(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022166605
(43)【公開日】2022-11-02
(54)【発明の名称】積層製品の製造方法及び積層製品
(51)【国際特許分類】
H02K 15/02 20060101AFI20221026BHJP
【FI】
H02K15/02 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021071927
(22)【出願日】2021-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】591093494
【氏名又は名称】株式会社ミスズ工業
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100104709
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 誠剛
(72)【発明者】
【氏名】望月 英治
(72)【発明者】
【氏名】窪田 貴則
【テーマコード(参考)】
5H615
【Fターム(参考)】
5H615AA01
5H615BB05
5H615BB14
5H615PP01
5H615PP06
5H615SS05
5H615SS19
(57)【要約】
【課題】板状部品間の結合強度を高くし、かつ、板状部品及び積層製品の反りの発生を抑えることが可能な積層製品の製造方法及び積層製品を提供すること。
【解決手段】板状部品準備工程では、最下層の板状部品11Aに貫通孔17を開口し、板状部品11Aより上層の板状部品11Bの一方の面側に凸状部25を押出し形成した後、凸状部25の周囲を半抜き加工によって他方の面側に円形の凸部18を突設する。第1結合工程では、貫通孔17に凸部18を嵌合させた後に、パンチ33を用いて凸状部25が平坦になるまで押圧し、次の工程で結合する、さらに上層の板状部品11Cの凸部20を嵌合させることが可能な凹部19を形成する。第2結合工程では、凹部19に、さらに上層の板状部品11Cの凸部23を嵌合した後に、パンチ33を用いて凸状部25が平坦になるまで押圧する。第2結合工程を所定の積層枚数に達するまで繰り返す。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の板状部品を積層し複数個所の結合部で結合し一体化する積層製品の製造方法であって、
前記結合部に貫通孔が開口された最下層の前記板状部品と、一方の面側に凸状部が形成され、他方の面側に円形の凸部が形成された、前記最下層の前記板状部品より上層の前記板状部品と、を準備する板状部品準備工程と、
前記最下層の前記板状部品の前記貫通孔に前記上層の前記板状部品の前記凸部を嵌合させた後に、先端面が平面のパンチを用いて前記凸状部が平坦になるまで押圧し、「次の工程で結合するさらに上層の前記板状部品の前記凸部を嵌合させることが可能な」凹部を形成する第1結合工程と、
前記凹部に、前記さらに上層の前記板状部品の前記凸部を嵌合した後に、前記パンチを用いて前記凸状部が平坦になるまで押圧し、「次の工程で結合するさらに前記上層の前記板状部品の前記凸部を嵌合させることが可能な」前記凹部を形成する第2結合工程と、
を有することを特徴とする積層製品の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の積層製品の製造方法において、
前記第2結合工程を所定の積層枚数に達するまで繰り返す工程を有する、
ことを特徴とする積層製品の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の積層製品の製造方法において、
前記板状部品準備工程においては、前記最下層の前記板状部品より前記上層の前記板状部品を、一方の面側に前記凸状部を押出し形成した後、前記凸状部の周囲を半抜き加工によって他方の面側に円形の前記凸部を突設する工程によって形成する、
ことを特徴とする積層製品の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の積層製品の製造方法において、
前記板状部品準備工程においては、前記凸状部の根元部周囲に環状平面部を形成する、
ことを特徴とする積層製品の製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載の積層製品の製造方法において、
前記貫通孔及び前記凹部の直径は、前記凸部の直径より大きく形成する、
ことを特徴とする積層製品の製造方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の積層製品の製造方法において、
積層製品が積層コアであり、前記積層コアを構成する前記板状部品は電磁鋼板で形成されるコア板である、
ことを特徴とする積層製品の製造方法。
【請求項7】
複数の板状部品が複数個所の結合部で結合された積層製品であって、
前記結合部に設けられた貫通孔を有する最下層の前記板状部品と、
一方の面側に凸状部を有し、前記凸状部の周囲を半抜き加工によって他方の面側に円形の凸部が形成されている前記最下層の前記板状部品より上層の前記板状部品と、から構成され、
前記上層の前記板状部品は、前記貫通孔に前記凸部を嵌合した状態で、前記凸状部を押圧することによって形成される、さらに上層の前記板状部品の前記凸部が嵌合可能な凹部を有し、
相対的に下層に配置された前記板状部品と、相対的に上層に配置された前記板状部品とは、相対的に下層に配置された前記板状部品に相対的に上層に配置された前記板状部品の前記凸部を嵌合した状態で、前記凸状部を押圧することによって結合されたものである、
ことを特徴とする積層製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層製品の製造方法及び積層製品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プレス加工によって所定の形状に打抜かれた板状部品(コア板)を複数枚積層し一体化して積層製品(積層コア)を形成する製造方法がある。このような積層製品の製造方法は、まず、板状部品の一方面側にカシメ用のダボ凹部を形成すると共に他方面側にダボ凸部を形成する。次いで、下層の板状部品のダボ凹部に上層の板状部品のダボ凸部を嵌合させた後、上層の板状部品のダボ凹部に円錐形のポンチ先端を突き刺すように押圧し、下層側のダボ凹部内で上層側のダボ凸部を径方向に膨らませて下層の板状部品と下層の板状部品とを結合する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記積層製品の製造方法によれば、ポンチの先端で上層のダボ凹部の底部を押圧する際に、下層側のダボ凹部に嵌合している上層のダボ凸部は径方向に膨らむ。しかし、板状部品が0.3mmというような薄い板材で形成されている場合には、円錐形のポンチ先端を押圧しても径方向に十分な膨らみ量(つまり締め代)を得ることができず、十分な結合強度が得られないという課題がある。また、ポンチが円錐形のため、ポンチの先端部より根元部の方が膨らみ量が大きくなる。このことによって、ポンチによる押圧力を解放すると板状部品に反りが発生する。この反りによって、上層の板状部品と下層の板状部品との間に隙間ができてしまい、積層製品にも反りが発生する。なお、反りが発生したときの対応策として、積層製品の上下方向を平板で挟み込み、平打ちによって板状部品間の隙間や積層製品の反りを除去する工程が必要になる場合がある。
【0005】
そこで、本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、各層間の板状部品の結合強度を高くし、かつ、板状部品及び積層製品の反りの発生を抑えることが可能な積層製品の製造方法及び積層製品を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本発明の積層製品の製造方法は、複数の板状部品を積層し複数個所の結合部で結合し一体化する積層製品の製造方法であって、前記結合部に貫通孔が開口された最下層の前記板状部品と、一方の面側に凸状部が形成され、他方の面側に円形の凸部が形成された、前記最下層の前記板状部品より上層の前記板状部品と、を準備する板状部品準備工程と、前記最下層の前記板状部品の前記貫通孔に前記上層の前記板状部品の前記凸部を嵌合させた後に、先端面が平面のパンチを用いて前記凸状部が平坦になるまで押圧し、「次の工程で結合するさらに上層の前記板状部品の前記凸部を嵌合させることが可能な」凹部を形成する第1結合工程と、前記凹部に、前記さらに上層の前記板状部品の前記凸部を嵌合した後に、前記パンチを用いて前記凸状部が平坦になるまで押圧し、「次の工程で結合するさらに前記上層の前記板状部品の前記凸部を嵌合させることが可能な」前記凹部を形成する第2結合工程と、を有することを特徴とする。
【0007】
[2]本発明の積層製品の製造方法においては、前記第2結合工程を所定の積層枚数に達するまで繰り返す工程を有することが好ましい。
【0008】
[3]本発明の積層製品の製造方法においては、前記板状部品準備工程においては、前記最下層の前記板状部品より前記上層の前記板状部品を、一方の面側に前記凸状部を押出し形成した後、前記凸状部の周囲を半抜き加工によって他方の面側に円形の前記凸部を突設する工程によって形成することが好ましい。
【0009】
[4]本発明の積層製品の製造方法においては、前記板状部品準備工程においては、前記凸状部の根元部周囲に環状平面部を形成することが好ましい。
【0010】
[5]本発明の積層製品の製造方法においては、前記貫通孔及び前記凹部の直径は、前記凸部の直径より大きく形成することが好ましい。
【0011】
[6]本発明の積層製品の製造方法においては、積層製品が積層コアであり、前記積層コアを構成する前記板状部品は電磁鋼板で形成されるコア板であることが好ましい。
【0012】
[7]本発明の積層製品は、複数の板状部品が複数個所の結合部で結合された積層製品であって、前記結合部に設けられた貫通孔を有する最下層の前記板状部品と、一方の面側に凸状部を有し、前記凸状部の周囲を半抜き加工によって他方の面側に円形の凸部が形成されている前記最下層の前記板状部品より上層の前記板状部品と、から構成され、前記上層の前記板状部品は、前記貫通孔に前記凸部を嵌合した状態で、前記凸状部を押圧することによって形成される、さらに上層の前記板状部品の前記凸部が嵌合可能な凹部を有し、相対的に下層に配置された前記板状部品と、相対的に上層に配置された前記板状部品とは、相対的に下層に配置された前記板状部品に相対的に上層に配置された前記板状部品の前記凸部を嵌合した状態で、前記凸状部を押圧することによって結合されたものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の積層製品の製造方法は、上層の板状部品の凸部を下層の板状部品の貫通孔又は凹部に篏合させた後に、先端面が平面のパンチによって凸状部を上方から押圧することによって凸状部を貫通孔又は凹部内において放射状に均等に押し広げるため、上層の板状部材と下層の板状部材との結合強度を高めることが可能となる。また、貫通孔及び凹部と凸部は遊嵌の関係にあること、半抜き加工した後の凸状部の根元部周囲には環状平面部が形成されていることから、パンチで凸状部を押圧する際に、凸状部は貫通孔又は凹部内において環状平面部に沿うように放射状に均等に広がろうとするため、板状部品の反りの発生を抑えることが可能となる。
【0014】
このような積層製品の製造方法によれば、上層の板状部品を下層の板状部品に結合することを積層枚数分繰り返すことによって、各層間の板状部品の結合強度を高くし、かつ、板状部品及び積層製品の反りの発生を抑えることが可能となる。
【0015】
また、上記のような積層製品の製造方法は、これをモータのステータやロータなどの積層コアに採用することによって、コア板間の結合強度を高くし、かつ、コア板の反りの発生を抑えることが可能であることから、複数枚のコア板を密接させることができ、ノイズや振動を抑え、さらに磁気回路の効率化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】積層製品10の1構成例を示す平面図である。
【
図2】
図1のA―A切断線で切断した積層製品10を拡大して示す断面図である。
【
図3】板状部品準備工程によって形成された最下層の板状部品11A及びこれより上層の板状部品11Bを示す断面図である。
【
図4】板状部品11Bの準備工程を示す断面図である。
【
図6】板状部品11Aに結合された板状部品11Bに板状部品11Cを結合する工程を示す説明図である。
【
図7】前工程で接合された板状部品11Cに、さらに板状部品11D,11E,11F,11Gの順に積層し結合する工程を示す説明図である。
【
図8】板状部品11Bに板状部品11Cを結合する状況を拡大して説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態に係る積層製品の製造方法及びこの製造方法を用いて製造される積層製品10について
図1~
図8を参照して説明する。複数枚の板状部品11を積層し一体化する積層製品の製造方法は、様々な積層製品に適合させることが可能である。なお、以降、説明する各図は、縮尺、縦横サイズ比及び形状を簡略化して表す模式図である。
【0018】
(積層製品10の構成)
図1は、積層製品10の1構成例を示す平面図、
図2は、
図1のA―A切断線で切断した積層製品10を拡大して示す断面図である。なお、
図1は板状部品11及び積層製品10の平面形状を表している。積層製品10は、複数枚の板状部品11を積層し結合して構成される。
図1に示すように、板状部品11は、環状基部12、環状基部12から外側方向に突設された取付け部13、及び環状基部12に環状に配置される多数の長方形の貫通孔14を有している。積層製品10がモータのステータやロータなどに使用される積層コアの場合、隣接する貫通孔14の間は突極部であり、突極部にはコイルが巻回される。
【0019】
取付け部13には取付け孔15が設けられている。積層製品10は、この取付け孔15を用いてネジなどで取付け板(図示は省略)に固定される。複数枚の板状部品11は、各要部の位相を一致させた状態で積層され、複数個所の結合部16で一体化される。なお、
図1に示す結合部16は6か所であるが、さらに増やすことも減らすことも可能である。結合部16の面積は、環状基部12の面積に比べてはるかに小さく、
図1に示す例は、環状基部12の外径が200mm、結合部16の外径を2mmとする例である。続いて、
図2を参照して結合部16の構造について説明する。
【0020】
なお、
図2は、板状部品11が7枚で構成される例を表している。板状部品11は、複数層に積層される各板状部品を共通に説明することが可能な場合の総称であって、本例では、各板状部品11を最下層から上層側に向かって順に板状部品11A,11B,11C,11D,11E,11F,11Gとする。板状部品11A~11Gの外形形状、貫通孔14及び取付け部13は同じ形状を有している。最下層の板状部品11Aには、結合部16の位置に貫通孔17設けられている。板状部品11Aと板状部品11Bとは、板状部品11Aの貫通孔17に板状部品11Bの凸部18を嵌め込むことによって結合されている。また、板状部品11Bと板状部品11Cとは、板状部品11Bの凹部19に板状部品11Cの凸部20を嵌め込むことによって結合されている。
【0021】
板状部品11Cと板状部品11D、板状部品11Dと板状部品11E、板状部品11Eと板状部品11F、及び板状部品11Fと板状部品11Gとは、板状部品11Bと板状部品11Cと同じ結合構造で結合されている。板状部品11A~11Gは、結合部16で結合することによって環状基部12が密接した状態で一体化される。また、取付け部13においては、取付け孔15が板状部品11A~11Gを貫通している。続いて、積層製品の製造方法について
図3~
図8を参照して説明する。
【0022】
(積層製品の製造方法)
図3は、最下層の板状部品11A及びこれより上層の板状部品11Bの板状部品準備工程を示す断面図である。なお、
図1に示すように、結合部16は環状基部12の6か所に設けられているが、6か所同時に同様な方法で結合するため、以降の説明においては、1か所を代表例として説明する。
図3(a)は最下層の板状部品11Aを示し、
図3(b)は、最下層の板状部品11Aより上層の板状部品11Bを示している。板状部品準備工程において、
図3(a)に示すように、最下層の板状部品11Aには、プレス加工により結合部16の位置に貫通孔17が開口される。また、板状部品準備工程において、
図3(b)に示すように、板状部品11Bには、一方の面側に凸状部25が形成され、他方の面側に凸部18が形成される。なお、板状部品11B~11Gは、同じ形状を有しているため、板状部品11Bを代表例として説明する。
【0023】
図4は、板状部品11Bの準備工程を示す断面図である。
図4(a)は、上層の板状部品11Bに凸状部25を押出し形成する工程を示し、
図4(b)は、凸状部25が形成された板状部品11Bに半抜き加工を加える工程を示している。
図4(a)に示す工程では、板状部品11Bは、上型26と下型27とで環状基部12を挟み込んだ状態で、パンチ22によって凸状部25を押出し形成する。
図4(a)に示す例は、パンチ22の先端部形状は円錐台であって、底面を円とする山形形状の凸状部25が形成される。なお、パンチ22の先端部形状は、円錐台に限らず、平面形状がn角形の角錐(nは整数)、n角錐台や円錐又は円錐先端に丸みを設けた形状であってもよく、板状部品11Bの厚みt0(
図8参照)及び材質によって適宜設定することが可能である。
【0024】
但し、パンチ22の先端部形状を円錐台にすることによって、凸状部25の頂部35には環状基部12に平行な平面領域が形成される。そのために、後述する第1結合工程(
図5参照)において、パンチ33で凸状部25を押圧する際に、他の先端部形状(例えば、n角錐、n角錐台及び円錐形など)よりも凸状部25を均等に平坦化することが可能となる。なお、
図4(a)に示す例においては、凸状部25の高さは、環状基部12の厚み(すなわち、板状部品11Bの厚み)と同じ高さに設定されている。凸状部25の高さは、環状基部12の厚みt0及び材質に対応して適宜設定することが可能である。
【0025】
図4(b)に示す工程では、凸状部25の形状を維持しながら下方側に板状部品11Bを半抜き加工し、凸状部25の反対側に凸部18を形成する。この工程では、板状部品11Bの凸状部25の周囲を上型28と下型29で挟み込み、パンチ30によって半抜き加工する。パンチ30は、凸状部25を逃げるサイズの逃げ凹部30aを有し、逃げ凹部30aの外周端部30bは環状基部12に平行な平面で構成されている。つまり、外周端部30bは凸状部25の斜面には接触せず、凸状部25の根元部周囲には環状平面部34が形成される。半抜き加工後の凸状部25は、
図4(a)に示した山形形状を維持した状態で下方側に移動する。板状部品11C~11Gは板状部品11Bと同じ方法で、同じ形状に形成される。すなわち、板状部品11B~11Gは共通に使用することが可能である。なお、予め、最下層の板状部品11A及びそれより上層の板状部品11B~11Gを多数製造し、次の第1結合工程及び第2結合工程のために準備しておくことが可能である。続いて、最下層の板状部品11Aに上層の板状部品11Bを結合する第1結合工程について
図5を参照して説明する。
【0026】
図5は、第1結合工程を示す説明図である。まず、
図5(a)に示すように、下型31に板状部品11Aを載置した後、半抜き加工された板状部品11Bを搬送し、板状部品11Aの貫通孔17に板状部品11Bの凸部18を嵌合させる。この工程は、6か所の結合部16において同時に行われる。従って、板状部品11Aに対する板状部品11Bの位置が決まる。なお、下型31に対する板状部品11Aの位置は、板状部品11Aの取付け孔15(
図1参照)と下型31に設けられる案内ピン(図示は省略)とを嵌合させることによって決められている。次いで、板状部品11Bを板状部品11Aに結合する。
【0027】
板状部品11Aと板状部品11Bとの結合は、
図5(b)に示すように、板状部品11Aの貫通孔17に板状部品11Bの凸部18を嵌合させた状態で、凸状部25の周囲を下型31及び上型32で挟み込み、先端が環状基部12に平行な平面を有するパンチ33で凸状部25が平坦になるまで押圧する。すると、凸部18が板状部品11Aの貫通孔17内で水平方向に膨らみ、板状部品11Aと板状部品11Bとが結合される。この際、板状部品11Bの上層側には、次の工程で、板状部品11Cの凸部20(
図2参照)を嵌合させることが可能な凹部19が形成される。板状部品11Aと板状部品11Bとの結合後、板状部品11Cを板状部品11Bに結合する。
【0028】
図6は、板状部品11Aに結合された板状部品11Bに板状部品11Cを結合する工程を示す説明図である。板状部品11Bには、板状部品11Aと板状部品11Bとの第1結合工程で形成された板状部品11Cの凸部20が嵌合可能な凹部19が形成されている。板状部品11Bに形成されている凹部19に凸部20を嵌合させた後、板状部品11Cは、パンチ33で板状部品11Cに形成されている凸状部25を押圧することによって、板状部品11Bに結合される。板状部品11Cには、板状部品11Cの上層となる板状部品11Dの凸部23が嵌合することが可能な凹部21が形成される。このように、下層の板状部品11Bに上層の板状部品11Cを結合する工程を第2結合工程とする。
【0029】
図7は、前工程で接合された板状部品11Cに、さらに板状部品11D,11E,11F,11Gの順に積層し結合する工程を示す説明図である。板状部品11Cと板状部品11D、板状部品11Dと板状部品11E、板状部品11Eと板状部品11F、及び板状部品11Fと板状部品11Gとの結合は、各層において、下層に配置される板状部品11の凹部に上層に配置される板状部品の凸部を嵌合させた後、凸状部25を押圧する第2結合工程を繰り返すことによって行うことで可能となる。すなわち、第2結合工程は、相対的に下層に配置された板状部品11の凹部に相対的に上層に配置された板状部品11の凸部を嵌合した状態で、凸状部25を押圧することによって下層の板状部品11を下層の板状部品11に結合する。なお、板状部品11A~11Gは、共通のプレス装置で順次積層し結合することが可能であるが、各層の結合毎にプレス装置を設けるようにしてもよい。本例では、板状部品11を7枚結合する例を説明したが、板状部品11を100枚、200枚というように多数枚を結合することもあり、第2結合工程を所定の積層枚数に達するまで繰り返すことによって積層製品10を製造することが可能となる。続いて、相対的に上層の板状部品11と相対的に下層の板状部品11との結合(第2結合工程)の詳しい方法について、板状部品11Bに板状部品11Cを結合する例をあげ、
図8を参照してさらに詳しく説明する。
【0030】
図8は、板状部品11Bに板状部品11Cを結合する状況を拡大して説明する説明図である。
図8(a)は、板状部品11Aの貫通孔17に板状部品11Bの凸部20を結合した後に、板状部品11Cの凸部20を板状部品11Bの凹部19に嵌合させた状況を表している。
図8(b)は、板状部品11Cを板状部品11Bに結合する状況を表している。下層の板状部品11Bの凹部19の直径をd1、上層の板状部品11Cの凸部20の直径をd2としたとき、それぞれの直径d1,d2は、d1>d2の関係にある。例えば、環状基部12の厚みt0を0.25mm、d1を2mmにした場合には、凹部19と凸部20との隙間gを0.01mmに設定する。このようにすれば、板状部品11Cの凸部20は、板状部品11Bの凹部19に負荷なく容易に嵌合させることが可能となり、嵌合時に変形したり、反りが発生したりすることはない。板状部品11Aの貫通孔17の直径は、凹部19の直径と同じd1である。なお、
図8(a)では、隙間gを誇張して表している。
【0031】
板状部品11Cにおいて、板状部品11Bに結合した後に凹部21となる深さをf1とすると、凸部20の高さもf1となる。凸部20の高さf1は、板状部品11Bの凹部19の深さと同じになる。半抜き加工後の残り肉厚みt1は、環状基部12の厚みt0に対して40~50%とすることが好ましい。なお、残り肉厚みt1は、環状基部12の厚みt0及び板状部品11の材質によって適宜設定されるものである。また、板状部品11Cは、凸状部25の斜面から外周方向に離れた位置でパンチ30によって半抜き加工が行われるため、凸状部25の周囲には環状平面部34が形成される。
【0032】
図8(b)に示すように、板状部品11Cの凸状部25の頂部35をパンチ33で環状平面部34を延長した平坦になるまで押圧すると、凸部20の外周部20aは、凸部20の根元と環状基部12の交差部Qを支点にして符号Sで示すように外側方向に膨らもうとする(点線の矢印方向)。実際には外周部20aに内周壁部19aが当接するために、圧縮応力による高い結合強度が得られる。また、残り肉厚みt1の領域では、外側方向に膨らもうとする力は、環状平面部34に平行、かつ、放射状に均等に環状基部12に伝わるために、板状部品11Cの反りの発生を抑えることが可能となる。同様に、板状部品11D~11Gにおいても反りを抑えることが可能となる。
【0033】
以上説明した積層製品の製造方法は、まず、板状部品準備工程によって、結合部16に貫通孔17が開口された最下層の板状部品11Aと、一方の面側に凸状部25が形成され、他方の面側に円形の凸部18,20,23,…が形成された、最下層の板状部品11Aより上層の板状部品11B~11Gとを準備する。第1結合工程では、最下層の板状部品11Aの貫通孔17に上層の板状部品11Bの凸部18を嵌合させた後に、先端面が平面のパンチ33を用いて凸状部25が平坦になるまで押圧し、次の工程で結合するさらに上層の板状部品11Cの凸部20を嵌合させることが可能な凹部19を形成する。
【0034】
第2結合工程では、下層の板状部品11Bの凹部19に、上層の板状部品11Cの凸部20を嵌合した後に、パンチ33を用いて凸状部25が平坦になるまで押圧し、次の工程で結合するさらに上層の板状部品11Dの凸部23を嵌合させることが可能な凹部21を形成する。
【0035】
このような製造方法によれば、各層間の板状部品11の結合強度を高くし、かつ、板状部品11及び積層製品10の反りの発生を抑えることが可能となる。
【0036】
また、積層製品の製造方法においては、上記第2結合工程を所定の積層枚数に達するまで繰り返す。このような第2結合工程では、上層の板状部品11の凸状部25を押圧すると、それより下層に配置される各板状部品の平坦化された凸状部25をさらに押圧することになる。順次、上層の板状部品11を積層していく毎に押圧工程を繰り返すことによって、各層間の板状部品11の結合強度を高くし、かつ、積層製品10の反りの発生を抑えることが可能となる。
【0037】
また、板状部品準備工程においては、最下層の板状部品11Aより上層の板状部品11B~11Cを、一方の面側に凸状部25を押出し形成した後、凸状部25の周囲を半抜き加工によって他方の面側に円形の凸部18,20,23,…を突設させ形成する。このような製造方法によれば、凸状部25の形状を維持しながら、相対的に下層に配置される板状部品11に相対的に上層に配置される板状部品11を結合するための凸状部25を形成することが可能となる。
【0038】
また、板状部品準備工程においては、凸状部25の根元部周囲に環状平面部34を形成する。先端面が平面のパンチ33によって、頂部35が平面の凸状部25を上方から押圧することによって、凸状部25を貫通孔17又は凹部内において環状平面部34に沿って放射状に均等に押し広げるため、上層の板状部品11と下層の板状部品11との結合強度を高め、かつ、反りの発生を抑えることが可能となる。
【0039】
また、板状部品準備工程においては、貫通孔17及び凹部19,21,…の直径d1は、凸部18,20,23,…の直径d2より大きく形成する。このようにすることによって、相対的に配置される上層の板状部品11の凸部を相対的に配置される下層の板状部品11の凹部に嵌合する際の負荷がなく容易に嵌合させることが可能となり、嵌合時に板状部品11を変形させたり、反りを発生させたりするおそれがない。
【0040】
また、積層製品10を積層コアとし、積層コアを構成する板状部品11を電磁鋼板で形成されるコア板としたとき、上記の積層製品の製造方法によれば、各層間のコア板の結合強度を高くし、かつ、コア板及び積層コアの反りの発生を抑えることが可能であり、積層コアをモータのステータやロータなどに採用することによって、ノイズや振動を抑え、さらに磁気回路の効率化を図ることが可能となる。
【0041】
また、積層製品10は、結合部16に設けられた貫通孔17を有する最下層の板状部品11Aと、一方の面側に凸状部25を有し、凸状部25の周囲を半抜き加工によって他方の面側に円形の凸部18,20,23,…が形成されている最下層の板状部品11Aより上層の板状部品11B~11Gと、から構成される。上層の板状部品11は、貫通孔17に凸部18を嵌合した状態で、凸状部25を押圧することによって形成される、さらに上層の板状部品11Cの凸部20が嵌合可能な凹部19を有し、相対的に下層に配置された板状部品11と、相対的に上層に配置された板状部品11とは、相対的に下層に配置された板状部品11に相対的に上層に配置された板状部品11の凸部を嵌合した状態で、凸状部25を押圧することによって結合されている。
【0042】
このように構成される積層製品10は、板状部品11間の結合強度を高くし、かつ、反りの発生を抑えることが可能となる。
【符号の説明】
【0043】
10…積層製品(積層コア)、11,11A~11G…板状部品(コア板)、12…環状基部、13…取付け部、14,17…貫通孔、15…取付け孔、16…結合部、18,20,23…凸部、19,21…凹部、22,30,33…パンチ、25…凸状部、26,28,32…上型、27,29,31…下型、34…環状平面部、35…頂部、d1,d2…直径、f1…凹部の深さ(凸部の高さ)、g…隙間、t0…厚み、t1…残り肉厚み、Q…交差部。