(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022166457
(43)【公開日】2022-11-02
(54)【発明の名称】吊具
(51)【国際特許分類】
B66C 1/42 20060101AFI20221026BHJP
B66C 1/66 20060101ALI20221026BHJP
【FI】
B66C1/42 D
B66C1/66 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021071670
(22)【出願日】2021-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】591156799
【氏名又は名称】ユニパルス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 政数
【テーマコード(参考)】
3F004
【Fターム(参考)】
3F004AA07
3F004AB12
3F004AF06
(57)【要約】
【課題】物体の吊り下げに際して作業者の手間を低減し、安定した状態で物体を吊り下げる。
【解決手段】 作業者が、吊下部材10を、軸部材20を回転軸にして支持部材30に対して回転させ、支持部32の端部が、吊下部材10に覆われないようにする。次に、支持部32が延びる方向と、物体WKの引掛け部分における穴の方向とが一致するようにする。次いで、吊下部材10を把持しながら、吊具100を移動させて、支持部32を当該穴に挿入する。引き続き、作業者が、昇降装置を上昇させることで吊具100を上昇させる。この結果、支持部32の端部が吊下部材10に覆われて、支持部材30が、物体WKが吊具100から外れないように支持する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体を支持する支持部を有する支持部材と;
前記支持部材に対して回転可能に取り付けられた吊下部材と;を備え、
前記吊下部材に外力が加えられずに、前記吊下部材が吊支されている場合には、前記支持部における前記物体の取り付け側が、前記吊下部材に覆われ、
前記支持部材への前記物体の取り付け、及び、前記支持部材からの前記物体の取り外しが制限される、
ことを特徴とする吊具。
【請求項2】
前記吊下部材に外力が加えられ、前記吊下部材が前記支持部材に対して所定角度以上回転した場合に、前記支持部における前記物体の取り付け側が、前記吊下部材に覆われなくなり、
前記支持部材への前記物体の取り付け、及び、前記支持部材からの前記物体の取り外しが可能である、
ことを特徴とする請求項1に記載の吊具。
【請求項3】
前記支持部の形状は、凸状及び凹状のいずれかである、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の吊具。
【請求項4】
前記支持部材に取り付けられ、前記支持部材に対する前記吊下部材の回転範囲を規制する規制部材を更に備える、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の吊具。
【請求項5】
前記吊下部材は、昇降装置に取り付けられる、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の吊具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、荷役物運搬機を用いて物品を運搬する際に、荷役物運搬機に吊るされ、物品を吊り下げる吊具が使用されている。当該吊具については、吊り下げる物体の形状等に応じて、様々な技術が提案されている。
【0003】
こうした提案技術の一つとして、本体フレーム、並びに、当該本体フレームの両端に取り付けられた固定アーム及び開閉アームを備え、これらの要素を利用して、物体を把持するものがある(特許文献1参照:以下、「従来例1」と呼ぶ)。この従来例1の技術では、固定アーム及び開閉アームが、物体の対向する外側面を両側から挟むようにして、物体の外側から当該物体を把持するようになっている。
【0004】
また、他の提案技術として、荷役運搬機器等に連結される連結軸を介して開閉可能に軸着された上部リンクと、当該上部リンクとパンタグラフ機構を形成する下部リンクと、当該下部リンクの下端に設けられた係止爪とを備え、パンタグラフ機構の収縮により、物体を保持するものがある(特許文献2参照:以下、「従来例2」と呼ぶ)。この従来例2の技術では、係止爪を物体の開口部に挿通させ、パンタグラフ機構の上下方向の収縮により、物体の開口部に当該係止爪を係着させて、物体の内側から当該物体を保持するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-082541号公報
【特許文献2】特開2004-067351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した従来例1の技術では、本体フレームの両端に取り付けられた固定アーム及び開閉アームによって、例えば、鍔部を有する物体を、当該鍔部を利用して物体の外側から把持する。また、従来例2の技術では、上部リンクとパンタグラフ機構を形成する下部リンクに設けられた係止爪によって、開口部を有する物体を、当該開口部を利用して物体の内側から支持する。このように、物体の形状等が異なると、物体を吊り下げる吊具の構成も大きく変わる。
【0007】
さて、例えば、輪状部分を有する物体を吊り下げたい場合に、当該輪状部分にフックが引っ掛けられるようであれば、輪状部分に荷役運搬機器等のフックを引っ掛けることが考えられる。そして、フックを利用して物体を吊り下げるのであれば、吊り下げられた物体がフックから外れないようにするため、当該フックが外れ止め金具等の外れ止め機構を備えていればよい。
【0008】
しかしながら、フックが外れ止め金具を備えている場合には、物体にフックを引っ掛け、又は、物体からフックを外すために、作業者が外れ止め金具を開閉させる必要がある。この結果、物体の取り付け及び取り外しに際して、作業者の手間を必要とすることがある。また、物体にフックを直接引っ掛けることが容易でない状況下では、物体にフックを引っ掛けることができず、物体を吊り下げることができないことがある。
【0009】
また、輪状部分を有する物体を吊り下げたい場合に、当該輪状部分を支持する支持部を、荷役運搬機器に吊支される吊下部材に取り付ける構成が考えられる。そして、物体が支持部から外れないようにするために、物体の落下防止機構の仕組みを取り込む構成が考えられる。かかる構成の場合に、作業者が、落下防止の有効化作業及び無効化作業を手動で行う必要があるならば、作業者の手間を要してしまう。また、落下防止のための取付作業が不要であったとしても、物体の吊り下げ操作が容易なものである必要がある。
【0010】
このため、物体を吊り下げるに際して、作業者の手間を低減することができるとともに操作性を向上させ、作業者が直接、吊具に物体を取り付けられない状況であっても、吊具に物体を取り付け、安定した状態で物体を吊り下げることができる技術が待望されている。かかる要請に応えることが、本発明が解決すべき課題の一つとして挙げられる。
【0011】
本発明は、上記の事情を鑑みてなされたものであり、物体の吊り下げに際して作業者の手間を低減し、安定した状態で物体を吊り下げることができる新たな吊具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、物体を支持する支持部を有する支持部材と;前記支持部材に対して回転可能に取り付けられた吊下部材と;を備え、前記吊下部材に外力が加えられずに、前記吊下部材が吊支されている場合には、前記支持部における前記物体の取り付け側が、前記吊下部材に覆われ、前記支持部材への前記物体の取り付け、及び、前記支持部材からの前記物体の取り外しが制限される、ことを特徴とする吊具である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】昇降装置に取り付けられた本発明の一実施形態に係る吊具、及び、当該吊具に吊り下げられた物体の外観図である。
【
図2】
図1の吊具及び当該吊具に吊下げられる物体の外観図である。
【
図6】物体の取り付け方法を説明するための図(その1)である。
【
図7】物体の取り付け方法を説明するための図(その2)である。
【
図8】物体の取り付け方法を説明するための図(その3)である。
【
図9】物体の取り付け方法を説明するための図(その4)である。
【
図10】物体の取り付け方法を説明するための図(その5)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を、添付図面を参照して説明する。なお、以下の説明及び図面においては、同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
[構成]
図1には、昇降装置MLに取り付けられた一実施形態に係る吊具100、及び、当該吊具100に吊り下げられた物体WKの外観図が示されている。
図1における座標系(X,Y,Z)は、図示の通りに定義されている。ここで、
図1は、当該吊具100、昇降装置ML及び物体WKを、
図1に示した座標系で表した斜視図である。
【0016】
ここで、昇降装置MLは、当該昇降装置MLの本体部内部に巻回され、巻き取り及び巻き出しが可能なチェーンを備え、当該チェーンの端部にフックが取り付けられている。このフックを、吊具100における鉛直上方部分の引掛部に引っ掛けることで、吊具100が、昇降装置MLに取り付けられるようになっている。当該昇降装置MLは、操作部を備え、作業者が操作部を操作することで、チェーンを巻き取り・巻き出しして、吊具100を昇降させることができるようになっている。当該昇降装置MLは、建屋内の所定位置に配置され、移動可能に設置されている。
【0017】
図2には、吊具100及び当該吊具100により吊り下げられる物体WKの外観の斜視図が示されている。本実施形態では、物体WKは、引掛け部分CTを有しており、当該引掛け部分CTには穴HLが形成されている。吊具100は、引掛け部分CTの穴HLを利用して、物体WKを吊り下げる。
【0018】
図3(A),(B)及び
図4(A),(B)には、吊具100の外観図が示されている。ここで、
図3(A)は、
図2に示した吊具100を-Y方向側から視た外観図であり、
図3(B)は、
図2に示した吊具100を+Y方向側から視た外観図である。また、
図4(A)は、
図2に示した吊具100を+X方向側から視た外観図であり、
図4(B)は、
図2に示した吊具100を-X方向側から視た外観図である。
図2~
図4(A),(B)では、吊具100を吊支する昇降装置MLの図示を省略している。ここで、吊具100が昇降装置MLに吊支されていて、作業者による外力が加えられていない
図1~
図4(A),(B)に示される吊具100の姿勢を「吊下姿勢」ともいうこととする。
【0019】
図2~
図4(A),(B)により総合的に示されるように、吊具100は、吊下部材10と、軸部材20と、支持部材30とを備えている。また、吊具100は、規制部材40を備えている。
【0020】
上記の吊下部材10は、吊下姿勢では、Z方向に沿って延びる長形状の直方形状部分を含む部材であり、+Z方向側に輪状の引掛部11を有している。当該引掛部11に、昇降装置MLのチェーンの端部に取り付けられたフックを引っ掛けることで、吊下部材10が、昇降装置MLに取り付けられている。また、吊下部材10の略中央の-Z方向側の部分に、軸部材20を挿入するための軸穴が成型されている。ここで、昇降装置MLに取り付けられて、当該昇降装置MLに吊支された吊下部材10は、作業者が把持等を行っていない非接触状態では、Z方向に沿って延びている。
【0021】
上記の軸部材20は、本実施形態では、吊下部材10が延びる方向と直交するY方向に沿って延びる部材である。この軸部材20は、吊下部材10に成型された軸穴、及び支持部材30に成型された軸穴に、吊下部材10の-Y方向側から挿入されて、支持部材30の+Y方向側で、Eリング25により固定されている。
【0022】
このため、吊下部材10は、
図5(A),(B)に示されるように、軸部材20を回転軸にして支持部材30に対して回転可能となっている。
【0023】
上記の支持部材30は、吊下部材10の+Y方向側に配置され、回転部31と、支持部32とを備えている。
【0024】
上記の回転部31は、吊下姿勢の時に、YZ平面視でL字形状をしており、軸部材20が取り付けられる+Z方向側の第1部分31aと、支持部32が取り付けられる-Z方向側の第2部分31bとから構成されている(
図4(B)参照)。ここで、回転部31のY方向に沿った長さについては、第1部分31aの方が第2部分31bよりも長くなっている(
図4(A),(B)参照)。そして、第2部分31bについては、吊下部材10との間に所定間隔Dが設けられている(
図4(A),(B)参照)。この所定間隔Dは、物体WKにおける引掛け部分CTのY方向に沿った長さより長くなっている。
【0025】
回転部31の第1部分31aには、軸部材20を挿入するための軸穴が成型されている。当該軸穴に軸部材20が挿入されて、回転部31は、軸部材20を中心軸にして、吊下部材10に回転可能に取り付けられる。また、回転部31の第2部分31bの-Y方向側には、支持部32を取り付けるための取付穴が成型されている。当該取付穴に支持部32が挿入される。
【0026】
上記の支持部32は、Y方向に沿って延びる凸状の円柱部材である。当該支持部32は、回転部31の第2部分31bの取付穴に-Y方向側から圧入され、回転部31に固定されている。回転部31から露出ている支持部32の長さは、物体WKにおける引掛け部分CTのY方向に沿った長さより長く、かつ、所定間隔Dより短くなっている。また、支持部32の-Y方向側の端部と吊下部材10との間の距離は、物体WKの引掛け部分CTのY方向の長さより短くなっている。
【0027】
また、本実施形態では、支持部材30における軸部材20の取り付け位置から-Z方向側の端部までの長さは、吊下部材10のおける軸部材20の取り付け位置から-Z方向側の端部までの長さと同じになっている。そして、支持部32は、回転部31の第2部分31bの-Z方向側の端部よりも+Z方向側に取り付けられている。このため、吊下姿勢のときに、支持部32の-Y方向側の端部は、吊下部材10により覆われる。そして、吊具100が、物体WKを吊り下げているときに、物体WKが吊具100から外れないようになっている。また、吊下部材10が支持部材30に対して回転する際に、支持部32が吊下部材10に接触しないようにしている。
【0028】
上記の規制部材40は、支持部材30に固定された部材である。当該規制部材40は、本実施形態では、吊下姿勢で、支持部材30の+X方向側の面に、六角穴付きボルトで固定されている。この規制部材40は、吊下部材10の回転範囲を規制するように、吊下部材10の回転方向側(-Y方向側)に延伸している。
【0029】
ここで、吊具100が、昇降装置MLに取り付けられ、かつ、物体WKを吊っておらず、作業者が吊下部材10等の把持を行っていない非接触の状態では、吊具100は、吊下姿勢になる。そして、規制部材40の-X方向かつ-Y方向の側面部分が、吊下部材10の+X方向側の側面部分に当接して支持部材30の回転が規制される。このとき、
図1~
図4(A),(B)に示されるように、吊下部材10及び回転部31が延びる方向がともにZ方向となり、支持部32の端部が、吊下部材10の-Z方向側の部分に覆われるようになっている。
【0030】
また、昇降装置MLに取り付けられていない状態において、吊具100が、
図3(A)に示される状態から、作業者が、吊下部材10を支持部材30に対して回転させ、規制部材40の+Z方向側の上面部分に吊下部材10の側面部分を当接させて、吊具100を
図5(B)に示される状態にすることができる。このように支持部材30に規制部材40が取り付けられたことで、吊下部材10の回転範囲を、
図3(A)に示される状態から
図5(A)の状態を経て、
図5(B)に示される状態の範囲に制限することができる。
【0031】
このため、吊具100を
図5(B)の状態にして、コンパクトな状態で保管して管理することができる。また、吊具100を持ち運ぶ際にも、吊具100を
図5(B)の状態にして、取り扱いを容易にすることができる。
【0032】
[動作]
以上のように構成された吊具100の動作について、説明する。
【0033】
<物体WKの取り付け動作、及び、物体WKの吊り下げ動作>
前提として、吊具100は、昇降装置MLに取り付けられて、吊支されているものとする。また、当初においては、吊具100及び物体WKは、
図6に示される状態であり、物体WKは床面に載置され、吊具100に、物体WKは取り付けられていないものとする。ここで、
図6は、
図1の斜視図と同じ方向から視た吊具100及び物体WKの外観図である。
【0034】
図6に示される状態では、吊下部材10に外力加えられてなく、吊具100は、吊下姿勢であり、支持部32の端部は、吊下部材10の-Z方向側の部分に覆われている。このため、吊具100に物体WKの取り付けができないようになっている。
【0035】
こうした状態で、まず、作業者が+X方向側に位置して、吊下部材10を把持し、当該吊下部材10に外力を加えて、吊下部材10を
図6に示した矢印の方向に動かして、
図7(A),(B)に示されるように、吊下部材10を、軸部材20を回転軸にして支持部材30に対して所定角度以上回転させる。この操作により、支持部32の端部が、吊下部材10の-Z方向側の部分に覆われなくなる。このため、吊具100への物体WKの取り付けができるようになる。ここで、所定角度は、支持部32における物体WKの取り付け側が、吊下部材10に覆われなくなる角度であり、支持部材30における軸部材20の取り付け位置から支持部32までの長さ、吊下部材10のおける軸部材20の取り付け位置から-Z方向側の端部までの長さ等により定まる。
【0036】
本実施形態では、物体WKを支持する支持部32が、支持部材30に取り付けられている。仮に、支持部が吊下部材10に取り付けられていたなら、吊下部材10に外力を加えて、吊具100を
図7(A),(B)の姿勢にした場合に、支持部材30が、作業者が支持部32を視認する際の視界の障害となり、支持部32の視認性が低下してしまう。本実施形態では、支持部32が支持部材30に取り付けられているため、支持部32の視認性が良い。
【0037】
次に、作業者が、吊下部材10を把持しつつ、昇降装置MLの操作部を操作して、吊具100を-Z方向側に移動(下降)させる。そして、作業者が、吊下部材10の位置を調整して、支持部32が延びる方向と、物体WKの引掛け部分CTにおける穴HLの方向とが一致するようにする。次いで、作業者が、吊下部材10を把持しながら、吊具100全体を-Y方向側に移動させて、
図8(A),(B)に示されるように、支持部32を物体WKの引掛け部分CTにおける穴HLに挿入する。この後、作業者は、吊下部材10の把持を止める。
【0038】
引き続き、作業者が昇降装置MLの操作部を操作して、吊具100を+Z方向側に移動(上昇)させる。こうして物体WKの引掛け部分CTにおける穴HLに支持部32が挿入された状態で、吊具100が上昇すると、物体WKが床に載置されている間では、
図8(A),(B)に示される状態から
図9(A),(B)に示される状態に変化する。
【0039】
この状態の変化の間、支持部材30については、
図8(A),(B)及び
図9(A),(B)に示されるように、支持部32のY方向の位置は変化せずに、吊下部材10が、軸部材20を回転軸にして支持部材30に対して回転する。当該回転により、吊下部材10の延びる方向がZ方向となる。この結果、吊下部材10に外力が加えられていないために、吊下部材10が延びる方向と、支持部材30が延びる方向とがともにZ方向となる。この動きにより、支持部32の端部は、吊下部材10の-Z方向側の部分に覆われる。この結果、吊具100の支持部材30が、物体WKが吊具100から外れないように支持する。
【0040】
この後、作業者が昇降装置MLの操作部を操作して、物体WKを支持した吊具100を更に+Z方向に移動させる。この結果、
図10に示されるように、物体WKは吊具100に支持され、吊り下げられる。当該吊り下げ時にも、支持部32の端部は、吊下部材10の-Z方向側の部分に覆われている。このため、吊り下げ時においても、物体WKは吊具100から外れないように取り付けられている。
【0041】
かかる物体WKの取り付け動作、及び、物体WKの吊り下げ動作の間に、作業者は、吊下部材10を把持した操作及び昇降装置MLにおける操作部の操作を行っただけで、直接、物体WKに触れていない。このため、作業者が直接、吊具100に物体WKを取り付けられない状況であっても、作業者の手間を低減して、吊具100に物体WKを取り付け、安定した状態で物体WKを吊り下げることができる。
【0042】
<物体WKの取り外し動作>
前提として、吊具100に物体WKが取り付けられ、
図10に示される状態になっているものとする。吊具100からの物体WKの取り外しに際して、まず、作業者が昇降装置MLの操作部を操作して、吊具100を-Z方向側に移動(下降)させて、物体WKを所望の場所に乗せ置く(
図9(A),(B)参照)。
【0043】
次に、作業者は、昇降装置MLの操作部を操作して、吊具100を更に-Z方向側に移動(下降)させつつ、吊下部材10を把持して吊下部材10に外力を加え、当該吊下部材10を回転させて、吊具100を
図8(A),(B)に示される状態にする。このとき、吊下部材10は、軸部材20を回転軸にして回転する。こうして吊下部材10が回転すると、支持部32の端部が、吊下部材10の-Z方向側の部分に覆われなくなる。この結果、吊具100からの物体WKの取り外しができるようになる。
【0044】
次いで、作業者は、吊下部材10の把持したまま、吊下部材10を+Y方向側に移動させて、支持部32を物体WKの引掛け部分CTにおける穴HLから外す。この後、作業者が吊下部材10の保持を止めると、吊下部材10の自重により、吊下部材10が、軸部材20を回転軸にして支持部材30に対して回転する。そして、吊具100は、吊下姿勢となる(
図6(A),(B)参照)。この結果、吊具100から物体WKが取り外される。
【0045】
かかる物体WKの取り外し動作の間に、作業者は、吊下部材10を把持した操作及び昇降装置MLにおける操作部の操作を行っただけで、直接、物体WKに触れていない。このため、作業者が直接、吊具100から物体WKを取り外すことができない状況であっても、作業者の手間を低減して、吊具100から物体WKを取り外すことができる。
【0046】
以上説明したように、本実施形態では、物体WKの取り付け動作、及び、物体WKの吊り下げ動作の間、作業者は、直接、物体WKに触れていない。このため、作業者が直接、吊具100に物体WKを取り付けられない状況であっても、物体WKに触れることなく、吊具100に物体WKを取り付け、安定した状態で物体WKを吊り下げることができる。
【0047】
また、本実施形態では、物体WKを支持する支持部が、支持部材30に取り付けられている。ここで、支持部が吊下部材10に取り付けられていたなら、吊具100を
図7(A),(B)の姿勢にした場合に、支持部材30が、作業者が支持部32を視認する際の視界の障害となり、支持部の視認性が低下することがある。本実施形態では、支持部が支持部材30に取り付けられているため、支持部の視認性が良い。このため、本実施形態の吊具100は、吊下部材に支持部が取り付けられている場合に、視認性を良くして、操作性をよくすることができる。
【0048】
また、本実施形態では、物体WKの取り外し動作の間に、作業者は、直接、物体WKに触れていない。このため、本実施形態では、吊具100から物体WKを取り外すことができない状況であっても、吊具100から物体WKを取り外すことができる。
【0049】
また、本実施形態では、吊具100は規制部材40を備え、支持部材30に対する吊下部材10の回転範囲を規制する。このため、吊具100の使用時には、支持部材30に対する吊下部材10の回転範囲が制限されているため、使い勝手のよい方向にだけ回転させることができる。このため、使用時における吊具100の操作がしやすくなるとともに、取り扱いが容易となる。また、吊具100を使用していないときに、規制部材40により、吊下部材10及び支持部材30が互いに回転しない状態にすることで、吊具100のコンパクトな状態で保管しておくことができ、また、吊具100を持ち運ぶときに取り扱いを容易にすることができる。
【0050】
したがって、本実施形態によれば、物体の吊り下げに際して作業者の手間を低減し、安定した状態で物体を吊り下げることができる。
【0051】
[実施形態の変形]
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0052】
例えば、上記の実施形態では、吊具は規制部材を備えるようにしたが、吊具の構成要素として規制部材を省略するようにしてもよい。また、上記の実施形態では、規制部材は、上面部分が支持部材における規制部材の取付面と垂直になるように固定されていたが、規制部材の上面部分と、支持部材における規制部材の取付面とは垂直でなくてもよい。
【0053】
また、上記の実施形態では、支持部を円柱部材にしたが、ボルトの軸などの凸形状のものとしてもよい。また、吊り下げる物体の引掛け部分が棒状のときには、支持部の形状を円筒形状等の凹形状のものにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
以上説明したように、本発明の吊具は、物体を支持して吊るす吊具に適用することができる。
【符号の説明】
【0055】
100 … 吊具
10 … 吊下部材
11 … 引掛部
20 … 軸部材
25 … Eリング
30 … 支持部材
31 … 固定部
32 … 支持部
40 … 規制部材
CT … 引掛け部分
HL … 穴
WK … 物体