(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022166490
(43)【公開日】2022-11-02
(54)【発明の名称】モータおよび洗濯機
(51)【国際特許分類】
H02K 1/27 20220101AFI20221026BHJP
D06F 37/40 20060101ALI20221026BHJP
【FI】
H02K1/27 503
D06F37/40 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021071730
(22)【出願日】2021-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】503376518
【氏名又は名称】東芝ライフスタイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100205785
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100203297
【弁理士】
【氏名又は名称】橋口 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100135301
【弁理士】
【氏名又は名称】梶井 良訓
(72)【発明者】
【氏名】磯永 賢
(72)【発明者】
【氏名】志賀 剛
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 英昌
【テーマコード(参考)】
3B165
5H622
【Fターム(参考)】
3B165AA04
3B165AA11
3B165AE02
3B165BA16
3B165BA24
3B165BA33
3B165BA84
3B165BA86
3B165CA01
3B165CA11
3B165CB12
3B165CB24
3B165CB52
3B165CB55
3B165CB59
3B165CB64
3B165DW03
3B165DW05
3B165GA02
3B165GA12
3B165GA13
5H622AA02
5H622CA02
5H622CA06
5H622CA10
5H622PP20
(57)【要約】
【課題】安定した回転を実現できるモータおよび当該モータを有する洗濯機の提供。
【解決手段】実施形態のモータは、ロータとステータとを持つ。ロータは、中心軸線を中心として回転する。ステータは、中心軸線の軸方向に隙間を介してロータに対向する。ステータは、コイルを持つ。コイルは、周方向に沿って並び軸方向に磁極を形成する。ロータは、複数のマグネットを持つ。複数のマグネットは、周方向に沿って並び軸方向を磁極方向とする。マグネットは、周方向の中央部の磁力が周方向の両端部の磁力より強い。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸線を中心として回転するロータと、
前記中心軸線の軸方向に隙間を介して前記ロータに対向するステータと、を備え、
前記ステータは、周方向に沿って並び軸方向に磁極を形成する複数のコイルを有し、
前記ロータは、周方向に沿って並び軸方向を磁極方向とする複数のマグネットを有し、
前記マグネットは、周方向の中央部の磁力が周方向の両端部の磁力より強い、
モータ。
【請求項2】
前記マグネットは、周方向の中央部の軸方向の厚さ寸法が周方向の両端部の軸方向の厚さ寸法より大きい、
請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
前記マグネットは、周方向の中央部において軸方向を磁化容易軸方向とし、周方向の両端部において軸方向に対し傾斜した方向を磁化容易軸方向とする、
請求項1に記載のモータ。
【請求項4】
前記マグネットは、周方向の中央部の径方向の長さ寸法が周方向の両端部の径方向の長さ寸法より大きい、
請求項1に記載のモータ。
【請求項5】
請求項1~4の何れか一項に記載のモータと、
前記中心軸線の軸方向一方側に開口する有底の筒状であり前記モータによって回転させられる回転槽と、
前軸方向一方側に開口する有底の筒状であり記回転槽を収容する水受槽と、を備え、
前記ロータは、前記回転槽に連結され、
前記ステータは、前記水受槽の底部に接触する、
洗濯機。
【請求項6】
前記ステータは、前記水受槽の底部の軸方向他方側の面に固定される、
請求項5に記載の洗濯機。
【請求項7】
前記ステータの少なくとも一部、および前記水受槽の底部の少なくとも一部を埋め込み保持する樹脂製の保持部を備える、
請求項6に記載の洗濯機。
【請求項8】
中心軸線を中心として回転するロータおよび前記ロータと軸方向に対向するステータを有するアキシャルギャップ型のモータと、
軸方向一方側に開口する有底の筒状であり前記ロータに連結され前記ロータとともに回転する回転槽と
軸方向一方側に開口する有底の筒状であり前記回転槽を収容する水受槽と、を備え、
前記ロータは、前記ステータのコイルの軸方向一方側に配置され、
前記ステータは、前記ロータを径方向外側から囲み先端部で前記水受槽の底部の軸方向他方側の面に固定される脚部を有する、
洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、モータおよび洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、アキシャルギャップ型のモータを採用して全体を小型化した洗濯機の開発が進められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、薄型のアキシャルギャップ型のモータであって安定した回転を実現できるモータおよび当該モータを有する洗濯機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態のモータは、ロータとステータとを持つ。ロータは、中心軸線を中心として回転する。ステータは、中心軸線の軸方向に隙間を介してロータに対向する。ステータは、コイルを持つ。コイルは、周方向に沿って並び軸方向に磁極を形成する。ロータは、複数のマグネットを持つ。複数のマグネットは、周方向に沿って並び軸方向を磁極方向とする。マグネットは、周方向の中央部の磁力が周方向の両端部の磁力より強い。
また、実施形態の洗濯機は、モータと、回転槽と、水受槽と、を備える。モータは、中心軸線を中心として回転するロータおよびロータと軸方向に対向するステータを有するアキシャルギャップ型のモータである。回転槽は、軸方向一方側に開口する有底の筒状でありロータに連結されロータとともに回転する。水受槽は、軸方向一方側に開口する有底の筒状であり回転槽を収容する。ロータは、ステータのコイルの軸方向一方側に配置される。ステータは、ロータを径方向外側から囲み先端部で水受槽の底部の軸方向他方側の面に固定される脚部を有する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、一実施形態のモータを有する洗濯機の断面模式図である。
【
図2】
図2は、一実施形態のモータの断面模式図である。
【
図3】
図3は、一実施形態のロータの断面模式図である。
【
図4】
図4は、
図3のIV-IV線に沿う一実施形態のロータの断面模式図である。
【
図5】
図5は、上述の実施形態に採用可能なロータの断面模式図である。
【
図6】
図6は、上述の実施形態に採用可能なロータの断面模式図である。
【
図7】
図7は、上述の実施形態に採用可能なモータの断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態のモータおよび洗濯機を、図面を参照して説明する。以下の説明では、同一または類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。そして、それら構成の重複する説明は省略する場合がある。
【0008】
図1は、本実施形態のモータを有する洗濯機の断面図である。
以下の説明において、洗濯機の設置面側つまり鉛直下側を洗濯機の下側とし、設置面とは反対側つまり鉛直上側を洗濯機の上側とする。また、洗濯機の正面に立つユーザから洗濯機を見た方向を基準に、左右を定義している。また、洗濯機から見て洗濯機の正面に立つユーザに近い側を「前」、遠い側を「後ろ」と定義している。本明細書において「横幅方向」とは、上記定義における左右方向を意味する。本明細書において「奥行方向」とは、上記定義における前後方向を意味する。図中において、+X方向が右方向、-X方向が左方向、+Y方向が後方向、-Y方向が前方向、+Z方向が上方向、-Z方向が下方向である。
【0009】
また、以下の説明において、中心軸線Jの軸方向を単に「軸方向」と呼ぶ。なお、本実施形態において、中心軸線Jは、前方から後方に向けて下側に傾いて配置される。軸方向の両側のうち前方側かつ斜め上方を向く方向を「軸方向一方側D1」と呼び、後方側かつ斜め下方を向く方向を「軸方向他方側D2」と呼ぶ場合がある。また、中心軸線Jを中心とする径方向を単に「径方向」と呼ぶ場合がある。さらに、中心軸線Jを中心とする周方向を単に「周方向」と呼ぶ場合がある。
【0010】
(洗濯機)
洗濯機1は、筐体2、扉2a、水受槽3、ドラム(回転槽)4、モータ10、注水管5、および排水管6を有する。本実施形態の洗濯機1は、ドラム式の洗濯機である。
【0011】
筐体2は、例えば鋼板によって全体として矩形箱状に構成されている。筐体2は、水受槽3、ドラム4、モータ10、注水管5、および排水管6を収容する。筐体2は、洗濯機1の外観を形成する。筐体2の前方に配置される側壁板には、出入口2bが設けられる。出入口2bには、扉2aが装着される。扉2aは出入口2bを覆う。
【0012】
扉2aは、閉鎖状態および開放状態のいずれかへユーザが前方から操作可能である。扉2aの閉鎖状態では、出入口2bが閉鎖される。また、扉2aの開放状態では、出入口2bが開放される。
【0013】
水受槽3は、筐体2の内面にサスペンションなどを介して固定される。水受槽3は、中心軸線Jを中心として配置される円筒状である。水受槽3は、前方から後方に向けて下降する傾斜状態に配置される。
【0014】
水受槽3は、中心軸線Jを中心とする円筒部3dと、円筒部3dの軸方向他方側D2の開口を覆う底部3eと、を有する。すなわち、水受槽3は、軸方向一方側D1に開口する有底の筒状である。水受槽3の内部空間には、ドラム4が収容される。また、水受槽3の底部3eの軸方向他方側D2を向く面には、モータ10のステータ30が固定される。水受槽3の軸方向一方側D1の開口は、扉2aによって開閉可能に閉塞される。
【0015】
ドラム4は、中心軸線Jを中心とするドラム円筒部4dと、ドラム円筒部4dの軸方向他方側D2の開口を覆うドラム底部4eと、を有する。すなわち、ドラム4は、軸方向一方側D1に開口する有底の筒状である。ドラム底部4eのモータ10のロータ20から延び出る回転シャフト40が固定される。すなわち、ドラム4は、ロータ20に連結される。これにより、ドラム4は、中心軸線J周りに回転する。
【0016】
ドラム4の軸方向一方側D1の開口は、出入口2bに対向する。扉2aの開放状態において、ドラム4の内部は、出入口2bを介して前方に開放される。洗濯物は、出入口2bからドラム4の内部に投入される。
【0017】
ドラム円筒部4dには、複数の貫通孔4bが形成される。ドラム4の内部空間は、複数の貫通孔4bを通してドラム4の外部空間と繋がる。水受槽3の内部に導入された水は、貫通孔4bを通してドラム4の内部に浸入する。
【0018】
ドラム円筒部4dの内側面には、複数のバッフル4aが固定される。複数のバッフル4aのそれぞれは、ドラム4が回転することに応じて、中心軸線Jを中心に周方向へ移動する。ドラム4内の洗濯物は、複数のバッフル4aのそれぞれに引っ掛かりながら周方向へ移動した後に重力で落下することにより、撹拌される。
【0019】
注水管5は、水受槽3の上側に配置される。注水管5は、給水弁などを介して水道の蛇口に接続される。注水管5は、水受槽3の内部に水を注入する。排水管6は、水受槽3の最底部に配置される。排水管6には、排水弁が設けられる。排水管6は、水受槽3内に貯留された水を排水する。
【0020】
(モータ)
図2は、本実施形態のモータ10の断面模式図である。
図2に示すように、本実施形態のモータ10は、アキシャルギャップ型のモータである。一般的に、洗濯機のドラムを回転させるモータとしては、コイルとマグネットとが径方向に対向させるラジアルギャップ型のモータが採用される。ラジアルギャップ型のモータでは、薄型化を目的としてコイルおよびマグネットの軸方向の寸法を小型化すると、コイルとマグネットの対向面積も小さくなり、回転速度および回転トルクを十分に得難くなるという問題がある。これに対し、アキシャルギャップ型のモータでは、コイルとマグネットとの対向面積を大きく確保し易く、モータを薄型化した場合であってもモータの回転速度およびトルクを高め易い。本実施形態によれば、洗濯機1のドラム4を回転させるモータ10としてアキシャルギャップ型のモータを採用することによって、モータ10の回転速度およびトルクを十分に確保しつつモータ10の薄型化を図ることができる。水受槽3の後方側に配置されるモータ10を薄型化することで、水受槽3の後方側のスペースを小さくすることができ、洗濯機1の前後方向に小型化できる。
【0021】
モータ10は、中心軸線Jを中心として回転するロータ20と、ロータ20に連結される回転シャフト40と、中心軸線Jの軸方向に隙間を介してロータ20に対向するステータ30と、ベアリング5pと、を備える。
【0022】
(ステータ)
ステータ30は、ステータコア31と、複数のコイル35と、ベアリングホルダ36と、ステータ保持部(保持部)39と、を有する。ステータ30は、中心軸線Jを中心とする円環状である。
【0023】
ステータコア31は、コアバック部32と、複数のティース部33と、を有する。コアバック部32は、中心軸線Jを中心とし軸方向と直交する平面に沿う円板状である。コアバック部32の中央には、貫通孔31hが設けられる。貫通孔31hには、ベアリングホルダ36が固定される。
【0024】
コアバック部32には、周方向に沿って並ぶ複数の固定孔32hが設けられる。固定孔32hは、コアバック部32を軸方向に貫通する。固定孔32hには、固定ネジ34が挿入される。また、固定ネジ34は、水受槽3の底部3eに設けられるネジ孔3fに挿入される。これにより、ステータコア31は、水受槽3の底部3eの軸方向他方側を向く面に固定される。
【0025】
複数のティース部33は、コアバック部32の軸方向他方側D2を向く面から軸方向他方側D2に突出する。複数のティース部33は、中心軸線Jの周方向に沿って等間隔に並ぶ。ティース部33は、軸方向から見て等脚台形形状である。軸方向から見て、ティース部33の互いに平行な二辺は、中心軸線Jの径方向と直交して延びる。また、ティース部33を軸方向から見て互いに平行な二辺のうち、短辺が中心軸線J側に配置され、長辺が中心軸線Jから離れた側に配置される。
【0026】
コイル35は、図示略のインシュレータを介してティース部33に巻き回される。図示略のインシュレータは、例えばボビン状である。コイル35は、複数のティース部33にそれぞれ装着される。複数のコイル35は、周方向にそって並ぶ。コイル35の端部は、ステータ30から引き出されて電源装置に接続される。これにより、コイル35には、電流が流される。それぞれのコイル35は、中心軸線Jと平行な軸線周りに巻き回される。したがって、コイル35は、電流が流されることで軸方向に磁極を形成する。すなわち、コイル35は、軸方向に対向するロータ20側に磁極を形成する。
【0027】
ベアリングホルダ36は、中心軸線Jを中心とする筒状である。ベアリングホルダ36は、内周面においてベアリング5pを保持する。ベアリングホルダ36は、ステータコア31の貫通孔31hに固定される。
【0028】
ステータ保持部39は、絶縁性の樹脂材料からなる。ステータ保持部39は、ステータコア31、複数のコイル35、ベアリングホルダ36、および水受槽3の底部3eの一部を埋め込むインサート成形によって成形される。これにより、ステータ保持部39は、ステータコア31、複数のコイル35、およびベアリングホルダ36を保持するとともに、ステータ30を水受槽3の底部3eに強固に固定する。
【0029】
本実施形態によれば、ステータ30のステータコア31は、水受槽3の底部3eに接触する。このため、ステータ30から生じた熱を水受槽3に伝えることができる。水受槽3は、金属材料から構成され熱容量が大きい上、内側に水を貯留することで水によって冷却される。本実施形態によれば、ステータ30を水受槽3に接触させることで、ステータ30の熱を水受槽3に移動してステータ30冷却し、ステータ30を安定的に動作させることができる。
【0030】
本実施形態によれば、ステータ30は、水受槽3の底部3eの軸方向他方側の面に固定される。このため、ステータ30と水受槽3の底部3eを軸方向において一体的に構成することができ、モータ10と水受槽3とを全体として小型化できる。
【0031】
本実施形態によれば、ステータ保持部39は、ステータ30の少なくとも一部、および水受槽3の底部3eの少なくとも一部を埋め込み保持する。このため、ステータ30と水受槽3とを単一の部品として扱うことが可能となり、組み立て工程を簡素化できる。
【0032】
(ロータ)
ロータ20は、ステータ30の軸方向他方側D2に位置する。すなわち、ロータ20は、コイル35の軸方向他方側に配置される。ロータ20は、回転シャフト40に固定される。また、上述したようにステータ30は、水受槽3の底部3eに固定される。ドラム4のドラム底部4e、水受槽3の底部3e、ステータ30、およびロータ20は、軸方向一方側D1から軸方向他方側D2に向かってこの順で並ぶ。
【0033】
回転シャフト40は、中心軸線Jを中心として延びる。回転シャフト40は、ロータ20に固定されて、ロータ20とともに中心軸線J周りに回転する。回転シャフト40は、水受槽3の底部3eの中央に設けられる貫通孔3hを通過する。なお、貫通孔3hと回転シャフト40との間には、図示略のシール構造が設けられる。回転シャフト40は、ベアリング5pを介して、ステータ30に回転可能に支持される。また、回転シャフト40は、軸方向一方側D1の端部において、ドラム4のドラム底部4eに固定される。すなわち、ロータ20は、回転シャフト40を介してドラム4のドラム底部4eに固定される。ロータ20のトルクは、回転シャフト40を介してドラム4に伝達される。
【0034】
ロータ20は、バックヨーク21と、複数のマグネット24と、ロータ保持部29と、を有する。ロータ20は、中心軸線Jを中心とする円環状である。バックヨーク21は、マグネット24の軸方向他方側D2に位置する。ロータ20は、バックヨーク21において回転シャフト40に固定される。
【0035】
ロータ保持部29は、バックヨーク21および複数のマグネット24を埋め込むインサート成形によって成形される。ロータ保持部29は、バックヨーク21および複数のマグネット24を保持する。
【0036】
複数のマグネット24は、中心軸線Jを中心とする周方向に沿って並ぶ。マグネット24は、軸方向を磁極方向とする。周方向に並ぶ複数のマグネット24は、N極とS極とを交互に反転して配置される。マグネット24は、ロータ保持部29によって保持される。
【0037】
本実施形態において、マグネット24は、フェライト磁石である。しかしながら、マグネット24は、他の種類の磁石(例えば、ネオジム磁石のような希土類磁石)であってもよい。
【0038】
マグネット24は、異方性磁石であっても等方性磁石であってもよい。マグネット24が、異方性磁石である場合、マグネット24の磁化容易軸を軸方向とすることで、マグネット24の軸方向の磁力を全体的に高めることができる。一方で、マグネット24として等方性磁石を用いる場合には、異方性磁石と比較してロータ20を安価に製造できる。
【0039】
図3は、中心軸線Jと直交する平面に沿うロータ20の断面図である。
複数のマグネット24は、軸方向から見て等脚台形形状である。マグネット24は、軸方向から見て、互いに平行な短辺24aおよび長辺24bと、短辺24aと長辺24bとを繋ぐ一対の周端辺24cと、を有する。
【0040】
短辺24aおよび長辺24bは、中心軸線Jの径方向と直交して延びる。また、短辺24aおよび長辺24bのうち、短辺24aは中心軸線J側に配置され、長辺24bは中心軸線Jから離れた側に配置される。
【0041】
周端辺24cは、中心軸線Jの径方向に沿って延びる。周方向に隣り合うマグネット24の周端辺24c同士は、周方向において互いに対向する。周方向に隣り合うマグネット24の周端辺24c同士は、互いに接触していても、間に隙間が設けられていてもよい。
【0042】
図4は、
図3のIV-IV線に沿う断面図である。
図4に示すように、マグネット24は、軸方向一方側D1を向く対向面24pと、軸方向他方側D2を向く反対面24qと、を有する。対向面24pは、周方向に沿って中央部を頂点として軸方向一方側D1に突出する湾曲面である。一方で、反対面24qは、平坦面である。したがって、マグネット24の軸方向に沿う厚さ寸法は、周方向の中央部から周方向両側に向かって小さくなる。マグネット24の厚さ寸法は、周方向の中央部において、最も大きくなる。
【0043】
なお、本実施形態では、マグネット24の同一の周方向位置における軸方向に沿う厚さは一様である。マグネット24の平面視形状は、上述したように等脚台形形状である。対向面24pは、2つの周端辺24cからマグネット24の周方向中央側に向かうに従って山型に湾曲する。
【0044】
本実施形態によれば、マグネット24は、周方向の中央部の軸方向の厚さ寸法が周方向の両端部の軸方向の厚さ寸法より大きい。このため、本実施形態のマグネット24は、周方向の中央部の磁力が周方向の両端部の磁力より強い。結果的に、マグネット24が軸方向一方側D1(すなわちステータ30側)に形成する磁界の磁束密度の分布を、周方向にマグネット24の中央部をピークとする正弦波に近づけることができ、ロータ20の駆動トルクを安定させることができる。本実施形態によれば、安定した回転を実現できるモータ10および洗濯機1を提供することができる。
【0045】
本実施形態によれば、対向面24pは、軸方向一方側D1(すなわち、ステータ30側)に向かって突出する湾曲面である。このため、対向面24pは、周方向の中央部において最もステータ30に近づき、周方向両側に向かうにしたステータ30から離間する。このため、マグネット24がステータ30に及ぼす磁束密度の分布を周方向の中央部においてより一層高めることができ、ロータ20の駆動トルクの安定性を高めることができる。
【0046】
本実施形態によれば、対向面24pは、ロータ保持部29に埋め込まれる埋込領域24iと、ロータ保持部29から露出する露出領域24sと、を有する。露出領域24sは、対向面24pの周方向の中央部に位置する。埋込領域24iは、露出領域24sの周方向両側であって、対向面24pの周方向の両端部に一致する。
【0047】
本実施形態によれば、マグネット24は、ロータ保持部29から露出する露出領域24sを有する。マグネット24は、露出領域24sにおいてロータ保持部29を成形する金型の内側面に接触する。本実施形態のロータ20のように、複数のマグネット24が周方向に並ぶ場合、マグネット24の位置精度がモータ10の出力性能に大きな影響を与える。本実施形態によれば、マグネット24を、ロータ保持部29を成形する金型の内側面に接触させることで、ロータ保持部29の成形後のマグネット24の位置精度を高めることができる。
【0048】
本実施形態によれば、露出領域24sは、軸方向一方側D1(すなわち、ステータ30側)を向く。マグネット24は、露出領域24sにおける金型との接触により、金型内で径方向に位置決めされる。マグネット24とステータ30との距離の精度は、モータ10の出力性能に特に大きな影響を与える。本実施形態によれば、複数のマグネット24とステータ30との径方向の距離を高精度に一致させることができ、モータ10の出力性能を高めることができる。
【0049】
本実施形態によれば、露出領域24sがステータ30に対向する対向面24pに位置する。このため、露出領域24sとステータ30との間の磁束の流れをロータ保持部29が阻害することを抑制でき、モータ10の出力性能を高めることができる。
【0050】
本実施形態によれば、マグネット24の対向面24pにおいて、露出領域24sの周方向両側には、ロータ保持部29に埋め込まれる埋込領域24iが設けられる。マグネット24には、モータ10の駆動時にステータ30側に大きな力が加わる。ロータ保持部29は、マグネット24の埋込領域24iにおいて、マグネット24の軸方向一方側D1(すなわち、ステータ30側)への移動を抑制する。本実施形態によれば、ロータ保持部29は、マグネット24のステータ30側への移動を確実に抑制する。
【0051】
<変形例>
上述の実施形態では、マグネット24の厚さ寸法を周方向の中央部において周方向の両端部より大きくすることで、マグネット24の周方向の磁力分布を正弦波に近づける構成について説明した。しかしながら、マグネットの磁力分布を調整する方法は、上述の実施形態に限定されることはなく、以下に説明する変形例1、2の構成を採用することもできる。また、ロータ、ステータ、ドラム、および水受槽の位置関係についても、上述の実施形態に限定されることなく、以下に説明する変形例3の構成を採用できる。
なお、以下の変形例の説明において、上述の実施形態と同一態様の構成要素については、同一符号を付し、その説明を省略する。
【0052】
(変形例1)
図5は、上述の実施形態に採用可能なロータ120の断面模式図である。
図5は、上述の実施形態における
図4に対応する。
【0053】
本変形例のロータ120は、上述の実施形態と比較してマグネット124の構成が主に異なる。なお、本変形例のロータ120が搭載されるモータのステータは、上述の実施形態と同様の構成とすることができる。
【0054】
上述の実施形態と同様に、本変形例のロータ120は、バックヨーク21と、複数のマグネット124と、バックヨーク21および複数のマグネット124を埋め込むロータ保持部129と、を有する。上述の実施形態と同様に、複数のマグネット124は、軸方向から見て等脚台形形状である。本変形例のマグネット124の軸方向の厚さ寸法は一様である。
【0055】
本変形例のマグネット124は、周方向の中央部と周方向の両端部とで配向方向が互いに異なる異方性磁石である。より具体的には、マグネット124は、周方向の中央部において軸方向を磁化容易軸方向とし、周方向の両端部において、軸方向に対し傾斜した方向を磁化容易軸方向としている。マグネット124の周方向の両側の磁化容易軸方向は、軸方向に対して傾斜していれば傾斜角度は限定されず、
図5に示すように周方向に沿う方向であってもよい。
【0056】
本変形例によれば、マグネット124は、軸方向に磁化されている。このため、マグネット124は、磁化容易方向を軸方向とする周方向の中央部において磁力が最も強くなり、磁化容易方向を軸方向に対し傾斜させた周方向の両端部において磁力が比較的弱くなる。すなわち、本変形例のマグネット124は、周方向の中央部の磁力が周方向の両端部の磁力より強い。結果的に、マグネット124が軸方向一方側D1(すなわちステータ30側)に形成する磁界の磁束密度の分布を、周方向にマグネット124の中央部をピークとする正弦波に近づけることができ、ロータ120の駆動トルクを安定させることができる。
【0057】
(変形例2)
図6は、上述の実施形態に採用可能なロータ220の断面模式図である。
図6は、上述の実施形態における
図3に対応する。
【0058】
本変形例のロータ220は、上述の実施形態と比較してマグネット224の構成が主に異なる。なお、本変形例のロータ220が搭載されるモータのステータは、上述の実施形態と同様の構成とすることができる。
【0059】
上述の実施形態と同様に、本変形例のロータ220は、バックヨーク(図示略)と、複数のマグネット224と、バックヨークおよび複数のマグネット224を埋め込むロータ保持部229と、を有する。本変形例のマグネット224の軸方向の厚さ寸法は一様である。
【0060】
本変形例の複数のマグネット224は、軸方向から見て円形である。このため、マグネット224の径方向の長さ寸法は、周方向の中央部から周方向両側に向かって小さくなる。マグネット224の径方向の長さ寸法は、周方向の中央部において、最も大きくなる。
【0061】
本実施形態によれば、マグネット224は、周方向の中央部の径方向の長さ寸法が周方向の両端部の径方向の長さ寸法より大きい。このため、本実施形態のマグネット224は、周方向の中央部の磁力が周方向の両端部の磁力より強い。結果的に、マグネット224が軸方向一方側D1(すなわちステータ30側)に形成する磁界の磁束密度の分布を、周方向にマグネット224の中央部をピークとする正弦波に近づけることができ、ロータ220の駆動トルクを安定させることができる。
【0062】
(変形例3)
図7は、上述の実施形態に採用可能なモータ310の断面模式図である。
図7は、上述の実施形態における
図2に対応する。
【0063】
本変形例のモータ310は、上述の実施形態と比較してロータ320およびステータ330の配置が異なる。
【0064】
本変形例のモータ310は、上述の実施形態と同様に、中心軸線Jを中心として回転するロータ320と、ロータ320に連結される回転シャフト340と、中心軸線Jの軸方向に隙間を介してロータ320に対向するステータ330と、ベアリング5pと、を備える。
【0065】
ロータ320は、バックヨーク321と、複数のマグネット324と、ロータ保持部329と、を有する。ロータ320は、中心軸線Jを中心とする円環状である。バックヨーク321は、ロータ320の軸方向一方側D1に位置する。ロータ320は、バックヨーク321において回転シャフト340に固定される。
【0066】
回転シャフト340は、中心軸線Jを中心として延びる。回転シャフト340は、ロータ320に対して軸方向一方側D1および軸方向他方側D2に延びる。回転シャフト340の軸方向一方側D1の端部は、水受槽3の底部3eの中央に設けられる貫通孔3hを通過してドラム4のドラム底部4eに固定に固定される。また、回転シャフト340の軸方向他方側D2の端部は、ベアリング5pを介して、ステータ330に回転可能に支持される。
【0067】
ステータ330は、ロータ320の軸方向他方側D2に位置する。ステータ330は、ステータコア331と、複数のコイル335と、ベアリングホルダ336と、ステータ保持部339と、を有する。ステータ330は、中心軸線Jを中心とする円環状である。ステータ保持部339は、ステータコア331、および複数のコイル335の一部を埋め込むインサート成形によって成形される。ステータ330は、ベアリングホルダ336においてベアリング5pを保持する。
【0068】
ステータコア331は、中心軸線Jを中心とする円板状のコアバック部332と、コアバック部332から軸方向一方側D1に突出するティース部333と、脚部338と、を有する。
【0069】
コアバック部332の中央には、貫通孔331hが設けられる。ステータ330は、貫通孔331hにおいてベアリングホルダ336を保持する。ティース部333には、図示略のインシュレータを介してコイル335が巻き回される。コイル335は、電流が流されることで軸方向に磁極を形成する。すなわち、コイル335は、軸方向に対向するロータ320側に磁極を形成する。
【0070】
脚部338は、コアバック部332の外縁から軸方向一方側D1に延び出る。脚部338は、中心軸線Jを中心とする円筒状である。脚部338は、軸方向一方側D1の端部に位置するフランジ部338aを有する。フランジ部338aには、周方向に沿って並ぶ複数の固定孔338hが設けられる。固定孔338hは、フランジ部338aを軸方向に貫通する。固定孔338hには、固定ネジ34が挿入される。固定ネジ34は、水受槽3の底部3eに設けられるネジ孔3fに挿入される。これにより、ステータコア331は、水受槽3の底部3eの軸方向他方側D2を向く面に固定される。
【0071】
本変形例のモータ310によれば、ロータ320は、コイル335の軸方向一方側D1に配置される。また、ステータ330は、ロータ320を径方向外側から囲み先端部で水受槽3の底部3eに固定される脚部338を有する。
【0072】
アキシャルギャップ型のモータは、マグネット324とコイル335との対向面積を確保し易く、大きなトルクを得やすいという利点がある一方で、アキシャル方向に付与さる磁力に起因して、回転シャフト340の振れが大きくなりやすい。本変形例によれば、ロータ320がコイル335の軸方向一方側D1に配置することで、水受槽3の底部3e側に近づけて配置できる。このため、回転シャフト340の振れを抑制することができる。
【0073】
本実施形態によれば、脚部338は、コイル335およびロータ320を径方向外側から囲む筒状である。したがって、脚部338は、モータ310の各部を覆うカバーとして機能する。これにより、モータ310を囲むカバーを別途用意することなく、モータ310の各部を埃および水分から保護することができる。
【0074】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0075】
例えば、上述の実施形態および変形例において、ロータのマグネットの配列として、ハルバッハ配列を採用してもよい。この場合には、ロータの磁束を、ステータ側に集中させることができ、ロータの駆動トルクをさらに高めることができる。
【0076】
上述の実施形態では、本発明の構成を採用する洗濯機として、ドラム式の洗濯機を例示した。しかしながら、本発明の構成は縦型の洗濯機に採用されていてもよい。
【符号の説明】
【0077】
1…洗濯機、2,20,120,220,320…ロータ、3…水受槽、3e…底部、4…ドラム(回転槽)、10,310…モータ、24,124,224,324…マグネット、30,330…ステータ、35,335…コイル、39…ステータ保持部(保持部)、338…脚部、D1…軸方向一方側、D2…軸方向他方側、J…中心軸線