(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022166450
(43)【公開日】2022-11-02
(54)【発明の名称】静電成膜装置
(51)【国際特許分類】
B41F 15/08 20060101AFI20221026BHJP
B41F 15/40 20060101ALI20221026BHJP
B41F 15/12 20060101ALI20221026BHJP
【FI】
B41F15/08 308
B41F15/40 B
B41F15/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021071656
(22)【出願日】2021-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】596159153
【氏名又は名称】ベルク工業有限会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(72)【発明者】
【氏名】安藤 今朝男
【テーマコード(参考)】
2C035
【Fターム(参考)】
2C035AA09
2C035FA22
2C035FB22
2C035FC02
2C035FD25
2C035FD49
2C035FE01
(57)【要約】
【課題】粉体をホッパから擦り込みローラーに均一に供給でき、ホッパの定期的なクリーニングを不要とすることができる静電成膜装置を提供する。
【解決手段】静電成膜装置は、対象物1に向き合って配置されたスクリーン10と、粉体をスクリーン10に擦り込むための擦り込みローラー12と、スクリーン10と対象物1との間に電圧を印加するための電源DCと、粉体を擦り込みローラー12に供給するためのホッパ14を備え、ホッパ14の壁部14Aは、粉体を通過させるための粉体出口25を有しており、擦り込みローラー12は、ホッパ14の壁部14Aに接触している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体を静電力により対象物上に付着させる静電成膜装置であって、
前記対象物に向き合って配置されたスクリーンと、
粉体を前記スクリーンに擦り込むための擦り込みローラーと、
前記スクリーンと前記対象物との間に電圧を印加するための電源と、
前記粉体を前記擦り込みローラーに供給するためのホッパを備え、
前記ホッパの壁部は、前記粉体を通過させるための粉体出口を有しており、
前記擦り込みローラーは、前記ホッパの前記壁部に接触している、静電成膜装置。
【請求項2】
前記擦り込みローラーは、前記粉体出口の全体を覆っている、請求項1に記載の静電成膜装置。
【請求項3】
前記ホッパの前記壁部に接触している前記擦り込みローラーの部分の変形量は、前記スクリーンに接触している前記擦り込みローラーの部分の変形量よりも小さい、請求項1または2に記載の静電成膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可食性粉体や機能性粉体などの粉体を、静電力を利用して対象物に付着させる静電成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
静電スクリーン印刷装置は、食品の印刷や工業製品の製造などの様々な用途に使用されている。この静電印刷の原理について、
図3を参照して説明する。
図3に示すように、静電スクリーン印刷装置は、対象物200が載置されるコンベヤ201と、メッシュを有するスクリーン202と、スクリーン202上の擦り込みローラー203とを備える。対象物200はコンベヤ201によってスクリーン202下方の印刷位置に移動される。
【0003】
スクリーン202は電源DCの負極に接続され、コンベヤ201は電源DCの正極に接続されるとともに接地される。電源DCによってスクリーン202とコンベヤ201との間には高電圧が印加され、これによりスクリーン202とコンベヤ201上の対象物200との間には静電界が形成される。ホッパ204内の粉体は、回転するホッパブラシ205によってホッパ204の底部に形成されている粉体出口に押し込まれ、この粉体出口を通って、回転する擦り込みローラー203上に供給され、さらにスクリーン202上に落下する。
【0004】
スクリーン202上の粉体は、回転する擦り込みローラー203によってスクリーン202のメッシュに摺り込まれ、メッシュを通ってスクリーン202の下側に押し出される。このとき、粉体は、回転する擦り込みローラー203との摩擦によって負に帯電する。したがって、粉体は、接地されている対象物200に引き付けられて対象物200の表面に付着し、対象物200上に均一な厚さの膜を形成する。
【0005】
このような静電印刷技術は、粉体からなる膜を均一に形成することが可能であるため、最近では、燃料電池、全固体電池、二次電池、化粧品など、さまざまな工業製品の製造にも使用されつつある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、回転するホッパブラシ205は、ホッパ204の底部との摩擦により正に帯電し、このホッパブラシ205によってホッパ204から押し出された粉体も正に帯電する。ホッパ204は接地されているので、ホッパ204から押し出された粉体の一部は、ホッパ204に引き寄せられてホッパ204の底部に付着し、ホッパ204の粉体出口を塞いでしまうことがある。このため、ホッパ204の下面を定期的にクリーニングし、粉体をホッパ204の下面から取り除く必要がある。また、擦り込みローラー203とスクリーン202との摺接により擦り込みローラー203が正に帯電すると、ホッパ204から擦り込みローラー203に向かって落下した粉体が飛び散り、粉体が擦り込みローラー203に均一に供給できないことがある。
【0008】
そこで、本発明は、粉体をホッパから擦り込みローラーに均一に供給でき、ホッパの定期的なクリーニングを不要とすることができる静電成膜装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様では、粉体を静電力により対象物上に付着させる静電成膜装置であって、前記対象物に向き合って配置されたスクリーンと、粉体を前記スクリーンに擦り込むための擦り込みローラーと、前記スクリーンと前記対象物との間に電圧を印加するための電源と、前記粉体を前記擦り込みローラーに供給するためのホッパを備え、前記ホッパの壁部は、前記粉体を通過させるための粉体出口を有しており、前記擦り込みローラーは、前記ホッパの前記壁部に接触している、静電成膜装置が提供される。
【0010】
一態様では、前記擦り込みローラーは、前記粉体出口の全体を覆っている。
一態様では、前記ホッパの前記壁部に接触している前記擦り込みローラーの部分の変形量は、前記スクリーンに接触している前記擦り込みローラーの部分の変形量よりも小さい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ホッパから出た粉体は、空中を飛翔することなく、直ちに擦り込みローラーに到達する。したがって、擦り込みローラーが帯電しても、粉体は周囲に飛散することなく擦り込みローラーに均一に付着する。擦り込みローラーは、ホッパの粉体出口を含む壁部に接触しているので、回転する擦り込みローラーは、粉体がホッパの壁部に残存することを防ぎ、結果としてホッパの定期的なクリーニングを不要とすることができる。さらに、ホッパと擦り込みローラーとの間に隙間がないので、静電成膜装置が小型化できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】静電成膜装置の一実施形態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は静電成膜装置の一実施形態を示す正面図であり、
図2は
図1に示す静電成膜装置の側面図である。静電成膜装置は、対象物1の上方に配置されるスクリーン10と、スクリーン10上に置かれた円筒状の擦り込みローラー12と、粉体を擦り込みローラー12に供給するホッパ14と、スクリーン10と対象物1との間に電圧を印加する電源DCを備えている。粉体の例としては、可食性粉体や機能性粉体などが挙げられる。対象物1は特に限定されず、食品、または燃料電池、全固体電池、二次電池、化粧品など工業製品などである。
【0014】
スクリーン10は対象物1に向き合って配置されており、スクリーン10と対象物1とは非接触とされる。
図1に示すように、スクリーン10は、対象物1の上方の位置において水平に配置されている。スクリーン10には粉体が通過するメッシュ11が形成されている。粉体は、擦り込みローラー12の外周面によってスクリーン10のメッシュ11に擦り込まれる。
【0015】
擦り込みローラー12の材料としては、スクリーン10への粉体の擦込性の良さから軟質のウレタンスポンジが採用されている。特に、粉体保持性のよい連泡ウレタンスポンジが好ましく採用される。
図2に示すように、擦り込みローラー12は、擦り込みローラー回転機構19に連結されている。擦り込みローラー12は、スクリーン10と平行に延びるその軸心を中心として擦り込みローラー回転機構19により回転駆動され、擦り込みローラー12の外周面がスクリーン10のメッシュ11に摺接される。擦り込みローラー回転機構19は、モータおよびトルク伝達機構(例えば、スプロケット、チェーンなど)から構成される。擦り込みローラー回転機構19は、擦り込みローラー12に直結されたモータから構成されてもよい。
【0016】
ホッパ14はスクリーン10の上方に配置され、接地されている。擦り込みローラー12はホッパ14の壁部14Aに接触している。本実施形態では、壁部14Aはホッパ14の底部を構成する。擦り込みローラー12は、スクリーン10とホッパ14の両方に接触している。ホッパ14は、粉体を内部に収容するホッパ箱20と、ホッパ箱20の内部に配置されたホッパローラー22と、ホッパローラー22を回転させるホッパローラー回転機構24とを備えている。ホッパローラー回転機構24は、モータおよびトルク伝達機構(例えば、スプロケット、チェーンなど)から構成される。ホッパローラー回転機構24は、ホッパローラー22に直結されたモータから構成されてもよい。
【0017】
ホッパローラー22はホッパ箱20の壁部14A(本実施形態ではホッパ箱20の底部)上に置かれている。このホッパ箱20の壁部14Aには粉体出口25が形成されている。粉体出口25は、複数の通孔またはスリットである。ホッパローラー回転機構24がホッパローラー22を回転させると、ホッパ箱20内の粉体はホッパローラー22によって撹拌されながらホッパ箱20の壁部14Aの粉体出口25に押し込まれ、粉体出口25を通過して擦り込みローラー12の外周面に押し込まれる。粉体の擦り込みローラー12への供給量は、ホッパローラー22の回転速度によって調整することができる。
【0018】
図1に示す例では、ホッパ14は擦り込みローラー12の上に位置しているが、ホッパ14と擦り込みローラー12の位置関係は
図1の例に限定されない。例えば、ホッパ14は擦り込みローラー12の横に配置されてもよい。あるいは、スクリーン10の下に擦り込みローラー12とホッパ14が配置され、粉体を対象物に向かって上方に飛翔させるようにしてもよい。このように、ホッパ14は擦り込みローラー12に接触し、ホッパ14内の粉体は直接擦り込みローラー12に供給されるので、従来ではなし得なかったホッパ14の自由な配置が実現できる。
【0019】
スクリーン10の下方には複数の対象物1を水平に搬送するコンベヤ2が配置されている。コンベヤ2は、スクリーン10の下方位置に対象物1を順次移動させる。コンベヤ2としては、工場に既に設置されているベルト式コンベヤを使用することができる。スクリーン10は電源(電圧印加装置)DCの負極に接続され、コンベヤ2は電源DCの正極に接続されている。電源DCの正極およびコンベヤ2は接地される。電源DCによってスクリーン10とコンベヤ2との間には高電圧が印加され、これによりスクリーン10とコンベヤ2上の対象物1との間には静電界が形成される。
【0020】
粉体はホッパ14から擦り込みローラー12上に供給され、回転する擦り込みローラー12によってスクリーン10に運ばれる。粉体は、回転する擦り込みローラー12によってスクリーン10のメッシュ11に摺り込まれ、スクリーン10の反対側に押し出される。このとき、粉体は、回転する擦り込みローラー12との摩擦によって負に帯電する。したがって、粉体は、接地されている対象物1に引き付けられて対象物1の表面に付着し、対象物1上に均一な厚さの膜を形成する。粉体をスクリーン10に擦り込みながら、図示しない揺動機構により擦り込みローラー12をその軸方向に揺動させることが好ましい。粉体の種類によっては、擦り込みローラー12によってスクリーン10のメッシュ11に摺り込まれたときに正に帯電するものがある。このような粉体を使用するときは、スクリーン10は電源DCの正極に接続され、電源DCの負極およびコンベヤ2は接地される。
【0021】
図1に示すように、擦り込みローラー12は、ホッパ14の壁部14Aに形成されている粉体出口25の全体を覆っている。言い換えれば、粉体出口25の全体は、擦り込みローラー12によって塞がれている。したがって、回転するホッパローラー22によって粉体出口25に押し込まれた粉体は、空中を飛翔することなく、直ちに擦り込みローラー12に到達する。したがって、スクリーン10との摺接により擦り込みローラー12が帯電しても、粉体は周囲に飛散することなく擦り込みローラー12に均一に付着する。結果として、粉体からなる均一な厚さの膜を対象物1上に形成することができる。さらに、ホッパ14と擦り込みローラー12との間に隙間がないので、静電成膜装置が小型化できる。
【0022】
擦り込みローラー12の上部は、ホッパ14の壁部14Aに押し付けられており、その結果として、擦り込みローラー12の上部はわずかに変形している(潰れている)。同様に、擦り込みローラー12の下部は、スクリーン10に押し付けられており、その結果として、擦り込みローラー12の下部はわずかに変形している(潰れている)。ホッパ14の壁部14Aに接触している擦り込みローラー12の上部の変形量は、スクリーン10に接触している擦り込みローラー12の下部の変形量よりも小さい。
【0023】
ホッパ14の粉体出口25からホッパローラー22によって押し出された粉体の一部は、擦り込みローラー12内に入り込み、擦り込みローラー12の回転によってスクリーン10に運ばれる。擦り込みローラー12はスクリーン10に押し付けられたときに変形するので、擦り込みローラー12内の粉体はスクリーン10上に押し出され、擦り込みローラー12によってスクリーン10に擦り込まれる。このように、ホッパ14の壁部14Aに接触している擦り込みローラー12の上部の変形量は、スクリーン10に接触している擦り込みローラー12の下部の変形量よりも小さいので、粉体は擦り込みローラー12内に残留しにくい。
【0024】
擦り込みローラー12は、ホッパ14の粉体出口25を含む壁部14Aに接触しているので、回転する擦り込みローラー12は、粉体がホッパ14の壁部14Aに残存することを防ぎ、結果として粉体による粉体出口25の閉塞を防止することができ、かつホッパ14の定期的なクリーニングを不要とすることができる。
【0025】
図3に示す従来の装置では、ホッパ204から出た粉体は直ぐにはホッパ204から落下せず、ある程度の塊を形成してから、その自重によって落下する。このため、粉体からなる膜の厚さにむらができることがある。
図1および
図2に示す実施形態によれば、擦り込みローラー12は、ホッパ14の粉体出口25を含む壁部14Aに摺接しているので、粉体が塊を形成する前に粉体はホッパ14から擦り込みローラー12に移動し、スクリーン10に移動する。したがって、粉体からなる膜の厚さが均一となる。
【0026】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0027】
1 対象物
2 コンベヤ
10 スクリーン
11 メッシュ
12 擦り込みローラー
14 ホッパ
14A 壁部
19 擦り込みローラー回転機構
20 ホッパ箱
22 ホッパローラー
24 ホッパローラー回転機構
25 粉体出口
DC 電源(電圧印加装置)