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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022166539
(43)【公開日】2022-11-02
(54)【発明の名称】沈砂洗浄装置
(51)【国際特許分類】
   B03B 5/00 20060101AFI20221026BHJP
   B01D 41/02 20060101ALI20221026BHJP
【FI】
B03B5/00 A
B01D41/02
B03B5/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021071803
(22)【出願日】2021-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】591030651
【氏名又は名称】水ing株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094226
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100087066
【弁理士】
【氏名又は名称】熊谷 隆
(72)【発明者】
【氏名】山田 三郎
(72)【発明者】
【氏名】吉田 秀潔
【テーマコード(参考)】
4D071
【Fターム(参考)】
4D071AA02
4D071AB05
4D071AB43
4D071AB48
4D071AB62
4D071DA03
(57)【要約】
【課題】沈砂の洗浄を簡単な構成で効果的に行える沈砂洗浄装置を提供すること。
【解決手段】沈砂洗浄槽10と、沈砂洗浄槽10の内底部に沈砂aの排出方向の上流側から下流側に向かって上向きに傾斜して設置される沈砂搬出コンベヤ70とを有し、沈砂洗浄槽10に投入して洗浄された沈砂aを沈砂搬出コンベヤ70によって搬出する沈砂洗浄装置1である。沈砂洗浄槽10の内底部に位置する沈砂搬出コンベヤ70の上部を、沈砂aを挿通する寸法の開口33を設けたスクリーン29によって覆うことで、沈砂aからし渣を分離する。スクリーン29の下面側に、エアbを供給してスクリーン29の開口33から放出させるエア供給用配管31を設置し、スクリーン29上に沈降してきたし渣による開口33の目詰まりを防止し、同時に沈砂洗浄槽10内にエアbを曝気することで沈砂aの攪拌洗浄をより効果的に行わせる。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
沈砂を投入して洗浄する沈砂洗浄槽と、
前記沈砂洗浄槽の内底部に、沈砂排出方向の上流側から下流側に向かって上向きに傾斜して設置される沈砂搬出コンベヤと、を有し、
前記沈砂洗浄槽に投入して洗浄された沈砂を前記沈砂搬出コンベヤによって前記沈降洗浄槽の外部に搬出する沈砂洗浄装置において、
前記沈砂洗浄槽の内底部に位置する沈砂搬出コンベヤの上部を、沈砂を挿通する寸法の沈砂挿通用開口を設けたスクリーンによって覆ったことを特徴とする沈砂洗浄装置。
【請求項2】
請求項1に記載の沈砂洗浄装置であって、
前記スクリーンの沈砂挿通用開口は、当該スクリーンの上流側を粗目に、下流側を細目に形成したことを特徴とする沈砂洗浄装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の沈砂洗浄装置であって、
前記スクリーンの下面側に、エアを供給して前記スクリーンの沈砂挿通用開口から上方に向かって放出させるエア供給手段を設置したことを特徴とする沈砂洗浄装置。
【請求項4】
請求項3に記載の沈砂洗浄装置であって、
前記エア供給手段は、前記スクリーンの下面の上流側にエア噴出孔を設けて構成され、当該エア噴出孔から噴出させたエアをスクリーンの下面に沿わせて上流側から下流側に導くことで当該スクリーンに形成した複数の沈砂挿通用開口の各々からエアを放出させることを特徴とする沈砂洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水処理場やポンプ場の沈砂池などから回収される沈砂を洗浄するのに用いて好適な沈砂洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下水処理場の沈砂池などから回収される沈砂には、生ごみ、髪の毛、布片などのし渣や汚泥が付着しているので、洗浄により沈砂からし渣や汚泥などを分離する必要があり、このため沈砂洗浄装置が用いられている。
【0003】
ここで一般的に、沈砂洗浄装置による洗浄後の沈砂は一般廃棄物、し渣や汚泥は産業廃棄物として取り扱われるが、沈砂洗浄装置による洗浄が十分行われず、沈砂中にし渣や汚泥が多く含まれてしまうと、当該沈砂についても産業廃棄物扱いとなり、処分費用が高額になってしまう虞があった。
【0004】
また洗浄後の沈砂中にし渣や汚泥が多く含まれてしまうと、当該沈砂を一時貯留するホッパーから臭気のある雫が落ち、衛生面から問題があり、また当該沈砂の含水率が高くなって重くなるので、当該沈砂の搬送頻度が多くなってしまうという問題もあった。
【0005】
上記問題を解決するため、特許文献1に記載の沈砂洗浄装置においては、受槽(2)の沈砂投入管(5a)を取り囲む位置に、中空状のドラム(21)を回転駆動可能に設置し、ドラム(21)を回転させながら沈砂投入管(5a)からドラム(21)内に沈砂(4)を投入し、ドラム(21)の回転による攪拌作用と水による希釈作用によって、沈砂に付着する有機汚物を分離させ、有機汚物は溢流堰(19)から排出させ、沈砂はスクリューコンベヤ(1)により受槽(2)から排出させ、これによって沈砂に付着したし渣や汚泥を分離する構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001-259469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載の沈砂洗浄装置においては、大型のドラム(21)を設置してこれを回転させる必要があるため、設置コストやランニングコストが高くなり、また装置の大型化を招く虞もあった。またドラム(21)によって分離したし渣などの中には、受槽(2)内をスクリューコンベヤ(1)まで沈降して沈砂と共にスクリューコンベヤ(1)によって排出されるものもあり、その結果、効果的な沈砂洗浄が行えなくなる虞もあった。
【0008】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものでありその目的は、沈砂の洗浄を、簡単な構成で効果的且つ安価に行うことができる沈砂洗浄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、沈砂を投入して洗浄する沈砂洗浄槽と、前記沈砂洗浄槽の内底部に、沈砂排出方向の上流側から下流側に向かって上向きに傾斜して設置される沈砂搬出コンベヤと、を有し、前記沈砂洗浄槽に投入して洗浄された沈砂を前記沈砂搬出コンベヤによって前記沈降洗浄槽の外部に搬出する沈砂洗浄装置において、前記沈砂洗浄槽の内底部に位置する沈砂搬出コンベヤの上部を、沈砂を挿通する寸法の沈砂挿通用開口を設けたスクリーンによって覆ったことを特徴としている。
スクリーンとしては、例えば、パンチングメタルのように、沈砂搬出コンベアの上部を覆う板体に沈砂挿通用開口を複数形成して構成しても良いし、或いはバースクリーンのように、前記沈砂挿通用開口となる隙間を介して複数のバーを並列に設置して構成しても良い。またスクリーンは、網目状の板体(メッシュ)など、他の各種構成であっても良い。またスクリーンは、沈砂洗浄槽へ固定しても良いし、着脱自在としても良い。またスクリーンは、無動力式でも良いし、ベルト式などのような可動式でも良い。
本発明によれば、スクリーンによって、し渣を沈砂から分離することができる。即ち、スクリーンを通過して沈砂搬出コンベアによって搬出される沈砂中のし渣を効果的に少なくすることができ、これによって、搬出後の沈砂を確実に一般廃棄物として処理することができ、処分費用(搬出コスト)の低廉化を図ることができる。
また搬出される沈砂中のし渣を抑制できるので、搬出される沈砂の含水率が低減し、当該沈砂を例えば沈砂ホッパーに貯留しても、当該沈砂ホッパーから落ちる雫が抑制され、臭気の低減化も図られる。また含水率が低減化されることで、沈砂の重量を軽くでき、沈砂の搬出スパン(搬出サイクル)を長くすることができる。
また本発明は、沈砂搬出コンベヤの上部をスクリーンによって覆うという簡単な構造なので、その設置コストの低廉化を図ることも出来る。
【0010】
また本発明は、上記特徴に加え、前記スクリーンの沈砂挿通用開口は、当該スクリーンの上流側を粗目に、下流側を細目に形成したことを特徴としている。
本発明によれば、スクリーンの沈砂挿通用開口を細目に形成することでし渣を通しにくくでき、且つ粗目の沈砂挿通用開口を設けることで大きめの沈砂もスクリーンを通過して回収することができる。また粗目の沈砂挿通用開口を上流側の領域に設けることで、例え下流側の領域において細めの沈砂挿通用開口を通過できなかった沈砂も、スクリーンの斜面上を上流側に向けて転がり落ちることで上流側の領域に到達した際にスクリーンを通過できる。これによってし渣のスクリーン通過を効果的に阻止できると同時に、大小の粒径全ての沈砂のスムーズなスクリーン通過が可能になる。
【0011】
また本発明は、上記特徴に加え、前記スクリーンの下面側に、エアを供給して前記スクリーンの沈砂挿通用開口から上方に向かって放出させるエア供給手段を設置したことを特徴としている。
本発明によれば、スクリーン上に沈降してきたし渣による沈砂挿通用開口の閉塞(目詰まり)を防止することができる。同時に、沈砂洗浄槽内にエアを供給(曝気)することで水流を生じさせ、沈砂の攪拌洗浄をより効果的に行わせることができ、沈砂とし渣の分離を促進することができる。
【0012】
また本発明は、上記特徴に加え、前記エア供給手段は、前記スクリーンの下面の上流側にエア噴出孔を設けて構成され、当該エア噴出孔から噴出させたエアをスクリーンの下面に沿わせて上流側から下流側に導くことで当該スクリーンに形成した複数の沈砂挿通用開口の各々からエアを放出させることを特徴としている。
本発明によれば、斜めに設置されたスクリーンの下面の上流側においてエアを噴出する構成としたので、スクリーンの下面に沿わせてスクリーンの下流側までエアを供給でき、スクリーン全体の各沈砂挿通用開口からエアを放出させることができ、これによって各沈砂挿通用開口の閉塞を防止することができる。また沈砂洗浄槽内を広範囲にわたって曝気でき、攪拌できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、沈砂の洗浄を、簡単な構成で効果的且つ安価に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】沈砂洗浄装置1の概略側断面図である。
図2】沈砂洗浄槽10部分の要部拡大概略側断面図である。
図3図2のA-A断面矢視図である。
図4図3のB-B断面矢視図である。
図5図3に示すスクリーン29とエア供給用配管31を取り除いた状態を示す図である。
図6】スクリーン29及びエア供給用配管31を下面側から見た裏面図である。
図7図7(a)はエア供給用配管31の先端側部分の平面図、図7(b)は図7(a)のC-C断面矢視図、図7(c)はその底面図である。
図8】スクリーン29とエア供給用配管31近傍部分における沈砂洗浄装置1の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明の一実施形態にかかる沈砂洗浄装置1の概略側断面図である。同図に示すように、沈砂洗浄装置1は、沈砂を投入して洗浄する沈砂洗浄槽10と、沈砂洗浄槽10の内底部に設置される沈砂搬出コンベヤ70とを具備して構成されている。沈砂搬出コンベヤ70は、沈砂排出方向(矢印A方向)の上流側から下流側に向かって上向きに傾斜して設置されている。そして下記する沈砂受槽15から沈砂洗浄槽10に投入された沈砂(洗浄前沈砂)は、当該沈砂洗浄槽10内に供給される洗浄水によって洗浄された後に沈降し、沈砂搬出コンベヤ70によって沈降洗浄槽10の外部に搬出される。
【0016】
図2は前記沈砂洗浄装置1の内の沈砂洗浄槽10部分の要部拡大概略側断面図、図3図2のA-A断面矢視図である。図2に示すように沈砂洗浄槽10は、略直方体形状に形成された槽であり、その上部の所定位置にはエア供給手段を構成するエアポンプ17が設置されている。沈砂洗浄槽10の上流側(図の右側)には洗浄水供給手段(以下「洗浄水管」という)19が設置され、沈砂洗浄槽10の下流側(図の左側)には矩形状の開口からなる洗浄水排出口(洗浄水排水路)21が設けられている。
【0017】
沈砂洗浄槽10の上面には、沈砂受槽15が取り付けられており、この沈砂受槽15の下端に設けた沈砂投入口22から沈砂洗浄槽10内に洗浄前の沈砂が投入できるように構成されている。沈砂洗浄槽10の左右両側面には、一対の攪拌手段(以下「攪拌用羽根」という)23が設置されている。攪拌用羽根23は、図1に示す攪拌用モータ25によって回転駆動される。
【0018】
沈砂洗浄槽10の内底部の下流側には、沈砂排出用開口27が設けられ、この沈砂排出用開口27はスクリーン29によって覆われている。スクリーン29の下面側には、エア供給手段を構成するエア供給用配管31が設置されている。図4図3のB-B断面矢視図、図5図3に示すスクリーン29とエア供給用配管31を取り外した状態を示す図である。これらの図に示すように、沈砂排出用開口27は略長方形状であって、上流側から下流側に向かって斜め上方に傾斜するように形成されている。沈砂排出用開口27の下部には、沈砂搬出スクリュー71を収納する凹形状のスクリュー収納部73が設けられている。沈砂搬出スクリュー71とスクリュー収納部73などによって沈砂搬出コンベヤ70が構成される。
【0019】
図6はスクリーン29及びスクリーン29の下面側に取り付けられるエア供給用配管31を下面側から見た裏面図である。これらの図に示すように、スクリーン29は、沈砂搬出コンベア70の上部を覆う板体に沈砂挿通用開口(以下「開口」という)33を複数形成して構成されており、この例では金属板に多数の円形の開口33を形成したパンチングメタルを用いている。図3図6に示すように、開口33は、スクリーン29の上流側の領域E1を粗目に(即ち内径を大きく)、下流側の領域E2を細目に(即ち内径を小さく)形成している。領域E1の開口33の穴径とピッチはこの例ではΦ10mm×P15mm、領域E2の開口33の穴径とピッチはこの例ではΦ5mm×P8mmを用いている。これによって、領域E1に位置する開口33は、大きめの沈砂を通過させ、領域E2に位置する開口33は小さめの沈砂を通過させるようにしている。なお、スクリーン29の領域E1を構成する部分と領域E2を構成する部分は別部品とし、両者を接合することで構成しても良い。
【0020】
スクリーン29の上流下流方向に沿う左右両側辺の所定位置(この例では中央と両端近傍の3か所ずつ)には、当該両側辺から幅方向(上流下流方向に直交する方向)に向かって突出するスクリーン支持部(リブ)35が設けられている。スクリーン支持部35は、この例では平板矩形状であり、スクリーン29の面から屈曲して斜め上方に向かうように形成されている。スクリーン支持部35を斜め上方に向かうように形成したのは、図4に示すように、沈砂洗浄槽10の沈砂排出用開口27の上部に位置する左右両側面が斜め上方に向かう形状となっているので、当該傾斜に合わせた傾斜とするためである。なおスクリーン支持部35は、スクリーン29とは別部品で構成してスクリーン29に接合する構成としても良い。
【0021】
図7(a)はエア供給用配管31の先端側部分の平面図、図7(b)は図7(a)のC-C断面矢視図、図7(c)はその底面図である。これらの図に示すように、エア供給用配管31は、合成樹脂製のパイプによって構成され、前記スクリーン29の下面側を上流側から下流側に向かって延びる第1パイプ部(エア供給部)37と、第1パイプ部37の上流側の先端部分から当該第1パイプ部37に対して交差する方向に延びる第2パイプ部(エア噴出部)39とを具備している。即ち、エア供給用配管31の先端部分はT字状に形成されている。第2パイプ部39の左右両端部分は閉塞されており、一方その下面側には複数(4つ)のエア噴出孔41を設けている。エア供給用配管31の他端側は、図2に示すように、前記エアポンプ17に接続したエア吐出管43に接続されている。
【0022】
エア供給用配管31は、スクリーン29の下面側に設置され、このとき第2パイプ部39はスクリーン29の上流側の端部近傍位置に配置される。エア供給用配管31は、図示しない固定手段によってスクリーン29に固定されているが、必ずしもスクリーン29に固定しなくても良い。またエア供給用配管31とエア吐出管43の接続位置は、沈砂洗浄槽10内の洗浄水の吃水面よりも高い位置とし、これによって当該接続部分にし渣などが絡まない構成としている。
【0023】
沈砂搬出コンベヤ(水切りコンベヤ)70は、図1に示すように、スクリュー収納部73と、このスクリュー収納部73に収納される沈砂搬出スクリュー71と、沈砂搬出コンベア70の下流側の端部近傍位置に設置されるスクリュー駆動部75と、沈砂排出部77とを具備している。スクリュー収納部73は、沈砂洗浄槽10の底部に設置した凹状部分と、沈砂洗浄槽10から外部に突出する筒状部分とを有している。スクリュー駆動部75は、スクリュー収納部73の下流側の端部近傍に設置されるスクリュー駆動モータ79と当該スクリュー駆動モータ79の動力を沈砂搬出スクリュー71に伝達する動力伝達機構81とを有して構成されている。スクリュー収納部73の下流側の端部近傍には、下向きに開放された沈砂排出部77が形成されている。沈砂排出部77から排出された沈砂は、ベルトコンベアからなる洗浄沈砂搬出機85によって洗浄沈砂を格納する図示しない沈砂ホッパーに移送される。
【0024】
次に、下水処理場に設置された沈砂洗浄装置1の動作を説明する。図8はスクリーン29とエア供給用配管31近傍部分の動作説明図である。まず図1において、下水処理場の場内雑用水を、洗浄水として洗浄水管19から沈砂洗浄槽10内に供給し、前記洗浄水排出口21から排水させる。排水された洗浄水は例えば図示しない排水路を通り、図示しないポンプ井へ導かれる。同時に前記エアポンプ17を駆動することで、図8に示すように、前記エア供給用配管31の各エア噴出孔41からエア(気泡b)を噴出(曝気)させる。各エア噴出孔41から噴出された気泡bは、スクリーン29の下面の傾斜に沿いながら、スクリーン29の下流側に向かって上昇してゆく。気泡bは、上昇の途中で各開口33を通してスクリーン29の上面側に移動し、沈砂洗浄槽10内を上昇していく。
【0025】
次に、下水処理場内の図示しない沈砂池から回収された洗浄前沈砂を、図1に示す沈砂受槽15を介して沈砂投入口22から沈砂洗浄槽10内に投入する。同時に、スクリュー駆動モータ79と攪拌用モータ25を駆動することで、沈砂搬出スクリュー71と攪拌用羽根23を回転駆動する。
【0026】
沈砂洗浄槽10内に投入されたし渣混じりの洗浄前沈砂は、前記攪拌用羽根23による洗浄水の攪拌によって攪拌され、沈砂とし渣が分離し、洗浄される。本発明においては、さらに前記エア供給用配管31から噴出された空気の気泡b(図8参照)によっても洗浄前沈砂が攪拌されるので、さらに効果的な沈砂の洗浄が行われる。
【0027】
前記洗浄前沈砂の洗浄後、図8に示すように、比重の重い沈砂(洗浄後沈砂)a(a1,a2)は沈砂洗浄槽10内を沈降し、スクリーン29の開口33を通過してスクリュー収納部73内に移動する。沈砂には、大きめの沈砂a1と小さめの沈砂a2がある。一方比重の軽いし渣は、洗浄水と共に洗浄水排出口21から越流によって排出される。
【0028】
沈砂洗浄槽10内を沈降して行くし渣も、沈砂洗浄槽10の底部にはスクリーン29が設置されているので、その開口33よりも大きいし渣は当該開口33を通過できず、洗浄水排出口21から排出されていく。また開口33よりも小さいし渣は、当該開口33を通過しようとするが、開口33からは気泡が噴出しているので、比重の軽いし渣は開口33を通過できず、これも洗浄水排出口21から排出されていく。
【0029】
以上のようにしてスクリーン29を通過した洗浄後沈砂は、沈砂搬出スクリュー71の回転によって下流側に掻き揚げられ移送されて行き、図1に示す沈砂排出部77から排出される。沈砂排出部77から排出された洗浄後沈砂は、洗浄沈砂搬出機85によって図示しない沈砂ホッパーに移送され収納される。
【0030】
以上説明したように、本沈砂洗浄装置1によれば、スクリーン29を設けることで、し渣の沈砂搬送コンベア70への侵入を効果的に防止することができ(スクリーン29がし渣除去手段として作用し)、さらにスクリーン29の下面側からエアを供給することで、し渣の沈砂搬送コンベア70への侵入をさらに効果的に防止することができ、開口33の目詰まりを防止でき、これらのことから良質な沈砂aを回収することができる。即ち、上記したようにエア供給手段の役割の1つは、沈砂洗浄槽10内を攪拌洗浄するための曝気であるが、もう1つはスクリーン29の開口33の目詰まりを防止しながらし渣の開口33通過を阻止することである。
【0031】
スクリーン29に設ける開口33の径は、これを大きくすると当該開口33をし渣が通過し易くなるので、なるべく小さくした方が沈砂aからし渣を分離する上で好ましい。しかし開口33の径を小さくすると、大きめの沈砂a1がスクリーン29を通過できなくなる。そこで本実施形態においては、スクリーン29に粗目の開口33と細目の開口33の両者を設けた。粗目と細目の開口33を設ける際、もしも粗目の開口33を下流側に設けると、上流側に沈降してきた大きめの沈砂a1はスクリーン29を通過できなくなる。このためこの実施形態では、粗目の開口33を上流側の領域E1に設けることで、例え下流側の領域E2において細めの開口33を通過できなかった大きめの沈砂a1も、スクリーン29の斜面上を上流側に向けて転がり落ちることで上流側の領域E1に到達し、これによってスクリーン29を通過できる。これによってし渣のスクリーン29通過を効果的に阻止できると同時に、大小の粒径全ての沈砂aのスムーズなスクリーン29通過を可能としている。この効果は、上流側の領域E1よりも下流側の領域E2を広く(長く)設定することで大きくすることができる。
【0032】
またこの実施形態において、エア噴出孔41をスクリーン29の上流側だけに設けたのは以下の理由による。即ち、仮にエア噴出孔41を、エア供給用配管31の第1パイプ部37にも設けた場合、水深の深い第2パイプ部39に設けたエア噴出孔41からのエアの吐出が弱くなるからである。そこでエア供給用配管31の先端をT字型にして、穴径を大きくした4つのエア噴出孔41を設け、上述のようにこれら4つのエア噴出孔41から噴出させたエアを、スクリーン29の裏面に沿うように上昇させることで、最も上流側に位置する開口33から最も下流側に位置する開口33まで、確実にエアを供給できる構成としたのである。
【0033】
またこの実施形態において、エア噴出孔41を下向き(実施例では真下)に設けたのは、エアポンプ17が停止した場合などでも、逆流によって当該エア噴出孔41が沈砂などによって閉塞しないようにするためである。
【0034】
以上のようにして図示しない沈砂ホッパーに収納された洗浄後沈砂は、生ごみなどのし渣の混入が少ないので、含水率が低く、軽量化され、このため臭気が低減すると同時に、当該沈砂ホッパーからの搬出周期を延ばすことができる。
【0035】
上記沈砂洗浄装置1の運転方法において、洗浄水管19による洗浄水の注水と前記エア噴出孔41からのエアの曝気は常時行い、一方、沈砂搬出スクリュー71と攪拌用羽根23の駆動は、洗浄前沈砂を沈砂洗浄槽10内に投入したとき(またはその前後のとき)から所定時間行うことが好ましい。このように構成すれば、曝気と洗浄水注水が常時行われるので、前回までに投入した沈砂であって沈砂洗浄槽10内に残っている沈砂からもし渣の分離を続けることができ、これによって沈砂洗浄効果をさらに向上させることができるからである。
【0036】
ところで、上記実施形態では、スクリーン29として、パンチングメタルを用いたが、本発明はこれに限定されず、沈砂を挿通する寸法の沈砂挿通用開口を設けたスクリーンであれば、どのような構成のスクリーンであっても良い。例えば上記実施形態のように、沈砂搬出コンベア70の上部を覆う板体に沈砂挿通用の開口33を複数形成する構造であってもよいし、或いはバースクリーンのように、沈砂挿通用の開口となる隙間を介して複数のバーを並列に設置した構造であってもよいし、さらに網目状の板体(メッシュ)などで構成しても良い。
【0037】
また上記実施形態にかかるスクリーン29は、その左右両側辺にスクリーン支持部35を設けたので、図4に示すように、当該スクリーン支持部35を沈砂洗浄槽10の沈砂排出用開口27上部の左右両側面に当接(その状態で固定しても良い)するだけで、容易に着脱できる。なおスクリーン支持部35は、この実施形態ではスクリーン29を構成する板の一部として構成したが、スクリーン29を構成する板とは別部品として構成し、両者間を溶接やボルト・ナットなどで固定・接合する構成としても良い。本実施形態にかかるスクリーン29は容易に着脱ができるので、例えば流入物の状況、即ち投入する沈砂やし渣の状況によって、スクリーン29の開口33の穴径サイズや領域E1,E2の異なる他のスクリーン29への変更も容易に行うことができる。
【0038】
以上説明したように、沈砂洗浄装置1は、沈砂を投入して洗浄する沈砂洗浄槽10と、沈砂洗浄槽10の内底部に沈砂排出方向の上流側から下流側に向かって上向きに傾斜して設置される沈砂搬出コンベヤ70とを有し、沈砂洗浄槽10に投入して洗浄された沈砂を沈砂搬出コンベヤ70によって沈降洗浄槽10の外部に搬出する沈砂洗浄装置1であって、沈砂洗浄槽10の内底部に位置する沈砂搬出コンベヤ70の上部を、沈砂を挿通する寸法の開口33を設けたスクリーン29によって覆ったので、スクリーン29によって、し渣を沈砂から分離することができ、これによってスクリーン29を通過して沈砂搬出コンベア70によって搬出される沈砂中のし渣を効果的に少なくすることができる。このため搬出後の沈砂を確実に一般廃棄物として処理することができ、処分費用(搬出コスト)の低廉化を図ることができる。
【0039】
また搬出される沈砂中のし渣を抑制できるので、搬出される沈砂の含水率が低減し、当該沈砂を例えば沈砂ホッパーに貯留しても、当該沈砂ホッパーから落ちる雫が抑制され、臭気の低減化も図られる。また含水率が低減化されることで、沈砂の重量を軽くでき、沈砂の搬出スパン(搬出サイクル)を長くすることができる。また本沈砂洗浄装置1によれば、沈砂搬出コンベヤ70の上部をスクリーン29によって覆うという簡単な構造なので、その設置コストを安価にすることができる。
【0040】
また上記沈砂洗浄装置1においては、スクリーン29の下面側に、エアを供給してスクリーン29の開口33から上方に向けて放出させるエア供給用配管31などからなるエア供給手段を設置したので、スクリーン29上に沈降してきたし渣による開口33の閉塞(目詰まり)を防止することができる。同時に、沈砂洗浄槽10内にエアを供給(曝気)することで水流を生じさせ、沈砂の攪拌洗浄をより効果的に行わせることで沈砂とし渣との分離を促進することができ、沈砂の洗浄をより効果的に行うことができる。
【0041】
また上記沈砂洗浄装置1によれば、エア供給用配管31のエア噴出孔41を、斜めに設置されたスクリーン29の下面の上流側に設けたので、エア噴出孔41から噴出させたエアをスクリーン29の下面に沿わせて上流側から下流側まで導くことができ、スクリーン29全体の開口33からエアを放出させることができ、各開口33の閉塞を防止することができる。また沈砂洗浄槽10内を広範囲にわたって曝気でき、攪拌できる。
【0042】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載がない何れの形状や構造や材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。
【0043】
例えば上記実施形態では、スクリーン29の目詰まりを防止するために、エアによる曝気を行ったが、その代わりに、水流をスクリーン29の各開口33に当てることや、スクレーパでスクリーン29を拭き取る構成を用いても良い。また上記実施形態では、沈砂から分離させたし渣などを洗浄水と共に洗浄水排出口21から越流によって排出する構成としたが、例えばポンプアップすることによって排出する構成としても良い。
【0044】
また上記実施形態では、エア供給用配管31にエアを供給するためにエアポンプ17を用いたが、エアを供給できる構成であればどのような構成でもよく、例えば下水処理場内にある他の設備(例えば送風機設備や空気源装置)で用いているブロワやコンプレッサーから配管を敷設することなどによってエアを供給しても良い。
【0045】
また上記実施形態では、開口33の大きさを、2種類にした例を説明したが、開口33の大きさは3種類以上にしても良い。その場合もより大きい開口33をより上流側に設けることが好ましい。また場合によっては開口33の大きさは1種類でも良い。
【0046】
また上記実施形態では、攪拌用羽根23によって洗浄水を攪拌する構成としたが、エア噴出孔41からのエアによる洗浄水の攪拌で十分な場合は、攪拌用羽根23の運転を停止してもよいし、また攪拌用羽根23や攪拌用モータ25の設置自体を省略しても良い。
【0047】
また、上記記載及び各図で示した実施形態は、その目的及び構成等に矛盾がない限り、互いの記載内容を組み合わせることが可能である。また、上記記載及び各図の記載内容は、その一部であっても、それぞれ独立した実施形態になり得るものであり、本発明の実施形態は上記記載及び各図を組み合わせた一つの実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0048】
1 沈砂洗浄装置
10 沈砂洗浄槽
15 沈砂受槽
17 エアポンプ(エア供給手段)
19 洗浄水管(洗浄水供給手段)
21 洗浄水排出口(洗浄水排水路)
22 沈砂投入口
23 攪拌用羽根(攪拌手段)
29 スクリーン
31 エア供給用配管(エア供給手段)
33 開口(沈砂挿通用開口)
41 エア噴出孔
70 沈砂搬出コンベヤ
71 沈砂搬出スクリュー
73 スクリュー収納部
a 沈砂
a1 大きめの沈砂
a2 小さめの沈砂
b 気泡
E1 領域
E2 領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8