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特開2022-166521エンボス形成方法、製袋方法、および、製袋装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022166521
(43)【公開日】2022-11-02
(54)【発明の名称】エンボス形成方法、製袋方法、および、製袋装置
(51)【国際特許分類】
   B31B 70/88 20170101AFI20221026BHJP
   B65B 51/10 20060101ALI20221026BHJP
【FI】
B31B70/88
B65B51/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021071781
(22)【出願日】2021-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】岡田 浩人
(72)【発明者】
【氏名】小林 浩
【テーマコード(参考)】
3E075
3E094
【Fターム(参考)】
3E075AA02
3E075BA52
3E075BA64
3E075CA01
3E075CA02
3E075DA14
3E075DB03
3E075DB12
3E075DD12
3E075GA01
3E075GA02
3E094AA12
3E094CA05
3E094FA14
3E094HA02
(57)【要約】
【課題】エンボスを効率的に形成する。
【解決手段】第1フィルム7および第2フィルム8を重ね合わせて搬送しながらヒートシールして横シール部17cを形成するシール工程と、横シール部17cを第1金型18aおよび第2金型18bで挟んで冷却しながら横シール部17cにエンボスを形成するエンボス形成工程とを備え、第1金型18aは、横シール部17cにおいて、第1フィルム7を押圧する押圧面21にエンボスを形成するための凹部21aを備え、第2金型18bは、押圧面に対向する受け面がフッ素樹脂含浸ガラスクロスシート23で被覆されて構成されている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重ね合わされた状態で搬送される第1フィルムおよび第2フィルムをヒートシールしてシール部を形成するシール工程と、
前記シール部を第1金型および第2金型で挟んで冷却しながら前記シール部にエンボスを形成するエンボス形成工程とを備え、
前記第1金型は、前記シール部において、前記第1フィルムを押圧する押圧面に前記エンボスを形成するためのエンボス形成部を備え、前記第2金型は、前記押圧面に対向する受け面が耐熱性樹脂含浸無機繊維クロスで被覆されて構成されている
エンボス形成方法。
【請求項2】
前記エンボス形成部は、前記押圧面に対する凹部で構成されている
請求項1に記載のエンボス形成方法。
【請求項3】
第1フィルムおよび第2フィルムを重ね合わせて包装袋を製造する製袋方法であって、
重ね合わされた状態で搬送される前記第1フィルムおよび前記第2フィルムをヒートシールして搬送方向に延びる縦シール部を形成する縦シール工程と、
前記縦シール部を冷却する縦シール冷却工程と、
重ね合わされた状態で搬送される前記第1フィルムおよび前記第2フィルムをヒートシールして前記搬送方向と交差する方向に延びる横シール部を形成する横シール工程と、
前記横シール部を冷却する横シール冷却工程とを備え、
前記縦シール冷却工程および前記横シール冷却工程の少なくとも1つのシール冷却工程では、前記シール冷却工程の直前のシール工程で形成されたシール部を第1金型および第2金型で挟み込んで冷却しながら前記シール部にエンボスを形成し、
前記第1金型は、前記シール部において、前記第1フィルムを押圧する押圧面に前記エンボスを形成するためのエンボス形成部を備え、前記第2金型は、前記押圧面に対向する受け面が耐熱性樹脂含浸無機繊維クロスで被覆されて構成されている
製袋方法。
【請求項4】
前記シール工程は、前記横シール工程であり、
前記シール冷却工程は、前記横シール冷却工程である
請求項3に記載の製袋方法。
【請求項5】
前記エンボス形成部は、前記押圧面に対する凹部で構成されている
請求項3または4に記載の製袋方法。
【請求項6】
重ね合わされた状態で搬送される第1フィルムおよび第2フィルムをヒートシールして搬送方向に延びる縦シール部を形成する縦シール機構と、
前記縦シール部を冷却する縦シール冷却機構と、
重ね合わされた状態で搬送される前記第1フィルムおよび前記第2フィルムをヒートシールして前記搬送方向と交差する方向に延びる横シール部を形成する横シール機構と、
前記横シール部を冷却する横シール冷却機構とを備え、
前記縦シール冷却機構および前記横シール冷却機構の少なくとも1つのシール冷却機構は、前記シール冷却機構の直前のシール機構で形成されたシール部を第1金型および第2金型で挟み込んで冷却しながら前記シール部にエンボスを形成し、
前記第1金型は、前記シール部において、前記第1フィルムを押圧する押圧面に前記エンボスを形成するためのエンボス形成部を備え、前記第2金型は、前記押圧面に対向する受け面が耐熱性樹脂含浸無機繊維クロスで被覆されて構成されている
製袋装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムをヒートシールしたシール部にエンボスを形成するエンボス形成方法、製袋方法、および、製袋装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、フィルムを搬送し、袋の外周部となる位置をヒートシールして包装袋を製造する製袋方法が記載されている。包装袋は、いわゆるパウチであって、外周部に、2枚のフィルムの縁部がヒートシールによって接合されたシール部を備えている。シール部には、凸部で構成されたエンボスが設けられている。エンボスは、シール部に対して、例えば利用者に対する視覚的効果、触覚的効果などを付与するために設けられている。
【0003】
このようなエンボスは、シール部を設けるシール工程に次いで行われるシール冷却工程において形成される。シール冷却工程では、第1金型および第2金型でシール部を挟み込んで冷却する。第1金型は、重ね合わされたフィルムの厚さ方向における一方に配置され、第2金型は、重ね合わされたフィルムの厚さ方向における他方に配置され、受け台が構成されている。第1金型および第2金型は、冷却ユニットによって低温状態に維持されている。第1金型は、押圧面に、シール部に凸部を構成するための凹部を備えている。第2金型は、受け台として、第1金型からの押圧力を受けるゴム台を備えている。
【0004】
シール冷却工程では、シール工程での残留熱によって柔らかさが残存しているシール部が第1金型の押圧面によって第2金型のゴム台に対して押圧される。すると、シール部は、押圧面の凹部とその周囲との圧力差によって、シール部が凹部の中に撓み、局所的にエンボスを構成する凸部が形成されるとともに、冷却硬化される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-132212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、第1金型と対をなす第2金型は、受け台がゴム台で構成されている。ゴム台は、金属製の受け台と比べて熱伝導性が低い。ゴム台が受け台に本来要求される冷却機能を大きく低下させているため、エンボス形成のさらなる効率化が困難である。また、シール部が厚い場合や、フィルムに軟化温度が高い材料を採用している場合などには、冷却時間を長くするため搬送速度を低速化することが必要となり、生産効率の低下を招いてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためのエンボス形成方法は、重ね合わされた状態で搬送される第1フィルムおよび第2フィルムをヒートシールしてシール部を形成するシール工程と、前記シール部を第1金型および第2金型で挟んで冷却しながら前記シール部にエンボスを形成するエンボス形成工程とを備える。前記第1金型は、前記シール部において、前記第1フィルムを押圧する押圧面に前記エンボスを形成するためのエンボス形成部を備えている。そして、前記第2金型は、前記押圧面に対向する受け面が耐熱性樹脂含浸無機繊維クロスで被覆されて構成されている。
【0008】
上記エンボス形成方法において、前記エンボス形成部は、前記押圧面に対する凹部で構成されていることが好ましい。
上記課題を解決するための製袋方法は、第1フィルムおよび第2フィルムを重ね合わせて包装袋を製造する製袋方法であって、重ね合わされた状態で搬送される前記第1フィルムおよび前記第2フィルムをヒートシールして搬送方向に延びる縦シール部を形成する縦シール工程と、前記縦シール部を冷却する縦シール冷却工程と、重ね合わされた状態で搬送される前記第1フィルムおよび前記第2フィルムをヒートシールして前記搬送方向と交差する方向に延びる横シール部を形成する横シール工程と、前記横シール部を冷却する横シール冷却工程とを備える。前記縦シール冷却工程および前記横シール冷却工程の少なくとも1つのシール冷却工程では、前記シール冷却工程の直前のシール工程で形成されたシール部を第1金型および第2金型で挟み込んで冷却しながら前記シール部にエンボスを形成する。前記第1金型は、前記シール部において、前記第1フィルムを押圧する押圧面に前記エンボスを形成するためのエンボス形成部を備え、前記第2金型は、前記押圧面に対向する受け面が耐熱性樹脂含浸無機繊維クロスで被覆されて構成されている。
【0009】
上記製袋方法において、前記シール工程は、前記横シール工程であり、前記シール冷却工程は、前記横シール冷却工程であることが好ましい。
上記製袋方法において、前記エンボス形成部は、前記押圧面に対する凹部で構成されていることが好ましい。
【0010】
上記課題を解決するための製袋装置は、重ね合わされた状態で搬送される第1フィルムおよび第2フィルムをヒートシールして搬送方向に延びる縦シール部を形成する縦シール機構と、前記縦シール部を冷却する縦シール冷却機構と、重ね合わされた状態で搬送される前記第1フィルムおよび前記第2フィルムをヒートシールして前記搬送方向と交差する方向に延びる横シール部を形成する横シール機構と、前記横シール部を冷却する横シール冷却機構とを備える。前記縦シール冷却機構および前記横シール冷却機構の少なくとも1つのシール冷却機構は、前記シール冷却機構の直前のシール機構で形成されたシール部を第1金型および第2金型で挟み込んで冷却しながら前記シール部にエンボスを形成する。前記第1金型は、前記シール部において、前記第1フィルムを押圧する押圧面に前記エンボスを形成するためのエンボス形成部を備え、前記第2金型は、前記押圧面に対向する受け面が耐熱性樹脂含浸無機繊維クロスで被覆されて構成されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、エンボスを効率的に形成することができる。そして、包装袋の生産効率を向上できる。
具体的には、耐熱性樹脂含浸無機繊維クロスを受け面に用いることで、ゴム台などと比べ熱が伝導され易いので、シール部にエンボスを効率的に形成することができる。
【0012】
また、押圧面の凹部の形状に追従するようにエンボスを構成する凸部を形成することができる。
また、耐熱性樹脂含浸無機繊維クロスを受け面に用いることで、ゴム台などと比べ熱が伝導され易いので、シール部にエンボスを効率的に形成することができる。その結果、包装袋の生産効率を向上させることができ、また、生産効率の低下を抑制できる。
【0013】
また、横シール部にエンボスを形成することができる。
また、押圧面の凹部の形状に追従するようにエンボスを構成する凸部を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】(a)は、パウチの正面図、(b)は、(a)に示されるエンボスの拡大図。
図2】製袋装置の構成を示す図。
図3】繰出し機構にセットされる原反フィルムを示す平面図。
図4】第1フィルムと第2フィルムとが重ね合わされた状態で、第1フィルムの方向(表)から見た平面図。
図5】第1金型および第2金型の構成を示す断面図。
図6】シール部を第1金型および第2金型が挟み込んでいる状態を示す断面図。
図7】凸部が形成されたシール部の断面図。
図8】第1金型および第2金型の変形例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明が適用されたエンボス形成方法、製袋方法、および、製袋装置について図面を参照して説明する。
図1(a)および(b)に示すように、本発明で製造される包装袋としてのパウチ1は、各種食品用のパウチである。パウチ1は、表面を構成する第1フィルム7と裏面を構成する第2フィルム8とを重ね合わせ(図2参照)、ヒートシールによってシール部2を外周部に設けて構成されている。ここでは、パウチ1の上下方向に延びる左右のシール部をサイドシール部2aといい、パウチ1の下部を構成するシール部を底シール部2bという。パウチ1の上部を構成するシール部2は、内容物をパウチ1内に充填した後にヒートシールによって設けられるものであって、天シール部2cという。
【0016】
各サイドシール部2aには、エンボス3を構成する凸部4が形成されている。凸部4は、裏面から表面に突出しており、格子形状を構成している。凸部4で囲まれる凹部は、矩形形状を有している。なお、凸部4は、凸部4で囲まれる部分に、円形、楕円などの凹部を構成するように設けられていてもよい。エンボス3は、利用者に対して視覚的効果、触覚的効果などを付与する他に、手指に対する当たりを和らげるようにしている。エンボス3を構成する各凸部4は、裏面から表面の方向へ突出し、凸部4の裏面には凹部4aが構成されている(図7参照)。凹部4aは、サイドシール部2aのなかで、裏面から表面に向けて窪む。そして、エンボス3は、各サイドシール部2aの全体に亘って多数設けられている。
【0017】
パウチ1を構成する第1フィルム7および第2フィルム8としては、プラスチックフィルムを主体とする積層フィルムが用いられている。積層フィルムの構成は、内容物の種類や充填後の加圧加熱殺菌時に加えられる加熱条件などによって適宜選定することができる。パウチ1を構成する第1フィルム7および第2フィルム8は、ここでは一例として、2軸延伸PET(ポリエチレンテレフタレート)/アルミニウム箔/CPP(無延伸ポリプロピレン)の積層フィルムである。各層は、ラミネート用接着剤を用いてドライラミネート法により積層される。一例として、変性ポリプロピレン樹脂(PP)、高密度ポリエチレン(HDPE)などの熱接着性樹脂を用いたサンドイッチラミネーション法を採用してもよい。この場合、接着層の厚みは、数μm~数十μmである。
【0018】
以上のようなパウチ1は、図2に示す製袋装置10によって製造される。製袋装置10は、繰出し機構11で原反フィルム6を繰り出す繰出し工程を行い、向き変更機構12で原反フィルム6の向きを変える向き変更工程を行う。さらに、半裁機構13で原反フィルム6を半裁し第1フィルム7と第2フィルム8を形成する半裁工程を行い、位置合わせ機構14で第1フィルム7と第2フィルム8とを重ねる位置合わせ工程を行う。さらに、縦シール機構15でヒートシールにより縦シール部を形成する縦シール工程を行い、縦シール冷却機構16で縦シール部を冷却する縦シール冷却工程を行う。さらに、横シール機構17でヒートシールにより横シール部を形成する横シール工程を行い、横シール冷却機構18で横シール部を冷却する横シール冷却工程を行う。そして、切断機構19でパウチ1に個片化する切断工程を行う。少なくとも縦シール工程の前から切断工程に至るまでは、搬送機構20によって搬送方向である矢印D方向に間欠搬送される。
【0019】
図3に示すように、原反フィルム6は、複数の案内ローラなどの案内機構を介して矢印D方向に搬送される。原反フィルム6は、矢印D方向に対して交差、ここでは直交する方向に第1領域6aと第2領域6bとが並んで設けられている。矢印D方向に延びる第1領域6aは、パウチ1の表面を構成する第1フィルム7となる領域であって、ここでは、一例として、パウチ1の表面の印刷表示が3行分設けられている。矢印D方向に延びる第2領域6bも、パウチ1の裏面を構成する第2フィルム8となる領域であって、ここでは、パウチ1の裏面の印刷表示が3行分設けられている。なお、矢印D方向は、行方向でもある。このように原反フィルム6は、表面の印刷と裏面の印刷が形成された状態でロール状に巻回され、ロール体11aの状態で繰出し機構11にセットされる(図2参照)。一例として、ロール体11aは、数千mの原反フィルム6が巻き芯に巻回されて構成されている。
【0020】
繰出し工程を行う繰出し機構11は、ロールから原反フィルム6を連続的に矢印D方向に送り出す。次いで、向き変更工程を行う向き変更機構12は、搬送する原反フィルム6の向きを変更するための複数の案内ローラおよび三角板を備えている。向き変更機構12は、これらの案内ローラおよび三角板によって水平状態の原反フィルム6の姿勢を90°変更し、垂直状態にする。半裁工程を行う半裁機構13は、カッタを備え、垂直状態の原反フィルム6を、第1領域6aと第2領域6bとの境界線6cで切断する。これにより、第1フィルム7と第2フィルム8が形成される。
【0021】
次いで、図4に示すように、位置合わせ工程を行う位置合わせ機構14は、搬送する第1フィルム7と第2フィルム8の各フィルムの向きを変更するための複数の案内ローラおよび三角板を備えている。位置合わせ機構14は、複数の案内ローラによって、第1フィルム7と第2フィルム8の各々を水平状態に戻し、上下に振り分け重ね合わせる。なお、図4は、第1フィルム7と第2フィルム8とが重ね合わされた状態で、第1フィルム7の方向(表)から見た平面図である。位置合わせ機構14の下流には、縦シール工程を行う縦シール機構15が配置されている。連続的に送り出される重ね合わされた第1フィルム7と第2フィルム8は、フィルム間欠送り用ダンサーロールにより間欠送りに変更後、間欠的に、縦シール機構15に送り出される。そして、重ね合わされた第1フィルム7と第2フィルム8に対しては、搬送が停止している間に、縦シール工程、縦シール冷却工程、横シール工程、横シール冷却工程、切断工程などが行われる。
【0022】
縦シール機構15は、重ね合わされた第1フィルム7と第2フィルム8の縦シール箇所をヒートシールする(図2参照)。縦シール機構15は、第1フィルム7と対向するように配置される第1加熱金型15aと、第2フィルム8と対向するように配置される第2加熱金型15bとを備えている。第1加熱金型15aおよび第2加熱金型15bは、ヒータを内蔵し、ヒータは、加熱金型15a,15bをヒートシール可能な温度まで加熱する。縦シール機構15は、矢印D方向が長手方向となっており、重ね合わされた第1フィルム7および第2フィルム8を挟み込みヒートシールすることによって縦シール部15cを形成する。ここでの縦シール部15cは、パウチ1の底シール部2bである。なお、天シール部2cに対応する部分は、後に収容物をパウチ1内に充填する必要があるためヒートシールをここでは行わない。縦シール部15cの下流には、縦シール部15cを冷却する縦シール冷却機構16が配置されている。
【0023】
縦シール冷却工程を行う縦シール冷却機構16は、縦シール部15cを構成する第1フィルム7と対向するように配置される第1金型16aと、第2フィルム8と対向するように配置される第2金型16bとを備えている(図2参照)。第1金型16aおよび第2金型16bは、金型内に冷媒を流す循環装置の一部である流路が構成され、低温状態にされる。流路は、循環装置から冷媒が供給されることで、第1金型16aおよび第2金型16bの各々を冷却する。縦シール冷却機構16は、矢印D方向に延在しており、縦シール部15cを挟み込むことによって、残留熱によって柔らかさが残存している縦シール部15cを冷却して硬化させる。縦シール冷却機構16の下流には、横シール工程を行う横シール機構17が配置されている。
【0024】
横シール機構17は、重ね合わされた第1フィルム7と第2フィルム8の横シール箇所をヒートシールする。横シール機構17は、第1フィルム7と対向するように配置される第1加熱金型17aと、第2フィルム8と対向するように配置される第2加熱金型17bとを備えている(図2参照)。第1加熱金型17aおよび第2加熱金型17bも、ヒータを内蔵し、ヒータは、加熱金型17a,17bをヒートシール可能な温度まで加熱する。横シール機構17は、矢印D方向に対して直交する方向に延在しており、重ね合わされた第1フィルム7および第2フィルム8を挟み込みヒートシールすることによって横シール部17cを形成する。ここでの横シール部17cは、パウチ1のサイドシール部2aである。横シール機構17の下流には、横シール部17cを冷却する横シール冷却機構18が配置されている。
【0025】
図5に示すように、横シール冷却機構18は、横シール部17cを構成する第1フィルム7と対向するように配置される第1金型18aと、第2フィルム8と対向するように配置される第2金型18bとを備えている。第1金型18aおよび第2金型18bは、金型内に冷媒を流す循環装置の一部である流路18cが構成され、低温状態にされる。流路18cは、循環装置から冷媒が供給されることで、第1金型18aおよび第2金型18bの各々を冷却する。第1金型18aは、第1フィルム7を押圧する押圧面21を備えている。押圧面21は、平坦な面であって、そこに、エンボス3を形成するためのエンボス形成部としての複数の凹部21aを備えている。
【0026】
第2金型18bは、押圧面21と対向する面が受け面22である。受け面22は、押圧面21に対して対向する対向面であって、耐熱性樹脂含浸無機繊維クロスとしてのフッ素樹脂含浸ガラスクロスシート23で被覆して構成された面である。
【0027】
フッ素樹脂含浸ガラスクロスシート23において、ガラスクロスは、他の無機繊維クロスに変更可能である。また、フッ素樹脂含浸ガラスクロスシート23において、フッ素樹脂は、他の耐熱性樹脂に変更可能である。すなわち、フッ素樹脂含浸ガラスクロスシート23は、フッ素樹脂含浸ガラスクロスシート23以外の耐熱性樹脂含浸無機繊維クロスにも変更可能である。無機繊維クロスは、ガラス繊維クロス、金属繊維クロス、シリカ繊維クロス、アルミナ繊維クロス、セラミックス繊維クロスなどの群から選択される少なくとも1つとすることができる。無機繊維クロスの機械的な耐久性が要求される場合、無機繊維クロスの1枚の厚さは、0.05mm以上、0.10mm以下であることが好ましい。
【0028】
耐熱性樹脂としては、ポリトリフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリカーボネート、ポリアミドなどの群から選択される少なくとも1つである。受け面22の離型性を高めることを要求される場合、耐熱性樹脂は、フッ素樹脂の一例であるポリテトラフルオロエチレンであることが好ましい。
【0029】
耐熱性樹脂含浸無機繊維クロスは、耐熱性樹脂を含浸することで、無機繊維クロスよりも平坦な表面を備えつつ、無機繊維クロスに由来する微細な凹凸を表面に備えている。また、耐熱性樹脂含浸無機繊維クロスは、無機繊維クロスに由来する、含浸樹脂よりも高い熱伝導性を備えている。
【0030】
このような受け面22は、第1金型18aの押圧面21と平行な平坦な面で構成されている。フッ素樹脂含浸ガラスクロスシート23は、押圧面21に対向する第2金型18bの表面(フッ素樹脂含浸ガラスクロスシート23が配置される配置面)との当たりを和らげる。加えて、残留熱によって柔らかさが残存している横シール部17cの受け面22に対する粘着を抑制する。
【0031】
フッ素樹脂含浸ガラスクロスシート23は、1枚または複数枚(例えば5枚~9枚)重ねられて第2金型18bの配置面に配置されている。例えば、フッ素樹脂含浸ガラスクロスシート23は、厚さが数μmのものが使用される。第2金型18bは、横シール部17cをフッ素樹脂含浸ガラスクロスシート23を介して冷却する。フッ素樹脂含浸ガラスクロスシート23の厚さや枚数は、所望のエンボス3を形成可能なように適宜調整される。
【0032】
以上のような横シール冷却機構18は、矢印D方向に対して直交する方向に延在しており、横シール部17cを挟み込むことによって、残留熱によって柔らかさが残存している横シール部17cを冷却して硬化させる。図6に示すように、横シール部17cを押圧面21と受け面22とで挟み込んだとき、凹部21aの部分と凹部21aの周辺部分との圧力差によって、押圧面21の凹部21aに横シール部17cの一部が進入する。これにより、図7に示すように、横シール部17cには、凹部21aの形状に追従するようにエンボス3を構成する凸部4が形成される。このように、横シール冷却機構18は、エンボス3を形成するエンボス形成機構であって、エンボス形成工程を行う。
【0033】
横シール冷却機構18の下流には、切断機構19が配置されている(図2参照)。切断工程を行う切断機構19は、カッタを備えている。上下に重なり縦シール部15cと横シール部17cが形成された第1フィルム7と第2フィルム8は、縦シール部15cに位置する切断位置および横シール部17cに位置する切断位置がカッタで切断される。そして、矢印D方向に3行で連続しているパウチ1が個片化される。なお、この後、パウチ1には、内容物が充填され、その後、天シール部2cが形成される(図1参照)。
【0034】
以上のように構成された製袋装置10によって製造されたパウチ1に関し、次のように、サイドシール部2aが確実にシールされているか、および、エンボス3が確実に形成されているかを確認した。まず、ロール体11aのスタート部分の各行100枚のパウチ1、中間部分の各行100枚のパウチ1、エンド部分の各行100枚のパウチ1について、サイドシール部2aにエンボス3がしっかりと形成されているかを目視で確認した。全てのパウチ1についてエンボス3がしっかりと形成されることを確認できた。
【0035】
次いで、ロール体11aのスタート部分の各行5枚のパウチ1、中間部分の各行5枚のパウチ1、エンド部分の各行5枚のパウチ1について、内容物として水を充填し、天シール部2cを形成した後、1分間、785N(80kgf)で加圧した後の状態を観察した。その結果、加圧の後においても、サイドシール部2aの後退、および、漏れは確認されなかった。
【0036】
さらに、これらを135℃で30分間静置したが、サイドシール部2aの後退、および、漏れは確認されなかった。
さらに、サイドシール部2aについて、15mm幅のT型剥離試験を行ったが、ヒートシールでの十分な強度を確認できた。
【0037】
以上のように、製袋装置10によれば、原反フィルム6の何れの位置で製造されたパウチ1も、サイドシール部2aにエンボス3をしっかりと形成することができる。また、原反フィルム6の何れの位置で製造されたパウチ1も、製品として必要とされるシール強度を得ることができる。
【0038】
以上のようなエンボス形成方法、製袋方法、および、製袋装置10によれば、以下のように列挙する効果を得ることができる。
(1)横シール冷却機構18において、第1金型18aは、受け面22がゴム台に比べ薄く熱が伝導され易いフッ素樹脂含浸ガラスクロスシート23で構成されている。したがって、横シール部17cの冷却効率を高めることができる。すなわち、エンボス3を効率的に形成することができる。
【0039】
(2)上記(1)の効果を有することで、パウチ1の生産効率を高めることができる。例えば、サイドシール部2aの厚さが厚い場合や、第1フィルム7および第2フィルム8の軟化温度(融点)が高い材料を採用している場合などにもパウチ1の生産効率の低下を抑制できる。
【0040】
(3)受け面22に配置されているフッ素樹脂含浸ガラスクロスシート23は、金属製の押圧面21と第2金型18bの対向面との当たりを和らげる。したがって、押圧面21と受け面22とが汚損することを抑制できる。
【0041】
(4)受け面22に配置されているフッ素樹脂含浸ガラスクロスシート23は、残留熱によって柔らかさが残存している横シール部17cの受け面22に対する粘着を抑制できる。
【0042】
(5)押圧面21の凹部21aの形状に追従するようにエンボス3を構成する凸部4を形成することができる。
(6)押圧面21と横シール部17cとの接触面積は、凹部21aが存在する横シール部17cと非接触の部分の面積より大きくなることで、横シール部17cの冷却効率の低下を抑制できる。
【0043】
(7)製袋装置10および製袋装置10で行われる製袋方法によれば、パウチ1の生産効率の低下を招くことなく、サイドシール部2aにエンボス3を確実に形成することができる。
【0044】
なお、エンボス形成方法、製袋方法、および、製袋装置10は、さらに、以下のように適宜変更して実施することもできる。
サイドシール部2aにエンボスを形成するエンボス形成部としての横シール冷却機構18は、図8に示すように構成してもよい。すなわち、第1金型18aは、第1フィルム7と対向する面に、エンボス形成部として、凹部21aではなく凸部24を設けている。この場合、凸部24の頂面は、横シール部17cを最も強く押圧する第1押圧面24aであり、凸部24周囲の面は、第1押圧面24aに次ぐ押圧力で横シール部17cを押圧する第2押圧面24bとなる。
【0045】
この場合、横シール部17cを押圧面24a,24bと受け面22とで挟み込んだとき、第1押圧面24aの領域と第2押圧面24bの領域との圧力差によって、第1押圧面24aが横シール部17cに入り込む。これにより、横シール部17cには、第2フィルム8から第1フィルム側に突出した凸部、または第1フィルム7から第2フィルム8側に窪んだ凹部によってエンボス3が形成されることになる。すなわち、図7とは逆向きのエンボス3が形成される。このような構成によっても、上記(1)~(4)と同等の効果を得ることができる。
【0046】
横シール機構17は、パウチ1の仕様によっては矢印D方向に対して交差している方向に延在していれば直交する方向に延在していなくてもよい。この場合、横シール冷却機構18も横シール機構17と同じような傾きで配置され、形成されたシール部にエンボス3を形成できるようにする。
【0047】
縦シール冷却機構16における第1金型16aおよび第2金型16bの少なくとも一方の対向面に、フッ素樹脂含浸ガラスクロスシート23を配置するようにしてもよい。これにより、第1金型16aおよび第2金型16bの当たりを和らげ、また、残留熱によって柔らかさが残存している縦シール部15cが粘着することを抑制できる。
【0048】
原反フィルム6の構成は、2軸延伸PET(ポリエチレンテレフタレート)/アルミニウム箔/CPP(無延伸ポリプロピレン)の積層フィルムに限定されるものではない。すなわち、耐熱性に優れた2軸延伸プラスチックフィルムが使用可能であり、2軸延伸PETの代わりには、2軸延伸ナイロン、2軸延伸ポリプロピレン、2軸延伸ポリスチレン、2軸延伸ポリエチレンなどが使用可能である。また、用途によっては、一軸延伸フィルムや、無延伸フィルムも使用可能である。また、耐熱性以外に、強度(剛性)や、絵柄や文字の印刷適性が求められることもある。また、積層フィルムの中間層としては、アルミニウム箔の他に、2軸延伸ナイロン(ON)やエチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物フィルムを用いてもよいし、アルミニウム箔と2軸延伸ナイロン(ON)の積層体であってもよい。
【0049】
エンボス3は、サイドシール部2aの他に、底シール部2bに設けてもよいし、天シール部2cに設けるようにしてもよい。さらに、サイドシール部2aにエンボス3を設けるのではなく、底シール部2bだけに設けてもよいし、天シール部2cだけに設けてもよい。このような場合、エンボス3を形成するシール部を形成するシール冷却機構に、図5および図6の第1金型18aおよび第2金型18bを採用すればよい。また、図8に示すような第1金型18aおよび第2金型18bを採用すればよい。
【0050】
図5および図6の構成とは逆に、凹部21aを備えた第1金型18aを第2フィルム8と対向するように配置し、フッ素樹脂含浸ガラスクロスシート23が配置された第1金型18aを第1フィルム7と対向するように配置してもよい。
【0051】
図8の構成とは逆に、凸部24を備えた第1金型18aを第2フィルム8と対向するように配置し、フッ素樹脂含浸ガラスクロスシート23が配置された第1金型18aを第1フィルム7と対向するように配置してもよい。
【0052】
縦シール工程と横シール工程は、横シール工程を縦シール工程よりも先に行うようにしてもよい。
シール部2は、パウチ1以外のシール部にエンボス3を形成する場合にも適用可能である。
【符号の説明】
【0053】
1…パウチ
2a…サイドシール部
3…エンボス
4…凸部
4a…凹部
7…第1フィルム
8…第2フィルム
15…縦シール機構
15a…第1加熱金型
15b…第2加熱金型
16…縦シール冷却機構
16a…第1金型
16b…第2金型
17…横シール機構
17a…第1加熱金型
17b…第2加熱金型
17c…横シール部
18…横シール冷却機構
18a…第1金型
18b…第2金型
18c…流路
19…切断機構
21…押圧面
21a…凹部
22…受け面
23…フッ素樹脂含浸ガラスクロスシート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8