(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022166349
(43)【公開日】2022-11-02
(54)【発明の名称】ステレオカメラ
(51)【国際特許分類】
G01C 3/06 20060101AFI20221026BHJP
G03B 35/10 20210101ALI20221026BHJP
H04N 5/225 20060101ALI20221026BHJP
【FI】
G01C3/06 110V
G03B35/10
H04N5/225 400
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021071498
(22)【出願日】2021-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】591036457
【氏名又は名称】三菱電機エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100161171
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 潤一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】木田 亘
【テーマコード(参考)】
2F112
2H059
5C122
【Fターム(参考)】
2F112AC03
2F112AC06
2F112BA12
2F112CA12
2F112DA09
2F112FA35
2H059AA09
5C122DA13
5C122EA54
5C122FB11
5C122FH11
5C122HA88
5C122HB06
5C122HB10
(57)【要約】
【課題】従来必要だった光学系の調整を単純で簡易な構成とすることができるステレオカメラを得る。
【解決手段】同一の焦点距離を有し、互いの光軸が平行な第1のレンズおよび第2のレンズを有するレンズユニットと、第1の固定鏡と、第2の固定鏡と、第1の反射鏡および第2の反射鏡を有する三角鏡と、第1のレンズ、第1の固定鏡、および第1の反射鏡を経由した第1の画像と、第2のレンズ、第2の固定鏡、および第2の反射鏡を経由した第2の画像を同時に取り込むことで、被写体に関する2つの画像を含む1枚の撮像画像を生成する撮像素子とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を撮像するために用いられ、光を集光する第1のレンズおよび第2のレンズを有し、前記第1のレンズと前記第2のレンズとは、同一の焦点距離を有し、互いの光軸が平行であり、かつ互いの光軸間の距離が既知の値として配置されたレンズユニットと、
前記第1のレンズを通過した第1の光軸を有する光を反射させる第1の固定鏡と、
前記第2のレンズを通過した第2の光軸を有する光を反射させる第2の固定鏡と、
前記第1の固定鏡で反射された光および前記第2の固定鏡で反射された光を受光できる位置に配置され、前記第1の固定鏡で反射された光を反射させる第1の反射鏡と、前記第2の固定鏡で反射された光を反射させる第2の反射鏡とを有する三角鏡と、
前記第1のレンズ、前記第1の固定鏡、および前記第1の反射鏡を経由する第1の経路と、前記第2のレンズ、前記第2の固定鏡、および前記第2の反射鏡を経由する第2の経路とが、前記同一の焦点距離を有し、前記第1の経路を経由した光を第1の画像と、前記第2の経路を経由した光を第2の画像として同時に取り込むことで、前記被写体に関して前記第1の画像および前記第2の画像を含む1枚の撮像画像を生成する撮像素子と
を備えるステレオカメラ。
【請求項2】
前記第1の画像内における前記被写体の位置と、前記第2の画像内における前記被写体の位置との比較結果に基づいて視差を検出する視差検出回路と、
前記視差検出回路で検出された前記視差に基づいて前記レンズユニットから前記被写体までの距離を算出する測距回路と
をさらに備える請求項1に記載のステレオカメラ。
【請求項3】
前記レンズユニット、前記第1の固定鏡、前記第2の固定鏡、前記三角鏡、および前記撮像素子を含んで構成される光学系は、前記被写体に対して、前記第1の光軸が左側光軸となり、前記第2の光軸が右側光軸となるように配置されている
請求項1または2に記載のステレオカメラ。
【請求項4】
前記レンズユニット、前記第1の固定鏡、前記第2の固定鏡、前記三角鏡、および前記撮像素子を含んで構成される光学系は、前記被写体に対して、前記第1の光軸が上側光軸となり、前記第2の光軸が下側光軸となるように配置されている
請求項1または2に記載のステレオカメラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、1枚の撮像画像から視差を検出し、被写体までの測距を行う構成を備えたステレオカメラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
1対として構成された2台のカメラによって生じる視差を用いて、三角測量の原理により被写体までの距離を測定する手法がある。このような手法では、2台のカメラ間の視差を利用して測距するため、機械的な組み立て精度、焦点距離のばらつき、レンズの歪の影響、撮像素子の受光面のあおり、などにより、光学的な位置ずれが存在する。
【0003】
従って、2台のカメラを用いた従来技術において、測距に適した画像を得るためには、光学系に対して複雑な調整が必要となる。そこで、三角測量の原理に基づく測距を行う際に、光学系の調整を容易に行うことを可能とする従来技術がある(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
特許文献1では、2台のカメラが出力する1対の画像信号を格納するメモリを有している。そして、特許文献1では、ステレオカメラ光学系内の受光素子に対して、2台のカメラ間に発生する水平方向および上下方向の光軸のずれ量をメモリに記憶させておき、光軸のずれ量の分をずらして画像信号の読み出しを行うことで、光学的な位置調整を行っている。
【0005】
また、特許文献2では、撮像画像に対して非線形な形状補正を行うことを可能としている。すなわち、特許文献2では、レンズ歪み、撮像素子の受光面のあおり等の歪みを含め、画像の非線形な位置ズレに対する補正を可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3083422号公報
【特許文献2】特許第3284190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来技術には、以下のような課題がある。
特許文献1の方法によると、回転方向のズレ、光学系に起因するレンズ歪、受光面のあおり等に対して、補正することができないという課題がある。
【0008】
また、特許文献2の方法では、画像の非線形な位置ズレに対する補正を可能とするために、膨大な計算を行う回路が必要となり、回路規模の増大が発生するという課題がある。
【0009】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものであり、従来必要だった光学系の調整を単純で簡易な構成とすることができるステレオカメラを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示に係るステレオカメラは、被写体を撮像するために用いられ、光を集光する第1のレンズおよび第2のレンズを有し、第1のレンズと第2のレンズとは、同一の焦点距離を有し、互いの光軸が平行であり、かつ互いの光軸間の距離が既知の値として配置されたレンズユニットと、第1のレンズを通過した第1の光軸を有する光を反射させる第1の固定鏡と、第2のレンズを通過した第2の光軸を有する光を反射させる第2の固定鏡と、第1の固定鏡で反射された光および第2の固定鏡で反射された光を受光できる位置に配置され、第1の固定鏡で反射された光を反射させる第1の反射鏡と、第2の固定鏡で反射された光を反射させる第2の反射鏡とを有する三角鏡と、第1のレンズ、第1の固定鏡、および第1の反射鏡を経由する第1の経路と、第2のレンズ、第2の固定鏡、および第2の反射鏡を経由する第2の経路とが、同一の焦点距離を有し、第1の経路を経由した光を第1の画像と、第2の経路を経由した光を第2の画像として同時に取り込むことで、被写体に関して第1の画像および第2の画像を含む1枚の撮像画像を生成する撮像素子とを備えるものである。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、1つの撮像素子のみで、同一の被写体に対して互いに平行な光軸からの異なる視野による映像を同時に取り込むことができる。この結果、従来必要だった光学系の調整を単純で簡易な構成とすることができるステレオカメラを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の実施の形態1に係るステレオカメラに適用される三角鏡のイメージを示す図である。
【
図2】本開示の実施の形態1に係るステレオカメラのシステム構成図である。
【
図3】本開示の実施の形態1に係るステレオカメラにおける撮像素子上の結像イメージを示した図である。
【
図4】本開示の実施の形態1に係る視差検出回路により検出される視差のイメージ図である。
【
図5】本開示の実施の形態1に係る測距回路により、視差に基づいて、レンズから被写体までの距離を計算するために用いられる三角測量の原理に関する説明図である。
【
図6】本開示の実施の形態2に係るステレオカメラのシステム構成図である。
【
図7】本開示の実施の形態2に係るステレオカメラにおける撮像素子上の結像イメージを示した図である。
【
図8】本開示の実施の形態2に係る測距回路により、視差に基づいて、レンズから被写体までの距離を計算するために用いられる三角測量の原理に関する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示のステレオカメラの好適な実施の形態につき、図面を用いて説明する。
【0014】
実施の形態1.
図1は、本開示の実施の形態1に係るステレオカメラに適用される三角鏡のイメージを示す図である。
図1に示した本実施の形態1における三角鏡30は、左側光軸を反射するための反射鏡31と、右側光軸を反射するための反射鏡32とを備えて構成されている。
【0015】
また、
図2は、本開示の実施の形態1に係るステレオカメラのシステム構成図である。
図2に示した本実施の形態1に係るステレオカメラは、レンズ11、12、固定鏡21、22、三角鏡30、撮像素子40、視差検出回路50、および測距回路60を備えて構成されている。
【0016】
レンズ11は、光を集光するための左側のレンズであり、レンズ12は、光を集光するための右側のレンズである。レンズ11とレンズ12とは互いの光軸間の距離が既知の値として配置され、かつ同一の焦点距離を有している。
【0017】
固定鏡21は、レンズ11を通過した左側光軸の光を三角鏡30に向けて反射するための固定鏡である。固定鏡22は、レンズ12を通過した右側光軸の光を三角鏡30に向けて反射するための固定鏡である。
【0018】
三角鏡30は、固定鏡21で反射された左側光軸の光と、固定鏡22で反射された右側光軸の光とを、撮像素子40に対して反射する。本開示における三角鏡30とは、
図1および
図2に示したように、2枚の固定鏡21、22の間に配置され、固定鏡21で反射した左側光軸の光および固定鏡22で反射した右側光軸の光のそれぞれが、互いに平行な光として撮像素子40に入射されるように、反射鏡31および反射鏡32が配置されたものを指す。
【0019】
すなわち、左側光軸に対応した固定鏡21、および右側光軸に対応した固定鏡22のそれぞれによって、三角鏡30に向かって光が反射される。さらに、三角鏡30によって、固定鏡21および固定鏡22からのそれぞれの光が反射され、撮像素子40に向かって入射する。この結果、左右両方の光軸上の映像が、固定鏡21、22、三角鏡30を通してカメラ内の撮像素子40に入射する構成となっている。
【0020】
撮像素子40は、三角鏡30で反射された左側光軸の光および右側光軸の光を入射光として同時に取り込み、それぞれの入射光に応じた像を結像し、左側光軸画像41および右側光軸画像42を生成し、両画像に対応する電気信号を出力する。
【0021】
図3は、本開示の実施の形態1に係るステレオカメラにおける撮像素子40上の結像イメージを示した図である。
図3では、左側光軸上での画像イメージである左側光軸画像41と、右側光軸上での画像イメージである右側光軸画像42とが図示されている。
【0022】
視差検出回路50は、撮像素子40から電気信号として出力された左側光軸画像41と右側光軸画像42との視差を演算する。
【0023】
図4は、本開示の実施の形態1に係る視差検出回路50により検出される視差のイメージ図である。視差検出回路50では、左側光軸画像41および右側光軸画像42のそれぞれについて、左端から被写体1までの距離XLおよび距離XRを用いて視差の検出を行う。
【0024】
距離XLおよび距離XRは、左側光軸画像41上の被写体1が持つ特徴点と、その特徴点に対応する右側光軸画像42上の対応点とから検出する。従って、距離XLおよび距離XRを求めるには、2つの光軸画像41、42について、同じ対象物である被写体1を撮像した画素を抽出する必要があり、この方法のことをステレオマッチングと呼ぶ。
【0025】
視差検出回路50は、ステレオマッチングによって、左側光軸画像41上のある特徴点に対して、右側光軸画像42上の対応点を求めることができる。さらに、視差検出回路50は、特徴点と対応点を求めた際に生じたずれ(|XL-XR|)によって、視差を求めることができる。
【0026】
視差検出回路50は、検出した視差を出力し、出力された視差は、測距回路60に入力される。そして、測距回路60は、視差検出回路50で演算された視差から、三角測量の原理を用いて、被写体1までの距離を演算する。
【0027】
図5は、本開示の実施の形態1に係る測距回路60により、視差に基づいて、レンズから被写体1までの距離を計算するために用いられる三角測量の原理に関する説明図である。
【0028】
図5に示された各符号であるT、f、Z、XL、XRは、以下のように定義される。
T:左側光軸と右側光軸との間の距離
f:カメラの焦点距離、すなわち、レンズ11、12と撮像素子40との間の距離
Z:レンズ11、12を有するレンズユニットから被写体1までの距離
XL:左側レンズ11を通して入射する光が撮像素子40上で結像された左側光軸画像41における特徴点までの距離
XR:右側レンズ12を通して入射する光が撮像素子40上で結像された右側光軸画像42における対応点までの距離
【0029】
この
図5に示すように、レンズ11の光軸方向におけるレンズ11から被写体1までの距離と、レンズ12の光軸方向におけるレンズ12から被写体1までの距離とが、ともに距離Zとなるように、レンズ11の位置およびレンズ12の位置が調整される。
【0030】
さらに、固定鏡21と固定鏡22との間に配置された三角鏡30の位置調整を行うことで、レンズ11から撮像素子40までの光の経路と、レンズ12から撮像素子40までの光の経路とが、ともに焦点距離fとなるように調整される。
【0031】
このような調整を行うことで、距離XLと距離XRとの位置のずれ(|XL-XR|)を視差として検出することができるとともに、視差|XL-XR|と焦点距離f、および光軸間の距離Tとレンズユニットから被写体1までの距離Z、の関係が相似関係になる。従って、下式(1)が成り立つ。
【0032】
【0033】
従って、測距回路60は、下式(2)を用いることで、被写体1までの距離Zを測定することができる。
【0034】
【0035】
上述した本実施の形態1に係るステレオカメラの構成を整理すると、以下のような構成1~構成5を有することとなる。
構成1:被写体1を撮像するために用いられ、光を集光する第1のレンズ11および第2のレンズ12を有し、第1のレンズ11と第2のレンズ12とは、同一の焦点距離を有し、互いの光軸が平行であり、かつ互いの光軸間の距離Tが既知の値となるように配置されたレンズユニット。
【0036】
構成2:第1のレンズ11を通過した第1の光軸に相当する左側光軸を有する光を反射させる第1の固定鏡21。
【0037】
構成3:第2のレンズ12を通過した第2の光軸に相当する右側光軸を有する光を反射させる第2の固定鏡22。
【0038】
構成4:第1の固定鏡21で反射された光および第2の固定鏡22で反射された光を受光できる位置に配置され、第1の固定鏡21で反射された光を反射させる第1の反射鏡31と、第2の固定鏡22で反射された光を反射させる第2の反射鏡32とを有する三角鏡30。
【0039】
構成5:第1のレンズ11、第1の固定鏡21、および第1の反射鏡31を経由する第1の経路と、第2のレンズ12、第2の固定鏡22、および第2の反射鏡32を経由する第2の経路とが、同一の焦点距離fを有し、第1の経路を経由した光を第1の画像に相当する左側光軸画像41として、第2の経路を経由した光を第2の画像に相当する右側光軸画像42として同時に取り込むことで、被写体1に関して左側光軸画像41および右側光軸画像42を含む1枚の撮像画像を生成する撮像素子40。
【0040】
以上のような構成1~構成5を備えることで、実施の形態1によれば、1つの撮像素子のみで、同一の被写体に対して左右の平行な光軸からの異なる視野による映像を同時に取り込むことができる。特に、三角鏡の位置調整を行うことで、第1の経路と第2の経路を同じ距離に容易に調整できる。
【0041】
この結果、製造時の組み立て精度等によって2台のカメラの特性に違いが発生していたことに起因する測距精度の低下を解消し、レンズユニットから被写体までの距離をより正確に測定することが可能なステレオカメラを実現することができる。
【0042】
なお、実施の形態1に係るステレオカメラは、以下のような構成6、構成7をさらに有し、構成1~構成7を一体化することもできる。
構成6:左側光軸画像41内における被写体の位置に相当する距離XLと、右側光軸画像42内における被写体1の位置に相当する距離XRとの比較結果に基づいて視差|XL-XR|を検出する視差検出回路50。
【0043】
構成7:視差検出回路50で検出された視差|XL-XR|に基づいて第1のレンズ11および第2のレンズ12を有するレンズユニットから被写体1までの距離を算出する測距回路60。
【0044】
この結果、視差検出機能および測距機能を備えた一体型のステレオカメラを実現できる。
【0045】
実施の形態2.
先の実施の形態1では、左側光軸と右側光軸とから取り込んだ画像に基づいて視差を検出し、被写体1までの距離を測定する場合について説明した。これに対して、本実施の形態2では、上側光軸と下側光軸とから取り込んだ画像に基づいて視差を検出し、被写体1までの距離を測定する場合について説明する。
【0046】
図6は、本開示の実施の形態2に係るステレオカメラのシステム構成図である。
図6に示した本実施の形態2に係るステレオカメラは、レンズ13、14、固定鏡21、22、三角鏡30、撮像素子40、視差検出回路50、および測距回路60を備えて構成されている。
【0047】
レンズ13は、光を集光するための上側のレンズであり、レンズ14は、光を集光するための下側のレンズである。固定鏡21は、レンズ13を通過した上側光軸の光を三角鏡30に向けて反射するための固定鏡である。固定鏡22は、レンズ14を通過した下側光軸の光を三角鏡30に向けて反射するための固定鏡である。
【0048】
このような光学系の配置により、、本実施の形態2では、上下の光軸から取り込んだ像を取り込むことで、視差を測定し、被写体までの距離を計算することができる。
【0049】
図7は、本開示の実施の形態2に係るステレオカメラにおける撮像素子40上の結像イメージを示した図である。
図7では、上側光軸上での画像イメージである上側光軸画像43と、下側光軸上での画像イメージである下側光軸画像44とが図示されている。
【0050】
視差検出回路50は、撮像素子40から電気信号として出力された上側光軸画像43と下側光軸画像44との視差を演算する。
【0051】
視差検出回路50は、先の実施の形態1と同様に、ステレオマッチングによって、上側光軸画像43上のある特徴点に対して、下側光軸画像44上の対応点を求めることができ、距離YUおよび距離YDを求めることができる。さらに、視差検出回路50は、特徴点と対応点を求めた際に生じたずれ(|YU-LD|)によって、視差を求めることができる。
【0052】
視差検出回路50は、検出した視差を出力し、出力された視差は、測距回路60に入力される。そして、測距回路60は、視差検出回路50で演算された視差から、三角測量の原理を用いて、被写体1までの距離を演算する。
【0053】
図8は、本開示の実施の形態2に係る測距回路60により、視差に基づいて、レンズから被写体1までの距離を計算するために用いられる三角測量の原理に関する説明図である。
【0054】
図8に示された各符号であるT、f、Z、YU、YDは、以下のように定義される。
T:上側光軸と下側光軸との間の距離
f:カメラの焦点距離、すなわち、レンズ13、14と撮像素子40との間の距離
Z:レンズ13、14を有するレンズユニットから被写体1までの距離
YU:上側レンズ13を通して入射する光が撮像素子40上で結像された上側光軸画像43における特徴点までの距離
YD:下側レンズ14を通して入射する光が撮像素子40上で結像された下側光軸画像44における対応点までの距離
【0055】
この
図8に示すように、レンズ13の光軸方向におけるレンズ13から被写体1までの距離と、レンズ14の光軸方向におけるレンズ14から被写体1までの距離とが、ともに距離Zとなるように、レンズ13の位置およびレンズ14の位置が調整される。
【0056】
さらに、固定鏡21と固定鏡22との間に配置された三角鏡30の位置調整を行うことで、レンズ13から撮像素子40までの光の経路と、レンズ14から撮像素子40までの光の経路とが、ともに焦点距離fとなるように調整される。
【0057】
このような調整を行うことで、距離YUと距離YDとの位置のずれ(|YU-YD|)を視差として検出することができるとともに、視差|YU-YD|と焦点距離f、および光軸間の距離Tとレンズユニットから被写体1までの距離Z、の関係が相似関係になる。従って、下式(3)が成り立つ。
【0058】
【0059】
従って、測距回路60は、下式(4)を用いることで、被写体1までの距離Zを測定することができる。
【0060】
【0061】
上述した本実施の形態1に係るステレオカメラの構成を整理すると、以下のような構成1~構成5を有することとなる。
構成1:被写体1を撮像するために用いられ、光を集光する第1のレンズ13および第2のレンズ14を有し、第1のレンズ13と第2のレンズ14とは、同一の焦点距離を有し、互いの光軸が平行であり、かつ互いの光軸間の距離Tが既知の値となるように配置されたレンズユニット。
【0062】
構成2:第1のレンズ13を通過した第1の光軸に相当する上側光軸を有する光を反射させる第1の固定鏡21。
【0063】
構成3:第2のレンズ12を通過した第2の光軸に相当する下側光軸を有する光を反射させる第2の固定鏡22。
【0064】
構成4:第1の固定鏡21で反射された光および第2の固定鏡22で反射された光を受光できる位置に配置され、第1の固定鏡21で反射された光を反射させる第1の反射鏡31と、第2の固定鏡22で反射された光を反射させる第2の反射鏡32とを有する三角鏡30。
【0065】
構成5:第1のレンズ13、第1の固定鏡21、および第1の反射鏡31を経由する第1の経路と、第2のレンズ14、第2の固定鏡22、および第2の反射鏡32を経由する第2の経路とが、同一の焦点距離fを有し、第1の経路を経由した光を第1の画像に相当する上側光軸画像43として、第1の経路を経由した光を第2の画像に相当する下側光軸画像44として同時に取り込むことで、被写体1に関して上側光軸画像43および下側光軸画像44を含む1枚の撮像画像を生成する撮像素子40。
【0066】
以上のような構成1~構成5を備えることで、実施の形態2によれば、先の実施の形態1と同様に、1つの撮像素子のみで、同一の被写体に対して上下の平行な光軸からの異なる視野による映像を同時に取り込むことができる。特に、三角鏡の位置調整を行うことで、第1の経路と第2の経路を同じ距離に容易に調整できる。
【0067】
この結果、製造時の組み立て精度等によって2台のカメラの特性に違いが発生していたことに起因する測距精度の低下を解消し、レンズユニットから被写体までの距離をより正確に測定することが可能なステレオカメラを実現することができる。
【0068】
なお、実施の形態2に係るステレオカメラは、以下のような構成6、構成7をさらに有し、構成1~構成7を一体化することもできる。
構成6:上側光軸画像43内における被写体の位置に相当する距離YUと、下側光軸画像44内における被写体1の位置に相当する距離YDとの比較結果に基づいて視差|YU-YD|を検出する視差検出回路50。
【0069】
構成7:視差検出回路50で検出された視差|YU-YD|に基づいて第1のレンズ13および第2のレンズ14を有するレンズユニットから被写体1までの距離を算出する測距回路60。
【0070】
この結果、視差検出機能および測距機能を備えた一体型のステレオカメラを実現できる。
【0071】
なお、本開示における光学系の配置は、実施の形態1で説明した左右方向の配置、および実施の形態2で説明した上下方向の配置には限定されない。用途に応じて任意の方向に配置された光学系を採用することによっても、実施の形態1、2と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0072】
1 被写体、11 レンズ(第1のレンズ)、12 レンズ(第2のレンズ)、13 レンズ(第1のレンズ)、14 レンズ(第2のレンズ)、21 固定鏡(第1の固定鏡)、22 固定鏡(第2の固定鏡)、30 三角鏡、31 反射鏡(第1の反射鏡)、32 反射鏡(第2の反射鏡)、40 撮像素子、41 左側光軸画像(第1の画像)、42 右側光軸画像(第2の画像)、43 上側光軸画像(第1の画像)、44 下側光軸画像(第2の画像)、50 視差検出回路、60 測距回路。