(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022166513
(43)【公開日】2022-11-02
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20221026BHJP
B24B 1/00 20060101ALI20221026BHJP
B24B 7/04 20060101ALI20221026BHJP
【FI】
H01L21/304 631
B24B1/00 A
B24B7/04 A
B24B7/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021071773
(22)【出願日】2021-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北野 三千矢
【テーマコード(参考)】
3C043
3C049
5F057
【Fターム(参考)】
3C043BA03
3C043BA09
3C043BA14
3C043CC04
3C043DD04
3C043EE04
3C049AA04
3C049AA11
3C049CA01
3C049CA02
3C049CB02
3C049CB10
5F057AA16
5F057CA15
5F057DA11
5F057EB15
5F057GA16
(57)【要約】
【課題】半導体装置の製造において、半導体基板の厚さを均一にすることが好ましい。
【解決手段】半導体基板を備える半導体装置の製造方法であって、半導体基板の第1面を研削し、半導体基板の外周に外周余剰領域を形成する研削段階と、半導体基板の第1面を薬液によりエッチングするスピンエッチング段階とを備え、外周余剰領域よりも内側の半導体基板の領域において、領域の端部における半導体基板の厚さは、領域の中央部における半導体基板の厚さより大きい半導体装置の製造方法を提供する。
【選択図】
図7a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板を備える半導体装置の製造方法であって、
前記半導体基板の第1面を研削し、前記半導体基板の外周に外周余剰領域を形成する研削段階と、
前記半導体基板の第1面を薬液によりエッチングするスピンエッチング段階と
を備え、
前記研削段階の後において、前記外周余剰領域よりも内側の前記半導体基板の領域において、前記領域の端部における前記半導体基板の厚さは、前記領域の中央部における前記半導体基板の厚さより大きい
半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記研削段階の後において、前記半導体基板は、前記領域において、前記外周余剰領域と接するスロープ部を有する
請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記スロープ部の傾斜角度は、1度以下である
請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記スロープ部の高さは、20μm以下である
請求項2または3に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記スロープ部の高さは、前記半導体基板の厚さ以下である
請求項2から4のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記スロープ部の幅は、15mm以上である
請求項2から5のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記スロープ部の幅は、前記半導体基板の半径の10%以上である
請求項2から6のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記半導体基板は、直径300mm以上である
請求項1から7のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記研削段階において、前記半導体基板の半径方向に対して砥石を傾けることにより、前記半導体基板を研削する
請求項1から8のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記研削段階において、前記領域の前記端部から前記領域の前記中央部まで砥石を移動させることにより、前記半導体基板を研削する
請求項1から8のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記砥石の直径は、前記領域の半径よりも大きい
請求項9または10に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記研削段階において、前記半導体基板の円周方向に対して砥石を傾けることにより、前記半導体基板を研削し、
前記砥石の直径は、前記領域の半径の110%以上130%以下である
請求項1から8のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体基板の加工方法において、「ウエーハのデバイス領域に対応する裏面のみを研削しデバイス領域を囲繞する外周余剰領域に対応する裏面の外周にリング状の補強部を形成する」技術が知られている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
特許文献1 特開2007-19461号公報
特許文献2 特開2008-60470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
半導体装置の製造において、半導体基板の厚さを均一にすることが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明の一つの態様においては、半導体基板を備える半導体装置の製造方法を提供する。半導体装置の製造方法は、研削段階を備えてよい。研削段階において、半導体基板の第1面を研削し、半導体基板の外周に外周余剰領域を形成してよい。半導体装置の製造方法は、スピンエッチング段階を備えてよい。スピンエッチング段階において、半導体基板の第1面を薬液によりエッチングしてよい。外周余剰領域よりも内側の半導体基板の領域において、領域の端部における半導体基板の厚さは、領域の中央部における半導体基板の厚さより大きくてよい。
【0005】
研削段階の後において、半導体基板は、領域において、外周余剰領域と接するスロープ部を有してよい。スロープ部の傾斜角度は、1度以下であってよい。
【0006】
スロープ部の高さは、20μm以下であってよい。スロープ部の高さは、半導体基板の厚さ以下であってよい。
【0007】
スロープ部の幅は、15mm以上であってよい。スロープ部の幅は、半導体基板の半径の10%以上であってよい。半導体基板は、直径300mm以上であってよい。
【0008】
研削段階において、半導体基板の半径方向に対して砥石の回転軸を傾けることにより、半導体基板を研削してよい。
【0009】
研削段階において、領域の端部から領域の中央部まで砥石を移動させることにより、半導体基板を研削してよい。砥石の直径は、領域の半径よりも大きくてよい。研削段階において、半導体基板の円周方向に対して砥石を傾けることにより、半導体基板を研削してよい。砥石の直径は、領域の半径の110%以上130%以下であってよい。
【0010】
なお、上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】半導体装置100の製造方法の一例を説明する図である。
【
図3a】研削段階S101において、研削途中の半導体装置100を説明する図である。
【
図3b】研削段階S101において、研削後の半導体装置100を説明する図である。
【
図4a】スピンエッチング段階S102において、処理途中の半導体装置100を説明する図である。
【
図4b】スピンエッチング段階S102において、処理後の半導体装置100を説明する図である。
【
図5】半導体基板10を低速回転させた場合における、半導体基板10の面内のエッチング量を示す図である。
【
図6】研削段階S101後およびスピンエッチング段階S102後における半導体基板10の厚さを示す図である。
【
図7a】実施例における、研削段階S101途中の半導体装置100を説明する図である。
【
図7b】実施例における、研削段階S101後の半導体装置100を説明する図である。
【
図8a】スピンエッチング段階S102において、処理途中の半導体装置100を説明する図である。
【
図8b】スピンエッチング段階S102において、処理後の半導体装置100を説明する図である。
【
図9a】他の例における、研削段階S101途中の半導体装置100を説明する図である。
【
図9b】他の例における、研削段階S101途中の半導体装置100を説明する図である。
【
図9c】他の例における、研削段階S101後の半導体装置100を説明する図である。
【
図10】
図9cにおける領域Aを詳細に説明する図である。
【
図11a】他の例における、研削段階S101途中の半導体装置100を説明する図である。
【
図11b】他の例における、研削段階S101後の半導体装置100を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、又、本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。また、1つの図面において、同一の機能、構成を有する要素については、代表して符合を付し、その他については符合を省略する場合がある。
【0013】
本明細書においては半導体基板の深さ方向と平行な方向における一方の側を「上」、他方の側を「下」と称する。基板、層またはその他の部材の2つの主面のうち、一方の面を上面、他方の面を下面と称する。「上」、「下」の方向は、重力方向または半導体モジュールの実装時における方向に限定されない。
【0014】
本明細書では、X軸、Y軸およびZ軸の直交座標軸を用いて技術的事項を説明する場合がある。直交座標軸は、構成要素の相対位置を特定するに過ぎず、特定の方向を限定するものではない。例えば、Z軸は地面に対する高さ方向を限定して示すものではない。なお、+Z軸方向と-Z軸方向とは互いに逆向きの方向である。正負を記載せず、Z軸方向と記載した場合、+Z軸および-Z軸に平行な方向を意味する。本明細書では、半導体基板の上面および下面に平行な直交軸をX軸およびY軸とする。また、半導体基板の上面および下面と垂直な軸をZ軸とする。本明細書では、Z軸の方向を深さ方向と称する場合がある。また、本明細書では、X軸およびY軸を含めて、半導体基板の上面および下面に平行な方向を、水平方向と称する場合がある。
【0015】
本明細書において「同一」または「等しい」のように称した場合、製造ばらつき等に起因する誤差を有する場合も含んでよい。当該誤差は、例えば10%以内である。
【0016】
図1は、半導体装置100の製造方法の一例を説明する図である。半導体装置100の製造方法は、研削段階S101およびスピンエッチング段階S102を備える。
【0017】
図2は、半導体装置100の一例を示す図である。半導体装置100は、一例として、インバータ等の電力変換装置として機能する。半導体装置100は、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)、FWD(Free Wheel Diode)等のダイオードおよびこれらを組み合わせたRC(Reverse Conducting)-IGBT、並びにMOSトランジスタ等を備えてもよい。これらの例に限定されなくてよい。
【0018】
半導体装置100は、半導体基板10を備える。本例における半導体基板10は、上面視における形状がほぼ円形のウエーハである。本明細書では、半導体基板10を研削する工程以外の工程を省略している。半導体装置100の製造方法は、半導体基板10の所定の領域に不純物を注入する工程、半導体基板10をアニールする工程、半導体基板10の表面に絶縁膜、電極または配線等を形成する工程を含んでよい。これらの工程により、半導体基板10にトランジスタ等の半導体素子が形成される。半導体基板10は、半導体材料で形成された基板である。一例として半導体基板10はシリコン基板であるが、半導体基板10の材料はシリコンに限定されない。半導体基板10の直径D1は、一例として200±5mmまたは300mm±5mmが良く使われる。ただしこの値に制限されるものではない。本例では、半導体基板10の直径D1は、300mm以上である。半導体基板10の直径D1が300mm以上であるウエーハを大口径ウエーハとする。ただし、半導体基板10の直径D1は、200mm±5mmであってもよい。また、半導体基板10は、第1面11および第2面12を有する。
【0019】
半導体基板10の第2面12は、IGBTやMOSトランジスタ等のゲート構造が形成される面であってよい。ゲート構造は、例えばゲート電極、ゲート絶縁膜、ソース領域、エミッタ領域、および、チャネル領域の少なくとも一つを含む構造である。研削段階S101において、第2面12にはゲート構造が形成された状態であってよく、まだ形成されていない状態であってもよい。半導体基板10の第2面12は、いわゆるデバイス面であってよい。
【0020】
半導体基板10の第1面11は、半導体基板10の第2面12と逆側の面であってよい。本例において、半導体基板10の第1面11は、研削段階S101およびスピンエッチング段階S102における処理面である。まず説明のため、研削段階S101の比較例およびスピンエッチング段階S102の比較例を説明する。
【0021】
図3aおよび
図3bは、研削段階S101の比較例を説明する図である。
図3aは、研削段階S101において、研削途中の半導体装置100を説明する図である。
図3bは、研削段階S101において、研削後の半導体装置100を説明する図である。
【0022】
研削段階S101において、半導体基板10の第1面11を研削する。研削段階S101において、半導体基板10は、テーブル112に支持される。
図3aにおいて、半導体基板10の第2面12は、テーブル112に支持される。テーブル112は、チャックテーブルであってよい。なお、半導体基板10の第2面12とテーブル112の間には、保護テープが設けられてもよい。半導体基板10の第2面12とテーブル112の間に保護テープを設けることにより、半導体基板10の第2面12を保護することができる。保護テープは、例えば感圧テープやUVテープ等の粘着性のあるテープが良く使われるが、その他にも、レジストなどの有機塗布膜、静電気力による吸着シート、または接着剤を塗布した支持円板なども使用可能である。半導体基板10の第2面12とテーブル112の間に保護テープを設ける場合、研削段階S101の後かスピンエッチング段階S102の後に保護テープ剥離段階を設けても良い。
【0023】
研削段階S101において、半導体基板10の第1面11は砥石110によって研削される。研削段階S101は、例えば、バックグラインダ(BG)等の研削装置を用いて実施される。また、研削段階S101において、砥石110を回転させる。砥石110の1分毎の回転数(rotations per minute)は、一例として、2000~4000rpmである。砥石110は、回転しながらZ軸に平行に移動することで研削してよい。砥石110は、研削する際に半径方向にも移動してもよい。なお、研削段階S101において、半導体基板10を回転させながら研削してよい。
【0024】
図3bに示す通り、比較例に係る研削段階S101の後、半導体基板10は、一定の厚さT1で加工される。厚さT1は、10%以上の誤差があっても一定としてよい。本明細書において、厚さとは、Z軸方向における上面の高さと下面の高さの差である。
図3aにおいて、半導体基板10の厚さT1は、第1面11の高さと第2面12の高さの差である。本明細書において、高さとは、一定の基準からの高さである。各図において、基準とは、半導体装置100の各構成要素の内、Z軸方向において最も下側に設けられている部分であってよい。
図3bにおいて、基準は、例えば、半導体基板10の第2面12である。
【0025】
本例において、研削段階S101では、半導体基板10の外周に外周余剰領域52を形成する。つまり、研削段階S101において、半導体基板10の外周に外周余剰領域52が残るように外周余剰領域52の内側を研削する。外周余剰領域52を外周に残すことにより、半導体基板10にリング状の補強構造を残すことができる。したがって、研削段階S101の後において、半導体基板10の反りを抑制することができる。また、研削段階S101の後工程において、半導体基板10の取り扱いが容易となる。外周余剰領域52よりも内側の半導体基板10の領域を領域54とする。外周余剰領域52の形状は、
図10において詳細に説明する。
【0026】
本例において、外周余剰領域52を除く半導体基板10の厚さをT1とする。T1は、領域54における半導体基板10の厚さであってよい。また、本例において、外周余剰領域52における半導体基板10の厚さをT2とする。T2は、外周余剰領域52における半導体基板10の最大厚さであってよい。研削段階S101における研削深さは、T2とT1の差であってよい。研削段階S101における研削深さは、400μm以上であってよい。T2は厚いほど半導体基板10の強度が増すので、T2は可能な限り厚い方がよく、T1は半導体装置の耐圧によって必要な厚さに設定する必要があるので、T1は一例として50~300μmである。また、T2は700μm前後であってよい。したがって、研削段階S101における研削深さは、400μm以上となる。
【0027】
図4aおよび
図4bは、スピンエッチング段階S102の比較例を説明する図である。
図4aは、スピンエッチング段階S102において、処理途中の半導体装置100を説明する図である。
図4bは、スピンエッチング段階S102において、処理後の半導体装置100を説明する図である。
【0028】
スピンエッチング段階S102において、半導体基板10の第1面11を薬液によりエッチングする。スピンエッチング段階S102において用いられる薬液を薬液Aとする。薬液Aは、半導体基板10をエッチングする薬液であってよい。本例において、薬液Aは、シリコンエッチング液である。シリコンエッチング液とは、例えば、フッ硝酸またはフッ硝酸を含む混合液である。シリコンエッチング液は、市販の薬液であってよい。
図4aにおいて、装置120は、半導体基板10の第1面11に薬液Aを吐出してよい。装置120は、薬液Aを吐出するノズルを有してよい。
【0029】
研削段階S101の実施後に、半導体基板10の第1面11には厚さ数μm~数十μmの加工歪み層が残留することが知られている。加工歪み層の厚さは研削段階S101で使用する砥石の砥粒径に依存する。砥粒径が大きい荒い砥石を用いた方が研削段階S101のスループットが向上するが、加工歪層の厚みが増してしまう。当該加工歪み層は、ウエーハ割れの原因となり得る。スピンエッチング段階S102を実施することにより、加工歪み層を除去することができる。したがって、ウエーハ割れを抑制することができる。
図4bに示す通り、スピンエッチング段階S102の後、半導体基板10は、厚さT3で加工される。
【0030】
スピンエッチング段階S102において、半導体基板10を回転した状態で薬液Aによりエッチングしてよい。半導体基板10の1分毎の回転数は、一例として500rpm以上から1500rpm以下の範囲である。半導体基板10の回転数は高い方がエッチングの均一性がよいが、1500rpmを超えるとウエーハの破損が起こりやすい。スピンエッチング段階S102は、枚葉式スピンエッチング方式により実施されてよい。
【0031】
加工歪み層を除去する前は、ウエーハ割れが起こりやすい。そのため、スピンエッチング段階S102において、半導体基板10を高速回転させると、ウエーハ割れが生じやすい。この問題は、直径D1が300mm以上である大口径ウエーハで顕著である。したがって、大口径ウエーハの場合、スピンエッチング段階S102において、半導体基板10の回転数を下げることが好ましい。
【0032】
図5は、半導体基板10を低速回転させた場合における、半導体基板10の面内のエッチング量を示す図である。
図5において、半導体基板10を低速回転させた場合の結果を実線で示している。横軸は、半導体基板10の中心からの相対位置を示し、縦軸は当該相対位置におけるエッチング量を示す。本例において、半導体基板10の直径D1は、およそ300mmである。したがって、半導体基板10の中心からの相対位置が144mm、-144mmの箇所は、半導体基板10の外周付近である。
図5における半導体基板10の1分毎の回転数は、一例として500rpmである。
図5に示す通り、半導体基板10の外周側において、半導体基板10の中心側と比べ、エッチング量が上がる傾向が見られる。
【0033】
図6は、研削段階S101後およびスピンエッチング段階S102後における半導体基板10の厚さを示す図である。横軸は、半導体基板10の中心からの相対位置を示し、縦軸は当該相対位置における半導体基板10の厚さを示す。
図6においても、半導体基板10の1分毎の回転数は、500rpmである。なお、研削段階S101後における半導体基板10の厚さとは、
図3bの厚さT1であってよい。スピンエッチング段階S102後における半導体基板10の厚さとは、
図4bの厚さT3であってよい。
【0034】
研削段階S101後に比べ、スピンエッチング段階S102後では、半導体基板10の外周側で半導体基板10の厚さが薄くなってしまう。これは、
図5で説明した通り、半導体基板10を低速回転させた場合、半導体基板10の外周側では、半導体基板10の中心側と比べ、エッチング量が上がるためである。これは低速回転では薬液にかかる遠心力が弱く、外周余剰領域52を超えられずに薬液が半導体基板10の外周側に滞留してしまうためと考えている。したがって、半導体基板10の面内における均一性が悪化してしまう。
【0035】
図7aおよび
図7bは、研削段階S101の実施例を説明する図である。
図7aは、実施例における、研削段階S101途中の半導体装置100を説明する図である。
図7bは、実施例における、研削段階S101後の半導体装置100を説明する図である。
【0036】
図7bにおいて、領域54のXY面における中心を含む部分を中央部14とする。また、領域54のX軸、Y軸における端の部分を端部16とする。
図7bにおいて、外周余剰領域52よりも内側の半導体基板の領域54において、領域54の端部16における半導体基板10の厚さは、領域54の中央部14における半導体基板10の厚さより大きい。本例において、半導体基板10の厚さは、領域54において、端部16から中央部14まで、単調に減少する。つまり、研削段階S101後において、外周側における半導体基板10の厚さを、中心側における半導体基板10の厚さより厚くしている。研削段階S101において、半導体基板10をこのように加工することにより、スピンエッチング段階S102において半導体基板10の厚さを均一にすることができる。また、スピンエッチング段階S102において低速回転で半導体基板10を処理することができ、ウエーハの破損を防止することができる。
【0037】
図7bにおいて、半導体基板10は、領域54において、スロープ部56を有してよい。スロープ部56は、半導体基板10の半径方向において高さが変化する部分であってよい。スロープ部56の高さとは、半導体基板10の第1面11が最小厚さとなる部分を基準とした高さであってよい。つまり、スロープ部56の高さとは、中心側における半導体基板10の第1面11の高さを基準とした高さであってよい。本例において、半導体基板10の半径方向とは、X軸方向である。半導体基板10の半径方向は、半導体基板10の円周方向と垂直であってよい。本例において、スロープ部56の高さは、半導体基板10の中心側に向かうにつれて低くなっている。スロープ部56は、外周余剰領域52と接していてよい。スロープ部56を形成することにより、領域54の端部16における半導体基板10の厚さを領域54の中央部14における半導体基板10の厚さより厚くすることができる。本例において領域54は、スロープ部56のみ有している。つまり、領域54の全体がスロープ部56であってよい。
【0038】
スロープ部56を形成するために、
図7aにおいて、半導体基板10の半径方向に対して砥石110の回転軸を傾けることにより、半導体基板10を研削する。
図7aの例では、砥石110の下面は、X軸方向に傾きを有するように配置される。つまり、砥石110の回転軸を前傾させる方向(Y軸方向)と垂直な方向(X軸方向)に対して砥石110の回転軸を傾かせる。砥石110の回転軸を前傾させる方向(Y軸方向)については、
図12を用いて後述する。
図7aでは、砥石110の回転軸をZ軸方向に対して角度θ1傾けている。半導体基板10の半径方向に対して砥石110の回転軸を傾けて半導体基板10を研削することにより、スロープ部56を形成することができる。
【0039】
砥石110の直径D3は、領域54の半径(領域54の直径D4の半分)よりも大きくてよい。ただし、直径D3が領域54の半径より大きくなりすぎると領域54の中心の周辺に同心円状の凹み部が形成されてしまう。直径D3が領域54の半径の110%以下程度とすることで、凹み量を高さH5の1/10程度に抑えることができるのでデバイス特性などに問題は起こらない。したがって、直径D3は領域54の半径以上、且つ、半径の110%以下程度とするのがよい。
【0040】
図7bにおいて、スロープ部56の傾斜角度をθ2とする。スロープ部56の傾斜角度θ2とは、半導体基板10の半径方向に対する傾斜角度である。傾斜角度θ2を決定するには、例えば
図5のようなエッチング量の直径方向の分布を参考にすればよい。
図5によれば、半導体基板10の外周側から30mm付近までの領域においてエッチング量は増加する傾向があり、特に半導体基板10の外周側から15mm付近までの領域においてエッチング量の増加が大きい。
図5に具体的な数値は示していないが、エッチング量の最大値と最小値の差は50μm以下である。 これらから、スロープ部56の傾斜角度θ2は、1度以下であってよい。スロープ部56の傾斜角度θ2は、0.1度以下であってもよい。スロープ部56の傾斜角度θ2を1度以下とすることにより、領域54の広範囲にわたってスロープ部56を形成することができる。
【0041】
また、スロープ部56の高さをH5とする。スロープ部56の高さH5は、スロープ部56の最大高さであってよい。スロープ部56の高さH5は、スロープ部56の内、外周余剰領域52と接する部分の高さであってよい。スロープ部56の高さH5は
図5のエッチング量の最大値と最小値の差から決定して良い。エッチング量の最大値と最小値の差は50μm以下であることを述べたが、本願発明者らが調査したところでは装置の調整によっては20μm以下に調整可能であった。 よって、スロープ部56の高さH5は、50μm以下であってよい。スロープ部56の高さH5は、20μm以下であってよい。スロープ部56の高さH5は、半導体基板10の厚さ以下であってよい。例えば、スロープ部56の高さH5は、外周余剰領域52における半導体基板10の厚さT2以下である。
【0042】
また、スロープ部の幅をD5とする。
図7bにおいて、スロープ部56の幅D5とは、半導体基板10の円周方向におけるスロープ部56の半径方向の幅である。スロープ部56の幅D5は、15mm以上であってよい。スロープ部56の幅D5は、20mm以上であってよい。スロープ部56の幅D5は、30mm以上であってよい。スロープ部56の幅D5は、100mm以上であってよい。スロープ部56の幅D5は、半導体基板10の半径(半導体基板10の直径D1の半分)の10%以上であってよい。スロープ部56の高さH5およびスロープ部56の幅D5をこのような値にすることにより、スロープ部56の傾斜角度を1度以下とすることができる。
【0043】
図8aおよび
図8bは、スピンエッチング段階S102の実施例を説明する図である。
図8aは、スピンエッチング段階S102において、処理途中の半導体装置100を説明する図である。
図8bは、スピンエッチング段階S102において、処理後の半導体装置100を説明する図である。なお、
図8aにおけるスピンエッチング処理は、
図4aにおけるスピンエッチング処理と同一であってよい。
【0044】
図8bに示す通り、研削段階S101において外周側における半導体基板10の厚さを、中心側における半導体基板10の厚さより厚くしているため、スピンエッチング段階S102において半導体基板10の厚さT3を均一にすることができる。また、スピンエッチング段階S102において低速回転で半導体基板10を処理することができ、ウエーハの破損を防止することができる。
【0045】
図9a、
図9bおよび
図9cは、研削段階S101の他の例を説明する図である。
図9aは、半導体基板10の研削を開始するときの状態を示す。
図9bは、半導体基板10の研削を終了したときの状態を示す。
図9cは、研削段階S101後の半導体装置100を説明する図である。
【0046】
図9aおよび
図9bに示すように、研削段階S101においては、領域54の端部16から領域54の中央部14の側へ砥石110を移動させながら、半導体基板10を研削する。本例において、半導体基板10の円周方向において半導体基板10の中心側へ砥石110を移動させている。砥石110を移動させて半導体基板10を研削することにより、スロープ部56を半導体基板10に形成することができる。
【0047】
また、本例において、砥石110が中心側に向かうにつれて、砥石110の位置を低くしている。
図9bにおけるテーブル112からの砥石110の高さH2は、
図9aにおけるテーブル112からの砥石110の高さH1より低い。このように砥石110を移動させることにより、スロープ部56を容易に形成することができる。
【0048】
また、砥石110の直径D3は、領域54の半径(領域54の直径D4の半分)以上である必要があるが、大きくなりすぎると研削痕の形成が問題となるため領域54の半径の110%程度未満とするのがよい。砥石110の直径D3は、一例として、領域54の半径の100%以上、110%未満であってよい。
【0049】
なお、
図9cに示す通り、領域54は、スロープ部56に加えて平坦部58を有してよい。平坦部58は、半導体基板10の厚さT4が一定の領域であってよい。平坦部58は、スロープ部56に囲まれていてよい。平坦部58における半導体基板10の厚さT4は、中央部14における半導体基板10の厚さであってよい。
【0050】
また、
図7bと同様にスロープ部56の傾斜角度θ2は、1度以下であってよい。
図7bと同様にスロープ部56の高さH5は、20μm以下であってよい。
図7bと同様にスロープ部56の幅D5は、15mm以上であってよい。
【0051】
図10は、
図9cにおける領域Aを詳細に説明する図である。
図9cにおいて、領域Aは一点鎖線で囲まれる領域である。
図10において、半導体基板10は、外周余剰領域52、スロープ部56、平坦部58を有する。
図10では、
図9cで省略されていた、外周余剰領域52について詳細に示している。
図7bおよび後述する
図11bについても、外周余剰領域52が
図10と同じ構造であってよい。なお、
図10は研削段階S101において、2軸式研削装置を用いて加工した一例であり、別方式の研削装置を用いて研削段階S101を実施した場合においては同様の形状とならない。2軸式研削装置とは、砥石110の回転軸を2つ備える装置であってよく、研削段階S101で、最初、砥粒径が大きい荒い砥石110を取り付けた回転軸を用いて研削を行い、その後、続けて砥粒径が小さい砥石110を取り付けた回転軸を用いて研削を行ってよい。砥粒径が大きい砥石を用いることで、研削段階S101のスループットが向上するが、加工歪層の厚みが増してしまう。砥粒径が小さい砥石110を用いることで、研削段階S101のスループットが低下するが、加工歪層の厚みを減らすことができる。本例において、外周余剰領域52の形状を詳細に説明する。
図7bにおける外周余剰領域52も同様の形状を有していてもよい。なお、
図10の半導体基板10の形状・寸法は、
図9cの半導体基板10の形状・寸法と必ずしも一致しない。
【0052】
外周余剰領域52は、スロープ部64を有してよい。本例において、外周余剰領域52は、第1部分62、スロープ部64および第2部分66を有してよい。第1部分62および第2部分66は、半導体基板10の半径方向において厚さが一定の部分であってよい。スロープ部64は、半導体基板10の半径方向において厚さが変化する部分であってよい。本例において、半径方向とは、X軸方向である。
【0053】
第1部分62の幅をD6とする。
図10において、第1部分62の幅D6とは、半導体基板10の円周方向における第1部分62の半径方向の幅である。第1部分62の幅D6は、1mm以上5mm以下であってよい。また、第1部分62における半導体基板10の厚さは、外周余剰領域52における半導体基板10の厚さT2としてよい。厚さT2は、一例として、700μm以上800μm以下であってよい。
【0054】
図10において、スロープ部64の傾斜角度をθ3とする。スロープ部64の傾斜角度θ3は、30度以上であってよい。スロープ部64の傾斜角度θ3は45度以下であってよい。つまり、外周余剰領域52のスロープ部64の傾斜角度θ3は、領域54のスロープ部56の傾斜角度θ2より大きくてよい。外周余剰領域52のスロープ部64の傾斜角度θ3は、領域54のスロープ部56の傾斜角度θ2の30倍以上であってよい。したがって、外周余剰領域52のスロープ部64と領域54のスロープ部56を判別することができる。なお、外周余剰領域52のスロープ部64の傾斜角度θ3は、30度以上45度以下の例に限定されない。外周余剰領域52のスロープ部64の傾斜角度θ3は、80度以上であってもよい。つまり、外周余剰領域52のスロープ部64は、第2部分66に対してほぼ垂直であってもよい。
【0055】
第2部分66の幅をD7とする。
図10において、第2部分66の幅D7とは、半導体基板10の円周方向における第2部分66の半径方向の幅である。第2部分66の幅D7は、0.1mm以上1.0mm以下であってよい。
【0056】
また、第2部分66における半導体基板10の厚さをT6とする。第2部分66における半導体基板10の厚さT6と平坦部58における半導体基板10の厚さT4の差を厚さT7とする。厚さT7は、30μm以上であってよい。厚さT7は、80μm以下であってよい。なお、平坦部58における半導体基板10の厚さT4は、60μm以上であってよい。平坦部58における半導体基板10の厚さT4は、350μm以下であってよい。
【0057】
図11aおよび
図11bは、研削段階S101の他の例を説明する図である。
図11aは、半導体基板10の研削を開始するときの状態を示す。
図11bは、研削段階S101後の半導体装置100を説明する図である。
【0058】
本例では、
図11aに示す状態で、砥石110の回転軸を前傾させて、第1面11を研削する。砥石110の回転軸を前傾させるとは、半導体基板10の円周方向に対して、砥石110の下面を傾けることを指す。本例において、半導体基板10の円周方向とは、Y軸方向である。本例の砥石110の下面は、YZ面において傾きを有している。本例では、砥石110の下面は、Y軸方向に対して傾き(前傾角度)を有するように配置される。前傾角度については、
図12において後述する。砥石110の回転軸を前傾させて、第1面11を研削することにより、半導体基板10に、外周余剰領域52と接するスロープ部を形成することができる。
【0059】
図11bにおいて、領域54のXY面における中心を含む部分を中央部14とする。また、領域54のX軸、Y軸における端の部分を端部16とする。本例では、中央部14を通る領域54のXZ面において、第1面11が中央部14と端部16の間で下に凸の放物線状の形状となってよい。本例において、中央部14での半導体基板10の厚さをT10とする。また、端部16での半導体基板10の厚さをT11とする。また、中央部14と端部16の間において、半導体基板10の厚さが最も薄いところを薄部15とし、薄部15の半導体基板10厚さをT12とする。端部16と薄部15の間の第1面11をスロープ部68とし、スロープ部68の高さをH11とする。半導体基板10の厚さは、端部16から薄部15まで、単調に減少する。つまり、スロープ部68の高さH11は、端部16での高さであってよい。高さH11は、厚さT11と厚さT12の差であってよい。また、中央部14と薄部15間の第1面11をスロープ部69とし、スロープ部69の高さをH10とする。半導体基板10の厚さは、中央部14から薄部15まで、単調に減少する。つまり、スロープ部69の高さH10は、中央部14での高さであってよい。スロープ部69の高さH10は、厚さT10と厚さT12の差であってよい。スロープ部68およびスロープ部69は半導体基板10の半径方向において高さが変化する部分であってよい。
【0060】
図11bにおいて、スロープ部68の傾斜角度をθ4とする。スロープ部68の傾斜角度θ4は、薄部15と端部16とを直線でつないだ際の基準面に対する角度であってよい。基準面は、例えば、半導体基板10の第2面12と平行な面である。また、スロープ部68の幅をD8とする。スロープ部68の幅D8は、端部16と薄部15の間の幅であってよい。
【0061】
本例において、
図11bに示す通り中央部14が凸形状となってしまうが、発明者の実験によって、砥石110の直径D3を領域54の半径(領域54の直径D4の半分)よりも大きくすることで、高さH11に比べ高さH10を小さくすることが可能であることが分かった。一例として、砥石110の直径D3を領域54の半径の110%以上とすることで、H10をH11の20%程度以下とすることができた。つまり、砥石110の直径D3を領域54の半径の110%以上とすることで、T10とT11とがT12より大きく、且つ、T10をT11より小さくなるように、T12≦T10<T11とできることが分かった。
【0062】
また、直径D3を領域54の半径より大きくしすぎると、研削面の深い研削痕が増えてしまうことが分かった。一例として、本例において砥石110の直径D3を領域54の半径の130%以下とすることで、研削段階S101において研削面の深い研削痕が増えるのを抑えることができた。つまり、砥石110の直径D3を領域54の半径(領域54の直径D4の半分)の110%以上130%以下とすることで、研削面の深い研削痕が増えるのを抑えながら、所望の高さのスロープ部68を形成し、且つ、スロープ部69の高さをスロープ部68の高さに比べ小さくできる。そして、研削段階S101において、半導体基板10をこのように加工することにより、スピンエッチング段階S102において半導体基板10の厚さを均一にすることができる。また、スピンエッチング段階S102において低速回転で半導体基板10を処理することができ、ウエーハの破損を防止することができる。
【0063】
また、
図7bと同様にスロープ部68の傾斜角度θ4は、1度以下であってよい。
図7bと同様にスロープ部68の高さH11は、20μm以下であってよい。
図7bと同様にスロープ部68の幅D8は、15mm以上であってよい。
【0064】
図12は、前傾角度θ5を説明する図である。
図12では、YZ面における研削段階S101を示している。砥石110の下面は、Y軸方向に対して前傾角度θ5を有するように配置される。
【0065】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0066】
10・・半導体基板、11・・第1面、12・・第2面、14・・中央部、15・・薄部、16・・端部、52・・外周余剰領域、54・・領域、56・・スロープ部、58・・平坦部、62・・第1部分、64・・スロープ部、66・・第2部分、68・・スロープ部、69・・スロープ部、100・・半導体装置、110・・砥石、112・・テーブル、120・・装置