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特開2022-166440切断用板、耕うん用板などの作業用板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022166440
(43)【公開日】2022-11-02
(54)【発明の名称】切断用板、耕うん用板などの作業用板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 1/00 20060101AFI20221026BHJP
   B23K 1/19 20060101ALI20221026BHJP
   A01B 15/04 20060101ALI20221026BHJP
【FI】
B23K1/00 330Z
B23K1/19 Z
A01B15/04
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021071643
(22)【出願日】2021-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】593077250
【氏名又は名称】ナシモト工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097065
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 雅栄
(72)【発明者】
【氏名】梨本 正實
【テーマコード(参考)】
2B032
【Fターム(参考)】
2B032BB07
2B032BB08
(57)【要約】
【課題】ろう付けに際しての熱収縮差を抑えることで、基板とは異種金属の高硬度材を広範囲に強固に付設できることとなり、そのため切断性能などの作業機能を向上でき、しかも止着強度も耐久性も向上することができる切断用板などの作業用板の製造方法を提供すること。
【解決手段】予め溶接用母材に分割形状の前記高硬度材をろう材を溶融してろう付けした分割高硬度材パーツ6を、広範囲の付設部にこの溶接用母材4により連続並設状態に溶接して、前記分割形状の高硬度材3を広範囲に連続並設状態に付設した切断用板などの作業用板の製造方法。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に移動接触または打撃接触させてこの対象物を切断、細裂、破断、撹拌または耕うんする基板の接触部に、高硬度材がろう付けして付設されている作業用板の製造方法であって、
前記基板の前記接触部となる側部の前記高硬度材を付設する付設部に、予め溶接用母材に分割形状の前記高硬度材をろう材を溶融してろう付けした分割高硬度材パーツを、この溶接用母材により連続並設状態に溶接して、前記分割形状の高硬度材を所定長さ連続並設状態に付設することを特徴とする切断用板、耕うん用板などの作業用板の製造方法。
【請求項2】
前記基体は鋼材であり、前記分割高硬度材パーツの前記溶接用母材は前記基体と同種の金属であり、小ブロック状の前記分割高硬度材パーツの前記分割形状の前記高硬度材は、超硬材であることを特徴とする請求項1記載の切断用板、耕うん用板などの作業用板の製造方法。
【請求項3】
前記溶接用母材のろう付け接合用上面を係合溝面とし、前記分割高硬度材パーツの前記分割形状の高硬度材のろう付け接合用底面を前記係合溝面に係合する係合面に形成したことを特徴とする請求項1、2のいずれか1項に記載の切断用板、耕うん用板などの作業用板の製造方法。
【請求項4】
前記溶接用母材の前記ろう付け接合用上面をV状係合溝面とし、前記分割高硬度材パーツの前記分割形状の高硬度材の前記ろう付け接合用底面を前記係合溝面に係合する山状係合面に形成したことを特徴とする請求項3記載の切断用板、耕うん用板などの作業用板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば回転体の取付軸に多数並設状態に取り付けて回転させ、次々と投入される対象物を打撃して切断(細断)、細裂または破断する切断用板、細裂用板、破断用板、打撃用板、またはその他対象物を撹拌または耕うんする撹拌用板、耕うん用板などの作業用板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
たとえば、回転させることで対象物を打撃して切断(細断)、細裂または破断する基板の先端部側部の接触部(切断用基板側部)に高硬度材を付設した作業用板(たとえば、細断機に用いる切断用板(カッターナイフ)や細裂機に用いる細裂用板(シュレッダーハンマー))がある。
【0003】
具体的には、このような切断用板や細裂用板は、たとえば基板(SC)の切断用あるいは打撃用の基板側部に設けた付設部に、高硬度材として板状の超硬材(WC)を付設し、この超硬材部分で回転しながら対象物を打撃することで細断あるいは細裂する構成としている。
【0004】
さらに説明すると、たとえば収穫したサトウキビを原料とする粗糖製造工程でロール圧搾による搾汁工程の前処理として切断用板(カッターナイフ)を多数装着した細断機で細断処理した後、細裂用板を多数装着した細裂機でさらに多量のサトウキビを細裂するが、たとえばこの切断用板は、多量のサトウキビ(の茎)を細断処理する細断機の機体ケース内の回転体の取付部に、この作業用板(切断用板)の基板の基端部に設けたボルト貫通孔を介してボルト止めして多数並設状態に取り付け、この機体ケース内で回転体を回転させてこの多数の作業用板(切断用板)を回転させ、この機体ケース内の回転体上部に多量のサトウキビを投入し、この各切断用板の切断用基板側部に付設した超硬材部分で次々と回転しながら打撃してこのサトウキビを細断排出する構成としている。
【0005】
このような切断用板での細断効率を向上させるために、接触部には前述のように高硬度材として超硬材(WC)を付設するが、この超硬材(WC)は基板1(母材(SCやSSなど))とは異種金属のため、接合面に融点の低いろう材(接合材)を溶融してろう付け止着している。
【0006】
しかしながら、このろう付け止着に際してろう材を融解させるため熱を加えるが、母材と超硬材とで加熱冷却の際に熱収縮差が生じてしまうため、この超硬材を基板の先端部側部の広範囲に強固にろう付けすることができなかった。
【0007】
すなわち、高硬度材(超硬材)は比較的高価ではあるが、作業性能(たとえば切断性能)や耐久性が要求される用途では、たとえば切断用板の基板側部広範囲に高硬度材をろう付け止着することが望ましいが、異種金属のためこのろう付けによる熱収縮差が生じ、高硬度材の長さが長いとこの収縮差は看過できず、そのため広範囲に高硬度材を付設する場合には止着強度が著しく低下するおそれがあり、実用性に劣る問題があることから、広範囲に高硬度材を設けることはできないとされていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような問題を見出し、これら問題を解決したもので、基板に異種金属である高硬度材をろう付け止着するに際して、熱収縮差の問題が顕著とならずたとえこの熱収縮差が生じてもたとえばこれを吸収し止着強度が低下しないように、予め溶接用母材に分割形状の高硬度材をろう付け止着した分割高硬度材パーツを複数製作し、これらを基板の所定付設部に溶接止着して、ろう付け母材とは異種金属の高硬度材を広範囲に強固に付設できることとなり、そのため切断性能などの作業機能を向上でき、しかも止着強度も耐久性も向上することができる極めて実用性に優れた画期的な切断用板、細裂用板、破断用板、打撃用板、撹拌用板、耕うん用板などの作業用板を実現できる切断用板などの作業用板の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0010】
対象物に移動接触または打撃接触させてこの対象物を切断、細裂、破断、撹拌または耕うんする基板1の接触部2に、高硬度材3がろう付けして付設されている作業用板の製造方法であって、前記基板1の前記接触部2となる側部の前記高硬度材3を付設する付設部に、予め溶接用母材4に分割形状の前記高硬度材3をろう材5を溶融してろう付けした分割高硬度材パーツ6を、この溶接用母材4により連続並設状態に溶接して、前記分割形状の高硬度材3を所定長さ連続並設状態に付設することを特徴とする切断用板、耕うん用板などの作業用板の製造方法に係るものである。
【0011】
また前記基体1は鋼材であり、前記分割高硬度材パーツ6の前記溶接用母材4は前記基体1と同種の金属であり、小ブロック状の前記分割高硬度材パーツ6の前記分割形状の前記高硬度材3は、超硬材であることを特徴とする請求項1記載の切断用板、耕うん用板などの作業用板の製造方法に係るものである。
【0012】
また前記溶接用母材4のろう付け接合用上面7を係合溝面7とし、前記分割高硬度材パーツ6の前記分割形状の高硬度材3のろう付け接合用底面8を前記係合溝面7に係合する係合面8に形成したことを特徴とする請求項1、2のいずれか1項に記載の切断用板、耕うん用板などの作業用板の製造方法に係るものである。
【0013】
また前記溶接用母材4の前記ろう付け接合用上面7をV状係合溝面7とし、前記分割高硬度材パーツ6の前記分割形状の高硬度材3の前記ろう付け接合用底面8を前記係合溝面7に係合する山状係合面8に形成したことを特徴とする請求項3記載の切断用板、耕うん用板などの作業用板の製造方法に係るものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明は上述のように構成したから、基板に異種金属である高硬度材をろう付け止着するに際して、熱収縮差の問題が顕著とならずたとえこの熱収縮差が生じてもたとえばこれを吸収し止着強度が低下しないように、予め溶接用母材に分割形状の高硬度材をろう付け止着した分割高硬度材パーツを複数製作し、これらを基板の所定付設部に溶接止着して、ろう付け母材とは異種金属の高硬度材を広範囲に強固に付設できることとなり、そのため切断性能などの作業機能を向上でき、しかも止着強度も耐久性も向上することができる極めて実用性に優れた画期的な切断用板、細裂用板、破断用板、打撃用板、撹拌用板、耕うん用板などの作業用板を実現できる切断用板などの作業用板の製造方法となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施例の説明正面図である。
図2】本実施例の説明側面図である。
図3】本実施例の説明平断面図である。
図4】本実施例の使用状態(細断機のカッターナイフに本発明を適用した本実施例のこの細断機内部)の説明斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の最適な実施形態を図面に基づいて本発明の作用を示し簡単に説明する。
【0017】
基板1の接触部2となる先端部側部に付設した高硬度材3が、対象物に移動接触または打撃接触しこの対象物を切断、細裂、破断、打撃、撹拌または耕うんする。この高硬度材3は基板1の接触部2となる先端部側部の付設部に止着して付設する。
【0018】
この高硬度材3は、基板1とは異種金属のため、接合面同士を強固に接合するためには、融点の低いろう材5を接合材とするろう付けにより止着するが、広範囲に長い高硬度材3をろう付けすると、ろう付けに際しての加熱と冷却によって前述のように熱収縮差が看過できないほど生じるおそれがあり、そのため止着強度が上がらず強固に接合できずまた耐久性に劣る。そのため前述のように広範囲に(長い)高硬度材3を付設することはできないとされていた。
【0019】
しかし、本発明は、基板1とは異種金属である高硬度材3をろう付け止着するに際して、このような熱収縮差の問題が顕著とならず、またたとえこの熱収縮差が生じてもたとえばこれを吸収し止着強度が低下しないように、予め基板1に溶接するための溶接用母材4に、分割形状の高硬度材3をろう付け止着した分割高硬度材パーツ6を複数製作し、これらを基板1の所定の前記付設部に溶接止着して、ろう付け母材である基板1とは異種金属の高硬度材3であっても大きな熱収縮差を生じさせないで広範囲に強固に高硬度材3を付設することができる。
【0020】
すなわち、本発明は、たとえば基板1と同種金属の溶接用母材4に分割形状の前記高硬度材3を、ろう材5(接合材)を溶融してろう付けした小ブロック状の分割高硬度材パーツ6を予め複数製作し、前記基板1の前記接触部2となる先端部側部の前記高硬度材3を付設したい広範囲の前記付設部に、この小ブロック状の分割高硬度材パーツ6をこの基板1と同種の溶接用母材4により連続並設状態に溶接して、総じて所定範囲(広範囲の付設部)に所定形状(分割形状)の高硬度材3を並設状態に強固に付設できることとなる。
【0021】
そのため、ろう付け母材である基板1と異種金属の高硬度材3を広範囲に(長く)付設できることとなるから、切断性能などの作業機能が向上し、またパーツ6に分けて並設溶接して付設するからそれだけ熱収縮差も抑えられ、またたとえ収縮差が生じるとしても分割並設止着しているためこの収縮差も吸収されるため、広範囲に強固に止着でき止着強度も耐久性も向上することになる極めて実用性に優れた画期的な切断用板などの作業用板を実現できる。
【実施例0022】
本発明の具体的な実施例1について図面に基づいて説明する。
【0023】
本実施例は、たとえば収穫した多量のサトウキビを細断する細断機に多数並設状態に取り付ける切断用板(細断用カッターナイフ)に本発明を適用したもので、機体ケース内の回転体の取付部に、基板1の基端部に設けたボルト貫通孔10を介してボルト止めして、多数並設状態に取り付ける構成としている。
【0024】
すなわち、対象物(たとえば細断させるサトウキビ)に回転しながら打撃接触させてこの対象物を細断する基板1の打撃接触部2(切断用刃縁部)に高硬度材3(超硬材)を付設した作業用板(切断用板)としている。
【0025】
具体的には、本実施例では、方形板状の基板1の前記打撃接触部2(切断用刃縁部)となる先端部側部の前記高硬度材3が付設される所定の(広範囲とする)付設部に、高硬度材3を付設する構成としている。なお、左右両側部に設けてもよい。
【0026】
また本実施例では、この高硬度材3(付設範囲)がやや先端側ほど徐々に側方に突出した形状(なた状)に露出突出した形状とし、切断性能がさらに向上するように構成している。
【0027】
この所定の付設部に高硬度材3を付設するに際して、本実施例では、基板1と同種金属の溶接用母材4に分割形状の前記高硬度材3を、融点の低いろう材5(接合材)を溶融してろう付けした小ブロック状の分割高硬度材パーツ6を予め複数製作し、前記基板1の前記接触部2となる先端部側部の前記高硬度材3を付設する所定の(広範囲に設定した)付設部に、この小ブロック状の分割高硬度材パーツ6を、基板1と同種の溶接用母材4により連続並設状態に溶接して、総じて広範囲に(長い)高硬度材3を付設している。
【0028】
具体的には、本実施例の基体1は鋼材(SS)であり、前記分割高硬度材パーツ6の前記溶接用母材4は前記基体1と同種の金属(全く同じSS)とし、小ブロック状の前記分割高硬度材パーツ6の前記分割形状の前記高硬度材3は、超硬材(WC)とした実施例である。
【0029】
また本実施例では、前記溶接用母材4の前記ろう付け接合用上面7をV状係合溝面7とし、前記分割高硬度材パーツ6の前記分割形状の高硬度材3の前記ろう付け接合用底面8を前記係合溝面7に係合する山状係合面8に形成し、この係合溝面7にろう材5(接合材)を介存して山状係合面8を係合して熱を加えこのろう材5を溶融し、ろう付けしている。
【0030】
したがって、ろう付けに際しての接合面積が増大し、さらにV状係合接合面としているためガイド形状であり位置決め作用も果たすなど接合強度が一層向上し、またこの接合止着(ろう付け)が一層容易に行えることとなる。
【0031】
また本実施例では、基板1の所定の付設部上面9と、小ブロック状の分割高硬度材パーツ6の下部の溶接用母材4の下面にも、互いに位置決め係合する係合部を設けている。具体的には、基板1の付設部上面9に長い凸条部11を設け、これに凹部係合する凹状部12(小溝部)を溶接用母材4の下面に設け、これを凹凸係合し位置決め状態としてこの小ブロック状の分割高硬度材パーツ6をこの付設部上面9に順次連続並設し、基板1と同種金属のこの溶接用母材4を基板1に溶接止着する構成としている。(図中符号13が溶接箇所である。)
【0032】
したがって、ろう付け母材である基板1と異種金属の高硬度材3を広範囲に(長く)強固に付設することができることから、切断性能などの作業機能が向上し、またパーツに分けて並設溶接して付設するからそれだけ熱収縮差も抑えられ、またたとえ収縮差が生じるとしても分割並設止着しているためこの収縮差も吸収されるため強固に止着でき止着強度も耐久性も向上することになる。
【0033】
またこのような小ブロック状の分割高硬度材パーツ6を複数製作しておけば、所望する範囲に(広範囲に)ろう付け時の熱収縮差による止着強度低下を懸念することなく付設することができることとなる。
【0034】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、利器や細断機、粉砕機の切断用板、細裂用板、破断用板、打撃用板、混合器の撹拌用板、農具の耕うん用板その他様々な用途に用いる作業用板に本発明は適用可能であり、その用途に応じて各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【符号の説明】
【0035】
1 基板
2 接触部(切断用または打撃用基板側部)
3 高硬度材(超硬材)
4 溶接用母材
5 ろう材(接合材)
6 分割高硬度材パーツ
7 ろう付け接合用上面(係合溝面)
8 ろう付け接合用底面(係合面)
図1
図2
図3
図4