(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022166632
(43)【公開日】2022-11-02
(54)【発明の名称】温調装置
(51)【国際特許分類】
F25D 17/02 20060101AFI20221026BHJP
F25D 13/00 20060101ALI20221026BHJP
F25D 11/00 20060101ALI20221026BHJP
G05D 23/00 20060101ALI20221026BHJP
G05D 23/19 20060101ALI20221026BHJP
B67D 1/08 20060101ALN20221026BHJP
【FI】
F25D17/02 304
F25D13/00 B
F25D11/00 102A
G05D23/00 H
G05D23/19 H
B67D1/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021071970
(22)【出願日】2021-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000102511
【氏名又は名称】SMC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119404
【弁理士】
【氏名又は名称】林 直生樹
(74)【代理人】
【識別番号】100177769
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100188743
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 誠
(72)【発明者】
【氏名】足立 真
【テーマコード(参考)】
3E082
3L045
5H323
【Fターム(参考)】
3E082BB03
3E082EE01
3E082EE03
3L045AA03
3L045BA01
3L045CA01
3L045FA02
3L045KA07
3L045LA12
3L045LA13
3L045MA02
3L045NA21
3L045PA02
3L045PA03
3L045PA04
5H323AA29
5H323BB15
5H323CA04
5H323DA01
5H323EE06
5H323FF03
(57)【要約】
【課題】目標温度に負荷を温調するにあたり、その途中においても温度調節しながら徐々に負荷の温度を前記目標温度まで変化させることが可能な温調装置を提供する。
【解決手段】目標到達時間td内における所定の複数のタイミング(経過時間)の各々において、目標温度勾配Saから負荷Wの経時設定温度Tnを算出する(S3)と共に、経時設定温度Tnと測定入力部50から入力された経時測定温度Tmとを比較し(S5)、制御出力部53が、前記経時設定温度Tnと前期経時測定温度Tmとの比較結果に基づいて、加熱部3及び冷却部4を制御する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷の温度を目標温度に調節するための温調装置であって、
前記温調装置は、負荷との熱交換後に該負荷から戻された循環液を該負荷に対して循環的に送り出す循環液回路と、前記循環液回路に設けられ、該循環液回路中の循環液を加熱冷却する加熱部及び冷却部と、前記加熱部及び冷却部の出力を制御する制御部と、を有しており、
上記制御部は、負荷の測定温度が入力される測定入力部と、目標設定温度としての前記目標温度、及び、温調開始時からの該目標設定温度への目標到達時間を入力する設定入力部と、前記温調開始時における初期設定温度、並びに、前記設定入力部から入力された前記目標設定温度及び目標到達時間に基づいて、その目標設定温度に達するまでの目標温度勾配を求める演算部と、前記演算部で求められた目標温度勾配に追従して前記負荷の測定温度が変化するように前記加熱部及び冷却部の出力を制御する制御出力部とを有している、
ことを特徴とする温調装置。
【請求項2】
負荷の温度を目標温度に調節するための温調装置であって、
前記温調装置は、負荷との熱交換後に該負荷から戻された循環液を該負荷に対して循環的に送り出す循環液回路と、前記循環液回路に設けられ、該循環液回路中の循環液を加熱冷却する加熱部及び冷却部と、前記加熱部及び冷却部の出力を制御する制御部と、を有しており、
上記制御部は、前記加熱冷却後の循環液又は前記加熱冷却前の循環液の測定温度が入力される測定入力部と、前記目標温度に対応する循環液の目標設定温度、及び、温調開始時からの該目標設定温度への目標到達時間を入力する設定入力部と、前記温調開始時における初期設定温度、並びに、前記設定入力部から入力された前記目標設定温度及び目標到達時間に基づいて、その目標設定温度に達するまでの目標温度勾配を算出する演算部と、前記演算部で求められた目標温度勾配に追従して前記循環液の測定温度が変化するように前記加熱部及び冷却部の出力を制御する制御出力部とを有している、
ことを特徴とする温調装置。
【請求項3】
前記循環液回路は、前記負荷から戻された循環液を受け入れる戻り流路と、前記加熱部及び冷却部により温度調節された循環液を前記負荷に対して送り出す吐出流路と、これら戻り流路及び吐出流路が接続されて前記循環液を貯留するタンク部と、前記タンク部内の循環液を前記吐出流路に送り出す循環ポンプとを有している。
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の温調装置。
【請求項4】
前記冷却部が、放熱水が流れる放熱水回路と、該放熱水回路を流れる放熱水と前記循環液回路を流れる循環液との間で熱交換させる熱交換器とを有しており、
前記加熱部がヒータを有しており、
前記放熱水回路が、該放熱水回路を流れる放熱水の流量を調節する流量制御弁を有しており、
前記制御出力部が、前記ヒータ及び前記流量制御弁を制御することにより前記加熱部及び前記冷却部の出力を制御する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の温調装置。
【請求項5】
前記演算部が、前記目標到達時間内における複数のタイミングの各々について、前記目標温度勾配から負荷の経時設定温度を算出すると共に、該経時設定温度と前記測定入力部から入力された負荷の測定温度とを比較し、
前記制御出力部が、前記経時設定温度と測定温度との比較結果に基づいて、前記加熱部及び冷却部の出力を制御する、
ことを特徴とする請求項1に記載の温調装置。
【請求項6】
前記演算部が、前記目標到達時間内における複数のタイミングの各々について、前記目標温度勾配から循環液の経時設定温度を算出すると共に、該経時設定温度と前記測定入力部から入力された循環液の測定温度とを比較し、
前記制御出力部が、前記経時設定温度と測定温度との比較結果に基づいて、前記加熱部及び冷却部の出力を制御する、
ことを特徴とする請求項2に記載の温調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度制御された循環液を負荷に対して供給することにより、該負荷の温度を目標温度に調節するための温調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
温度制御された循環液を負荷に供給することによって、該負荷の温度を所定の目標温度に調節する温調装置は、例えば特許文献1に開示されているように、既に広く知られている。そして、この種の従来の温調装置は、通常、循環液を負荷との間で循環させる循環液回路と、負荷の温度を前記目標温度に調節するために循環液の温度を制御する温度制御部とを有している。
【0003】
ところで、昨今、この種の温調装置は、様々な分野で利用されており、例えば、ビールの製造工程においては、タンク内の原料液を所定の目標温度に冷却するときに用いられることがあるが、その際、前記タンク内の原料液を、温度調節しながら徐々に前記目標温度まで冷却したいという要望がある。
【0004】
しかしながら、従来の温調装置においては、温度制御部が、負荷の温度を出来るだけ早く目標温度に調節できるように循環液の温度を制御するため、上述のように、負荷(すなわち、ビールの原料液)の温度を、温度調節しながら徐々に前記目標温度まで変化させていくようなことができない。よって、そのような負荷の温度調節を実現するためには、例えば、温調装置の設定温度を所定時間おきに複数回に分けて設定し直しながら、負荷の温度を段階的に最終的な目標温度まで変化させていくなど、温調作業の煩雑化を避けることができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の技術的課題は、目標温度に負荷を温調するにあたり、その途中においても温度調節しながら徐々に負荷の温度を前記目標温度まで変化させることが可能な温調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記技術的課題を解決するため、本発明に係る温調装置は、負荷の温度を目標温度に調節するための温調装置であって、前記温調装置は、負荷との熱交換後に該負荷から戻された循環液を該負荷に対して循環的に送り出す循環液回路と、前記循環液回路に設けられ、該循環液回路中の循環液を加熱冷却する加熱部及び冷却部と、前記加熱部及び冷却部の出力を制御する制御部と、を有しており、上記制御部は、負荷の測定温度が入力される測定入力部と、目標設定温度としての前記目標温度、及び、温調開始時からの該目標設定温度への目標到達時間を入力する設定入力部と、前記温調開始時における初期設定温度、並びに、前記設定入力部から入力された前記目標設定温度及び目標到達時間に基づいて、その目標設定温度に達するまでの目標温度勾配を求める演算部と、前記演算部で求められた目標温度勾配に追従して前記負荷の測定温度が変化するように前記加熱部及び冷却部の出力を制御する制御出力部とを有している、ことを特徴とする。
【0008】
また、同じく前記技術的課題を解決するため、本発明に係る温調装置は、負荷の温度を目標温度に調節するための温調装置であって、前記温調装置は、負荷との熱交換後に該負荷から戻された循環液を該負荷に対して循環的に送り出す循環液回路と、前記循環液回路に設けられ、該循環液回路中の循環液を加熱冷却する加熱部及び冷却部と、前記加熱部及び冷却部の出力を制御する制御部と、を有しており、上記制御部は、前記加熱冷却後の循環液又は前記加熱冷却前の循環液の測定温度が入力される測定入力部と、前記目標温度に対応する循環液の目標設定温度、及び、温調開始時からの該目標設定温度への目標到達時間を入力する設定入力部と、前記温調開始時における初期設定温度、並びに、前記設定入力部から入力された前記目標設定温度及び目標到達時間に基づいて、その目標設定温度に達するまでの目標温度勾配を算出する演算部と、前記演算部で求められた目標温度勾配に追従して前記循環液の測定温度が変化するように前記加熱部及び冷却部の出力を制御する制御出力部とを有している、ことを特徴とする。
【0009】
ここで、前記温調装置において、好ましくは、前記循環液回路は、前記負荷から戻された循環液を受け入れる戻り流路と、前記加熱部及び冷却部により温度調節された循環液を前記負荷に対して送り出す吐出流路と、これら戻り流路及び吐出流路が接続されて前記循環液を貯留するタンク部と、前記タンク部内の循環液を前記吐出流路に送り出す循環ポンプとを有している。
【0010】
また、好ましくは、前記冷却部が、放熱水が流れる放熱水回路と、該放熱水回路を流れる放熱水と前記循環液回路を流れる循環液との間で熱交換させる熱交換器とを有しており、前記加熱部がヒータを有しており、前記放熱水回路が、該放熱水回路を流れる放熱水の流量を調節する流量制御弁を有しており、前記制御出力部が、前記ヒータ及び前記流量制御弁を制御することにより前記加熱部及び前記冷却部を制御する。
【0011】
なお、上記温調装置においては、前記演算部が、前記目標到達時間内における複数のタイミングの各々について、前記目標温度勾配から負荷の経時設定温度を算出すると共に、該経時設定温度と前記測定入力部から入力された負荷の測定温度とを比較し、前記制御出力部が、前記経時設定温度と測定温度との比較結果に基づいて、前記加熱部及び冷却部の出力を制御するようにしても良い。また、それに代えて、前記演算部が、前記目標到達時間内における複数のタイミングの各々について、前記目標温度勾配から循環液の経時設定温度を算出すると共に、該経時設定温度と前記測定入力部から入力された循環液の測定温度とを比較し、前記制御出力部が、前記経時設定温度と測定温度との比較結果に基づいて、前記加熱部及び冷却部の出力を制御するようにしても良い。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、目標温度に負荷を温調するにあたり、その過程においても温度調節しながら徐々に負荷の温度を前記目標温度まで変化させることが可能な温調装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る温調装置の概略的な回路図である。
【
図3】
図1の制御部で実行される制御のフローチャートである。
【
図4】
図1の温調装置における目標到達時間に至るまでの経時設定温度の時間的変化の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1-
図4は、本発明に係る温調装置の第1実施形態を示すものである。この温調装置1は、温調対象物(ビールの原料液等の負荷W)の温度を、温度調節(すなわち、温度制御)しながら徐々に目標温度まで変化させていくのに特に適したものである。
【0015】
図1に示すように、前記温調装置1は、該装置1の外側を覆う筐体10を有しており、その筐体10の内部に、負荷Wとの熱交換後に該負荷Wから戻された循環液を受け入れ、その受け入れた循環液を再び負荷Wに対して循環的に送り出す循環液回路2と、該循環液回路2上に設けられ、該循環液回路2中の循環液を加熱冷却する加熱部3及び冷却部4と、これら加熱部3及び冷却部4の出力を制御する制御部5とを有している。
【0016】
上記循環液回路2は、前記負荷Wとの熱交換後に該負荷Wから戻された循環液を受け入れる戻り流路20と、前記加熱部3及び冷却部4により温度調節された循環液を前記負荷Wに対して送り出す吐出流路21と、循環液を貯留するため、前記戻り流路20と吐出流路21との間に配設されたタンク部22と、該タンク部22に貯留された循環液を前記吐出流路21に送出するための循環ポンプ25とを有している。
【0017】
前記タンク部22は、前記戻り流路20及び吐出流路21が接続されたメインタンク23と、該メインタンク23の上部に連通口24aを通じて接続されたサブタンク24とを有している。そして、前記メインタンク23は、前記タンク部22に循環液を補給するための注入口23aと、該メインタンク23内に貯留された循環液の量を前記筐体10の外部から目視により確認することが可能なレベルゲージ23bとを有している。
【0018】
上記メインタンク23内には、前記加熱部3と前記循環ポンプ25と該タンク23内に貯留された循環液の液位を検知するレベルスイッチ23cとが設けられている。ここで、前記循環ポンプとしては、好ましくは浸漬型でインバータ式のポンプが用いられ、前記加熱部3、循環ポンプ25及びレベルスイッチ23cは、前記制御部5に電気的に接続されている。さらに、前記加熱部3は、前記制御部5に電気的に接続されたヒータ31と温度ヒューズ32とを有していて、これらヒータ及び温度ヒューズが前記制御部5に電気的に接続されている。
【0019】
そうすることにより、前記ヒータ31で前記メインタンク23内の循環液を加熱して該循環液の温度を調節したり、前記吐出流路21に送出する循環液の流量を調節したりすることができるようになっている。そして、前記温度ヒューズ32により、例えば、前記メインタンク23内の空気の温度が所定の温度より高くなった時に、危険な状態と判断して温調装置1の電源をOFFにすること等ができるようになっている。なお、前記タンク部22の底部にはドレン管14の一端が接続されていて、該ドレン管14の他端には開閉可能なドレンポート15が設けられている。それにより、タンク部22内の清掃時等に、タンク22部内の循環液を外部に排出することができる。
【0020】
また、前記サブタンク24内には、その内部に貯留された循環液を前記メインタンク23へと汲み上げる浸漬型の内部ポンプ26が設けられている。この内部ポンプ26としては、好ましくはインバータ式のポンプが用いられ、該内部ポンプ26は、前記制御部5に電気的に接続されている。このように、前記メインタンク23の最大容量を超過した循環液を、前記連通孔24aを通じてサブタンク24内に排出して貯めておくことができ、さらに、前記レベルスイッチ23cによりメインタンク23の液位が低下したことが検知された時には、前記内部ポンプ26でサブタンク24内の循環液を汲み上げてメインタンク23に補充することができる。
【0021】
前記戻り流路20は、前記筐体10に開設された循環液戻し口20aを一端に有して、他端が前記メインタンク23に接続されており、さらに、それら一端と他端との中間には、中を流れる循環液を前記冷却部4と熱交換させる第1熱交換流路20bを有している。そのため、前記戻し口20aから受け入れた循環液を、前記第1熱交換流路20bにおいて前記冷却部4により冷却した上で、前記メインタンク23に戻すことができるようになっている。
【0022】
前記戻り流路20には、前記循環液戻し口20aと前記第1熱交換流路20bとの間に、該戻し口20aから受け入れた循環液の温度を検出する第1温度センサ20cが設けられ、該第1熱交換流路20bと前記メインタンク23との間に、前記冷却部で冷却された循環液の温度を検出する第2温度センサ20dが設けられている。そして、これら第1温度センサ20c及び第2温度センサ20dは、共に前記制御部5に電気的に接続されている。
【0023】
それにより、前記第1温度センサ20cについては、後述するように、前記制御部5においてユーザが予め設定した目標設定温度Taに基づいて前記加熱部3及び冷却部4の出力を制御するのに用いることができる。それに加えて、両センサ20c,20dは、例えば、循環液の温度の異常を検出して温調装置1を停止させたり、両センサ20c,20dで検出された循環液の温度の差に応じて、前記冷却部4の出力を制御したり等するのに用いることができる。
【0024】
一方、前記吐出流路21は、前記筐体10に開設された循環液吐出口21aを一端に有して、他端が前記循環ポンプ25に接続されている。そのため、前記戻り流路20の冷却部4及び前記メインタンク23の加熱部3(ヒータ31)により加熱冷却された循環液を、この吐出流路21を通じて前記循環液吐出口21aに供給することができるようになっている。
【0025】
前記吐出流路21には、前記循環液吐出口21a側から循環ポンプ25側へ循環液が逆流するのを防止する逆止弁21bが設けられており、該逆止弁21bと前記吐出口21aとの間には、上流側から、圧力センサ21c、第3温度センサ21d及び流量計センサ21eが順次設けられている。そして、これらセンサ21c,21d,21eも、共に前記制御部5に電気的に接続されている。
【0026】
それにより、前記圧力センサ21c及び前記流量計センサ21eについては、例えば、それが検出した循環液の圧力及び流量に応じて前記循環ポンプ25の回転数を制御したり、前記循環液の圧力及び流量の異常を検出して温調装置1を停止させたりすることができる。また、前記第3温度センサ21dについては、後述するように、前記制御部5においてユーザが予め設定した目標設定温度Taに基づいて前記加熱部3及び冷却部4の出力を制御するのに用いることができる。それに加えて、前記第3温度センサ21dは、例えば、循環液の温度の異常を検出して温調装置1を停止させたり、前記第1温度センサ20cや第2温度センサ20dで検出した循環液の温度との差に基づいて、前記加熱部3及び冷却部4の出力を制御したり等するのに用いることも可能である。
【0027】
本実施形態において、前記冷却部4は、放熱水が流れる放熱水回路40と、該放熱水回路40を流れる放熱水と前記戻り流路20を流れる循環液との間で熱交換させる熱交換器41とを有している。具体的には、前記放熱水回路40は、前記熱交換器41内に設けられた第2熱交換流路42と、該第2熱交換流路42の一端に接続されて、放熱水を前記熱交換器41へと導入する放熱水導入路43と、前記第2熱交換流路42の他端に接続されて、前記熱交換器41で循環液と熱交換した後の放熱水を該熱交換器41から排出する放熱水排出路44とを有している。
【0028】
さらに、前記放熱水回路40は、前記第2熱交換流路42に供給する放熱水の流量を調節するための流量制御弁45を有している。この流量制御弁45は前記制御部5に電気的に接続されており、該制御部5で該流量制御弁45を制御することにより、前記第2熱交換流路42へと供給される放熱水の流量、すなわち前記冷却部4の出力を制御することができるようになっている。
【0029】
より具体的に説明すると、前記放熱水導入路43は、その一端が前記第2熱交換流路42の上流端に接続され、その他端には、前記筐体10に開設された放熱水供給口43aを有している。そして、この放熱水導入路43は、前記供給口43aと第2熱交換流路42との間に、前記流量制御弁45を有している。一方、前記放熱水排出路44は、その一端が前記第2熱交換流路42の出口側端部に接続され、その他端には、前記筐体10に開設された放熱水排出口44aを有している。
【0030】
ここで、上記流量制御弁45としては、例えば比例弁や電磁弁を用いることが可能であり、比例弁の場合には弁の開度を制御することにより、また、電磁弁の場合には弁の開閉時間の比を制御することにより、前記第2熱交換器42へと供給される放熱水の流量、すなわち、前記冷却部4の出力を制御することができる。
【0031】
なお、この放熱水回路40では、前記放熱水導入路43における前記流量制御弁45よりも上流側(放熱水供給口43a側)の位置と前記放熱水排出路44とが、バイパス路46によって接続されている。このバイパス路46には、仕切弁46aが設けられており、必要に応じて該仕切弁46aを閉じておいたり開いておいたりすることができる。例えば、前記第2熱交換流路42で加熱された放熱水を、その温度を下げてから排出する場合や、前記流量制御弁45におけるウォータハンマー現象を抑制する場合には、仕切弁を開いておくことができる。
【0032】
また、前記筐体10の底部には、漏れた循環液や放熱水を受けるためのドレンパン11が配設されている。このドレンパン11には、前記制御部5に電気的に接続されたフロートタイプの漏水センサ12と、前記ドレンパン11に溜まった液を外部に排出するための開閉可能なドレンポート13が設けられている。それにより、例えば、装置1内で循環液や放熱水が大量に漏れて漏水センサ12がそれを検知した時に、制御部5によって報知したり装置1の電源をOFFにしたりすることができる。
【0033】
図2に示すように、前記制御部5は、前記各温度センサをはじめとする各種センサ等による検知・検出結果が入力される測定入力部50と、後述の目標設定温度Taをはじめとする各種設定値が入力される設定入力部51と、前記測定入力部50及び前記設定入力部51から入力された各種データに基づいて所定の演算を行なう演算部52と、前記演算部52での演算結果に基づいて、前記加熱部3のヒータ31や前記冷却部4の流量制御弁45をはじめとする各種被制御機器に対して制御信号を出力する制御出力部53とを有している。
【0034】
次に、前記温調装置1の使用方法について説明する。ここでは、この温調装置1を用いて、液体状の負荷(タンク60内のビールの原料液等の液体)Wを目標温度に調節する場合について説明する。
【0035】
前記温調装置1と負荷Wとを接続するにあたっては、
図1に示すように、循環液を負荷Wに供給するための供給管61の一端を前記温調装置1の循環液吐出口21aに接続し、その他端を前記負荷Wとの熱交換部(具体的には、前記タンク60内の液状負荷Wに含浸させた熱交換パイプ)62の入口側に接続する。また、負荷Wと熱交換した後の循環液を温調装置1に戻すための戻し管63の一端を、前記熱交換部62の出口側に接続し、その他端を温調装置1の循環液戻し口20aに接続する。さらに、必要に応じて、前記負荷Wに接触させて取り付けた(具体的には、前記タンク60内の液状負荷Wに含浸させた)負荷温度センサ64を前記制御部5の測定入力部50に電気的に接続する。
【0036】
次に、前記負荷Wを目標温度に調節するにあたっての前記温調装置1の制御方法について、
図2-
図4を用いて説明する。ここでは、負荷温度センサ64により測定された負荷Wの温度に基づいて該負荷Wを目標温度に調節する場合と、前記第1温度センサ20c又は第3温度センサ21dにより測定された循環液の温度に基づいて負荷Wの温度を目標温度に調節する場合とについて説明する。ただし、後者の場合、負荷Wの温度が、実質的には、調節された循環液の温度に追従することを前提としている。また、ここでは、
図4に示すように、負荷Wを現在の温度よりも高い目標温度に調節する場合を例に挙げて説明することとする。
【0037】
<負荷温度センサ64を用いる場合>
図3のフローチャートを用いて説明すると、まず、負荷Wの所望の目標温度を目標設定温度Taとして、また、目標設定温度Taまでの所望の到達時間を目標到達時間tdとして、さらに、温調開始時tsにおける設定温度であるところの初期設定温度T0を、前記制御部5の設定入力部51に入力する(S1)。ただし、前記初期設定温度T0としては、従前から設定されていたものを利用し、ここでの入力を省略できるようにしても良い。すると、前記制御部5の演算部52で、前記初期設定温度T0、前記目標設定温度Ta及び目標到達時間tdに基づいて、温調開始時から目標到達時間tdが経過するまでの温度変化の目標勾配(目標温度勾配Sa)が算出される(S2)。
【0038】
そして、前記目標設定温度Taへの負荷Wの温調が開始されると、前記演算部52は、所定の時間間隔Δt毎のタイミングで、前記初期設定温度T0と目標温度勾配Saと温調開始時tsからの経過時間(Δt×n:n=1,2,3・・・)とに基づいて、現在の経過時間において目標となる設定温度(経時設定温度Tn:n=1,2,3・・・)を算出する(S3)。ここで、前記時間間隔Δtは、前記S1において設定入力部51から入力することができるようにしても良い。また、前記時間間隔Δtは必ずしも一定である必要はなく、経過時間に応じて異なるように予め設定することも可能である。すなわち、前記演算部5は、前記目標到達時間td内における所定の複数のタイミング(経過時間)の各々において、前記目標温度勾配Saから負荷Wの前記経時設定温度Tnを算出する。
【0039】
一方、前記負荷温度センサ64からは、前記制御部5の測定入力部50に対して、前記現在の経過時間(Δt×n)における負荷Wの測定温度(経時測定温度)Tmが入力される(S4)。そして、前記演算部5では、前記経時設定温度Tnと前記経時測定温度Tmとを比較して(S5)、その比較結果を前記制御部5の制御出力部53に伝達する。
【0040】
すると、前記制御出力部53は、前記経時設定温度Tnが前記経時測定温度Tmと同じかそれよりも大きい場合には、前記ヒータ31の出力で規定される前記加熱部3の出力が、前記流量制御弁45による放熱水の流量で規定される冷却部4の出力よりも大きくなるように制御する(S6)。その一方で、前記経時設定温度Tnが前記経時測定温度Tmよりも小さい場合には、前記冷却部4の出力が、前記加熱部3の出力よりも大きくなるように制御する(S7)。ここで、前記S6及びS7における加熱部3と冷却部4との出力差は、例えば、経時設定温度Tnと経時測定温度Tmとの温度差に基づいて決定することができる。
【0041】
前記ステップS3-S7は、前記温調開始時tsからの経過時間(Δt×n)が前記目標到達時間tdに達するまで繰返される(S8)。そして、前記経過時間(Δt×n)が前記目標到達時間tdに達していたら、前記目標温度勾配Saに基づいた温度制御を終了し、その制御終了時からは、負荷Wの温度を前記目標設定温度Taに維持する制御に移行する(S9)。以上の制御方法により、前記負荷の温度を、前記目標温度勾配Saに追従させながら、前記目標設定温度Taまで変化させることができる。なお、上記ステップS9では、必ずしも負荷Wの温度を目標設定温度Taに維持する必要性は無く、予め設定した第2の目標設定温度に対して、このフローチャートの制御を利用して又は利用しないで、負荷Wを続けて温度制御しても良い。
【0042】
その一方で、これとは逆に、負荷Wを現在の目標温度よりも低い温度に調節するときには、前記経時設定温度Tnが前記経時測定温度Tmと同じかそれよりも小さい場合には、前記冷却部4の出力が前記加熱部3の出力よりも大きくなるように制御する(S7)。その一方で、前記経時設定温度Tnが前記経時測定温度Tmよりも大きい場合には、前記加熱部3の出力が、前記冷却部4の出力よりも大きくなるように制御する(S6)。
【0043】
<循環液回路2の第1温度センサ20c又は第3温度センサ21dを用いる場合>
上述のように、負荷Wの温度は、調節された循環液の温度に実質的に追従することから、この場合にも、
図3のフローチャートに基づいて負荷Wを目標温度に調節することが可能である。そこで、ここでは、上述した負荷温度センサ64を用いる場合とは異なる部分について主に説明し、共通する説明については省略することとする。
【0044】
この場合、まず、ステップS1で、目標設定温度Taとして、負荷Wの所望の目標温度に対応する循環液の温度を設定入力部51に入力し、同時に、前記初期設定温度T0及び前記目標到達時間tdを該設定入力部51に入力する。ただし、前記初期設定温度T0については、上述のように、従前から設定されていたものを引き続き利用しても良い。以下、ステップS2では、前記初期設定温度T0、前記目標設定温度Ta及び目標到達時間tdに基づいて目標温度勾配Saが算出される。
【0045】
そして、ステップS3では、前記目標設定温度Taへの循環液の温調が開始されると、所定の時間間隔Δt毎のタイミングで、前記初期設定温度T0と目標温度勾配Saと温調開始時tsからの経過時間(Δt×n)とに基づいて経時設定温度Tnが算出される。また、ステップS4では、前記循環液回路2の第1温度センサ20c又は第3温度センサ21dから、前記測定入力部50に対して、前記現在の経過時間(Δt×n)における循環液の経時測定温度Tmが入力される。続いて、ステップS5で、前記経時設定温度Tnと前記経時測定温度Tmとを比較する。
【0046】
そのとき、前記経時設定温度Tnが前記経時測定温度Tmと同じかそれよりも大きい場合には、ステップS6で、前記加熱部3の出力が前記冷却部4の出力よりも大きくなるように両者を制御する。一方、前記経時設定温度Tnが前記経時測定温度Tmよりも小さい場合には、ステップS7で、前記冷却部4の出力が、前記加熱部3の出力よりも大きくなるように制御する。ここで、前記S6及びS7における加熱部3と冷却部4との出力差は、例えば、経時設定温度Tnと経時測定温度Tmとの温度差に加えて、第1温度センサ20cによる測定温度と第3温度センサ21dによる測定温度との差に基づいても決定することができる。
【0047】
そして、ステップS8により、前記温調開始時tsからの経過時間(Δt×n)が前記目標到達時間tdに達するまで前記ステップS3-S7が繰返されたら、ステップS9で上記温度制御を終了し、その制御終了時からは、循環液の温度を前記目標設定温度Taに維持する制御に移行する。
【0048】
以上のように、上記温調装置1によれば、負荷Wをユーザが希望する目標温度に温調するにあたり、その過程においても温度制御しながら徐々に負荷の温度を前記目標温度まで変化させることができる。
【符号の説明】
【0049】
1 温調装置
2 循環液回路
20 戻り流路
20b 第1熱交換流路
20c 第1温度センサ
20d 第2温度センサ
21 吐出流路
21d 第3温度センサ
22 タンク部
23 メインタンク
25 循環ポンプ
3 加熱部
31 ヒータ
4 冷却部
40 放熱水回路
41 熱交換器
42 第2熱交換流路
43 放熱水導入路
44 放熱水排出路
45 流量制御弁
5 制御部
50 測定入力部
51 設定入力部
52 演算部
53 制御出力部
64 負荷温度センサ
W 負荷
Ta 目標設定温度
td 目標到達時間
ts 温調開始時
T0 初期設定温度
Δt 測定時間間隔
Sa 目標温度勾配
Tn 経時設定温度
Tm 経時測定温度