性溶媒(例えば、メタノール、エタノール、DMF、DMSO、アセトン、ジオキサンなど)を含み得る。いくつかの実施形態において、1種または複数種の官能基は、クリオゲル化の前に、クリオゲルの構成物(constitutent)(例えば、アルギネート、PEG)に付加される。低温架橋は、型の中で行われ、注入可能なクリオゲルは、分解可能であり得る。ポアサイズは、使用される主な溶媒を選択すること、ポロゲンを組み込むこと、適用される凍結温度および凍結速度、架橋条件(例えば、ポリマー濃度)、ならびに使用されるポリマーのタイプおよび分子量によって制御され得る。
【0056】
いくつかの実施形態において、本明細書中に開示される足場材料および組成物は、被験体への投与または植え込みの前に、細胞を播種されていないか、またはその他の方法で細胞を充填されていない。あるいは、他の実施形態において、本明細書中に開示される足場材料および組成物は、被験体への投与または植え込みの前に、細胞(例えば、HSC)を播種されているか、またはその他の方法で細胞(例えば、HSC)を充填されている。なおも他の実施形態において、足場材料は、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、PLGAポリマー、アルギネートおよびアルギネート誘導体、ポリカプロラクトン、リン酸カルシウム系材料、ゼラチン、コラーゲン、フィブリン、ヒアルロン酸、ラミニンリッチゲル、アガロース、天然多糖類および合成多糖類、ポリアミノ酸、ポリペプチド、ポリエステル、ポリ酸無水物、ポリホスファジン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(アルキレンオキシド)、ポリ(アリルアミン)(PAM)、ポリ(アクリレート)、改変スチレンポリマー、プルロニックポリオール、ポロキサマー、ポリ(ウロン酸)、ポリ(ビニルピロリドン)およびそれらの任意の組み合わせまたは共重合体からなる群より選択される。他の例示的な足場材料、組成物、ならびにそれらを使用および調製する方法は、米国特許公開第2008/0044900、2013/0331343、2015/0366956、2014/0112990、2014/0227327および2015/0359928(これらの全体が参照により本明細書中に援用される)に記載されている。
【0057】
本明細書中に開示される足場材料は、例えば、そのような足場材料を骨誘導性にする化合物または賦形剤(例えば、リン酸カルシウム)を含むようにさらに改変され得る。同様に、その機械的特性に影響するために、化合物または賦形剤が足場材料に含められ得る。例えば、足場材料の機械的特性を調整するために、堅いポリカプロラクトン(PCL)および軟らかいポリエチレングリコール(PEG)などのポリマーが、アルギネートと組み合わせて使用され得る。
【0058】
足場材料は、例えば、足場材料または組成物の投与または植え込みの際における、1種または複数種の成長因子、分化因子および/またはホーミング因子のインビボでの提示または放出を制御するために使用され得る。例えば、アルギネート骨格上でカルボン酸基を使用して、EDC/NHS化学を用いることにより、DLL-4を足場材料に結合体化してもよい。そのような1種または複数種の成長因子、分化因子および/またはホーミング因子の提示または放出は、これらの分子を足場材料内に被包するかまたは足場材料内もしくは足場材料上に連結すること(例えば、共有結合的に結合することまたは連結すること)(例えば、分子をアルギネート骨格に連結すること)によって達成され得る。そのような分子の空間的および時間的な提示は、これらの分子を連結するために用いられる化学反応を微調整することによって、ならびに足場材料の物理的特性および化学的特性を選択または変更することによって、正確に制御され得る。結果として、そのような足場材料は、その中に被包され得るかまたはそれに連結され得る1種または複数種の分子(例えば、成長因子)のインビボにおける送達および/または提示を制御するのに特に有用である。したがって、1種または複数種の成長因子、分化因子および/またはホーミング因子の選択に基づいて、足場材料からのそのような分子の放出は、インビボにおいて、移植された幹細胞および前駆細胞の挙動(例えば、増殖、遊走および/または分化)を達成するためおよび正確に制御するために最適化され得る。
【0059】
ある特定の態様において、本明細書中に開示される組成物の投与または植え込みの後、そのような組成物に含められた1種または複数種の成長因子は、投与された組成物上または投与された組成物の周囲において組織(例えば、骨組織)の形成を促進し、それによって、異所性の骨髄ニッチとして機能する小結節を形成する。本明細書中で使用されるとき、用語「成長因子」とは、細胞増殖を引き起こすかもしくはその他の方法で促進する、任意の生物学的に活性な作用物質、ポリペプチド、ホルモン、サイトカイン、ケモカインまたは化合物のことを広く指し、ある特定の態様では、骨原性成長因子およびそれらのアナログを含む。例示的な成長因子としては、骨形成タンパク質(例えば、BMP-2、BMP-4、BMP-6、BMP-7、BMP-12およびBMP-14)が挙げられる。成長因子の1種または複数種は、足場材料に被包され得、長期間(例えば、約7~14日間)にわたって足場材料から放出され得る。成長因子の1種または複数種は、足場材料に被包され得、約1~50、5~25、10~20または17~18日間にわたって足場材料から放出され得る。いくつかの実施形態において、そのような1種または複数種の成長因子(例えば、BMP-2)は、植え込まれた組成物上または植え込まれた組成物の周囲において組織(例えば、骨組織)の形成を可能にして小結節を形成するのに十分な期間にわたって放出される。
【0060】
本明細書中に開示される組成物は、1種または複数種の分化因子をさらに含む。本明細書中で使用されるとき、用語「分化因子」とは、細胞分化を促進する任意の分子のことを広く指す。例えば、幹細胞または前駆細胞から1種または複数種のリンパ系細胞への分化を促進する任意の分化因子。ある特定の態様において、分化因子は、1種または複数種の二次部位(例えば、胸腺および/またはリンパ節)への移植された細胞(例えば、HSC)の遊走を促進し、次に、その部位において、そのような細胞は成熟する。例えば、移植された幹細胞は、小結節にホーミングし得るかまたはその他の方法で小結節に浸潤し得、その小結節において、そのような細胞は、分化因子(例えば、DLL-2および/またはDLL-4などのNotchリガンド)と接触し、次いでさらに胸腺に遊走し、胸腺でT細胞に成熟する。ある特定の態様において、分化因子は、小結節内において、移植された細胞の分化および成熟を促進する。例えば、移植された幹細胞は、小結節にホーミングし得るかまたはその他の方法で小結節に浸潤し得、その小結節において、そのような細胞は、分化因子(例えば、IL-7またはIL-15)と接触し、次いでその小結節内で、成熟したB細胞に分化する。
【0061】
ある特定の態様において、本明細書中に開示される分化因子は、例えば、本明細書中に開示される組成物の働きを最適化するために、必要に応じて、改変され得る。いくつかの実施形態において、DLL-1またはDLL-4のNotch結合ペプチドフラグメント(約2kDa)が、アルギネート足場材料のより多くの官能化を可能にするために、完全タンパク質(約70kDa)の代わりに使用され得る。いくつかの実施形態において、足場材料の効果をさらに高めるために、血管新生の血管内皮成長因子(VEGF)および/または走化性のSDF-1が組み込まれ得る。
【0062】
いくつかの実施形態において、本明細書中に開示される組成物は、1種または複数種の「ホーミング因子」をさらに含み、この用語は、本明細書中に開示される組成物が投与されたまたは植え込まれたときに形成される小結節に、移植された幹細胞が遊走またはホーミングするのを促進する任意の組成物のことを広く指す。造血幹細胞は、被験体に注入された後、血流から骨髄に「ホーミングする」先天的能力を有するので、幹細胞移植は、大いに可能である。1種または複数種のホーミング因子を、本明細書中に開示される組成物を含む足場材料内に組み込むか、被包するかまたは繋ぎ留めることによって、移植された幹細胞(例えば、HSC)の小結節へのホーミングが増強する。例えば、本明細書中に開示される方法および組成物は、注入されたHSCが、移植の際にそのようなHSCが注入された組織(例えば、血液)から、小結節によって形成された異所性の骨髄ニッチにホーミングする能力を高める(例えば、増加させる)ために有用である。本明細書中で使用されるとき、用語「ホーミングする」および「ホーミング」は、移植された幹細胞(例えば、HSCまたは前駆細胞)が注入された第1の特定の組織または領域(例えば、血液)から、それらの細胞を必要としている第2の組織または領域(例えば、被験体に組成物を植え込んだ後に形成される小結節)に、それらの細胞が遊走するか、移動するか、またはその他の方法で集まることを意味する。内在性の幹細胞ニッチ内の様々な因子が、骨髄幹細胞ニッチへのHSCのホーミングを調節し、そのような因子の1種または複数種が、本明細書中に開示される組成物に組み込まれ得る。内在性骨髄内でのHSCの保持およびホーミングを促進するそのような因子の1つは、幹細胞分化因子(SDF-1)である。したがって、ある特定の態様において、本明細書中に開示される組成物は、移植された幹細胞の小結節へのホーミング、およびそのような小結節によって形成される異所性の骨髄ニッチにおけるそのような細胞のその後の生着を促進するSDF-1を含む。
【0063】
本明細書中に開示される方法および組成物は、幹細胞移植(例えば、HSC移植)との関連において有用である。本明細書中で使用されるとき、用語「造血幹細胞」または「HSC」とは、造血系に分化できて、あらゆる血液細胞型(例えば、白血球および赤血球(骨髄系(例えば、単球およびマクロファージ、好中球、好塩基球、好酸球、赤血球、巨核球/血小板、樹状細胞)およびリンパ系(例えば、T細胞、B細胞、NK細胞)を含む))を生じることができる、幹細胞のことを指す。幹細胞は、複数の細胞型を形成する能力(多分化能)および自己複製する能力によって定義される。造血幹細胞は、例えば、細胞表面マーカー(例えば、CD34-、CD133+、CD48-、CD150+、CD244-、cKit+、Sca1+)によって、および系列マーカーを欠くこと(とりわけ、B220、CD3、CD4、CD8、Mac1、Gr1およびTer119が陰性であること)によって同定され得る。
【0064】
本明細書中で使用されるとき、用語「前駆細胞」は、造血細胞系列に関係づけられていて、概して自己複製せず、造血系のいくつかの細胞型(例えば、顆粒球、単球、赤血球、巨核球、B細胞およびT細胞)(短期造血幹細胞(ST-HSC)、多分化能前駆細胞(MPP)、骨髄系共通前駆細胞(CMP)、顆粒球-単球前駆細胞(GMP)、巨核球-赤血球前駆細胞(MEP)および関係づけられたリンパ系前駆細胞(committed
lymphoid progenitor cells)(CLP)を含むがこれらに限定されない)に分化できる、多能性細胞を包含する。造血性前駆細胞の存在は、完全メチルセルロースアッセイ(complete methylcellulose assays)においてコロニー形成単位細胞(CFU-C)として機能的に判定され得るか、または当業者に公知のアッセイを用いた細胞表面マーカー(例えば、CD45-、CD34+、Ter119-、CD16/32、CD127、cKit、Sca1)の検出によって表現型的に判定され得る。
【0065】
本明細書中に開示される方法のある特定の態様は、投与された幹細胞が、本明細書中に開示される組成物をレシピエント被験体に投与した後に形成する小結節(例えば、骨小結節)の異所性の骨髄ニッチに生着するように、必要とする被験体に幹細胞を投与するかまたはその他の方法で移植することを含む。本明細書中で使用されるとき、造血幹細胞を含む幹細胞を「生着する」および造血幹細胞を含む幹細胞の「生着」は、幹細胞を動物の中に、例えば注射によって、留置することを意味し、ここで、その幹細胞は、インビボにおいて持続する。これは、幹細胞が、例えば進行中の免疫細胞および/または血液細胞の形成に寄与できることによって、容易に測定され得る。幹細胞移植の成功は、十分な量の移植された幹細胞が被験体の組織に生着する能力に依存するので、本明細書中に開示される組成物および方法は、そのような移植された幹細胞が生着し得る部位および組織の数または体積を増加させる。
【0066】
本明細書中で使用されるとき、用語「投与する」とは、移植された幹細胞を小結節の異所性の骨髄ニッチに遊走またはホーミングさせる方法または経路によって、本明細書中に記載される組成物を被験体の中に留置すること(例えば、被験体へのそのような組成物の非経口的な留置または植え込み)を広く指す。ある特定の態様において、本明細書中に開示される組成物は、例えば、幹細胞移植を受ける前に、被験体の複数の部位に投与されるかまたは植え込まれる。ある特定の実施形態において、本明細書中に開示される組成物は、被験体のリンパ系の近くの部位(例えば、被験体の頸部、鼠径部および脇の下のうちの1つまたはそれを超える箇所の近位)に投与される。ある特定の態様において、本明細書中に開示される小結節は、被験体の免疫系の再構成の後、除去される(例えば、外科的切除によって)。
【0067】
ある特定の実施形態において、本明細書中に開示される組成物および方法は、造血幹細胞および/または前駆細胞の移植が望ましい任意の障害、疾患、状態または合併症の処置に有用である。そのような障害の例としては、血液悪性腫瘍および非悪性の血液病が挙げられる。本明細書中に開示される組成物および方法は、T細胞およびB細胞の再構成にも有用であるので、免疫不全が関わる他の疾患(例えば、加齢性ワクチン障害、自己免疫障害(例えば、関節リウマチおよび糖尿病)、感染症など)に広く適用され得る。
【0068】
本明細書中で使用されるとき、用語「被験体」は、任意のヒトまたは動物を意味する。ある特定の態様において、動物は、脊椎動物(例えば、霊長類、げっ歯類、家畜動物または狩猟動物)である。霊長類には、チンパンジー、カニクイザル(cynomologous monkey)、クモザルおよびマカク、例えば、アカゲザルが含まれる。げっ歯類には、マウス、ラット、ウッドチャック、フェレット、ウサギおよびハムスターが含まれる。家畜動物および狩猟動物には、ウシ、ウマ、ブタ、シカ、バイソン、スイギュウ、ネコ種、例えば、イエネコ、イヌ種、例えば、イヌ、キツネ、オオカミ、鳥類、例えば、ニワトリ、エミュー、ダチョウ、ならびに魚類、例えば、マス、ナマズおよびサケが含まれる。患者または被験体には、前述の任意のサブセット(例えば、上記のすべて)が含まれるが、1種または複数種の群または種(例えば、ヒト、霊長類またはげっ歯類)が除外される。ある特定の実施形態において、被験体は、哺乳動物(例えば、霊長類またはヒト)である。いくつかの実施形態において、哺乳動物は、ヒト、非ヒト霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマまたはウシであり、これらの例に限定されない。ヒト以外の哺乳動物は、例えば血液悪性腫瘍の動物モデルを表わす被験体として例えば有利に使用され得る。さらに、本明細書中に記載される方法は、家畜動物および/またはペットを処置するために使用され得る。被験体は、男性(雄)または女性(雌)であり得る。
【0069】
ある特定の実施形態において、被験体は、ある状態、疾患または幹細胞障害に罹患しているまたはそれを有していると以前に診断されたまたはその他の方法で同定された被験体であり得る。特定の状態(例えば、幹細胞障害)に対する処置を「必要とする被験体」は、その状態を有する被験体、その状態を有すると診断された被験体、または所与の参照集団と比べてその状態を発症するリスクが高い被験体であり得る。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載される処置方法は、血液悪性腫瘍と診断された被験体、血液悪性腫瘍を有すると疑われる被験体もしくは血液悪性腫瘍を発症するリスクがある被験体または免疫無防備状態である被験体を選択することを含む。いくつかの実施形態において、本明細書中に記載される方法は、非悪性の疾患、例えば、本明細書中に記載される非悪性の疾患と診断された被験体、非悪性の疾患を有すると疑われる被験体または非悪性の疾患を発症するリスクがある被験体を選択することを含む。
【0070】
いくつかの実施形態において、本明細書中に開示される方法は、内在性の前駆HSCからの、被験体の免疫系の再構成を加速させる。いくつかの実施形態において、本明細書中に開示される方法は、約1.5、1.6、1.7、1.8、1.9.2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、3または4桁またはそれを超えて、内在性の前駆HSCからの再構成を加速させる。いくつかの実施形態において、本明細書中に開示される方法は、内在性の前駆HSCからの再構成を2桁超、加速させる。
【0071】
いくつかの実施形態において、本明細書中に開示される方法は、移植された前駆HSCからの、被験体の免疫系の再構成を加速させる。いくつかの実施形態において、本明細書中に開示される方法は、移植された前駆HSCからの再構成を約1.5、1.6、1.7、1.8、1.9.2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、3もしくは4桁またはそれを超えて加速させる。いくつかの実施形態において、本明細書中に開示される方法は、移植された前駆HSCからの再構成を2桁超、加速させる。
【0072】
本発明は、その適用において、明細書本文に記載された詳細または例証されたような詳細に限定されないことが理解されるべきである。本発明は、他の実施形態を包含し、様々な方法で実施することまたは行うことができる。また、本明細書中で使用される術語および用語は、説明する目的のものであって、限定と見なされるべきでないことが、理解されるべきである。
【0073】
本発明のある特定の作用物質、化合物、組成物および方法を、ある特定の実施形態に従って具体的に説明してきたが、以下の実施例は、本発明の方法および組成物を単に例証するのに役立ち、それを限定すると意図されていない。
【0074】
冠詞「a」および「an」は、本明細書において、明細書本文および特許請求の範囲において使用されるとき、それとは反対のことが明らかに示されない限り、複数の指示対象を含むと理解されるべきである。群メンバーのうちの1つ、1つより多く、またはすべてが、所与の生成物またはプロセスに存在するか、それらの中に使用されているか、またはその他の方法でそれらに関係している場合、それとは反対のことが示されていないかまたはその他の方法で文脈から明らかでない限り、群のうちの1つまたは複数のメンバーの間に「または」を含む特許請求の範囲または明細書本文は満たされると見なされる。本発明は、その群のうちの正確に1つのメンバーが、所与の生成物もしくはプロセスに存在しているか、所与の生成物もしくはプロセスにおいて使用されているか、またはその他の方法で所与の生成物もしくはプロセスに関わっている実施形態を含む。本発明は、1つより多い群メンバーまたはすべての群メンバーが、所与の生成物もしくはプロセスに存在しているか、所与の生成物もしくはプロセスにおいて使用されているか、またはその他の方法で所与の生成物もしくはプロセスに関わっている実施形態も含む。さらに、列挙される請求項の1つまたは複数からの1つまたはそれを超える制限するもの(limitations)、エレ
メント、節、記述用語などが、別段示されないかまたは矛盾もしくは不一致が生じることが当業者にとって明らかでない限り、同じ基本請求項(または、関連する、任意の他の請求項)に従属する別の請求項に導入される、あらゆるバリエーション、組み合わせおよび並べ替えを本発明は包含すると理解されるべきである。エレメントが、リストとして(例えば、マーカッシュ群または同様の形式で)示される場合、それらのエレメントの各サブグループも開示されること、および任意のエレメント(複数可)がその群から取り除かれ得ることが理解されるべきである。一般に、本発明または本発明の態様が、特定のエレメント、特徴などを含むと言及される場合、本発明のある特定の実施形態または本発明の態様は、そのようなエレメント、特徴などからなるか、または本質的になることが理解されるべきである。単純にする目的で、それらの実施形態は、どの場合においても、本明細書中の非常に多くの語で具体的に示されていない。具体的な除外が明細書本文に列挙されているかどうかに関係なく、本発明の任意の実施形態または態様が特許請求の範囲から明示的に除外され得ることも理解されるべきである。発明の背景を記載するためおよびその実施に関するさらなる詳細を提供するために本明細書中で参照される刊行物および他の参考資料が、参照により本明細書に援用される。
【実施例0075】
実施例1-骨小結節の形成を誘導するための合成材料
本発明者らは、
図2A~2Eに示されているように、骨小結節を生み出すために、カチオン性の強力な骨形成成長因子である骨形成タンパク質(BMP-2)を組み込むために適合された天然のアニオン性多糖であるアルギネートをヒドロゲル足場材料として使用した。マウスへのインビボでの皮下注射後1~2週間以内に機能的で活性な骨小結節を生み出すという目標で、そのアルギネートからのBMP-2成長因子の充填および放出挙動を最適化した(例えば、放出を制御するために、アルギネートの総注入量および架橋密度)。
【0076】
T細胞とB細胞の両方が、特定のタイプのHSC前駆細胞であるリンパ系共通前駆細胞(CLP)から生じる。骨髄内において、Notch経路は、リンパ球の特定にとって重要である。Notchリガンドであるdelta様リガンド1または4(DLL-1/4)に曝露されたCLPは、胸腺に輸送され、T細胞に分化する。インターロイキン-7(IL-7)に曝露された骨髄中のCLPは、B細胞に分化する。異所性の骨髄にホーミングした移植されたHSCのリンパ球分化を特定するために、本発明者らは、異所性の骨髄内にNotchリガンドDLL-4を組み込む効果を評価した。アルギネート骨格上でカルボン酸基を用いて、EDC/NHS化学を使用することにより、HSCのT細胞分化を指示することを目指してDLL-4を結合体化した。
【0077】
成長因子BMP-2および分化因子DLL-4を含むヒドロゲルのインビトロ分化能を、推定造血性幹細胞および前駆細胞であるLin-c-kit+Sca-1+(LKS)細胞を用いて試験した。本発明者らは、CD4+およびCD8+T細胞への分化についてアッセイし、DLL-4を組み込む種々のストラテジーを比較した(
図3A)。DLL-4の結合体化および繋ぎ留めが生物学的活性にとって必要であることが観察された。次いで、本発明者らは、致死線量以下で照射されたマウスにおいて、最も性能が良いゲルのサブセットを試験したところ、
図3Bに示されるように、未処置群と比べてTおよびB細胞の産生速度の上昇を観察した。
【0078】
前述の研究に加えて、本発明者らは、細胞集団を判定するために、得られた異所性の骨髄小結節をホモジナイズし、切片にする。HSCの走化性に対する間質細胞由来因子-1(SDF-1)のレベルも測定し、異所性の骨髄小結節の血管分布および細胞充実性の組織学的評価を健康な骨髄と比較する。本発明者らは、ある範囲のモル比(例えば、10-9~10-6)にわたってDLL-4をアルギネート骨格に結合体化することによってその系をさらに最適化する。さらに、骨髄においてもっぱらB細胞の発生を駆動するために、本発明者らは、少なくとも1週間にわたる可溶性IL-7の持続的放出を目標に、DLL-4の代わりに可溶性IL-7をある範囲の用量(100~500ng)にわたってヒドロゲルに組み込む。リンパ系前駆細胞が、分化し、成熟し、骨髄、末梢リンパ系器官、血液および脾臓を通って遊走する場合、フローサイトメトリーを用いて、それらのリンパ系前駆細胞を追跡する。
【0079】
実施例2-HSTC後のリンパ球再構成および免疫レパートリーの特徴づけ
ナイーブT細胞およびB細胞は、それぞれ細胞媒介性免疫および体液性免疫を介した、未知の病原体に対する持続的な応答にとって不可欠である。HSCT後のドナー細胞に由来するナイーブリンパ球の再構成を調べた。骨髄をドナーマウスから回収し、TおよびB細胞を枯渇させた(>95%)骨髄を、致死線量を照射されたコンジェニックレシピエントマウスに移植し、
図4Aに示されているように、TおよびB細胞の再構成を追跡した。CD3+細胞のT細胞受容体(TCR)を配列決定すること、ならびにTCR遺伝子の可変(V)および連結(J)セグメントの頻度および分布を調べることによって、
図4Bに示されているように、TCRの多様性を決定した。
【0080】
本発明者らは、クリニックで行われている移植操作を模倣し、全骨髄、または骨髄から精製されたLKS細胞を用いて調べる。移植される細胞とともに、実施例1に記載された研究から同定された最も性能が良いヒドロゲル足場材料を試験する。フローサイトメトリーおよび全血球算定を用いて、造血性コンパートメントにおけるT細胞およびB細胞を解析する。さらに、本発明者らは、T細胞受容体切除サークル(TREC)アッセイを使用して、胸腺からのナイーブT細胞の産生量を測定し、ナイーブCD3+CD4+/CD8+CD62Lhi集団を評価する。同様に、本発明者らは、骨髄中のナイーブB細胞(B220+CD40+CD84+)の再構成およびB細胞受容体レパートリーを評価する。
【0081】
実施例3 DLL-4、SDF-1およびBMP-2を含むマクロ多孔性ヒドロゲル
UPアルギン酸ナトリウム(ProNova Biomedical)をメタクリレート基で官能化して、メタクリル化アルギネート(methacrylated alginate)(MA-A
lg)を調製した。1~10nmolのdelta様リガンド-4(DLL-4,R&D
systems)を、EDC-NHSカップリングを用いてMA-Algに結合体化した。MA-アルギネートおよび4アームメタクリル化ポリエチレングリコール(MA-PEG)の、低温酸化還元によって誘導されるフリーラジカル重合によって、注射可能なマクロ多孔性ヒドロゲルを合成して、2.5wt%ヒドロゲルを調製した。骨形成タンパク質-2(BMP-2,R&D systems)および幹細胞分化因子-1(SDF-1,R&D systems)をその混合物に加えた後、低温重合を行った。骨髄から単離されたLin-c-kit+Sca-1+(LKS)細胞からCD4+およびCD8+T細胞への分化を用いて、DLL-4の生物活性を評価した。C57BL/6マウスにおける致死線量以下および致死線量の照射を用いて、それぞれ免疫不全および骨髄破壊的移植のコンディショニングを模倣した。CD45.2+マウス系統に移植を行い、コンジェニックCD45.1+B6.SJLマウスからのドナー由来細胞についてモニターした。ヒドロゲルを皮下に注射し、骨小結節の発生および関連する造血性ニッチ環境を、それぞれマイクロ-コンピュータ断層撮影法(μCT)および組織学的検査を用いてモニターした。末梢血における免疫細胞の回復を、FACS解析を用いて定期的にモニターした。T細胞受容体(TCR)の配列決定を用いて、T細胞レパートリーの多様性を決定した。
【0082】
MA-Alg/MA-PEGヒドロゲルにおいて、DLL-4は、足場に繋ぎ留められたままだったのに対して、BMP-2およびSDF-1は、2.5週間にわたって共放出した。インビトロでは、ヒドロゲルに繋ぎ留められたDLL-4は、Lin-c-kit+Sca-1+(LKS)細胞をナイーブCD4+およびCD8+細胞に分化させ、これは、TCPS上に吸収された天然のDLL-4に匹敵した。インビボでは、足場は、マウスにおいて、皮下の骨小結節の形成を誘導した。注射されたヒドロゲルの組織学的解析から、注射後2週間以内に、リンパ系前駆細胞が集合した骨髄を伴う骨小結節の形成が明らかになった。致死線量以下を照射されたマウスでは、BMP-2/DLL-4ヒドロゲルは、内在性の前駆HSCをリクルートし、内在性の前駆HSCのリンパ球分化を駆動することによって、3週間以内にTリンパ球およびBリンパ球の再構成を2桁超、加速させた。致死線量を照射され、移植されたマウスでは、ヒドロゲルは、移植された前駆HSCの生着のための優先的な部位として働き、TおよびB細胞への分化を誘導した。適応免疫系の回復は、致死線量以下を照射されたマウスの傾向と同様の傾向を示した。ヒドロゲルによって媒介された適格なT前駆細胞プール(T-competent progenitor pool)の拡大に
よって、移植されたマウスの胸腺の産生量が増加し、この拡大は、ナイーブT細胞プールの増加に対応した。TCRの配列決定は、TCR遺伝子の可変(V)および連結(J)セグメントの組換えによって測定される、ヒドロゲルによって媒介されたT細胞レパートリーの頻度および多様性の増加を明らかにした。
【0083】
結果は、生物学的キューを含むプログラム可能なバイオマテリアルが、骨髄間質の局面を再現できることを示している。ドナー細胞の生着に利用可能な部位を増加させること、およびリンパ球産生のためのキューを提供することによって、HSCTの後の適応免疫の再構成を加速させることができる。これにより、HSCTに関連する免疫学的合併症を潜在的に減少させることができ、血液学的障害の処置を改善することができる。