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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022166645
(43)【公開日】2022-11-02
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 13/00 20060101AFI20221026BHJP
【FI】
B60C13/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021071996
(22)【出願日】2021-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 芳樹
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BC35
3D131BC47
3D131BC51
3D131GA01
3D131GA03
3D131GA04
3D131HA32
(57)【要約】
【課題】サイドウォールの標章の視認性と耐クラック性能を向上させた空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】空気入りタイヤは、タイヤ径方向に延びるサイドウォールを有する。サイドウォールは、タイヤ軸方向の外側へ突出する標章を有する。標章は、帯状の本体と、本体を包囲する無端環状の輪郭と、輪郭の無端環状の外側に配置され且つ互いに離間する輪郭同士を接続するブリッジと、を有する。本体と前記輪郭は、標章の周囲の外表面である基準面に対する突出高さが互いに異なる。ブリッジの基準面に対する突出高さは、本体及び輪郭のいずれの突出高さよりも小さい。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ径方向に延びるサイドウォールを備え、
前記サイドウォールは、タイヤ軸方向の外側へ突出する標章を有し、
前記標章は、帯状の本体と、前記本体を包囲する無端環状の輪郭と、前記輪郭の無端環状の外側に配置され且つ互いに離間する前記輪郭同士を接続するブリッジと、を有し、
前記本体と前記輪郭は、前記標章の周囲の外表面である基準面に対する突出高さが互いに異なり、
前記ブリッジの前記基準面に対する突出高さは、前記本体及び前記輪郭のいずれの突出高さよりも小さい、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記本体の前記基準面に対する突出高さは、前記輪郭の前記基準面に対する突出高さよりも大きい、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記本体は、前記基準面に対する突出高さが一定である第1突出一定部を有し、
前記輪郭は、前記基準面に対する突出高さが一定である第2突出一定部を有し、
前記ブリッジは、前記基準面に対する突出高さが一定である第3突出一定部を有し、
前記第1突出一定部の突出高さは、前記第2突出一定部の突出高さよりも大きく、
前記第3突出一定部の突出高さは、前記第1突出一定部及び前記第2突出一定部のいずれの突出高さよりも小さい、請求項2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記本体の前記基準面に対する突出高さは、前記輪郭の前記基準面に対する突出高さよりも小さく、前記本体にはセレーションが形成されている、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記標章は、文字を表し、前記文字は、前記文字の線が閉空間を形成し、前記ブリッジは、前記閉空間の少なくとも一部に設けられている、請求項1~4のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記標章は、文字を表し、前記標章は、前記文字の線を分断する帯状の分断部を有し、前記ブリッジは、前記分断部の少なくとも一部に設けられている、請求項1~5のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記標章は、タイヤ周方向に並ぶ第1文字と第2文字とを表し、前記ブリッジは、前記第1文字の前記輪郭と前記第2文字の前記輪郭とを接続する、請求項1~6のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤのサイドウォールには、商品名やブランド名等を表す標章が設けられる。標章は、周囲のプロファイル面(以下、基準面とも表記する)からタイヤ軸方向の外側へ突出する突起である。プロファイル面からの標章の突出量を大きくすれば、標章の視認性を向上させることが可能である。その一方で、標章にクラックが発生しやすくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-64656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、サイドウォールの標章の視認性と耐クラック性能を向上させた空気入りタイヤを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の空気入りタイヤは、タイヤ径方向に延びるサイドウォールを備え、前記サイドウォールは、タイヤ軸方向の外側へ突出する標章を有し、前記標章は、帯状の本体と、前記本体を包囲する無端環状の輪郭と、前記輪郭の無端環状の外側に配置され且つ互いに離間する前記輪郭同士を接続するブリッジと、を有し、前記本体と前記輪郭は、前記標章の周囲の外表面である基準面に対する突出高さが互いに異なり、前記ブリッジの前記基準面に対する突出高さは、前記本体及び前記輪郭のいずれの突出高さよりも小さい。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本開示の第1実施形態の空気入りタイヤのサイドウォールの一部をタイヤ軸方向に平行な視線で見た側面図。
図2図1におけるA2-A2部位断面図。
図3図1におけるA30部位、A31部位、A32部位及びA33部位の断面図。
図4】第1実施形態の第1変形例のA30部位、A31部位、A32部位及びA33部位の断面図。
図5】第1実施形態の第2変形例の標章をタイヤ軸方向に平行な視線で見た側面図及び側面図におけるA51部位、A52部位の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[第1実施形態]
以下、本開示の第1実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0008】
図1は、第1実施形態の空気入りタイヤPT(以下、単に「タイヤPT」ともいう)のサイドウォールの一部をタイヤ軸方向に平行な視線で見た側面図である。図2は、図1におけるA2-A2部位断面図(タイヤ子午面の断面)である。図2は、タイヤ赤道面TEからタイヤ軸方向ADの一方側のみを示している。
【0009】
<基本構成>
図1及び図2に示すように、空気入りタイヤPTは、一対のビード部11と、各ビード部11からタイヤ径方向RDの外側へ延びるサイドウォール12と、一対のサイドウォール12の各々のタイヤ径方向RDの外端に接続され、地面と接触するトレッド面13aをタイヤ径方向RDの外側に有するトレッド13と、を有する。
【0010】
タイヤ赤道面TEとは、タイヤ回転軸に直交する面であり且つタイヤ軸方向ADの中心に位置する面である。タイヤ子午面とは、タイヤ回転軸を含む面であって、タイヤ赤道面TEと直交する面である。タイヤ軸方向ADにおいて、内側とは、タイヤ赤道面TEに近い側のことであり、外側とは、タイヤ赤道面TEから遠い側のことである。また、タイヤ径方向RDにおいて、内側とは、タイヤ回転軸に近い側のことであり、外側とは、タイヤ回転軸から遠い側のことである。
【0011】
ビード部11は、環状に形成されるビードコア11aと、ビードコア11aのタイヤ径方向RDの外側に配置されるビードフィラー11bと、を有する。ビードコア11aは、例えば、ゴムで被覆されたビードワイヤ(例えば、金属線)を積層して形成される。ビードフィラー11bは、ビードフィラー11bに隣接する他のゴム部材よりもゴム硬度の高い硬質ゴムからなり、その断面形状がタイヤ径方向RDの外側に向けて先細り状に形成されている。
【0012】
また、タイヤPTは、一対のビードコア11aの間にかけ渡されるカーカス14と、カーカス14のタイヤ径方向RDの内側に配置され、空気が充填されるタイヤPTの内部空間に面するインナーライナー15と、を有する。カーカス14及びインナーライナー15は、ビード部11、サイドウォール12及びトレッド13に亘って、タイヤ内周に沿って配置されている。
【0013】
ビード部11は、カーカス14のタイヤ軸方向ADの外側に配置されるリムストリップゴム11cを有する。リムストリップゴム11cは、リムに接触する外表面を形成する。サイドウォール12は、カーカス14のタイヤ軸方向ADの外側に配置されるサイドウォールゴム12aを有する。サイドウォールゴム12aは、外表面を形成する。
【0014】
トレッド13は、トレッド面13aを形成するトレッドゴム13bと、トレッドゴム13bとカーカス14との間に配置されるベルト(非図示)と、を有する。ベルトは、複数(例えば4つ)のベルトプライ(非図示)を有する。ベルトプライ(非図示)は、平行配列した複数本のベルトコード(例えば、有機繊維や金属)と、ベルトコードを被覆するトッピングゴムとを有する。
【0015】
カーカス14は、少なくとも1つのカーカスプライ(非図示)で構成されている。カーカスプライ(非図示)は、ビードコア11aを巻き込むようにビードコア11aの周りで折り返されている。また、カーカスプライ(非図示)は、タイヤ周方向CDに対して略直交する方向に配列した複数のプライコード(例えば、有機繊維や金属)と、プライコードを被覆するトッピングゴムとを有する。なお、図2においてカーカス14を一点鎖線で省略して示しているが、実際は厚みを有する。
【0016】
インナーライナー15は、空気圧を保持するために、気体の透過を阻止する機能に優れている。なお、サイドウォール12において、第1実施形態のように、インナーライナー15及びカーカス14の間には、他の部材が介在していない、という構成でもよい。
【0017】
サイドウォール12は、タイヤ最大幅となる位置(具体的には、カーカス14のタイヤ軸方向ADの外側同士間の距離W1が最大となる位置)とタイヤ径方向RDで同じ位置12bを、外表面に有する。以下、当該位置12bを、タイヤ最大幅位置12bという。
【0018】
図示しないが、トレッドゴム13bは、トレッド面13aのタイヤ周方向CDの全域に亘って、タイヤ周方向CDへ連続して延びる複数の主溝(非図示)と、タイヤ軸方向ADの外端まで延びる複数の副溝13fと、を有する。
【0019】
<サイドウォールの構造>
図1及び図2に示すように、サイドウォール12は、基準面12cと、基準面12cからタイヤ軸方向ADの外側へ突出する標章3と、を有する。標章3は、タイヤ最大幅位置12bに位置していてもよい。基準面12cは、標章3の周囲の外表面である。基準面12cは、標章3のタイヤ径方向RDの外側及び内側にあり、標章3のタイヤ周方向CDの両側にある。基準面12cは、タイヤ回転軸を中心として回転対称となる位置に配置されている、いわゆるプロファイル面である。基準面12cは、その一部がタイヤ周方向CDの全周に亘って連続して延びている。基準面12cは、タイヤ子午面の断面において、曲率半径が異なる複数の円弧で構成されている、としてもよい。なお、本明細書における突出高さとは、基準面12cの法線方向NDへの突出する高さである。
【0020】
標章3は、図1に示すように、タイヤ軸方向ADに平行な視線で見て、複数の文字、図形、記号又はこれらの組み合わせを表す。文字には、アルファベット、数字が挙げられる。標章3は、帯状の本体30と、本体30を包囲する無端環状の輪郭31と、ブリッジ32と、を有する。図1,2及び5において、輪郭31及びブリッジ32をハッチングで表している。
【0021】
帯状の本体30は、文字の線、図形の線、記号の線を表す。例えば、図1に示すように、文字「R」は、縦の線が2本、横の線が2本、傾斜線が1本で構成される。文字「E」は、縦の線が1本、横の線が3本で構成される。本体30は、アルファベットの「A」、「B」、「D」、「O」、「P」、「Q」のように閉空間34を形成する帯状の線を有する場合があり、また、本体30は、「R」の下部や「E」のタイヤ周方向CDに平行な3本線、「U」のようなタイヤ径方向RDに平行な2本線のように、互いに離間した少なくとも2本の帯を有する場合がある。
【0022】
輪郭31は、タイヤ軸方向ADに平行な視線で見て無端環状に形成されている。輪郭31は、本体30をタイヤ周方向CDの両側から包囲すると共に、タイヤ径方向RDの両側から包囲する。輪郭31は、1つの帯状の本体30に対して少なくとも1つ設けられている。図1に示す「E」のように、閉空間を形成しない1つの帯状の本体30に対して、1つの輪郭31が設けられる、としてもよい。一方で、図1に示す「R」のように、閉空間34を形成する1つの帯状の本体30に対して、少なくとも2つの輪郭31が設けられる、としてもよい。閉空間34の数に応じて輪郭31の数が変化してもよい。例えば、閉空間34の数が1つで、輪郭31の数が2つとしてもよく、閉空間34の数が2つで、輪郭31の数が3つとしてもよい。また、閉空間34がなくても1つの本体30に対して1以上の輪郭31を設けてもよい(図5の文字「T」参照)。
【0023】
ブリッジ32は、輪郭31の無端環状の外側に配置され且つ互いに離間する輪郭31同士を接続する。無端環状の外側とは、無端環状の輪郭31で囲まれる本体30から遠ざかる側のことをいう。本体30は、輪郭31の無端環状の内側にある。1つの帯状の本体30が閉空間34を形成する場合、当該閉空間34は、輪郭31の無端環状の外側である。
標章3は、輪郭31の無端環状の外側に少なくとも1つの離間部位を有する。例えば、離間部位は、輪郭31のタイヤ径方向RDに延びる2辺の間に配置されていてもよいし、輪郭31のタイヤ周方向CDに延びる2辺の間に配置されていてもよいし、輪郭31で包囲された閉空間34に配置されていてもよいし、タイヤ周方向CDに並んでいる第1文字及び第2文字の間に配置されていてもよい。
図1の例では、標章3が文字「R」を表しており、文字「R」は、文字の線が閉空間を形成している。ブリッジ32は、この閉空間34の全領域に形成されている。もちろん、ブリッジ32は、閉空間34の少なくとも一部に形成されていればよい。
また、図1の例では、標章3が文字「E」を表しており、文字「E」は、離間する少なくとも3つの辺を有する。これら3つの辺はタイヤ周方向CDに延びており、各々の辺の間に離間部位を形成し、計2本の帯状の離間部位を有する。ブリッジ32は、この2つの離間部位の各々に設けられている。
【0024】
図3は、図1におけるA30部位、A31部位、A32部位及びA33部位の断面図である。これら断面は、基準面12cの法線方向NDに平行な面である。法線方向NDの外側とは、法線方向NDにおいて基準面12cから遠ざかる側である。また、外端とは、無端環状の内側にある本体30から遠ざかる側の端をいう。
【0025】
図3に示すように、本体30の外端である第1エッジ30aは、法線方向NDの外側へ突出している。本体30と輪郭31の境界には、第1エッジ30aがある。本体30は、第1エッジ30a同士の間の部位である。図3に示す第1実施形態では、本体30は、本体30と輪郭31とブリッジ32とが出現する断面において突出高さが一定である部位(以降、突出一定部位と表記する場合がある)のみであるが、これに限定されない。本体30にセレーションが形成されていてもよい。本体30と輪郭31とブリッジ32とが出現する断面は、無端環状の輪郭31の延在方向に交差する断面である。
【0026】
図3に示すように、輪郭31の外端である第2エッジ31aは、法線方向NDの外側へ突出している。輪郭31と基準面12cの境界には、第2エッジ31aがある。また、輪郭31とブリッジ32の境界には、第2エッジ31aがある。輪郭31は、第1エッジ30aと第2エッジ31aの間の部位である。図3に示す第1実施形態では、輪郭31は、突出一定部位と、突出一定部位と第1エッジ30aを接続する少なくとも1つの円弧とで構成されているが、これに限定されない。例えば、輪郭31が、突出一定部位を有さず、第1エッジ30aと第2エッジ31aとを接続する少なくとも1つの円弧のみで構成されていてもよい。この円弧は、クラックの発生を抑制するために設けられている。また、輪郭31が、屈曲点を形成しなければ、直線を含んでいてもよい。輪郭31が、突出一定部位を有することで、輪郭31の幅が相対的に大きくなるので視認性を向上可能となる。
【0027】
輪郭31の第2エッジ31aと基準面12cとを接続する接続部は、少なくとも1つの円弧を有し、輪郭31の第2エッジ31aと基準面12cとが、屈曲点なく接続されていればよい。
【0028】
図3に示すように、ブリッジ32の外端である第3エッジ32aは、法線方向NDの外側へ突出している。ブリッジ32と基準面12cの境界には、第3エッジ32aがある。ブリッジ32は、第2エッジ31a同士の間の部位(A31部位参照)、又は、第2エッジ31aと第3エッジ32aの間の部位(A32部位参照)である。図3に示す第1実施形態では、ブリッジ32は、突出一定部位と、突出一定部位と第2エッジ31aを接続する少なくとも1つの円弧とで構成されているが、これに限定されない。ブリッジ32が突出一定部位を有さず、少なくとも1つの円弧で構成されていてもよい。
【0029】
上記で述べたように、ブリッジ32と輪郭31の間には必ず曲面が必要となる。輪郭31と本体30との間には必ず曲面が必要となる。曲面がなければ、屈曲点が形成されることになり、クラックの発生が招来されるからである。ブリッジ32と輪郭31の間の曲面の曲率半径は、0.2mm以上且つ2.0mm以下としてもよい。これは、後述するブリッジ32と輪郭31の突出高さの差と同様またはそれ以下であることを意味する。本体30と輪郭31との間の曲率半径は、0.2mm以上且つ1.0mm以下としてもよい。これは、後述する本体30と輪郭31の突出高さの差と同等またはそれ以下であることを意味する。
【0030】
図3に示すように、本体30の突出一定部位の基準面12cに対する突出高さD1(例えば、本体30の最小突出高さD1)と、輪郭31の突出一定部位の基準面12cに対する突出高さD2(例えば、輪郭31の最小突出高さD2)とが互いに異なる。図3に示す例では、本体30の突出一定部位の基準面12cに対する突出高さD1は、輪郭31の突出一定部位の基準面12cに対する突出高さD2よりも大きい。これにより、標章3の視認性を向上可能となる。
ここで、輪郭31は、突出一定部位及び円弧の両方を有するので、輪郭31の突出高さとは、輪郭31のうち最小の突出高さとしてもよい。
【0031】
図3に示すように、ブリッジ32の突出一定部位の基準面からの突出高さD3(例えば、ブリッジ32の最小突出高さD3)は、本体30及び輪郭31のいずれの突出一定部位の突出高さD1,D2(例えば、本体30の最小突出高さD1,輪郭31の最小突出高さD2)よりも小さい。
ここで、ブリッジ32は、突出一定部位及び円弧の両方を有するので、ブリッジ32の突出高さとは、ブリッジ32のうち最小の突出高さとしてもよい。
【0032】
本体30と輪郭31の突出高さの差は、0.2mm以上且つ1.0mm以下であることが好ましい。この差が0.2mm未満であれば、視認性が悪化する。また、この差が1.0mmを超えれば、タイヤ加硫時にエアを抱き込んでエア入りを招来しやすくなる。
【0033】
輪郭31とブリッジ32の突出高さの差は、0.2mm以上且つ2.0mm以下であることが好ましい。この差が0.2mm未満であれば、視認性が悪化する。また、この差が2.0mmを超えれば、クラックが発生しやすくなる。
【0034】
ブリッジ32が輪郭31よりも突出していれば、耐クラック性能が向上するが、その反面で、ベアが発生しやすくなり、また、視認性が悪化してしまう。
【0035】
本体30とブリッジ32の突出高さが同じであれば、視認性が悪化する。よって、本体30とブリッジ32の突出高さは異ならせている。
【0036】
サイドウォール12は、第1実施形態のように、タイヤ軸方向ADに突出し且つタイヤ周方向CDへ延びる環状突起2を有してもよい。環状突起2は、標章3のタイヤ径方向RDの外側に配置されている。環状突起2と標章3とは離間している。環状突起2は、第1実施形態のように、サイドウォール12のタイヤ周方向CDの全域に亘って、タイヤ周方向CDへ連続して延びていてもよい。
また、サイドウォール12は、標章3のタイヤ径方向RDの外側に複数のサイドブロック(非図示)を有してもよい。複数のサイドブロックは、溝を介してタイヤ周方向CDに間隔をあけて配置されるとしてもよい。複数のサイドブロックは、環状突起2のタイヤ径方向RDの外側のみに配置されていてもよいし、環状突起2のタイヤ径方向RDの内側のみに配置されていてもよいし、環状突起2のタイヤ径方向RDの外側及び内側の両側に配置されていてもよい。サイドブロックと標章3は離間している。
【0037】
なお、上記の各寸法値、位置関係及び大小関係は、タイヤPTを正規リムに装着して正規内圧を充填した無負荷の正規状態で計測したものである。正規リムは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤごとに定めるリムである。JATMAであれば標準リム、TRA、又はETRTOであれば「Measuring Rim」となる。
【0038】
正規内圧は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤごとに定めている空気圧である。JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、ETRTOであれば「INFLATION PRESSURE」である。
【0039】
[変形例]
(1)図4は、第1変形例のA30部位、A31部位、A32部位及びA33部位の断面図である。図3に示す本体30及び輪郭31の突出高さを、図4に示す本体30及び輪郭31の突出高さに変更してもよい。すなわち、図3に示す第1実施形態では、本体30の突出高さD1>輪郭31の突出高さD2>ブリッジ32の突出高さD3である。これに対して、図4に示すように、輪郭31の突出高さD2>本体30の突出高さD1>ブリッジ32の突出高さD3である。
この場合、本体30と輪郭31の突出高さの差は、0.2mm以上且つ1.0mm以下であることが好ましい。この差が0.2mm未満であれば、視認性が悪化する。また、この差が1.0mmを超えれば、タイヤ加硫時にエアを抱き込んでエア入りを招来しやすくなる。
また、本体30とブリッジ32が同じ突出高さにならない前提で、輪郭31とブリッジ32の突出高さの差は、0.4mm以上且つ3.0mm以下であることが好ましい。この差が0.4mm未満であれば、視認性が悪化する。また、この差が3.0mmを超えれば、クラックが発生しやすくなる。
【0040】
(2)(1)に示す構成では、図3に示す第1実施形態に比べて、本体30にエアを抱き込みやすくなる。そこで、本体30に輪郭31に連なるセレーションを形成することが好ましい。セレーションの突出高さは、本体30と輪郭31の突出高さの差未満であればよい。または、セレーションの突出高さは、本体30と輪郭31の差の90%以下且つ50%以上にしてもよい。セレーションの突出高さが大きすぎれば視認性が悪化し、小さすぎればセレーションによるエア抜き効果が発揮されにくい。
【0041】
(3)図5は、第2変形例の標章をタイヤ軸方向に平行な視線で見た側面図及びA51部位、A52部位の断面図である。図5におけるA30部位及びA31部位の断面図は、図3に示すA30部位及びA31部位の断面図と同じである。図5に示すように、標章3は、アルファベット「A」の第1文字と、アルファベット「T」の第2文字と、を表している。第1文字「A」は、2つの本体30と、2つの本体30をそれぞれ包囲する2つの無端環状の輪郭31と、を有する。文字「A」を構成する線が2つに分割され、2つの本体30で表されている。文字「A」は、2つの斜め線と1つの横線とで構成されている。1本の横線は、帯状の分断部33で分断されている。分断部33のタイヤ径方向RDの全域に亘ってブリッジ32が設けられている。もちろん、分断部33の少なくも一部にブリッジ32が設けられていてもよい。
【0042】
また、図5に示すように、第2文字「T」は、2つの本体30と、2つの本体30をそれぞれ包囲する2つの無端環状の輪郭31と、を有する。文字「T」を構成する線が2つに分割され、2つの本体30で表されている。文字「T」は、タイヤ周方向CDに平行な1つの横線と、タイヤ径方向RDに平行な1つの縦線とで構成されている。
第1文字「A」と第2文字「T」は、タイヤ周方向CDに並んでいる。第1文字「A」の輪郭31と、第2文字「T」の輪郭31とがブリッジ32で接続されている。このブリッジ32は、第1文字と第2文字とが並ぶ方向と同方向(タイヤ周方向CD)に延びている。第1文字「A」の輪郭31と第2文字「T」の輪郭31とを接続するブリッジ32は、当該ブリッジ32のタイヤ周方向CDの寸法が、タイヤ径方向RDの寸法よりも大きいとしてもよい。
【0043】
(4)本体30、輪郭31及びブリッジ32の各々について、突出一定部が設けられているが、突出一定部の代わりに、平坦面を設けてもよい。
【0044】
以上、図1~3に示す第1実施形態及び図4~5に示す変形例のように、タイヤ径方向RDに延びるサイドウォール12を備え、サイドウォール12は、タイヤ軸方向ADの外側へ突出する標章3を有し、標章3は、帯状の本体30と、本体30を包囲する無端環状の輪郭31と、輪郭31の無端環状の外側に配置され且つ互いに離間する輪郭31同士を接続するブリッジ32と、を有し、本体30と輪郭31は、標章3の周囲の外表面である基準面12cに対する突出高さが互いに異なり、ブリッジ32の基準面12cに対する突出高さは、本体30及び輪郭31のいずれの突出高さよりも小さい、としてもよい。
【0045】
この構成によれば、標章3の周囲の基準面12cに対する本体30の突出高さと、本体30を包囲する無端環状の輪郭31の基準面12cに対する突出高さとが互いに異なるので、本体30と輪郭31との陰影が明確となり、視認性が向上可能となる。また、輪郭31の無端環状の外側は基準面12cであることが多く、互いに離間する輪郭31の間の離間部位も基準面12cとなる場合が多い。離間部位の基準面12cと輪郭31との高低差が大きければ離間部位の基準面12cと輪郭31とを接続する接続部に円弧を設けることができず、その接続部が屈曲しやすくなり、クラックを招来するおそれがある。
そこで、本開示のように、輪郭31同士を接続するブリッジ32を離間部位に設けることで、離間部位にブリッジ32が無い構成に比べて、ブリッジ32によって離間部位と輪郭31の高低差を小さくでき、輪郭31とブリッジ32とを接続する接続部に円弧を適切に配置可能となる。その結果、クラックを抑制可能となる。
【0046】
図1~3に示す第1実施形態又は図5に示す変形例のように、本体30の基準面12cに対する突出高さD1は、輪郭31の基準面12cに対する突出高さD2よりも大きい、としてもよい。
この構成によれば、本体30の基準面12cに対する突出高さD1が、輪郭31の基準面12cに対する突出高さD2よりも小さい構成に比べて、タイヤの加硫時に、輪郭31を形成する金型の面にゴムが当たりやすくなり、ベアやエア入りを抑制可能となる。
【0047】
図1~3に示す第1実施形態又は図5に示す変形例のように、本体30は、基準面12cに対する突出高さD1が一定である第1突出一定部を有し、輪郭31は、基準面12cに対する突出高さD2が一定である第2突出一定部を有し、ブリッジ32は、基準面12cに対する突出高さD3が一定である第3突出一定部を有し、第1突出一定部の突出高さD1は、第2突出一定部の突出高さD2よりも大きく、第3突出一定部の突出高さD3は、第1突出一定部及び第2突出一定部のいずれの突出高さ(D1,D2)よりも小さい、としてもよい。
この構成によれば、本体30、輪郭31及びブリッジ32の各々に突出一定部が設けられているので、本体30、輪郭31及びブリッジ32の各々の幅を確保でき、視認性を向上可能となる。
【0048】
図4に示す変形例のように、本体30の基準面12cに対する突出高さD1は、輪郭31の基準面12cに対する突出高さよりD2も小さく、本体30にはセレーションが形成されている、としてもよい。
この構成によれば、本体30の基準面12cに対する突出高さD1が、輪郭31の基準面12cに対する突出高さD2よりも小さいので、タイヤの加硫時にエアを抱き込みやすい問題を招来し得るが、本体30にセレーションを形成しているので、セレーションに沿ってエアが抜けやすくなり、エア入りを抑制可能となる。なお、金型には、最も突出している部位(図4の例では輪郭31)にエア抜きのベントホールが設けられるためである。
【0049】
図1~3に示す第1実施形態又は図5に示す変形例の文字「R」のように、標章3は、文字を表し、文字は、文字の線が閉空間34を形成し、ブリッジ32は、閉空間34の少なくとも一部に設けられている、としてもよい。
文字の線が形成する閉空間34内は狭くなる傾向がある。上記構成によれば、このような閉空間34を形成する文字をサイドウォール12に設ける場合であっても、閉空間34の少なくとも一部にブリッジ32が設けられているので、耐クラック性能を適切に向上可能となる。
【0050】
図5に示す変形例の文字「A」のように、標章3は、文字を表し、標章3は、文字の線を分断する帯状の分断部33を有し、ブリッジ32は、分断部33の少なくとも一部に設けられている、としてもよい。
この構成によれば、分断部33によって見栄えを向上させると共に、分断部33によって招来され得るクラックをブリッジ32によって抑制可能となる。
【0051】
図5に示す変形例の文字「A」及び文字「T」のように、標章3は、タイヤ周方向CDに並ぶ第1文字(A)と第2文字(T)とを表し、ブリッジ32は、第1文字(A)の輪郭31と第2文字(T)の輪郭31とを接続する、としてもよい。
この構成によれば、第1文字と第2文字の間をブリッジ32が接続するので、耐クラック性能を向上可能となる。
【0052】
以上、本開示の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0053】
上記の各実施形態で採用している構造を他の任意の実施形態に採用することは可能である。各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0054】
12…サイドウォール、12c…基準面、3…標章、30…本体、31…輪郭、32…ブリッジ、33…分断部、34…閉空間、AD…タイヤ軸方向、CD…タイヤ周方向、RD…タイヤ径方向、D1,D2,D3…突出高さ。
図1
図2
図3
図4
図5