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  • 特開-鉄鋼スラグ水和固化体の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022166588
(43)【公開日】2022-11-02
(54)【発明の名称】鉄鋼スラグ水和固化体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/02 20060101AFI20221026BHJP
   C04B 18/08 20060101ALI20221026BHJP
   C04B 18/14 20060101ALI20221026BHJP
   C04B 24/06 20060101ALI20221026BHJP
   C04B 24/10 20060101ALI20221026BHJP
   C04B 24/26 20060101ALI20221026BHJP
   C04B 24/32 20060101ALI20221026BHJP
   C04B 24/38 20060101ALI20221026BHJP
   B28C 7/04 20060101ALI20221026BHJP
【FI】
C04B28/02
C04B18/08 Z
C04B18/14 A
C04B18/14 F
C04B24/06 A
C04B24/10
C04B24/26 F
C04B24/26 E
C04B24/32 A
C04B24/38 Z
B28C7/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021071895
(22)【出願日】2021-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】503044237
【氏名又は名称】株式会社フローリック
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上村 竜介
(72)【発明者】
【氏名】木村 孝範
(72)【発明者】
【氏名】田村 啓
(72)【発明者】
【氏名】藤井 裕司
(72)【発明者】
【氏名】光石 尚道
(72)【発明者】
【氏名】安田 玲子
(72)【発明者】
【氏名】西 祐宜
【テーマコード(参考)】
4G056
4G112
【Fターム(参考)】
4G056AA06
4G056AA25
4G056CB27
4G112MD02
4G112MD03
4G112MD04
4G112MD05
4G112MD07
4G112PA27
4G112PA29
4G112PB17
4G112PB19
4G112PB31
4G112PB36
4G112PB39
4G112PC03
4G112PC05
4G112PE01
(57)【要約】
【課題】通常のコンクリートとは異なり,施工の可使時間,水和調整および強度発現性のコントロールが困難な鉄鋼スラグ水和固化体の課題を解決すること。
【解決手段】(A)セメント、及び(B)酸化ケイ素及び酸化カルシウムを少なくとも含有し、酸化ケイ素の含有量が10.0重量%以上であり、酸化カルシウムの含有量が35.0重量%以上であり、粒径5mm以上の粒子の含有量が40.0重量%以上である、鉄鋼スラグ骨材を少なくとも含有する第1の原料群に、(C)水、(D1)遅延剤、及び(D2)ポリカルボン酸系共重合体、グリコールエーテル系共重合体及びそれらの塩から選ばれる1以上を少なくとも含有し、(D1):(D2)=10.0:90.0~80.0:20.0である第2の原料群に添加し、硬化して水和固化体を得ることを少なくとも含む、鉄鋼スラグ水和固化体の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分:セメント、及び
(B)成分:酸化ケイ素及び酸化カルシウムを少なくとも含有し、酸化ケイ素の含有量が10.0重量%以上であり、酸化カルシウムの含有量が35.0重量%以上であり、粒径5mm以上の粒子の含有量が40.0重量%以上である、鉄鋼スラグ骨材を少なくとも含有する第1の原料群に、
(C)成分:水、
(D1)成分:遅延剤、及び
(D2)成分:ポリカルボン酸系共重合体、グリコールエーテル系共重合体及びそれらの塩から選ばれる1以上
を少なくとも含有し、
(D1)及び(D2)成分の重量比が(D1):(D2)=10.0:90.0~80.0:20.0である第2の原料群に添加し、硬化して水和固化体を得ることを少なくとも含む、鉄鋼スラグ水和固化体の製造方法。
【請求項2】
(B)成分が、密度1.75~3.30g/cm3、吸水率0.5~16.0%、塩基度1.0以上であり、且つ等量の水に24時間浸漬した際の水のpHが8~13である鉄鋼スラグ骨材を含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
(D1)成分が、
グルコース、ガラクトース、マンノース、ラムノース、アラビノース、及びキシロースからなる群より選ばれる少なくとも1つの糖から構成される多糖、
グルコン酸ナトリウム、並びに、
デキストロース当量が10以上のデキストリン
からなる群より選ばれる少なくとも1つを含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
(D2)成分が、
下記一般式(1):
【化1】
(式中、R1、R2およびR3は、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1~3のアルキル基を表す。mは、0~2の数を表す。A1Oは、同一若しくは異なって、炭素原子数2~18のオキシアルキレン基を表す。n1は、オキシアルキレン基の平均付加モル数であり、1~200の数を表す。Xは、水素原子または炭素原子数1~30の炭化水素基を表す。)で表される単量体(I)に由来する構成単位と、
不飽和モノカルボン酸系単量体(II)に由来する構成単位と、
単量体(I)~(II)と共重合可能なその他の単量体(III)に由来する構成単位とを含み、
各単量体の共重合時の重量比率が50≦(I)≦97、1≦(II)≦50、0≦(III)≦50であるポリカルボン酸系共重合体またはその塩(D2-1)を含有し、
ポリカルボン酸系共重合体またはその塩(D2-1)は、
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定される重量平均分子量が7,000~15,000であり、
ゲルパーミエーションクロマトグラム上のポリマーピークの重量平均分子量Mw(AH)およびMw(AL)の差が、8,000~12,000(ただし、Mw(AH)>Mw(AL)である)であり、
ゲルパーミエーションクロマトグラム上の高分子量側のピーク面積をAH、低分子量側のピーク面積をALとしたときに、AH/(AH+AL)×100が70%~80%である
請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
(D2)成分が、
下記一般式(IV):
4-O-(A2O)-R5 ・・・(2)
(一般式(IV)中、R4は、炭素原子数2~5のアルケニル基を示す。A2Oは、同一若しくは異なっていてもよい、炭素原子数2~18のオキシアルキレン基を示す。n1は、オキシアルキレン基の平均付加モル数を示し、1~200の数を示す。R5は、水素原子又は炭素原子数1~30の炭化水素基を示す。)で表される単量体(IV)に由来する構成単位を含むグリコールエーテル系重合体(D2-2)を含有する、
請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
(E)成分:フライアッシュを添加することをさらに含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
(B)成分がスラグ微粉末を少なくとも含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄鋼スラグ水和固化体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製鋼スラグは、仮設路盤材、埋戻し材等の用途への使用から、高炉スラグ微粉末、製鋼スラグ、水を必須材料とする鉄鋼スラグ水和固化体への有効利用へと推移ししてきた(非特許文献1)。非特許文献2は公認化され、適用事例も増加している。当初、鉄鋼スラグ水和固化体は、f-CaOまたはf-MgO由来の膨張問題を抱えていたが、粉化率とMgO含有量を規定することでこの問題を回避している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】高野良広ほか,鉄鋼スラグ水和固化体の開発経緯と特徴および適用事例,新日鉄住金技報第399号,2014,p42-50
【非特許文献2】鉄鋼スラグ水和固化体技術マニュアル,(財)沿岸技術研究センター,2008年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら,コンクリートの代替材料として使用するには,フレッシュの可使時間制御,凝結時間の調整,強度発現時期の調整に難点を抱えている。これらの調整しなければいけない要因をコンクリートと同様レベルまで高次元化する技術は存在しない。本発明の課題は、セメント等の従来の水硬性組成物に代わる鉄鋼スラグ水和固化体の製造方法を提供することである。すなわち,通常のコンクリートとは異なり,施工の可使時間,水和調整および強度発現性のコントロールが困難な鉄鋼スラグ水和固化体の課題を解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下を提供する。
〔1〕(A)成分:セメント、及び
(B)成分:酸化ケイ素及び酸化カルシウムを少なくとも含有し、酸化ケイ素の含有量が10.0重量%以上であり、酸化カルシウムの含有量が35.0重量%以上であり、粒径5mm以上の粒子の含有量が40.0重量%以上である、鉄鋼スラグ骨材を少なくとも含有する第1の原料群に、
(C)成分:水、
(D1)成分:遅延剤、及び
(D2)成分:ポリカルボン酸系共重合体、グリコールエーテル系共重合体及びそれらの塩から選ばれる1以上
を少なくとも含有し、
(D1)及び(D2)成分の重量比が(D1):(D2)=10.0:90.0~8.00:20.0である第2の原料群に添加し、硬化して水和固化体を得ることを少なくとも含む、鉄鋼スラグ水和固化体の製造方法。
〔2〕(B)成分が、密度1.75~3.30g/cm3、吸水率0.5~16.0%、塩基度1.0以上であり、且つ等量の水に24時間浸漬した際の水のpHが8~13である鉄鋼スラグ骨材を含む、〔1〕に記載の製造方法。
〔3〕(D1)成分が、
グルコース、ガラクトース、マンノース、ラムノース、アラビノース、及びキシロースからなる群より選ばれる少なくとも1つの糖から構成される多糖、
グルコン酸ナトリウム、並びに、
デキストロース当量が10以上のデキストリン
からなる群より選ばれる少なくとも1つを含む、〔1〕に記載の製造方法。
〔4〕(D2)成分が、
下記一般式(1):
【化1】
(式中、R1、R2およびR3は、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1~3のアルキル基を表す。mは、0~2の数を表す。A1Oは、同一若しくは異なって、炭素原子数2~18のオキシアルキレン基を表す。n1は、オキシアルキレン基の平均付加モル数であり、1~200の数を表す。Xは、水素原子または炭素原子数1~30の炭化水素基を表す。)で表される単量体(I)に由来する構成単位と、
不飽和モノカルボン酸系単量体(II)に由来する構成単位と、
単量体(I)~(II)と共重合可能なその他の単量体(III)に由来する構成単位とを含み、
各単量体の共重合時の重量比率が50≦(I)≦97、1≦(II)≦50、0≦(III)≦50であるポリカルボン酸系共重合体またはその塩(D2-1)を含有し、
ポリカルボン酸系共重合体またはその塩(D2-1)は、
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定される重量平均分子量が7,000~15,000であり、
ゲルパーミエーションクロマトグラム上のポリマーピークの重量平均分子量Mw(AH)およびMw(AL)の差が、8,000~12,000(ただし、Mw(AH)>Mw(AL)である)であり、
ゲルパーミエーションクロマトグラム上の高分子量側のピーク面積をAH、低分子量側のピーク面積をALとしたときに、AH/(AH+AL)×100が70%~80%である
〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載の製造方法。
〔5〕(D2)成分が、
下記一般式(IV):
4-O-(A2O)-R5 ・・・(2)
(一般式(IV)中、R4は、炭素原子数2~5のアルケニル基を示す。A2Oは、同一若しくは異なっていてもよい、炭素原子数2~18のオキシアルキレン基を示す。n1は、オキシアルキレン基の平均付加モル数を示し、1~200の数を示す。R5は、水素原子又は炭素原子数1~30の炭化水素基を示す。)で表される単量体(IV)に由来する構成単位を含むグリコールエーテル系重合体(D2-2)を含有する、
〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載の製造方法。
〔6〕(E)成分:フライアッシュを添加することをさらに含む、〔1〕~〔5〕のいずれか1項に記載の製造方法。
〔7〕(B)成分がスラグ微粉末を少なくとも含む、〔1〕~〔6〕のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、セメント等の従来の水硬性組成物と同等以上の性能を有する、鉄鋼スラグ水和固化体を製造することができ施工の可使時間,水和調整および強度発現性のコントロールが困難な鉄鋼スラグ水和固化体の課題を解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、ポリカルボン酸系共重合体またはその塩(A)のクロマトグラムの一例であり、ポリマーピークの重量平均分子量および面積比率を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[鉄鋼スラグ水和固化体の成分]
本発明における鉄鋼スラグ水和固化体は、下記の(A)~(D)成分を用いて製造されることが好ましく、さらに(E)成分を用いてもよく、必要に応じて(A)~(E)以外の成分を用いてもよい。
【0009】
<(A)成分:セメント>
セメントは、例えば、ポルトランドセメント(例えば、普通、早強、超早強、中庸熱、耐硫酸塩およびそれぞれの低アルカリ形)、混合セメント(例えば、高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント)、白色ポルトランドセメント、アルミナセメント、超速硬セメント(例えば、1クリンカー速硬性セメント、2クリンカー速硬性セメント、リン酸マグネシウムセメント)、グラウト用セメント、油井セメント、低発熱セメント(例えば、低発熱型高炉セメント、フライアッシュ混合低発熱型高炉セメント、ビーライト高含有セメント)、超高強度セメント、セメント系固化材、エコセメント(例えば、都市ごみ焼却灰、下水汚泥焼却灰の1種以上を原料として製造されたセメント)が挙げられる。これらのうち、ポルトランドセメント、混合セメントが好ましい。ポルトランドセメントとしては、普通ポルトランドセメントが好ましい。混合セメントとしては、高炉セメントが好ましい。
【0010】
(A)成分は、セメント1種単独でもよいし、2種以上の組み合わせでもよい。
【0011】
<(B)成分:鉄鋼スラグ骨材>
鉄鋼スラグ骨材は、鉄鋼スラグを原料とする骨材である。鉄鋼スラグは、製鉄の際の副産物であり、副原料である石灰石に由来するスラグである。鉄鋼スラグとしては、例えば、高炉スラグ(例、水砕スラグ、徐冷スラグ)、製鋼スラグ(転炉系スラグ、電気炉系スラグ)、造塊スラグ、AOD(Argon Oxygen Decarburization)にスラグ(ステンレススラグ)が挙げられるが、特に限定されない。
【0012】
-無機成分-
鉄鋼スラグ骨材は、通常、無機成分を含む。無機成分としては、例えば、酸化マグネシウム(MgO)、酸化アルミニウム(Al23)、酸化ケイ素(SiO2)、酸化硫黄(SO2、SO3、SO4)、酸化カルシウム(CaO)、酸化マンガン(MnO、MnO2、Mn23、Mn34)、酸化鉄(Fe23、FeO、Fe34)、酸化リン(P25)が挙げられる。(B)成分は、少なくとも酸化ケイ素及び酸化カルシウムの少なくともいずれかを含むことが好ましく、両方を含むことがより好ましい。
【0013】
(B)成分における、無機成分の組成は特に限定されないが、一例を挙げると以下の通りである。酸化ケイ素の含有量は、通常10.0重量%以上、好ましくは11.0重量%以上、より好ましくは12.0重量%以上である。上限は、通常40.0重量%以下、好ましくは35.0重量%以下、より好ましくは30.0重量%以下であるが、特に限定されない。酸化カルシウムの含有量は、通常35.0重量%以上、好ましくは36.0重量%以上、より好ましくは37.0重量%以上である。上限は、通常80.0重量%以下、好ましくは75.0重量%以下、より好ましくは70.0重量%以下であるが、特に限定されない。
【0014】
酸化マグネシウムの含有量は、通常0.5重量%以上、好ましくは1.0重量%以上、より好ましくは1.5重量%以上である。上限は、通常25.0重量%以下、好ましくは23.0重量%以下、より好ましくは20.0重量%以下であるが、特に限定されない。酸化アルミニウムの含有量は、通常0.5重量%以上、好ましくは1.5重量%以上、より好ましくは2.0重量%以上である。上限は、通常30.0重量%以下、好ましくは25.0重量%以下、より好ましくは20.0重量%以下であるが、特に限定されない。酸化硫黄の含有量は、通常0.1重量%以上、好ましくは0.2重量%以上、より好ましくは0.3重量%以上である。上限は、通常10.0量%以下、好ましくは9.0重量%以下、より好ましくは8.0重量%以下であるが、特に限定されない。酸化マンガン(MnO)の含有量は、通常0.5重量%以上、好ましくは1.0重量%以上、より好ましくは1.5重量%以上である。上限は、通常10.0重量%以下、好ましくは9.0重量%以下、より好ましくは8.0重量%以下であるが、特に限定されない。酸化鉄の含有量(Fe23)は、通常0.5重量%以上、好ましくは1.0重量%以上、より好ましくは1.5重量%以上である。上限は、通常40.0重量%以下、好ましくは35.0重量%以下、より好ましくは30.0重量%以下であるが、特に限定されない。
【0015】
無機成分の組成は、(B)成分として用いる鉄鋼スラグ骨材の蛍光X線分析(定量分析)により確認でき、後段の実施例でもこの方法で確認した。
【0016】
-粒子サイズ-
鉄鋼スラグ骨材は、通常、鉄鋼スラグの粒子を含む。粒径の下限は特に限定されないが、(B)成分としては、粒径5mm以上の粒子を含むことが好ましい。(B)成分全量に対する粒径5mm以上の粒子の含有量は、通常40.0重量%以上、好ましくは45.0重量%以上、より好ましくは50.0重量%以上である。上限は、通常80.0重量%以下、好ましくは75.0重量%以下、より好ましくは70.0重量%以下である。粒径5mm以上の粒子の含有量の測定は、JIS A 1102:2009により行えばよい。
【0017】
(B)成分における、粒径5mm以上の粒子の含有量の調整の方法は、例えば、粒径5mm以上の粒子である少なくとも1種の鉄鋼スラグ骨材(B1)と、5mm以下の粒子である少なくとも1種の鉄鋼スラグ骨材(B2)の組み合わせを(B)成分として用い、各配合量を調整する方法が挙げられる。鉄鋼スラグ骨材(B1)(粒径5mm以上)の粗粒率(F.M.、粒度)は、通常5.0超、好ましくは5.1以上、より好ましくは5.2以上である。上限は、10.0以下、好ましくは9.0以下、より好ましくは8.0以下である。鉄鋼スラグ骨材(B2)(粒径5mm未満、但しスラグ微粉末を除く)の粗粒率は、通常1.0以上、好ましくは1.3以上、より好ましくは1.5以上である。上限は、5.0以下、好ましくは4.5以下、より好ましくは4.0以下である。粗粒率の測定は、JIS A 1102に準拠して行えばよい。鉄鋼スラグ骨材の粒径の調整は、常法に従って(例、造粒条件の調整)行えばよい。
【0018】
-スラグ微粉末-
(B)成分は、スラグ微粉末を含むことが好ましい。本明細書においてスラグ微粉末とは、高炉スラグ微粉末を意味する。高炉スラグ微粉末は、高炉水砕スラグを粉砕して製造され得、JIS A 6206:2013に規定される規格を満たすことが好ましい。高炉スラグ微粉末の平均粒径は、好ましくは850μm以下である。
【0019】
-密度、吸水率-
鉄鋼スラグ骨材の(表乾)密度は、通常1.75g/cm3以上、好ましくは1.80以上、より好ましくは1.90以上である。上限は、通常3.30g/cm3以下、好ましくは3.20g/cm3以下、より好ましくは3.15g/cm3以下である。鉄鋼スラグ骨材の吸水率は、通常0.5%以上、好ましくは2.0%以上、より好ましくは4.0%以上である。上限は、通常16.0%、好ましくは15.5%以下、より好ましくは15.0%以下である。スラグ骨材(スラグ微粉末以外)の密度(表乾密度)及び吸水率は、JIS A 1110に準拠して測定でき、後段の実施例でもこの方法で確認した。また、スラグ微粉末の密度は、JIS R 5201:2005に準拠して測定でき、後段の実施例でもこの方法で確認した。
【0020】
-塩基度-
鉄鋼スラグ骨材の塩基度は、通常1.0以上であり、好ましくは1.5以上、より好ましくは2.0以上である。上限は、通常4.5以下である。
【0021】
-浸漬水のpH-
鉄鋼スラグ骨材の等量の水に24時間浸漬した際の水のpHは、通常8以上、好ましくは10以上、より好ましくは11以上である。上限は、通常13以下である。
【0022】
(B)成分は、鉄鋼スラグ骨材1種単独でもよいし、2種以上の組み合わせでもよい。(B)成分が鉄鋼スラグ骨材の2種以上の組み合わせである場合、少なくとも1つの鉄鋼スラグ骨材が上述の密度、吸水率、塩基度、及びpHから選ばれる少なくとも1つのパラメータを満たすことが好ましく、すべてのパラメータを満たすことがより好ましい。
【0023】
<(C)成分:水>
水としては、例えば、上水道水、上水道水以外の水(例、河川水、湖沼水、井戸水、地下水、工業用水)、回収水(例、上澄水、スラッジ水)、精製水(例、蒸留水、イオン交換水)が挙げられるが、特に限定されない。
【0024】
<(D1)成分:遅延剤>
遅延剤としては、例えば、糖類(例えば、グルコース、ガラクトース、マンノース、ラムノース、アラビノース、キシロース、フルクトース、リボース、サッカロース、セロビオース等の単糖、これらから選ばれる少なくとも2つから構成される二糖、三糖、オリゴ糖、多糖(例えば、デキストリン))、オキシカルボン酸系化合物(例えば、グルコン酸、グルコヘプトン酸、アラボン酸、リンゴ酸、クエン酸等の、炭素原子数4~10のオキシカルボン酸、及びこれらの塩(例、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、トリエタノールアミンなどの無機塩又は有機塩)が挙げられ、好ましくは、グルコース、ガラクトース、マンノース、ラムノース、アラビノース、及びキシロースからなる群より選ばれる少なくとも1つの糖から構成される多糖、グルコン酸、グルコン酸塩、デキストリンであり、より好ましくはグルコン酸塩である。グルコン酸塩は、グルコン酸ナトリウムが好ましい。デキストリンは、デキストロース当量が10以上のデキストリンが好ましい。(D1)成分は、遅延剤1種でもよいし、2種以上の組み合わせでもよい。
【0025】
<(D2)成分:ポリカルボン酸系共重合体、グリコールエーテル系共重合体又はそれらの塩>
ポリカルボン酸系共重合体又はその塩としては、例えば、下記の単量体(I)~(III)に由来する構成単位を含むポリカルボン酸系共重合体又はその塩(D2-0)、及び、下記の単量体(IV)に由来する構成単位を含むポリアルキレングリコールモノアリルエーテル(D2-2)が挙げられる。
(共重合体又はその塩(D2-0))
(D2-0)は、下記一般式(1):
【化2】
で表される単量体(I)に由来する構成単位と、
不飽和モノカルボン酸系単量体(II)に由来する構成単位と、
単量体(I)~(II)と共重合可能なその他の単量体(III)に由来する構成単位とを含む不飽和モノカルボン酸系単量体(b)に由来する構成単位と
を含む共重合体又はその塩である。塩としては例えば、一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩ならびに有機アンモニウム塩が挙げられ、このうち、カルシウム塩、マグネシウム塩、ナトリウム塩、カルシウム・ナトリウム混合塩などが好ましい。
【0026】
-単量体(I)~(III)の共重合時の重量比率-
各単量体の共重合時の重合比率の目安は、以下のとおりである。単量体(I)の重量比率は、通常、50≦(I)≦97であり、60≦(I)≦97が好ましく、65≦(I)≦97がより好ましい。単量体(II)の重量比率は、通常、1≦(II)≦50であり、5≦(II)≦50が好ましく、5≦(II)≦40がより好ましい。単量体(III)の重量比率は、通常、0≦(III)≦50であり、0≦(III)≦40が好ましく、0≦(III)≦30がより好ましく、0≦(III)≦10がさらに好ましく、0≦(III)≦1がさらにより好ましく、0≦(III)≦0.5がとりわけ好ましい。共重合の際には通常、単量体の一部が共重合せずに反応系に残るため、ポリカルボン酸系共重合体における各構成単位の比率を特定することは、困難である。単量体(I)~(III)のそれぞれは、1種でもよいし2種以上の組み合わせでもよい。上記重量比率は、各単量体が複数の場合にはその合計量の重量比率である。
【0027】
-単量体(I):一般式(1)で表される単量体-
単量体(I)は、上記一般式(1)で表される。一般式(1)中のR1、R2およびR3は、それぞれ独立に水素原子または炭素原子数1~3のアルキル基を表す。一般式(1)中のA1Oは、同一若しくは異なって、炭素原子数2~18のオキシアルキレン基を表す。該オキシアルキレン基としては、例えば、オキシエチレン基(エチレングリコール単位)、オキシプロピレン基(プロピレングリコール単位)、オキシブチレン基(ブチレングリコール単位)が挙げられ、オキシエチレン基(エチレングリコール単位)、オキシプロピレン基(プロピレングリコール単位)が好ましい。「同一若しくは異なって」とは、一般式(1)中にA1Oが複数含まれる場合(n1が2以上の場合)、それぞれのA1Oが同一のオキシアルキレン基であってもよいし、異なる(2以上の)オキシアルキレン基であってもよい、ことを意味する。一般式(1)中にA1Oが複数含まれる場合の態様としては、オキシエチレン基(エチレングリコール単位)、オキシプロピレン基(プロピレングリコール単位)およびオキシブチレン基(ブチレングリコール単位)からなる群から選ばれる2以上のオキシアルキレン基が混在する態様が挙げられ、オキシエチレン基(エチレングリコール単位)とオキシプロピレン基(プロピレングリコール単位)とが混在する態様、またはオキシエチレン基(エチレングリコール単位)とオキシブチレン基(ブチレングリコール単位)とが混在する態様であることが好ましく、オキシエチレン基(エチレングリコール単位)とオキシプロピレン基(プロピレングリコール単位)とが混在する態様であることがより好ましい。異なるオキシアルキレン基が混在する態様において、2以上のオキシアルキレン基の付加は、ブロック状の付加であってもよく、ランダム状の付加であってもよい。
【0028】
一般式(1)中のn1は、オキシアルキレン基の平均付加モル数である。下限は1以上であり、5以上が好ましく、10以上がより好ましい。上限は、200以下であり、例えば、100以下、100未満、90以下、80以下、70以下、60以下、50以下である。従って、n1は、1~200の数を表し、5~200であることが好ましく、5~100であることがより好ましく、10以上100未満であることがさらに好ましく、10以上50以下であることがさらにより好ましい。
【0029】
単量体(I)は、一般式(1)で表される単量体単独であってもよいし、2以上の組み合わせであってもよい。2以上の組み合わせは、オキシアルキレン基の平均付加モル数が異なる2つの単量体(Ia)および(Ib)(ただし、オキシアルキレン基の平均付加モル数をそれぞれn1a、n1bとした場合、n1a<n1bである。)を含むことが好ましく、斯かる組み合わせであることがより好ましい。単量体(Ia)と単量体(Ib)とは互いに、オキシアルキレン基の平均付加モル数n1のみが異なり、R1、R2、R3、m、およびXが同一の単量体であってもよいし、n1に加えて、R1、R2、R3、m、およびXの少なくとも一つが異なる単量体であってもよい。n1aは、例えば、15以下、14以下、又は13以下である。n1aは、1~15であることが好ましく、1~14であることがより好ましく、1~13であることがさらに好ましく、1~9であることがさらにより好ましい。n1bは、n1aよりも大きい数であればよく、例えば、14以上、15以上、16以上、17以上、又は18以上である。好ましくは10~200、14~200、15~200、16~200、17~200、又は18~200であることが好ましく、10以上100未満、14以上100未満、15以上100未満、16以上100未満、17以上100未満、又は18以上100未満であることがより好ましく、10以上50以下、14以上50以下、15以上50以下、16以上50以下、17以上50以下、又は18以上50以下であることがさらにより好ましい。
【0030】
単量体(I)が単量体(Ia)および(Ib)の組み合わせである場合、それぞれの重量比率(合計を100重量%とする)は、(Ia)/(Ib)が(0.1~99.9)/(99.9~0.1)であることが好ましく、(1.0~99.0)/(99.0~1.0)であることがより好ましく、(10.0~90.0)/(90.0~10.0)であることがさらに好ましく、(25.0~75.0)/(75.0~25.0)であることがとりわけ好ましい。
【0031】
一般式(1)中のXは、水素原子または炭素原子数1~30の炭化水素基を表す。炭素原子数が比較的小さい基であることにより水硬性組成物用分散剤のセメント分散性がより発揮され得ることから、Xは水素原子または炭素原子数1~10の炭化水素基であることが好ましく、水素原子または炭素原子数1~5の炭化水素基であることがより好ましく、水素原子またはメチル基であることがさらに好ましい。
【0032】
単量体(I)としては、例えば、(メタ)アクリレート(以下、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレートまたはメタアクリレート」を意味する)等の不飽和モノカルボン酸と、(ポリ)エチレングリコール、(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコール、(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコール、メトキシ(ポリ)エチレングリコール、メトキシ(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコール、メトキシ(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコールなどの(ポリ)アルキレングリコールとのエステル化物が挙げられる。また例えば、(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)エチレン(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシ(ポリ)エチレン(ポリ)ブチレングリコール(メタ)アクリレートなどの、(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレートが挙げられる。単量体(I)としては、これらのうち単独若しくは2以上を組み合わせて用いることができるが、(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレートを用いることが好ましく、(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレート(例えば、ヒドロキシエチルアクリレート)、(ポリ)プロピレングリコール(メタ)アクリレート(例えば、ヒドロキシプロピルアクリレート)およびメトキシ(ポリ)エチレングリコール(メタ)アクリレートのうち少なくとも1つを用いることがより好ましい。(ポリ)アルキレングリコールの平均付加モル数は1~50であることが好ましい。単量体(Ia)が(ポリ)アルキレングリコールである場合、単量体(Ia)としての(ポリ)アルキレングリコールの付加モル数は、1~9であることが好ましい。単量体(Ib)が(ポリ)アルキレングリコールである場合、単量体(Ib)としての(ポリ)アルキレングリコールの付加モル数は、10~200であることが好ましく、10~100であることがより好ましい。単量体(Ia)がメトキシ(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレートの場合、単量体(Ia)としてのメトキシ(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレートの付加モル数は、1~13、1~14、1~15、1~16又は1~17であることが好ましい。単量体(Ib)がメトキシ(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレートの場合、単量体(Ib)としてのメトキシ(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレートの付加モル数は、14~200、15~200、16~200、17~200又は18~200であることが好ましく、14~100、15~100、16~100、17~100又は18~100であることがより好ましい。
【0033】
-単量体(II):不飽和モノカルボン酸系単量体-
不飽和モノカルボン酸系単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸類、およびこれらの塩(例えば、一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩)が挙げられる。単量体(II)は、これらのうちの1または2以上であればよい。2以上用いる場合は、アクリル酸、メタクリル酸およびこれらのいずれかの塩からなる群より選ばれる1又は2以上を含むことが好ましく、斯かる群より選ばれる1又は2以上であることが好ましい。
【0034】
アクリル酸およびメタクリル酸を併用する場合のこれらの比率(合計を100重量%とする)は、通常、アクリル酸/メタクリル酸が(0.1%~99.9%)/(99.9%~0.1%)であり、好ましくは(1.0%~99.0%)/(99.0%~1.0%)である。
【0035】
モノカルボン酸はモノマーとダイマーを含む混合物であることが好ましい。アクリル酸の場合、アクリル酸モノマーとダイマーの混合物であることが好ましい。両者の比率(合計を100重量%とする)は、アクリル酸モノマー/アクリル酸ダイマー=(90.0重量%~100重量%)/(0重量%~10.0重量%)であることが好ましい。
【0036】
-単量体(III):単量体(I)、(II)からなる群から選ばれる1または2以上の単量体と共重合可能な単量体-
単量体(III)は、単量体(I)および単量体(II)とは区別され、例えば、以下から選ばれる1種または2以上の組み合わせが挙げられる。
【0037】
一般式(III-1):
【化3】
で示されるジアリルビスフェノール類、例えば4,4’-ジヒドロキシジフェニルプロパン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホンの3および3’位アリル置換物;
【0038】
一般式(III-2):
【化4】
で示されるモノアリルビスフェノール類、例えば4,4’-ジヒドロキシジフェニルプロパン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホンの3位アリル置換物;
【0039】
一般式(III-3):
【化5】
で示されるアリルフェノール;
【0040】
マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等の不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数1~30のアルコールとのハーフエステル、ジエステル類;
上記不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数1~30のアミンとのハーフアミド、ジアミド類;
上記アルコールまたはアミンに、炭素原子数2~18のアルキレンオキシドを1~500モル付加させたアルキル(ポリ)アルキレングリコールと、上記不飽和ジカルボン酸類との、ハーフエステル、ジエステル類;
上記不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数2~18のグリコールまたはこれらのグリコールの付加モル数2~500のポリアルキレングリコールとのハーフエステル、ジエステル類;
マレアミド酸と炭素原子数2~18のグリコールまたはこれらのグリコールの付加モル数2~500のポリアルキレングリコールとのハーフアミド類;
【0041】
トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコール(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類;
ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート類;
トリエチレングリコールジマレート、ポリエチレングリコールジマレート等の(ポリ)アルキレングリコールジマレート類;
ビニルスルホネート、(メタ)アリルスルホネート、2-(メタ)アクリロキシエチルスルホネート、3-(メタ)アクリロキシプロピルスルホネート、3-(メタ)アクリロキシ-2-ヒドロキシプロピルスルホネート、3-(メタ)アクリロキシ-2-ヒドロキシプロピルスルホフェニルエーテル、3-(メタ)アクリロキシ-2-ヒドロキシプロピルオキシスルホベンゾエート、4-(メタ)アクリロキシブチルスルホネート、(メタ)アクリルアミドメチルスルホン酸、(メタ)アクリルアミドエチルスルホン酸、2-メチルプロパンスルホン酸(メタ)アクリルアミド、スチレンスルホン酸等の不飽和スルホン酸類、並びに、それらの一価金属塩、二価金属塩、アンモニウム塩および有機アミン塩;
メチル(メタ)アクリルアミド等の不飽和モノカルボン酸類と炭素原子数1~30のアミンとのアミド類;
スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、p-メチルスチレン等のビニル芳香族類;
1,4-ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,5-ペンタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート等のアルカンジオールモノ(メタ)アクリレート類;
ブタジエン、イソプレン、2-メチル-1,3-ブタジエン、2-クロル-1,3-ブタジエン等のジエン類;
【0042】
(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアルキルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミド類;
(メタ)アクリロニトリル、α-クロロアクリロニトリル等の不飽和シアン類;
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の不飽和エステル類;
(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸メチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸ジブチルアミノエチル、ビニルピリジン等の不飽和アミン類;
ジビニルベンゼン等のジビニル芳香族類;トリアリルシアヌレート等のシアヌレート類;
(メタ)アリルアルコール、グリシジル(メタ)アリルエーテル等のアリル類;
メトキシポリエチレングリコールモノビニルエーテル、ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル、等のビニルエーテルあるいはアリルエーテル類;および、
ポリジメチルシロキサンプロピルアミノマレインアミド酸、ポリジメチルシロキサンアミノプロピレンアミノマレインアミド酸、ポリジメチルシロキサン-ビス-(プロピルアミノマレインアミド酸)、ポリジメチルシロキサン-ビス-(ジプロピレンアミノマレインアミド酸)、ポリジメチルシロキサン-(1-プロピル-3-アクリレート)、ポリジメチルシロキサン-(1-プロピル-3-メタクリレート)、ポリジメチルシロキサン-ビス-(1-プロピル-3-アクリレート)、ポリジメチルシロキサン-ビス-(1-プロピル-3-メタクリレート)等のシロキサン誘導体。
【0043】
単量体(III)は、単独でもよいし、2以上の組み合わせでもよい。
【0044】
単量体(III)は、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホンの3および3’位アリル置換物、および/または(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートを含むことが好ましい。(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートは、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレートが好ましい。(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートにおけるオキシアルキレン基の付加モル数は、例えば、1~200、5~200、5~100であり、10以上100未満が好ましく、10以上50以下がより好ましい。
【0045】
ポリカルボン酸系共重合体又はその塩(D2-0)は、必要に応じて、単量体(I)~(III)以外の単量体に由来する構成単位(例えば後述の単量体(V)など)を有していてもよい。
【0046】
-重量平均分子量-
ポリカルボン酸系共重合体またはその塩(D2-0)の重量平均分子量Mw(A)は、7,000以上が好ましく、8,000以上がより好ましい。重量平均分子量の上限は、15,000以下が好ましい。従って、7,000~15,000が好ましく、8,000~15,000がより好ましい。この範囲であることにより、(A)成分が一般強度コンクリートから超高強度コンクリートまで幅広いコンクリート配合レンジであっても適用でき、超高強度領域での高い分散性を得ることができ、分散性の頭打ちがなくなり、限界添加率を低減できる。
【0047】
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて測定される。GPCの測定は、ポリエチレングリコール換算する公知の方法にて、下記の条件にて行えばよい。
測定装置;東ソー製
使用カラム;Shodex Column OH-pak SB-806HQ、SB-804HQ、SB-802.5HQ
溶離液;0.05M硝酸ナトリウム/アセトニトリル 8/2(v/v)
溶離液流速;1.00ml/min
カラム温度;50℃
測定サンプル濃度;0.5重量%
標準物質;ポリエチレングリコール(東ソー製、GLサイエンス製)
検出器;示差屈折計(東ソー製)
検量線;ポリエチレングリコール基準
【0048】
ポリカルボン酸系共重合体またはその塩の分子量分布(Mw/Mn)も特に限定されないが、ポリカルボン酸系共重合体又はその塩(D2-0)のMw/Mnは、1.2以上が好ましく、1.25以上がより好ましい。上限は、2.0以下が好ましく、1.70以下がより好ましい。従って、分子量分布は、1.25~1.70が好ましい。
【0049】
(ポリカルボン酸系共重合体又はその塩(D2-1))
ポリカルボン酸系共重合体又はその塩(D2-0)は、上述の構成単位を含み、各単量体の共重合時の重量比率、重量平均分子量Mw(A)、ゲルパーミエーションクロマトグラム上のポリマーピークの重量平均分子量Mw(AH)およびMw(AL)の差、及びAH/(AH+AL)×100で算出されるピーク面積比が上述の範囲を満たすポリカルボン酸系共重合体又はその塩(D2-1)であることが好ましい。
【0050】
-ポリマーピークの重量平均分子量の差-
ポリカルボン酸系共重合体またはその塩のゲルパーミエーションクロマトグラム上のポリマーピークの重量平均分子量Mw(AH)およびMw(AL)の差は、8,000~12,000が好ましい。これにより、分散性を良好に保持でき、コンクリート粘性を低く維持できる。Mw(AH)は、通常11,000~16,000であり、12,000~16,000又は、11,000~15,000であることがより好ましく、12,000~14,000であることがさらに好ましい。Mw(AL)は、通常3,000~6,000であり、3,500~5,000であることが好ましい。
【0051】
2つのポリマーピークは、GPCの測定後、ポリカルボン酸系共重合体またはその塩のGPCのクロマトグラムを得て、ベースラインを作成して確認すればよい。GPCクロマトグラムは、ピーク強度(mV)を縦軸に、溶出時間(Retention Time)を横軸に取ればよい。ベースラインは通常、ポリマーピークの溶出開始時間から溶出終了時間までとする。溶出終了時間が明瞭に認められない場合、ベースラインを作成した後に、ピークとピークの谷の中間地点で区切り、その点をポリマーピークの溶出終了時間とすればよい。
【0052】
ポリマーピークは、図1に例示するように、通常は2つ確認される。ポリカルボン酸系共重合体またはその塩にポリマーピークが3つ以上存在する場合、ポリカルボン酸系共重合体またはその塩に由来すると予測されるピーク(通常は、大きい方から2つのポリマーピーク)を選択する。図1の例では、2つのポリマーピークは隣り合っているが、3つ以上のポリマーピークが存在する場合、選択された2つのピークが必ずしも隣り合わなくともよい。ポリエチレングリコール換算した、高分子量側の重量平均分子量をMw(AH)、低分子量側の重量平均分子量をMw(AL)とする。すなわち、Mw(AH)>Mw(AL)の関係にある。
【0053】
-ピーク面積比-
ポリカルボン酸系共重合体またはその塩のゲルパーミエーションクロマトグラム上の高分子量側のピーク面積をAH、低分子量側のピーク面積をALとしたとき、AH/(AH+AL)×100(AHの面積比率)は、70%~80%であることが好ましい。
【0054】
高分子量側のピーク面積とは、ポリマーピークの重量平均分子量の項目で説明した高分子量側のポリマーピークの稜線と、その両側の最も低い強度の点(いわゆる谷)からベースラインへ垂直に引き下ろした線と、ベースラインとで囲まれた部分の面積である。低分子量側のピーク面積とは、(ii)で説明した低分子量側のポリマーピークの稜線と、その両側の最も低い強度の点(いわゆる谷)からベースラインへ垂直に引き下ろした線と、ベースラインとで囲まれた部分の面積である。AHの面積比率が70%~80%であれば、分散性への影響が抑えられ、分散性を向上させることができ、コンクリート粘性を低く保つことができる。
【0055】
(ポリアルキレングリコールモノアリルエーテル(D2-2))
(D2-2)は、下記一般式(IV):
4-O-(A2O)-R5 ・・・(2)
で表される構成単位を含む。塩の例は、(D2-1)で挙げたものと同様である。
【0056】
一般式(IV)中のR4は、炭素原子数2~5のアルケニル基を示す。該アルケニル基の炭素原子数は、好ましくは3~5である。R4としては、アリル基、メタリル基、3-メチル-3-ブテン-1-オールの残基を例示し得る。但し、R4は、これらの基に限定されるものではない。
【0057】
一般式(IV)中のAOは、同一若しくは異なっていてもよい、炭素原子数2~18のオキシアルキレン基を示す。該オキシアルキレン基としては、例えば、オキシエチレン基(エチレングリコール)、オキシプロピレン基(プロピレングリコール)、オキシブチレン基(ブチレングリコール)が挙げられる。これらの中でも、該オキシアルキレン基は、オキシエチレン基(エチレングリコール)、オキシプロピレン基(プロピレングリコール)が好ましい。
【0058】
上記「同一若しくは異なっていてもよい」とは、一般式(IV)中にA2Oが複数含まれる場合(n1が2以上の場合)、複数のA2Oが同一のオキシアルキレン基であってもよいし、異なる(2種類以上の)オキシアルキレン基であってもよい、ことを意味する。
【0059】
一般式(IV)中にA2Oが複数含まれる場合の態様としては、オキシエチレン基(エチレングリコール単位)、オキシプロピレン基(プロピレングリコール単位)及びオキシブチレン基(ブチレングリコール単位)からなる群から選ばれる2以上のオキシアルキレン基が混在する態様が挙げられる。これらの中でも、好ましくはオキシエチレン基(エチレングリコール単位)とオキシプロピレン基(プロピレングリコール単位)が混在する態様又はオキシエチレン基(エチレングリコール単位)とオキシブチレン基(ブチレングリコール単位)とが混在する態様であり、より好ましくはオキシエチレン基(エチレングリコール単位)とオキシプロピレン基(プロピレングリコール単位)とが混在する態様である。
【0060】
オキシエチレン基とオキシプロピレン基が混在する態様である場合、オキシエチレン基とオキシプロピレン基の平均付加モル数の比率((オキシエチレン基の平均付加モル数)/(オキシプロピレン基の平均付加モル数))は、(50.0~99.9)%/(0.1~50.0)%が好ましい。
【0061】
なお、異なるオキシアルキレン基が混在する態様において、2種類以上のオキシアルキレン基の付加は、ブロック状の付加であってもよく、ランダム状の付加であってもよい。
【0062】
一般式(IV)中のn1は、オキシアルキレン基の平均付加モル数であり、1~200の数を示す。n1は、1~70が好ましく、5~70がより好ましく、8~70がさらに好ましい。
【0063】
一般式(IV)中のR5は、水素原子又は炭素原子数1~30の炭化水素基を示す。炭素原子数が多くなると、水硬性組成物用分散剤の分散性が十分発揮されない場合がある。そのため、R5は、水素原子又は炭素原子数1~10の炭化水素基が好ましく、水素原子又は炭素原子数1~5の炭化水素基がより好ましく、水素原子又はメチル基がさらに好ましい。
【0064】
一般式(IV)であらわされるポリアルキレングリコールモノアリルエーテルの製造方法は、例えば、アリルアルコール、メタリルアルコール、3-メチル-3-ブテン-1-オール等の不飽和アルコールにアルキレンオキサイドを1~200モル付加する方法が挙げられる。
【0065】
ポリアルキレングリコールモノアリルエーテル(D2-2)の重量平均分子量の下限は、5,000以上が好ましく、10,000以上がより好ましく、14,000以上がさらに好ましい。これにより、(D2-2)の分散性が十分発揮される。一方、その上限は、50,000以下が好ましく、45,000以下がより好ましく、40,000以下がさらに好ましい。これにより、セメント粒子の凝集作用が抑制され、作業性を良好にし得る。
【0066】
ポリアルキレングリコールモノアリルエーテル(D2-2)の分子量分布(Mw/Mn)の下限は、1.20以上が好ましく、1.25以上がより好ましい。一方、その上限は、3.00以下が好ましく、2.90以下がより好ましい。
【0067】
-ポリカルボン酸系共重合体、グリコールエーテル系重合体及びそれらの塩の製造方法-
各化合物は、その構成単位が由来する単量体を重合させて製造できる。重合の方法は限定されないが、例えば、溶媒中での重合、塊状重合などの重合方法が挙げられる。
【0068】
溶媒中での重合において使用される溶媒としては、例えば、水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどの低級アルコール;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;シクロヘキサン、n-ヘキサンなどの脂肪族炭化水素;酢酸エチルなどのエステル類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類などが挙げられる。原料単量体および得られる重合体の溶解性の面から、水および低級アルコールからなる群から選ばれる1以上を用いることが好ましく、その中でも水を用いることがより好ましい。
【0069】
溶媒中で重合を行う場合、各単量体と重合開始剤を各々反応容器に連続滴下してもよいし、各単量体の混合物と重合開始剤を各々反応容器に連続滴下してもよい。また、反応容器に溶媒を仕込み、単量体と溶媒の混合物と、重合開始剤溶液を各々反応容器に連続滴下してもよいし、単量体の一部または全部を反応容器に仕込み、重合開始剤を連続滴下してもよい。
【0070】
溶媒中で重合を行う場合、各単量体を予め反応を行う容器の前段に設置された、前記反応容器とは異なる容器で混合してから、反応容器に連続滴下することが好ましい。
【0071】
ポリカルボン酸系共重合体、グリコールエーテル系重合体及びそれらの塩は、重合反応終了後、反応溶媒等を含んだそのままの状態で水硬性組成物に含有されていてもよいし、さらに何らかの処理を行った状態で含有されていてもよい。処理として、例えば、反応溶媒の除去、濃縮または希釈などによる濃度の調整、精製、pH調整が挙げられる。反応終了後は、反応容器の後段に設置された容器にて濃度調整、および/またはpH調整を行うことが好ましい。濃度調製の方法に特に限定はないが、例えば、濃縮、加水による希釈により行ってよい。pH調製については後述する。
【0072】
重合開始剤は、水溶媒中で重合を行う際には例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウムなどの過硫酸塩;t-ブチルハイドロパーオキサイドなどの水溶性有機過酸化物が挙げられる。この際、亜硫酸水素ナトリウム、モール塩などの促進剤を併用することもできる。また、低級アルコール、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、エステル類あるいはケトン類等の溶媒中で重合を行う際には、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウリルパーオキサイドなどのパーオキサイド;クメンパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド;アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ化合物などが重合開始剤として使用できる。この際、アミン化合物などの促進剤を併用することもできる。さらに、水-低級アルコール混合溶剤中で重合を行う場合には、前述の重合開始剤あるいは重合開始剤と促進剤との組合せの中から適宜選択して使用することができる。重合温度は、用いる溶媒、重合開始剤の種類等重合条件によって適宜異なるが、通常50~120℃の範囲で行われる。
【0073】
重合においては、必要に応じて連鎖移動剤を用いて分子量を調整してもよい。使用される連鎖移動剤としては、例えば、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、2-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプトプロピオン酸(β-メルカプトプロピオン酸)、チオリンゴ酸、チオグリコール酸オクチル、および、2-メルカプトエタンスルホン酸などの既知のチオール系化合物:亜リン酸、次亜リン酸、およびその塩(次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム等)、亜硫酸、亜硫酸水素、亜二チオン酸、メタ重亜硫酸、およびその塩(亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、亜二チオン酸ナトリウム、亜二チオン酸カリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸カリウム等)の低級酸化物およびその塩;等が挙げられる。また、4-メトキシフェノール、フェノチアジン等の重合禁止剤を使用してもよい。連鎖移動剤、重合禁止剤はそれぞれ、単独で用いてもよく、2以上を併用してもよい。
【0074】
単量体(I)、(II)および必要に応じて用いる(III)の他に、または単量体(IV)のほかに、さらに連鎖移動性の高い単量体(V)を用いてもよい。これにより、各ポリマーの分子量を調整することができる。単量体(V)としては、例えば(メタ)アリルスルホン酸(塩)系単量体が挙げられる。単量体(V)の重合時の重量比率は、通常は20重量%以下であり、10重量%以下であることが好ましい。なお、上記重量比率は、単量体(I)の重量比率+単量体(II)の重量比率+単量体(III)の重量比率=100重量%、又は単量体(IV)の重量比率=100重量%としたときの重量比率である。
【0075】
水溶媒中での重合の場合、重合時のpHは通常不飽和結合を有する単量体の影響で強酸性となることがあるが、これを適当なpHに調整してもよい。重合の際にpHの調整が必要な場合は、リン酸、硫酸、硝酸、アルキルリン酸、アルキル硫酸、アルキルスルホン酸、(アルキル)ベンゼンスルホン酸などの酸性物質を用いてpHの調整を行うことができる。これら酸性物質の中では、pH緩衝作用がある点等から、リン酸を用いることが好ましい。しかし、エステル系の単量体が有するエステル結合の不安定さを解消するためには、pH2~7で重合を行うことが好ましい。また、pHの調整に用い得るアルカリ性物質に特に限定はないが、NaOH、Ca(OH)2などのアルカリ性物質が一般的である。pH調整は、重合前の単量体に対して行ってもよいし、重合後の重合体溶液に対して行ってもよい。また、これらは重合前に一部のアルカリ性物質を添加して重合を行った後、さらに重合体に対してpH調整を行ってもよい。
【0076】
(D2)成分は、ポリカルボン酸系共重合体、グリコールエーテル系重合体及びそれらの塩から選ばれる1種単独でもよいし、2種以上の組み合わせでもよいが、上記(D2-1)又は(D2-2)を少なくとも含むことが好ましく、(D2-1)及び(D2-2)の組み合わせを少なくとも含むこと、又は(D2-1)、(D2-2)及び(D2-0)の組み合わせを少なくとも含むことがより好ましい。(D2)成分に占める(D2-1)の割合は、通常10重量%以上、好ましくは20重量%以上、より好ましくは25重量%以上である。上限は、通常80重量%以下、好ましくは70重量%以下、より好ましくは60重量%以下、更に好ましくは55重量%以下である。(D2)成分に占める(D2-2)の割合は、通常10重量%以上、好ましくは15重量%以上、より好ましくは20重量%以上である。上限は、通常70重量%以下、好ましくは60重量%以下、より好ましくは55重量%以下、更に好ましくは50重量%以下である。(D2-1)/(D2-2)(重量比率)は、通常0.7以上、好ましくは0.8以上、より好ましくは0.85以上である。上限は、通常3.0以下、好ましくは2.5以下、より好ましくは2.0以下である。(D2)成分に占める(D2-1)+(D2-2)の割合(重量比率)は、通常40重量%以上、好ましくは50重量%以上、より好ましくは55%以上である。上限は特になく100重量%でもよい。
【0077】
<(E)成分:フライアッシュ>
フライアッシュの密度は、通常1.7以上、好ましくは1.8以上、より好ましくは2.0以上である。フライアッシュの強熱減量の上限は、通常20.0以下、好ましくは8.0以下、より好ましくは3.0以下である。密度及び強熱減量は、JIS A 6201に準拠して測定でき、後段の実施例でもこの方法で確認した。
【0078】
フライアッシュのBET比表面積は、通常1000cm/g以上、好ましくは1500cm/g以上、より好ましくは2500cm/g以上である。上限は、120000cm/g以下、好ましくは5000cm/g以下、より好ましくは3500cm/g以下である。BET比表面積は、ガス吸着(窒素)により測定でき、後段の実施例でもこの方法で確認した。
【0079】
(E)成分は、フライアッシュ1種単独でもよいし、2種以上の組み合わせでもよい。(B)成分がフライアッシュの2種以上の組み合わせである場合、少なくとも1つのフライアッシュが上述の密度、強熱減量及びBET比表面積から選ばれる少なくとも1つのパラメータを満たせばよく、すべてのパラメータを満たすことが好ましい。
【0080】
<任意原料>
必要に応じて(A)~(E)成分以外の任意成分を用いてもよい。例えば、微粉体(例えば、シンダーアッシュ、クリンカーアッシュ、ハスクアッシュ、シリカヒューム、シリカ粉末、石灰石粉末、消石灰)、骨材(砂、砂利、砕石、再生骨材、珪石質、粘土質、ジルコン質、ハイアルミナ質、炭化珪素質、黒鉛質、クロム質、クロマグ質、マグネシア質等の耐火骨材)、他のセメント混和剤(例えば、水溶性高分子、高分子エマルジョン、空気連行剤、セメント湿潤剤、膨張剤、防水剤、遅延剤、増粘剤、凝集剤、乾燥収縮低減剤、強度増進剤、硬化促進剤、消泡剤、AE剤、凝結遅延剤、防錆剤、セメント分散剤、界面活性剤、減水剤、高性能減水剤、AE減水剤、高性能AE減水剤、流動化剤、圧送助剤、低チキソトロピー性助剤その他の公知のコンクリート用添加剤)が挙げられる。任意成分は1種でもよいし、2以上の組み合わせでもよい。
【0081】
<各成分の使用量(原料の配合量)>
各成分の使用量は特に限定されないが、目安を示すと以下のとおりである。
-(A)成分の使用量-
(A)成分に関し、セメントの単位量は、通常50kg/m3以上、好ましくは100kg/m3以上、より好ましくは150kg/m3以上、更に好ましくは200kg/m3以上である。上限は、通常900kg/m3以下、好ましくは800kg/m3以下、より好ましくは700kg/m3以下である。
【0082】
-(B)成分の使用量-
鉄鋼スラグ骨材の単位量は、通常、400kg/m3以上、好ましくは700kg/m3以上、より好ましくは900kg/m3以上である。上限は、通常2500kg/m3以下、好ましくは2300kg/m3以下、より好ましくは2100kg/m3以下である。粒径5mm以上の粒子である鉄骨スラグ骨材の単位量は、通常、300kg/m3以上、好ましくは350kg/m3以上、より好ましくは400kg/m3以上である。上限は、通常1500kg/m3以下、好ましくは1400kg/m3以下、より好ましくは1300kg/m3以下である。粒径5mm未満の粒子(但しスラグ微粉末を除く)である鉄骨スラグ骨材の単位量は、通常、300kg/m3以上、好ましくは350kg/m3以上、より好ましくは400kg/m3以上である。上限は、通常1200kg/m3以下、好ましくは1100kg/m3以下、より好ましくは1000kg/m3以下である。スラグ微粉末の単位量は、通常、50kg/m3以上、好ましくは100kg/m3以上、より好ましくは120kg/m3以上である。上限は、通常500kg/m3以下、好ましくは400kg/m3以下、より好ましくは300kg/m3以下である。
【0083】
-(C)成分の使用量-
水の単位量は、通常、120kg/m3以上、好ましくは150kg/m3以上、より好ましくは170kg/m3以上である。上限は、通常300kg/m3以下、好ましくは250kg/m3以下、より好ましくは200kg/m3以下である。
【0084】
W/B(水結合材比)は、通常30%以上、好ましくは35%以上、より好ましくは40%以上である。上限は、通常、90%以下、好ましくは85%以下、より好ましくは80%以下である。
【0085】
-(D1)及び(D2)成分の使用量-
(D1)及び(D2)成分の使用量の合計は、セメントの質量(但し、必要に応じてスラグ微粉末を含む場合にはセメント及びスラグ微粉末の質量の合計)に対し、通常、0.5%以上、好ましくは0.7以上、より好ましくは0.8以上である。上限は、通常、5.0%以下、好ましくは3.0%以下、より好ましくは2.0%以下である。強度指数は、後段の数式(1)で算出される。
【0086】
(D1)及び(D2)成分の使用量の比(重量比)は、(D1):(D2)=10.0:90.0~80.0:20.0が好ましく、12.0:87.0~75.0:25.0がより好ましく、15.0:85.0~70.0:30.0が更に好ましい。
【0087】
-(E)成分の使用量-
(E)成分を用いる場合、フライアッシュの単位量は、通常、70kg/m3以上、好ましくは80kg/m3以上、より好ましくは90kg/m3以上である。上限は、通常400kg/m3以下、好ましくは150kg/m3以下、より好ましくは110kg/m3以下である。
【0088】
-s/a-
s/a(細骨材率)は、通常15%以上、好ましくは20%以上、より好ましくは25%以上である。上限は、通常75%以下、好ましくは70%以下、より好ましくは65%以下である。細骨材率は、細骨材の骨材全に対する重量比率である。ここで骨材、細骨材は、(B)成分である鉄鋼スラグ骨材以外の骨材、細骨材(成分(F)も含む)を含む。
【0089】
-AE剤の使用量-
AE剤の使用量は、セメントの質量(但し、必要に応じてスラグ微粉末を含む場合にはセメント及びスラグ微粉末の質量の合計)に対し、通常、0.01%以上、好ましくは0.02%以上、より好ましくは0.03%以上である。上限は、通常、1.0%以下、好ましくは0.5%以下、より好ましくは0.1%以下である。
【0090】
-消泡剤の使用量-
消泡剤の使用量は、セメントの質量(但し、必要に応じてスラグ微粉末を含む場合にはセメント及びスラグ微粉末の質量の合計)に対し、通常、0.005%以上、好ましくは0.010%以上、より好ましくは0.020%以上である。上限は、通常、0.10%以下、好ましくは0.08%以下、より好ましくは0.05%以下である。
【0091】
<原料組成物の特性>
-強度指数-
強度指数は、通常、1.0以上、好ましくは1.5以上、より好ましくは2.0以上である。上限は、5.0以下、好ましくは4.5以下、より好ましくは4.0以下である。強度指数は、以下の数式(1)で算出される。
強度指数=(BP+CH+2NP+0.35FA)/W ・・・(1)
数式(1)中、BPはスラグ微粉末の配合量(kg/m3)を、CHは消石灰の配合量(kg/m3)を、NPは普通ポルトランドセメントの配合量(kg/m3)を、FAはフライアッシュの配合量(kg/m3)を、Wは単位水量(kg/m3)を、それぞれ示す。
【0092】
[鉄鋼スラグ水和固化材の製造方法]
鉄鋼スラグ水和固化材の製造方法は、上記の各成分を配合して製造すればよく、特に限定されないが、好ましくは、(A)及び(B)成分を少なくとも含有する第1の原料群に、(C)、(D1)及び(D2)成分を少なくとも含有する第2の原料群を添加し、硬化することを含む方法が挙げられる。(E)成分を配合する場合、第1の原料群として用いることが好ましい。第1の原料群は、第2の原料群を添加する前に予め、混合しておいてもよい。第2の原料群は、第1の原料群に添加する前に混合してもよいし、それぞれを別個に第1の原料群に加えてもよく、前者が好ましい。一方、第1の原料群及び第2の原料群を分けずに系内にそれぞれ順次、又は一括添加してもよい。任意成分を使用する場合、骨材及び微粉末は、適切な時期に添加すればよく、特に限定されない。混合の手段は、撹拌等の常法によって行えばよい。硬化は、第1の原料群と第2の原料群とを含む組成物を必要に応じて加熱して行ってもよい。加熱温度は、通常50~90℃、好ましくは60~70℃である。加熱時間は、通常1.5~5.0時間、好ましくは2.5~4.0時間である。
【実施例0093】
<製造例1>
温度計、攪拌装置、還流装置、窒素導入管および滴下装置を備えたガラス反応容器に水3930部を仕込み、攪拌下で反応容器を窒素置換し、窒素雰囲気下で100℃に昇温した。その後、メトキシポリエチレングリコールメタアクリレート(エチレンオキサイドの平均付加モル数13)605部、メタクリル酸155部、β-メルカプトプロピオン酸9部および水300部を混合したモノマー水溶液と、過硫酸ナトリウム9部および水191部の混合液を各々2時間で、100℃に保持した反応容器に連続滴下した。さらに、温度を100℃に保持した状態で1時間反応させた後、48重量%のNaOHを用いて水溶pHを6にすることにより共重合体(D2-a)の水溶液を得た(表1)。
【0094】
<製造例2>
温度計、攪拌装置、還流装置、窒素導入管および滴下装置を備えたガラス反応容器に水3500部を仕込み、攪拌下で反応容器を100℃に昇温した。その後、メタクリル酸140部、メトキシポリエチレングリコールメタアクリレート(エチレンオキサイドの平均付加モル数23)333部、水600部を混合したモノマー水溶液と、過硫酸アンモニウム12部および水288部の混合液とを、各々2時間で、100℃に保持した反応容器に連続滴下した。さらに、温度を100℃に保持した状態で1時間反応させた後、48重量%のNaOHを用いて水溶液pHを6にすることにより共重合体(D2-b)の水溶液を得た(表1)。
【0095】
<製造例3>
温度計、攪拌装置、還流装置、窒素導入管および滴下装置を備えたガラス反応容器に水3000部を仕込み、攪拌下で反応容器を100℃に昇温した。その後、メタクリル酸160部、メトキシポリエチレングリコールメタアクリレート(エチレンオキサイドの平均付加モル数22)400部、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホンの3および3’位をアリル置換した化合物2部、水450部を混合したモノマー水溶液と、過硫酸アンモニウム13部および水287部の混合液とを、各々2時間で、100℃に保持した反応容器に連続滴下した。さらに、温度を100℃に保持した状態で1時間反応させた後、48重量%のNaOHを用いて水溶液pHを6にすることにより共重合体(D2-c)の水溶液を得た(表1)。
【0096】
<製造例4>
温度計、攪拌装置、還流装置、窒素導入管及び滴下装置を備えたガラス反応容器に、水383部、メタリルアルコールのエチレンオキサイド付加物(エチレンオキサイドの平均付加モル数53個)384部、及び過酸化水素1部を投入し、攪拌しながら反応容器を窒素置換した。窒素雰囲気下で40℃に昇温した後、アクリル酸40.3部、2-ヒドロキシエチルアクリレート5部、及び水161部を混合したモノマー水溶液と、L-アスコルビン酸3部、3-メルカプトプロピオン酸2部、及び水47部の混合液とを、各々2時間で、40℃に保持した反応容器に連続滴下した。滴下終了後、温度を保持した状態でさらに1時間反応させることにより重合体の水溶液を得た。この液を30%NaOH水溶液でpH4に調整した。液中の共重合体は、重合体(D2-d)(重量平均分子量36,000、Mw/Mn2.42)であった(表1)。
【0097】
【表1】
【0098】
実施例1
配合A(表3-1)に従い、鉄鋼スラグ水和固化体を製造した。すなわち、セメントと鉄鋼スラグ骨材(スラグ骨材の化学組成:表3-2)を混合し、その後,あらかじめ混合した水と固形分濃度28重量%に調整した薬剤1(表2)を添加し、攪拌し,鉄鋼スラグ水和固化体を製造した。
【0099】
実施例2
配合Aに替えて配合B(表3-1)に従ったこと、フライアッシュ(FA)をセメント添加の段階で添加したこと以外は、実施例1と同様に行った。
【0100】
実施例3
配合Aに替えて配合C(表3-1)に従ったこと、薬剤1に替えて固形分濃度13重量%に調整した薬剤2(表2)を用いたこと、高炉スラグ微粉末をセメント添加の段階で添加したこと以外は、実施例1と同様に行った。
【0101】
実施例4
配合Aに替えて配合D(表3-1)に従ったこと、薬剤1に替えて固形分濃度17重量%に調整した薬剤3(表2)を用いたこと、高炉スラグ微粉末をセメント添加の段階で添加したこと以外は、実施例2と同様に行った。
【0102】
実施例5
配合Aに替えて配合E(表3)に従ったこと、薬剤1に替えて固形分濃度19重量%に調整した薬剤4(表2)を用いたこと以外は、実施例1と同様に行った。
【0103】
【表2】
【0104】
〔表2の脚注〕
D1:C-PARN(グルコン酸ナトリウム)、扶桑化学工業社製
【0105】
【表3-1】
【0106】
【表3-2】
【0107】
(表3の脚注)
・W/B:水結合材比
・強度指数:前述の数式(1)で算出した値
・s/a:細骨材率
・W:単位水量
*1:高炉セメント、密度3.04g/cm3(BB、君津製鐵所・和歌山製鐵所使用)
*2:普通ポルトランドセメント、密度3.15g/cm3(OPC、広畑製鐵所使用)
*3:スラグ骨材、表乾密度2.85g/cm3、吸水率8.50%、F.M.3.32(KS、君津製鐵所使用)
*4:造塊スラグ、表乾密度2.72g/cm3、吸水率10.23%、F.M.3.32(HS、広畑製鐵所使用)
*5:造塊スラグ、表乾密度2.45g/cm3、吸水率14.92%、F.M.2.84(WS、和歌山製鐵所使用)
*6:スラグ骨材、表乾密度3.09g/cm3、吸水率5.48%、F.M.5.28(KG、君津製鐵所使用)
*7:造塊スラグ、表乾密度3.13g/cm3、吸水率3.55%、F.M.6.20(HG、広畑製鐵所使用)
*8:造塊スラグ、表乾密度2.77g/cm3、吸水率6.41%、F.M.7.06(WG、和歌山製鐵所使用)
*9:徐冷スラグ、表乾密度2.81g/cm3、吸水率2.57%、F.M.2.41(WJS、和歌山製鐵所使用)
*10:AOD、表乾密度2.54g/cm3、吸水率7.90%、F.M.1.58(和歌山製鐵所使用)
*11:高炉スラグ微粉末、商品名エスメント(登録商標)(石膏無添加)、日鉄住金セメント社製、密度2.91g/cm3(BFS、広畑製鐵所使用)
*12:フライアッシュ、密度2.20g/cm3、強熱減量8.7%、BET比表面積11.37m2/g(FA、君津製鐵所使用)
*13:フライアッシュ、密度2.20g/cm3、強熱減量10.8%、BET比表面積11.45m2/g(FA、広畑製鐵所使用)
*14:つくば市上水道水、密度1.00g/cm3にて配合設計
【0108】
各実施例及び比較例にて調製した鉄鋼スラグ水和固化体について、以下の試験を行った。
【0109】
〔実施例1~5における試験条件〕
1.フレッシュ性状試験(20℃、30℃:表4、5)
(1)スランプ(SL):JIS A 1101に準拠して測定した。
(2)スランプフロー(SLF):JIS A 1150に準拠して測定した。
(3)空気量:JIS A 1128に準拠して測定した。
(4)単位体積重量(単位容積質量):空気量測定後のエアメーター質量である。
(5)温度(C.T):デジタル温度計により測定した。
(6)Vロート流下時間:JSCE-F512に準拠して測定した。
【0110】
2.圧縮強度試験(表6)
JIS A 1108に準拠(材齢1日、7日、28日、91日)して行った。
【0111】
3.長さ変化試験(表7)
JIS A 1129に準拠(一部水準)して行った。
【0112】
4.凍結融解試験(表8)
JIS A 1148に準拠(一部水準)して行った。
【0113】
【表4】
【0114】
(表4の脚注)
*1:落下高さ293mm
【0115】
【表5】
【0116】
(表5の脚注)
*:落下高さ182mm
(表4及び5の脚注)
【0117】
【表6】
【0118】
【表7】
【0119】
【表8】
【0120】
実施例6
配合Aに替えて配合F(表10)に従ったこと、薬剤1に替えて薬剤6(表9)を用いたこと以外は、実施例1と同様に行った。各スラグ骨材の化学組成は、表11に示した。
【0121】
比較例1
薬剤6に替えて薬剤5(表9)を用いたこと以外は、実施例6と同様に行った。
【0122】
実施例7
配合Aに替えて配合G(表10)に従ったこと以外は、実施例6と同様に行った。
【0123】
実施例8
薬剤6に替えて薬剤7(表9)を用いたこと以外は、実施例7と同様に行った。
比較例2
薬剤6に替えて薬剤5(表9)を用いたこと以外は、実施例7と同様に行った。
【0124】
【表9】
【0125】
【表10】
【0126】
(表10の脚注)
・W/C:水セメント比
・水:つくば市上水道水
・セメント:早強ポルトランドセメント(配合F)、高炉セメント(配合G)、表乾密度3.14g/cm3
・S:(NSSサンド)、表乾密度2.93g/cm3、絶乾密度2.80g/cm3、吸水率3.62%、粗粒率2.88
・G1-通:スラグ骨材(日新製鋼社、周南製鋼所)、NSパウダーを用いて製造された造粒物5mmover、表乾密度2.33g/cm3、絶乾密度2.00g/cm3、吸水率14.24%、粗粒率7.50
・G2-通:スラグ骨材(日新製鋼社、周南製鋼所)、NSパウダーを用いて製造された造粒物5mmover、表乾密度2.29g/cm3、絶乾密度1.92g/cm3、吸水率16.19%
その他は前表の脚注と同様
【0127】
【表11】
【0128】
各実施例及び比較例にて調製した鉄鋼スラグ水和固化体について、以下の試験を行った。
【0129】
〔実施例6~8及び比較例1~2における試験条件〕
1.フレッシュ性状試験(表12)
(1)スランプ(SL):JIS A 1101に準拠して測定した。
(2)スランプフロー(SLF):JIS A 1150に準拠して測定した。
(3)空気量:JIS A 1128に準拠して測定した。
(4)コンクリート温度(C.T):JIS A 1156に準拠して測定した。
【0130】
2.圧縮強度試験(表13)
JIS A 1132、1108に準拠(材齢3日、7日、28日、91日)して行った。
【0131】
3.長さ変化試験(表14)
JIS A 1129に準拠して行った。
【0132】
4.促進中性化試験(表15)
JIS A 1153に準拠して行った。
【0133】
【表12】
【0134】
(表12の脚注)
前表の脚注と同様
【0135】
【表13】
【0136】
【表14】
【0137】
【表15】
【0138】
実施例の結果は、本発明により、所定の物理的・化学的性質の材料を用いることにより、得られる水和固化体の、施工の可使時間,水和調整および強度発現性を適切にコントロールできることを示している。
図1