(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022166522
(43)【公開日】2022-11-02
(54)【発明の名称】記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 3/407 20060101AFI20221026BHJP
B41J 3/36 20060101ALI20221026BHJP
B41J 29/00 20060101ALI20221026BHJP
【FI】
B41J3/407
B41J3/36 Z
B41J29/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021071784
(22)【出願日】2021-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000208743
【氏名又は名称】キヤノンファインテックニスカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】澤西 陽佑
【テーマコード(参考)】
2C055
2C061
【Fターム(参考)】
2C055CC00
2C055CC05
2C061AP10
2C061AQ04
2C061AS11
2C061BB02
2C061BB26
2C061CJ02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】チューブ加熱ユニットを備えた記録装置において、ヒータの配置を簡素化し、狭い領域であってもヒータを配置してチューブ状記録媒体を加熱することが可能な記録装置を提供する。
【解決手段】チューブ状記録媒体を搬送する搬送手段と、前記搬送手段によって搬送方向に搬送される前記チューブ状記録媒体に記録を行う記録ヘッドと、前記搬送方向において前記記録ヘッドよりも上流側に配置され、金属部材と該金属部材を加熱する複数の発熱体とを含む加熱手段と、を有し、前記加熱手段は、前記複数の発熱体が前記搬送方向に沿って互いに平行となるように、前記金属部材に配置されている領域を含むことを特徴とする記録装置。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チューブ状記録媒体を搬送する搬送手段と、
前記搬送手段によって搬送方向に搬送される前記チューブ状記録媒体に記録を行う記録ヘッドと、
前記搬送方向において前記記録ヘッドよりも上流側に配置され、金属部材と該金属部材を加熱する複数の発熱体とを含む加熱手段と、
を有し、
前記加熱手段は、前記複数の発熱体が前記搬送方向に沿って互いに平行となるように、前記金属部材に配置されている領域を含む
ことを特徴とする記録装置。
【請求項2】
前記金属部材は、半円筒形の形状を有することを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記複数の発熱体は、前記搬送方向と平行で前記半円筒形の円周方向に等間隔で配置されること特徴とする請求項2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記複数の発熱体のうち加熱する発熱体を選択する選択手段を更に有することを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の記録装置。
【請求項5】
前記加熱手段は、前記金属部材の温度を検出するサーミスタを備え、該サーミスタの位置は、前記金属部材の前記搬送方向における中央よりも下流側であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の記録装置。
【請求項6】
前記チューブ状記録媒体を前記金属部材に向けて押圧する押圧手段を更に有することを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の記録装置。
【請求項7】
チューブ状記録媒体を搬送する搬送手段と、前記搬送手段によって所定の搬送方向へ搬送されるチューブ状記録媒体に記録を行う記録ヘッドと、を備える記録装置に対して取り外し及び装着が可能なチューブ加熱ユニットであって、
前記記録装置に装着された状態において、前記チューブ加熱ユニットは、前記搬送方向において前記記録ヘッドよりも上流側に位置し、
前記チューブ加熱ユニットは、金属部材と該金属部材を加熱する複数の発熱体とを含む加熱手段を有し、
前記加熱手段は、前記複数の発熱体が前記搬送方向に沿って互いに平行となるように、前記金属部材に配置されている領域を含む
ことを特徴とするチューブ加熱ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録装置に関し、詳しくは、チューブ状の記録媒体に記録を行う記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の記録装置では、チューブ状の記録媒体に記録を行う際、記録ヘッドとプラテンとでチューブ状記録媒体を挟むとともにチューブ状記録媒体を押しつぶした状態にして記録を行っている。一方、記録装置が稼働する環境の温度が低いことなどに起因して、チューブ状記録媒体が固くなり、変形しにくくなることがある。このような場合には、チューブ状記録媒体を加熱することで変形しやすくしている。
【0003】
特許文献1には、このように、チューブ状記録媒体を加熱する例として、チューブ状記録媒体の搬送路において、記録ヘッドとプラテンを有する記録機構の上流側にヒータを配置することが記載されている。詳しくは、チューブ状記録媒体がその中を通るように構成されたパイプ状のヒータが、記録機構の上流側に配置される。これにより、チューブ状記録媒体が記録機構に搬送、供給される直前までにチューブ状記録媒体を加熱することができ、また、記録機構に至る前にチューブ状記録媒体を加熱しすぎることを防止しつつ、記録機構においてチューブ状記録媒体を変形しやすくしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の加熱のための構成は、パイプ状の部材にヒータを配置したり、ヒータを配置したシートをパイプ状の部材の外側に巻き付けたりしたものであり、パイプの外周面のように比較的広い領域にヒータを配置することは容易であったが、狭い領域にヒータを配置するのは困難であった。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、チューブ加熱ユニットを備えた記録装置において、ヒータの配置を簡素化し、狭い領域であってもヒータを配置してチューブ状記録媒体を加熱することが可能な記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
チューブ状記録媒体を搬送する搬送手段と、前記搬送手段によって搬送方向に搬送される前記チューブ状記録媒体に記録を行う記録ヘッドと、前記搬送方向において前記記録ヘッドよりも上流側に配置され、金属部材と該金属部材を加熱する複数の発熱体とを含む加熱手段と、を有し、前記加熱手段は、前記複数の発熱体が前記搬送方向に沿って互いに平行となるように、前記金属部材に配置されている領域を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
以上の構成によれば、チューブ加熱ユニットを備えた記録装置において、狭い領域であってもヒータを配置してチューブ状記録媒体を加熱することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係るチューブ加熱ユニットを備えたプリンタの外観を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るプリンタの表示部を示した図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るプリンタの記録部周辺を詳細に示した図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るチューブ加熱ユニットを説明する図である。
【
図5】本発明におけるヒータユニットを上面から見た場合の概略図である。
【
図6】
図5で示したヒータユニットのVI-VI断面で切断した概略切断斜視図である。
【
図7】(a)は、本発明におけるヒータユニットのヒータ構成を説明する図、(b)は、
図5(a)で示したヒータユニットのVIIb-VIIb断面で切断した切断図である。
【
図8】(a)は、
図5(a)で示したヒータユニットに小径チューブを通しVII方向から見た断面図、(b)は、
図5(a)で示したヒータユニットに大径チューブを通しVII方向から見た断面図である。
【
図9】本発明の一実施形態におけるプリンタの制御のための構成を示すブロック図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係るチューブ加熱ユニットの、印字JOBにおける制御フローを示したフローチャートである。
【
図11】本発明の一実施形態に係るチューブ加熱ユニットの制御フローを示したフローチャートである。
【
図12】(a)は、チューブの直径がφ6.5mm以下である場合の、温調制御例の図であり、(b)は、チューブの直径がφ6.5mmより大きい場合の、温調制御例の図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係るチューブ加熱ユニット101を備えた記録装置(以下、プリンタともいう)の外観を示す図である。本実施形態のプリンタ1は、チューブ状の記録媒体(以下、単に、チューブともいう)を含む記録媒体に記録を行うものであり、ノートタイプコンピュータと同様に持ち運び可能に構成されたものである。
【0012】
このプリンタ1は、大別して、キーボードなどを備えた操作部13、LCDや表示制御部を備えた表示部14、記録媒体としてのチューブを搬送するための搬送ユニット、チューブに記録を行う記録部20、記録部20で記録されたチューブに切断処理を施す切断部30、チューブを加熱するためのチューブ加熱ユニット101、を備えている。チューブ加熱ユニット101は、チューブを加熱するためのヒータや、チューブを押圧する押圧ユニットを、内部に備えている。チューブ加熱ユニット101は、チューブを記録部20へ案内するガイドユニットとしての役割も果たす。
【0013】
[操作部]
図1の操作部13は、ファンクションキー、文字・数字・記号キー、スペースキー、変換キー、十字方向キー、リターンキー等を備え、ユーザはこれらのキーを操作することで、記録媒体の種類、サイズ、記録条件等を入力して、プリンタ1の記録情報を設定することができる。
【0014】
[表示部]
図2は、
図1の表示部14における表示内容を示す図である。表示部14のLCDは、入力モード等を表示する各種情報表示エリア14A、操作部13から入力された文字、数字、記号(以下、文字と略称する。)を表示する文字情報表示エリア14B、文字サイズ等を表示するパラメータ表示エリア14Cの3つの表示エリアに分割されており、各種情報表示エリア14Aおよびパラメータ表示エリア14Cはそれぞれ文字情報表示エリア14Bの上下に配置されている。
【0015】
各種情報表示エリア14Aは、以下の表示を行うことができる。ユーザが、操作部13を介して、英数、ローマ字、ひらがな、のどれで入力するかを示す入力モード表示、ユーザが、操作部13を介して、挿入と上書のどちらで入力するかを示す挿入/上書モード表示(編集モード表示)、「記録媒体の種類」の表示、複数ページの記録を一回の記録動作で行うときにページ間のカットをどのように行うかを示す「モード指令」(全切り、半切りモードカット指令の別、および切断個数)の表示、チューブをカットする間隔を示す「カット長」と、文字の位置がセンタリングか左寄せかを示す「文字配置」およびチューブの左端から先頭の文字までを示す「余白」を表示するカット長/文字配置/余白表示、現在表示されているページの前に別のページがある場合に表示される前ページ表示、現在表示されているページの後に別のページがある場合に表示される次ページ表示、および、電源が投入されていることを表示する電源表示、等である。
【0016】
また、パラメータ表示エリア14Cは、以下の表示を行うことができる。現在、記録データの何ページ目が表示されているかを数字で表示するページ表示、記録の向きを「横向き/横書き」、「縦向き/縦書き」、「縦向き/横書き」のいずれかで行うかを表示する記録の向き表示、文字に枠を付ける場合に選択した枠囲みの形を表示する枠囲み表示、選択した文字サイズを表示する文字サイズ表示、記録する行数を表示する行数表示、選択した文字間隔を表示する文字間隔表示、現在表示されている文字が何ページにわたって記録されるかを表示する連続記録表示、等である。
【0017】
文字情報表示エリア14Bには、操作部13を介して入力された文字(入力された記録データとしての文字データが所定の処理を経て表示された文字)の文字列が表示される。なお、文字情報表示エリア14Bには、ユーザが入力しようとする箇所にカーソルが表示される。
【0018】
[切断部]
再び
図1を参照すると、記録部20における搬送ローラ4(
図3参照)の搬送方向下流側には、記録媒体としてのチューブやテープに切断処理を施す切断部30が配置されている。切断部30では図示しないカッター刃とカッター受け部材を用いて、記録部20で記録されたチューブTに対して半切り又は全切り処理を行う。切断されたチューブTは、搬送ユニットによって、排出される。
【0019】
[記録部]
図3は、記録部20の構成を示す図である。記録部20は、記録媒体としてのチューブTを搬送するための、供給ローラ2a、2bで構成される供給ローラ対2と、チューブTの搬送方向において、供給ローラ対2の下流側に配置された記録ヘッド6およびプラテンローラ3を備える。さらに、記録ヘッド6およびプラテンローラ3の下流側に配置された搬送ローラ4を備える。記録ヘッド6は、チューブTを介してプラテンローラ3と対向するよう設けられる。また、搬送ローラ4は、プラテンローラ3の周方向において、記録ヘッド6とは別の位置でプラテンローラ3と対向するよう設けられる。記録ヘッド6は、チューブTの搬送方向に対して直交する方向に配列される所定数の発熱素子を有し、これを選択的に発熱させることにより、後述するインクリボン上のインクをチューブTに転写することができる。
【0020】
インクリボンカセット8は、ロール状に巻かれたインクリボンRを格納し、インクリボンRを記録部20へ搬送する。インクリボンRは、プラテンローラ3と記録ヘッド6との間で、搬送されるチューブTの記録ヘッド側に搬送される。インクリボンRは、インクリボンカセット8のリボン供給リールから供給され、インクリボンカセット8のリボン巻取リールに巻き取られる。本実施形態のプリンタ1は、インクリボンカセット8を交換可能に装着することによって、インクリボンRを用いた記録を行うことができる。
【0021】
図3の搬送ローラ4、プラテンローラ3、供給ローラ2a、2b、およびインクリボンカセット8のリボン巻取リールのスプール8aは、後述する共通駆動源としてのメインモータ5で駆動される。また、記録ヘッド6は、後述するサブモータ9によって、プラテンローラ3との間でチューブTを挟持して記録を行う記録位置と、記録位置よりもプラテンローラ3との距離が広い退避位置と、に移動可能に構成されている。
【0022】
チューブTに記録を行うときには、記録ヘッド6は記録位置に移動する。記録ヘッド6は、インクリボンカセット8のインクリボンRを介してチューブTを押圧するとともに、操作部13から入力された記録データに従って記録ヘッド6の発熱素子を選択的に発熱させる。これにより、インクリボンRのインクを溶融してチューブTに転写し、記録を行う。また、供給ローラ対2の上流側と、搬送ローラ4の下流側には、チューブTの有無を検出することで、搬送されるチューブTの先端を検出するための透過一体型センサ(不図示)が配置されている。
【0023】
なお、本実施形態で記録媒体として用いるチューブTの材質の一例としては、PVC(ポリ塩化ビニル)が挙げられる。PVC製のチューブは、記録部20において記録ヘッド6とプラテンローラ3を通過する際につぶされるが、記録部20通過した後には、つぶれた状態から元の管状に復元する。
【0024】
[チューブ加熱ユニット]
図1において、記録部20に対して記録媒体の搬送方向の上流側に位置するチューブ加熱ユニット101の内部には、ヒータユニットが設けられている。
図4は、チューブ加熱ユニット101の内部を示す図である。本発明の一実施形態に係るチューブ加熱ユニット101は、ヒータユニット401の発熱する部分にチューブTを押圧した状態で加熱することで、チューブTを温め、チューブTの剛性を低下させる。これにより、チューブTが変形しやすくなるので、チューブTと記録ヘッド6とが正しく当接し、正常な記録を行うことができるようになる。なお、チューブ加熱ユニット101をプリンタ1から取り外し可能とし、寒冷な環境で記録を行うときに、プリンタ1にチューブ加熱ユニット101を装着する構成としてもよい。
【0025】
チューブTは、後述する押圧ユニット508によって、金属部材504に向けて押圧され、金属部材504に接触する。金属部材504に設けられている発熱体としての3本のヒータ501、502、503によって金属部材が加熱されると、チューブTは、金属部材504との接触部を介して加熱される。チューブTは、ヒータユニット401から熱を受けながら、供給ローラ対2によって、搬送される。
図4において、ヒータユニット401の上方には、後述するヒータ501、502、503の温度制御を行う制御基板402が配設されている。
【0026】
図5は、ヒータユニット401を上面から見た場合の、ヒータ501、502、503の配置を示す概略図である。また、
図6は、
図5の、VI-VIにおける、ヒータユニット401と押圧ユニット508の概略斜視断面図である。
図6に示されるように、金属部材504の中を搬送方向へと移動するチューブTは、押圧ユニット508によって金属部材504に押し付けられて変形している。
図5、6に示されるように、3本のヒータ501、502、503は、チューブTの搬送方向に沿って互いに平行に、また、半円筒形である金属部材504の円周方向に互いに等間隔で、金属部材504上に配置されている。この時、ヒータ501が金属部材504の底部に配置される。そして、
図5に示されるように、上面から見ると、ヒータ501、502、503の端部はそれぞれ、ヒータ配線部510に接続されている。このようにヒータ501,502,503の配置を簡素化することにより、狭い領域であってもヒータを配置し、金属部材504を加熱することができる。
【0027】
なお、ヒータ501、502、503は、間隔をあけて金属部材504に配置されているが、ヒータ501、502、503で発生させた熱は、金属部材504を伝わって拡散するため、金属部材504全体の温度が上昇する。また、このように、ヒータをチューブTの搬送方向に沿って金属部材504に配置することで、金属部材504上の熱分布がチューブTの搬送方向に沿ったものとなり、搬送されるチューブTを効率よく加熱することができる。
【0028】
また、
図5に示されるように、金属部材504は、搬送方向において中央よりも下流側の、ヒータ502の近傍に、サーミスタ505を備えている。サーミスタ505がこのように、金属部材504の搬送方向の下流側に配置されることで、サーミスタ505により検出される温度と実際の金属部材504の温度の差が小さくできる。これは、金属部材504の搬送方向の上流においては、接触するチューブTは外気温により冷却された状態であることから、この冷却されて低温となった状態のチューブTと加熱されている金属部材504との温度差が大きく、実際のチューTとの温度差が大きい温度が検出されることとなり、一方で、金属部材504の搬送方向の下流において、サーミスタ505を備えている場合には、チューブTは、金属部材504中を搬送される間に十分加熱されており、金属部材504との温度差が小さく、実際のチューブTの温度に近い温度がサーミスタ505により検出されるからである。
【0029】
ここで、
図6を参照しつつさらに説明すると、前述のように金属部材504に配置されたヒータ501、502、503は、押しつぶされているチューブTの直径に合わせて、ヒータ501のみで加熱するか、他のヒータ502、503をさらに用いて加熱するかを決定しても良い。チューブTが、金属部材504のヒータ501によって加熱される部分にのみ当接する場合には、チューブTの加熱にはヒータ501のみが用いられ、他のヒータ502、503は加熱を行わないようにする。それに対して、チューブTが、金属部材504のヒータ502、503によって加熱される部分にも当接する場合には、チューブTの加熱にはヒータ501、502、503を全て用いて加熱を行うようにする。このように、チューブTの直径によって、加熱に使用するヒータを選択することで、必要な領域を加熱することができる。なお、金属部材504の断面形状は、略半円形であるが、これに限定されるわけではなく、押しつぶされているチューブTと接触面積を十分とれるような曲線であっても良い。
【0030】
図7(a)および
図7(b)を参照して、さらに詳細にヒータユニット401についての説明を行う。
【0031】
図7(a)は、ヒータユニット401の構成を示す上面図である。
図7(a)において示すように、ヒータユニット401は、発熱部材としてのヒータ501、502、503と(
図8(a)及び(b)参照)、ヒータ501、502、503に電力を供給するためのヒータ配線部510と、ヒータ501、502、503で発生させた熱をチューブTに伝えるための金属部材504と、チューブTを金属部材504に当接させるために、金属部材504に向けてチューブTを押圧する押圧ユニット508と、を有して構成されている。また、押圧ユニット508は、押圧部材506を保持する保持部材509、保持部材509を金属部材に向けて付勢する付勢手段としての弾性部材507、等で構成されている。
【0032】
なお、ヒータで発生させた熱によって、チューブTを効率よく加熱するために、金属部材504の材質に関しては、例えば、アルミニウム材や銅材等の熱伝導率の高い材料により形成されることが望ましい。
【0033】
また、金属部材504の形状に関しては、チューブTとの接触面積をより大きく取れる形状が好ましい。そのため、本実施例では、金属部材504を、アルミ製の半円筒形状としている。ただし、金属部材504の形状は、半円筒に限定されるものではなく、所定の曲率をもつ曲面であっても良い。
【0034】
図7(b)は、
図7(a)のVIIb-VIIbにおける断面図である。
図7(b)に示すように、ヒータユニット401において、金属部材504の底部にあたる部分には、搬送方向に沿ってヒータ501が設けられており、そこから円周方向に等間隔に距離を置いて平行にヒータ502、503が設けられている。つまり、ヒータユニット401は、ヒータ501、502、503が、チューブTの前記搬送方向に沿って、互いに平行となるように、金属部材504に設けられている領域を含んでいる。このような構成をとることにより、金属部材504全体を加熱することができるとともに、金属部材504の底部を選択的に加熱することができる。
ヒータ501、502、503はヒータ配線部510を介して
図4の制御基板402に接続される。
【0035】
次に、押圧ユニット508について説明する。
図7(b)において、押圧部材506を保持する保持部材509は、回動軸Pを中心として回動することができるように設置されている。保持部材509が回動軸Pを中心として回動することにより、押圧部材506は、保持部材509とともに、回動方向矢印Xおよび矢印Yの方向に移動することが可能となっている。保持部材509は、弾性部材507によって、押圧部材506が金属部材504に接近する方向に付勢されている。弾性部材507としては、バネのほか、ゴムなどの弾性変形するものを使用することができる。また、押圧部材506で押圧する方向が鉛直下向きである場合、押圧部材506の重量で付勢することも可能である。なお、押圧部材506は、保持部材509と一体的に形成されていても良い。また、押圧部材506を摺動性の良い材質で構成することにより、チューブTを搬送するときの抵抗を低減することができる。そして、押圧部材506を回転可能なコロとすることにより、チューブTを搬送するときの抵抗をさらに低減することができる。
【0036】
このような構成により、ヒータユニット401の内部を搬送されるチューブTを、押圧部材506によって、金属部材504に当接するように押圧することが可能となっている。
【0037】
図8(a)および
図8(b)を参照して、ヒータユニット401でチューブTを加熱している状態について、説明する。
図8(a)及び
図8(b)は、
図7(a)の矢印VIIの方向から見た断面図である。
【0038】
図8(a)に示すように、押圧ユニット508に設けられた押圧部材506は、バネを用いた弾性部材507によって、金属部材504に向けて付勢される。チューブTは、押圧部材506によって、金属部材504に向けて押圧され、金属部材504に接触する。金属部材504に設けられているヒータ501、502、503によって金属部材504が加熱されると、チューブTは、金属部材504との接触部を介して加熱される。しかし、本図に示されるような、チューブTが金属部材504のヒータ501によって加熱される底部にのみ当接している場合には、チューブTの加熱は、ヒータ501によってのみ行われ、ヒータ502、503は加熱を行わない。加熱するヒータの選択は、制御基板402によって行う。
【0039】
このように、チューブTは、チューブ加熱ユニット101で加熱されながら、
図3の供給ローラ対2によって搬送される。チューブTは、ヒータ501の熱を伝導する金属部材504に直接接触して加熱されることから、チューブ加熱ユニット101は効率よくチューブTを加熱することができ、また、ヒータ501のみが直接的な加熱に使用されることから、他のヒータ502、503を用いて加熱をする必要がなく、その分だけ、効率よく加熱を行うことができる。
【0040】
図8(a)および(b)において、チューブTにおける金属部材504と当接している領域は、
図3の記録部20において、チューブがつぶれるときに、折れ曲がる領域である。換言すると、押圧部材506がチューブTを押圧する方向は、記録ヘッド6が退避位置から記録位置へ移動してチューブTと当接する方向と、略直交する方向である。
【0041】
プリンタ1の記録部20とチューブ加熱ユニット101をこのように構成することにより、チューブTの、記録部20で折れ曲がる領域を、効率よく加熱して柔らかくすることが可能となる。そのため、気温の低い環境下であっても、チューブTと記録ヘッド6とを正しく当接させて、正常な記録を行うことができる。
【0042】
図8(b)は、
図8(a)のチューブTよりも直径の太いチューブT´を、ヒータユニット401で加熱している状態を示す図である。
図8(b)においても、チューブT´は、弾性部材507によって付勢される押圧部材506で、金属部材504に向けて押圧され、金属部材504に接触する。しかし、チューブT´は、図に示されるように、金属部材504のヒータ501よって加熱される底部のみならず、金属部材504のヒータ502、503によって加熱される部分にも当接していることから、前記チューブTとは異なり、ヒータ502、503も用いて加熱される。そして、金属部材504に設けられているヒータ501、ヒータ502、503によって金属部材504が加熱されると、チューブT´は、金属部材504との接触部を介して加熱される。
【0043】
このように、押圧部材506によってチューブT´を押圧することにより、チューブT´の直径が太い場合であっても、チューブTを金属部材504に当接させることができ、また、ヒータ501のみならずヒータ502、503も加熱に用いることで、チューブ加熱ユニット101は効率よくチューブT´を加熱することが可能となる。
【0044】
なお、本実施例では、ヒータ501、502、503を金属部材504の底部から、円周方向に一定の間隔を空けて設けているが、ヒータ502、503の位置はこれに限定されない。ヒータ502、503は、金属部材504に接触して金属部材504に熱を伝えることのできる場所であれば、
図8(a)および
図8(b)に示した場所以外に設置しても、金属部材504を介してチューブTを加熱することが可能であるし、また、底部のヒータ501に加えてヒータを設ける数は、2本のみに限定されるわけではない。
【0045】
[制御構成]
図9は、本発明にかかる一実施形態のプリンタ1における制御のための構成を示すブロック図である。CPU41は、チューブ加熱ユニット101による加熱の制御、記録部20による記録動作の制御、表示部14における表示の制御など、プリンタ1における各部の動作、処理を制御する。
【0046】
操作部13は、ユーザのキーボード操作により、記録媒体への記録内容や記録JOB数、切断手段による切断パターン等、プリンタ1に対して種々の設定の入力を行う。また、電源部への電源ON/OFF入力も、操作部13の電源キーから行うようになっている。
【0047】
CPU41は、外気温センサ(図示せず)の検出温度に基づいて、チューブ加熱ユニット101の制御を行う。本実施例のプリンタ1におけるチューブ加熱ユニット101の制御としては、55℃の上限目標温度の設定を設けている。この時、目標温度範囲として、上限温度と下限温度が設定され、本実施例においては、例えば、目標温度範囲を54℃~55℃と設定している。
【0048】
金属部材504には、温度を検出するサーミスタ505が取り付けられており、所定のサンプリング間隔で金属部材504の温度をモニタリングできるようになっている。サーミスタ505により検出する金属部材504の温度が、あらかじめ定めた上限温度を上回るまでヒータ501、502、503への通電を続け、上限温度を超えるとヒータ501、502、503への通電を切る。また、サーミスタ505が検出する金属部材504の温度が、予め定めた下限温度を下回ると、ヒータ501、502、503への通電を再開する。これらの制御を繰り返し行い、金属部材504の温度を一定の範囲内に保つ制御を行っている。さらには、前述のように、加熱するチューブTの直径により、通電するヒータを選択するように制御を行う。
【0049】
なお、本実施例では、サーミスタ505を金属部材504に設ける構成としたが、サーミスタ505をヒータ501に設けて、ヒータ501の温度をモニタリングして制御を行っても良い。
【0050】
記録ヘッド6は、記録部20に設けられている。記録部20の説明において述べたように、記録ヘッド6とプラテンローラ3とでチューブTとインクリボンRと挟持する。そして、記録ヘッド6の発熱素子の発熱制御を行うことにより記録を行う。
【0051】
記録ヘッド6の発熱素子を駆動する駆動パルスは、外気温センサの検出温度に基づいて、複数段階で変更することが可能となっている。外気温センサで検出した温度が低い場合、チューブTの温度が低くなっているためインクリボンRに加える熱量を増やす必要がある。その際、記録ヘッド6の発熱素子の駆動パルス(通電時間)を長くすることにより、低温環境下でも適正な記録を行うことが可能となっている。
【0052】
搬送モータ42は、プラテンローラ3、供給ローラ2aなどの駆動を担っており、本発明における一実施形態においてはステッピングモータを採用している。チューブTのフォワードフィードおよびバックフィードの切り替えは、ステッピングモータの正回転、逆回転により行っている。また、プリンタ1の搬送速度設定は高速から低速まで3段階で変更することが可能であり、メインモータ5の駆動制御により変更可能となっている。搬送モータ42の駆動はインクリボンカセット8の巻取りスプールにも連結しており、チューブTへの記録が終了したインクリボンRの回収も、メインモータ5の駆動により行う。
【0053】
[制御フローチャート(印字JOB)]
図10は、
図11に示される、本発明の一実施形態におけるプリンタ1でチューブ加熱ユニットの制御を行う場合のフローチャートの内、S204、216の印字JOBの部分を取り出して、印字JOBが終了するまでのプリンタ1の動作を示したフローチャートである。
印字JOBが開始されると(S101)スタートとなり、次に、供給ローラ対2により、チューブTの搬送が開始される(S102)。搬送されたチューブTは、記録部20に到着すると、プラテンローラ3と記録ヘッド6によりチューブTは押しつぶされ、チューブTの印字面を平らにしながら記録ヘッド6により印字が開始される(S103)。印字する必要があるチューブTの本数分、印字が終了したかを確認し(S104)、終了するまで搬送動作と印字動作が繰り返される。必要本数分の印字が終了すると印字されたチューブTが、搬送ローラ4により排出口まで搬送される(S105)。そして、チューブTが、排出口から排出されると、印字JOBが終了し(S106)、エンドとなる。
【0054】
[制御フローチャート(ヒータによる加熱)]
ユーザが操作部13にある電源ボタンを押下し、プリンタ1が通電して待機している状態になる。ユーザはプリンタ1に電源を入れた後、操作部13でチューブTに記録する記録内容および記録ページ数、文字サイズ等を入力・決定する。この時、プリンタ1が動作を開始する(S201)ことでスタートとなり、ユーザはチューブ加熱ユニット101を使用するかどうかを決定し操作部13で入力する(S202)。
【0055】
環境の温度が低くなく、加熱しなくとも、チューブTを印字のために十分に変形させることができる場合には、ユーザはチューブ加熱ユニット101を使用しないことを選択する。この場合、ユーザはチューブTをプリンタ1にセットする(S203)。チューブTが、プリンタ1にセットされると、次に前述の印字JOBについてのフローチャートに進む(S204)。印字JOBが終了すると、プリンタ1の動作が終了し(S205)、プリンタ1が次の記録を開始できるように待機している状態でエンドとなる。
【0056】
S202において、ユーザがチューブ加熱ユニット101を使用する決定をし、操作部13で入力すると、金属部材504のヒータによる予備加熱が開始される(S206)。この時、ヒータ501、502、503の全てがONになり、金属部材504を加熱する。予備加熱の目標温度は55℃であり、金属部材504の温度が55℃へ到達すると、全ヒータがOFFになり、予備加熱を停止する(S207)。
【0057】
前述のように予備加熱が終了すると、表示部14に、ユーザへチューブTをセットすることを促す表示が表れることで、通知がされる(S208)。そこで、ユーザはチューブTをプリンタ1にセットする(S209)。
【0058】
チューブTをプリンタ1にセットした時に、チューブTの直径がφ6.5mm以下であるか、それとも大きいかをユーザが選択して操作部13によって入力する(S210)。チューブTの直径がφ6.5mmより大きい場合には、S219へと進み、印字JOBを開始するかどうかを、ユーザが選択し操作部13で入力する。印字JOBの開始が選択されると、温度が低下した金属部材504を再度、目標温度にするために、予備加熱が再開され、全ヒータがONになる(S220)。これによって、金属部材504の温度が再度55℃へ到達する(S221)。ここで、チューブTの直径がφ6.5mmより大きい場合には、ヒータ501は常にONとなった状態で、チューブTが接触している金属部材504の底辺部分以外の部分の温度が低下するのを防ぐために、ヒータ502、503を制御してONとOFFを繰り返しつつ、当該部分の温度が55℃を保つように温調制御を行う(S222)。
【0059】
チューブTの加熱が終了し、ヒータユニット401から記録部20へとチューブTが搬送されると、前述の印字JOBがなされる(S216)。そして、印字JOBが全て終了すると、全てのヒータがOFFとなる(S217)。ここで、これまでに行ってきた温調制御の設定が初期化される(S218)。最後に、プリンタ1の動作が終了し(S205)、プリンタ1が次の記録を開始できるように待機している状態でエンドとなる。
【0060】
ここで、S210に戻ってチューブTの直径がφ6.5mm以下である場合のフローチャートを説明する。
【0061】
S210において、ユーザが、チューブTの直径がφ6.5mm以下を選択するとS211へと進み、印字JOBを開始するかどうかを、ユーザが選択し操作部13で入力する。印字JOBの開始が選択されると、温度が低下した金属部材504を再度、目標温度にするために、予備加熱が再開され、全ヒータがONになる(S212)。これによって、金属部材504の温度が再度55℃へ到達する(S213)。ここで、チューブTの直径がφ6.5mm以下の場合には、チューブTが接触している金属部材504の底部以外の部分を加熱しないようにするため、ヒータ502、503はOFFとなる(S214)。
【0062】
ヒータ502、503はOFFとなった後に、チューブTが接触している金属部材504の底辺部の温度が低下するのを防ぐために、ヒータ501を制御してONとOFFを繰り返しつつ、当該部分の温度が55℃を保つように温調制御を行う(S215)。
【0063】
チューブTの加熱が終了し、ヒータユニット401から記録部20へと搬送されると、前述の印字JOBがなされる(S216)。そして、印字JOBが全て終了すると、全てのヒータがOFFとなる(S217)。ここで、これまでに行ってきた温度制御の設定が初期化される(S218)。最後に、プリンタ1の動作が終了し(S205)、プリンタ1が次の記録を開始できるように待機している状態でエンドとなる。
【0064】
[温調制御のグラフ]
図12(a)および(b)は、本発明の実施形態の、ヒータ501、502、503について温調制御を行う際の、温調制御の一例を示したものである。
図12(a)は、チューブTの直径がφ6.5mm以下である場合の温調制御の図であり、予備加熱が開始されると、全てのヒータがONとなり、金属部材504を55℃まで加熱する。金属部材504の温度が55℃に到達すると、ユーザに対してチューブTのセットの通知を行うと同時に、全てのヒータをOFFにする。この通知から、実際にユーザがチューブTをプリンタ1にセットするまでの間に、プリンタ1内での放熱によりわずかであるが金属部材504の温度が緩やかに低下する。ユーザがチューブTをセット開始すると、外部の空気による冷却、および、チューブTによって、金属部材504の熱が奪われるために、ユーザによるチューブTのセットが完了し印字JOBの開始選択がなされるまでの間に、金属部材504の温度がやや速いペースで低下する。ユーザにより印字JOBの開始選択がなされると、低下した金属部材504の温度を、55℃まで再度加熱するため、全てのヒータがONとなり、再度の予備加熱が開始される。金属部材504の温度が55℃に到達し再度の予備加熱が終了すると、印字JOBが開始される。印字JOBの遂行中に、サーミスタ505により検出される金属部材504の温度が54℃を下回った場合には、前述のごとく金属部材504のチューブTが接触している部分の温度を上昇させればよいことから、ヒータ501のみがONとなり、金属部材504を加熱する。そして、金属部材504の温度が55℃を上回った場合には、ヒータ501をOFFとする。印字JOBの完了まで、この制御を繰り返す。印字JOBが完了した場合には、ヒータ501についてもOFFとなり、印字動作は終了する。
【0065】
次に、
図12(b)は、チューブTの直径がφ6.5mmより大きい場合の温調制御の図である。印字JOBが開始するまでは、
図12(a)と同様の制御がなされることから、説明は省略する。印字JOBが開始されると、その遂行中に、サーミスタ505により検出される金属部材504の温度が54℃を下回った場合には、前述のごとく金属部材504のチューブTが接触している部分の温度を上昇させればよいことから、ヒータ501、502、503が全てONとなり、金属部材504を加熱する。そして、金属部材504の温度が55℃を上回った場合には、全てのヒータをOFFとする。印字JOBの完了まで、この制御を繰り返す。印字JOBが完了した場合には、全てのヒータがOFFとなり、印字動作は終了する。
【0066】
以上説明したように、本発明の実施形態によれば、効率良くチューブ状記録媒体を加熱することが可能な記録装置を提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0067】
1 記録装置(プリンタ)
3 プラテンローラ
6 記録ヘッド
41 CPU
101 チューブ加熱ユニット
401 ヒータユニット
501、502、503 ヒータ
507 弾性部材
T、T‘ チューブ