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  • 特開-搬送用歯付ベルト 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022166381
(43)【公開日】2022-11-02
(54)【発明の名称】搬送用歯付ベルト
(51)【国際特許分類】
   F16G 1/28 20060101AFI20221026BHJP
   C08L 9/02 20060101ALI20221026BHJP
   C08L 23/16 20060101ALI20221026BHJP
   F16G 1/00 20060101ALI20221026BHJP
【FI】
F16G1/28 Z
C08L9/02
C08L23/16
F16G1/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021071554
(22)【出願日】2021-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000005061
【氏名又は名称】バンドー化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 理弘
(72)【発明者】
【氏名】吉見 武将
(72)【発明者】
【氏名】進藤 昌宏
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AC071
4J002BB152
4J002DA030
4J002DE100
4J002EF050
4J002EH096
4J002EH146
4J002EH156
4J002EK030
4J002FD010
4J002FD026
4J002FD030
4J002FD040
4J002FD050
4J002FD070
4J002FD090
4J002FD100
4J002FD130
4J002FD140
4J002FD150
4J002FD170
4J002FD200
4J002FD320
4J002GC00
4J002GM00
4J002GM01
4J002GQ00
4J002GT00
(57)【要約】
【課題】柔軟性が高くベルト曲げ抵抗が小さく、耐膨潤性に優れた搬送用歯付ベルトを提供すること。
【解決手段】ベルト本体と、前記ベルト本体に埋設された抗張体とを有し、
前記ベルト本体が、NBRとEPDMとを75/25~50/50の質量比で含むゴム成分を主成分とするゴム組成物からなり、
ベルト幅6mm当たりのベルト曲げ剛性が0.080N・cm以下である搬送用歯付ベルト。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルト本体と、前記ベルト本体に埋設された抗張体とを有し、
前記ベルト本体が、NBRとEPDMとを75/25~50/50の質量比で含むゴム成分を主成分とするゴム組成物からなり、
ベルト幅6mm当たりのベルト曲げ剛性が0.080N・cm以下であることを特徴とする搬送用歯付ベルト。
【請求項2】
背面摩擦係数(対PPC用紙)が、0.6以上であることを特徴とする請求項1に記載の搬送用歯付ベルト。
【請求項3】
前記ベルト本体のウォーレスゴム硬度が60°以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の搬送用歯付ベルト。
【請求項4】
前記ゴム組成物が、可塑剤を含むことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の搬送用歯付ベルト。
【請求項5】
紙葉類搬送用であることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の搬送用歯付ベルト。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送用歯付きベルト、特に、紙葉類搬送用歯付ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真装置、自動販売機、両替機、券売機等には、用紙、紙幣、クレジットカードなどの紙葉類を搬送するための搬送用歯付ベルトが使用されている。このような搬送用歯付ベルトは、省スペース化による動力源の小型化のために柔軟性が高くてベルト曲げ抵抗が小さいことが要求されると共に、当然ながら搬送力が良好であることも要求される。このような要求に対応した搬送ベルトとして、出願人は、柔軟性が高くベルト曲げ抵抗が小さい伝動ベルトを提案している(特許文献1)。
【0003】
紙葉類を搬送するための搬送用歯付ベルトは、紙幣や切符等の高い価値を有するモノを取り扱うものであるため、正確な枚数の紙幣を分離して搬送することが求められ、高い寸法安定性が要求される。ここで、例えば、紙幣やクレジットカードはその表面には皮脂、食品等由来の油脂が付着し、切符は印刷された直後に搬送されるためインクが十分に乾燥していない場合がある。そのため、搬送用歯付ベルトには、油脂や、インクに含まれる溶媒や可塑剤等と接触しても膨潤しない耐膨潤性が要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-139062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、柔軟性が高くベルト曲げ抵抗が小さく、耐膨潤性に優れた搬送用歯付ベルトを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための、本発明の構成は以下のとおりである。
1.ベルト本体と、前記ベルト本体に埋設された抗張体とを有し、
前記ベルト本体が、NBRとEPDMとを75/25~50/50の質量比で含むゴム成分を主成分とするゴム組成物からなり、
ベルト幅6mm当たりのベルト曲げ剛性が0.080N・cm以下であることを特徴とする搬送用歯付ベルト。
2.背面摩擦係数(対PPC用紙)が、0.6以上であることを特徴とする1.に記載の搬送用歯付ベルト。
3.前記ベルト本体のウォーレスゴム硬度が60°以上であることを特徴とする1.または2.に記載の搬送用歯付ベルト。
4.前記ゴム組成物が、可塑剤を含むことを特徴とする1.~3.のいずれかに記載の搬送用歯付ベルト。
5.紙葉類搬送用であることを特徴とする1.~4.のいずれかに記載の搬送用歯付ベルト。
【発明の効果】
【0007】
本発明の搬送用歯付ベルトは、柔軟性が高くベルト曲げ抵抗が小さいため、ベルトレイアウトの自由度が高く、また、動力源の起動トルクを小さくすることができるため、装置全体の省力化、小型化が実現できる。本発明の搬送用歯付ベルトは、耐膨潤性に優れており、長期間に亘って正確な搬送を行うことができる。本発明の搬送用歯付ベルトは、特に、電子写真装置、自動販売機、両替機、券売機、紙幣搬送装置等に内蔵される紙葉類搬送用歯付ベルトとして好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施態様例である搬送用歯付ベルトを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の搬送用歯付ベルトは、
ベルト本体と、前記ベルト本体に埋設された抗張体とを有し、
ベルト本体が、NBRとEPDMとを75/25~50/50の質量比で含むゴム成分を主成分とするゴム組成物からなり、
ベルト幅6mm当たりのベルト曲げ剛性が0.080N・cm以下であることを特徴とする。
なお、本明細書において、A~B(A、Bは数値)との記載は、A、Bを含む数値範囲、すなわち、A以上B以下を意味する。
【0010】
図1に、本発明の一実施態様例である搬送用歯付ベルト10を示す。
搬送用歯付ベルト10は、ベルト本体11に、抗張体としてベルト幅方向に一定ピッチの螺旋を形成するように心線12が埋設されており、それによって歯付ベルト本体11が背ゴム部11aと歯ゴム部11bとに仕切られている。さらに、搬送用歯付ベルト10は、歯ゴム部11b側表面が補強布13で被覆されており、歯ゴム部11bが補強布13で被覆されて歯部14が構成されている。
【0011】
搬送用歯付ベルト10の形状は、その用途等に応じて調整することができるが、例えば、ベルト周長が60~1400mm、ベルト幅が3.2~19.0mm、ベルト厚さが1.0~3.0mm、歯部ピッチが2.032~5.080mmである。歯部14は、例えば、歯部高さが0.5~2.0mm、歯部先端部の歯部幅が0.7~1.4mmである。歯部14の断面形状は、例えば、台形状や半円形状など特に限定されない。
【0012】
搬送用歯付ベルト10は、ベルト幅6mm当たりのベルト曲げ剛性が0.080N・cm以下である。搬送用歯付ベルトの曲げ剛性がこの値を満足すると、動力源の起動トルクを小さくすることができ、装置全体の省力化、小型化が実現できる。この曲げ剛性は、0.075N・cm以下であることがより好ましく、0.070N・cm以下であることがさらに好ましい。
【0013】
ここで、搬送用歯付きベルト曲げ剛性は、搬送用歯付きベルトの曲げこわさEに、搬送用歯付ベルトの断面二次モーメントIを乗じて算出される値である。例えば、曲げこわさEは、JIS K7106に従い、オルゼン曲げ試験機を用いた曲げ試験により求められる。断面二次モーメントIは、ベルト幅をb、歯底部分のベルト厚さをhとし、I=bh/12として求められる。
【0014】
搬送用歯付ベルト10は、背面摩擦係数(対PPC用紙)が、0.6以上であることが好ましい。この背面摩擦係数(対PPC用紙)が、0.6以上であると、紙幣を安定したスピードで搬送できるため好ましい。搬送用歯付ベルト10の背面摩擦係数(対PPC用紙)は、0.65以上であることがより好ましく、0.7以上であることがさらに好ましい。
【0015】
搬送用歯付ベルト10は、歯付ベルト本体11のウォーレスゴム硬度が60°以上であることが好ましい。ウォーレスゴム硬度がこのような値であると、耐粘着摩耗性に優れている。歯付ベルト本体11のウォーレスゴム硬度は、62°以上であることがより好ましく、65°以上であることがさらに好ましい。また、75°以下であることが好ましく、72°以下であることがさらに好ましい。
【0016】
ベルト本体11は、NBRとEPDMとを75/25~50/50の質量比で含むゴム成分を主成分とするゴム組成物からなる。本発明の搬送用歯付ベルトは、ベルト本体(ゴム組成物)がこのゴム成分を主成分とすることにより、耐膨潤性に優れている。ここで、主成分とするとは、80質量%以上含むことを意味し、ベルト本体(ゴム組成物)は添加物等を含むことができる。
【0017】
・ニトリルゴム(NBR)
NBRは、アクリロニトリルと1,3-ブタジエンとの共重合体である。アクリロニトリルと1,3-ブタジエンの組成比は、加工性や求める物性に合わせて適宜調整することができる。例えば、耐膨潤性と耐寒性の点から、アクリロニトリルの含有量が12質量%以上45質量%以下であるものが好ましく、30質量%以上40質量%以下であることがより好ましい。NBRは、1種類もしくは2種類以上を混合して使用することもできる。
【0018】
・エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)
EPDMは、エチレン、プロピレン及びジエンの3成分の三元共重合体である。エチレンとプロピレンの組成比は、加工性や求める物性に合わせて適宜調整することができる。例えば、耐寒性の点から、エチレンの含有量が40質量%以上58質量%以下であるものが好ましい。また、ジエン成分としては、ジシクロペンタジエン(DCPD)、5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB)、1,4-ヘキサジエン(1,4-HD)等を使用することができる。これらの中で、ENBの含有量が4質量%以上12質量%以下のものが、高弾性であるため好ましい。EPDMは、1種類もしくは2種類以上のEPDMを混合して使用することもできる。
【0019】
本発明のゴム組成物は、NBRとEPDMとを75/25~50/55の質量比で含む。この範囲内とすることにより、搬送用歯付ベルトとして要求される各種物性を、バランス良く発揮することができる。NBRとEPDMとの質量比は、70/30~55/45であることが好ましい。また、耐寒性が要求される用途であれば、ゴム組成物におけるアクリロニトリル含有量が、26質量%以下であることが好ましい。
【0020】
・可塑剤
本発明のゴム組成物は、可塑剤を含むことが好ましい。NBRとEPDMは互いに相溶しないため、NBRとEPDMを混合(混練)したゴム組成物は、海島構造を形成している。そして、このゴム組成物を用いたゴム製品は、大きな力が加わると海島構造(異種高分子)の界面を起点として亀裂が生じやすく、特に、無機粒子を配合すると、無機粒子が海島構造の界面に集まり、より強度が低下してしまう。
NBRとEPDMを含むゴム組成物に、可塑剤を配合することにより、引張強度の低下を抑えることができる。詳細なメカニズムは不明であるが、出願人は、可塑剤がNBRとEPDMとが形成する海島構造の界面に集まり、両者を結び付ける機能を果たすためであると推測している。
【0021】
可塑剤は、本発明の効果を奏するものであれば特に制限されないが、例えば、合成可塑剤のフタル酸エステル系、脂肪族二塩基酸エステル系、トリメリット酸エステル系、エーテルエステル系、ポリエーテルエステル系、ポリエステル系や、石油系軟化剤のナフテン系、芳香族系、パラフィン系等が挙げられる。フタル酸エステル系としては、例えばジブチルフタレート(DBP)、ジ(2-エチルヘキシル)フタル酸エステル(DOP)、ジイソノニルフタレート(DINP)等、脂肪族二塩基酸エステル系としては、例えばジ(2-エチルヘキシル)アジペート(DOA)、ジブチルセバケート(DBS)、ジ(2-エチルヘキシル)セバケート(DOS)等、トリメリット酸エステル系としては、例えばトリ2-エチルヘキシルトチメリテート(TOTM)、トリデシルトリメリテート(TDTM)等、エーテルエステル系としては、例えばアジピン酸エーテルエステル等、ポリエステル系としては、例えばアジピン酸ポリエステル、セバシン酸ポリエステル等が挙げられる。これらは市販品を用いることもでき、例えばポリエーテルエステル系としては、アデカサイザーRS-700、RS-735、RS-966、RS-1000等を用いることができる。
本発明において、可塑剤の配合量は、本発明の効果を奏する限り特に制限されないが、ゴム成分100質量%に対して、3質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましい。また、この配合量の上限は、25質量%以下程度である。それ以上可塑剤を配合しても、その効果は飽和してほとんど性能が向上せず、ゴム表面にブリードする場合があり、また、高コストとなる。
【0022】
・架橋剤
ゴム成分を架橋させるための架橋剤としては、有機過酸化物、硫黄、さらに、これらを併用することができる。また、ゴム成分は、電子線等が用いられて架橋していてもよい。これらの中で、耐摩耗性の点から、有機過酸化物を用いることが好ましく、具体的には、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ)-p-ジイソプロピルベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチルジ(t-ブチル)ヘキシン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン等が挙げられる。有機過酸化物は、これらのうちの1種又は2種以上を併用することができる。有機過酸化物の配合量は、通常、ゴム成分100質量%に対して例えば1質量%以上8質量%以下程度である。
【0023】
・架橋助剤
架橋助剤としては、例えば、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、エチレンジメタクリレート、1,3-ブチレンジメタクリレート、1,4-ブチレンジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、2,2’-ビス(4-メタクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2’-ビス(4-アクロキシジエトキシフェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、オリゴエステルアクリレート、アルミニウムメタクリレート、亜鉛メタクリレート、マグネシウムジメタクリレート、カルシウムジメタクリレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリテート、ジアリルフタレート、ジアリルクロレンデート、ジビニルベンゼン、2-ビニルピリジン、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、p-キノンジオキシン、p,p’-ジベンゾイルキニンジオキシン、1,2-ポリブタジエン、ジペンタメチレンチウラムテトラサルフィード等が挙げられる。架橋助剤は、これらのうちの1種又は2種以上を併用することができる。これらの中で、硫黄が、ベルト曲げ剛性とウォーレスゴム硬度を本発明の範囲にすることが容易であるため好ましい。架橋助剤の添加量は、ゴム成分100質量%に対して0.1質量%以上3.0質量部%以下程度である。
【0024】
・無機粒子
ゴム組成物は、シリカ、カーボンブラック、酸化チタン、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、硫酸バリウム、珪藻土、クレー、タルク、酸化亜鉛等の無機粒子の1種または2種以上を含むことができる。NBRとEPDMとを含むゴム組成物において、無機粒子はNBRとEPDMとが形成する海島構造の界面に集まりやすく、界面での強度が低下する原因となりやすい。本発明のゴム組成物は、NBRとEPDMとが形成する海島構造の界面における強度に優れているため、無機粒子を配合しても強度の低下を小さくすることができる。無機粒子の配合量は、ゴム成分100質量%に対して、10質量%以上が好ましく、20質量以上がより好ましい。また、この配合量の上限は、100質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましい。無機粒子としては、カーボンブラックを用いることが導電性付与、補強性、紫外線劣化防止性等の点から好ましい。配合するカーボンブラックは特に制限されず、例えば、チャネルブラック;SAF、ISAF、N-339、HAF、N-351、MAF、FEF、SRF、GPF、ECF、N-234などのファーネスブラック;FT、MTなどのサーマルブラック;アセチレンブラック、ケッチェンブラックEC300J、ケッチェンブラックEC600JD等が挙げられる。
【0025】
本発明のゴム組成物は、その他に加工助剤、加硫促進剤、加硫促進助剤、老化防止剤、スコーチ防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、軟化剤、発泡剤、発泡助剤、滑剤、難燃剤、帯電防止剤、着色剤等を含むことができる。
加工助剤としては、例えば、ステアリン酸、ポリエチレンワックス、脂肪酸の金属塩等が挙げられる。加工助剤は、これらのうち1種又は2種以上を使用することができる。加工助剤の含有量は、例えば、ゴム成分100質量%対して、0.5質量%以上2質量%以下である。
加硫促進剤としては、例えば、チウラム系(例えばTETD、TT、TRAなど)、チアゾール系(例えばMBT、MBTSなど)、スルフェンアミド系(例えばCZなど)、ジチオカルバミン酸塩系(例えばBZ-Pなど)のもの等が挙げられる。加硫促進剤は、これらのうち1種又は2種以上を使用することができる。加硫促進剤の含有量は、例えば、ゴム成分100質量%対して、2質量%以上5質量%以下である。
【0026】
加硫促進助剤としては、例えば、酸化亜鉛(亜鉛華)や酸化マグネシウムなどの金属酸化物、金属炭酸塩、脂肪酸及びその誘導体等が挙げられる。加硫促進助剤は、これらのうち1種又は2種以上を使用することができる。加硫促進助剤の含有量は、ゴム成分100質量%対して、3質量%以上7質量%以下である。
老化防止剤としては、例えば、アミン-ケトン系老化防止剤、ジアミン系老化防止剤、フェノール系老化防止剤等が挙げられる。老化防止剤は、これらのうち1種又は2種以上を使用することができる。老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量%対して、0.1質量%以上5質量%以下である。
【0027】
心線12は、例えば、ガラス繊維の繊維束をRFL液(レゾルシン・ホルマリン・ラテックス水溶液)に浸漬して加熱処理を施した後に撚り糸にしたものや、アラミド繊維の撚り糸をRFL液に浸漬して加熱処理を施したものや、ワイヤーロープをゴム糊に浸漬した後に加熱処理を施したもの等を用いることができる。ガラス繊維製やアラミド繊維製の心線は、さらにゴム糊に浸漬した後に加熱処理を施したものであってもよい。心線は、例えば、外径が0.1~0.4mm、ベルト幅方向のピッチが0.1~0.7mmである。
【0028】
補強布13は、例えば、ナイロン繊維やアラミド繊維の織布(綾織り織布など)をゴム糊に浸漬した後に加熱処理を施したものや、それにさらに歯付ベルト本体側の面にペースト状のゴム糊を塗工したもの等を用いることができる。補強布は、例えば、厚さが0.1~0.7mmである。
補強布は、帆布の引張強さが、経方向(ベルトの幅方向)で300N/3cm以上であり、緯方向(ベルト周長方向)で経方向の80%以上有していることが好ましい。また、伸び率が経方向に対し緯方向は3倍以上有していることが好ましい。
【0029】
本発明の搬送用歯付ベルトは、公知の製造方法によって製造することができる。
本発明の搬送用歯付ベルトの用途は特に制限されないが、本発明の搬送用歯付ベルトは、柔軟性、耐膨潤性に優れているため、特に、電子写真装置、自動販売機、両替機、券売機、紙幣搬送装置等に内蔵され、印刷物、紙幣等を搬送する紙葉類搬送用歯付ベルトとして好適に用いることができる。
【実施例0030】
以下、本発明について実施例を挙げてさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
「実施例1」
NBR(JSR社製、N230S)70質量部、EPDM(ダウ・ケミカル社製、Nordel IP4640)30質量部、ポリエーテルエステル系可塑剤(ADEKA社製 アデカサイザーRS700)10質量部、カーボンブラックFEF(東海カーボン社製、商品名:シーストSO)60質量部、ステアリン酸1質量部、酸化亜鉛5質量部、架橋剤(日油株式会社製、ペロキシモンF-40)5質量部を、密閉式混練機により混練し、得られた未架橋のゴム組成物をロールにてシート状にし、170℃×20分間プレス成型することにより1mm厚及び2mm厚の架橋ゴムシートを作製した。
【0031】
「実施例2」
NBR60質量部、EPDM40質量部とした以外は、実施例1と同様にして架橋ゴムシートを作成した。
「実施例3」
NBR55質量部、EPDM45質量部とした以外は、実施例1と同様にして架橋ゴムシートを作成した。
【0032】
「比較例1」
NBR80質量部、EPDM20質量部、ポリエーテルエステル系可塑剤5質量部、架橋剤6.5質量部とした以外は、実施例1と同様にして架橋ゴムシートを作成した。
「比較例2」
NBR40質量部、EPDM60質量部とした以外は、実施例4と同様にして架橋ゴムシートを作成した。
【0033】
得られた架橋ゴムシートについて、下記評価を行った。結果を表1に示す。
・ゴム硬度
JIS K6253-3:2012に準じて、2mm厚の架橋ゴムシートを3枚重ねた状態でタイプAデュロメータを用いて測定した。
・引張強さ、破断伸び
JIS K6251:2010に準じて、2mm厚の架橋ゴムシートの引張強さ(TB)、破断伸び(Eb)を測定した。
・ゲーマンねじり(t100)
JIS K6261に準じて、ゲーマンねじり試験によるt100(ねじり剛性が23℃での値の100倍になる温度)を測定した。2mm厚の架橋ゴムシートを3mm幅の短冊状に打ち抜いたサンプルを用いて測定した。
【0034】
・耐膨潤性
2mm厚の架橋ゴムシートを3cm角にカットした試験片を、亜麻仁油(山桂産業株式会社)に、80℃で24時間浸漬した。その後、取り出した試験片の表面をウエスで良く拭いてから、空気中での質量、水中での質量を測定し、下記式(1)により浸漬前後の体積変化率を求めた。
(式1)

(ただし、ΔV100は体積変化率、mは浸漬前の空気中での質量、mは浸漬前の水中での質量(重りの質量を加算)、mは浸漬後の空気中での質量、mは浸漬後の水中での質量(重りの質量を加算)、mは重りの水中での質量を表す)
【0035】
・耐オゾン
1mm厚の架橋ゴムシートを幅10mm、長さ約40mmに打ち抜いた試験片を、Φ8mmのステンレス製丸棒にたるみが無いよう巻き付け、雰囲気がオゾン濃度50pphm、温度40℃である槽に入れ、2、4、24時間、以降24時間おきに336時間まで、試験片に亀裂が発生しているか否かを目視観察した。
【0036】
【表1】
【0037】
実施例1~3のゴム組成物は、耐膨潤性に優れ、さらに、耐オゾン性に優れていた。
それに対し、比較例1のゴム組成物は、耐膨潤性には優れていたものの耐オゾン性に劣り、比較例2のゴム組成物は耐膨潤性に劣っていた。
【0038】
実施例2のゴム組成物を用い、搬送用歯付ベルトを作成した。
搬送用歯付ベルトは、ベルト周長を150mm、ベルト幅を6mm、ベルト厚さを1.1mm、歯部ピッチを2.032mmとした。また、歯部は、歯部高さを0.51mm、歯部先端部の歯部幅を0.76mmとした
抗張体として、ファイバ径9μmのガラス繊維200本を2つ合わせた繊維束を、スチレン-ブタジエン-ビニルピリジン三元共重合体ラテックスのRFL液(レゾルシン・ホルマリン・ラテックス水溶液)に浸漬して加熱処理を施した後に撚り糸にしたものスパイラル巻きにして用いた。また、補強布として、6,6ナイロンの綾織り織布を、スチレン-ブタジエン-ビニルピリジン三元共重合体ラテックスのRFL液(レゾルシン・ホルマリン・ラテックス水溶液)に浸漬して加熱処理を施したものを用いた。
【0039】
得られた搬送用歯付ベルトについて、下記評価を行った。
・曲げ剛性
得られた搬送用歯付ベルトについて、JIS K7106に従い、オルゼン曲げ試験機を用いた曲げ試験により曲げこわさEを求めた。なお、試験片の長さを7cm、試験片の幅bをベルト幅6mm、試験片の厚さhを歯底部分のベルト厚さ1.1mmとすると共に、支柱間距離Sを1.27cm、荷重目盛100%における振り子のモーメントMを0.002648N・m、曲げ角度Φを50π/180radとした。測定は、温度23±2℃及び湿度50±5%の条件下で行った。
曲げこわさEに、搬送用歯付ベルトの断面二次モーメントIを乗じてベルト曲げ剛性を算出した。なお、断面二次モーメントIは、I=bh/12で求められる。
【0040】
<ウォーレスゴム硬度>
搬送用歯付ベルト本体のベルト外側表面について、ウォーレスゴム硬度計(Wallace、Model No.H12/1)を用いてウォーレスゴム硬度を計測した。
<背面摩擦係数(対PPC用紙)>
搬送用歯付ベルトの背面の摩擦係数について、ヘイドン式摩擦摩耗試験(新東科学株式会社、TYPE:14FW)を用いて、ベルトの幅6mm、相手材はPPC用紙で荷重0.98Nを掛け、スピードは100mm/minで測定を実施した。
【0041】
結果を表2に示す。
【表2】
【0042】
本発明である搬送用歯付ベルトは、柔軟でベルト曲げ抵抗が小さいため、多数のプーリーを介して複雑なレイアウトに掛け回されても破断等が生じにくく、長期間に亘って使用することができる。また、この搬送用歯付ベルトは、搬送用として十分な摩擦係数を備えている。さらに、この搬送用歯付ベルトは、耐膨潤性、耐オゾン性に優れているため、油脂、溶媒、可塑剤等を含む紙幣、切符、印刷物等の使用類の搬送に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0043】
10 搬送用歯付ベルト
11 ベルト本体
11a 背ゴム部
11b 歯ゴム部
12 心線
13 補強布
14 歯部

図1