IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アイカ工業株式会社の特許一覧

特開2022-166467抗ウイルス防指紋ハードコート樹脂組成物及びそれを用いた積層体
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022166467
(43)【公開日】2022-11-02
(54)【発明の名称】抗ウイルス防指紋ハードコート樹脂組成物及びそれを用いた積層体
(51)【国際特許分類】
   C09D 133/06 20060101AFI20221026BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20221026BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20221026BHJP
   C09D 5/14 20060101ALI20221026BHJP
   C09D 5/16 20060101ALI20221026BHJP
   A01P 1/00 20060101ALI20221026BHJP
   A01N 59/20 20060101ALI20221026BHJP
   A01N 25/10 20060101ALI20221026BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20221026BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20221026BHJP
【FI】
C09D133/06
C09D7/61
C09D7/63
C09D5/14
C09D5/16
A01P1/00
A01N59/20 Z
A01N25/10
B32B27/18 Z
B32B27/30 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021071685
(22)【出願日】2021-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000100698
【氏名又は名称】アイカ工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】畑 和幸
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 正章
(72)【発明者】
【氏名】間瀬 晴彦
【テーマコード(参考)】
4F100
4H011
4J038
【Fターム(参考)】
4F100AA05A
4F100AB17A
4F100AH05
4F100AH06
4F100AK25A
4F100AK41B
4F100AT00B
4F100BA02
4F100BA07
4F100CA30A
4F100EH46A
4F100EJ54A
4F100GB41
4F100JB04A
4F100JB14A
4F100JC00A
4F100JK09A
4F100JK12A
4F100JN01
4F100JN06
4H011AA04
4H011BA01
4H011BB18
4H011BC16
4H011BC19
4H011DA08
4H011DH02
4J038GA03
4J038HA006
4J038JC31
4J038NA01
4J038NA02
4J038NA05
4J038NA12
4J038NA24
4J038PB08
4J038PB09
4J038PC08
(57)【要約】
【課題】高い透明性と耐スチールウール性と共に、優れた防指紋性と抗ウイルス性を有する光硬化型のハードコート樹脂組成物及び、その硬化層を有する積層体を提供する。
【解決手段】アクリル系バインダーと、一価の銅化合物と、表面調整剤と、光重合開始剤と、を含み、アクリル系バインダーが水酸基を有する3官能以上の(メタ)アクリレートを含み、一価の銅化合物のアクリル系バインダー100重量部に対する配合量が2~23重量部であることを特徴とするハードコート樹脂組成物である。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系バインダー(A)と、一価の銅化合物(B)と、表面調整剤(C)と、光重合開始剤(D)と、を含み、前記(A)が水酸基を有する3官能以上の(メタ)アクリレート(a1)を含み、前記(B)の(A)100重量部に対する配合量が2~23重量部であることを特徴とするハードコート樹脂組成物。
【請求項2】
前記(C)が反応性官能基を有するシリコーン系フッ素化合物であることを特徴とする請求項1記載のハードコート樹脂組成物。
【請求項3】
前記(C)の固形分全量に対する配合量が0.03~1.0重量%であることを特徴とする請求項1又は2いずれか記載のハードコート樹脂組成物。
【請求項4】
基材上に、請求項1~3いずれか記載のハードコート樹脂組成物の硬化層を有する積層体。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた防指紋性と共に、高い抗ウイルス性を有する光硬化型のハードコート樹脂組成物及びその硬化層を有する積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル系の光硬化型樹脂は、プラスチックフィルムやプラスチック成形物表面に特別な性能を付与するために多くの分野で用いられており、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム上に塗布して高硬度を付与したハードコートフィルムは、タッチパネル用フィルムや成形用フィルムとして大量に使用されている。
【0003】
特にハードコートフィルムは、情報端末の入力装置であるタッチパネルの表面部材として、広範に用いられており、またスマートフォンやゲーム機器などの携帯モバイル装置の最表面に、傷つき防止を目的とし、粘着層を介して貼合される場合も多い。このようなハードコートフィルムは、操作者が直接手で触れる部分に使用されるため、皮脂の汚れや指紋が付着しやすく、画層が見えにくくなったり、見映えが悪くなったりする不具合が生じることがあった。
【0004】
こうした問題に対応するため、高い透明性と防指紋性を有するハードコートフィルムとして、重合性化合物と、疎水性の多官能高分子樹脂と、真球状シリカ粒子を含むハードコート層を有するフィルムが提案されている(特許文献1)。こうした技術を用いることで防指紋性については向上しているが、最近ではCOVID-19に代表例される感染症の流行拡大により、抗ウイルス機能を更に要求されるようになってきている。この抗ウイルス機能は抗ウイルス剤の添加により実現可能であるが、バインダーや配合条件、製造プロセスの組合せにより抗ウイルス性の発現には大きな差がある。そのため、防指紋性と抗ウイルス性を両立できるハードコート樹脂とするには改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-85638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、高い透明性と耐スチールウール性と共に、優れた防指紋性と抗ウイルス性を有する光硬化型のハードコート樹脂組成物及び、その硬化層を有する積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため請求項1記載の発明は、アクリル系バインダー(A)と、一価の銅化合物(B)と、表面調整剤(C)と、光重合開始剤(D)と、を含み、前記(A)が水酸基を有する3官能以上の(メタ)アクリレート(a1)を含み、前記(B)の(A)100重量部に対する配合量が2~23重量部であることを特徴とするハードコート樹脂組成物を提供する。
【0008】
請求項2記載の発明は、前記(C)が反応性官能基を有するシリコーン系フッ素化合物であることを特徴とする請求項1記載のハードコート樹脂組成物を提供する。
【0009】
請求項3記載の発明は、前記(C)の固形分全量に対する配合量が0.03~1.0重量%であることを特徴とする請求項1又は2いずれか記載のハードコート樹脂組成物を提供する。
【0010】
請求項4記載の発明は、基材上に、請求項1~3いずれか記載のハードコート樹脂組成物の硬化層を有する積層体を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のハードコート(以下HC)樹脂組成物は、高い透明性と耐スチールウール性(以下耐SW性)と共に、優れた防指紋性と高い抗ウイルス性を有するため、HCフィルム等の積層体に塗布するコーティング剤として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下本発明について詳細に説明する。
【0013】
本発明の組成物の構成は、アクリル系バインダー(A)と、一価の銅化合物(B)と、表面調整剤(C)と、光重合開始剤(D)である。なお本明細書において、(メタ)アクリレートとはアクリレートとメタクリレートとの双方を包含する。
【0014】
本願発明で使用するアクリル系バインダー(A)は、HC層を形成する主要成分で、水酸基を有する3官能以上の(メタ)アクリレート(a1)を含む。水酸基を有することで皮膜表面の親水性を向上させ、一価の銅化合物(B)が持つ抗ウイルス性を働きやすくし、3官能以上とすることで硬化皮膜の架橋性を上げて耐SW性を向上させることができる。
【0015】
前記(a1)としては、例えばペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジグリセリントリ(メタ)アクリレート、及びこれらのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられ、単独あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。これらの中では、硬化後の硬化収縮が小さく積層体のカールが小さい点で、ペンタエリスリトールトリアクリレート(以下PETA)が好ましい。
【0016】
前記(a1)以外のアクリル系バインダー(A)としては、例えば4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート等の2官能以下の水酸基を有する(メタ)アクリレートや、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1.4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、4.6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート等の2官能(メタ)アクリレートや、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスルトールテトラ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の3官能以上の(メタ)アクリレート等が挙げられる。上記に加え、単官能(メタ)アクリレートを含んでも良い。
【0017】
前記(A)における(a1)の比率は50重量%以上が好ましく、70重量%以上が更に好ましい。また(a1)の固形分全量に対する配合比率は40重量%以上が好ましく、60重量%以上が更に好ましく、70重量%以上が特に好ましい。これらの比率以上とすることで、抗ウイルス性と耐SW性のバランスが取れた良好な特性を確保することができる。
【0018】
本願発明で使用する一価の銅化合物(B)は、抗ウイルス剤としての役割を担う。一般に抗ウイルス特性を有する金属系材料としては銅、銀、チタン、スズ、鉄、ニッケル、亜鉛などを含む化合物が挙げられるが、これらの中で特に一価の銅は安定剤の添加を必要しないため、構成成分の設計自由度が高く、また抗ウイルス性が高いという特徴がある。抗ウイルス性を有する一価の銅化合物としては、塩化物、ヨウ化物、臭化物、酸化物、チオシアン化物等を挙げることができる。
【0019】
前記(B)の抗ウイルス性のメカニズムとしては、一価の銅化合物がウイルスや細菌と接触した際に一価の銅イオンが発生し、その一価銅イオンが酸素と反応して活性酸素が発生し、その活性酸素と銅イオンの2つでウイルスや細菌を死滅させる という原理と考えられているが、出願人はこの一価銅化合物を、水酸基を有する3官能以上のバインダーに分散させ、配合量を特定範囲とすることで、抗ウイルスを安定して優れたものにできることを見出した。その理由は必ずしも明確ではないが、親水性が高いバインダー特定量含むことで空気中の水分が吸着しやすく、一価の銅化合物がウイルスや細菌と接触した際に発生する一価の銅イオンがより発生しやすい環境を形成していると考えられる。
【0020】
前記(B)の(A)100重量部に対する配合量は2~23重量部であり、3~22重量部が好ましく、4~21重量部が更に好ましい。2重量部以下では十分な抗ウイルス性を確保することができず、23重量部以上では耐SW性が低下すると共に高い透明性を確保することができず不可である。
【0021】
本発明で使用する表面調整剤(C)は、HC層のスリップ性を向上させて耐SW性を向上させると共に、撥水撥由性を上げて防指紋性を向上させる目的で配合する。例えばシリコーン系、フッ素系、アクリル系等が挙げられるが、硬化後の皮膜からブリード等により経時的に欠落することが無く効果を長期的に持続できる点で、バインダー樹脂と重合して硬化塗膜を形成できる反応性官能基を有することが好ましい。特にシリコーン系フッ素化合物が、低い表面自由エネルギーにより、塗工~乾燥後に塗膜表面に偏析しやすく、耐SW性及び防指紋性を長期にわたり安定化させることができる点で好ましい。
【0022】
前記(C)の固形分全量に対する配合量は0.03~1.0重量部が好ましく、0.05~0.3重量%が更に好ましく、0.06~0.1重量%が特に好ましい。0.03重量%以上とすることで耐SW性と防指紋性を向上させることが期待でき、1.0重量%以下とすることで十分な抗ウイルス性を確保することができる。市販品としてはX-71-1203M(商品名:信越化学工業社製、固形分20%、反応性官能基を有するシリコーン系フッ素化合物)が挙げられる。
【0023】
本発明に使用される光重合開始剤(D)は、紫外線や電子線などの照射でラジカルを生じ、そのラジカルが重合反応のきっかけとなるもので、ベンジルケタール系、アセトフェノン系、フォスフィンオキサイド系等汎用の光重合開始剤が使用できる。重合開始剤の光吸収波長を任意に選択することによって、紫外線領域から可視光領域にいたる広い波長範囲にわたって硬化性を付与することができる。具体的にはベンジルケタール系として2.2-ジメトキシ-1.2-ジフェニルエタン-1-オンが、α-ヒドロキシアセトフェノン系として1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン及び1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オンが、α-アミノアセトフェノン系として2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オンが、アシルフォスフィンオキサイド系として2.4.6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド及びビス(2.4.6‐トリメチルベンゾイル)‐フェニルフォスフィンオキサイド等があり、単独または2種以上を組み合わせて使用できる。
【0024】
これらの中では、黄変しにくいα-ヒドロキシアセトフェノン系を含むことが好ましく、市販品としてはOmnirad127、Omnirad184、Omnirad2959(商品名:IGM Resins社製)などが挙げられる。前記(D)の(A)成分100重量部に対する配合は2~10重量部が好ましく、3~8重量部が更に好ましい。
【0025】
本発明の樹脂組成物には性能を損なわない範囲で必要に応じ、酸化防止剤、紫外線吸収剤、増感剤、難燃剤、充填剤、有機微粒子、無機微粒子、分散剤、シランカップリング剤、レベリング剤、消泡剤、帯電防止剤、重合禁止剤、顔料や染料や色素などの着色剤、可塑剤などの添加剤を併用することができる。
【0026】
本発明の樹脂組成物を、プラスチック基材に塗工する際には、塗工特性を向上させるためトルエン、イソブタノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、ヘキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル(以下PGMと表記)などの溶剤で希釈してもよい。希釈する場合の固形分としては20~50%が例示されるが、特に指定は無く、塗工しやすい粘度となるように適宜設定可能である。
【0027】
本発明の樹脂組成物を塗布する基材としてはPETフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルフォンフィルム、ナイロンフィルム、シクロオレフィンフィルム、アクリルフィルム、ポリイミドフィルム、ABSフィルム、ポリオレフィンフィルム、PVCフィルム、PVAフィルム等を挙げることができる。これらの中では、選択できる幅が広く、汎用性が高いなどの点からPETフィルムが好ましく用いられる。フィルムの厚みは概ね25μm~500μmであればよい。
【0028】
本発明の樹脂組成物を塗布する基材フィルムには、密着性を向上させる目的で、プライマー処理、コロナ処理や、サンドブラスト法、溶剤処理法などによる表面の凹凸化処理、クロム酸処理、オゾン・紫外線照射処理などの表面の酸化処理などの表面処理を施すことができる。
【0029】
本発明の樹脂組成物を基材フィルムに塗布する方法としては、バーコーター法、アプリケーター法、カーテンコーター法、ロールコーター法、グラビアコーター法、リバースコーター法、コンマコーター法、リップコーター法、ダイコーター法など、公知の方法が適用できる。塗布膜厚としては、乾燥膜厚として一般的に1~20μmが例示されるが、特に指定はなく随時選定できる。
【0030】
本発明の樹脂組成物を塗布した後は60~120℃で乾燥して溶剤を揮発させ、紫外線照射機を用いて硬化させる。光源としては高圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、LEDランプ、無電極紫外線ランプ等の公知の光源が適用可能であり、紫外線照射条件としては、500mW/cm~3,000mW/cmの照射強度で、積算光量としては100mJ/cm~2,000mJ/cmが例示できる。
【0031】
本願のHC樹脂組成物の硬化層を有する積層体の水接触角としては100°~115°が好ましく、103°~110°が更に好ましい。100°以上とすることで、十分な防指紋性を確保でき、115°以下とすることで抗ウイルス性を安定して活性化することができる。なお本明細書において、水接触角はJIS R 3257:1999の静滴法に基づいて測定した値とする。
【0032】
ウイルスは、脂質を含むエンベローブと呼ばれる膜で包まれているタイプと、エンベローブ持たないタイプとに大別される。エンベローブを有するタイプは大部分が脂質からなるため、エタノールや石鹸などの消毒剤で容易に破壊することができるのに対し、エンベローブを持たないタイプは消毒剤への抵抗性が強いと一般的に言われている。本発明の樹脂組成物は、この両者に対し非常に良好な抗ウイルス性を有する。
【0033】
以下、本発明を実施例、比較例に基づき詳細に説明するが、具体例を示すものであって特にこれらに限定するものではない。なお表記が無い場合は、室温は25℃相対湿度65%の条件下で測定を行った。なお配合量は重量部を示す。
【0034】
実施例1~3
前記(A)としてPETAを、前記(B)として一価の銅化合物を、前記(C)としてX-71-1203M(商品名:信越化学工業社製、固形分20%、反応性官能基を有するシリコーン系フッ素化合物)を、(D)としてOmnirad184(商品名:IGMResins社製)を用い、固形分での割合が表1記載の比率となるように配合し、更に固形分が40%となるようPGMで希釈し均一に溶解分散するまで撹拌して実施例1~3のHC樹脂組成物を調整した。
【0035】
比較例1~8
実施例で用いた材料の他、バインダーとして9EG-A(商品名:共栄社化学社製、2官能OH基無し)及び701A(商品名:新中村化学社製、2-ヒドロキシ-3-メタクリルプロピルアクリレート、2官能OH基有り)及びTMPTA(トリメチロールプロパントリアクリレート、3官能OH基無し)及びDPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、6官能OH基無し)及びRUA076MG(商品名:亜細亜工業社製、6官能ウレタンアクリレートOH基無し)を用い、固形分での割合が表1記載の比率となるように配合し、更に固形分が40%となるようPGMで希釈し均一に溶解分散するまで撹拌して比較例1~8のHC樹脂組成物を調整した。
【0036】
表1
【0037】
評価用フィルムの調整
上記で作成した実施例及び比較例の組成物を用い、U403(商品名:東レ社製、ポリエステルフィルム、厚さ100μm)に乾燥膜厚が4μmとなるように塗工し、恒温槽で80℃×1分乾燥後、高圧水銀ランプで出力1300mW/cm2、積算光量が100mJとなる様に紫外線照射し、評価用フィルムを調製した。
【0038】
評価方法は以下の通りとした。
【0039】
抗ウイルス活性値:JIS R 1756:2013の光触媒材料の抗ウイルス性試験測定法に準じ、試験ウイルスとしてはバクテリオファージQβを用いて、6時間後のウイルス感染価を測定した。ブランクフィルムとのウイルス感染価の差を抗ウイルス活性値とし4.0超を◎、4.0~2.0を○、2.0未満を×とした。
【0040】
透明性(ヘーズ):東洋精機製作所社製のHaze-GARD2を用いJISK7361-1に準拠して測定し、2%未満を◎、2~2.5%を○、2.5%超を×とした。
【0041】
耐スチールウール性:スチールウール#0000の上に1,000g/cm2の荷重を載せて10往復させ、目視による観察で傷が付かないものを◎、傷が1~20本未満を〇、傷が20本以上を×とした。
【0042】
水接触角:JIS R 3257:1999の静滴法に準じ、協和界面科学社製のDMs-400を用い、室温で水を滴下し30秒静置後の接触角を測定した。100°~115°を○、そこから外れる場合を×とした。
【0043】
評価結果
表2
【0044】
実施例の各組成物は、抗ウイルス活性値、透明性、耐SW性、水接触角、いずれの評価においても良好な結果を得た。
【0045】
一方、(B)が下限未満の比較例1は抗ウイルス活性値が低く、上限超の比較例2は透明性と耐SW性が劣っていた。また(C)を含まない比較例3は水接触角が低く、2官能の(メタ)アクリレートを用いた比較例4及び5は耐SW性が劣り、OH基のない3官能の(メタ)アクリレートを用いた比較例6は抗ウイルス活性値と耐SW性が劣り、OH基のない6官能の(メタ)アクリレートを用いた比較例7及ぶ8は抗ウイルス活性値が低く、いずれも本願発明に適さないものであった。