(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022166631
(43)【公開日】2022-11-02
(54)【発明の名称】冷凍式チラー
(51)【国際特許分類】
F25B 1/00 20060101AFI20221026BHJP
【FI】
F25B1/00 304S
F25B1/00 101H
F25B1/00 399Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021071969
(22)【出願日】2021-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000102511
【氏名又は名称】SMC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119404
【弁理士】
【氏名又は名称】林 直生樹
(74)【代理人】
【識別番号】100177769
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100188743
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 誠
(72)【発明者】
【氏名】足立 真
(57)【要約】
【課題】負荷の温度を一定の時間をかけて目標温度にまで徐々に変化させるのに適した冷凍式チラーを得る。
【解決手段】冷却液を負荷2に供給する冷却液回路3と、冷却液の温度を調整する冷凍回路4と、チラー全体を制御する制御部6とを有し、制御部6は、負荷2を目標温度にするための冷却液の温度を調整目標温度として設定する温度設定部33と、冷却液の温度を調整目標温度まで変化させる調整時間を設定する時間設定部34と、調整目標温度及び調整時間から温度変化の勾配を目標温度勾配として算出する演算部35と、目標温度勾配に追従して冷却液の温度が変化するように第1電子膨張弁24及び第2電子膨張弁28の開度を調整する温度制御部36とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度調整された冷却液を負荷に供給する冷却液回路と、前記冷却液の温度を該冷却液と冷媒との熱交換により調整する冷凍回路と、前記冷却液と冷媒との熱交換を行う熱交換器と、チラー全体を制御する制御部とを有し、
前記冷却液回路は、前記冷却液を収容するタンクと、該タンク内の冷却液を負荷に供給するポンプと、前記冷却液の温度を測定する温度センサとを有し、
前記制御部は、負荷の温度を目標温度まで変化させるための冷却液の設定初期温度及び調整目標温度を設定する温度設定部と、前記冷却液の温度を設定初期温度から調整目標温度まで変化させるための調整時間を設定する時間設定部と、前記設定初期温度と調整目標温度及び調整時間とから温度変化の勾配を目標温度勾配として算出する演算部と、前記目標温度勾配に追従して前記冷却液の温度が変化するように前記熱交換器に供給される冷媒の温度を調整する温度制御部とを有する、
ことを特徴とする冷凍式チラー。
【請求項2】
前記冷凍回路は、冷媒を圧縮する圧縮機と、該圧縮機から吐出された高温の冷媒を冷却するコンデンサと、該コンデンサから送られる低温の冷媒を前記熱交換器に送る第1電子膨張弁と、前記圧縮機から吐出された高温の冷媒を前記熱交換器に送る第2電子膨張弁とを有し、
前記制御部は、前記調整時間を複数の時間域に区分し、各時間域毎に、前記目標温度勾配と時間域での経過時間とからその時間域における現在目標温度を算出すると共に、該現在目標温度と前記温度センサで測定された冷却液の現在温度とを比較し、比較結果に基づいて前記第1電子膨張弁及び第2電子膨張弁の開度を調整することにより前記熱交換器に供給される冷媒の温度を調整する、
ことを特徴とする請求項1に記載の冷凍式チラー。
【請求項3】
温度調整された冷却液を負荷に供給する冷却液回路と、前記冷却液の温度を該冷却液と冷媒との熱交換により調整する冷凍回路と、前記冷却液と冷媒との熱交換を行う熱交換器と、チラー全体を制御する制御部とを有し、
前記冷却液回路は、前記冷却液を収容するタンクと、該タンク内の冷却液を負荷に供給するポンプと、前記負荷の温度を測定する負荷温度センサとを有し、
前記制御部は、負荷の設定初期温度及び調整目標温度を設定する温度設定部と、前記負荷の温度を前記設定初期温度から前記調整目標温度まで変化させるための調整時間を設定する時間設定部と、前記設定初期温度と調整目標温度及び調整時間とから温度変化の勾配を目標温度勾配として算出する演算部と、前記目標温度勾配に追従して前記負荷の温度が変化するように前記熱交換器に供給される冷媒の温度を調整して前記冷却液の温度を変化させる温度制御部とを有する、
ことを特徴とする冷凍式チラー。
【請求項4】
前記冷凍回路は、冷媒を圧縮する圧縮機と、該圧縮機から吐出された高温の冷媒を冷却するコンデンサと、該コンデンサから送られる低温の冷媒を前記熱交換器に送る第1電子膨張弁と、前記圧縮機から吐出された高温の冷媒を前記熱交換器に送る第2電子膨張弁とを有し、
前記制御部は、前記調整時間を複数の時間域に区分し、各時間域毎に、前記目標温度勾配と時間域での経過時間とからその時間域における現在目標温度を算出すると共に、該現在目標温度と前記負荷温度センサで測定された負荷の現在温度とを比較し、比較結果に基づいて前記第1電子膨張弁及び第2電子膨張弁の開度を調整することにより前記熱交換器に供給される冷媒の温度を調整する、
ことを特徴とする請求項3に記載の冷凍式チラー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度調整された冷却液を負荷に供給することによって該負荷の温度を調整する冷凍式チラーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
温度調整された冷却液を負荷に供給することによって該負荷の温度を一定に保つ冷凍式チラー即ち冷却液循環装置は、例えば特許文献1に記載されているように公知である。この公知の冷却液循環装置は、冷却液を負荷に供給する冷却液回路と、前記冷却液の温度を冷媒と該冷却液との熱交換により調整する冷凍回路と、前記冷媒と冷却液との熱交換を行う熱交換器とを有している。前記冷凍回路は、前記冷媒を圧縮する圧縮機と、該圧縮機から吐出された高温の冷媒を冷却するコンデンサと、該コンデンサから送られる低温の冷媒を前記熱交換器に送る第1電子膨張弁と、前記圧縮機から吐出された高温の冷媒を前記熱交換器に送る第2電子膨張弁とを有していて、これら第1電子膨張弁及び第2電子膨張弁の開度を調整して前記熱交換器に供給される高温の冷媒の流量及び低温の冷媒の流量を制御することにより、前記冷却液の温度を負荷の冷却又は加熱に適した一定の温度に保ち、この冷却液で前記負荷を冷却又は加熱することによって該負荷の温度を一定に保つものである。
【0003】
一方、発酵や熟成等を伴う飲食物の加工においては、その工程中に繊細且つ精密な温度管理を長時間継続して行うことが要求される場合がある。例えば、クラフトビールの製造工程中には、高温(例えば30℃)の原液を低温(例えば0℃)まで冷却する工程があるが、この加熱工程においては、酵母を生きたまま取り出すため、前記原液を長時間(例えば24-48時間)かけて徐々に且つ精密に冷却する必要がある。また、その逆に、低温の原液を高温まで加熱する工程もある。
【0004】
前記冷却液循環装置は、このように負荷の温度を変化させる用途にも使用することが可能であるが、公知の冷却液循環装置は、前記冷却液の温度を負荷の冷却又は加熱に適した一定の温度に保つことによって前記負荷の温度を一定に保つように構成されているため、負荷の温度を徐々に変化させるような使い方に直ちに適用できるものではなく、適用するためには何らかの改善を施す必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の技術的課題は、負荷の温度を一定の時間をかけて目標温度にまで徐々に変化させるのに適した冷凍式チラーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明に係る冷凍式チラーは、温度調整された冷却液を負荷に供給する冷却液回路と、前記冷却液の温度を該冷却液と冷媒との熱交換により調整する冷凍回路と、前記冷却液と冷媒との熱交換を行う熱交換器と、チラー全体を制御する制御部とを有し、前記冷却液回路は、前記冷却液を収容するタンクと、該タンク内の冷却液を負荷に供給するポンプと、前記冷却液の温度を測定する温度センサとを有し、前記制御部は、負荷の温度を目標温度まで変化させるための冷却液の設定初期温度及び調整目標温度を設定する温度設定部と、前記冷却液の温度を設定初期温度から調整目標温度まで変化させるための調整時間を設定する時間設定部と、前記設定初期温度と調整目標温度及び調整時間とから温度変化の勾配を目標温度勾配として算出する演算部と、前記目標温度勾配に追従して前記冷却液の温度が変化するように前記熱交換器に供給される冷媒の温度を調整する温度制御部とを有することを特徴とする。
【0008】
本発明において、前記冷凍回路は、冷媒を圧縮する圧縮機と、該圧縮機から吐出された高温の冷媒を冷却するコンデンサと、該コンデンサから送られる低温の冷媒を前記熱交換器に送る第1電子膨張弁と、前記圧縮機から吐出された高温の冷媒を前記熱交換器に送る第2電子膨張弁とを有し、前記制御部は、前記調整時間を複数の時間域に区分し、各時間域毎に、前記目標温度勾配と時間域での経過時間とからその時間域における現在目標温度を算出すると共に、該現在目標温度と前記温度センサで測定された冷却液の現在温度とを比較し、比較結果に基づいて前記第1電子膨張弁及び第2電子膨張弁の開度を調整することにより前記熱交換器に供給される冷媒の温度を調整するように構成されていることが望ましい。
【0009】
また、本発明に係る冷凍式チラーは、温度調整された冷却液を負荷に供給する冷却液回路と、前記冷却液の温度を該冷却液と冷媒との熱交換により調整する冷凍回路と、前記冷却液と冷媒との熱交換を行う熱交換器と、チラー全体を制御する制御部とを有し、前記冷却液回路は、前記冷却液を収容するタンクと、該タンク内の冷却液を負荷に供給するポンプと、前記負荷の温度を測定する負荷温度センサとを有し、前記制御部は、負荷の設定初期温度及び調整目標温度を設定する温度設定部と、前記負荷の温度を前記設定初期温度から前記調整目標温度まで変化させるための調整時間を設定する時間設定部と、前記設定初期温度と調整目標温度及び調整時間とから温度変化の勾配を目標温度勾配として算出する演算部と、前記目標温度勾配に追従して前記負荷の温度が変化するように前記熱交換器に供給される冷媒の温度を調整して前記冷却液の温度を変化させる温度制御部とを有することを特徴とする。
【0010】
この場合、前記冷凍回路は、冷媒を圧縮する圧縮機と、該圧縮機から吐出された高温の冷媒を冷却するコンデンサと、該コンデンサから送られる低温の冷媒を前記熱交換器に送る第1電子膨張弁と、前記圧縮機から吐出された高温の冷媒を前記熱交換器に送る第2電子膨張弁とを有し、前記制御部は、前記調整時間を複数の時間域に区分し、各時間域毎に、前記目標温度勾配と時間域での経過時間とからその時間域における現在目標温度を算出すると共に、該現在目標温度と前記負荷温度センサで測定された負荷の現在温度とを比較し、比較結果に基づいて前記第1電子膨張弁及び第2電子膨張弁の開度を調整することにより前記熱交換器に供給される冷媒の温度を調整するように構成されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、負荷を温度調整する際の調整目標温度と調整時間とから目標温度勾配を算出し、この目標温度勾配に追従して冷却液の温度を変化させることによって負荷を目標温度まで変化させるようにしたので、該負荷の温度を目標温度まで長時間をかけて徐々に且つ精密に変化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る冷凍式チラーの一実施形態を模式的に示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は本発明に係る冷凍式チラーの一実施形態を示すものである。このチラー1は、負荷2の温度を調整開始時の温度から目標温度にまで変化させるもので、前記負荷2の温度調整に適するように温度調整された冷却液を該負荷2に供給する冷却液回路3と、前記冷却液の温度を該冷却液と冷媒との熱交換により調整する冷凍回路4と、前記冷却液と冷媒との熱交換を行う熱交換器5と、チラー全体を制御する制御部6とを有している。前記熱交換器5は、前記冷媒が流れる冷媒管5a(蒸発器)と、前記冷却液が流れる冷却液管5bとを有している。
【0014】
前記冷却液は、前記負荷2を冷却するだけではなく、該冷却液の温度を負荷2の温度より高くすることにより、該負荷2を加熱することができるものである。
また、本実施形態において、前記負荷2は、例えばクラフトビールの原液のような液体である。
【0015】
前記冷却液回路3は、前記冷却液を収容するタンク7と、該タンク7内の冷却液を前記負荷2に供給するポンプ8と、前記負荷2の供給側負荷配管2aを接続するための供給側接続口9a及び戻り側負荷配管2bを接続するための戻り側接続口9bと、前記負荷2に供給される冷却液の温度を検出する供給側温度センサ10と、前記負荷2から還流する冷却液の温度を検出する戻り側温度センサ11とを有している。
【0016】
前記ポンプ8の吸込口8aは、第1供給管12によって前記タンク7の出口7bに接続され、該ポンプ8の吐出口8bは、第2供給管13によって前記供給側接続口9aに接続され、該第2供給管13に、前記供給側温度センサ10と圧力センサ14とが接続されている。
また、前記戻り側接続口9bは、第1戻り管15によって前記熱交換器5の冷却液管5bの一端に接続され、該冷却液管5bの他端は、第2戻り管16によって前記タンク7の入口7aに接続され、前記第1戻り管15に前記戻り側温度センサ11が接続されている。
【0017】
更に、前記タンク7の内部には、冷却液の液位を監視するレベルスイッチ17が設けられ、前記第1供給管12にはドレン排出管18が接続され、このドレン排出管18にドレン排出ポート19が設けられている。
【0018】
前記ポンプ8、供給側温度センサ10、戻り側温度センサ11、圧力センサ14、レベルスイッチ17は、前記制御部6に電気的に接続され、該制御部6によって各々の機器の制御あるいは監視が行われる。
【0019】
前記冷却液回路3において、前記タンク7内の冷却液は、前記ポンプ8によって前記第2供給管13及び供給側負荷配管2aを通じて負荷2に供給され、該負荷2の温度を調整する。負荷2の温度を調整することにより温度が変化した冷却液は、前記戻り側負荷配管2bを通じて第1戻り管15に還流し、前記熱交換器5で冷媒との熱交換を行うことにより温度調整されたあと、前記タンク7内に戻る。
【0020】
一方、前記冷凍回路4は、ガス状冷媒を圧縮して高温高圧のガス状冷媒にして吐出する圧縮機20と、該圧縮機20から第1配管21を通じて送られるガス状冷媒を冷却して低温高圧の液状冷媒にするコンデンサ22と、該コンデンサ22から第2配管23を通じて送られる冷媒を膨張させて低温低圧の液状冷媒にする第1電子膨張弁24と、該第1電子膨張弁24から第3配管25を通じて送られる液状冷媒を前記冷却液との熱交換により蒸発させて低圧のガス状冷媒にする前記蒸発器5aとを有している。前記蒸発器5aから出たガス状冷媒は、第4配管26を通じて前記圧縮機20に戻される。また、前記第1配管21と第3配管25とは、バイパス管27により接続され、このバイパス管27に、前記圧縮機20から吐出された高温高圧のガス状冷媒を前記蒸発器5aに送る第2電子膨張弁28が接続されている。
【0021】
前記コンデンサ22は、電動モータ22aで駆動されるファン22bによって冷媒を冷却する空冷式のコンデンサであり、後述する第1冷媒圧力センサ31が測定した冷媒の圧力に応じてその回転数が制御される。
一方、前記ポンプ8、圧縮機20は、商用電源による固定の回転数でフル運転されるものである。
【0022】
前記第1配管21には、前記圧縮機20から吐出された冷媒の温度を検出する第1冷媒温度センサ29が接続され、前記第4配管26には、前記圧縮機20に戻るガス状冷媒の温度を検出する第2冷媒温度センサ30が接続されている。更に、前記第2配管23には、高圧の冷媒の圧力を測定する前記第1冷媒圧力センサ31が接続され、前記第4配管26には、低圧の冷媒の圧力を測定する第2冷媒圧力センサ32が接続されている。
【0023】
前記圧縮機20、コンデンサ22の電動モータ22a、第1電子膨張弁24、第2電子膨張弁28、第1冷媒圧力センサ31、第2冷媒圧力センサ32、第1冷媒温度センサ29、及び第2冷媒温度センサ30は、前記制御部6に電気的に接続され、該制御部6によって各々の機器の制御あるいは監視が行われる。
【0024】
前記冷凍回路4において、前記圧縮機20から吐出された高温高圧のガス状冷媒は、前記第1配管21を通じて前記コンデンサ22に送られ、該コンデンサ22で冷却されることにより低温高圧の液状冷媒になったあと、前記第2配管23を通じて前記第1電子膨張弁24に送られ、この第1電子膨張弁24において、該第1電子膨張弁24の開度に応じた流量の冷媒が膨張されることにより低温低圧の液状冷媒になり、前記第3配管25を通じて前記熱交換器5の蒸発器5aに送られる。
【0025】
また、前記圧縮機20から吐出された高温高圧のガス状冷媒の一部は、前記バイパス管27を通じて前記第2電子膨張弁28にも送られ、この第2電子膨張弁28により、該第2電子膨張弁28の開度に応じた流量の冷媒が膨張されて高温低圧のガス状冷媒にされたあと、前記第3配管25に送られ、前記第1電子膨張弁24からの低温の液状冷媒と混合することにより温度調整され、そのあと前記熱交換器5の蒸発器5aに送られる。そして、この熱交換器5で前記冷却液との熱交換を行うことにより低圧のガス状になった冷媒は、前記第4配管26を通じて前記圧縮機20に戻る。
従って、前記第1電子膨張弁24及び第2電子膨張弁28は、前記熱交換器5に供給される冷媒の温度を調整する冷媒温度調整機構を構成するものである。
【0026】
前記制御部6は、不図示のマイクロコンピュータを備えていて、このマイクロコンピューターは、前記冷却液の温度を、設定した初期温度(設定初期温度)から調整後の温度である目標温度(調整目標温度)まで一定の時間をかけて徐々に変化(上昇又は下降)させることにより、前記負荷2の温度を同じ目標温度まで一定の時間をかけて徐々に変化(上昇又は下降)させるように構成されている。以下に述べる制御例は、前記冷却液の温度を設定初期温度(例えば0℃)から調整目標温度(例えば30℃)まで上昇させることにより、前記負荷2の温度を同じ目標温度まで上昇させる場合である。
【0027】
このため、前記制御部6は、
図1及び
図2に示すように、前記冷却液の設定初期温度Ho及び調整目標温度Hgを設定する温度設定部33と、前記冷却液の温度を前記設定初期温度Hoから調整目標温度Hgまで変化させるための調整時間Tgを設定する時間設定部34と、前記設定初期温度Hoと調整目標温度Hg及び調整時間Tgとから温度変化の勾配を目標温度勾配として算出する演算部35と、前記目標温度勾配に追従して前記冷却液の温度が変化するように前記第1電子膨張弁24及び第2電子膨張弁28の開度を調整する温度制御部36とを有している。
【0028】
図3には、前記制御部6によって負荷2の温度制御を行う場合のフローチャートが示されている。このフローチャートにおいては、温度制御の開始前に、ステップS1で、前記温度設定部33に、前記冷却液の設定初期温度Ho及び調整目標温度Hgが入力されると共に、前記時間設定部34に、前記調整時間Tg(例えば24時間)が入力され、その後に温度制御が開始される。ただし、前記設定初期温度Hoは、従前から設定されていたものを利用し、ここでの入力を省略するようにしても良い。
【0029】
なお、前記設定初期温度Ho、調整目標温度Hg、及び調整時間Tgは、前記冷却液の温度変化と負荷2の温度変化との関係を、実験や計算等によって予め知得し、そのデータに基づいて決めることができる。
また、前記調整時間Tgは、
図2に示すように複数の時間域taに区分されていて、各時間域ta毎に冷却液の温度変化が確認され、確認結果に基づいた温度制御が行われるようになっている。前記時間域taは、互いに同じ時間幅であっても、異なる時間幅であっても良い。
【0030】
前記ステップS1のあと温度制御が開始されると、ステップS2に移行し、前記演算部35において、前記設定初期温度Hoと調整目標温度Hg及び調整時間Tgとから、温度変化の勾配が目標温度勾配ΔHとして算出される。例えば、前記設定初期温度Hoを0℃、調整目標温度Hgを30℃、前記調整時間Tgを24時間とした場合、前記目標温度勾配ΔHは0.02℃/minである。
【0031】
続いて、ステップS3で、前記調整時間Tg中の最初の時間域taについて、前記目標温度勾配ΔHと該時間域taの経過時間tとからその時間域taの終端における現在目標温度が算出され、それと同時に、ステップS4で、負荷2に供給される冷却液の現在温度が前記供給側温度センサ10により測定され、この現在温度が、ステップS5で前記現在目標温度と比較される。
【0032】
そして、前記現在温度が前記現在目標温度より低いか又は現在目標温度に等しい場合には、ステップS6に進み、前記温度制御部36により、前記第1電子膨張弁24の開度が縮小されると共に、前記第2電子膨張弁28の開度が拡大され、その結果、前記熱交換器5に供給される低温の冷媒の流量が減少して高温の冷媒の流量が増大することにより該冷媒の温度が上昇し、該熱交換器5の加熱能力が高められるため、前記冷却液の温度は上昇する。
【0033】
その逆に、前記現在温度が前記現在目標温度より高い場合には、ステップS5からステップS7に進み、前記温度制御部36により、前記第1電子膨張弁24の開度が拡大されると共に、前記第2電子膨張弁28の開度が縮小され、その結果、前記熱交換器5に供給される低温の冷媒の流量が増大して高温の冷媒の流量が減少することにより該冷媒の温度が低下し、該熱交換器5の冷却能力が高められるため、前記冷却液の温度は下降する。
【0034】
前記ステップ6又はステップ7の動作が終了すると、ステップ8において前記調整時間Tgが経過したか否かが判断され、経過していない場合には、前記ステップ3に戻り、2番目以降の時間域taについて、前記ステップ3、ステップ4、ステップ5、ステップ6又はステップ7、及びステップ8の動作が順次繰り返される。
【0035】
一方、前記調整時間Tgが経過している場合には、ステップ9に移って冷却液の温度調整は終了し、該冷却液の温度は前記調整目標温度Hgに維持される。これにより、前記負荷2の温度も、前記調整目標温度Hgと実質的に同温度に維持されることになる。
【0036】
なお、前記負荷2に負荷温度センサ37を設けることにより、該負荷2の温度を常時監視し、この負荷2の温度を前記冷却液の現在温度と比較することもできる。
また、前記タンク7内に電気ヒーターを設け、前記冷媒による冷却液の加熱が不十分である場合に、このヒーターを補助的に使用して冷却液の温度を上昇させるようにすることもできる。
【0037】
前記制御例では、前記負荷2の温度を0℃から30℃まで1段階上昇させているが、前記調整目標温度Hgを複数段階設定することにより、負荷2の温度を複数段階に調整することもできる。例えば、前記調整目標温度Hgを30℃と60℃の2段階に設定することにより、前記負荷2の温度を30℃まで上昇させてその温度に必要な時間維持したあと、更に60℃までに上昇させるというような制御も行うことができる。
【0038】
また、前記制御例では、前記負荷2の温度を上昇させているが、該負荷2の温度を低下させる制御を行うこともできる。例えば、負荷2の温度を30℃から0℃に低下させる場合には、前記冷却液の設定初期温度Hoを30℃に設定すると共に、調整目標温度Hgを0℃に設定し、
図3に示すフローチャートに沿った制御を行えば良い。但し、この場合には、ステップ5において、冷却液の現在温度が現在目標温度に等しい場合には、目標温度勾配に沿って該冷却液の温度を下げる必要があるため、ステップ7に移行し、第1電子膨張弁24の開度が拡大されると共に、第2電子膨張弁28の開度が縮小されるようにする。
更に、前述したように負荷2の温度を上昇させるか又は低下させるだけではなく、温度を上昇させる制御と、温度を低下させる制御と、温度を一定時間維持する制御とを、組み合わせて行うこともできる。
【0039】
また、前述した制御例では、前記冷却液回路3から負荷2に供給される冷却液の温度を調整することによって負荷2の温度を調整しているが、前記負荷2から前記冷却液回路3に還流する冷却液の温度を調整することによって負荷2の温度を調整することも可能である。この場合、
図3に示すフローチャートにおいて、ステップ4における冷却液の現在温度は、前記第1戻り管15に接続された戻り側温度センサ11によって測定される。
【0040】
更に、前述した制御例では、前記冷却液の設定初期温度Ho及び調整目標温度Hgを設定し、該冷却液の温度をその温度勾配に沿うように調整することによって前記負荷2の温度を目標温度に調整しているが、前記負荷2の設定初期温度Ho及び調整目標温度Hgを設定し、該負荷2の温度がその温度勾配に沿って変化するように前記冷却液の温度を調整するように構成することもできる。この場合、前記負荷2に前記負荷温度センサ37が設けられ、この負荷温度センサ37で負荷2の温度が現在温度として測定され、この現在温度が、
図3に示すフローチャートのステップS5において現在目標温度と比較される。そして、この負荷2の現在温度が前記目標温度勾配に追従して変化するように、前記第1電子膨張弁24及び第2電子膨張弁28の開度が調整されることによって前記冷却液の温度が調整される。
【0041】
また、
図1の冷凍式チラー1で使用されているポンプ8、圧縮機20、及び電動モータ22aは、インバータ制御方式のものを使用することができる。そうすることで、
図3に示すフローチャートのステップS6及びステップS7において、冷媒の温度を調整するために第1電子膨張弁24及び第2電子膨張弁28の開度を変更するのに併せて、前記圧縮機20の回転数をインバータ制御して冷媒の循環量を変更することにより、応答性を高めることができると同時に、冷媒の循環量を減らすことによって省エネルギー化を図ることもできる。同様に、前記ポンプ8についても、負荷に応じて回転数を減少させることができるので、省エネルギー化につながる。
【符号の説明】
【0042】
1 チラー
2 負荷
3 冷却液回路
4 冷凍回路
5 熱交換器
6 制御部
7 タンク
8 ポンプ
10 供給側温度センサ
11 戻り側温度センサ
20 圧縮機
22 コンデンサ
24 第1電子膨張弁
28 第2電子膨張弁
33 温度設定部
34 時間設定部
35 演算部
36 温度制御部
37 負荷温度センサ
Hg 調整目標温度
Ho 初期温度
Tg 調整時間
ta 時間域
t 経過時間
ΔH 目標温度勾配