(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022166609
(43)【公開日】2022-11-02
(54)【発明の名称】外観検査装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/86 20060101AFI20221026BHJP
【FI】
G01N21/86
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021071931
(22)【出願日】2021-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】林田 勝也
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA32
2G051AB01
2G051AB04
2G051CA04
2G051CA11
2G051DA06
2G051DA17
(57)【要約】
【課題】検査時に検査ステージ上の異物が要因となる「輝点」等の疑似欠陥の発生原因となる異物の除去を容易とし、正確な検査ができる外観検査装置を提供すること。
【解決手段】被検査物を載置する検査ステージを備えた外観検査装置であって、前記被検査物を前記検査ステージ上に真空吸着する真空チャック機構と、前記検査ステージの上面を構成し、前記被検査物の真空吸着により、前記被検査物と接する通気性シートと、前記通気性シートを搬送する搬送機構と、を備えることを特徴とする外観検査装置である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査物を載置する検査ステージを備えた外観検査装置であって、
前記被検査物を前記検査ステージ上に真空吸着する真空チャック機構と、
前記検査ステージの上面を構成し、前記被検査物の真空吸着により、前記被検査物と接する通気性シートと、前記通気性シートを搬送する搬送機構と、
を備えることを特徴とする外観検査装置。
【請求項2】
前記検査ステージが、上面に吸着面を有して昇降自在に駆動する機構と、
前記通気性シートを搬送する搬送機構が通気性シートを前記検査ステージの長さ分送り出すときは、検査ステージはこの通気性シートと接触しない下方に位置し、通気性シートを検査ステージの長さ分送り出した後停止し、検査ステージが上方に移動してその上面を通気性シートの下面に接触させ吸着保持する機構と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の外観検査装置。
【請求項3】
前記検査ステージは、セラミックの焼結材料を含み、前記焼結材料が、前記真空チャック機構による前記被検査物の真空吸着に使用される真空吸着孔を有する多孔質体からなることを特徴とする請求項1または2に記載の外観検査装置。
【請求項4】
前記通気性シートは、複数の繊維状材料を含むことを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の外観検査装置。
【請求項5】
前記検査ステージに含まれる多孔質体の気孔径が前記通気性シートに含まれる繊維状材料の隙間間隔よりも小さいことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の外観検査装置。
【請求項6】
前記通気性シートの膜厚が、60μm以上、100μm以下であることを特徴とする請求項1~5に記載の外観検査装置。
【請求項7】
前記通気性シートの色が、光の反射を抑える艶消し黒色であることを特徴とする請求項1~6に記載の外観検査装置。
【請求項8】
前記通気性シートは、粒子状のインクを噴射等にてコーティングされていることを特徴とする請求項1~7に記載の外観検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検査物を載置する検査ステージを備えた外観検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エッチング加工後の金属製薄板状シートや薄膜フィルムの製造においては、製造されたシート部材の品質を確認するため、シート表面を観察する外観検査が行われることがある。外観検査をカメラを用いた画像認識方法により行う場合は、カメラでシート表面を撮影し、その撮像画像に画像処理を施して欠陥を抽出する外観検査装置が周知である。
【0003】
例えば、特許文献1では、シート部材の表面に形成された塗布層を観察するために検査ステージの上にシート部材を吸着保持させることが開示されている。このような構成により、シート部材を、たるみや皺を生じることなく略平面状に保持することが可能となる。また、特許文献2では、検査時に薄膜フィルムを検査ステージの上に平面性よく保持する技術に関し、静電気力によって薄膜フィルムを吸着保持することが開示されている。
【0004】
フィルム部材の微小なキズ等の表面観察においては、検査対象であるフィルム部材が検査ステージの上に平面性よく保持され、たるみや皺の発生が抑えられていることが好ましい。特許文献1、2では、被検査物を吸引によって保持したり、静電気力によって検査ステージに保持したりすることによって、検査精度および信頼性の向上を図っている。
【0005】
しかしながら、被検査物のたるみや皺だけではなく、検査ステージと被検査物との間の異物や金属粉等の付着物やキズ等の存在により、外観検査装置のカメラで取得した画像において、それらが画像に映り込み、「輝点」等のノイズが発生することがある。
図5は、エッチング加工品シート内に映しこまれた「輝点」を含む撮像画像である。この「輝点」等のノイズを検査装置がいわゆる疑似欠陥として認識してしまうため、検査精度および信頼性が低下することになり、したがって、検査装置で検出した欠陥候補を、再度、人が仕分ける作業を行うなど余計な工程が増えてしまう。
【0006】
たとえ、検査ステージ上の異物が蓄積されて、疑似欠陥が増えたとしても、検査ステージの交換は費用と時間がかかるため簡単にはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013-65379号公報
【特許文献2】特開2017-15564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記事情を踏まえ、本発明は、検査時に検査ステージ上の異物が要因となる「輝点」等の疑似欠陥の発生原因となる異物の除去を容易とし、正確な検査ができる外観検査装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に於いて上記課題を解決するために、本発明の第一の態様は、
被検査物を載置する検査ステージを備えた外観検査装置であって、
前記被検査物を前記検査ステージ上に真空吸着する真空チャック機構と、
前記検査ステージの上面を構成し、前記被検査物の真空吸着により、前記被検査物と接す
る通気性シートと、前記通気性シートを搬送する搬送機構と、
を備えることを特徴とする外観検査装置である。
【0010】
これによって、「輝点」等の疑似欠陥の原因である、検査ステージの上面を構成する通気性シート上の異物や金属粉等の付着物・キズ等を発見した場合、通気性シートの張替えが可能となり、正確な検査ができる。
【0011】
また、本発明の第二の態様は、第一の態様において、前記検査ステージが、上面に吸着面を有して昇降自在に駆動する機構と、前記通気性シートを搬送する搬送機構が通気性シートを前記検査ステージの長さ分送り出すときは、検査ステージはこの通気性シートと接触しない下方に位置し、通気性シートを検査ステージの長さ分送り出した後停止し、検査ステージが上方に移動してその上面を通気性シートの下面に接触させ吸着保持する機構と、を備えることを特徴とする。
【0012】
これによって、通気性シートと検査ステージの吸着面との接触した状態での搬送に伴う発塵を抑えることができ、「輝点」等の疑似欠陥の原因である、検査ステージ上の異物や金属粉等の付着物・キズ等をより発見しやすくなる。そのため、より正確な検査ができる。
【0013】
また、本発明の第三の態様は、第一または第二の態様において、前記検査ステージは、セラミックの焼結材料を含み、前記焼結材料が、前記真空チャック機構による前記被検査物の真空吸着に使用される真空吸着孔を有する多孔質体からなることを特徴とする外観検査装置である。検査ステージは多孔質体からなり、真空チャック機構とを有することにより、通気性シートを介して被検査物を吸着保持することが可能になる。
【0014】
また、本発明の第四の態様は、第一乃至第三の態様において、前記通気性シートは、複数の繊維状材料を含むことを特徴とする外観検査装置である。
【0015】
また、本発明の第五の態様は、第一乃至第四の態様において、前記検査ステージに含まれる多孔質体の気孔径が前記通気性シートに含まれる繊維状材料の隙間間隔よりも小さいことを特徴とする外観検査装置である。通気性シートの隙間が検査ステージの多孔質体の気孔径より大きいことで、通気性シートを介して被検査物まで吸着保持することが可能になる。
【0016】
また、本発明の第六の態様は、第一乃至第五の態様において、前記通気性シートの膜厚が、60μm以上、100μm以下であることを特徴とする外観検査装置である。通気性シートの膜厚が上記範囲にあることで、通気性シートの耐久性を確保し、吸着能力の低下を抑止することができる。
【0017】
また、本発明の第七の態様は、第一乃至第六の態様において、前記通気性シートの色が、光の反射を抑える艶消し黒色であることを特徴とする外観検査装置である。
【0018】
また、本発明の第八の態様は、第一乃至第七の態様において、前記通気性シートは、粒子状のインクを噴射等にてコーティングされていることを特徴とする外観検査装置である。通気性シートを粒子状のインクを噴射等にて着色する方法をとることによって、シート表面全体を覆わないコーティングで通気性を確保することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明においては、検査時に検査ステージ上の異物が要因となる「輝点」等の疑似欠陥の発生原因となる異物の除去を容易とし、正確な検査ができる外観検査装置を提供するこ
とが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1(a)は、本発明に係る外観検査装置の検査ステージの上面概略図である。(b)は、側面概略図である。
【
図2】
図2(a)は、本発明に係る検査ステージ表面の模式的拡大図である。(b)は、多孔質体構造の模式的拡大図である。
【
図3】
図3(a)は、本発明に係る通気性シートの表面の模式的拡大図である。(b)は、繊維構造の模式的拡大図である。(c)は、通気性シートの繊維構造の模式的断面図である。
【
図4】
図4(a)は、通常の着色方法で通気性シートを着色した場合の繊維構造を示す模式図である。(b)は、本発明の着色方法で通気性シートを着色した場合の繊維構造を示す模式図である。
【
図5】
図5は、エッチング加工品の検査時にシート内に映しこまれた「輝点」を含む撮像画像である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本開示の具体例を説明する。
図1は、本発明の外観検査装置2における、特に検査ステージ4の具体例を示す概略図である。
図1の(a)は、検査ステージ4の概略上面図であり、
図1の(b)は、
図1の(a)における、側面概略図である。
【0022】
図1に示すように、本実施形態に係る外観検査装置2は、検査ステージ4と、真空チャック機構6と、通気性シート8と、巻き出しロール10、巻き取りロール11と搬送手段12とを備える。この他、外観検査装置2は、撮像装置、照明器具等、被検査物を検査するための、図示しない従来公知の検査器具を備えていてもよい。
【0023】
外観検査装置2は、被検査物を検査するために、当該被検査物を載置する検査ステージ4を備える。本実施形態において、検査装置2は、検査ステージ4の上面に構成された通気性シート上に、被検査物を載置することにより、当該被検査物の検査が可能となる。
【0024】
検査ステージ4の下面側には、
図1の(b)に示す、真空チャック機構6が設けられている。真空チャック機構6は、例えば、図示しない真空ポンプ等により、検査ステージ4の上面側の部材を真空吸着する。
【0025】
<検査ステージ>
検査ステージ4は、セラミックの焼結材料を含んでいてもよく、すなわち、検査ステージ4は、セラミックの焼結材料を焼結することにより形成してもよい。この場合、検査ステージ4は、
図2の(b)に示すように、セラミックの焼結材料の焼結の際に生じる気孔4Aを含む、多孔質体を備えていてもよい。当該多孔質体の気孔4Aは、真空チャック機構6による、被検査物の真空吸着に使用される真空吸着孔として使用してもよい。これにより、検査ステージ4は、略均一に真空吸着孔を備え、真空チャック機構6により、被検査物を、通気性シート8を介して検査ステージ4の略全面に吸着させやすくなる。真空吸着孔としての機能を担保する観点から、検査ステージ4が備える気孔4Aの直径d(気孔径という)は、5μmであることが好ましい。
【0026】
<通気性シート>
通気性シート8は、検査ステージ4の上面側に設けられ、多孔質シートからなる。本実施形態において、真空チャック機構6による被検査物の真空吸着により、被検査物の少なくとも一部は、通気性シート8の上面8Aと接する。
【0027】
本実施形態において、通気性シート8は、検査ステージ4と比較して剛性の低い層である。本実施形態において、通気性シート8は、例えば、複数の繊維状材料を含んでいてもよい。
図3に、通気性シート8の表面の拡大図、繊維構造の拡大図、繊維構造の模式的断面図を示す。なお、通気性シート8は、
図3の(c)に示すように、膜厚Dを有している。
【0028】
通気性シート8は、下面に接する検査ステージ8の気孔径よりも大きな隙間を持った纎維構造を有し、前記検査ステージに含まれる多孔質体の気孔径が前記通気性シートに含まれる繊維状材料の隙間間隔よりも小さいことにより、通気性が保てるため被検査物を吸着できる。前述したように検査ステージ4に含まれる多孔質体の気孔径は5μmであり、それに対し通気性シート8に含まれる繊維状材料の隙間間隔が10μmであることで検査ステージ4の吸着能力低下を極小化した通気性となる。
【0029】
また、通気性シート8の膜厚Dは、通気性シート8の耐久性を確保する観点から、60μm以上であることが好ましく、100μm以下にすることで上記繊維構造により、真空チャック機構6による、検査ステージ4上の被検査物の真空吸着を妨げることがない。
【0030】
<着色方法>
通気性シート8は、艶消し黒色に着色することで光の反射を抑えることができ、検査時に通気性シート8からの散乱光を抑制することができる。また、下層の検査ステージ4の色を限定する必要がなくなる。ここで、艶消し黒色の着色方法であるが、たとえば繊維を着色液に一定時間浸すような通常の着色方法(ディップ方式)では、繊維と繊維の間に着色液が浸透し隙間がなくなり、通気性を確保できなくなってしまう。
図4(a)に通常の着色方法(ディップ方式)で着色した場合の繊維構造の拡大図および断面図を模式的に表す。
【0031】
本発明では、通気性を維持するために、通気性シート表面全体を覆う着色方法ではなく、粒子状のインクを噴射等にて着色する方法によって、通気性シート表面全体を覆わないことで通気性を確保する。
図4(b)に粒子状のインクを噴射等にて繊維を着色した場合の繊維構造の拡大図および断面図を模式的に表す。
【0032】
具体的な方法は、たとえばインクジェット方式がある。コンピューター制御によってインクを噴射し繊維に着色する方式である。その技術はポリエステル繊維の場合、微量の流体を定量的に再現性良く粒状に微粒子化されたインク滴を噴射する。微粒子化することで繊維の隙間を埋めることなく通気性を確保できる。
【0033】
<通気性シートの張替え機構>
通気性シート8は、連続したシートで構成されておりロール状に巻き取られている。
図1(b)に示すように、搬送機構12は通気性シート8を送り出す、巻き出しロールと通気性シート8を巻き取る、巻き取りロールと図示しない駆動部を有し、搬送機構12が通気性シート8を検査ステージ4の長さ分送り出すときは、検査ステージはこの通気性シートと接触しない下方に位置し、通気性シートを検査ステージの長さ分送り出した後停止し、検査ステージが上方に移動してその上面を通気性シートの下面に接触させ吸着保持する機構を備える。
【0034】
上記機構を備えることにより、ロール状に巻かれた通気性シートを、巻き出しロールから検査ステージの長さ分送り出すことによって、新しいシート面を検査ステージ上に据えかえることが可能になる。これによって、検査ステージの上面を構成する通気性シート上の異物や金属粉等の付着物・キズ等を発見した場合、通気性シートの張替えが可能になり
、「輝点」等の疑似欠陥の発生原因となる異物の除去を容易とし、正確な検査ができる。
【0035】
<検査フロー>
図1を参照して、検査フローを説明し、検査フローの中で行われる通気性シートの張替え動作を説明する。
(1)自動検査開始:被検査対象を検査ステージ上の通気性シートに載置して外観検査開
始。撮像系および照明系器具で被検査対象を撮像し、被検査対象表面の異物やピンホー
ルを自動検出する。
(2)撮像画像を画像処理し、映像化したモニター画像を検査員が目視で確認。
(3)「輝点」等の原因である異物や金属粉等の付着物やキズ等による疑似欠陥が発生し
たと判断したら、自動検査を一時停止し、被検査対象を排出する。
(4)通気性シートの巻き取りロール・巻き出しロールを駆動させ、通気性シートを検査
ステージの長さ分送り出したら駆動を停止し、通気性シートを検査ステージ上面に吸着
保持して張替え完了。
(5)被検査対象を再び検査ステージ上の通気性シートに載置して、自動検査を再開する
。
【0036】
以上から本発明によって、金属製薄板状シートなどの外観検査装置として、被検査物を検査ステージ上に真空吸着する真空チャック機構と、検査ステージ上への被検査物の真空吸着により、被検査物と接する、検査ステージ上面に構成された張替え可能な通気性シートを備えることによって、検査時に検査ステージ上の異物が要因となる「輝点」等の疑似欠陥の発生を防止することが可能になった。
【符号の説明】
【0037】
2・・・外観検査装置
4・・・検査ステージ
4A・・・気孔
6・・・真空チャック機構
8・・・通気性シート
8A・・・通気性シートの上面、被検査対象と接する箇所
10・・・巻き出しロール
11・・・巻き取りロール
12・・・搬送機構
20・・・金属製薄板シート
21・・・輝点(疑似欠陥)