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特開2022-166564水中で用いる電線、水中で用いる電線の処理方法及び水中で用いる電線の使用方法
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  • 特開-水中で用いる電線、水中で用いる電線の処理方法及び水中で用いる電線の使用方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022166564
(43)【公開日】2022-11-02
(54)【発明の名称】水中で用いる電線、水中で用いる電線の処理方法及び水中で用いる電線の使用方法
(51)【国際特許分類】
   A01M 29/24 20110101AFI20221026BHJP
   A01K 79/00 20060101ALI20221026BHJP
   H01B 7/18 20060101ALI20221026BHJP
   H01B 7/29 20060101ALI20221026BHJP
【FI】
A01M29/24
A01K79/00 J
H01B7/18 Z
H01B7/29
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021071835
(22)【出願日】2021-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】517354102
【氏名又は名称】株式会社花園
(74)【代理人】
【識別番号】100169133
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】名古谷 聡
【テーマコード(参考)】
2B105
2B121
5G313
5G315
【Fターム(参考)】
2B105LA05
2B121AA06
2B121DA02
2B121DA04
2B121DA11
2B121DA12
2B121EA30
2B121FA01
2B121FA07
5G313AA02
5G313AB10
5G313AC03
5G313AC07
5G313AC12
5G313AE07
5G315CA02
5G315CB03
5G315CB06
5G315CB09
(57)【要約】
【課題】水中に生息する鮫等の人的被害或いは食害を齎す生物を忌避する装置に於いて、対向電極を備えた紐状の部材として用いられる電線は、水中で電界を発生し、鮫など食害の頻度が高い軟骨魚類の電流を感知する感覚器官に働きかけるために重要な要素であるが、一般に用いられている電線は水中での使用を想定しておらず、特に海水中では腐食により断線するリスクが大きかった。
【解決手段】耐熱性のある被覆を有し、被覆と電線の間隙が鉱油で充填されている水中で用いる電線、電線の処理方法及びその使用方法であって、該耐熱性のある被覆を有する電線を加熱減圧する工程と、加熱減圧下で電線を鉱油に浸漬する工程と、加熱下で電線を鉱油に浸漬したまま雰囲気を常圧に戻し或いは加圧して被覆と電線の間隙に鉱油を充填させた。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中で用いる電線であって、
該電線は耐熱性のある被覆を有し、
且つ、被覆と電線の間隙が鉱油で充填されていることを特徴とする、
水中で用いる電線。
【請求項2】
該電線に於いて被覆と電線の間隙に充填される鉱油は、
パラフィン系炭化水素、芳香族系炭化水素、ナフテン系炭化水素或いはこれらの混合物であることを特徴とする、
請求項1記載の水中で用いる電線。
【請求項3】
耐熱性のある被覆を有し、被覆と電線の間隙が鉱油で充填されている水中で用いる電線の処理方法であって、
該耐熱性のある被覆を有する電線を加熱減圧する工程と、
加熱減圧下で電線を鉱油に浸漬する工程と、
加熱下で電線を鉱油に浸漬したまま雰囲気を常圧に戻し或いは加圧して被覆と電線の間隙に鉱油を充填させたことを特徴とする、
水中で用いる電線の処理方法。
【請求項4】
該電線に於いて被覆と電線の間隙に充填される鉱油は、
パラフィン系炭化水素、芳香族系炭化水素、ナフテン系炭化水素或いはこれらの混合物であることを特徴とする、
請求項3記載の水中で用いる電線の処理方法。
【請求項5】
耐熱性のある被覆を有し、被覆と電線の間隙が鉱油で充填されている水中で用いる電線の使用方法であって、
防水性を持つ部材に封入された電源装置と、
該防水性を持つ部材の外面の一部或いは全部に設けられた電極と、
該防水性を持つ部材から延伸する対向電極を備えた紐状の部材と、
該電源装置からの通電をオンオフするスイッチを備え、
水中に投入、身体や装具に装着或いはレジャー器具等に装備して該電極間に電圧及び/又は電流を印加することにより、
水中に生息する鮫等の人的被害或いは食害を齎す生物を忌避する装置に於いて、
該防水性を持つ部材から延伸する対向電極を備えた紐状の部材として本発明に係る耐熱性のある被覆を有し、被覆と電線の間隙が鉱油で充填されている水中で用いる電線を用いたことを特徴とする、
水中で用いる電線の使用方法。
【請求項6】
該電源装置から延伸する対向電極を備えた紐状の部材として用いる耐熱性のある被覆を有し、被覆と電線の間隙が鉱油で充填されている水中で用いる電線の長さは、
30cm以上3m以下であることを特徴とする、
請求項5記載の水中で用いる電線の使用方法。
【請求項7】
該電源装置から延伸する対向電極を備えた紐状の部材として用いる耐熱性のある被覆を有し、被覆と電線の間隙が鉱油で充填されている水中で用いる電線の長さは、
50cm以上2m以下であることを特徴とする、
請求項6記載の水中で用いる電線の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中で用いる電線、水中で用いる電線の処理方法及び水中で用いる電線の使用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マグロ等の魚類の釣りの際、鮫等による食害は非常に頻度が高く、問題となっていた。レジャーとしての釣りに於いても、鮫等による食害は興趣を削ぎ、その価値を低下させる原因となっていた。
【0003】
これに対し、漁業分野では食害に対するさまざまな対策が講じられている。魚類、特に鮫など食害の頻度が高い軟骨魚類は頭部に電流を感知する感覚器官を有し、これを用いて捕食対象を捕捉する一助としている。ただし、かかる器官を有しているため電流に対しては非常に敏感であり、これを利用した忌避装置が提案されている。
【0004】
発明者は、かかる装置について継続的に研究開発を行い、水中に生息する鮫等の人的被害或いは食害を齎す生物を忌避する装置及びその使用方法について開示した。(特許文献1参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6582307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1で開示された発明は、水中に生息する鮫等の人的被害或いは食害を齎す生物を忌避する装置に於いて、粘弾性を有する材料よりなるチューブ状部材と、該チューブ状部材の一部に設けられ或いは内蔵された電源装置と、該チューブ状部材の外面の一部或いは全部に設けられた電極と、該チューブ状部材から延伸する対向電極を備えた紐状の部材と、該電極間に電圧を印加するための電源装置からの通電をオンオフするスイッチと、該チューブ状部材を輪状に連接するジョイント部材を備え、水中に投入して該電極間に電圧を印加することにより、水中に生息する鮫等の人的被害或いは食害を齎す生物を忌避する装置であり、その使用方法である。また本発明は、水中に生息する鮫等の人的被害或いは食害を齎す生物を忌避する装置に於いて、粘弾性を有する材料よりなるチューブ状部材と、該チューブ状部材の一部に設けられ或いは内蔵された電源装置と、該チューブ状部材の外面の一部に設けられた電極と、該チューブ状部材の外面の他の一部に設けられた対向電極と、該電極間に電圧を印加するための電源装置からの通電をオンオフするスイッチと、該チューブ状部材を輪状に連接するジョイント部材を備え、水中に投入して該電極間に電圧を印加することにより、水中に生息する鮫等の人的被害或いは食害を齎す生物を忌避する装置であり、その使用方法である。
【0007】
このような装置に於いて、対向電極を備えた紐状の部材として用いられる電線は、水中で電界を発生し、鮫など食害の頻度が高い軟骨魚類の電流を感知する感覚器官に働きかけるために重要な要素であるが、一般に用いられている電線は水中での使用を想定しておらず、特に海水中では腐食により断線するリスクが大きかった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、水中で用いる電線に於いて、該電線は耐熱性のある被覆を有し、且つ、被覆と電線の間隙が鉱油で充填されていることを特徴とする、水中で用いる電線である。
【0009】
また本発明は、該電線に於いて被覆と電線の間隙に充填される鉱油がパラフィン系炭化水素、芳香族系炭化水素、ナフテン系炭化水素或いはこれらの混合物であることを特徴とする。
【0010】
また本発明は、耐熱性のある被覆を有し、被覆と電線の間隙が鉱油で充填されている水中で用いる電線の処理方法に於いて、該耐熱性のある被覆を有する電線を加熱減圧する工程と、加熱減圧下で電線を鉱油に浸漬する工程と、加熱下で電線を鉱油に浸漬したまま雰囲気を常圧に戻し或いは加圧して被覆と電線の間隙に鉱油を充填させたことを特徴とする、水中で用いる電線の処理方法である。
【0011】
また本発明は、該電線に於いて被覆と電線の間隙に充填される鉱油がパラフィン系炭化水素、芳香族系炭化水素、ナフテン系炭化水素或いはこれらの混合物であることを特徴とする。
【0012】
また本発明は、耐熱性のある被覆を有し、被覆と電線の間隙が鉱油で充填されている水中で用いる電線の使用方法に於いて、防水性を持つ部材に封入された電源装置と、該防水性を持つ部材の外面の一部或いは全部に設けられた電極と、該防水性を持つ部材から延伸する対向電極を備えた紐状の部材と、該電源装置からの通電をオンオフするスイッチを備え、水中に投入、身体や装具に装着或いはレジャー器具等に装備して該電極間に電圧及び/又は電流を印加することにより、水中に生息する鮫等の人的被害或いは食害を齎す生物を忌避する装置に於いて、該防水性を持つ部材から延伸する対向電極を備えた紐状の部材として本発明に係る耐熱性のある被覆を有し、被覆と電線の間隙が鉱油で充填されている水中で用いる電線を用いたことを特徴とする、水中で用いる電線の使用方法である。
【0013】
また本発明は、該電源装置から延伸する対向電極を備えた紐状の部材として用いる耐熱性のある被覆を有し、被覆と電線の間隙が鉱油で充填されている水中で用いる電線の長さが30cm以上3m以下であることを特徴とする。
【0014】
また本発明は、該電源装置から延伸する対向電極を備えた紐状の部材として用いる耐熱性のある被覆を有し、被覆と電線の間隙が鉱油で充填されている水中で用いる電線の長さが50cm以上2m以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る、水中で用いる電線、水中で用いる電線の処理方法及び水中で用いる電線の使用方法は、水中、特に海水中で用いる機器に好適に用いられ、最も有効な用途として簡便な構成でレジャーとしての釣りに於いても使用可能でマグロ等の魚類の釣りの際の食害を忌避することの出来る器具の信頼性を著しく向上させ、もって社会に資することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明に係る水中で用いる電線の処理方法の工程を示す概念図である。
図2図2は、本発明に係る水中で用いる電線を備えた水中に生息する鮫等の人的被害或いは食害を齎す生物を忌避する装置の、実施形態の他の例を説明するための図面代用写真である。
図3図3は、本発明に係る水中で用いる電線を備えた水中に生息する鮫等の人的被害或いは食害を齎す生物を忌避する装置の、実施形態の他の例を説明するための図面代用写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、水中で用いる電線に於いて、該電線は耐熱性のある被覆を有し、且つ、被覆と電線の間隙が鉱油で充填されていることを特徴とする、水中で用いる電線である。
【0018】
また本発明は、該電線に於いて被覆と電線の間隙に充填される鉱油がパラフィン系炭化水素、芳香族系炭化水素、ナフテン系炭化水素或いはこれらの混合物であることを特徴とする。
【0019】
また本発明は、耐熱性のある被覆を有し、被覆と電線の間隙が鉱油で充填されている水中で用いる電線の処理方法に於いて、該耐熱性のある被覆を有する電線を加熱減圧する工程と、加熱減圧下で電線を鉱油に浸漬する工程と、加熱下で電線を鉱油に浸漬したまま雰囲気を常圧に戻し或いは加圧して被覆と電線の間隙に鉱油を充填させたことを特徴とする、水中で用いる電線の処理方法である。
【0020】
また本発明は、該電線に於いて被覆と電線の間隙に充填される鉱油がパラフィン系炭化水素、芳香族系炭化水素、ナフテン系炭化水素或いはこれらの混合物であることを特徴とする。
【0021】
また本発明は、耐熱性のある被覆を有し、被覆と電線の間隙が鉱油で充填されている水中で用いる電線の使用方法に於いて、防水性を持つ部材に封入された電源装置と、該防水性を持つ部材の外面の一部或いは全部に設けられた電極と、該防水性を持つ部材から延伸する対向電極を備えた紐状の部材と、該電源装置からの通電をオンオフするスイッチを備え、水中に投入、身体や装具に装着或いはレジャー器具等に装備して該電極間に電圧及び/又は電流を印加することにより、水中に生息する鮫等の人的被害或いは食害を齎す生物を忌避する装置に於いて、該防水性を持つ部材から延伸する対向電極を備えた紐状の部材として本発明に係る耐熱性のある被覆を有し、被覆と電線の間隙が鉱油で充填されている水中で用いる電線を用いたことを特徴とする、水中で用いる電線の使用方法である。
【0022】
また本発明は、該電源装置から延伸する対向電極を備えた紐状の部材として用いる耐熱性のある被覆を有し、被覆と電線の間隙が鉱油で充填されている水中で用いる電線の長さが30cm以上3m以下であることを特徴とする。
【0023】
また本発明は、該電源装置から延伸する対向電極を備えた紐状の部材として用いる耐熱性のある被覆を有し、被覆と電線の間隙が鉱油で充填されている水中で用いる電線の長さが50cm以上2m以下であることを特徴とする。
【0024】
本発明に係る、水中で用いる電線、水中で用いる電線の処理方法及び水中で用いる電線の使用方法は、水中、特に海水中で用いる機器に好適に用いられ、最も有効な用途として簡便な構成でレジャーとしての釣りに於いても使用可能でマグロ等の魚類の釣りの際の食害を忌避することの出来る器具の信頼性を著しく向上させ、もって社会に資することが出来る。
【実施例0025】
以下、本発明に係る、水中で用いる電線、水中で用いる電線の処理方法及び水中で用いる電線の使用方法の実施の例を図面を用いて説明する。図1は、本発明に係る水中で用いる電線の処理方法の工程を示す概念図である。
【0026】
本発明に係る水中で用いる電線の処理方法に於いては、耐熱性のある被覆を有する電線を用意し、該耐熱性のある被覆を有する電線を加熱減圧する工程と、加熱減圧下で電線を鉱油に浸漬する工程と、加熱下で電線を鉱油に浸漬したまま雰囲気を常圧に戻し或いは加圧して被覆と電線の間隙に鉱油を充填させるようにした。
【0027】
発明者らは、水中に生息する鮫等の人的被害或いは食害を齎す生物を忌避する装置に於いて、粘弾性を有する材料よりなるチューブ状部材と、該チューブ状部材の一部に設けられ或いは内蔵された電源装置と、該チューブ状部材の外面の一部或いは全部に設けられた電極と、該チューブ状部材から延伸する対向電極を備えた紐状の部材と、該電極間に電圧を印加するための電源装置からの通電をオンオフするスイッチと、該チューブ状部材を輪状に連接するジョイント部材を備え、水中に投入して該電極間に電圧を印加することにより、水中に生息する鮫等の人的被害或いは食害を齎す生物を忌避する装置であり、その使用方法を開示した。
【0028】
また発明者らは、水中に生息する鮫等の人的被害或いは食害を齎す生物を忌避する装置に於いて、粘弾性を有する材料よりなるチューブ状部材と、該チューブ状部材の一部に設けられ或いは内蔵された電源装置と、該チューブ状部材の外面の一部に設けられた電極と、該チューブ状部材の外面の他の一部に設けられた対向電極と、該電極間に電圧を印加するための電源装置からの通電をオンオフするスイッチと、該チューブ状部材を輪状に連接するジョイント部材を備え、水中に投入して該電極間に電圧を印加することにより、水中に生息する鮫等の人的被害或いは食害を齎す生物を忌避する装置であり、その使用方法を開示した。
【0029】
このような装置に於いて、対向電極を備えた紐状の部材として用いられる電線は、水中で電界を発生し、鮫など食害の頻度が高い軟骨魚類の電流を感知する感覚器官に働きかけるために重要な要素であるが、一般に用いられている電線は水中での使用を想定しておらず、特に海水中では腐食により断線するリスクが大きかった。
【0030】
本発明は特にこれらの装置に用いるための電線として開発されたのであるが、その他の海水中或いは水中で用いる電線に好適に活用され、特に一端に於いて電線を露出させる用途に於いて有効に機能することができる。
【0031】
該電線に於いて被覆と電線の間隙に充填される鉱油としては、パラフィン系炭化水素、芳香族系炭化水素、ナフテン系炭化水素或いはこれらの混合物が好適に用いられる。本実施例に於いては、鉱油として白色ワセリンを用いたが、その他の成分の物を用いても全く問題ない。
【0032】
本実施例に於いては、まず可動な状態で対象となる耐熱性のある被覆を有する電線と鉱油の槽を減圧加熱が可能なチャンバー内に用意し、電線と鉱油の槽が接触していない状態で減圧及び加熱を行なった。減圧は10ヘクトパスカル程度まで行ったが、加熱下で被覆と電線の間隙に鉱油が充填されるためには概ね50ヘクトパスカル以下程度まで減圧すれば有効である。
【0033】
加熱は、本実施例に於いては摂氏120度まで行った。これは、充填対象の鉱油を融点以上に加熱して溶融させ、さらに一定以上の流動性を持たせるためである。ここで、発火等の危険性を回避するため、沸点以上への加熱は避けることが必要である。本実施例に於いては鉱油として融点が概ね摂氏36度乃至60度、沸点が摂氏302度の白色ワセリンを用いたため、前記の通り摂氏120度まで加熱したが、用いる鉱油の特性により、加熱温度は適宜調節される。
【0034】
十分に減圧及び加熱を行なった後、電線を動かして溶融した鉱油の槽に浸漬した。ここで、電線は全体を浸漬しても良いが、一端を浸漬する形でも問題なく、一端が装置に組み込まれた状態でこの操作を行っても問題ない。
【0035】
このように処理された電線は、水中、特に海水中で用いる機器に好適に用いられ、最も有効な用途として簡便な構成でレジャーとしての釣りに於いても使用可能でマグロ等の魚類の釣りの際の食害を忌避することの出来る器具の信頼性を著しく向上させ瑠ことができた。
【0036】
図2及び第3図は、本発明に係る水中で用いる電線を備えた水中に生息する鮫等の人的被害或いは食害を齎す生物を忌避する装置の、実施形態の他の例を説明するための図面代用写真である。第2図は装置部を拡大して撮影しており、本発明に係る水中で用いる電線は本体から延伸して一部が見えている。第3図は装置全体を撮影しており、本発明に係る水中で用いる電線は本体から延伸しているが、長さがあるため、留め具でまとめてある。
【0037】
水中に生息する鮫等の人的被害或いは食害を齎す生物を忌避する装置は、防水性を持つ部材に封入された電源装置と、該防水性を持つ部材の外面の一部或いは全部に設けられた電極と、該防水性を持つ部材から延伸する本発明に係る電線を用いた対向電極を備えた紐状の部材と、該電源装置からの通電をオンオフするスイッチを備え、水中に投入、身体や装具に装着或いはレジャー器具等に装備して該電極間に電圧及び/又は電流を印加することにより、水中に生息する鮫等の人的被害或いは食害を齎す生物を忌避する。
【0038】
本実施例に於いては、防水性を持つ部材が、一端が略ドーム形に成形された略円筒形をなし、釣具、漁具等とともに用い、或いは身体、ウェットスーツ、ライフジャケット、マリンレジャー用器具等に装着して用いるようにした。また、防水性を持つ部材が、円盤状に成形され且つベルトを備え、マリンレジャーの際に腕時計のように装着して用いる事も有効である。
【0039】
防水性を持つ部材は、合成樹脂、シリコン樹脂、天然ゴム、合成ゴム、フェノール樹脂・エポキシ樹脂・メラミン樹脂・尿素樹脂・不飽和ポリエステル樹脂・アルキド樹脂・ポリウレタン・熱硬化性ポリイミド等の熱硬化性樹脂、ポリエチレン・ポリプロピレン・ポリ塩化ビニル・ポリ塩化ビニリデン・ポリスチレン・ポリ酢酸ビニル・ポリテトラフルオロエチレン・ABS樹脂・AS樹脂・アクリル樹脂・ポリアミド・ナイロン・ポリアセタール・ポリカーボネート・変性ポリフェニレンエーテル・ポリブチレンテレフタレート・ポリエチレンテレフタレート・環状ポリオレフィン・ポリフェニレンスルファイド・ポリテトラフロロエチレン・ポリスルホン・ポリエーテルサルフォン・非晶ポリアリレート・液晶ポリマー・ポリエーテルエーテルケトン・熱可塑性ポリイミド・ポリアミドイミド等の熱可塑性樹脂、及びこれらの混合材料、及びこれらと繊維類、グラスファイバー、その他の補強材との複合材料、金属材料を含む複合材料、のいずれかが好適に用いられる。
【0040】
本発明に於いては、電源装置から延伸する本発明に係る電線を用いた対向電極を備えた紐状の部材の長さが30cm以上3m以下であることが望ましく、さらに、電源装置から延伸する本発明に係る電線を用いた対向電極を備えた紐状の部材の長さが50cm以上2m以下であることが望ましい。これは、対象魚のサイズと忌避効果、電源の有効時間から決定される。これらの範囲の延伸する対向電極を用いることで、マグロ等のサイズの大きな対象魚に於いても有効であり、且つ十分な持続時間を得ることができる。
【0041】
電極間に電圧を印加するための電源装置が電池を含んでなることが望ましく、さらに、該電池が乾電池、ボタン型電池或いは充放電が可能な蓄電池であることが望ましい。これらを使用することにより、船上からの送電等が不要となり、レジャー用としても簡便に使用することが可能な装置が実現される。
【0042】
本装置に於いては、該装置に含まれる電源装置が、水中での電磁界を制御するため、放電電圧を準備し、海中に放電することを特徴とする。さらに本発明に於いては、該海中に放電される放電電圧が、パルス電圧であるようにした。これにより、特に海水中での放電による電池の減衰量を少なく抑え、長時間の使用に耐える装置を構成することができる。
【0043】
ここで本装置に於いては、該装置に含まれる電源装置が、水中での電磁界を制御するため、放電電流を海中に出力するようにしても良い。この場合該海中に放電される放電電流を、パルス電流とすると良い。これにより、特に海水中での放電による電池の減衰量を少なく抑え、長時間の使用に耐える装置を構成することができる。
【0044】
本装置に於いては、海中に放電される放電電圧或いは放電電流が、そのパターンを変更することが可能なようにした。又、海中に放電される放電電圧或いは放電電流がそのパターンを変更することが可能であって、且つ、使用時にフィールドでパターン変更が可能であることがさらに望ましい。
【0045】
これにより、対象となる生物が水中での電磁界パターンに慣れて効果が薄れることを防止し、継続的な有効性を確保することができる。
【0046】
パターン変更機能は再プログラムできる機能を搭載することにより実現され、具体的にはプログラマブルハードウェアを搭載すること、或いはマイコン及び記録されるソフトウェアを搭載し、プログラムを書き換えることにより行われる。
【0047】
海中に放電される放電電圧或いは放電電流は、チャージポンプ或いはDCーDCコンバータにより生成されるようにした。海中に放電される放電電圧或いは放電電流のパターンは、のパルス幅及び/又は周期が制御される。
【0048】
海中に放電される放電電圧或いは放電電流のパターンが、そのパルス幅及び/又は周期がランダムに変更されることも有効である。これによっても、対象となる生物が水中での電磁界パターンに慣れて効果が薄れることを防止し、継続的な有効性を確保することができる。
【0049】
海中に放電される放電電圧或いは放電電流のパターンは、そのパルス幅が0.2秒以上0.7秒以内であることが望ましい。また、海中に放電される放電電圧或いは放電電流のパターンの周期が0.5秒以上5秒以内であり、且つ、放電パルス幅の2倍以上であることが望ましくまた、海中に放電される放電電圧或いは放電電流のパターンの周期が1秒以上4秒以内であり、且つ、放電パルス幅の2倍以上であることがさらに望ましい。かかる範囲で用いることにより、忌避効果を損なうことなく水中での放電による電池の減衰量を少なく抑え、長時間の使用に耐える装置を構成することができる。
【0050】
本実施例にかかる装置を用いて実際の釣りに於いて効果確認を行ったところ、マグロ釣りに於いては通常8割ほどが食害の被害に遭っているものが本装置の使用により食害が1割程度以下に抑えられ、劇的に有効であることがわかった。これは、金目鯛釣りに於いても同様の効果が確認された。
【0051】
本装置に於いては、電極間に電圧を印加するための電源装置からの通電をオンオフするスイッチが水中に投入された場合にセンサーが反応してオンとなる構成とすることも同様に有効である。この場合、水中に投入された際に抵抗値が変化することを感知するセンサー等が好適に用いられる。
【0052】
係る水中に生息する鮫等の人的被害或いは食害を齎す生物を忌避する装置は、海水中で放電を行うことから、電線の腐食の進行が非常に早く、信頼性に影響を与えていた。本発明は係る課題を解決し、係る装置に於いても電線の腐食を非常に遅くして信頼性を向上させ、装置寿命を延伸してコストダウンにも貢献することができた。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上述べてきたように、水中で用いる電線、水中で用いる電線の処理方法及び水中で用いる電線の使用方法は、水中、特に海水中で用いる機器に好適に用いられ、最も有効な用途として簡便な構成でレジャーとしての釣りに於いても使用可能でマグロ等の魚類の釣りの際の食害を忌避することの出来る器具の信頼性を著しく向上させ、産業上の利用可能性は大である。
図1
図2
図3