(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022166442
(43)【公開日】2022-11-02
(54)【発明の名称】スイッチング素子の異常検出装置およびスイッチング素子の異常検出方法
(51)【国際特許分類】
H02M 1/00 20070101AFI20221026BHJP
H03K 17/00 20060101ALI20221026BHJP
H03K 17/687 20060101ALN20221026BHJP
【FI】
H02M1/00 H
H03K17/00 B
H03K17/687 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021071648
(22)【出願日】2021-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】内田 拓弥
【テーマコード(参考)】
5H740
5J055
【Fターム(参考)】
5H740AA10
5H740BA12
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5H740BC01
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5H740MM11
5J055AX36
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5J055GX01
5J055GX02
5J055GX03
(57)【要約】
【課題】簡単な構成でスイッチング素子の異常を検出できるとともに、コストを抑制できるスイッチング素子の異常検出装置およびスイッチング素子の異常検出方法を提供する。
【解決手段】互いに並列に接続された複数のスイッチング素子の異常を検出するスイッチング素子の異常検出装置であって、複数のスイッチング素子のうちの第1のスイッチング素子に流れる電流の値を第1の検出値として検出する第1の電流検出部と、複数のスイッチング素子に流れる電流の値の総和を第2の検出値として検出する第2の電流検出部と、第1の電流検出部で検出された第1の検出値および第2の電流検出部で検出された第2の検出値に基づいて、複数のスイッチング素子のういちのいずれかにおける異常を検出する異常検出部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに並列に接続された複数のスイッチング素子の異常を検出するスイッチング素子の異常検出装置であって、
複数のスイッチング素子のうちの第1のスイッチング素子に流れる電流の値を第1の検出値として検出する第1の電流検出部と、
前記複数のスイッチング素子に流れる電流の値の総和を第2の検出値として検出する第2の電流検出部と、
前記第1の電流検出部で検出された前記第1の検出値および前記第2の電流検出部で検出された前記第2の検出値に基づいて、前記複数のスイッチング素子のうちのいずれかにおける異常を検出する異常検出部と、
を備える、スイッチング素子の異常検出装置。
【請求項2】
前記複数のスイッチング素子の数をNとするとき、
前記異常検出部は、前記複数のスイッチング素子をオンさせる状態において、前記第1の検出値が、前記第2の検出値の1/N倍の値をとらない場合に、前記複数のスイッチング素子のうちのいずれかに異常があると判断する、請求項1に記載のスイッチング素子の異常検出装置。
【請求項3】
前記異常検出部は、前記第1の検出値が、ゼロである場合に、前記第1のスイッチング素子のオープン故障であると判断する、請求項2に記載のスイッチング素子の異常検出装置。
【請求項4】
前記異常検出部は、前記第1の検出値が、前記第2の検出値の1/N倍よりも大きい場合に、前記複数のスイッチング素子のうちの前記第1のスイッチング素子以外のスイッチング素子のオープン故障であると判断する、請求項2に記載のスイッチング素子の異常検出装置。
【請求項5】
前記異常検出部は、前記複数のスイッチング素子をオフさせる状態において、前記第2の検出値がゼロではない場合に、前記複数のスイッチング素子のうちのいずれかがオン故障であると判断する、請求項1に記載のスイッチング素子の異常検出装置。
【請求項6】
前記異常検出部は、前記第1の検出値が前記第2の検出値に等しい場合に、前記第1のスイッチング素子のオン故障であると判断する、請求項5に記載のスイッチング素子の異常検出装置。
【請求項7】
前記異常検出部は、前記第1の検出値がゼロである場合に、前記複数のスイッチング素子のうちの前記第1のスイッチング素子以外のスイッチング素子のオン故障であると判断する、請求項5に記載のスイッチング素子の異常検出装置。
【請求項8】
互いに並列に接続された前記複数のスイッチング素子をそれぞれ有する複数のスイッチング回路が互いに直列に接続され、
第2の電流検出部は、前記複数のスイッチング回路に対して共通に設けられた、請求項1に記載のスイッチング素子の異常検出装置。
【請求項9】
互いに並列に接続された複数のスイッチング素子の異常を検出するスイッチング素子の異常検出方法であって、
複数のスイッチング素子のうちの第1のスイッチング素子に流れる電流の値を第1の検出値として検出する第1の電流検出ステップと、
前記複数のスイッチング素子に流れる電流の値の総和を第2の検出値として検出する第2の電流検出ステップと、
前記第1の電流検出ステップで検出された前記第1の検出値および前記第2の電流検出ステップで検出された前記第2の検出値に基づいて、前記複数のスイッチング素子のうちのいずれかにおける異常を検出する異常検出ステップと、
を備える、スイッチング素子の異常検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチング素子の異常検出装置およびスイッチング素子の異常検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、並列接続されたスイッチング素子のうちの1つの素子のゲート電位とドレイン電位とに基づいて、並列接続されたスイッチング素子のいずれかが故障したことを検出する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された装置では、ゲート電位とドレイン電位とを検出するために複雑な回路が必要となり、コストの上昇を招くという問題がある。
【0005】
本発明は、簡単な構成でスイッチング素子の異常を検出できるとともに、コストを抑制できるスイッチング素子の異常検出装置およびスイッチング素子の異常検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題を解決するために、本発明の一態様は、
互いに並列に接続された複数のスイッチング素子の異常を検出するスイッチング素子の異常検出装置であって、
複数のスイッチング素子のうちの第1のスイッチング素子に流れる電流の値を第1の検出値として検出する第1の電流検出部と、
前記複数のスイッチング素子に流れる電流の値の総和を第2の検出値として検出する第2の電流検出部と、
前記第1の電流検出部で検出された前記第1の検出値および前記第2の電流検出部で検出された前記第2の検出値に基づいて、前記複数のスイッチング素子のうちのいずれかにおける異常を検出する異常検出部と、
を備える、スイッチング素子の異常検出装置を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、簡単な構成でスイッチング素子の異常を検出できるとともに、コストを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施例のスイッチング素子の異常検出装置の構成を示す図である。
【
図2】異常検出部における処理を示すフローチャートである。
【
図3】
図1~
図2に示すスイッチング素子の異常検出装置をモータの駆動回路に適用した例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら実施例について説明する。
【0010】
図1は、本実施例のスイッチング素子の異常検出装置の構成を示す図、
図1Aは、スイッチング回路を示す図である。
【0011】
図1に示すように、本実施例のスイッチング素子の異常検出装置1は、第1の電流検出部としての電流検出部11と、第2の電流検出部としての電流検出部12と、電流検出部11で検出された電流値(第1の検出値)および電流検出部12で検出された電流値(第2の検出値)に基づいて、スイッチング素子の異常を検出する異常検出部20と、を備える。
【0012】
図1Aに示すように、スイッチング回路40は、スイッチング素子としての3つの同一品種のFET51~53が並列接続されて構成される。なお、スイッチング素子の種類は任意である。スイッチング素子を並列接続する数も任意であり、2以上の整数であれば本発明を適用することができる。
【0013】
FET51~53のゲートには、
図1に示す制御部30からのゲート信号が共通に与えられる。制御部30は、制御指令に基づいて、ゲート信号を出力する。
【0014】
FET51~53が正常な場合、制御部30からのゲート信号によりFET51~53がオンすると、負荷61に電源62が接続され、制御部30からのゲート信号によりFET51~53がオフすると、負荷61が電源62から切り離される。
【0015】
図1に示すように、電流検出部11は、FET53に直列に接続された抵抗Rpに発生する電圧に基づいて、FET53に流れる電流の値(電流値Ip)を第1の検出値として検出する。なお、FET53の電流値を検出するための抵抗Rpの抵抗値は、FET53の電流値を大きく抑制することのない値、例えば、FET51~53のオン抵抗に比較して充分に小さな値とすることが望ましい。また、抵抗RpをFET53のドレインの側に設け、抵抗Rpに生ずる電圧に基づいて電流値Ipを検出してもよい。
【0016】
電流検出部12は、負荷61に直列に接続された抵抗Rtotalに発生する電圧に基づいて、負荷61に流れる電流の値、すなわち、FET51~53に流れる電流の値の総和(電流値Itotal)を第2の検出値として検出する。抵抗Rtotalの位置は、負荷61に流れる電流の値に応じた電圧を発生する位置であれば、任意に選択できる。
【0017】
図2は、異常検出部における処理を示すフローチャートである。
【0018】
図2の処理は、一定周期で、または、所定のタイミングで実行することができる。
【0019】
図2のステップS102では、異常検出部20は、電流検出部11から第1の検出値を、電流検出部12から第2の検出値を、それぞれ取得する。
【0020】
ステップS104では、異常検出部20は、制御部30からの状態通知信号(
図1)に基づいて、現在、負荷61に電流が供給されている状態か否か判断する。異常検出部20は、判断が肯定されれば処理をステップS106へ移行し、判断が否定されれば処理をステップS122へ移行する。
【0021】
なお、ステップS104において、負荷61に電流が供給されている状態では、ゲート電圧は所定の閾値よりも大きく、FET51~53が正常な場合、FET51~53がオンしている。また、負荷61に電流が供給されていない状態では、ゲート電圧は所定の閾値よりも小さく、FET51~53が正常な場合、FET51~53がオフしている。
【0022】
ステップS106では、異常検出部20は、電流検出部11から取得された第1の検出値と、電流検出部12から取得された第2の検出値との関係が(1)式を満たすか否か判断する。
第1の検出値>第2の検出値/3+Δ・・・(1)式
ここで、第2の検出値を除する数は、並列接続されるスイッチング素子の数Nに対応する。
図1Aに示すスイッチング回路40では3つのFET51~53を並列接続しているため、N=3となる。なお、3つのFET51~53が正常な場合には、均等に電流が流れ、第1の検出値が第2の検出値/3に実質的に等しくなる。例えば、仮に、FET51のみがオフ故障(オフ状態に固着されるモードでの故障)している場合には、FET52およびFET53のみに電流が流れるため、第1の検出値が第2の検出値/2にほぼ等しくなる。このため、この場合には、ステップS106の判断が肯定される。FET52のみがオフ故障している場合も同様である。また、仮に、FET51とFET52がオフ故障している場合には、FET53のみに電流が流れるため、第1の検出値が第2の検出値にほぼ等しくなる。このため、この場合にも、ステップS106の判断が肯定される。
【0023】
ただし、特性のばらつきなどにより、3つのFET51~53における電流値がわずかに異なる可能性がある。このため、第1の検出値が第2の検出値/3に完全に一致しなくても、誤差(式(1)のΔ)を考慮して実質的に第1の検出値が第2の検出値/3に等しい場合には、ステップS106の判断は否定される。
【0024】
異常検出部20は、ステップS106における判断が肯定されれば処理をステップS108へ移行し、判断が否定されれば処理をステップS110へ移行する。
【0025】
ステップS108では、異常検出部20は、FET51またはFET52のオフ故障、すなわち、オフ状態に固着されるモードでの故障と判断し、処理を終了する。上記のように、FET51またはFET52のいずれかのみにオフ故障がある場合と、両者にオフ故障がある場合とでは、第1の検出値と第2の検出値の比が異なるため、この比に基づいて、オフ故障が生じたスイッチング素子の個数を判別するようにしてもよい。
【0026】
ステップS110では、異常検出部20は、第1の検出値がゼロか否か判断し、判断が肯定されれば処理をステップS112へ移行し、判断が否定されれば処理をステップS114へ移行する。
【0027】
ステップS112では、異常検出部20は、FET53のオフ故障と判断し、処理を終了する。第1の検出値がゼロの場合には、流れるべき電流がFET53に流れていないことを意味しているので、この場合には、異常検出部20は、FET53のオフ故障と判断している。
【0028】
ステップS114では、異常検出部20は、各FET51~53は正常であると判断し、処理を終了する。
【0029】
一方、ステップS122では、異常検出部20は、第1の検出値がゼロか否か判断し、判断が肯定されれば処理をステップS124へ移行し、判断が否定されれば処理をステップS126へ移行する。
【0030】
ステップS126では、異常検出部20は、FET53のオン故障(オン状態に固着されるモードでの故障)と判断し、処理を終了する。第1の検出値がゼロでない場合には、オフであるべきFET53に電流が流れていることを意味しているので、この場合には、異常検出部20は、FET53のオン故障と判断している。
【0031】
ステップS124では、異常検出部20は、第2の検出値がゼロか否か判断し、判断が肯定されれば処理をステップS130へ移行し、判断が否定されれば処理をステップS128へ移行する。
【0032】
ステップS128では、異常検出部20は、FET51またはFET52のオン故障と判断し、処理を終了する。第1の検出値がゼロでない場合には、オフであるべきFET51またはFET52に電流が流れていることを意味しているので、この場合には、異常検出部20は、FET51またはFET52のオン故障と判断している。
【0033】
ステップS130では、異常検出部20は、各FET51~53は正常であると判断し、処理を終了する。
【0034】
以上のように、異常検出部20は、負荷61に電流を供給している場合(ステップS104の判断が肯定される場合)と、負荷61に電流を供給していない場合(ステップS104の判断が否定される場合)のそれぞれにおいて、第1の検出値および第2の検出値に基づいて、FET51~53の異常の有無および異常のモードを検出している。
【0035】
なお、FET51~53の異常が検出された場合(ステップS108、ステップS112、ステップS126およびステップS128)には、異常検出部20は、所定の処理を実行してもよい。例えば、異常を通知する検出信号を出力し、あるいは、制御部30に対して動作を停止する指示をしてもよい。
【0036】
図3は、
図1~
図2に示すスイッチング素子の異常検出装置をモータの駆動回路に適用した例を示す図、
図3Aは、モータの駆動回路を示す図である。なお、
図3および
図3Aにおいて、
図1および
図1Aに対応する要素には、同一の符号を付している。
【0037】
図3に示すように、スイッチング素子の異常検出装置10は、第1の電流検出部としての電流検出部11A~11Dと、第2の電流検出部としての電流検出部12と、電流検出部11A~11Dで検出された電流値(第1の検出値)および電流検出部12で検出された電流値(第2の検出値)に基づいて、スイッチング素子の異常を検出する異常検出部20と、を備える。
【0038】
図3Aに示すように、駆動回路4は、スイッチング回路40(
図1A)に相当する4つのスイッチング回路40A~40Dを含むHブリッジ回路を構成する。このブリッジ回路は、例えば、モータの各相のコイルを負荷61Aとして駆動する駆動回路4として使用される。
図3に示すように、スイッチング回路40A~40Dは、制御指令に従って制御部31から出力されるゲート信号G1~G4が、それぞれ、スイッチング回路40A~40DのFET51~53(
図1A)のゲートに与えられることにより、スイッチング回路40A~40Dのオン/オフが制御される。なお、多相モータの場合、負荷61Aとなるコイルが相ごとに必要となるため、例えば、3相のモータであれば、
図3Aに示すHブリッジ回路も3組、用意される。
【0039】
Hブリッジ回路では、スイッチング回路40Aおよびスイッチング回路40Dをオンさせることにより、
図3Aにおいて、電源62Aからの電流I1が、スイッチング回路40Aを経て負荷61Aに
図3Aにおける左方から供給され、スイッチング回路40Dを経て電源62Aに戻る。また、スイッチング回路40Bおよびスイッチング回路40Cをオンさせることにより、
図3Aにおいて、電源62Aからの電流I2が、スイッチング回路40Cを経て負荷61Aに
図3Aにおける右方から供給され、スイッチング回路40Bを経て電源62Aに戻る。このように、負荷61A(コイル)に供給される電流の方向を切り換えることができる。
【0040】
図3Aに示すように、スイッチング回路40Dを経た電流I1およびスイッチング回路40Bを経た電流I2は、いずれもラインLを介して電源62Aに戻る。
【0041】
電流検出部11A~11Dは、電流検出部11(
図1、
図1A)に相当する構成を有し、それぞれ、スイッチング回路40A~40DのFET53に流れる電流の値を第1の検出値として検出する。
【0042】
一方、電流検出部12は、4つのスイッチング回路40A~40Dのそれぞれに対応して設けられるのではなく、ラインL上に1つのみ設けられる。上記のように、負荷61Aに供給された電流I1および電流I2は、いずれもラインLを経由するため、スイッチング回路40A~40Dのそれぞれに対して、独立した電流検出部12を設ける必要はない。
【0043】
例えば、電流I1が負荷61Aに供給される場合、異常検出部20は、制御部31からの状態通知信号に基づいて電流I1が負荷61Aに供給されていることを認識できる。この場合、異常検出部20は、
図2に示した処理と同様の処理により、電流検出部11Aにおいて検出される第1の検出値と、電流検出部12において検出される第2の検出値とを組み合わせることにより、スイッチング回路40AのFET51~53のオフ故障を検出することができる。また、異常検出部20は、電流検出部11Dにおいて検出される第1の検出値と、電流検出部12において検出される第2の検出値とを組み合わせることにより、スイッチング回路40DのFET51~53のオフ故障を検出することができる。
【0044】
同様に、電流I2が負荷61Aに供給される場合、異常検出部20は、制御部31からの状態通知信号に基づいて電流I2が負荷61Aに供給されていることを認識できる。この場合、異常検出部20は、電流検出部11Cにおいて検出される第1の検出値と、電流検出部12において検出される第2の検出値とを組み合わせることにより、スイッチング回路40CのFET51~53のオフ故障を検出することができる。また、異常検出部20は、電流検出部11Bにおいて検出される第1の検出値と、電流検出部12において検出される第2の検出値とを組み合わせることにより、スイッチング回路40BのFET51~53のオフ故障を検出することができる。
【0045】
また、異常検出部20により異常が検出された場合には、検出信号により異常を通知し、あるいは、制御部31に、駆動回路4の動作を停止させる停止指令を送出してもよい。後者の場合、停止指令を受けて、制御部31から出力されるゲート信号G1~G4をオフ信号とすることができる。これにより、誤動作や、二次的な故障の発生を防止できる。ラッチ回路を用いるなどして、ハードウェア的な手段により、ゲート信号G1~G4をオフ信号に固定してもよい。
【0046】
なお、
図3Aでは、低電位側のラインLに流れる電流の値を、第2の検出値として電流検出部12により検出しているが、
図3Aに示す高電位側のラインL1に流れる電流の値を、第2の検出値として検出してもよい。
【0047】
このように、複数のスイッチング回路、例えば、スイッチング回路40Aとスイッチング回路40D、または、スイッチング回路40Cとスイッチング回路40Bが直列に接続される場合には、スイッチング回路ごとに設けられた第1の電流検出部と、複数のスイッチング回路に共通に設けられた第2の電流検出部とを用いて、両者のスイッチング回路におけるスイッチング素子の異常、とくにオフ故障を独立して検出することができる。
【0048】
以上のように、本実施例によれば、電流検出部により検出された電流値に基づいてスイッチング素子の異常を検出するので、複雑な回路が不要となり、簡単な構成でスイッチング素子の異常を検出できる。また、装置のコストを抑制できる。
【0049】
以上、実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形および変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部または複数を組み合わせることも可能である。
【0050】
なお、以上の実施例に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0051】
[付記1]
互いに並列に接続された複数のスイッチング素子(51~53)の異常を検出するスイッチング素子の異常検出装置であって、
複数のスイッチング素子のうちの第1のスイッチング素子(53)に流れる電流の値を第1の検出値として検出する第1の電流検出部(11、11A、11B、11C、11D)と、
前記複数のスイッチング素子に流れる電流の値の総和を第2の検出値として検出する第2の電流検出部(12)と、
前記第1の電流検出部で検出された前記第1の検出値および前記第2の電流検出部で検出された前記第2の検出値に基づいて、前記複数のスイッチング素子のうちのいずれかにおける異常を検出する異常検出部(20)と、
を備える、スイッチング素子の異常検出装置。
【0052】
付記1の構成によれば、電流を検出することにより、スイッチング素子の異常を検出するので、複雑な回路が不要なため、簡単な構成でスイッチング素子の異常を検出できるとともに、コストを抑制できる。
【0053】
[付記2]
前記複数のスイッチング素子の数をNとするとき、
前記異常検出部は、前記複数のスイッチング素子をオンさせる状態において、前記第1の検出値が、前記第2の検出値の1/N倍の値をとらない場合に、前記複数のスイッチング素子のうちのいずれかに異常があると判断する、付記1に記載のスイッチング素子の異常検出装置。
【0054】
付記2の構成によれば、第1の検出値と第2の検出値との比率に基づいて、スイッチング素子の異常の有無を判断することができる。
【0055】
[付記3]
前記異常検出部は、前記第1の検出値が、ゼロである場合に、前記第1のスイッチング素子のオープン故障であると判断する、付記2に記載のスイッチング素子の異常検出装置。
【0056】
付記3の構成によれば、第1の検出値に基づいて、第1のスイッチング素子のオープン故障の有無を判断することができる。
【0057】
[付記4]
前記異常検出部は、前記第1の検出値が、前記第2の検出値の1/N倍よりも大きい場合に、前記複数のスイッチング素子のうちの前記第1のスイッチング素子以外のスイッチング素子のオープン故障であると判断する、付記2に記載のスイッチング素子の異常検出装置。
【0058】
付記4の構成によれば、第1の検出値と第2の検出値との比率に基づいて、第1のスイッチング素子以外のスイッチング素子のオープン故障の有無を判断することができる。
【0059】
[付記5]
前記異常検出部は、前記複数のスイッチング素子をオフさせる状態において、前記第2の検出値がゼロではない場合に、前記複数のスイッチング素子のうちのいずれかがオン故障であると判断する、付記1に記載のスイッチング素子の異常検出装置。
【0060】
付記5の構成によれば、第2の検出値に基づいてスイッチング素子のオン故障の有無を判断することができる。
【0061】
[付記6]
前記異常検出部は、前記第1の検出値が前記第2の検出値に等しい場合に、前記第1のスイッチング素子のオン故障であると判断する、付記5に記載のスイッチング素子の異常検出装置。
【0062】
付記6の構成によれば、第1の検出値と第2の検出値との比較に基づいて、第1のスイッチング素子のオン故障の有無を判断することができる。
【0063】
[付記7]
前記異常検出部は、前記第1の検出値がゼロである場合に、前記複数のスイッチング素子のうちの前記第1のスイッチング素子以外のスイッチング素子のオン故障であると判断する、付記5に記載のスイッチング素子の異常検出装置。
【0064】
付記7の構成によれば、第1の検出値に基づいて第1のスイッチング素子以外のスイッチング素子のオン故障の有無を判断することができる。
【0065】
[付記8]
互いに並列に接続された前記複数のスイッチング素子をそれぞれ有する複数のスイッチング回路が互いに直列に接続され、
第2の電流検出部は、前記複数のスイッチング回路に対して共通に設けられた、付記1に記載のスイッチング素子の異常検出装置。
【0066】
付記8の構成によれば、第2の電流検出部が複数のスイッチング回路に対して共通に設けられるので、複雑な構成が不要となり、コストを抑制できる。
【0067】
[付記9]
互いに並列に接続された複数のスイッチング素子の異常を検出するスイッチング素子の異常検出方法であって、
複数のスイッチング素子のうちの第1のスイッチング素子に流れる電流の値を第1の検出値として検出する第1の電流検出ステップと、
前記複数のスイッチング素子に流れる電流の値の総和を第2の検出値として検出する第2の電流検出ステップと、
前記第1の電流検出ステップで検出された前記第1の検出値および前記第2の電流検出ステップで検出された前記第2の検出値に基づいて、前記複数のスイッチング素子のうちのいずれかにおける異常を検出する異常検出ステップと、
を備える、スイッチング素子の異常検出方法。
【0068】
付記9の構成によれば、電流を検出することにより、スイッチング素子の異常を検出するので、複雑な回路が不要なため、簡単な構成でスイッチング素子の異常を検出できるとともに、コストを抑制できる。
【符号の説明】
【0069】
4 駆動回路
11、11A、11B、11C、11D 電流検出部
12 電流検出部
20 異常検出部
40 スイッチング回路
51~53 FET