(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022166449
(43)【公開日】2022-11-02
(54)【発明の名称】ロール製品
(51)【国際特許分類】
B65D 77/30 20060101AFI20221026BHJP
B65D 30/02 20060101ALI20221026BHJP
【FI】
B65D77/30 C
B65D30/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021071655
(22)【出願日】2021-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 光
(72)【発明者】
【氏名】大岡 康伸
(72)【発明者】
【氏名】藤田 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】大篭 幸治
【テーマコード(参考)】
3E064
3E067
【Fターム(参考)】
3E064AA13
3E064BA26
3E064BA30
3E064BA36
3E064BA38
3E064BA55
3E064EA06
3E064EA30
3E064FA01
3E064HA06
3E064HJ02
3E064HM01
3E067AA16
3E067AB75
3E067AB76
3E067AB77
3E067AC03
3E067AC12
3E067BA12A
3E067BB15A
3E067BB16A
3E067CA24
3E067EA06
3E067EB03
3E067EE02
3E067EE12
3E067EE59
3E067FA01
3E067FB07
3E067FC01
3E067GD05
3E067GD07
(57)【要約】
【課題】ロールを収納し、開口不良、印刷不良及び開封不良の発生や、ロールと樹脂フィルムとの疑似接着が抑制された環境配慮型ガゼット包装体の提供。
【解決手段】長尺の紙製シートをロール状に巻き取ったロール10をガセット袋に包装し、ガセット袋は、ロール10を収納する収納部20と、収納部20の上端から立ち上がる中間部30と、収納部20及び中間部30の幅方向両側に位置するガゼット部35と、中間部30の頂部32から立ち上がる把手部40と、収納部20及び/又は中間部30の表面に設けられた印刷部とを有し、ガゼット袋は樹脂フィルムを含み、樹脂フィルムは、バイオマス由来原料を全原料の1質量%以上75質量%以下含有し、樹脂フィルムのTD方向のヤング率が150MPa以上600MPa以下、ガゼット部35における印刷面積率が20%以上95%以下、ガゼット率が20%以上95%以下である、ロール製品1。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺の紙製シートをロール状に巻き取ったロールをガセット袋に包装したロール製品であって、
前記ガセット袋は、前記ロールを収納する収納部と、前記収納部の上端から上方に立ち上がる中間部と、前記収納部及び前記中間部の幅方向両側に位置するガゼット部と、前記中間部の頂部から上方に立ち上がる把手部と、前記収納部及び/又は前記ガゼット部の表面に設けられた印刷部と、を有し、
前記ガゼット袋は、樹脂フィルムを含んで構成され、
前記樹脂フィルムは、バイオマス由来の原料を全原料の1質量%以上75質量%以下含有し、
前記樹脂フィルムのTD方向のヤング率が150MPa以上600MPa以下であり、
前記ガゼット部における印刷面積率が20%以上95%以下であり、ガゼット率が20%以上95%以下である、ロール製品。
【請求項2】
前記ガゼット袋の印刷されていない内側表面の動摩擦係数が0.01以上0.5以下である、請求項1に記載のロール製品。
【請求項3】
前記把手部を除く前記ガゼット袋の全表面積に対する前記印刷部の面積の比率が20%以上である、
【請求項4】
前記樹脂フィルムがポリエチレンを含有する、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のロール製品。
【請求項5】
前記樹脂フィルムの厚みが20μm以上60μm以下である、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のロール製品。
【請求項6】
前記樹脂フィルムのMD方向のヤング率が100MPa以上400MPa以下である、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のロール製品。
【請求項7】
前記ガゼット袋表面の前記印刷部が形成されていない非印刷部の動摩擦係数が0.01以上0.50以下である、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のロール製品。
【請求項8】
前記ロールが、トイレットロール又はキッチンタオルロールである、請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載のロール製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール製品に関する。
【背景技術】
【0002】
トイレットロールやキッチンタオルロール等の、長尺の紙製シートを巻き取ったロールをガゼット包装体内に包装したロール製品が多く市販されている。ガゼット包装体とは、樹脂フィルムからなる柱状の包装袋に、その上部を余らせた状態でロールを収納し、包装袋の余らせた上部において、一方の対向する各樹脂フィルムを内側に折り込みつつ、他方の対向する各樹脂フィルムの上端を溶着したものである。現在の環境配慮の傾向から、ガゼット包装体にも、包装袋を構成する樹脂フィルムとして環境配慮型であるバイオマスフィルムを用いることが試みられている。
【0003】
バイオマスフィルムとは、石油等の化石燃料から合成された石油系モノマーを重合させた石油由来樹脂の一部又は全部を、トウモロコシやサトウキビ等の植物から合成された植物系モノマーを重合させたバイオマス由来樹脂に置換した樹脂材料、又は石油系モノマーと植物系モノマーとを重合させた樹脂材料、から得られた樹脂フィルムである。バイオマス樹脂については、種々の提案がなされている。
【0004】
特許文献1には、植物原料から、エタノール、エチレン、アセトアルデヒド、1-ブタノール、3-ヒドロキシ-ブタナール、クロトンアルデヒド、1-ブタノール、ブチレン異性体混合物(1-ブチレン及び2-ブチレン)を経て1-ブチレンを合成し、エチレンと1-ブチレンとを重合させて、再生可能な天然由来の炭素100%を有するエチレン-ブチレンコポリマーを得る、エチレン-ブチレンコポリマーの製造方法が開示されている(請求項1)。特許文献1によれば、天然由来の炭素含有物から合成されたエチレン-ブチレンコポリマーが提供されると記載されている。
【0005】
特許文献2には、バイオマス由来のエチレンとα-オレフィンとを含むモノマーを重合したバイオマス由来のポリオレフィンと、化石燃料由来のエチレン及び/又はα-オレフィンのモノマーを重合した化石燃料由来のポリオレフィンとを含む樹脂組成物からなり、バイオマス由来又は化石燃料由来のα-オレフィンが、ブチレン、ヘキセン、又はオクテンであり、該樹脂組成物において、バイオマス由来のエチレンの含有量が該樹脂組成物全体の5質量%以上であり、該樹脂組成物の密度が0.91g/cm3以上0.96g/cm3以下である樹脂フィルムが開示されている。特許文献2によれば、バイオマス由来のエチレンを用いたカーボンニュートラルなポリオレフィンを含む樹脂組成物からなる樹脂フィルムが提供されると記載されている(段落0022)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5551605号公報
【特許文献2】特許第6020975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1、2に記載されるようなバイオマス樹脂を含有するバイオマスフィルムをトイレットロールやキッチンタオルロールのガセット包装袋に用いると、開口不良が発生する場合がある。例えば、ガセット袋の内面同士が疑似接着してしまうブロッキングと言われる不具合である。また、フィルム粘着性が増すため、内容物と疑似接着してしまう恐れがある。特に、内容物が長尺のトイレットロール製品やキッチンタオルロール製品である場合、フィルムとロールが強く密着するため、発生しやすくなる。これらの問題は、例えばバイオマスフィルムに通常のフィルムをラミネート加工することで解決するが、フィルムコストが高くなり、実用的ではない。また、フィルムに添加するシリカ等のアンチブロッキング剤を通常よりも増量して解決する方法もあるが、その場合、インキ抜け等の印刷不良が発生したり、ヒートシール強度が不足したりする等の問題がある。
【0008】
本発明の目的は、ロールをガゼット包装で収納し、開口不良、印刷不良及び開封不良の発生や内容物との疑似接着が抑制された環境配慮型ガゼット包装体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ガゼット包装袋を構成する樹脂フィルムにおける樹脂フィルムの全原料中のバイオマス由来の原料の割合、樹脂フィルムのTD方向のヤング率、ガゼット部における印刷面積率、ガゼット率をそれぞれ所定の範囲とすることで、ガゼット包装体としての、所望のロール製品が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明は、下記のロール製品を提供する。
【0010】
(1)長尺の紙製シートをロール状に巻き取ったロールをガセット袋に包装したロール製品であって、
前記ガセット袋は、前記ロールを収納する収納部と、前記収納部の上端から上方に立ち上がる中間部と、前記収納部及び前記中間部の幅方向両側に位置するガゼット部と、前記中間部の頂部から上方に立ち上がる把手部と、前記収納部及び/又は前記中間部の表面に設けられた印刷部と、を有し、
前記ガゼット袋は、樹脂フィルムを含んで構成され、
前記樹脂フィルムは、バイオマス由来の原料を全原料の1質量%以上75質量%以下含有し、
前記樹脂フィルムのTD方向のヤング率が150MPa以上600MPa以下であり、
前記ガゼット部における印刷面積率が20%以上95%以下であり、ガゼット率が20%以上95%以下である、ロール製品。
(2)前記ガゼット袋の印刷されていない内側表面の動摩擦係数が0.01以上0.5以下である、上記(1)のロール製品。
(3)前記把手部を除く前記ガゼット袋の全表面積に対する前記印刷部の面積の比率が20%以上である、上記(1)又は(2)のロール製品。
(4)前記樹脂フィルムがポリエチレンを含有する、上記(1)乃至(3)のいずれかのロール製品。
(5)前記樹脂フィルムの厚みが20μm以上60μm以下である、上記(1)乃至(4)のいずれかのロール製品。
(6)前記樹脂フィルムのMD方向のヤング率が100MPa以上400MPa以下である、上記(1)乃至(5)のいずれかのロール製品。
(7)前記ガゼット袋表面の前記印刷部が形成されていない非印刷部の動摩擦係数が0.01以上0.50以下である、上記(1)乃至(6)のいずれかのロール製品。
(8)前記ロールが、トイレットロール又はキッチンタオルロールである、上記(1)乃至(7)のいずれかのロール製品。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ロールを収納し、開口不良、印刷不良及び開封不良の発生や内容物との疑似接着が抑制された環境配慮型ガゼット包装体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係るロール製品の外観構成を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図1に示すロール製品内に包装されるロールの外観構成を示す模式斜視図である。
【
図3】カゼット包装においてブロッキングが起こる機構を説明する模式図である。(a)及び(b)はカゼット包装工程を示す模式斜視図であり、(c)及び(d)はガゼット部の水平方向の模式断面図である。
【
図4】ガゼット部におけるガゼット率の求め方を説明する水平方向の模式断面図である。
【
図5】ガゼット率に応じて生じる不具合を説明する水平方向の模式断面図である。(a)はガゼット率が規定範囲内であるとき、(b)はガゼット率が20%未満であるとき、(c)はガゼット率が95%超えるとき、をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<ロール製品>
図1は、本実施形態に係る、ガゼット包装体としてのロール製品1を示す。
図2はロール製品1内に包装されたロール10を示す。ロール10の具体例としては、例えば、トイレットロール、キッチンタオルロール等が挙げられる。
図4及び
図5はガゼット率を説明する。
【0014】
本実施形態のロール製品1は、
図1に示すように、環境配慮型樹脂フィルムからなるガゼット包装袋に、長尺の紙製シートをロール状に巻き取ったロール10を4個包装したものである。ガゼット包装袋に包装されるロール10の個数は特に限定されず、1個でも複数個でもよいが、2個、4個、6個、8個、12個、18個等の個数が好ましい。本実施形態では、ロール10の軸方向と、ガゼット包装袋を構成する樹脂フィルムのMD方向とが一致するように、ロール10がガゼット包装袋に包装されている。
【0015】
本実施形態のガゼット包装袋は、バイオマス由来原料を全原料の1質量%以上75質量%以下含有し、TD方向のヤング率が150MPa以上600MPa以下である環境配慮型樹脂フィルムから構成される。また、本実施形態のガゼット包装袋はガゼット部35を有し、ガゼット部35における印刷面積率が20%以上95%以下であり、ガゼット率が20%以上95%以下である。このような樹脂フィルムから構成され、ガゼット部35での印刷面積率及びガゼット率が前述の範囲である包装袋を用いてロール10をガゼット包装した本実施形態のロール製品1によれば、製造工程において、包装時の不良率を抑制することができ、また内容物とフィルムの疑似接着を抑制することができる。
【0016】
本発明者らは、カゼット包装において樹脂フィルムとしてバイオマスフィルを用いることでブロッキングが発生する機構を次のように考察している。本発明者らの考察を
図3に基づいて説明する。
図3は、カゼット包装においてブロッキングが起こる機構を説明する模式図である。一般的なガゼット包装は、輸送効率等の観点から、ガゼット袋50をその上下方向に折り畳んでシート状にし、これをロール状に巻き取って供給される。
図3(a)の工程では、折り畳まれたガゼット袋50の所定の位置に吸引パッド51を配置し、上下方向に真空吸引し、
図3(b)の工程では、真空吸引によりガゼット袋50が開口して上下方向に立ち上がることで、ガゼット袋50がロール10を内包するようになり、図示しないが後工程で底面を溶着することで、ガゼット包装体が得られる。
図3(b)はガゼット袋50がロール10を内包する前の上下方向に立ち上がりつつある状態を示す。
【0017】
図3(c)に示すように、ガゼット部52は、樹脂フィルムを内側に折り込んで二重になったマチ部分を有し、折り畳まれた状態では、ガゼット部52は、ガゼット包装袋50の他の部分よりも樹脂フィルム(バイオマスフィルム)が密着している。更にバイオマスフィルムが粘着性を示すことから、折り畳まれ、真空吸引される前のガゼット袋50では、ガゼット部52の重なり合う2枚のバイオマスフィルムが疑似接着し易くなる。疑似接着した状態では包装機において真空吸引による開口が正しく行われず、不良率が高くなる。また、ガゼット部52のバイオマスフィルムが疑似接着したままで包装されたガゼット包装体は、外観が不良になるとともに、該ガゼット包装体を開封してロール10を取り出そうとするときに、ロール10が樹脂フィルムに疑似接着し、ロール10に巻き取られた紙製シートが破れる等の問題が発生し易くなる。すなわち、本発明者らの研究によれば、ガゼット包装体に開口不良、包装不良、開封不良等が生じ易いのは、ガゼット包装袋50の特殊な構造(ガゼット部52の樹脂フィルムが折れ重なった部分)と、ガゼット包装袋50の納品されるときのシート状の形態と、バイオマスフィルムとが複合的に絡んだ原因によるものと考えられる。本実施形態では、所定の特性を有するバイオマスフィルムを用い、かつガゼット部における印刷面積率及びガゼット率を所定の範囲とすることで、課題を解決することに成功したものである。
【0018】
以下、ガセット袋の構造、ガゼット袋を構成する樹脂フィルムの特性、ガゼット部の特徴等について、説明する。
【0019】
<ガセット袋の構造>
本実施形態のガセット袋は、
図1に示すように、収納部20と、中間部30と、ガゼット部35と、把手部40と、印刷部(不図示)とを有する。収納部20はロール10を収納するために筒状に構成され、底面は溶着されている。中間部30は、収納部20の上端と把手部30の下端とをつなぎ、2つの斜面部31と頂部32とを備える。2つの斜面部32は、収納部20上部の一の対向する樹脂フィルムを内側に折り込み、収納部20上部の他の対向する樹脂フィルムが連続的に近接するように斜め上方に立ち上げた断面視逆Vの字状の領域であり,その幅方向両側に樹脂フィルムが重なり合ったマチ部分としてのガゼット部35bを有する。頂部32は、2つの斜面部31の各上端が接合された領域である。把手部40は、中間部30の頂部32から上方に立ち上がって水平方向に帯状に延びる。把手部40には、長手方向ほぼ中央部を幅方向に延び、ロール製品1の開封を補助するミシン目42、ミシン目42を介して長手方向に対向し、長手方向に延びる2つの指挿入穴41が設けられている。ガゼット部35は、収納部20、中間部30及び把手部40に連接され、収納部20では、中間部30での樹脂フィルムが内側に折り込まれる方向の両側面35aであり、中間部30では樹脂フィルムが内側に折り込まれて二重になった領域35bであり、把手部40では幅方向両側の樹脂フィルムが二重になった領域35cである。印刷部は、ガゼット袋の内表面に設けられた、単色又は複数色の文字、絵柄、これらの組み合わせ、目印等である。
【0020】
<樹脂フィルム>
樹脂フィルムは、例えば、重合性モノマーを重合させた熱可塑性樹脂をフィルム化することにより得られる。重合性モノマーの原料には、石油系原料、トウモロコシやサトウキビ等の植物系原料等がある。本発明では、石油系原料から合成された重合性モノマーを非バイオマス原料と呼び、植物系原料から合成された重合性モノマーをバイオマス原料と呼ぶ。本実施形態の樹脂フィルムとしては、例えば、バイオマス原料(重合性モノマー)を重合させたバイオマス系樹脂材料と非バイオマス原料(重合性モノマー)を重合させた石油系樹脂材料とのブレンド物が挙げられる。
【0021】
ここで、前述の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリ塩化ビニリデン、エチレンビニルアルコール共重合体等が挙げられる。これらの中でも、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデン、エチレンビニルアルコール共重合体等が好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレン等がより好ましく、後述する各パラメータの調整し易さ等の観点から、ポリエチレンがさらに好ましい。樹脂フィルムの材質は、好ましくはポリエチレンを含み、より好ましくはポリエチレンを全体の50質量%以上含み、更に好ましくはポリエチレンのみからなる。
【0022】
(バイオマス由来原料の含有割合)
本実施形態の樹脂フィルムは、例えば、バイオマス系樹脂材料と石油系樹脂材料とを含んでいる。樹脂フィルムにおけるバイオマス由来原料の含有率は、バイオマス系樹脂材料と石油系樹脂材料とを合わせた全樹脂材料(全原料)の1質量%以上75質量%以下の範囲、好ましくは3質量%以上50質量%以下の範囲、より好ましくは5質量%以上25質量%以下の範囲である。バイオマス由来原料の含有率が1質量%未満では、環境配慮型の樹脂フィルムとは言い難い。バイオマス由来原料の含有率が75質量%を超えると、樹脂フィルム表面の粘着性が増し、中間部30におけるブロッキングが発生し易くなる傾向がある。バイオマス由来原料の含有割合は、ASTM D6866法によって測定される。
【0023】
(TD方向ヤング率)
樹脂フィルムのTD方向のヤング率は、150MPa以上600MPa以下の範囲、好ましくは200MPa以上500MPa以下の範囲、より好ましくは250MPa以上400MPa以下の範囲である。TD方向ヤング率が150MPa未満では、ガゼット包装するときに、樹脂フィルムが柔らかすぎて吸引パッド51と樹脂フィルムとの間に隙間が生じやすくなり、バキュームで吸引できないことから、開口不良が発生し易い傾向がある。TD方向ヤング率が600MPa超えると、ガゼット包装袋が広がりにくく、内容物であるロール10の形状に十分追従せず、包装不良が発生する傾向がある。
【0024】
(MD方向ヤング率)
好ましい実施形態では、樹脂フィルムのMD方向のヤング率は、例えば、100MPa以上400MPa以下の範囲、120MPa以上350MPa以下の範囲、又は180MPa以上300MPa以下の範囲である。MD方向ヤング率が100MPa未満では、ガゼット包装するときに、樹脂フィルムが柔らかすぎて吸引パッド51と樹脂フィルムとの間に隙間が生じやすくなり、バキュームで吸引できないことから、開口不良が発生し易い傾向がある。MD方向ヤング率が400MPa超えると、ガゼット包装袋が広がりにくく、内容物であるロール10の形状に十分追従せず、包装不良が発生する傾向がある。樹脂フィルムのTD方向及びMD方向ヤング率はJIS K 7161-1:2014に準拠して測定できる。
【0025】
(ガゼット袋内面の動摩擦係数)
他の好ましい実施形態では、樹脂フィルム内面の印刷されていない領域(非印刷部)の動摩擦係数は、例えば、0.01以上0.5以下の範囲、0.05以上0.4以下の範囲、又は0.1以上0.3以下の範囲である。ここで、樹脂フィルム内面とは、ガゼット袋においてロール10を臨む内面である。該動摩擦係数が0.01未満であると、ヒートシールするときに、熱の伝わりが不十分になり、シール不良が発生しやすい傾向がある。該動摩擦係数が0.5を超えると、樹脂フィルムの内面(印刷されていない平滑面)同士が密着して疑似接着し、ブロッキングが発生しやすい傾向にある。樹脂フィルムの動摩擦係数は、JIS K 7125 1999に準拠して測定できる。
【0026】
(内面印刷部の面積率)
別の好ましい実施形態では、収納部20及び/又は中間部30の外方に面する表面には、印刷部(不図示)が設けられている。そして、把手部40を除くガゼット袋の全表面積、すなわち収納部20及び中間部30の内方に面する表面の合計面積に対する印刷部の面積の比率(以下単に「内面印刷部の面積率」ともいう)が20%以上の範囲、30%以上の範囲、又は40%以上の範囲である。内面印刷部の面積率が20%未満では、ガゼット袋を構成する樹脂フィルムでは印刷部が形成されず、インキが存在しない内表面は粘着性を有することから、ロール10とガゼット袋を構成する樹脂フィルム内表面とが疑似接着し、ロール10をガセット袋から取り出す際にシートが破れてしまう傾向がある。
【0027】
(厚み)
さらに別の好ましい実施形態では、樹脂フィルムの厚みは、例えば、20μm以上60μm以下の範囲、23μm以上50μm以下の範囲、又は25μm以上40μm以下の範囲である。厚みが20μm未満であると、樹脂フィルムのヤング率等を含めた剛性が低下して、樹脂フィルムが柔らかすぎて吸引パッド51と樹脂フィルムとの間に隙間が生じやすくなり、ガゼット包装するときにバキューム吸引よりも樹脂フィルムの粘着性が勝って、ガゼット包装袋の開口が不十分になり、包装不良が発生しやすい傾向がある。厚みが60μmを超えると、ヒートシールをするときの熱の伝わりが不十分になり、シール不良が発生しやすい傾向がある。樹脂フィルムの厚みは、JIS K 7130:1999に準拠して測定できる。
【0028】
(外面非印刷部の動摩擦係数)
より別の好ましい実施形態では、ガゼット袋外面(外方に面する外側表面)における非印刷部の樹脂フィルムの動摩擦係数は、例えば、0.01以上0.5以下の範囲、0.05以上0.4以下の範囲、又は0.1以上0.3以下の範囲である。この動摩擦係数が0.01未満では、開口時のバキュームで滑ってしまい、ガゼット袋の開口が不十分になり、包装不良が発生しやすい傾向がある。この動摩擦係数が0.5を超えると、ロール製品1を輸送するために段ボール箱等に充填したときに、平滑面同士が密着するブロッキングが発生し易くなり、ロール製品1の商品価値を減じる傾向がある。樹脂フィルムの動摩擦係数は、JIS K 7125 1999に準拠して測定できる。
【0029】
<ガゼット部>
中間部30は、前述のように、2つの斜面部31と、頂部32と、から構成されている。2つの斜面部31は、一端がガゼット袋の収納部20の一の対向する一方及び他方の各上端から立ち上がり、上方に向かうほど近接し、他端が頂部32で接合されており、収納部20の他の対向する樹脂フィルムが内側に折り込まれて樹脂フィルムが重なり合ったマチ部分であるガゼット部35bを有している。収納部20の樹脂フィルムが折り込まれる側の側面がガゼット部35aであり、把手部40の幅方向両側の樹脂フィルムが重なった領域がガゼット部35cである。このように、ガゼット部35は、収納部20(ガゼット部35a)から、中間部30(ガゼット部35b)を経て、把手部40(ガゼット部35c)にわたっている。2つの斜面部31は、それぞれ、外方を臨む外表面と、収納部20の頂面を臨む内表面とを有する。外表面及び/又は内表面には、必要に応じて、単色又は複数色のインキからなり、文字、絵柄、これらの組み合わせ、目印等を含む印刷部が設けられる。
【0030】
(印刷面積率及びガゼット率)
ガゼット部35(ここでは収納部20中のガゼット部35aと中間部30中のガゼット部35bとの合計)は、印刷面積率が20%以上95%以下の範囲、好ましくは30%以上95%以下の範囲、より好ましくは40%以上95%以下の範囲であり、ガゼット率が20%以上95%以下の範囲、好ましくは30%以上95%以下の範囲、より好ましくは40%以上95%以下の範囲である。ここで、印刷面積率とは、収納部20と中間部30との全面積に対するガゼット35a、35bに設けられた印刷部の全面積の百分率(%)、又はガゼット袋の全面積(把手部40を除く)に対する印刷部の全面積の百分率である。
【0031】
図4に示すガゼット部35bの水平方向断面図を示す。ガゼット袋では、外側に位置する樹脂フィルムABは、内側に折り込まれた樹脂フィルムAFと二重に重なるマチ部分を形成し、このマチ部分がガゼット部35bである。他の3つのガゼット部35bも、外側と内側とで樹脂フィルムが二重に重なったマチ部分である。
図4において、ガゼット率(%)=(辺AFの長さ+辺EFの長さ+辺BCの長さ+辺CDの長さ)÷(辺ABの長さ+辺DEの長さ)×100で表される。
【0032】
図5に基づいて、ガゼット率を20%以上95%以下に設定した理由を説明する。ガゼット率が前述の範囲にあると、
図5(a)に示すように、辺AF及び辺EFが適度な長さになって(折り目A、E、F間の距離が適切な長さになって)、ガゼット袋にロール10を収納しても、樹脂フィルムが拡がるゆとりがあるので、樹脂フィルムは非常に破れにくくなり、折り目B、C、Dでも同様である。ガゼット率が20%未満では、
図5(b)に示すように、折り目A、E、F間の距離、及び折り目B、C、D間の距離が短くなりすぎて、ガゼット袋にロール10を収納するときに、樹脂フィルムに膨張しようとする比較的大きな応力が必要になり、吸引による開口時及び包装時に樹脂フィルムが破れ易い傾向がある。一方、ガゼット率が95%超えると、
図5(c)に示すように、樹脂フィルムの内側への折り込みにばらつきを生じたときに、折り目C、Fが非常に近接して疑似接着を起こし易くなり、結果として開口時にブロッキングが発生し易くなる傾向がある。
【0033】
<ロール>
ガゼット袋に包装されるロール10は、
図2に示すように、長尺の紙製シート2をロール状に巻き取ったものであり、図中符号「21a」はシート2の表面、「21b」はシート2の裏面をそれぞれ示す。本実施形態では、トイレットロール、キッチンタオルロール等である。トイレットロール、キッチンタオルロールの寸法は特に限定されず、シート2の紙質に応じて適宜選択されるので、これらの寸法に応じてガゼット袋の寸法を選択すればよい。
【0034】
トイレットロールの一例を挙げれば、坪量は、例えば1プライ製品の場合、16g/m2以上24g/m2以下の範囲、17g/m2以上23g/m2以下の範囲、18g/m2以上22g/m2以下の範囲であり、例えば2プライ製品の場合、12g/m2以上19g/m2以下の範囲、13g/m2以上18g/m2以下の範囲、14g/m2以上17g/m2以下の範囲、であり、巻長は例えば1プライ製品の場合、75m以上130m以下の範囲、75m以上120m以下の範囲、又は75m以上101m以下の範囲であり、2プライ製品の場合、37.5m以上90m以下の範囲、37.5m以上85m以下の範囲、又は37.5m以上76m以下の範囲であり、巻直径DRは例えば100mm以上140mm以下の範囲、107mm以上135mm以下の範囲、又は112mm以上120mm以下の範囲であり、コア外径DIは適宜選択できる。キッチンタオルロールの一例をあげれば、坪量は、例えば16g/m2以上24g/m2以下の範囲、17g/m2以上23g/m2以下の範囲、18g/m2以上22g/m2以下の範囲であり、巻長は例えば15m以上40m以下の範囲、21m以上35m以下の範囲、又は25m以上31m以下の範囲であり、巻直径DRは例えば113mm以上180mm以下の範囲、135mm以上170mm以下の範囲、又は140mm以上160mm以下の範囲であり、コア外径DIは適宜選択できる。
【0035】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態や実施例に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【実施例0036】
以下、実施例及び比較例を挙げて本実施形態をさらに具体的に説明する。
【0037】
<実施例1~15及び比較例1~8>
表1及び表2に示す特性を有する樹脂フィルムからなるガゼット袋を作製し、次の評価に供した。結果を表1、表2に示す。なお、実施例4は、ポリエステル樹脂90質量%とポリプロピレン樹脂10質量%とからなる樹脂フィルムを、実施例5はポリエステル樹脂60質量%とポリプロピレン樹脂40質量%とからなる樹脂フィルムを、比較例2ではポリエステル樹脂30質量%とポリプロピレン樹脂70質量%とからなる樹脂フィルムを、比較例3ではポリエステル樹脂75質量%とポリプロピレン樹脂25質量%とからなる樹脂フィルムをそれぞれ用いた。
【0038】
<評価方法>
(ブロッキングのしにくさ)
試験片を幅50mm×長さ70mmに切り出し、試験片よりも底面積を有する、重さ10kgのプレートを載せ、40℃の恒温槽内で72時間静置する。恒温層から取り出し、試験片が室温まで低下したのち、引張試験機にて速度300mm/minで剥離させた際の最大剥離強度(N/50mm)及び剥離音の有無を以下の基準で評価した。
◎・・・接着しておらず、剥離強度の測定が不可能(0N/50mm)
〇・・・剥離音がなく、剥離強度が3N/50mm以下
△・・・剥離音がなく、剥離強度が3~6N/50mm
×・・・剥離音が発生または剥離強度が7N/50mm以上
【0039】
(開口のしにくさ)
包装機で1000パック包装した際の開口不良の頻度を測定し、以下の基準で評価した。
◎・・・開口不良が発生しない(0回)
〇・・・開口不良が1~5回発生する
△・・・開口不良が6~9回発生する
×・・・開口不良が10回以上発生する
【0040】
(印刷の美粧性)
インキ抜けの有無を目視で観察し、以下の基準で評価した。
◎・・・包装フィルム1枚につき、インキ抜けが0か所
〇・・・包装フィルム1枚につき、インキ抜けが1~2か所
△・・・包装フィルム1枚につき、インキ抜けが3~4か所
×・・・包装フィルム1枚につき、インキ抜けが4か所以上
【0041】
(シール強度)
トイレットロールのガゼット包装体の把手部に指をひっかけて保持した状態で、上下に振り下げる操作を実施し(振り下げは、10cmのストロークで2回/秒の速度で実施)、把手部が破断するまでの回数を調べ、以下の基準で評価した。
◎・・・100回以上操作しても破断しない
〇・・・50~99回の操作で破断する
△・・・21~49回で破断する
×・・・20回以内で破断する
【0042】
【0043】
【0044】
表1、表2から、本実施形態の構成を有する樹脂フィルムを用いれば、該樹脂フィルムがバイオマス系樹脂材料を含んでいても、印刷不良、開口不良及び開封不良の発生や、ロールと樹脂フィルムとの疑似接着が著しく抑制され、環境配慮型の良好なロール製品を得ることができる。