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特開2022-166468複索ロープ式バケット付きクレーンの巻上げ下げの制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022166468
(43)【公開日】2022-11-02
(54)【発明の名称】複索ロープ式バケット付きクレーンの巻上げ下げの制御方法
(51)【国際特許分類】
   B66C 13/32 20060101AFI20221026BHJP
   B66C 3/12 20060101ALI20221026BHJP
【FI】
B66C13/32 D
B66C3/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021071687
(22)【出願日】2021-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】504005781
【氏名又は名称】株式会社日立プラントメカニクス
(74)【代理人】
【識別番号】100102211
【弁理士】
【氏名又は名称】森 治
(72)【発明者】
【氏名】岸本 至康
【テーマコード(参考)】
3F004
3F204
【Fターム(参考)】
3F004AA02
3F004AB12
3F004AG06
3F004EA35
3F004PA05
3F004PB03
3F204BA10
3F204CA07
3F204DA04
3F204GA02
3F204GA04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】使いやすくて搬送効率の良い複索ロープ式バケット付きクレーンの巻上げ下げの制御を提供する。
【解決手段】バケットGBの開閉状態がバケットGBの閉減速位置の付近から閉じ側にある場合には支持モータと開閉モータの出力速度を、巻上げ時には負荷の大きさに比例して遅くなるように制御し、巻下げ時には負荷の大きさに比例して速くなるように制御し、バケットGBの開閉状態がバケットGBの閉減速位置の付近から開き側にある場合は、巻上げ下げ時には負荷の大きさに関係なく速度偏差が小さくなるように制御し、巻下げ時には開閉モータの速度を定格速度を超える範囲まで速度制御範囲を広げ支持モータより開閉モータの速度を速くすることで巻下げながら開き動作をし、バケットGBが開端位置にある時には支持モータと開閉モータの速度を等しくし開端位置の状態を保持したまま巻下げを行う。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持モータと開閉モータの独立した2種類の等容量の巻上げ装置で複索ロープ式バケットの巻上げ下げ制御を行う複索ロープ式バケット付きクレーンの巻上げ下げの制御方法であって、
バケットの開閉状態がバケットの閉減速位置の付近から閉じ側にある場合においては、支持モータと開閉モータの出力速度を、巻上げ時には、負荷の大きさが大きくなるにつれて負荷の大きさに比例して遅くなるように制御し、巻下げ時には、負荷の大きさが大きくなるにつれて負荷の大きさに比例して速くなるように制御し、
バケットの開閉状態がバケットの閉減速位置の付近から開き側にある場合においては、巻上げ下げ時には、負荷の大きさに関係なく速度偏差が小さくなるように制御し、かつ、巻下げ時には、開閉モータの速度を定格速度を超える範囲まで速度制御範囲を広げ、支持モータより開閉モータの速度を速くすることで巻下げながら開き動作をし、バケットが開端位置にある時には、支持モータと開閉モータの速度を等しくすることにより、開端位置の状態を保持したまま巻下げを行う
ことを特徴とする複索ロープ式バケット付きクレーンの巻上げ下げの制御方法。
【請求項2】
前記バケットの開閉状態がバケットの閉減速位置の付近から閉じ側にある場合における巻上げ下げ時に、支持モータと開閉モータの加速終了後の速度或いはトルクが等しくなった時に、モータトルクに余力がある場合は、その時の負荷の大きさに対して各々のモータが出力できる最大速度まで増速するようにすることを特徴とする請求項1に記載の複索ロープ式バケット付きクレーンの巻上げ下げの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーンの巻上げ装置が支持モータと開閉モータの2つの独立した等容量のモータにより巻上げ下げ駆動され、各々独立した支持装置と開閉装置から吊り下げられた支持ロープと開閉ロープの2種類のロープにより動かされる複索ロープ式バケット(以下、単に、「バケット」という場合がある。)を装備したクレーンにおいて、当該バケットの巻上げ及び巻下げ動作を行うための支持モータと開閉モータの制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複索ロープ式バケットの動作は、支持ロープと開閉ロープの2種類のロープの動きを操ることにより行うようにする。
この動作は、過去には、差動減速機を用いた方法や、クラッチを用いる方法も使用されていたが、機械系の製作性や保守性の問題で、現在では、支持と開閉の独立した2つの巻取装置を電気制御で制御する方法が一般的になっている。
しかしながら、支持と開閉の負荷バランスがバケットの状態により変化する複索ロープ式バケットにおいて、支持と開閉のロープバランスを取るのが難しく、ロープバランスを取るために支持モータと開閉モータを的確に制御する技術が求められていた。
【0003】
この問題に対処するために、従来から、バケットの支持モータと開閉モータの種々の制御方法が提案されている(例えば、特許文献1~4参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-128466号公報
【特許文献2】特開平4-358696号公報
【特許文献3】特開平1-203194号公報
【特許文献4】特開平1-172198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来の複索ロープ式バケット付きクレーンにおいて、例えば、バケットが開いている状態においては、バケットの荷重の負荷のほとんどを支持モータが分担し、開閉モータにはほとんどバケットの荷重が掛からない。このため誘導モータを使用すると、モータの滑りが影響し、巻上げ時は支持モータの速度が開閉モータより遅くなり、逆に巻下げ時は支持モータの速度が開閉モータより速くなる。この支持モータと開閉モータの速度差は、巻上げ時及び巻下げ時共にバケットが閉じる方向で、バケットを巻上げ巻下げしているとバケットが勝手に閉じてしまう。このため、バラ物荷役物を掴むためにバケットを全開にして巻下げをすると、着床前にはバケットが閉じかかっているため、バケット着床前に再度バケットの開き操作をしてから着床させて掴みをする必要があった。
【0006】
また、バケットを閉じて掴んだ状態においては、巻上げ時に支持モータの速度が開閉モータより速くなると、バケットが開いてしまい掴んでいるバラ物荷役物を落としてしまい、支持モータの速度が開閉モータより遅くなると支持ロープが弛み開閉装置が過負荷状態になり、開閉モータや開閉速度制御装置の発熱破損の原因になっていた。
また、巻下げ時には、逆に支持モータの速度が開閉モータより遅くなると、バケットが開いてしまい掴んでいるバラ物荷役物を落としてしまい、支持モータの速度が開閉モータより速くなると支持ロープが弛み開閉装置が過負荷状態になり、開閉モータや開閉速度制
御装置の発熱破損の原因になっていた。
【0007】
本発明は、上記従来の複索ロープ式バケット付きクレーンの有する問題点に鑑み、複索ロープ式バケットの支持モータと開閉モータの制御をバケットの状況に応じて制御を行い、使いやすくて搬送効率の良い複索ロープ式バケット付きクレーンの巻上げ下げの制御を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の複索ロープ式バケット付きクレーンの巻上げ下げの制御方法は、支持モータと開閉モータの独立した2種類の等容量の巻上げ装置で複索ロープ式バケットの巻上げ下げ制御を行う複索ロープ式バケット付きクレーンの巻上げ下げの制御方法であって、
バケットの開閉状態がバケットの閉減速位置の付近(閉端位置から少し開いた位置)から閉じ側にある場合(バケットが閉じて荷役物を掴んだ状態と判断し、このバケット開閉状態で巻上げ又は巻下げをする時の支持モータと開閉モータの速度制御特性は、速度偏差量に対してトルクを比例変動させる比例特性とする。)においては、支持モータと開閉モータの出力速度を、巻上げ時には、負荷の大きさが大きくなるにつれて負荷の大きさに比例して遅くなるように制御し、巻下げ時には、負荷の大きさが大きくなるにつれて負荷の大きさに比例して速くなるように制御し(この時、負荷に対する速度の比率は、支持モータと開閉モータ共に同じ比率にすることで支持モータと開閉モータの負荷分担が同一になるように制御することで、荷役物を掴んだ状態を維持しながら巻上げ巻下げを行うことができる。)、
バケットの開閉状態がバケットの閉減速位置の付近(閉端位置から少し開いた位置)から開き側(荷役物を掴んでいることができない位置)にある場合においては、巻上げ下げ時には、負荷の大きさに関係なく速度偏差が小さくなるように制御し(巻上げ又は巻下げをする時の支持モータと開閉モータの速度制御特性を、速度偏差量に対するトルク特性を比例積分特性とすることで負荷変動に対する速度偏差量を小さくし、支持モータと開閉モータの負荷に対する速度変動を小さくする。)、かつ、巻下げ時には、開閉モータの速度を定格速度を超える範囲まで速度制御範囲を広げ、支持モータより開閉モータの速度を速くすることで巻下げながら開き動作をし(開閉モータの負荷率が低いことから、その分の開閉モータの余力分だけ定格速度を超えて開閉速度を速くすることが可能で、バケットの開閉位置が開端位置にない時の巻下げ時には支持モータの巻下速度より開閉モータの巻下速度を定格速度を超えて速くすることで巻下げをしながらバケットを開端位置に向かわせるようにする。)、バケットが開端位置にある時には、支持モータと開閉モータの速度を等しくすることにより、開端位置の状態を保持したまま巻下げを行う(開端位置に達した時に、支持モータと開閉モータの速度を等しくしたまま巻き下げることで、開端位置を積極的に維持する。)
ことを特徴とする。
【0009】
この場合において、前記バケットの開閉状態がバケットの閉減速位置の付近から閉じ側にある場合における巻上げ下げ時に、支持モータと開閉モータの加速終了後の速度或いはトルクが等しくなった時に、モータトルクに余力がある場合は、その時の負荷の大きさに対して各々のモータが出力できる最大速度まで増速するようにすることができる。
特に、バケットが閉じて荷役物を掴んだ状態にある場合の巻上げで、支持モータと開閉モータの加速終了後の負荷分担が同一になった時、前記比例特性で巻上げ時の速度が低下した分だけ速度指令を速くし、速度が遅くなった分を補充し、負荷の大きさに対し支持モータと開閉モータの余力がある場合には、その余力分だけ更に支持モータと開閉モータの速度を増速をすることで搬送効率の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の複索ロープ式バケット付きクレーンの巻上げ下げの制御方法によれば、支持モータと開閉モータをバケットの状態に応じて適切に制御し、支持ロープ或いは開閉ロープの弛みを少なくし、かつ、効果的な高速運転を行い、動作が安定した運転しやすく搬送効率の良い複索ロープ式バケット付きクレーンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】複索ロープ式バケットを制御するクレーンの巻取装置の平面図である。
図2】複索ロープ式バケットの構造説明図である。
図3】複索ロープ式バケットの開閉ロープの説明図である。
図4】複索ロープ式バケットの開閉位置検出器の配置説明図である。
図5】複索ロープ式バケットの支持モータと開閉モータの負荷分担の説明図である。
図6】複索ロープ式バケットが掴んでいない時の支持モータと開閉モータのトルク特性図である。
図7】複索ロープ式バケットが掴んでいる時の支持モータと開閉モータのトルク特性図である。
図8】支持モータと開閉モータのトルク特性を発生させる速度制御系の制御ブロック図である。
図9】複索ロープ式バケットの巻下げ時の制御による動作説明図である。
図10】ホッパのブリッジ状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の複索ロープ式バケット付きクレーンの巻上げ下げの制御方法について、図面に基づいて説明する。
【0013】
図1に、複索ロープ式バケットを動作させるクレーンの巻取装置の平面図を示す。
速度検出器PG付きの支持モータHMは、ブレーキBR及び減速機GRを介して支持ドラムHDに接続され、支持ドラムHDには支持ロープHWが巻き付けられている。
そして、支持ロープHWに掛かる荷重を捉える部分(例えば支持トラムHDの軸受け部)にはロードセルLCが取り付けられ、支持ドラムの軸には支持位置検出器HPが取り付けられている。
開閉装置も、支持装置と等容量の同一構成で夫々が支持と開閉が独立して配置されており、速度検出器PG付きの開閉モータGMからブレーキBR及び減速機GRを介して開閉ドラムGDに接続され開閉ドラムGDには開閉ロープGWが巻き付けられている。また、ロードセルLCや開閉位置検出器GPが取り付けられている。
【0014】
図2に複索ロープ式バケットの構造を、図3に複索ロープ式バケットの開閉ロープ部分を示す。
支持ロープHWは、上シーブボックスHBに固定され、バケット全体を支えている。
上シーブボックスHBには、ピンでのリンク構造の取り合いで連結ロッドLLが接続され、シェルCLに接続されている。シェルCL同士は下シーブボックスBBでリンク接続されている。そして、シェルCLの先端には爪TAが取り付けられている。
ここで、開閉ロープGWは、下シーブボックスBB内の下シーブピンBSに取り付けられたシーブSHと上シーブボックスHB内の上シーブピンHSに取り付けられたシーブSHを介して複数回掛けられて(図3に図示した例では4本掛け。)、開閉ロープGWの末端はコッターシーブCSで上シーブピンHSに固定されている。
【0015】
バケットGBの動作は、支持ロープHWと開閉ロープGWの動きで、開、閉、掴み、巻上げ、巻下げの5つの動作を行う。
開動作は、支持ロープHWを停止した状態で、開閉ロープGWを巻き下げると開動作に
なる。
閉動作は、支持ロープHWを停止した状態で、開閉ロープGWを巻上げると閉動作になる。
掴み動作は、支持ロープHWを弛ませてバケットGBを自重で沈み込ませながら開閉ロープGWを巻上げバケットを閉じ方向に動かし、支持ロープHWの弛み取り制御を行う動きで掴み動作となる。
巻上げ動作は、支持ロープHWと開閉ロープGWの両方を等速で巻上げることで巻上げ動作となり、巻下げ動作は、支持ロープHWと開閉ロープGWの両方を等速で巻き下げることで巻下げ動作となる。
ここで、支持ロープHWと開閉ロープGWの速度が等速でなかった場合、巻上げ、巻下げを行いながら、バケットが閉じたり、開いたり、或いはいずれかのロープが弛む現象が出る。
これを防止するため、以下に述べるような巻上げ或いは巻下げを行う場合の支持ロープHWと開閉ロープGWの制御を行う。
【0016】
図4に複索ロープ式バケットの開閉位置検出器の検出位置を図示する。
図4の(1)が開端停止リミットスイッチで開き動作が停止した時のバケットGBの開端位置GOの状態でシェルCLが完全に開ききった状態で開閉ロープGWが僅かに弛みだす手前に設定されている。図4の(2)がバケットGBの開き動作時に開端位置GOの手前で低速度に減速させるために開きの減速距離だけ手前に設けた開減速位置GODの状態である。図4の(4)が閉端停止リミットスイッチで閉じ動作が停止した時のバケットGBの閉端位置GCの状態で空荷の状態でシェルCLがピッタリ合わさった状態で支持ロープが弛まない位置に設定されている。図4の(3)がバケットGBの閉じ動作時に閉端位置GC手前で低速度に減速させるために閉じの減速距離だけ手前に設けた閉減速位置GCDの状態である。
この開閉の位置の検出は、支持ロープ移動量と開閉ロープ移動量の相対差が開閉動作となることから、支持ドラムHDの回転を検出する支持位置検出器HPと開閉ドラムGDの回転を検出する開閉位置検出器GPの2つの検出器の回転差が開閉の度合いの検出となる。検出方式は、電気的に回転差を取る方法や、支持ドラムHDと開閉ドラムGDの両方の回転を差動減速機に入力して機械的に回転差を取ってその差分の回転で開閉度合いを検出する方法等がある。
【0017】
図4の(5)は、大量のバラ物荷役物HOをシェルCLの間で噛み込んで掴み力が出ている状態である。この掴み位置GGの状態は位置検出器で検出した状態ではなく、シェルCLの間にバラ物荷役物HOが噛み込むことで、閉じ方向の開閉ロープGWの動作が拘束されることで開閉ロープGWに荷重を支える踏ん張り力が出た状態で、支持ロープHWと開閉ロープGWの双方が図5の(3)に示すように均等に荷重を支える状態である。この掴み位置GGの状態から少し開閉ロープGWを弛めるとバラ物荷役物HOを落としてしまい、開閉ロープGWを少し閉め込み過ぎると図5の(4)のように支持ロープHWが弛んでしまう。このように掴み位置GGは微妙な位置関係にあり、支持ロープHWと開閉ロープGWの双方が荷重を分担することで保たれる位置に存在し、その支持ロープHWと開閉ロープGWの荷重分担率は50:50で等しく分担することが理想である。
この掴み位置GGは、掴んでいるバラ物荷役物HOの状態で微妙に位置が変わり、閉減速位置GCDと閉端位置GCの間に必ず存在する。
なお、バケットGBの中が空荷の場合は、閉端位置GCの位置が掴み位置GGとなる。
そして、掴み位置GGから開き側に必ず位置する閉減速位置GCDの開閉位置は、バケットGB内にバラ物荷役物HOを保持できない状態でバケットGB単体の空荷の状態である。
【0018】
図3に示す開閉ロープGWの構造において、バケットGBが開端位置GOの状態から閉
端位置GCの状態になる間に下シーブボックスBBが動くストロークが1.25mの場合で、シーブSH間の掛け数が4本掛けであった場合には、バケットGBが開端位置GOから閉端位置GCになる間の開閉ロープGWの長さは5m(1.25m×4本)の長さになる。この時の開減速位置GODは、開端位置GOの開閉ロープGWの位置から手前に約1.2mの位置に設定されている。閉減速位置GCDは、閉端位置GCの開閉ロープGWの位置から手前に約0.6mの位置に設定されている。この時、負荷が減速の妨げになる方向の開側と負荷が減速の助けになる方向の閉側で減速距離が異なるので、開減速位置GODと閉減速位置GCDの減速距離の設定が異なる。
【0019】
図5にバケットGBのそれぞれの状態の支持ロープHWと開閉ロープGWのそれぞれに掛かる荷重の分担を示している。
バケットGBが掴んでいない図5の(2)の状態においては、開閉ロープGWが支えているバケットGBの荷重は、シェルCLと下シーブボックスBBの重量のうち、連結ロッドLLが支えている荷重を除いた荷重で、更にその荷重を開閉ロープGWの掛け数(図3の場合は4本掛けなので4)で割った荷重が開閉ロープGWに掛かる荷重で、バケットGBの荷重の15%未満の小さい荷重しか開閉ロープGWは支えておらず、残りの85%以上の荷重を支持ロープが支えている。更に図5の(1)の状態でバケットGBが開ききった状態で、開閉ロープGWが弛んだ状態では、支持ロープHWがバケットGBのすべての荷重を分担し、開閉ロープGW側は荷重を全く分担していない状態になる。
【0020】
支持モータHMと開閉モータGMに誘導モータを用い速度制御を行わずに動かした場合、図5の(1)や(2)の負荷分担で巻上げを行うと、支持モータHMは負荷に引っ張られモータの滑り分だけ速度が遅くなり、負荷負担が軽くモータの滑りが少ない開閉モータは支持モータより速度が速くなる。この支持モータHMと開閉モータGMの速度差でバケットGBは閉じの方向に動く。そして、巻下げを行うと支持モータHMは負荷に引っ張られ開閉モータGMよりモータの滑り分だけ速度が速くなるので、やはりバケットGBが閉じる方向になる。
そこで、バケットGBの開閉状態が閉減速位置GCDより開き側にある場合は、バラ物荷役物HOを掴んでいない状態であるので、支持モータHMと開閉モータGMの双方のモータ特性を図6に示す特性となるよう速度制御を加えることで、負荷の大きさに関わらず速度を一定にし、巻上げ巻下げをした時に閉じる現象を少なく抑える。
ただし、図6に示す特性としても、実際には僅かな定常偏差が存在していることと、支持モータHMが85%以上の負荷トルクに加速時の加速トルクが加わると僅かにトルクリミッタLM(実施例では150%)に掛かることがあり、加速時に僅かに閉じる現象が発生することがある。
この僅かに閉じる現象を解消するため、バケットGBが閉減速位置GCDより開き側にある時には、開閉モータGMの負荷分担が小さいことを利用し、開閉モータGMの余力分だけ定格速度を超えて増速し、支持モータHMより開閉モータGMの速度を速くすることで図9に示すように巻き下げながら開き動作をし、開端位置GOに向かうように位置制御を行うことで、前記の僅かに閉じる現象を解消する。
【0021】
図6の特性図は、横軸が速度ωで縦軸がトルクTで、トルクTのプラス側が巻上げ側でトルクTのマイナス側が巻下げ側になる。
図6の特性カーブのとおり、トルク変化に対する速度ωが、速度目標値ω上に真っ直ぐに速度変化なく立ち上がるカーブである。
しかし、実際には僅かな定常偏差が存在する。
速度目標値ω上を真っ直ぐに立ち上がったカーブは、出力トルクが能力の限界に達するところでトルクリミッタLM(実施例では150%)に達し、巻上げ時には速度が遅く、巻下げ時には速度が速くなる。
この定常偏差やトルクリミッタLMの発生する方向は、巻上げ時及び巻下げ時共にいず
れもバケットGBが閉じていく方向である。
速度ωが定格速度100%を超えると、モータの特性の問題で、速度ωが速くなるにつれて出力できるトルクTが低下していく。
【0022】
バケットGBが閉減速位置GCDより閉じ側にある時はバラ物荷役物を掴んでいる状態と判断し、支持モータHMと開閉モータGMの制御特性を図7の特性とすることで、図4の(5)に示す掴み位置GGで図5の(3)の負荷分担50:50の状態を作り出し、保持し続けることができる。この時、支持モータHMと開閉モータGMの双方に図7の同じ傾きで、同じ速度目標値を与えることで支持モータHMと開閉モータGMの負荷分担が50:50の状態になる。図7の特性は、巻上げ側に負荷が掛かると、その負荷の大きさに比例して速度が遅くなり、逆に巻下げ側(マイナストルク側)には負荷が大きくなるにつれて速度が速くなる特性になっており、図7の実施例の特性は100%の負荷トルクの時に実施例では8%の速度偏差が出る特性になっている。
この図7の制御特性の傾きは、誘導モータを速度制御なしで動かした時の滑りの特性に似ているが、誘導モータの滑りが2%程度であるのに対し、それに相応する図7の特性の傾きを8%としているのは、より積極的に支持モータHMと開閉モータGMの負荷分担を50:50の等しく均衡した状態により速く収束させ、より安定的に50:50の等しく均衡した状態を保持させるためである。
つまり、誘導モータ滑りにより、巻上げ、巻下げをしているとバケットGBが勝手に閉じてしまう現象を、閉減速位置GCDより閉側にある時は、速度制御を行うことで、より積極的にその状態を作り出すようにしている。
この時、図7の特性の傾きを支持モータHMの傾きを8%のままとし、開閉モータGMのみ傾きを例えば7%とすると、開閉モータGMの負荷分担を大きくすることができるが、バケットGBの特性上は負荷分担を変える必要はなく、負荷分担は50:50が理想的で、支持モータと開閉モータの特性は等しい特性とすることが理想である。
【0023】
図7の制御特性で実際に支持モータHMと開閉モータGMを動かした時の動きは、支持モータHMと開閉モータGMを図7に示す同じ特性にし、同じ速度目標値ωを設定した時、巻上げ時に、例えば、支持の分担率が大きくなろうとした場合、支持の速度が遅くなり、負担率が軽くなる開閉側の速度は速くなり、支持が弛む方向で開閉が突っ張る方向になるので開閉側に荷重分担が戻ろうとするので負荷分担は50:50に収束しようとする。そして、その収束した位置が掴み位置GGである。
巻下げ時に、例えば、支持モータHMの分担率が大きくなろうとした場合、支持の速度が速くなり、負担率が軽くなる開閉側の速度は遅くなり、支持ロープHWが弛む方向で開閉ロープGWが突っ張る方向になるので開閉側に荷重分担が戻ろうとし、負荷分担は50:50に収束しようとする。やはり、その収束した位置が掴み位置GGである。
このように、図7の特性とすることで、図5の(3)の掴み位置GGの状態に積極的に収束しようとするので、図5の(2)のような状態になり掴んでいる物を溢すことがなく、図5の(4)のような状態の開閉モータGMが過負荷になることもなく、掴み端位置を保持する。
【0024】
バケットGBの自量とバラ物荷役物HOの重量比は、比重の大きな鉱石の場合、バケットGBの自量とバラ物荷役物HOを満杯(定格容量)に掴んだ時の重量が同じ重量となるように設計されている場合が多く、バラ物荷役物HOの比重が軽い木片チップや穀物、可燃ごみ等は、バラ物荷役物HOの重量がバケットGBの重量の6割から3割程度の荷重値になるのが一般的である。
そして、比重の重い鉱石等を、軽量バケットで掴む場合においては、バケットGBの重量よりもバラ物荷役物HOの定格容量の重量の方が重い場合もあるが稀な事例である。
【0025】
バケットGBの自重とバラ物荷役物HOが満杯時(定格容量)の重量が同じ重量の場合
図5の(1)の支持モータHMの負荷と図5の(3)の支持モータHMと開閉モータGMの負荷の値が等しく最大の負荷となる。よって、この負荷の値を、支持モータHMと開閉モータGMの定格出力と設定するのが経済的で一般的にそのように設計される。ただし、この場合においてもバラ物荷役物を満杯に掴むことは稀で、通常は6~8割程度しか掴まないので、図5の(3)の状態において支持モータHMと開閉モータGMの出力に余力が発生している場合が一般的である。
比重が軽いバラ物荷役物を掴むバケットの場合、バケットGBの荷重より満杯に掴んだ時のバラ物荷役物HOの重量が軽いので、図5の(1)の支持モータHMが最大の負荷となり、この状態を支持モータHMの定格出力とし、開閉モータGMもそれに合わせる設計にするのが一般的な設計になる。この場合、図5の(3)の状態では、支持モータHM及び開閉モータGBの出力に余力が発生する。更に通常は満杯に掴めずに6~8割程度しか掴めないので更に図5の(3)の状態でのモータ出力に余力が発生する。
比重が重いものを掴む軽量バケットの場合、図5の(3)の状態でバラ物荷役物HOを満杯に掴んだ時が支持モータHMと開閉モータGMに掛かる荷重が最大負荷になり、この状態を支持モータHMと開閉モータGMの定格出力とするのが経済的で一般的な設計である。
このような軽量バケットを使った場合は、バケットGBの自重で掴み力を出す複索ロープ式バケットの原理上、満杯に掴むことは困難で、掴めるバラ物荷役物HOの重量は5割程度に留まる場合が多く、やはり図5の(3)の状態で、支持モータHMと開閉モータGMの出力に余力が発生する。
【0026】
図5の(3)の掴んだ状態で使用する図7の特性は、トルクTに対する速度ωの変動量であるグラフの傾きを傾ければ傾けるほど、支持モータHMと開閉モータGMのトルクTの均衡が取れやすくなる。しかしながら、この図7の特性は巻上げ時の速度が定格の速度より遅くなってしまう。これによりクレーンの巻上げの定格速度が不足してしまい性能表示値に対する性能が守れなくなるので、これを補うため、巻上げ加速終了後に支持モータHMと開閉モータGMの出力トルクが均衡したことを確認した後、実速度ωが速度目標値ωから遅れた量を、支持モータHMと開閉モータGMの速度目標値ωに加算することで、その遅れ分を補償する。
【0027】
また、それに加えて、前記の支持モータHMと開閉モータGMのトルクTの均衡が取れた時のトルクTの値が、支持モータHM及び開閉モータGMの定格トルクに対して余力がある場合には、その余力に対して出力できる最大速度まで支持モータHMと開閉モータGMの速度目標値ωを増加させ巻上げ速度を速くし搬送時間の短縮を行う。
【0028】
図5の(3)の掴み位置GGの状態で使用する図7の特性で、巻下げ速度側(マイナストルク側)の速度が定格を超えて出力しているが、巻下げ時は減速機の機械損失がモータ出力を助けてくれるので、僅かな速度の増速(実施例では8%)はモータ能力上の問題はない。
また、巻上げ時と同様に巻下げ時も支持モータHMと開閉モータGMのトルクTの均衡が取れた時、モータ余力の分だけ増速させることは可能であるが、バケット付きクレーンの搬送パターン上は、掴んだ状態での巻下げ動作はほとんどなく、その能力を生かされる機会はほとんどない。
【0029】
バケットGBが掴んでいない状態(閉減速位置GCDより開側の開閉位置の状態)の時に設定する図6の特性と、バケットGBが掴んでいる状態(閉減速位置GCDより閉側の開閉位置の状態)の時の図7の特性を実現するための速度制御系の制御ブロック図を図8に示す。この制御ブロック図において、速度目標値ωは、図6或いは図7の特性図のトルクTがゼロの時のωの値である。そして、速度検出器PGで検出された実際に出力されている速度ωの値を速度目標値ωから減算した速度偏差量を自動速度設定器ASRに入
力する。
そして、図6の特性を実現させる時には、自動速度設定器ASRを比例積分特性PICとし、速度偏差量を積分器に蓄積し、その積分を放出するまでトルクを出そうと制御することで、図6に示すトルクTに対して速度偏差がない特性を実現している。ただし、速度偏差量が生じた後に初めて積分器に蓄積されるので、僅かな定常偏差が生じる。そして自動速度設定器ASRを通過した後にトルクリミッタLMを通過させてトルク目標値Tとしているので、ここでトルクリミッタLMに掛かった分は速度偏差として大きく発生してしまう。
そして、図7の特性を実現する場合は、速度偏差量を入力する自動速度設定器ASRを比例特性PCとし図7のグラフの傾きの比例特性PCの傾きで演算することで、速度偏差量に比例したトルクを出力し、トルクリミッタLMを経た後にトルク目標値Tを生成する。これにより、巻上げ時は負荷の大きさに比例して出力速度を遅くし、巻下げ時は負荷の大きさに比例して速度を速くするための、図7の特性となる。
【0030】
ここで、バケットGBが掴んでいない状態の図6の特性と、バケットGBが掴んでいる状態の図7の特性の切り替えは、巻上げ操作或いは巻下げ操作を入れた瞬間のモータが動きだす前に閉減速位置GCDから閉側か閉減速位置GCDから開側かで切り替えを行い、モータ動作中には図6図7の制御特性の切り替えを行わないようにしている。これは、切り替え時に切り替えショックが発生するのを考慮したものである。
例えば、閉減速位置GCDの切り替わり位置のぎりぎりの位置でいずれかの図6或いは図7の状態になりモータが動きだした後に閉減速位置GCDが切り替わっても、前の制御状態を保持し続ける。
【0031】
閉減速位置GCDを図6図7の制御特性の切り替えに使用しているのは、閉減速位置GCDの位置から僅かに閉じ側の位置に掴み位置GGが必ず存在し、かつ、閉減速位置GCDの位置ではバケットの中にバラ物荷役物HOを保持できない位置で、この位置から開きの側ではバケットGB単体の状態で支持と開閉の負荷分担が図5の(2)の状況の位置で、閉減速位置GCDと制御切り替え位置が最適な同じ位置(実施例では閉端位置GCから開閉ロープGWが0.6m開き側の位置)であるから、閉減速位置GCDを制御切り替え位置として使用している。
この時、閉減速位置GCDから図7の特性で巻上げ或いは巻下げをすると、速やかに掴み位置GGに移動し支持モータHMと開閉モータGMの負荷分担が50:50に収束する。
そして、掴み位置GGから少し開いただけで掴んでいるバラ物荷役物HOを掴む掴み力が無くなり、シェルCLの隙間からバラ物荷役物HOが落ちてしまい、閉減速位置GCDの開閉位置では、バケットGB内は空荷状態である。
【0032】
閉減速位置GCDの開き側で図6の特性とした時、図6の特性は支持モータHMと開閉モータGMの負荷が不均衡でもその状態を維持し、負荷が過負荷状態ならその状態を維持しようとしてしまう。しかし、閉減速位置GCDの位置ではバケットGB単体の荷重だけしか掛かっていないので、支持モータHMが支える荷重は100%以下で、支持モータHMの負荷が100%を超えて過負荷になることはない。
また、閉減速位置GCDから閉じ側の位置では、シェルCL間にバラ物荷役物が噛み込んで開閉が拘束された掴み位置GGの開閉位置から、更に開閉ロープGWを閉端位置GCまで締め上げていくと、図5の(4)のように支持ロープHWが弛み、開閉ロープGWだけにバケットGBの重量とバラ物荷役物HOの重量すべてが掛かってしまい、開閉が過負荷状態になってしまうが、閉減速位置GCDより閉側では、図7の制御特性になっているので、図7の制御特性で巻上げ或いは巻下げを行うと、支持モータHMと開閉モータGMの負荷分担が50:50になる掴み位置GGに速やかに収束し維持するので、図5(4)の状態にはならず、開閉モータGMや開閉の速度制御装置が過負荷破損等に至ることはな
い。
【0033】
バケット付きクレーンCRの搬送パターンは、図9に示すレイアウトのようにピットPT等の下方でバラ物荷役物HOの掴みを行いホッパHOP等の上方で開きを行うのが一般的である。そして、上方で掴んで下方で開く搬送パターンは一般的ではない。
図9以外の運用例でも、例えばアンローダでは、下方の船倉内で掴み上方のホッパHOPで開く。浚渫バケットにおいても、水面下の川底や海底で掴み、水面上の台船や陸地に開く。開く場所が搬出トラックになるような運用例の場合も、搬出トラックの位置は掴み位置より上方に位置する。
このように、バケット付きクレーンの搬送パターンは、巻上げている時はバラ物荷役物HOを掴んでいる状態で、巻下げている時は掴んでいない状態でバケットGBを開端位置GOの状態にして掴みに行く状態となる。
【0034】
バケット付きクレーンの搬送パターンの中で掴んでいる状態で巻下げを行う工程は、ホッパHOPの上や搬出トラックの上でバラ物荷役物HOが飛散したり、バラ物荷役物HOが落ちるショックを緩和するため、ホッパHOPの上や搬出トラックの上でバケットGBを掴んだ状態で低速で巻き下げる場合があるが、巻下げ距離は僅かで全体の搬送工程に与える影響度は小さい。
バケットを開いている状態の搬送パターンで、バケットGBを全開の開端位置GOの状態でバラ物荷役物HOを掴みに行く作業以外は、バケットを休止するためにバケット置場に搬送する工程があるが、バケットGBを休止待機する時も、バケットが最も安定度があり、爪TAの損傷が最もない開端位置GOの状態を確保できれば良い。
このように、バケット付きクレーンでは、掴み位置GGの状態か、開端位置GOの状態の2点のみが搬送に必要な開閉状態で、それ以外の開閉の中間位置の状態は搬送上の必要性がなく経過状態でしかないので、開閉の中間位置の状態を保持しておく必要性はない。よって、掴んでいない状態では開端位置GOの状態を積極的に作り出すようにする。
【0035】
ホッパHOP上でバケットGBを開く際、勢いよくバケットGBを開くと図10に示すように投入したバラ物荷役物HOが、ホッパHOP上面でブリッジBRI状態になり、底だけが抜けて、ホッパHOP内でバラ物荷役物HOが詰まってホッパHOPが機能しなくなるブリッジBRI現象が発生する場合がある。この現象はバラ物荷役物HOの性状とバケットGBの開き方に起因する。このブリッジBRI現象を防止するため、図9の(1)のようにホッパHOPの縁で少しだけバケットGBを開いて掴んでいるバラ物荷役物HOを徐々に落とす方法がある。この方法は、粉塵の飛散を防ぐ効果や、搬出トラックへの積載においては、トラックへの衝撃を和らげる効果もある。
このバケットGBの開き方でバケットGB内のバラ物荷役物HOを落とした後に、横行又は走行動作TSとバケットGBの開きの同時動作をさせながらピットPT上方の巻下げ可能なエリアに入っても、まだ開端位置GOまで達していない。
本発明では、ここで開端位置に達するまで巻下げ動作を待つのではなく、開端位置GOに達していなくても、閉減速位置GCDの開き側のバケット開閉位置の状態で巻下げ操作を行うと、開閉モータGMの速度を定格速度を超えて速度を出力し、支持モータHMより開閉モータGMの速度を速く速度差を付けることで、図9の(1)から(4)の流れで巻下げながら開き動作をさせて、搬送効率を上げることができる。
【0036】
閉減速位置GCDより開側のバケット開閉位置にある状態で巻下げを行う搬送パターンの状況は、掴みに行く状況か、バケット保全位置に向かう状況しかなく、いずれも開端位置GO状態にしないといけない状況である。そして、この時の支持モータHMと開閉モータGMの負荷分担は、図5の(2)に示すように開閉モータGMの負荷分担が小さいので、開閉モータGMには、定格速度を超えて速度を出す余力がある。
そして、開閉モータGMの速度目標値ωを支持モータHMより上げて開端位置GOに
向かい、開端位置GOを保持しようと制御するので、図6の特性に存在する僅かな定常偏差やトルクリミッタLMの影響でバケットGBが閉じる現象が完全に解消できる。
【0037】
この時の開閉速度は、開閉負荷トルクが15%未満なので開閉モータGMの速度を200%の速度を出すことも可能であるが、開閉モータGMを支持モータHMの2倍の巻下げ速度を出してから巻下動作を停止すると、支持ロープHWの減速距離(実施例では1.2m)に対し開閉ロープGWの減速距離(実施例では4.8m)が4倍となり、支持と開閉の相対減速距離は3倍(実施例では3.6m)となり、この状態で巻下げを停止すると、開閉ロープGWが大きく繰り出してしまう。
これを防止するため、開閉モータGMの速度は、支持モータの21/2倍に抑えて、開閉ロープGWの減速距離を支持ロープHWの減速距離の2倍とし相対減速距離を1倍に抑える。
巻下げと開きを同時動作で支持モータHMより開閉モータGMの速度を上げた状態から支持モータHMと開閉モータGMの両方を同時に減速停止した時は、速度差の自乗で減速距離が延びてしまい、開閉ロープGWが大きく繰り出すので開閉モータGMの速度を上げ過ぎず21/2に抑えておくのが良い。しかし、支持モータHMより開閉モータGMの速度を上げて、巻下げと開きを同時動作をしている状態から、支持モータHMと開閉モータGMの速度を等しくすることで開き動作のみを停止し巻下げを継続した時の開閉の減速距離は通常の減速距離となるので、前記の開閉速度を出しすぎないように抑えた場合は、開閉時間に時間を要してしまう。
【0038】
巻下げと開きの同時動作の開きのみの減速停止動作は、図9に示すように、開閉モータGMの速度は支持モータHMの速度の21/2倍として巻下げを行い、開減速位置GODに達すると開閉モータGMの速度を減速させ、支持速度に対し若干速い速度とし、その速度を保って開端位置GOに達したところで支持速度と開閉速度を等しくする。
このように、支持速度と開閉速度の速度差は小さめに抑えて、ゆっくりと開きながら巻下げを行うが、開減速位置GODと開端位置GOの2点検出だけでは速度差を抑えて制御するしかないので開き時間に時間を要する。この時、開減速位置GODと開端位置GOの2点だけで制御するのではなく、開端位置GOまでの支持と開閉の相対距離を数値で捉え。その相対距離に対して出力できる最大相対速度を演算しながらリニアに速度差を制御すると、21/2倍以上の速度差を出すことも可能で、巻下げ中の開き時間を速くすることが可能になるとともに、開端位置GOの位置に達した後の開端位置GOの位置を保持しようとする性能も向上することができる。
【0039】
ところで、巻上げの動作と開きの同時操作を行うためには、支持モータHMの速度を上げるか開閉モータGMの速度を下げるかの方法になるが、図5の(1)の負荷分担の如く、支持モータには定格速度を超えて速度を増す余力がなく能力上無理なのと、開閉モータGMの速度を下げて開く方法は搬送時間短縮に寄与しない。そして、上方に巻上げてバケットGBを開けないといけない状況が搬送パターンでレアケースであることから、巻上げながら開をする方法は、あまり重要な機能ではない。
【0040】
以上、本発明の複索ロープ式バケット付きクレーンの巻上げ下げの制御方法について、その実施例に基づいて説明したが、本発明は上記実施例に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の複索ロープ式バケット付きクレーンの巻上げ下げの制御方法は、バケットの状態に応じて支持モータと開閉モータの制御を最適化し、支持と開閉の負荷分担を最適化することでモータ過負荷による故障を減らし、ロープの弛みのない使いやすい制御とし、搬
送工程に合致した動きとし搬送効率を行い、複索ロープ式バケット付きクレーンで好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0042】
CR クレーン
HD 支持ドラム
GD 開閉ドラム
HM 支持モータ
GM 開閉モータ
BR ブレーキ
GR 減速機
LC ロードセル
HP 支持位置検出器
GP 開閉位置検出器
PG 速度検出器
HW 支持ロープ
GW 開閉ロープ
GB バケット
HB 上シーブボックス
LL 連結ロッド
CL シェル
TA 爪
BB 下シーブボックス
HS 上シーブピン
BS 下シーブピン
SH シーブ
CS コッターシーブ
GO 開端位置
GOD 開減速位置
GCD 閉減速位置
GC 閉端位置
GG 掴み位置
HT 支持トルク
GT 開閉トルク
ω 速度
T トルク
ω 速度目標値
トルク目標値
ASR 自動速度設定器
PC/PIC 比例特性/比例積分特性
LM トルクリミッタ
PT ピット
HO バラ物荷役物
HOP ホッパ
BRI ブリッジ
TS 横行又は走行動作
HR 支持巻下動作
GR 開閉巻下動作
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10