(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022166563
(43)【公開日】2022-11-02
(54)【発明の名称】2液硬化型ウレタン樹脂組成物、これに使用する溶剤、および用途
(51)【国際特許分類】
C08G 18/08 20060101AFI20221026BHJP
C09D 7/20 20180101ALI20221026BHJP
C09D 175/04 20060101ALI20221026BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20221026BHJP
C09J 175/04 20060101ALI20221026BHJP
【FI】
C08G18/08 038
C09D7/20
C09D175/04
C09J11/06
C09J175/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021071833
(22)【出願日】2021-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】591016839
【氏名又は名称】長岡香料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003029
【氏名又は名称】弁理士法人ブナ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 弘明
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 慎一
(72)【発明者】
【氏名】金井 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】林 收一
(72)【発明者】
【氏名】橋本 清二
(72)【発明者】
【氏名】望月 省三
(72)【発明者】
【氏名】大久保 篤志
【テーマコード(参考)】
4J034
4J038
4J040
【Fターム(参考)】
4J034CA03
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4J040NA05
(57)【要約】
【課題】臭気が改善され、使用者や環境への負荷が少ない、安全性の高い2液硬化型ウレタン樹脂組成物およびこれに使用する溶剤を提供する。
【解決手段】本発明の2液硬化型ウレタン樹脂組成物は、ポリオールを含有する主剤(A)と、イソシアネート化合物を含有する硬化剤(B)とからなる。主剤(A)および硬化剤(B)は、それぞれ同一または異なる溶剤を含有しており、該溶剤が、テルペン系炭化水素類、ケトン類もしくはエステル類からなる食品添加物香料、精油、食用油脂、グリセリン脂肪酸エステルまたはグリセリンである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオールを含有する主剤(A)と、イソシアネート化合物を含有する硬化剤(B)とからなり、前記主剤(A)および前記硬化剤(B)は、それぞれ同一または異なる溶剤を含有しており、該溶剤が、テルペン系炭化水素類、ケトン類もしくはエステル類からなる食品添加物香料、精油、食用油脂、グリセリン脂肪酸エステルまたはグリセリンであることを特徴とする、2液硬化型ウレタン樹脂組成物。
【請求項2】
前記主剤(A)および前記硬化剤(B)にそれぞれ含有される溶剤は、同一または異なる溶剤であって、テルペン系炭化水素類、ケトン類もしくはエステル類からなる食品添加物香料、オレンジオイル、ユズオイル、ライムオイル、レモンオイル、グレープフルーツオイル、マンダリンオイル、ベルガモットオイル、ネロリオイル、シトロネラオイル、ハッサクオイル、パインオイル、ヒノキオイル、シダーウッドオイル、ジュニパーベリーオイル、キャロットシードオイル、カモミールオイル、タイムオイル、スペアミントオイル、ペパーミントオイル、マジョラムオイル、アンゼリカオイル、フェンネルオイル、シソオイル、ガルバナムオイル、キャラウェイオイル、ブラックペッパーオイル、薄荷油、ユーカリオイル、食用油脂、グリセリン脂肪酸エステルおよびグリセリンからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記主剤(A)および前記硬化剤(B)にそれぞれ含有される溶剤は、同一または異なる溶剤であって、リモネン、ダマセノン、2-アセチルフラン、イソホロン、cis-ジャスモン、4’-メトキシアセトフェノン、4-メトキシ-2,5-ジメチル-3(2H)-フラノン、2-ブタノン、2-ノナノン、2-ウンデカノン、2-トリデカノン、トリエチルシトレート、オレンジオイル、レモンオイル、薄荷油、ユーカリオイル、食用油脂およびトリアセチンからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記主剤(A)に含有される溶剤(a)と、前記硬化剤(B)に含有される溶剤(b)とが、以下の組み合わせからなる、請求項1~3のいずれかに記載の樹脂組成物。
(1)(a)リモネン、(b)トリエチルシトレート、またはその逆の組み合わせ
(2)(a)リモネン、(b)食用油脂、またはその逆の組み合わせ
(3)(a)リモネン、(b)トリアセチン、またはその逆の組み合わせ
(4)(a)ケトン類、(b)食用油脂、またはその逆の組み合わせ
(5)(a)ケトン類、(b)トリアセチン、またはその逆の組み合わせ
(6)(a)薄荷油、(b)食用油脂
【請求項5】
ポリオールを含有する主剤(A)と、イソシアネート化合物を含有する硬化剤(B)とにそれぞれ含有される溶剤であって、テルペン系炭化水素類、ケトン類もしくはエステル類からなる食品添加物香料、精油、食用油脂、グリセリン脂肪酸エステルまたはグリセリンである、ことを特徴とする2液硬化型ウレタン樹脂組成物に使用される溶剤。
【請求項6】
前記主剤(A)および前記硬化剤(B)にそれぞれ含有される溶剤は、同一または異なる溶剤であって、テルペン系炭化水素類、ケトン類またはエステル類からなる食品添加物香料、オレンジオイル、ユズオイル、ライムオイル、レモンオイル、グレープフルーツオイル、マンダリンオイル、ベルガモットオイル、ネロリオイル、シトロネラオイル、ハッサクオイル、パインオイル、ヒノキオイル、シダーウッドオイル、ジュニパーベリーオイル、キャロットシードオイル、カモミールオイル、タイムオイル、スペアミントオイル、ペパーミントオイル、マジョラムオイル、アンゼリカオイル、フェンネルオイル、シソオイル、ガルバナムオイル、キャラウェイオイル、ブラックペッパーオイル、薄荷油、ユーカリオイル、食用油脂、グリセリン脂肪酸エステルおよびグリセリンからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項5に記載の溶剤。
【請求項7】
前記主剤(A)および前記硬化剤(B)にそれぞれ含有される溶剤は、同一または異なる溶剤であって、リモネン、ダマセノン、2-アセチルフラン、イソホロン、cis-ジャスモン、4’-メトキシアセトフェノン、4-メトキシ-2,5-ジメチル-3(2H)-フラノン、2-ブタノン、2-ノナノン、2-ウンデカノン、2-トリデカノン、トリエチルシトレート、オレンジオイル、レモンオイル、ユーカリオイル、食用油脂およびトリアセチンからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項5または6に記載の溶剤。
【請求項8】
請求項1~4のいずれかに記載の2液硬化型ウレタン樹脂組成物を含む塗料。
【請求項9】
請求項1~4のいずれかに記載の2液硬化型ウレタン樹脂組成物を含む接着剤。
【請求項10】
請求項1~4のいずれかに記載の2液硬化型ウレタン樹脂組成物を含む注型用樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主剤と硬化剤とからなる2液硬化型ウレタン樹脂組成物、これに使用する溶剤、および前記組成物の用途に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、2液硬化型ウレタン樹脂は、塗料、接着剤、注型等の用途に広く使用されている。2液硬化型ウレタン樹脂には、溶剤として石油系炭化水素が含有されており、特にキシレンが多く使用されている(例えば、特許文献1の[0034]を参照)。これは、キシレンは溶解性に優れ、かつ低コストであるためである。
【0003】
しかし、キシレンは毒物及び劇物取締法では医薬用外劇物に、有機溶剤中毒予防規則では第二種有機溶剤に指定されており、毒性を持つため取り扱いには注意が必要である。特に、キシレンは、眼や気道に対し刺激性を有し、高濃度暴露により頭痛、疲労、一時的な気分の高揚、昏睡、吐き気、胃腸障害、意識喪失、肺障害、肝障害、腎障害、脳障害、神経障害及び死亡例が見られるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、臭気が改善され、使用者や環境への負荷が少ない、安全性の高い2液硬化型ウレタン樹脂組成物およびこれに使用する溶剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の2液硬化型ウレタン樹脂組成物は、ポリオールを含有する主剤(A)と、イソシアネート化合物を含有する硬化剤(B)とからなる。主剤(A)および硬化剤(B)は、それぞれ同一または異なる溶剤を含有しており、該溶剤が、テルペン系炭化水素類、ケトン類もしくはエステル類からなる食品添加物香料、精油、食用油脂、グリセリン脂肪酸エステルまたはグリセリンである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、主剤(A)および硬化剤(B)に含有される溶剤は、食品分野で使用されるテルペン系炭化水素類、ケトン類もしくはエステル類からなる食品添加物香料、精油、食用油脂、グリセリン脂肪酸エステルまたはグリセリンであるので、刺激性のある臭気が改善され、使用者や環境への負荷が少なく、安全性の高い2液硬化型ウレタン樹脂組成物を提供できる。
特に、香気性のあるテルペン系炭化水素類、ケトン類およびもしくはエステル類からなる食品添加物香料や精油を使用すると、2液硬化型ウレタン樹脂組成物を使用して形成された塗膜、接着層、注型品等に香りを付与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の2液硬化型ウレタン樹脂組成物を説明する。本発明の2液硬化型ウレタン樹脂組成物は、主剤(A)と硬化剤(B)とからなる。
【0009】
主剤(A)はポリオールを含有する。ポリオールとしては、数平均分子量が500未満の低分子ポリオールや、数平均分子量が500以上の高分子ポリオールが挙げられる。
低分子ポリオールとしては、エチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジエチレングリコール、ジグリセリン等の低分子多価アルコール類、ソルビトール、シュークロース、グルコース、ラクトース、ソルビタン等の糖類系低分子多価アルコール類、これらの少なくとも1種にアルキレンオキシドを反応させて得られる低分子量のポリオキシアルキレンポリオールなどが挙げられる。
高分子ポリオールとしては、ポリオキシアルキレン系ポリオール、ポリエステル系ポリオール及び炭化水素系ポリオールからなる群から選ばれる1種又は2種以上が好適に挙げられ、数平均分子量が500以上、好ましくは1,000以上ものである。
これらはいずれも単独で或いは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0010】
ポリオキシアルキレン系ポリオールとしては、アルキレンオキシドを開環付加重合させたものや、活性水素を2個以上含有する化合物などの開始剤にアルキレンオキシドを開環付加重合させたものなどが挙げられる。
具体的には、ポリオキシアルキレン系ポリオールは、ポリオキシエチレン系ポリオール、ポリオキシプロピレン系ポリオール、ポリオキシブチレン系ポリオール、ポリテトラメチレンエーテル系ポリオール、ポリ(オキシエチレン)-ポリ(オキシプロピレン)-ランダム或いはブロック共重合系ポリオール、ポリ(オキシプロピレン)-ポリ(オキシブチレン)-ランダム或いはブロック共重合系ポリオールなどのポリエーテルポリオール等を挙げることができ、また、これらの各種ポリエーテルポリオールと有機イソシアネートとを、イソシアネート基に対し水酸基過剰で反応させて、分子末端を水酸基としたものも挙げられる。 これらはいずれも単独で或いは2種以上を組み合わせて使用できる。
ポリオキシアルキレン系ポリオールは、作業性などの点から、数平均分子量が500~100,000、更に1,000~30,000、特に1,000~20,000のものが好ましく、また、1分子当たり平均のアルコール性水酸基の個数は2個以上、更に2~4個が好ましく、2~3個が最も好ましい。
なお、ポリオキシアルキレン系ポリオールとは、分子1モル中の水酸基を除いた部分の50質量%以上、好ましくは80質量%以上がポリオキシアルキレンで構成されていれば、残りの部分がウレタン、エステル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアクリレート、ポリオレフィンなどで変性されていてもよいことを意味する。
【0011】
ポリエステル系ポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリエステルアミドポリオール、ポリエーテル・ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリ(メタ)アクリルポリオール等を挙げることができる。
ポリエステルポリオール、ポリエステルアミドポリオールとしては、例えば、公知のコハク酸、アジピン酸、テレフタル酸等のジカルボン酸、それらの酸エステル、酸無水物等と、活性水素基を2個以上含有するポリオールやポリアミンなどの化合物との脱水縮合反応で得られる化合物が挙げられる。また、ε-カプロラクトン等の環状エステル(すなわちラクトン)モノマーの開裂重合により得られるラクトン系ポリエステルポリオール、乾性油、乾性油の各種変性物等が挙げられる。これらのうちアジピン酸系ポリエステルポリオール、乾性油及びその各種変性物が好ましく、乾性油及びその各種変性物としては、ひまし油系ポリオールが好ましい。
ひまし油系ポリオールは、ひまし油から誘導される重合体である。例えば、ひまし油のアルキレンオキシド付加物、ひまし油のエポキシ化物、ひまし油のハロゲン化物、ひまし油と多価アルコールとのエステル交換物等を使用することができる。このうち、多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン、ジグリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリテトラメチレングリコール、ポリブタジエンポリオール、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオール等を挙げることができる。
ポリエーテル・エステルポリオールとしては、例えば、前記ポリオキシアルキレン系ポリオールと前記のジカルボン酸、酸無水物等とから製造される化合物が挙げられる。
ポリ(メタ)アクリルポリオールとしては、水酸基を含有するヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどを他の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体と共重合したものなどが挙げられる。
これらはいずれも単独で或いは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0012】
炭化水素系ポリオールとしては、例えば、ポリブタジエンポリオールや水素添加ポリブタジエンポリオールなどのポリブタジエン系ポリオール、ポリイソプレンポリオール、水素添加ポリイソプレンポリオール、塩素化ポリエチレンポリオール、塩素化ポリプロピレンポリオールなどが挙げられる。これらのうち、ポリブタジエン系ポリオールが好ましい。
これらはいずれも単独で或いは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0013】
硬化剤(B)に含有されるイソシアネート化合物としては、例えば、分子内にイソシアネート基を2個以上含有するポリイソシアネート化合物が挙げられる。
ポリイソシアネート化合物としては、例えば、2,4-トルエンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート等のトルエンジイソシアネート類、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2′-ジフェニルメタンジイソシアネート等のジフェニルメタンジイソシアネート類(MDI)、1,2-フェニレンジイソシアネート、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート等のフェニレンジイソシアネート類、2,4,6-トリメチルフェニル-1,3-ジイソシアネート、2,4,6-トリイソプロピルフェニル-1,3-ジイソシアネート、1,4-ナフタレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート等のナフタレンジイソシアネート類、クロロフェニレン-2,4-ジイソシアネート、4,4′-ジフェニルエーテルジイソシアネート、3,3′-ジメチルジフェニルメタン-4,4′-ジイソシアネート、3,3′-ジメトキシジフェニル-4,4′-ジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート、o-キシリレンジイソシアネート、m-キシリレンジイソシアネート、p-キシリレンジイソシアネート等のキシリレンジイソシアネート類などの芳香脂肪族ジイソシアネート、1,4-シクロヘキシルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トルエンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネートなどの脂環族ジイソシアネートが挙げられる。また、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、クルードトルエンジイソシアネートなどのポリイソシアネート等が挙げられる。
これらはいずれも単独で或いは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0014】
また、前記ポリイソシアネート化合物と活性水素基を分子内に2個以上有する化合物を、活性水素基に対してポリイソシアネート化合物のイソシアネート基を過剰で反応させて得られるイソシアネート基含有プレポリマーも使用可能である。活性水素基を分子内に2個以上有する化合物としては、例えば、ポリオール、第一級又は第二級アミノ基を含有する化合物、ポリカルボン酸、SH基を有する化合物などを挙げることができる。
【0015】
主剤(A)と、硬化剤(B)との割合は、それぞれに含有されているポリオールとイソシアネート化合物の割合で決定することができる。具体的には、ポリオールの水酸基と、イソシアネート化合物のイソシアネート基との当量比が、NCO/OH=1.0~1.5になるように主剤(A)と硬化剤(B)とを配合するのが好ましい。
【0016】
主剤(A)と硬化剤(B)の一方または両方に、従来から使用されている可塑剤、充填材、耐候安定剤、接着性付与剤、貯蔵安定性改良剤、硬化促進触媒、着色剤などの添加剤を添加してもよい。これらの添加剤は、本発明の硬化性樹脂組成物の目的と用途によって適宜組み合わせて任意に配合することができる。
【0017】
また、主剤(A)および硬化剤(B)には、ポリオールやイソシアネート化合物、その他の添加剤を溶解し、取り扱いを容易にするために、溶剤が加えられる。
このような溶剤としては、刺激性のある臭気がないか、著しく低く、安全性が高いものが挙げられ、具体的にはテルペン系炭化水素類、ケトン類もしくはエステル類からなる食品添加物香料、精油、食用油脂、グリセリン脂肪酸エステルまたはグリセリンが挙げられる。これらの溶剤は、1種のみならず、2種以上を混合して使用してもよい。また、主剤(A)および硬化剤(B)にそれぞれ含有される溶剤は同一であってよく、あるいは互いに異なっていてもよい。使用する溶剤は、主剤(A)および硬化剤(B)にそれぞれ含有される成分との相溶性を考慮して決定すればよい。
【0018】
テルペン系炭化水素類としては、例えばミルセン、ピネン、リモネン、カンフェン、α-フェランドレン、テルピネン、テルピノーレン、ビサボレン、β-カリオフィレン、バレンセン等が挙げられ、好ましくはリモネンである。
ケトン類からなる食品添加物香料としては、例えばダマセノン、2-アセチルフラン、イソホロン、cis-ジャスモン、4’-メトキシアセトフェノン、4-メトキシ-2,5-ジメチル-3(2H)-フラノン、2-ブタノン、2-ノナノン、2-ウンデカノン、2-トリデカノン等が挙げられる。
エステル類からなる食品添加物香料としては、例えばエチルアセテート、ベンジルアセテート、エチルベンゾエート、トリエチルシトレート等が挙げられ、好ましくはトリエチルシトレートである。
精油としては、例えばオレンジオイル、ユズオイル、ライムオイル、レモンオイル、グレープフルーツオイル、マンダリンオイル、ベルガモットオイル、ネロリオイル、シトロネラオイル、ハッサクオイル、パインオイル、ヒノキオイル、シダーウッドオイル、ジュニパーベリーオイル、キャロットシードオイル、カモミールオイル、タイムオイル、スペアミントオイル、ペパーミントオイル、マジョラムオイル、アンゼリカオイル、フェンネルオイル、シソオイル、ガルバナムオイル、キャラウェイオイル、ブラックペッパーオイル、薄荷油、ユーカリオイル等が挙げられ、好ましくはオレンジオイル、レモンオイル、薄荷油またはユーカリオイルである。
【0019】
食用油脂としては、例えばヤシ油分解脂肪酸等の炭素数610、好ましくは810の中鎖脂肪酸から構成される中鎖脂肪酸トリグリセリドが挙げられる。
炭素数610の中鎖脂肪酸としては、nヘキサン酸、nヘプタン酸、nオクタン酸、nノナン酸、及びnデカン酸が挙げられる、炭素数が8及び/又は10の飽和脂肪酸(nオクタン酸及び/又はnデカン酸)が好ましい。中鎖脂肪酸は、ヤシ油やパーム核油等を加水分解することにより得ることができる。
【0020】
このような中鎖脂肪酸トリグリセリドとしては、具体的には、以下の化合物を例示することができる。
・構成脂肪酸が炭素数8の脂肪酸のみからなる中鎖脂肪酸トリグリセリド(日清オイリオグループ(株)製、商品名 スコレー8)
・構成脂肪酸中の炭素数8の脂肪酸と炭素数10の脂肪酸の質量比(炭素数8:炭素数10)が75:25である中鎖脂肪酸トリグリセリド(日清オイリオグループ(株)製、商品名 ODO)
・構成脂肪酸中の炭素数8の脂肪酸と炭素数10の脂肪酸の質量比(炭素数8:炭素数10)が60:40である中鎖脂肪酸トリグリセリド(日清オイリオグループ(株)製、商品名 スコレー64G)
・構成脂肪酸が炭素数10の脂肪酸のみからなる中鎖脂肪酸トリグリセリド(日清オイリオグループ(株)製造品)
・構成脂肪酸が炭素数12の脂肪酸のみからなる中鎖脂肪酸トリグリセリド(日清オイリオグループ(株)製造品)
また、他の食用油脂として、例えば、パーム油、大豆油、菜種油、綿実油、ヒマワリ種子油、高オレイン酸ヒマワリ種子油、落花生油、米糠油、コーン油、サフラワー油、オリーブ油、ゴマ油、イリッペ脂、サル脂、シア脂、パーム核油、ヤシ油、豚脂、乳脂、魚油等も使用できる。
【0021】
前記したグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えばトリアセチンが挙げられる。グリセリンを使用するのも好ましい。
【0022】
これらの溶剤のうち、硬化物が十分な硬さを有し、硬化物表面にブリード(溶剤の滲み出し)を抑制するうえで、ユーカリオイルを単独で使用するのが好ましい。また、ユーカリオイルを前記した他の溶剤と混合して使用してもよい。
【0023】
本発明においては、主剤(A)と硬化剤(B)とにそれぞれ同一または異なる溶剤を使用することができる。異なる溶剤を使用する場合、主剤(A)に含有される溶剤(a)と、硬化剤(B)に含有される溶剤(b)とが、例えば、以下の組み合わせからなるのが好ましい。
(1)(a)リモネン、(b)トリエチルシトレート、またはその逆の組み合わせ
(2)(a)リモネン、(b)食用油脂、またはその逆の組み合わせ
(3)(a)リモネン、(b)トリアセチン、またはその逆の組み合わせ
(4)(a)ケトン類、(b)食用油脂、またはその逆の組み合わせ
(5)(a)ケトン類、(b)トリアセチン、またはその逆の組み合わせ
(6)(a)薄荷油、(b)食用油脂
これにより、硬く、ブリードの発生が抑制された硬化物を得ることができる。
【0024】
主剤(A)および硬化剤(B)に含有される溶剤の含有量は、主剤(A)および硬化剤(B)のそれぞれの総量に対して1~30質量%であるのがよく、好ましくは10~30質量%であり、より好ましくは20~30質量%である。溶剤の含有量がこの範囲であれば、得られる硬化物は充分な硬さを有すると共に、刺激性のある臭気も改善され、安全性も高いものになる。
さらに、テルペン系炭化水素や精油を含有する場合は、硬化物に香りを付与することができるという利点もある。
【0025】
本発明の2液硬化型ウレタン樹脂組成物は、従来からのポリウレタンの用途、例えば塗料、接着剤、注型等に広く適用可能である。本発明の2液硬化型ウレタン樹脂組成物は、使用者や周囲の環境への負荷が少ないので、例えばフィギュア等の模型を注型で作成する場合、個人が手軽に行えるので、家族で楽しむ趣味として広く活用することができる。
また、塗料や接着剤用途に使用する場合は、臭気がなく作業環境が改善されるため、家庭、病院、介護施設、学校等での建設工事や改修工事等に利用することができ、溶剤の身体的・環境的負荷の解消での社会貢献が可能となる。
【0026】
以下、実施例を挙げて、本発明の2液硬化型ウレタン樹脂組成物を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例0027】
所定のポリオールを含む主剤(A)と、4,4‘-ジフェニルメタンジイソシアネートを含む硬化剤(B)にそれぞれ含有させる溶剤として、表1に示したものを準備した。その際、溶剤の含有量は25質量%とした。
次に、主剤(A)と硬化剤(B)とを質量比で1:1の割合で混合し、直ちに型の上に流し込んで、室温で硬化させた。
得られた成形品について、曲げ具合で硬さを評価した。また、成形品の表面へのブリード(溶剤の滲み出し)を目視および触覚で評価した。その結果を表1に示す。
なお、比較のために、溶剤としてキシレンを使用している、(有)アール・シー・ベルグ社製の商品名「ファインキャスト」、ホワイト180秒タイプ(以下、市販品という。)を使用して、上記と同様にして成形品を得、これを評価した。その結果を表1に併せて示す。
なお、硬さの評価は、以下の通りである。
◎:非常に硬い、〇:硬い、△:柔らかい、×:脆い。
ブリードの評価は、以下の通りである。
◎:なし、〇:殆どなし、△:若干あり、×:あり。
【表1】
表1から、実施例1で使用した溶剤は、実用上殆ど問題のないことが分かった。