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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022166593
(43)【公開日】2022-11-02
(54)【発明の名称】洗濯機
(51)【国際特許分類】
   D06F 33/48 20200101AFI20221026BHJP
   D06F 34/16 20200101ALI20221026BHJP
【FI】
D06F33/48
D06F34/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021071909
(22)【出願日】2021-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】503376518
【氏名又は名称】東芝ライフスタイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】小室 琢磨
【テーマコード(参考)】
3B167
【Fターム(参考)】
3B167AA11
3B167AE04
3B167AE05
3B167AE12
3B167BA15
3B167BA24
3B167BA28
3B167BA88
3B167HA21
3B167HA56
3B167JA32
3B167JA36
3B167JA53
3B167JB03
3B167KA10
3B167KA78
3B167KB01
3B167KB02
3B167KB05
3B167LA23
3B167LB01
3B167LC01
3B167LD12
3B167LE02
3B167LF07
3B167LG02
(57)【要約】
【課題】外郭を構成する洗濯機本体部が傾いて設置されているか否かを判定できるようにした洗濯機を提供する。
【解決手段】本実施形態に係る洗濯機は、外郭を構成する洗濯機本体部と、前記洗濯機本体部内において弾性支持されている水槽と、前記水槽内に回転可能に設けられている回転槽と、前記回転槽の回転に伴い前記水槽に発生する振動を検知する振動検知部と、前記回転槽の回転の不安定度を検知する不安定度検知部と、前記不安定度検知部によって検知される不安定度に基づいて、前記洗濯機本体部が傾いているか否かを判定する傾き判定部と、を備え、前記傾き判定部は、前記不安定度検知部によって検知される不安定度が、前記振動検知部によって検知される振動に基づいて推定される不安定度よりも大きい場合に、前記洗濯機本体部が傾いていると判定する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外郭を構成する洗濯機本体部と、
前記洗濯機本体部内において弾性支持されている水槽と、
前記水槽内に回転可能に設けられている回転槽と、
前記回転槽の回転に伴い前記水槽に発生する振動を検知する振動検知部と、
前記回転槽の回転の不安定度を検知する不安定度検知部と、
前記不安定度検知部によって検知される不安定度に基づいて、前記洗濯機本体部が傾いているか否かを判定する傾き判定部と、
を備え、
前記傾き判定部は、前記不安定度検知部によって検知される不安定度が、前記振動検知部によって検知される振動に基づいて推定される不安定度よりも大きい場合に、前記洗濯機本体部が傾いていると判定する洗濯機。
【請求項2】
前記振動検知部は、前記回転槽の回転に伴い前記水槽に発生する加速度を検知する請求項1に記載の洗濯機。
【請求項3】
前記回転槽内の衣類を脱水する脱水行程を制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記脱水行程の実行中に前記傾き判定部によって前記洗濯機本体部が傾いていると判定された場合に、前記脱水行程の制御内容を変更する請求項1または2に記載の洗濯機。
【請求項4】
前記振動検知部は、前記回転槽内の衣類を脱水する脱水行程の実行中に前記傾き判定部によって前記洗濯機本体部が傾いていると判定された場合に、振動の検知方法を変更する請求項1から3の何れか1項に記載の洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
洗濯機においては、脱水行程中に回転槽内の衣類が偏ってアンバランスが発生すると、回転槽の回転が不安定となって水槽が大きく振動する場合がある。そのため、この種の洗濯機においては、水槽の振動が大きいと判断した場合には、運転を停止する制御が行われている。洗濯機に発生する振動は、その洗濯機が据え付けられている設置面の強度の影響を受ける。そこで、例えば特許文献1に開示されているドラム式洗濯機は、設置面の状況に応じて回転槽の回転を制御するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-188970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の洗濯機においては、例えば、振動する水槽が直接的に当接する安全レバー、回転槽の回転に伴い水槽に発生する加速度を検知する加速度センサ、回転槽を回転させるモータの電流値などに基づいて、水槽の振動、換言すれば、回転槽におけるアンバランスの発生の有無を検知するようにしている。
【0005】
しかしながら、洗濯機が設置面に対して傾いて設置されている状態では、回転槽に発生しているアンバランスが小さいにもかかわらず水槽が大きく振動してしまったり、あるいは、回転槽に発生しているアンバランスが大きいにもかかわらず水槽が小さく振動してしまったりする場合がある。そのため、運転を停止するまでもないような小さなアンバランスの発生時に運転が停止してしまったり、あるいは、運転を停止する必要がある大きなアンバランスの発生時に運転が続行されてしまったりするといった不具合が生じ得る。
【0006】
また、近年の洗濯機においては、洗濯機の外郭を構成する洗濯機本体部の小型化と水槽の大型化とが同時に並行して進められており、従って、水槽が洗濯機本体部に衝突しやすい構成となっている。そのため、洗濯機が設置面に対して傾いて設置されている状態では、水槽が洗濯機本体部に一層衝突しやすい状態となってしまう。
【0007】
そこで、外郭を構成する洗濯機本体部が傾いて設置されているか否かを判定できるようにした洗濯機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施形態に係る洗濯機は、外郭を構成する洗濯機本体部と、前記洗濯機本体部内において弾性支持されている水槽と、前記水槽内に回転可能に設けられている回転槽と、前記回転槽の回転に伴い前記水槽に発生する振動を検知する振動検知部と、前記回転槽の回転の不安定度を検知する不安定度検知部と、前記不安定度検知部によって検知される不安定度に基づいて、前記洗濯機本体部が傾いているか否かを判定する傾き判定部と、を備え、前記傾き判定部は、前記不安定度検知部によって検知される不安定度が、前記振動検知部によって検知される振動に基づいて推定される不安定度よりも大きい場合に、前記洗濯機本体部が傾いていると判定する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る洗濯機の構成例を概略的に示す縦断側面図
図2】第1実施形態に係る洗濯機の制御系の構成例を概略的に示すブロック図
図3】第1実施形態に係る洗濯機による傾き判定制御の一例を概略的に示すフローチャート
図4】第1実施形態に係る脱水行程の経過時間と回転槽の回転速度との関係例を概略的に示す図
図5】第1実施形態に係る回転槽に発生するアンバランスの大きさと回転槽の回転ムラの大きさとの関係例を概略的に示す図
図6】第2実施形態に係る脱水行程の経過時間と回転槽の回転速度との関係例を概略的に示す図
図7】第3実施形態に係る脱水行程の経過時間と回転槽の回転速度との関係例を概略的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、洗濯機に係る複数の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、複数の実施形態において実質的に同一の要素には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0011】
(第1実施形態)
図1に例示する洗濯機1は、回転槽の回転軸が上下方向に延びる、いわゆる縦軸型の全自動洗濯機である。洗濯機1は、例えば鋼板などからなり全体として矩形状をなす洗濯機本体部2を備えている。洗濯機本体部2は、洗濯機1の外郭を構成している。
【0012】
洗濯機本体部2の上部には、薄形の中空箱状をなす合成樹脂製のトップカバー3が設けられている。このトップカバー3には、上下方向に貫通する図示しない衣類出入口が設けられている。また、トップカバー3の上部には、図示しない衣類出入口を開閉するための例えば二つ折り式の蓋4が設けられている。なお、蓋4は、例えば矩形板状の一枚の蓋であってもよい。
【0013】
また、トップカバー3の後部には、図示しない給水機構が設けられている。給水機構は、図2に例示する給水弁17などを備えている。また、トップカバー3の前部の上面部には操作パネル18が設けられている。操作パネル18には、例えば運転コースの選択や運転開始の指示を入力するための操作部や、例えば実行中の行程、運転終了までの残り時間、設定水位などといった運転に関する各種の情報を表示するための表示部などが設けられている。
【0014】
図2に例示するように、操作パネル18は、制御装置21に接続されており、操作部からの入力信号が制御装置21に入力されるようになっている。また、制御装置21は、図示しない表示部の表示を制御するようになっている。
【0015】
また、図1に例示するように、洗濯機本体部2内には、貯水可能な有底円筒状の水槽5が、周知構成の弾性支持機構6により弾性的に吊り下げられた状態で支持されている。水槽5内の水位は、図2に例示する水位センサ19により検知されるようになっている。また、水槽5内には、洗濯槽および脱水槽を兼用する回転槽7が縦軸回りに回転可能に設けられている。使用者は、図示しない衣類出入口を介して、回転槽7内に衣類を収容することが可能であり、また、回転槽7内から衣類を取り出すことが可能である。
【0016】
回転槽7の回転軸は、垂直方向つまり上下方向に延びている。この回転槽7は、有底円筒状をなしており、その周壁部には、多数個の貫通孔7aが形成されている。また、この回転槽7の上端部には、例えば液体封入形の回転バランサ8が設けられている。また、回転槽7の内底部には、衣類を撹拌するための撹拌機構を構成するパルセータ9が縦軸回りに回転可能に設けられている。
【0017】
水槽5の底部には、排水口5aが形成されている。この排水口5aには、例えばモータ駆動式の排水弁10を備えた排水路11が接続されている。また、水槽5の外底部には、周知の駆動機構が設けられている。この駆動機構は、例えばアウタロータ形のDC三相ブラシレスモータからなる洗濯機モータ12を備えている。また、この駆動機構は、その洗濯機モータ12の駆動力をパルセータ9や回転槽7に選択的に伝達するクラッチ機構13などを備えている。この場合、クラッチ機構13は、切替用モータ14の駆動による排水弁10の開閉と連動して切り替えられるように構成されている。なお、クラッチ機構13は、排水弁10の開閉とは無関係に単独で切り替えられる構成であってもよい。洗濯機モータ12および切替用モータ14は、制御装置21により制御される。
【0018】
また、クラッチ機構13は、排水弁10が閉塞されている例えば洗い行程時およびすすぎ行程時などには、回転槽7を停止させた状態で、洗濯機モータ12の駆動力をパルセータ9に伝達する。これにより、パルセータ9は、所定の低速度で正転方向および反転方向に交互に切り替えられながら回転可能となる。また、クラッチ機構13は、排水弁10が開放されている例えば脱水行程時などには、洗濯機モータ12の駆動力を回転槽7およびパルセータ9に伝達する。これにより、回転槽7は、パルセータ9とともに一方向に所定の高速度で回転可能となる。
【0019】
なお、駆動機構には、図2に例示する回転センサ15や電流センサ16などが設けられている。回転センサ15は、洗濯機モータ12の一部を構成する図示しないロータの回転位置や回転速度を検出する。電流センサ16は、洗濯機モータ12に供給される電流の大きさ、つまり、電流値を測定する。電流センサ16が検知する洗濯機モータ12の電流値は、洗濯機モータ12の回転トルクの大きさが反映されるq軸電流値が含まれる。
【0020】
また、洗濯機1は、回転槽7の回転に伴い水槽5に発生する加速度を複数軸方向において検知する加速度センサ20を備えている。加速度センサ20は、回転槽7の回転に伴い水槽5に発生する振動を検知する振動検知部の一例である。この場合、加速度センサ20は、水槽5の外壁部に設けられている。また、加速度センサ20は、水槽5の外壁部のうち当該水槽5の上下方向における中央部よりも高い位置、つまり、上部寄りの位置に設けられている。なお、加速度センサ20の設置位置は、適宜変更して実施することができる。
【0021】
本開示においては、加速度センサ20は、相互に直交関係にあるX軸方向、Y軸方向、Z軸方向の3軸方向の加速度を検出可能な周知の半導体加速度センサモジュールで構成されている。この場合、加速度センサ20は、X軸方向が水槽5の前後方向に一致し、Y軸方向が水槽5の左右方向に一致し、Z軸方向が水槽5の上下方向つまり回転槽7の回転軸方向に一致するように取り付けられている。加速度センサ20は、各軸方向の加速度を検出し、それら各軸方向の検出値つまり加速度の大きさに応じた検出信号を出力する。
【0022】
ここで、回転槽7の回転軸が上下方向に延びる縦軸型の洗濯機1においては、回転槽7内に収容されている衣類の量、質、種類などといった種々の要因に応じて、衣類の偏りつまりアンバランスが回転槽7の上部で発生する場合や下部で発生する場合がある。以下、回転槽7の上部で発生するアンバランスを「上部アンバランス」と称し、回転槽7の下部で発生するアンバランスを「下部アンバランス」と称する。また、回転槽7の「上部」は、例えば、回転槽7の上下方向における中央部よりも上側に位置する所定の部位である。また、回転槽7の「下部」は、例えば、回転槽7の上下方向における中央部よりも下側に位置する所定の部位である。
【0023】
そして、本開示の発明者による実験結果によれば、「上部アンバランス」が発生している場合には、水槽5が上下方向よりも横方向に振動しやすい傾向が認められることが確認されている。また、「下部アンバランス」が発生している場合には、水槽5が横方向よりも上下方向に振動しやすい傾向が認められることが確認されている。
【0024】
そのため、「上部アンバランス」が発生している場合つまり水槽5が横方向に振動しやすい場合には、加速度センサ20による特に上下方向、この場合、Z軸方向の加速度の検出回数が増加しにくくなる。よって、加速度センサ20による上下方向の加速度の検出回数に基づき、「上部アンバランス」が発生しているのか否かを判定することができる。即ち、加速度センサ20による上下方向の加速度の検出回数が所定回数よりも少ない場合には、「上部アンバランス」が発生していると判断することができる。なお、この所定回数は、例えば回転槽7の大きさなどに応じて適宜変更して設定することができる。
【0025】
以上の通り、加速度センサ20によれば、単に回転槽7にアンバランスが発生したことだけでなく、回転槽7におけるアンバランスの発生位置も特定することが可能である。
【0026】
図2に例示する制御装置21は、例えばマイクロコンピュータを主体として構成されている。制御装置21は、制御部の一例であり、制御プログラムや各種の設定情報に基づいて洗濯機1の動作全般を制御する。また、制御装置21は、少なくとも、回転槽7内の衣類を洗う洗い行程、回転槽7内の衣類をすすぐすすぎ行程、回転槽7内の衣類を脱水する脱水行程などの行程を含む各種の運転を実行可能および制御可能である。制御装置21には、操作パネル18からの各種の操作信号が入力される。また、制御装置21には、加速度センサ20、回転センサ15、電流センサ16、水位センサ19などからの各種の検知信号が入力される。
【0027】
また、制御装置21は、回転槽7内の衣類の重量を検知する周知の重量センシング動作を実行可能である。この重量センシング動作において、制御装置21は、回転センサ15から得られる信号を用いて回転槽7内の衣類の重量を検知するようになっている。即ち、制御装置21は、回転槽7を所定の回転速度で回転させたときに回転センサ15から得られる検知信号の変化に基づいて、回転槽7内の衣類の重量を検知する。洗濯機1は、これら制御装置21および回転センサ15などにより、回転槽7内の衣類の重量を検知する重量検知部を構成している。
【0028】
制御装置21は、運転を開始すると、周知の重量センシング動作を実行して回転槽7内の衣類の重量を検出する。そして、制御装置21は、検出した衣類の重量に応じて、例えば、洗い行程やすすぎ行程における水槽5内の水位や各行程の動作時間などといった運転に関する各種の設定内容を決定する。
【0029】
また、制御装置21は、アンバランス検知部22、アンバランス解消動作実行部23、回転ムラ検知部24、傾き判定部25をソフトウェアにより仮想的に実現している。なお、アンバランス検知部22、アンバランス解消動作実行部23、回転ムラ検知部24、傾き判定部25は、ハードウェアにより構成されていてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの組み合わせにより構成されていてもよい。
【0030】
アンバランス検知部22は、回転槽7内における衣類の偏りや絡まりなどに起因して発生するアンバランス状態を検知可能である。即ち、アンバランス検知部22は、例えば脱水行程の実行時に、加速度センサ20の検出値に基づいて水槽5の振動変位量つまり振幅を求める。そして、アンバランス検知部22は、求めた振幅が所定の基準値を超えた場合に、回転槽7にアンバランスが発生していること、つまり、回転槽7がアンバランス状態であることを検知する。なお、所定の基準値は、例えば回転槽7の大きさなどに応じて適宜変更して設定することができる。
【0031】
また、アンバランス解消動作実行部23は、回転槽7のアンバランス状態を解消するためのアンバランス解消動作を実行可能である。この場合、アンバランス解消動作実行部23は、アンバランス解消動作として「ほぐし動作」を実行する。この「ほぐし動作」において、アンバランス解消動作実行部23は、まず回転槽7の回転を停止して脱水行程を中断する。そして、アンバランス解消動作実行部23は、排水弁10を閉塞した状態で回転槽7内に給水を行うとともに、少なくともパルセータ9を所定の態様で回転させる。これにより、回転槽7内で偏ったり絡まったりしている衣類をほぐすことができる。そして、アンバランス解消動作実行部23は、このような「ほぐし動作」を完了すると、脱水行程を再開する。
【0032】
なお、「ほぐし動作」におけるパルセータ9の回転態様は、例えば、パルセータ9を正転方向および反転方向に交互にきめ細かく切り替えながら回転させたり、パルセータ9を正転方向および反転方向に大きく回転させたりする回転態様などである。
【0033】
回転ムラ検知部24は、不安定度検知部の一例であり、回転槽7の回転ムラの大きさ、つまり、回転槽7の回転の不安定度を検知可能である。この場合、回転ムラ検知部24は、電流センサ16が検知する洗濯機モータ12のq軸電流値に基づいて回転槽7の回転ムラの大きさを検知する。即ち、回転ムラ検知部24は、電流センサ16が検知する洗濯機モータ12のq軸電流値が大きいほど、回転槽7の回転ムラが大きい、つまり、回転槽7の回転の不安定度が高いと判定する。
【0034】
傾き判定部25は、回転ムラ検知部24よって検知される回転槽7の回転ムラの大きさ、つまり、回転槽7の回転の不安定度に基づいて、洗濯機本体部2が洗濯機1の設置面つまり水平面に対して傾いているか否かを判定する。この場合、傾き判定部25は、回転ムラ検知部24によって検知される回転槽7の回転の不安定度が、加速度センサ20によって検知される水槽5の振動の大きさに基づいて推定される回転槽7の回転の不安定度よりも大きい場合に、洗濯機本体部2が洗濯機1の設置面に対して傾いていると判定するように構成されている。
【0035】
なお、制御装置21は、水槽5の振動の大きさと、その振動の大きさから推定される回転槽7の回転の不安定度と、を対応付けたデータテーブルを、図示しない記憶媒体に格納している。傾き判定部25は、このデータテーブルを参照することにより、加速度センサ20によって検知される水槽5の振動の大きさに基づいて、回転槽7の回転の不安定度を推定することが可能となっている。
【0036】
次に、本開示に係る洗濯機1による傾き判定制御の一例について説明する。図3に例示するように、制御装置21は、脱水行程を開始すると、加速度センサ20によって水槽5の振動を検知する(ステップS1)。ここで、図4に例示するように、制御装置21は、脱水行程を開始すると、回転槽7の回転速度を、設定されている脱水行程用の所定の高速度に向けて徐々に段階的に上昇つまり加速させるようになっている。そして、制御装置21は、回転槽7の回転速度を上昇させている期間、つまり、回転槽7の回転速度を加速させる加速期間T1中に、加速度センサ20によって水槽5の振動を検知するように構成されている。
【0037】
即ち、加速期間T1は、加速度センサ20によって水槽5の振動を検知する検知期間でもある。なお、制御装置21は、加速期間T1中における所定の段階、例えば、初期段階あるいは最終段階に加速度センサ20によって水槽5の振動を検知するようにしてもよいし、加速期間T1中における複数時点に加速度センサ20によって水槽5の振動を検知するようにしてもよいし、加速期間T1の全体にわたって加速度センサ20によって水槽5の振動を検知するようにしてもよい。
【0038】
また、制御装置21は、加速期間T1中における複数時点に加速度センサ20によって水槽5の振動を検知する場合には、各時点において検知される水槽5の振動のうち、最も大きい値のものを検知結果としたり、最も小さいものを検知結果としたり、平均値を検知結果としたり、中央値を検知結果としたりすることができる。
【0039】
また、制御装置21は、加速期間T1の全体にわたって加速度センサ20によって水槽5の振動を検知する場合には、加速期間T1中に検知される水槽5の振動のうち、最も大きい値のものを検知結果としたり、最も小さいものを検知結果としたり、平均値を検知結果としたり、中央値を検知結果としたりすることができる。
【0040】
そして、図3に例示するように、制御装置21は、回転槽7の回転速度の加速中に加速度センサ20によって検知される水槽5の振動の大きさに基づいて、回転槽7の回転ムラの大きさM1を推定する(ステップS2)。つまり、制御装置21は、回転槽7の回転ムラの推定値M1を推定する。また、制御装置21は、洗濯機モータ12のq軸電流値に基づいて、回転槽7の回転ムラの大きさM2を特定する(ステップS3)。つまり、制御装置21は、回転槽7の回転ムラの実際値M2を特定する。このとき、制御装置21は、回転槽7の回転速度が、加速度センサ20によって水槽5の振動を検知したときの回転速度と同じ回転速度、あるいは、若干高い回転速度であるときに得られる洗濯機モータ12のq軸電流値に基づいて、回転槽7の回転ムラの大きさM2を特定するように構成されている。
【0041】
そして、制御装置21は、水槽5の振動の大きさに基づき推定した回転槽7の回転ムラの大きさM1つまり推定値M1と、洗濯機モータ12のq軸電流値に基づき特定した回転槽7の回転ムラの大きさM2つまり実際値M2とを比較する(ステップS4)。そして、制御装置21は、実際値M2が推定値M1よりも著しく大きい場合(ステップS4にてYES)には、洗濯機本体部2が洗濯機1の設置面に対して傾いていると判定する(ステップS5)。
【0042】
なお、制御装置21は、推定値M1と実際値M2との差が所定量以上である場合に、実際値M2が推定値M1よりも著しく大きいと判断するように構成されている。また、その所定量は、例えば、洗濯機本体部2の大きさ、水槽5の大きさ、回転槽7の大きさなどに応じて適宜変更して設定することができる。
【0043】
制御装置21は、洗濯機本体部2が洗濯機1の設置面に対して傾いていると判定すると、所定の報知処理を実行する(ステップS6)。そして、制御装置21は、この傾き判定制御を終了する。
【0044】
なお、報知処理としては、例えば、操作パネル18の表示部に「洗濯機が傾いて設置されていること」を示す文字情報やアイコン情報を表示する視覚的な報知処理や、洗濯機1が備える図示しないスピーカから「洗濯機が傾いて設置されていること」を示す音声情報を出力する聴覚的な報知処理などが考えられる。また、制御装置21は、視覚的な報知処理および聴覚的な報知処理のうち何れか一方の処理を実行可能に構成してもよいし、双方の処理を実行可能に構成してもよい。また、報知する情報としては、単に「洗濯機が傾いて設置されていること」を示す情報に限られず、例えば「洗濯機の設置作業者を要請すること」を示す情報などであってもよい。
【0045】
また、制御装置21は、実際値M2が推定値M1よりも著しく大きくない場合(ステップS4にてNO)には、洗濯機本体部2が洗濯機1の設置面に対して傾いていると判定することなく、また、報知処理を実行することなく、この傾き判定制御を終了する。
【0046】
図5には、本開示に係る発明者が行った実験結果を示している。即ち、図5に例示するM1は、水槽5の振動の大きさに基づいて推定される回転槽7の回転ムラの大きさを示している。また、図5に例示するM2aは、洗濯機本体部2が洗濯機1の設置面に対して所定の低角度、例えば0.5度傾いている場合において洗濯機モータ12のq軸電流値に基づき特定される回転槽7の回転ムラの大きさを示している。また、図5に例示するM2bは、洗濯機本体部2が洗濯機1の設置面に対して所定の中角度、例えば1.0度傾いている場合において洗濯機モータ12のq軸電流値に基づき特定される回転槽7の回転ムラの大きさを示している。また、図5に例示するM2cは、洗濯機本体部2が洗濯機1の設置面に対して所定の高角度、例えば1.5度傾いている場合において洗濯機モータ12のq軸電流値に基づき特定される回転槽7の回転ムラの大きさを示している。
【0047】
図5に例示する実験結果によれば、洗濯機1の設置面に対する洗濯機本体部2の傾斜角度が大きいほど、推定値M1と実際値M2a,M2b,M2cとの差が大きくなることが確認できる。即ち、推定値M1と実際値M2cとの差は、推定値M1と実際値M2bとの差よりも大きく、また、推定値M1と実際値M2bとの差は、推定値M1と実際値M2aとの差よりも大きい。よって、推定値M1と実際値M2との差が大きいほど、洗濯機本体部2が洗濯機1の設置面に対して大きく傾いていると判定することができる。
【0048】
以上に例示した本開示に係る洗濯機1によれば、傾き判定部25は、回転ムラ検知部24によって検知される回転槽7の回転の不安定度が、加速度センサ20によって検知される水槽5の振動から推定される回転槽7の回転の不安定度よりも大きい場合に、洗濯機本体部2が洗濯機1の設置面に対して傾いていると判定する。即ち、本開示に係る洗濯機1によれば、その外郭を構成する洗濯機本体部2が洗濯機1の設置面に対して傾いて設置されているか否かを判定することが可能である。
【0049】
そして、本開示に係る洗濯機1によれば、洗濯機本体部2が洗濯機1の設置面に対して傾いて設置されていると判定された場合には、所定の報知処理を実行する。これにより、使用者は、報知処理に応じて、洗濯機本体部2が洗濯機1の設置面に対して傾いている状態を是正するための対処を行うことができ、洗濯機本体部2が洗濯機1の設置面に対して傾いている状態の解消を図ることができる。なお、洗濯機1が傾いた状態を是正するための対処としては、例えば、使用者自らが洗濯機1を設置し直す対処、使用者が設置作業者を要請する対処などが考えられる。
【0050】
また、本開示に係る洗濯機1によれば、洗濯機1が設置面に対して傾いて設置された状態である場合には、その状態を是正するための対処を適宜行うことにより、洗濯機1が設置面に対して傾いて設置された状態で運転、特に、脱水行程が行われてしまうことを回避することができる。これにより、回転槽7に発生しているアンバランスが小さいにもかかわらず水槽5が大きく振動してしまったり、あるいは、回転槽7に発生しているアンバランスが大きいにもかかわらず水槽5が小さく振動してしまったりすることを回避することができる。そのため、運転を停止するまでもないような小さなアンバランスの発生時に運転が停止してしまったり、あるいは、運転を停止する必要がある大きなアンバランスの発生時に運転が続行されてしまったりする事象が発生することを抑制することができる。
【0051】
また、本開示に係る洗濯機1によれば、洗濯機1が設置面に対して傾いて設置された状態である場合には、その状態を是正するための対処を適宜行うことにより、洗濯機本体部2が洗濯機1の設置面に対して傾いて設置された状態で運転、特に、脱水行程が行われてしまうことを回避することができる。そのため、洗濯機1において洗濯機本体部2の小型化と水槽5の大型化とが同時に並行して進められている場合であっても、水槽5が洗濯機本体部2に衝突することを十分に抑制することができる。
【0052】
また、本開示に係る洗濯機1によれば、制御装置21は、脱水行程の開始後において回転槽7の回転速度を上昇させる加速期間T1中に加速度センサ20によって水槽5の振動を検知し、その検知した振動の大きさに基づいて回転槽7の回転の不安定度を推定する。そして、制御装置21は、推定した回転槽7の回転の不安定度に基づいて、洗濯機本体部2が洗濯機1の設置面に対して傾いているか否かを判定する。この構成例によれば、脱水行程開始後の初期段階、つまり、回転槽7の回転速度が低速である段階のうちに洗濯機本体部2の傾き判定を行うことができる。よって、振動が大きくなる前に、洗濯機本体部2が傾いているか否かを判定することができる。
【0053】
また、回転槽7の回転速度が低速である段階であれば、仮に洗濯機本体部2が洗濯機1の設置面に対して傾いていたとしても、加速度センサ20が検知する水槽5の振動の大きさに大きな誤差は生じにくい。そのため、回転槽7の回転速度が低速である段階のうちであれば、検知した水槽5の振動の大きさに基づいて、回転槽7の回転の不安定度を十分に精度良く推定することができる。
【0054】
また、本開示に係る洗濯機1によれば、振動検知部の一例として、回転槽7の回転に伴い水槽5に発生する加速度を検知する加速度センサ20を備えている。上述した通り、加速度センサ20によれば、回転槽7におけるアンバランスの発生位置を特定することができ、つまり、「上部アンバランス」が発生しているのか否かを判定することができる。そのため、加速度センサ20を備える洗濯機1によれば、洗濯機モータ12のq軸電流値の上昇つまり回転槽7の回転の不安定度の上昇が、「上部アンバランス」が発生していることに起因しているのか、あるいは、洗濯機本体部2が洗濯機1の設置面に対して傾いて設置されていることに起因しているのか、を判断することができる。
【0055】
即ち、加速度センサ20による上下方向の検出回数に基づき「上部アンバランス」が発生していると判定される場合において洗濯機モータ12のq軸電流値が上昇しているのであれば、その原因は、「上部アンバランスが発生していること」であると判断することができる。一方、加速度センサ20による上下方向の検出回数に基づき「上部アンバランス」が発生していないと判定される場合において洗濯機モータ12のq軸電流値が上昇しているのであれば、その原因は、「洗濯機本体部2が洗濯機1の設置面に対して傾いていること」であると判断することができる。
【0056】
以上の通り、振動検知部として加速度センサ20を備える洗濯機1によれば、その加速度センサ20により「上部アンバランス」の発生の有無を判定することができる。そのため、洗濯機モータ12のq軸電流値が上昇する原因つまり回転槽7の回転の不安定度が上昇する原因について、「上部アンバランス」が発生しているのか否かという情報も加味して判断することができ、ひいては、洗濯機本体部2が洗濯機1の設置面に対して傾いているのか否かの判定を一層精度良く行うことができる。
【0057】
なお、本開示では、回転槽7の回転軸から遠い位置、つまり、回転槽7の上部で発生する「上部アンバランス」が発生しているのか否かという情報も加味して、回転槽7の回転の不安定度が上昇する原因を判断する実施形態を例示した。回転槽7の回転軸から遠い位置で発生するアンバランスは、回転槽7の回転の不安定度を上昇させる影響が強いためである。しかし、回転槽7の回転軸に近い位置、つまり、回転槽7の下部で発生する「下部アンバランス」が発生しているのか否かという情報も加味して、回転槽7の回転の不安定度が上昇する原因を判断するようにしてもよい。
【0058】
また、振動する水槽5が直接的に当接する安全レバーを振動検知部として備える構成においては、洗濯機本体部2が傾いている方向によって安全レバーによる検知回数が著しく増減することが懸念される。即ち、洗濯機本体部2が安全レバー側に傾いている場合、より具体的には、洗濯機本体部2が安全レバーとは反対側よりも安全レバー側が低くなるように傾いている場合には、水槽5が安全レバーに当接しやすくなり、安全レバーによる検知回数が著しく増加してしまう懸念がある。また、洗濯機本体部2が安全レバーとは反対側に傾いている場合、より具体的には、洗濯機本体部2が安全レバー側よりも安全レバーとは反対側が低くなるように傾いている場合には、水槽5が安全レバーに当接しにくくなり、安全レバーによる検知回数が著しく減少してしまう懸念がある。
【0059】
これに対して、加速度センサ20を振動検知部として備える構成によれば、洗濯機本体部2が傾いている方向が加速度センサ20による検知回数に与える影響は、安全レバーの場合に比べて著しく低い。そのため、加速度センサ20によれば、安全レバーに比べ、水槽5の振動を精度良く行うことができ、ひいては、洗濯機本体部2の傾き判定を精度良く行うことができる。
【0060】
(第2実施形態)
図6に例示するように、制御装置21は、脱水行程の実行中に傾き判定部25によって洗濯機本体部2が洗濯機1の設置面に対して傾いていると判定された場合には、脱水行程の制御内容を変更するように構成されている。この場合、制御装置21は、脱水行程の開始後における回転槽7の回転速度の加速を終了すると、回転槽7の回転速度を一定の回転速度に維持する維持期間T2を設ける。換言すれば、制御装置21は、回転槽7の回転に伴い水槽5に発生する振動の周波数が共振周波数を超えると、回転槽7の回転速度を一定の回転速度に維持する維持期間T2を設ける。
【0061】
そして、制御装置21は、脱水行程の実行中、例えば、回転槽7の回転速度の加速期間T1中に傾き判定部25によって洗濯機本体部2が洗濯機1の設置面に対して傾いていると判定された場合には、回転槽7の回転速度を一定に維持する維持期間T2の長さを所定時間t2だけ短くする。なお、この所定時間t2は、例えば水槽5の大きさや回転槽7の大きさなどに応じて適宜変更して設定することができる。
【0062】
洗濯機本体部2が洗濯機1の設置面に対して傾いている状態においては、回転槽7の回転速度が一定に維持される維持期間T2中においても、水槽5の振動が大きくなる可能性がある。そのため、傾き判定部25によって洗濯機本体部2が洗濯機1の設置面に対して傾いていると判定された場合に維持期間T2の長さを短くすることにより、仮に維持期間T2中に水槽5の振動が大きくなったとしても、水槽5の振動が大きい状態のまま脱水行程が長時間続行されてしまうことを回避することができる。
【0063】
また、洗濯機1においては、設置時においては水平に設置された場合であっても、その後、設置面が変形したりするなどして、洗濯機本体部2が設置面に対して傾いた状態となる場合がある。その場合、例えば設置作業者を要請して対応してもらうことで、洗濯機本体部2が傾いた状態を解消することができる。しかしながら、この場合、洗濯機本体部2が傾いた状態が解消されるまでに、かなりの時間を要することとなる。そのため、洗濯機本体部2が洗濯機1の設置面に対して傾いていると判定された場合に脱水行程の制御内容を変更することにより、洗濯機本体部2が傾いた状態であっても脱水行程が完全に不可能となることを回避することができ、設置作業者によって洗濯機本体部2が傾いた状態が解消されるまで脱水行程を全く実行できないといった事態の発生を回避することができる。
【0064】
なお、洗濯機本体部2が洗濯機1の設置面に対して傾いていると判定された場合における脱水行程の制御内容の変更態様は、維持期間T2の長さを短くするという変更態様に限られるものではない。即ち、脱水行程の制御内容の変更態様は、例えば、維持期間T2における回転槽7の回転速度を低くする変更態様など、その他の変更態様であってもよい。
【0065】
(第3実施形態)
図7に例示するように、制御装置21は、脱水行程の実行中に傾き判定部25によって洗濯機本体部2が洗濯機1の設置面に対して傾いていると判定された場合には、加速度センサ20による水槽5の振動の検知方法を変更するように構成されている。この場合、制御装置21は、脱水行程の実行中、例えば、回転槽7の回転速度の加速中に傾き判定部25によって洗濯機本体部2が洗濯機1の設置面に対して傾いていると判定された場合には、維持期間T2中においても加速度センサ20により水槽5の振動を検知する。即ち、制御装置21は、加速度センサ20により水槽5の振動を検知する検知期間に、回転槽7の回転速度の加速期間T1中だけでなく、その後の維持期間T2も加える。
【0066】
洗濯機本体部2が洗濯機1の設置面に対して傾いている状態においては、回転槽7の回転速度が一定に維持される維持期間T2中においても、水槽5の振動が大きくなる可能性がある。そのため、傾き判定部25によって洗濯機本体部2が洗濯機1の設置面に対して傾いていると判定された場合に、維持期間T2においても水槽5の振動を検知することにより、仮に維持期間T2中に水槽5の振動が大きくなったとしても、その水槽5の振動が大きい状態のまま運転が続行されてしまう期間を短くするといった対処をとることができる。
【0067】
また、洗濯機本体部2が洗濯機1の設置面に対して傾いていると判定された場合に加速度センサ20による水槽5の振動の検知方法を変更することにより、洗濯機本体部2が傾いた状態であっても脱水行程が完全に不可能となることを回避することができ、設置作業者によって洗濯機本体部2が傾いた状態が解消されるまで脱水行程を全く実行できないといった事態の発生を回避することができる。
【0068】
なお、洗濯機本体部2が洗濯機1の設置面に対して傾いていると判定された場合における水槽5の振動の検知方法の変更態様は、検知期間に維持期間T2を含めるという変更態様に限られるものではない。即ち、水槽5の振動の検知方法の変更態様は、例えば、加速期間T1あるいは維持期間T2における水槽5の振動の検知回数を変更する変更態様など、その他の変更態様であってもよい。
【0069】
(その他の実施形態)
なお、本開示は、上述した複数の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更や拡張を行うことができる。例えば、洗濯機1は、上述した複数の実施形態を適宜組み合わせた構成としてもよい。
【0070】
また、洗濯機1は、所定の標準的な態様で回転槽7の回転などを制御する試運転モードを実行可能に構成してもよい。そして、洗濯機1の設置作業者は、例えば洗濯機1の設置時に、この試運転モードを実行するとよい。そして、制御装置21は、この試運転モードの実行中に洗濯機本体部2が傾いていると判定された場合には、所定の報知処理を実行するようにするとよい。設置作業者は、試運転モードの実行中に報知処理が実行された場合には、その洗濯機1の設置態様を再確認したり、洗濯機本体部2内における水槽5や回転槽7の位置を再確認したりして、必要な修正を行う。これにより、洗濯機1を、より最適な状態で設置することができる。
【0071】
ここで、洗濯機1は、機体ごとに構成部品にばらつきがある場合があり、そのため、仮に洗濯機本体部2が洗濯機1の設置面に対して水平に設置されている場合であっても、水槽5や回転槽7が正規の位置からずれてしまう場合が考えられる。そして、水槽5や回転槽7が正規の位置からずれていると、仮に洗濯機本体部2が洗濯機1の設置面に対して水平に設置されている場合であっても、回転槽7の回転が不安定となったり、水槽5が洗濯機本体部2に衝突したりするなどして、洗濯機本体部2が傾いて設置されていると誤判定される場合が生じ得る。そのため、洗濯機1の設置時に試運転モードを実行し、その際に、洗濯機本体部2が傾いて設置されていると誤判定されるか否かを確認し、誤判定が発生した場合には、洗濯機1の設置状態の再確認などを行うことにより、洗濯機1の機体ごとに適切な設置状態を実現することができる。
【0072】
また、回転槽7内の衣類の重量を検知する重量検知部を備える場合には、アンバランス検知部22は、加速度センサ20の検出値に、重量検知部により検知された重量を加味して回転槽7のアンバランス発生位置を判定するように構成してもよい。例えば、衣類の重量が比較的小さいときには、回転槽7の底部にしか衣類は存在せず、上部で衣類が偏ったり絡まったりする可能性は低い。そのため、衣類の重量が比較的少ない場合には、仮に「上部アンバランス」が発生していると判定できる場合であっても、「上部アンバランス」と判定しないようにしてもよい。このように衣類の重量も加味することにより、アンバランス発生位置の判定を一層精度良く行うことが可能となる。
【0073】
また、上述の実施形態では、回転槽7の回転軸が上下方向である縦軸型の洗濯機1を例示したが、本開示は、回転槽としてのドラムを、水平方向や傾斜方向の回転軸周りに回転させるようにした、いわゆる横軸型のドラム式の洗濯機にも適用可能である。この場合、加速度センサは、回転槽の回転軸方向とそれと直交する方向における加速度ひいては変位量を検出するように設ければよい。
【0074】
以上、本発明に係る複数の実施形態を説明したが、これらの実施形態は、あくまでも例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0075】
図面中、1は洗濯機(衣類処理装置)、2は洗濯機本体部、5は水槽、7は回転槽、20は加速度センサ(振動検知部)、21は制御装置(制御部)、24は回転ムラ検知部(不安定度検知部)、25は傾き判定部、を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7