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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022166465
(43)【公開日】2022-11-02
(54)【発明の名称】ロボットアーム固定システム
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/00 20060101AFI20221026BHJP
【FI】
B25J19/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021071683
(22)【出願日】2021-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】504385982
【氏名又は名称】株式会社JRC
(74)【代理人】
【識別番号】100141852
【弁理士】
【氏名又は名称】吉本 力
(72)【発明者】
【氏名】武田 知樹
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 智記
(72)【発明者】
【氏名】玉井 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】我原 悠
(72)【発明者】
【氏名】林 茂
(72)【発明者】
【氏名】坂下 匡寿
(72)【発明者】
【氏名】景利 皓
(72)【発明者】
【氏名】西田 亜優美
(72)【発明者】
【氏名】吉田 忠広
(72)【発明者】
【氏名】小島 愛菜
(72)【発明者】
【氏名】小野 健志
(72)【発明者】
【氏名】久後 輝明
(72)【発明者】
【氏名】坂口 和男
(72)【発明者】
【氏名】屋嘉部 寿規
(72)【発明者】
【氏名】八尾 義太郎
(72)【発明者】
【氏名】八上 薫
(72)【発明者】
【氏名】朝岡 勝彦
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707BS10
3C707CS08
3C707CS10
3C707CY15
3C707KS36
(57)【要約】
【課題】作業台に対してロボットアームを容易に精度よく着脱できるロボットアーム固定システムを提供する。
【解決手段】支持部材12が、ロボットアーム3を支持し、保持台11に対して水平面内で移動可能に取り付けられている。固定機構14が、作業台2に対して支持部材12を固定位置で固定する固定状態、又は、作業台2に対する支持部材12の固定が解除された解除状態に切替可能である。ガイド機構15が、支持部材12を作業台2に対して固定位置へと案内する。センサ16が、ガイド機構15により支持部材12が案内されるときに、作業台2に対する支持部材12の接近を検知する。制御部17が、作業台2に対する支持部材12の接近がセンサ16により検知されたときに、固定機構14を解除状態から固定状態に切り替える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業台に対してロボットアームを着脱可能に固定するためのロボットアーム固定システムであって、
床面上を移動可能な保持台と、
前記ロボットアームを支持し、前記保持台に対して水平面内で移動可能に取り付けられた支持部材と、
前記作業台に対して前記支持部材を固定位置で固定する固定状態、又は、前記作業台に対する前記支持部材の固定が解除された解除状態に切替可能な固定機構と、
前記支持部材を前記作業台に対して前記固定位置へと案内するためのガイド機構と、
前記ガイド機構により前記支持部材が案内されるときに、前記作業台に対する前記支持部材の接近を検知するためのセンサと、
前記作業台に対する前記支持部材の接近が前記センサにより検知されたときに、前記固定機構を前記解除状態から前記固定状態に切り替える制御部とを備えることを特徴とするロボットアーム固定システム。
【請求項2】
作業者により入力操作が行われる操作部をさらに備え、
前記制御部は、前記操作部に対する入力操作に基づいて、前記固定機構を前記固定状態から前記解除状態に切り替えることを特徴とする請求項1に記載のロボットアーム固定システム。
【請求項3】
前記支持部材が前記保持台に対して水平面内で移動可能な移動可能状態、又は、前記保持台に対する前記支持部材の移動が制限される移動制限状態に切替可能な支持機構をさらに備え、
前記制御部は、前記固定機構を前記固定状態から前記解除状態に切り替えるときに、前記支持機構を前記移動可能状態とすることを特徴とする請求項2に記載のロボットアーム固定システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記固定機構を前記固定状態から前記解除状態に切り替えるときに、前記支持機構を前記移動可能状態とした後、所定時間経過後に前記移動制限状態に切り替えることを特徴とする請求項3に記載のロボットアーム固定システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記操作部に対する入力操作に基づいて、前記支持機構を前記移動制限状態から前記移動可能状態に切り替えることを特徴とする請求項3又は4に記載のロボットアーム固定システム。
【請求項6】
前記支持部材には、前記ロボットアームを支持する水平板と、前記水平板に連結され、前記作業台に対して前記支持部材を接近させるときに前記作業台に対向する対向板と、前記水平板及び前記対向板に連結された側面板とが含まれ、
前記固定機構の少なくとも一部が前記対向板に設けられていることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のロボットアーム固定システム。
【請求項7】
前記保持台には、前記側面板を挿通させる挿通孔が形成されており、
前記挿通孔の縁は、前記支持部材が前記保持台に対して水平面内で移動するときに前記側面板に接触することにより、前記支持部材の移動範囲を制限するためのストッパとして機能することを特徴とする請求項6に記載のロボットアーム固定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業台に対してロボットアームを着脱可能に固定するためのロボットアーム固定システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
物品の搬送又は検査などを自動化する技術において、ロボットアームが用いられている。ロボットアームは、複数の軸を介して互いに連結された複数のアーム部を有しており、各軸を中心に各アーム部を回転させることにより、人間の腕と同様に自由自在な動作を実現することができる。ロボットアームの先端部には、物品を保持するための種々の機構が採用される(例えば、下記特許文献1参照)。
【0003】
ロボットアームは、例えば作業台上で移動又は停止している物品を保持し、その物品を別の場所に移動させるために用いられる。したがって、作業台に対してロボットアームを常時固定した状態で使用することも考えられるが、作業台が複数設置されているような場合には、1つのロボットアームを各作業台において使用できるような構成であることが好ましい。そこで、各作業台に対してロボットアームを着脱可能に固定することができるようなロボットアーム固定システムを採用することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-187858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
作業台に対してロボットアームを着脱可能に固定できるようなロボットアーム固定システムにおいては、作業者がロボットアームを移動して容易に着脱できるような構成であることが好ましい。その一方で、作業台上の物品を精度よく保持することができるようにするためには、作業台に対するロボットアームの位置精度も重要である。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、作業台に対してロボットアームを容易に精度よく着脱できるロボットアーム固定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明に係るロボットアーム固定システムは、作業台に対してロボットアームを着脱可能に固定するためのロボットアーム固定システムであって、保持台と、支持部材と、固定機構と、ガイド機構と、センサと、制御部とを備える。前記保持台は、床面上を移動可能である。前記支持部材は、前記ロボットアームを支持し、前記保持台に対して水平面内で移動可能に取り付けられている。前記固定機構は、前記作業台に対して前記支持部材を固定位置で固定する固定状態、又は、前記作業台に対する前記支持部材の固定が解除された解除状態に切替可能である。前記ガイド機構は、前記支持部材を前記作業台に対して前記固定位置へと案内するためのものである。前記センサは、前記ガイド機構により前記支持部材が案内されるときに、前記作業台に対する前記支持部材の接近を検知するためのものである。前記制御部は、前記作業台に対する前記支持部材の接近が前記センサにより検知されたときに、前記固定機構を前記解除状態から前記固定状態に切り替える。
【0008】
このような構成によれば、床面上で保持台を移動させて作業台に近づけた後、保持台を停止させた状態で支持部材を水平面内で移動させることにより、ガイド機構で支持部材を固定位置へと容易に案内し、固定機構により支持部材を作業台に対して固定することができる。このとき、ガイド機構により案内される支持部材の接近をセンサにより検知し、自動的に固定機構が解除状態から固定状態に切り替えられるため、固定位置において支持部材を精度よく固定することができる。したがって、作業台に対してロボットアームを容易に精度よく着脱できる。
【0009】
(2)前記ロボットアーム固定システムは、作業者により入力操作が行われる操作部をさらに備えていてもよい。この場合、前記制御部は、前記操作部に対する入力操作に基づいて、前記固定機構を前記固定状態から前記解除状態に切り替えてもよい。
【0010】
このような構成によれば、操作部に対する入力操作により、固定機構を固定状態から解除状態に容易に切り替えることができる。したがって、作業者は、作業台に対してロボットアームを取り外すときに、操作部に対する入力操作を行うだけで容易に作業を開始することができる。
【0011】
(3)前記ロボットアーム固定システムは、前記支持部材が前記保持台に対して水平面内で移動可能な移動可能状態、又は、前記保持台に対する前記支持部材の移動が制限される移動制限状態に切替可能な支持機構をさらに備えていてもよい。この場合、前記制御部は、前記固定機構を前記固定状態から前記解除状態に切り替えるときに、前記支持機構を前記移動可能状態としてもよい。
【0012】
このような構成によれば、操作部に対する入力操作により、固定機構を固定状態から解除状態に容易に切り替えることができると同時に、支持機構が移動可能状態となるため、保持台を停止させた状態のまま支持部材を水平面内で容易に移動させ、作業台から支持部材を切り離すことができる。
【0013】
(4)前記制御部は、前記固定機構を前記固定状態から前記解除状態に切り替えるときに、前記支持機構を前記移動可能状態とした後、所定時間経過後に前記移動制限状態に切り替えてもよい。
【0014】
このような構成によれば、支持機構が移動可能状態となり、所定時間内に支持部材を水平面内で移動させて作業台から切り離した後、自動的に支持機構が移動制限状態に切り替わる。これにより、その後に保持台を床面上で移動させるときに、支持部材が保持台に対して移動することを制限し、ロボットアームとともに保持台を安定して移動させることができる。したがって、支持部材を作業台から切り離して保持台を床面上で移動させるまでの作業を、容易かつ円滑に安定して行うことができる。
【0015】
(5)前記制御部は、前記操作部に対する入力操作に基づいて、前記支持機構を前記移動制限状態から前記移動可能状態に切り替えてもよい。
【0016】
このような構成によれば、支持機構を移動制限状態にして、ロボットアームとともに保持台を安定して移動させた後、操作部に対する入力操作により、支持機構を移動可能状態に容易に切り替え、別の作業台に対して支持部材を容易に接近させることができる。
【0017】
(6)前記支持部材には、前記ロボットアームを支持する水平板と、前記水平板に連結され、前記作業台に対して前記支持部材を接近させるときに前記作業台に対向する対向板と、前記水平板及び前記対向板に連結された側面板とが含まれていてもよい。この場合、前記固定機構の少なくとも一部が前記対向板に設けられていてもよい。
【0018】
このような構成によれば、水平板、対向板及び側面板を含む支持部材により、ロボットアームを安定して支持することができる。特に、側面板が水平板及び対向板に連結されているため、支持部材の強度を向上することができる。
【0019】
(7)前記保持台には、前記側面板を挿通させる挿通孔が形成されていてもよい。この場合、前記挿通孔の縁は、前記支持部材が前記保持台に対して水平面内で移動するときに前記側面板に接触することにより、前記支持部材の移動範囲を制限するためのストッパとして機能してもよい。
【0020】
このような構成によれば、支持部材を水平面内で移動させるときに、当該支持部材の移動範囲を、側面板が挿通孔内で移動可能な範囲に制限することができる。したがって、支持部材の側面板を利用して、支持部材の移動範囲を必要最低限の範囲に制限することができる。
【0021】
(8)別の本発明に係るロボットアーム固定システムは、作業台に対してロボットアームを着脱可能に固定するためのロボットアーム固定システムであって、保持台と、支持部材と、固定機構とを備える。前記保持台は、床面上を移動可能である。前記支持部材は、前記ロボットアームを支持し、前記保持台に対して水平面内で移動可能に取り付けられている。前記固定機構は、前記作業台に対して前記支持部材を固定位置で固定する固定状態、又は、前記作業台に対する前記支持部材の固定が解除された解除状態に切替可能である。前記支持部材には、前記ロボットアームを支持する水平板と、前記水平板に連結され、前記作業台に対して前記支持部材を接近させるときに前記作業台に対向する対向板と、前記水平板及び前記対向板に連結された側面板とが含まれている。前記固定機構の少なくとも一部が前記対向板に設けられている。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、ガイド機構で支持部材を固定位置へと容易に案内し、自動的に固定機構を解除状態から固定状態に切り替えることにより、固定位置において支持部材を精度よく固定することができるため、作業台に対してロボットアームを容易に精度よく着脱できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態に係るロボットアーム固定システムの構成例を示した概略側面図である。
図2】保持台を作業台側から見た斜視図である。
図3】保持台の側面図である。
図4】取付部材の構成を示した正面図である。
図5】作業台に対してロボットアームを固定する作業を行うときの制御部による処理を示したフローチャートである。
図6】作業台に対してロボットアームを取り外す作業を行うときの制御部による処理を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
1.ロボットアーム固定システムの全体構成
図1は、本発明の一実施形態に係るロボットアーム固定システム1の構成例を示した概略側面図である。このロボットアーム固定システム1は、作業台2に対してロボットアーム3を着脱可能に固定するためのシステムである。
【0025】
ロボットアーム3の構成は、特に限定されるものではないが、例えば複数の軸31を介して互いに連結された複数のアーム部32を有する多軸アームにより構成されていてもよい。すなわち、ロボットアーム3は、4軸又は6軸などの多軸アームにより構成されてもよいし、1軸のみを有するアームにより構成されてもよい。ロボットアーム3の先端部には、作業台2上の物品Wを吸引して保持するための吸引装置4が設けられている。
【0026】
作業台2は、床面F上に設けられており、その上面側にロボットアーム3がアクセスすることにより、作業台2上での物品Wに対する作業を行うことができる。ロボットアーム3は、例えば作業台2上で移動又は停止している物品Wを保持し、その物品Wを別の場所に移動させるために用いられる。ただし、ロボットアーム3は、上記のような作業に限らず、他の任意の作業を行うものであってもよい。
【0027】
ロボットアーム固定システム1は、保持台11、支持部材12、支持機構13、固定機構14、ガイド機構15、センサ16、制御部17、操作部18などを備えている。このロボットアーム固定システム1は、例えば作業台2が複数設置されているような場合に、1つのロボットアーム3を各作業台2において使用できるように、各作業台2に対してロボットアーム3を着脱可能に固定することを可能にするものである。
【0028】
保持台11は、例えば中空状の筐体により構成されており、内部に各種部品を内蔵している。保持台11に内蔵される部品には、制御部17が含まれる。制御部17は、例えばCPU(Central Processing Unit)を含み、当該CPUがプログラムを実行することにより、ロボットアーム固定システム1の動作、及び、ロボットアーム3の動作などを制御することができる。保持台11内には、制御部17だけでなく、センサ16及び操作部18などの電気部品に電力を供給するための電源装置や、固定機構14を動作させるための駆動装置などが内蔵されていてもよい。
【0029】
保持台11の底部には、回転可能なローラ111が複数設けられている。これらのローラ111を床面F上で転動させることにより、床面F上で保持台11を移動させることができる。保持台11の上部には、保持台11を移動させるときに作業者が把持するための把持部112が設けられている。複数のローラ111のうち少なくとも1つには、床面F上において保持台11を停止状態で維持するためのブレーキ機構が設けられていてもよい。当該ブレーキ機構は、作業者が足で容易に操作できるような構成であることが好ましい。
【0030】
ロボットアーム3は、保持台11に対して移動可能な支持部材12により支持されている。すなわち、ロボットアーム3は、保持台11に直接固定されているのではなく、保持台11とは別部材として設けられた支持部材12を介して、保持台11により間接的に支持されている。支持部材12は、保持台11の上面に設けられ、保持台11に対して水平面内で移動可能に取り付けられている。本実施形態では、支持部材12が水平面内であらゆる方向に移動可能となっているが、これに限らず、例えば前後方向、及び、前後方向に直交する左右方向などの2方向にのみ移動可能な構成であってもよいし、1方向にのみ移動可能な構成であってもよい。
【0031】
支持機構13は、支持部材12の水平面内での移動を実現するための機構であり、例えば複数の転動体(図示せず)を介して支持部材12を支持している。転動体としては、あらゆる方向に回転可能な球体を例示することができるが、これに限らず、例えば回転軸線を中心に回転可能なローラなどであってもよい。
【0032】
支持機構13は、支持部材12が保持台11に対して水平面内で移動可能な移動可能状態、又は、保持台11に対する支持部材12の移動が制限される移動制限状態に切替可能である。具体的には、支持機構13は、転動体を上下動させることにより、移動可能状態又は移動制限状態に切り替えることができる。すなわち、転動体が支持部材に接触する状態で移動可能状態となり、この状態から転動体が下方に移動して支持部材に接触しない状態となることにより、移動制限状態に切り替わる。ただし、支持機構13は、転動体を上下動させるような構成に限らず、転動体の回転自体を制限又は解除することにより、移動可能状態又は移動制限状態に切り替えるような構成などであってもよい。なお、移動制限状態には、支持部材12が保持台11に対して移動できない状態だけでなく、強い力を加えれば支持部材12を保持台11に対して移動可能な状態が含まれていてもよい。
【0033】
固定機構14及びガイド機構15を構成する各部品は、保持台11に取り付けられた支持部材12と、作業台2に取り付けられた取付部材5とに設けられている。すなわち、固定機構14の一部の部品は支持部材12に設けられ、固定機構14の他の部品は取付部材5に設けられており、支持部材12と取付部材5が接近した状態で各部品が互いに機械的に作用することにより、固定機構14として機能するようになっている。同様に、ガイド機構15の一部の部品は支持部材12に設けられ、ガイド機構15の他の部品は取付部材5に設けられており、支持部材12と取付部材5が接近した状態で各部品が互いに機械的に作用することにより、ガイド機構15として機能するようになっている。したがって、既存の作業台2に対して取付部材5を取り付けるだけで、当該作業台2と、支持部材12が取り付けられた保持台11との間で、固定機構14及びガイド機構15の機能を容易に実現することができる。なお、図1では、支持部材12と取付部材5が離間した状態が示されている。
【0034】
固定機構14は、作業台2に対して支持部材12を固定するための機構である。支持部材12と取付部材5が所定の距離まで接近した状態では、支持部材12が作業台2に対して所定の固定位置に配置され、この固定位置で固定機構14により支持部材12が作業台2に対して固定される。固定機構14は、作業台2に対して支持部材12を固定位置で固定する固定状態、又は、作業台2に対する支持部材12の固定が解除された解除状態に切替可能である。
【0035】
ガイド機構15は、支持部材12を作業台2に対して固定位置へと案内するためのものである。具体的には、ガイド機構15は、支持部材12を作業台2に対して前後方向(作業台2と保持台11が並ぶ水平方向)に案内する。作業者は、作業台2に対する支持部材12の左右方向(前後方向に直交する水平方向)の位置を調整した後、ガイド機構15により支持部材12を前後方向に案内しながら作業台2に接近させることによって、支持部材12を固定位置へと案内することができる。
【0036】
支持部材12が固定位置まで接近したか否かは、センサ16により検知することができる。すなわち、センサ16は、ガイド機構15により支持部材12が案内されるときに、作業台2に対する支持部材12の接近を検知する。作業台2に対する支持部材12の接近がセンサ16により検知されたときに、固定機構14を解除状態から固定状態に切り替えることにより、固定位置で支持部材12が作業台2に対して固定される。
【0037】
取付部材5には、センサ16に対向する位置に突起51が設けられている。突起51は、例えば金属製であり、前後方向に沿って保持台11側に突出している。センサ16は、突起51の先端が接触、又は、所定の距離まで接近したことを検知する。突起51の突出量は、作業台2に対する支持部材12の固定位置をセンサ16で検知できるような値に設定される。ただし、センサ16は、保持台11側(支持部材12)に設けられた構成に限らず、作業台2側(取付部材5)に設けられた構成であってもよい。
【0038】
操作部18は、保持台11の上部に設けられ、制御部17に対して電気的に接続されている。作業者は、操作部18に対して入力作業を行うことにより、ロボットアーム固定システム1の動作、及び、ロボットアーム3の動作に関して、設定及び指示を行うことができる。本実施形態では、操作部18がタッチパネルにより構成されており、操作部18が操作表示部として機能するようになっている。ただし、操作部18とは別に、作業者に対する表示を行う表示部が設けられた構成であってもよい。また、操作部18は、保持台11に対して着脱可能に構成されていてもよいし、制御部17に対して無線で通信可能な構成であってもよい。
【0039】
本実施形態では、操作部18の他に、ランプ19及びスピーカ(図示せず)が制御部17に対して電気的に接続されている。固定機構14が解除状態から固定状態に切り替えられたときには、ランプ19が点灯又は点滅するとともに、スピーカから音声が出力されることにより、支持部材12が作業台2に対して固定されたことを作業者が目視と音によって確実に確認することができる。
【0040】
2.支持部材の具体的構成
図2は、保持台11を作業台2側から見た斜視図である。図3は、保持台11の側面図である。本実施形態において、支持部材12は、水平板121、対向板122及び側面板123が互いに連結されることにより、一体的なボックス状に形成されている。なお、図3では、ボックス状の支持部材12内に位置している支持機構13を分かりやすくするために、側面板123を省略して示している。
【0041】
水平板121は、略矩形状の平板により形成されており、水平方向に延びるように支持機構13の上方に配置されている。水平板121の中央部には、ロボットアーム3が上方に延びるように支持されている。支持機構13により支持部材12が移動可能状態に切り替えられた状態では、水平板121の裏面が支持機構13の転動体で支持され、当該転動体が水平板121の裏面に対して転動することにより、水平板121が水平面内で任意の方向に移動可能となる。
【0042】
水平板121の左右両端縁には、支持部材12を移動させるときに作業者が把持するための把持部124が設けられている。作業者は、支持部材12が移動可能状態のときに、把持部124を把持して水平方向に力を加えることにより、支持部材12を水平面内で容易に移動させることができる。ただし、把持部124は、2つに限らず、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。また、把持部124は、水平板121ではなく、側面板123などの支持部材12の他の部材に設けられていてもよい。
【0043】
支持機構13の転動体が下方に移動して移動制限状態に切り替わったときには、転動体の下方への移動に伴って水平板121が降下する。このとき、図3に示すように、水平板121の下方において上方に向かって突出している脚部131の先端面に、水平板121の裏面が当接して支持される。これにより、水平板121の裏面は転動体に対して非接触となり、保持台11に対する支持部材12の移動が制限される移動制限状態へと切り替わる。
【0044】
対向板122は、略矩形の平板により形成されており、水平板121の前端縁(作業台2側の縁)から鉛直下方に向かって延びている。すなわち、水平板121及び対向板122は、側面視でL字状に連結されている。対向板122は、作業台2に対して支持部材12を接近させるときに作業台2に対向する。対向板122は、水平板121よりも厚みが大きく形成されていることが好ましい。
【0045】
側面板123は、水平板121及び対向板122に連結されている。具体的には、鉛直方向に延びる2つの側面板123により、水平板121及び対向板122の各左端縁と、水平板121及び対向板122の各右端縁とが、それぞれ連結されている。ただし、側面板123は、支持部材12の左右両側に設けられた構成に限らず、左右いずれか一方にのみ設けられた構成であってもよいし、側面板123が省略された構成であってもよい。
【0046】
図2に示すように、各側面板123には、開口125が形成されている。また、保持台11の上面を構成する上面板113には、各側面板123を挿通させる挿通孔114が形成されている。挿通孔114は、側面板123の水平方向に沿った断面形状よりも大きく、側面板123が鉛直方向に沿って挿通孔114内に挿通された状態では、挿通孔114の内側の範囲内において、側面板123を水平方向に移動させることができる。
【0047】
保持台11の上面板113の前端部(作業台2側の端部)は、各側面板123の開口125に挿通されている。このように、支持部材12及び保持台11は、それぞれに形成された開口125及び挿通孔114に互いの一部が挿通されることにより、相対的に移動可能な状態で遊嵌されている。挿通孔114の縁は、支持部材12が保持台11に対して水平面内で移動するときに側面板123に接触することにより、支持部材12の移動範囲を制限するためのストッパとして機能する。挿通孔114の形状に応じて、支持部材12の移動範囲を設定することが可能であり、挿通孔114の形状によっては、例えば支持部材12を保持台11に対して所定角度(例えば90°)まで水平方向に回転させることも可能である。
【0048】
3.固定機構及びガイド機構の具体的構成
図4は、取付部材5の構成を示した正面図である。以下では、図2図4を参照して、固定機構14及びガイド機構15の具体的構成について説明する。
【0049】
固定機構14は、互いに対となる固定用凸部141と固定用凹部142を含む。固定用凸部141及び固定用凹部142は、例えば金属製である。本実施形態では、固定用凸部141が支持部材12の対向板122に設けられ、固定用凹部142が取付部材5に設けられている。すなわち、固定機構14の少なくとも一部(例えば固定用凸部141)が支持部材12の対向板122に設けられている。支持部材12が作業台2に接近して固定位置に配置されたときには、固定用凸部141が固定用凹部142内に挿入される。
【0050】
本実施形態では、固定用凸部141及び固定用凹部142が3対設けられている。具体的には、支持部材12の対向板122の上部における中央部と、下部における左右両端部に、それぞれ固定用凸部141が設けられ、取付部材5における各固定用凸部141に対向する位置に、それぞれ固定用凹部142が設けられている。ただし、固定用凸部141及び固定用凹部142は、3対に限らず、2対以下であってもよいし、4対以上であってもよい。また、固定用凸部141が取付部材5に設けられ、固定用凹部142が支持部材12に設けられた構成であってもよい。
【0051】
固定用凸部141の外周面には、径方向に沿って進退可能な変位部143が設けられている。変位部143は、例えば固定用凸部141の外周面における周方向に等間隔で配置された複数の球体により構成されていてもよい。変位部143は、駆動装置(図示せず)により駆動されて、固定用凸部141の外周面から径方向に向かって突出する。これらの突出した変位部143が、固定用凹部142の内壁に係合することにより、支持部材12を固定位置で固定することができる。上記駆動装置は、例えば固定用凸部141に空気を供給することにより変位部143を突出させ、空気の供給を停止させることにより変位部143を退避させるような構成であってもよい。
【0052】
ガイド機構15は、互いに対となるガイド用凸部151とガイド用凹部152を含む。ガイド用凸部151とガイド用凹部152は、例えば金属製である。本実施形態では、ガイド用凸部151が支持部材12の対向板122に設けられ、ガイド用凹部152が取付部材5に設けられている。すなわち、ガイド機構15の少なくとも一部(例えばガイド用凸部151)が支持部材12の対向板122に設けられている。ガイド用凸部151の突出量は、固定用凸部141の突出量よりも大きい。支持部材12が作業台2に接近するときには、ガイド用凸部151がガイド用凹部152内に挿入されることにより、支持部材12が固定位置へと案内される。ガイド用凸部151の先端部は、ガイド用凹部152内に挿入しやすいように先細りした形状となっている。
【0053】
本実施形態では、ガイド用凸部151及びガイド用凹部152が2対設けられている。具体的には、支持部材12の対向板122の上部における左右両端部に、それぞれガイド用凸部151が設けられ、取付部材5における各ガイド用凸部151に対向する位置に、それぞれガイド用凹部152が設けられている。ただし、ガイド用凸部151及びガイド用凹部152は、2対に限らず、1対であってもよいし、3対以上であってもよい。また、ガイド用凸部151が取付部材5に設けられ、ガイド用凹部152が支持部材12に設けられた構成であってもよい。
【0054】
本実施形態において、センサ16は、2つ設けられている。具体的には、支持部材12の対向板122の中央部における左右両側に、それぞれセンサ16が設けられている。また、取付部材5における各センサ16に対向する位置に、それぞれ突起51が設けられている。ただし、センサ16及び突起51は、2対に限らず、1対であってもよいし、3対以上であってもよい。また、センサ16が取付部材5に設けられ、突起51が支持部材12に設けられた構成であってもよい。
【0055】
4.接続時の制御部による処理
図5は、作業台2に対してロボットアーム3を固定する作業を行うときの制御部17による処理を示したフローチャートである。作業台2に対してロボットアーム3を固定する作業を行うときには、作業者は、まず床面F上で保持台11を移動させ、作業台2に対して前後方向に保持台11が並ぶように配置する。このとき、作業者は、支持部材12の対向板122が、作業台2に取り付けられた取付部材5に対向するように保持台11を配置し、図1に示すように、対向板122を取付部材5にある程度近づけた状態とする。
【0056】
操作部18のタッチパネル画面には、作業者が押操作可能な接続ボタン(図示せず)が設けられている。作業者により接続ボタンが押操作されると(ステップS101でYes)、支持機構13が移動制限状態から移動可能状態に切り替えられることにより(ステップS102)、支持部材12が保持台11に対して水平面内で移動可能となる。その後、作業者は、保持台11を停止させた状態のまま支持部材12を水平面内で移動させることにより、支持部材12を作業台2(取付部材5)に接近させる。
【0057】
作業台2に対する支持部材12の接近がセンサ16により検知されると(ステップS103でYes)、所定時間が経過した後(ステップS104)、固定機構14が解除状態から固定状態に切り替えられることにより、支持部材12が固定位置で固定される(ステップS105)。このとき、支持機構13が移動可能状態から移動制限状態に切り替えられることにより、保持台11に対する支持部材12の移動が制限される(ステップS106)。上記所定時間は、比較的短い時間であり、例えば1秒以下、又は、1秒~3秒程度である。なお、固定機構14が固定状態に切り替えられた状態では、固定機構14を介して支持部材12が取付部材5により片持ち支持された状態となる。
【0058】
このようにして接続作業が完了すると、ランプ19が点灯又は点滅するとともに、スピーカから音声が出力されることにより、接続完了の旨が作業者に分かりやすく報知される。これにより、作業台2に対してロボットアーム3が確実に固定された状態でのみ、ロボットアーム3を作動させることができる。
【0059】
5.接続解除時の制御部による処理
図6は、作業台2に対してロボットアーム3を取り外す作業を行うときの制御部17による処理を示したフローチャートである。操作部18のタッチパネル画面には、作業者が押操作可能な接続解除ボタン(図示せず)が設けられている。作業台2に対するロボットアーム3の接続を解除するときには、作業者が、まず接続解除ボタンを押操作する。
【0060】
作業者により接続解除ボタンが押操作されると(ステップS201でYes)、固定機構14が固定状態から解除状態に切り替えられることにより、作業台2(取付部材5)に対する支持部材12の固定が解除される(ステップS202)。また、支持機構13が移動制限状態から移動可能状態に切り替えられることにより(ステップS203)、支持部材12が保持台11に対して水平面内で移動可能となる。これにより、作業者は、保持台11を停止させた状態のまま支持部材12を水平面内で移動させることにより、支持部材12を作業台2から遠ざけることが可能となる。
【0061】
作業者は、接続解除ボタンを押操作してから所定時間が経過するまでの間に、支持部材12を作業台2から遠ざけて切り離す作業を完了させる。そして、上記所定時間が経過すると(ステップS204でYes)、支持機構13が移動可能状態から移動制限状態に切り替えられることにより(ステップS205)、保持台11に対する支持部材12の移動が制限される。上記所定時間は、比較的長い時間であり、例えば3秒~10秒程度である。
【0062】
6.作用効果
(1)本実施形態では、床面F上で保持台11を移動させて作業台2に近づけた後、保持台11を停止させた状態で支持部材12を水平面内で移動させることにより、ガイド機構15(図2図4に示すガイド用凸部151及びガイド用凹部152)で支持部材12を固定位置へと容易に案内し、固定機構14により支持部材12を作業台2に対して固定することができる。このとき、ガイド機構15により案内される支持部材12の接近をセンサ16により検知し、自動的に固定機構14が解除状態から固定状態に切り替えられるため(図5のステップS105)、固定位置において支持部材12を精度よく固定することができる。したがって、作業台2に対してロボットアーム3を容易に精度よく着脱できる。
【0063】
(2)また、本実施形態では、操作部18に対する入力操作により、固定機構14を固定状態から解除状態に容易に切り替えることができる(図6のステップS202)。したがって、作業者は、作業台2に対してロボットアーム3を取り外すときに、操作部18に対する入力操作を行うだけで容易に作業を開始することができる。
【0064】
(3)また、本実施形態では、操作部18に対する入力操作により、固定機構14を固定状態から解除状態に容易に切り替えることができると同時に、支持機構13が移動可能状態となるため(図6のステップS203)、保持台11を停止させた状態のまま支持部材12を水平面内で容易に移動させ、作業台2から支持部材12を切り離すことができる。
【0065】
(4)また、本実施形態では、支持機構13が移動可能状態となり、所定時間内(図6のステップS204)に支持部材12を水平面内で移動させて作業台2から切り離した後、自動的に支持機構13が移動制限状態に切り替わる(図6のステップS205)。これにより、その後に保持台11を床面F上で移動させるときに、支持部材12が保持台11に対して移動することを制限し、ロボットアーム3とともに保持台11を安定して移動させることができる。したがって、支持部材12を作業台2から切り離して保持台11を床面F上で移動させるまでの作業を、容易かつ円滑に安定して行うことができる。
【0066】
(5)また、本実施形態では、支持機構13を移動制限状態にして、ロボットアーム3とともに保持台11を安定して移動させた後、操作部18に対する入力操作により、支持機構13を移動可能状態に容易に切り替え(図5のステップS102)、別の作業台2に対して支持部材12を容易に接近させることができる。
【0067】
(6)また、本実施形態では、図2に示すように、水平板121、対向板122及び側面板123を含む支持部材12により、ロボットアーム3を安定して支持することができる。特に、側面板123が水平板121及び対向板122に連結されているため、支持部材12の強度を向上することができる。
【0068】
(7)また、本実施形態では、図2に示すように、支持部材12を水平面内で移動させるときに、支持部材12の移動範囲を、側面板123が挿通孔114内で移動可能な範囲に制限することができる。したがって、支持部材12の側面板123を利用して、支持部材12の移動範囲を必要最低限の範囲に制限することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 ロボットアーム固定システム
2 作業台
3 ロボットアーム
4 吸引装置
5 取付部材
11 保持台
12 支持部材
13 支持機構
14 固定機構
15 ガイド機構
16 センサ
17 制御部
18 操作部
19 ランプ
114 挿通孔
121 水平板
122 対向板
123 側面板
141 固定用凸部
142 固定用凹部
151 ガイド用凸部
152 ガイド用凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6