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特開2022-166693光センサ、電子機器、距離算出方法、および、プログラムの記録媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022166693
(43)【公開日】2022-11-02
(54)【発明の名称】光センサ、電子機器、距離算出方法、および、プログラムの記録媒体
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/4865 20200101AFI20221026BHJP
   G01C 3/06 20060101ALI20221026BHJP
【FI】
G01S7/4865
G01C3/06 120Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021072082
(22)【出願日】2021-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】319006047
【氏名又は名称】シャープセミコンダクターイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】田中 真美
(72)【発明者】
【氏名】岩森 光司
(72)【発明者】
【氏名】岡田 教和
【テーマコード(参考)】
2F112
5J084
【Fターム(参考)】
2F112AD01
2F112BA06
2F112CA12
2F112EA05
2F112FA14
2F112FA41
5J084AA05
5J084AD01
5J084BA52
5J084CA03
5J084CA19
5J084CA25
5J084CA32
5J084CA53
5J084EA04
(57)【要約】
【課題】物体との距離を高精度に算出する。
【解決手段】光センサ(1)は、物体に光を照射する発光素子(13)と、物体からの反射光を受光する信号光受光部(21)と、光照射から反射光受光までの時間と反射光の強度との関係を示すヒストグラムを生成するヒストグラム生成部(25)と、ヒストグラムの歪度を算出し、ヒストグラムおよび歪度を参照して、光センサと物体との距離を算出する演算部(26)と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光センサであって、
物体が存在する領域に光を照射する発光素子と、
前記物体からの反射光を受光する受光素子と、
前記発光素子が前記光を照射してから前記受光素子が前記反射光を受光するまでの時間と、前記受光素子が受光した前記反射光の強度との関係を示すヒストグラムを生成する生成部と、
前記ヒストグラムの歪度を算出する第1演算部と、
前記ヒストグラムおよび前記歪度を参照して、前記光センサと前記物体との間の距離を算出する第2演算部と、
を備えることを特徴とする光センサ。
【請求項2】
前記第2演算部は、前記ヒストグラムの重心と、前記歪度に歪み係数を乗じた値とを用いて、前記距離を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の光センサ。
【請求項3】
前記生成部は、移動する前の前記物体に対応する第1のヒストグラムと、移動した後の前記物体に対応する第2のヒストグラムとを、それぞれ生成し、
前記第2演算部は、前記第1のヒストグラムと、前記第2のヒストグラムとの間の差分を参照して前記距離を算出する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の光センサ。
【請求項4】
前記物体が存在し得る範囲に関する情報を取得する取得部を備え、
前記第1演算部は、前記物体が存在し得る範囲に関する情報を参照して、前記歪度を算出する
ことを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の光センサ。
【請求項5】
前記物体が存在し得る範囲に関する情報を取得する取得部を備え、
前記第2演算部は、前記物体が存在し得る範囲に関する情報に応じた前記歪み係数を用いる
ことを特徴とする請求項2に記載の光センサ。
【請求項6】
異なる検出角度を有する複数の前記受光素子を備える
ことを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の光センサ。
【請求項7】
前記第2演算部により算出された前記距離と、当該距離の閾値とを比較して、前記物体を検出したか否かを判定する判定部を備える
ことを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の光センサ。
【請求項8】
前記第1演算部は、前記反射光の強度に応じて前記閾値を調整する
ことを特徴とする請求項7に記載の光センサ。
【請求項9】
請求項1から8の何れか1項に記載の光センサを備える電子機器。
【請求項10】
物体が存在する領域に光を照射する発光素子と、
前記物体からの反射光を受光する受光素子と、
を備えた光センサの距離算出方法であって、
前記発光素子が前記光を照射してから前記受光素子が前記反射光を受光するまでの時間と、前記受光素子が受光した前記反射光の強度との関係を示すヒストグラムを生成する生成ステップと、
前記ヒストグラムの歪度を算出する第1演算ステップと、
前記ヒストグラムおよび前記歪度を参照して、前記光センサと前記物体との間の距離を算出する第2演算ステップと、
を含むことを特徴とする距離算出方法。
【請求項11】
請求項1から8の何れか1項に記載の光センサとしてコンピュータを機能させるためのプログラムの記録媒体であって、前記生成部、前記第1演算部、および、前記第2演算部としてコンピュータを機能させるためのプログラムの記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光センサ、電子機器、距離算出方法、および、プログラムの記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
ToF(Time of Flight)センサによる対象物の距離算出では、一例としてTDC(Time to Digital Convertor)回路により、光を照射してから対象物からの反射光を受光するまでの時間(光の飛行時間)ごとに、当該反射光をカウントして、ヒストグラム化する。そして、この光の飛行時間のうち、カウントが最大の時間を用いて、センサから対象物までの距離を算出する。
【0003】
例えば、特許文献1には、対象物の反射光成分以外の、センサカバーによるクロストーク成分や外乱光成分を減算する方法が開示されている。詳細には、カメラの分解能の向上に伴う測定時間の改善のために、発光素子から照射されたパルス光が対象物で反射して第1受光部に入射する反射光と、発光素子から照射されたパルス光が第2受光部に直接入射する参照光(センサ内部のクロストーク)とを演算して、センサから対象物までの距離を算出している。このようにして、反射光成分から参照光成分を減算することにより、反射光成分の精度が向上することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6709335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術では、複数の対象物からの反射光成分がヒストグラム内に混在した場合において、1つの対象物の距離算出精度を上げることはできないという問題がある。反射光と参照光との演算を行ったとしても、対象物の周囲に対象物以外の物体(以下、非対象物という)が存在する場合、対象物からの反射光に非対象物からの反射光が混入するため、精度よく対象物までの距離を算出できないためである。
【0006】
本発明の一態様は、対象物の周囲に非対象物が存在していても、対象物までの距離を高精度に算出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る光センサは、光センサであって、物体が存在する領域に光を照射する発光素子と、前記物体からの反射光を受光する受光素子と、前記発光素子が前記光を照射してから前記受光素子が前記反射光を受光するまでの時間と、前記受光素子が受光した前記反射光の強度との関係を示すヒストグラムを生成する生成部と、前記ヒストグラムの歪度を算出する第1演算部と、前記ヒストグラムおよび前記歪度を参照して、前記光センサと前記物体との間の距離を算出する第2演算部と、を備える。
【0008】
また、本発明の一態様に係る距離算出方法は、物体との距離を測定する光センサであって、前記物体が存在する領域に光を照射する発光素子と、前記物体からの反射光を受光する受光素子と、を備えた光センサの距離算出方法であって、前記発光素子が前記光を照射してから前記受光素子が前記反射光を受光するまでの時間と、前記受光素子が受光した前記反射光の強度との関係を示すヒストグラムを生成する生成ステップと、前記生成ステップにおいて生成されたヒストグラムの、正規分布からの歪みの度合を示す歪度を算出する第1演算ステップと、前記第1演算ステップにおいて算出された歪度を用いて、前記生成ステップにおいて生成されたヒストグラムを補正して、当該ヒストグラムから、当該光センサと前記物体との間の距離を算出する第2演算ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、対象物までの距離を高精度に算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態1に係る光センサの構成を示すブロック図である。
図2】本発明の実施形態1に係るヒストグラムのイメージを示す図である。
図3】本発明の実施形態1に係る光センサの処理を示すフローチャートである。
図4】本発明の実施形態1に係る具体例を示す図である。
図5】本発明の実施形態2に係る光センサ、対象物、および、非対象物間の距離のヒストグラムを示す図である。
図6】本発明の実施形態2に係る光センサの処理を示すフローチャートである。
図7】本発明の実施形態2に係る具体例を示す図である。
図8】本発明の実施形態3に係る光センサの構成を示すブロック図である。
図9】本発明の実施形態6に係る光センサの構成を示すブロック図である。
図10】本発明の実施形態6に係る距離の違いによる、光センサが検出する信号量の変化を示す図である。
図11】本発明の実施形態6に係る光センサの処理を示すフローチャートである。
図12】本発明の実施形態6に係る具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔実施形態1〕
以下、本発明の実施形態1について、詳細に説明する。
【0012】
(光センサ1の構成)
図1は、本実施形態に係る光センサ1の構成を示すブロック図である。光センサ1は、ToFセンサであり、光を照射してから物体からの反射光を受光するまでの時間に基づいて、物体までの距離を測定する。
【0013】
図1に示すように、光センサ1は、基準パルス生成部11、ドライバ12、発光素子13、信号光受光部(受光素子)21、第1TDC22、参照光受光部(受光素子)23、第2TDC24、ヒストグラム生成部(生成部)25、および、演算部(第1演算部、第2演算部)26を備えている。
【0014】
基準パルス生成部11は、ドライバ12に波形の基準パルスを与える。また、基準パルス生成部11は、第1TDC22、および、第2TDC24に基準クロック信号を与える。
【0015】
ドライバ12は、基準パルス生成部11からの基準パルスに基づいて、発光素子13にパルス光を照射させる。発光素子13は、対象物(物体)2が存在する領域に光を照射する。発光素子13から照射されたパルス光は、対象物2および非対象物3でそれぞれ反射して信号光受光部21に入射する。また、発光素子13から照射されたパルス光は、参照光受光部23に直接入射する。以下、参照光受光部23に直接入射する光を「参照光」と称する。
【0016】
信号光受光部21は、対象物2および非対象物3からの反射光を受光する受光素子であり、対象物2および非対象物3からの反射光に対して同期するパルスを第1TDC22に対して出力する。第1TDC22は、信号光受光部21が出力するパルスのパルス出力時刻を示すタイムスタンプをヒストグラム生成部25に出力する。
【0017】
参照光受光部23は、発光素子13からの参照光に対して同期するパルスを第2TDC24に対して出力する。第2TDC24は、参照光受光部23が出力するパルスのパルス出力時刻を示すタイムスタンプをヒストグラム生成部25に出力する。
【0018】
ヒストグラム生成部25は、発光素子13が光を照射してから信号光受光部21が反射光を受光するまでの時間と、信号光受光部21が受光した反射光の強度との関係を示すヒストグラムを生成する。具体的には、ヒストグラム生成部25は、第1TDC22からタイムスタンプを受け取り、当該タイムスタンプに対応する測定間隔であるビンにおけるカウント値を増やす。そして、ヒストグラム生成部25は、タイムスタンプを所定周期カウントして、そのカウントに基づいてヒストグラムを生成する。ヒストグラム生成部25は、第2TDC24からもタイムスタンプを受け取り、上記と同様の処理を行って、ヒストグラムを生成する。なお、反射光の強度は、ビンにおけるカウント値に比例する。
【0019】
演算部26は、ヒストグラム生成部25により生成されたヒストグラムのうち、第1TDC22からのタイムスタンプによるヒストグラムに対し、第2TDC24からのタイムスタンプによるヒストグラムの重心位置を原点とし、前者のヒストグラムの重心位置と、後者のヒストグラムの重心位置との差分から検出距離を算出する。
【0020】
次に、演算部(第1演算部)26は、上記原点設定されたヒストグラムの、正規分布からの歪みの度合を示す歪度を算出する。そして、演算部(第2演算部)26は、ヒストグラム生成部25により生成されたヒストグラム、および、算出された歪度を参照して、光センサ1と対象物2との間の距離を算出する。
【0021】
なお、光センサ1は、I2C(Inter-Integrated Circuit)通信により、算出した距離のデータを近距離にある他のデバイス(例えば、同じ基板上のメモリなど)に出力してもよい。
【0022】
図2は、本実施形態に係るヒストグラムのイメージを示す図である。光センサ1は、上記の距離検出の仕組みを持つため、ヒストグラムのセンシング範囲内において対象物2以外の物体である非対象物3が混在する場合、図2に示すように、光センサ1の信号光受光部21が取得する信号には、対象物2および非対象物3からの反射光成分が合成される。従って、ビンごとに信号をカウントした結果を示すヒストグラムは歪んだ形をとる。
【0023】
すなわち、図2において、ヒストグラムの重心の位置がずれるため、度数がピークになる階級がずれてしまう。当該ヒストグラムでは、階級に対応する、光を照射してから反射光を受光するまでの時間が精確に特定できないので、高精度な距離算出はできない。
【0024】
本実施形態では、この重心位置のずれに対応するため、光センサ1により得られた複数物体が混在したヒストグラムの歪み具合を歪度として求め、距離算出の際に歪度に応じた補正をかけ、距離算出の精度向上を図る。
【0025】
(歪度の説明)
「歪度」とは、統計学的手法として、分布図(ヒストグラム)がどれだけ正規分布から歪んでいるかを示す値である。図2に示すように、後ろに裾が引き前のめりになったヒストグラムでは、歪度は正の値(例えば、0.76)になる。また、前に裾が引き後ろのめりになったヒストグラムでは、歪度は負の値(例えば、-0.76)になる。各傾向が強まるほど、その絶対値が大きくなるという指標である。
【0026】
ヒストグラム形状の崩れ度合を歪度β1 1/2により定量化し、β1 1/2を用いて物体までの距離値を補正して対象物を検出する。β1 1/2は、式(1)により算出される。bは、ヒストグラムのbin間隔(測定間隔)の区間番号である。nは、各binにおける信号量(測定間隔よりも短い単位時間あたりのタイムスタンプのカウント値)である。μは、区間番号bの平均値である。すなわち、μは、信号の発生頻度が最大となる区間番号である。σは、区間番号bの分散の正の平方根(すなわち、標準偏差)である。
【0027】
【数1】
【0028】
歪度β1 1/2を用いて、対象物2の方向への距離値を補正することにより、より高精度な距離算出を可能とする。また、歪度β1 1/2を用いて、物体検出の判定に係る閾値を定めることにより、非対象物に左右されにくい物体検出を可能とする。
【0029】
(光センサ1の処理)
図3は、本実施形態に係る光センサ1の処理を示すフローチャートである。図3に従って、光センサ1の処理を説明する。
【0030】
(ステップS11:生成ステップ)
光センサ1において、ヒストグラム生成部25は、光センサ1外部の信号光を受光する信号光受光部21からの信号に基づいて、ヒストグラムを生成する。また、ヒストグラム生成部25は、光センサ1内部の参照光を受光する参照光受光部23からの信号に基づいて、ヒストグラムを生成する。
【0031】
(ステップS12)
演算部26は、ステップS11において生成された、信号光に基づくヒストグラムの重心位置から、参照光に基づくヒストグラムの重心位置を減算する。これにより、ヒストグラムにおいて、原点位置を設定することができる。本実施形態では、このヒストグラムを、ステップS13およびS14において用いる。
【0032】
(ステップS13:第1演算ステップ)
演算部26は、式(1)を用いて、ステップS12において原点位置が設定された結果のヒストグラムから歪度を算出する。
【0033】
(ステップS14:第2演算ステップ)
演算部26は、ステップS12において原点位置が設定された結果のヒストグラムと、ステップS13において算出された歪度と、所定の歪み係数とを参照して、光センサ1と、対象物2との間の距離を算出する。詳細には、演算部26は、ヒストグラムから距離を算出し、歪度および歪み係数を用いて、当該距離を補正する。例えば、式(2)に示すように、演算部26は、ヒストグラムの重心位置Ghistにヒストグラム幅Wを乗じた距離値Rangeを算出し、当該距離値Rangeを、歪度β1 1/2に歪み係数Kを乗じた値により補正する。
【0034】
【数2】
【0035】
歪み係数Kは、例えば、実験的に求められた数値を用いてもよく、光センサ1の測定範囲などに応じて適宜設定しうる。
【0036】
以上により、光センサ1は、対象物2までの距離を高精度に算出することができる。
【0037】
上記では、参照光を原点情報として用いる場合について説明したが、本実施形態はこれに限定されず、例えば、変形例として、発光素子13からの参照光に関連する部材(例えば、参照光受光部23、第2TDC24など)および工程(例えば、参照光に基づくヒストグラムの生成(ステップS11の後半)、原点設定(ステップS12)など)を省略し、ステップS11の前半において生成した信号光に基づくヒストグラムを、ステップS13およびS14において用いてもよい。
【0038】
<実施例1>
図4は、本実施形態に係る具体例を説明する為の図である。図4に示す例では、対象物2は透明であり、床である非対象物3の上に載置されている。
【0039】
図4に示す例において、本実施形態に係る光センサ1は、対象物2の反射光と、非対象物3の反射光とが混在するヒストグラムの歪みを求め、式(3)を用いて、対象物2までの距離値Rangeを補正した。
【0040】
【数3】
【0041】
ここで、Ghistは、ヒストグラムの重心位置である。7.5は、ヒストグラム幅である。13.9は、歪み係数である。
【0042】
なお、従来方法での距離算出を式(4)に示す。
【0043】
【数4】
【0044】
光センサ1の演算部26(第2演算部)は、ヒストグラムの重心と、歪度に歪み係数を乗じた値とを用いて、光センサ1と、対象物2との間の距離を算出した。詳細には、演算部26は、式(3)に示すように、式(4)の距離Rangeに対して、歪度と、歪み係数とを掛けた積を加算した。
【0045】
図4の混在状態における歪度β1 1/2は-1.06となり、対象物2の信号だけでなく、非対象物3の信号が混ざっており、前に裾をひいた非対象物3の信号が優位になっているヒストグラムになっていることが判断できた。
【0046】
式(3)による裾引き分の重心位置を補正した算出距離値はA’1で示す位置となり、対象物2内での反射や非対象物3による反射の影響が強く、そもそもの距離検出が困難な透明な対象物2においても、式(4)による補正前の混在状態での算出距離値A1の位置と比較して、光センサ1と対象物2との間の理論距離値P1に近い距離の算出が可能になった。
【0047】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、実施形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0048】
光センサ1で対象物2を検出する際に、光センサ1が対象物2に接近した場合、光センサ1における受光に関しては、対象物2からの信号量が大きく変化し、一方、非対象物3からの信号量があまり変化しない傾向がある。本実施形態では、ヒストグラム生成部25は、光センサ1が移動する前の対象物2および非対象物3に対応する第1のヒストグラムと、光センサ1が移動した後の対象物2および非対象物3に対応する第2のヒストグラムとを、それぞれ生成する。演算部(第2演算部)26は、第1のヒストグラムと、第2のヒストグラムとの間の差分を参照して、光センサ1と、対象物2との間の距離を算出する。当該差分には対象物2の信号成分が残るので、当該距離を精度高く算出することができる。
【0049】
図5は、本実施形態に係る光センサ1、対象物2、および、非対象物3間の距離のヒストグラムを示す図であり、横軸はbin間隔(測定間隔)の区間番号を示し、縦軸は対象物及び又は非対象物から受光した信号量を示している。図5に示すように、ヒストグラム1(Hist1)は、移動前の対象物と非対象物とが混在した状態におけるヒストグラムであり、プロットマークが付与されていない実線で示されている。ヒストグラム2(Hist2)は、移動後の対象物と非対象物とが混在した状態におけるヒストグラムであり、プロットマークが付与されていない点線で示されている。ヒストグラム3(Hist3)は、ヒストグラム2からヒストグラム1から減算して生成されたヒストグラムであり、四角のプロットマークが付与された一点鎖線で示されている。
【0050】
図5において、ヒストグラム1と、ヒストグラム2とを比較すると、光センサ1または対象物2の移動により、光センサ1と対象物2との間の距離が短くなった場合のヒストグラム2は、移動前で当該距離が長い場合のヒストグラム1よりも対象物2の信号量が多い。図5の三角のグラフに示すように、移動の前後で光センサ1が対象物2から受け取る信号量に大きな差があることが分かる。これは、光の強さは光源からの距離の二乗に反比例するので、当該距離が短いほど光の強さを示す信号量が大きくなるためである。一方、図5の丸のグラフに示すように、移動の前後で光センサ1が非対象物3から受け取る信号量はあまり変化しない。また、対象物2と、非対象物3と、対象物2および非対象物3の混合状態とのそれぞれで信号量が異なるため、図5に示すように、混合状態のヒストグラムは歪んだ形を取りやすい。
【0051】
そこで、図5が示す、ヒストグラム2からヒストグラム1を減算することにより、ヒストグラム3を生成する。これにより、精度高く、光センサ1と対象物2との間の距離を算出することができる。
【0052】
光センサ1が対象物2に接近した場合、光センサ1が移動する前後において、図5の三角のグラフに示すように、光センサ1に近い対象物2の信号量は大きく増加するのに対し、図5の丸のグラフに示すように、光センサ1から離れた非対象物3の信号量はあまり変化しない。
【0053】
従って、上記の減算により、非対象物3の信号成分はほぼ相殺されるとともに、対象物2の信号成分は、多い信号量から少ない信号量が引かれるので、対象物2の大方の信号成分が残ることになる。これにより、精度よく距離を算出することができる。なお、必ずしも、演算部26は、移動後のヒストグラムから移動前のヒストグラムを減算するのではなく、移動前のヒストグラムおよび移動後のヒストグラムのうち、信号量の多いヒストグラムから信号量の少ないヒストグラムを減算するようにしてもよい。
【0054】
(光センサ1の処理)
図6は、本実施形態に係る光センサ1の処理を示すフローチャートである。図6に従って、光センサ1の処理を説明する。
【0055】
(ステップS21)
対象物2が移動する前に、光センサ1において、ヒストグラム生成部25は、光センサ1外部の信号光を受光する信号光受光部21からの信号に基づいて、ヒストグラムを生成する。また、ヒストグラム生成部25は、光センサ1内部の参照光を受光する参照光受光部23からの信号に基づいて、ヒストグラムを生成する。そして、演算部26は、生成された、信号光に基づくヒストグラムの重心位置から、参照光に基づくヒストグラムの重心位置を減算する。これにより、移動前のヒストグラム1(Hist1:図5における移動前の混在状態の実線)において、原点位置を設定することができる。
【0056】
(ステップS22)
対象物2が移動した後に、光センサ1において、ヒストグラム生成部25は、光センサ1外部の信号光を受光する信号光受光部21からの信号に基づいて、ヒストグラムを生成する。また、ヒストグラム生成部25は、光センサ1内部の参照光を受光する参照光受光部23からの信号に基づいて、ヒストグラムを生成する。そして、演算部26は、生成された、信号光に基づくヒストグラムの重心位置から、参照光に基づくヒストグラムの重心位置を減算する。これにより、移動後のヒストグラム2(Hist2:図5における移動後の混在状態の破線)において、原点位置を設定することができる。
【0057】
(ステップS23)
演算部26は、実施形態1の式(1)を用いて、ステップS21で得られたヒストグラム1から歪度を算出する。
【0058】
(ステップS24)
演算部26は、ステップS22で得られたヒストグラム2から、ステップS21で得られたヒストグラム1を減算し、信号取り出し用のヒストグラム3(Hist3:図5における対象検出物の信号差分の一点鎖線)を生成する。
【0059】
この場合、非対象物3が対象物2よりも後方に存在するとしたら、図5の移動前および移動後の非対象物のグラフに示すように、非対象物3の位置は略一定とみなされ、信号量も略一定となる。また、光の強さである信号量は、距離の二乗に反比例する。従って、混合状態の移動後ヒストグラム2から混合状態の移動前ヒストグラム1を減算することにより、模式的に対象物2のみの移動後ヒストグラムであって、信号取り出し用のヒストグラム3が生成される。
【0060】
(ステップS25)
演算部26は、ステップS24において生成された信号取り出し用のヒストグラム3から、光センサ1と、対象物2との間の距離値を算出し、ステップS23において算出された歪度と、所定の歪み係数とを用いて、当該距離値を補正する。
【0061】
<実施例2>
図7は、本実施形態に係る具体例を示す図である。本実施形態の具体例として、対象物2と、非対象物3とが混在するヒストグラムにおいて、移動前後の信号を減算した事例を説明する。
【0062】
図7に示すように、減算前と比較して、減算後は、裾引き成分が除外されることで対象物2のみのヒストグラムにより近い形をとり、対象物成分が支配的になっていた。
【0063】
従来のヒストグラムを元に重心を算出すると7.3bin位置であったが、減算後のヒストグラムを元に重心を算出すると5.7bin位置となり、本実施例での理想値3.7binに近い値となった。
【0064】
従来のヒストグラムを元に従来方式で計算すると、A2で示す距離となった。歪度による補正を与えた実施例1では、図4で示すA’1で示す距離であったことと比較して、差分後のヒストグラムを元に式(1)、式(2)を計算すると、図7で示すA’2で示す距離となり、精度向上に有効であった(図7参照)。
【0065】
ここで、bはヒストグラムのbin間隔(測定間隔)の区間番号、nは1binにおける信号量である。μは、区間bにおける平均値である。σは、区間bにおける分散の正の平方根である。Ghistは、ヒストグラムの重心位置である。7.5は、ヒストグラム幅である。13.9は、歪み係数である。
【0066】
〔実施形態3〕
本発明の実施形態3について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、実施形態1、2にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0067】
図8は、本実施形態に係る光センサ1aの構成を示すブロック図である。光センサ1aは、対象物(物体)2が存在し得る範囲に関する範囲関連情報を取得する情報取得部(取得部)30をさらに備えており、演算部26は、範囲関連情報を参照して、歪度を算出する。詳細には、演算部26は、歪度の算出に用いるヒストグラムの要素範囲(上述した式(1)のΣの範囲)を、対象物2が存在し得る範囲に対応するように設定する。これにより、算出される距離の精度が向上する。
【0068】
一態様において、情報取得部30は、ユーザまたは他の装置から、範囲関連情報の入力を受け付けるように構成されていてもよい。範囲関連情報としては、例えば、光センサ1aと対象物2との想定される初期位置関係や、光センサ1aまたは対象物2の移動距離、光センサ1に求められる測定範囲等が挙げられる。なお、測定範囲は、光センサ1aの用途に応じて、任意で決められる範囲であり、光センサ1aの性能によって規定される検出範囲と重複する範囲である。
【0069】
また、一態様において、情報取得部30は、対象物2の位置を規定するような非対象物3の位置を検出し、非対象物3の位置に基づいて範囲関連情報を取得するものであってもよい。例えば、対象物2が非対象物3の上に配置されるものである場合や、対象物2が非対象物3の中に配置されるものである場合に、情報取得部30は、非対象物3の位置に基づいて、対象物2が存在し得る範囲に関する範囲関連情報を取得することができる。例えば、光センサ1aのキャリブレーション時に、光センサ1aが対象物2の替りに非対象物3までの距離を測定し、情報取得部30はその結果に基づいて、範囲関連情報を取得してもよい。
【0070】
上記の構成によれば、演算部26が、歪度の算出に用いるヒストグラムの要素範囲(上述した式(1)のΣの範囲)を、対象物2が存在し得る範囲に対応するように設定することで、歪度の算出時に、対象物2が存在し得る範囲の外に存在する非対象物3からの反射光の影響を極力排除することができる。これにより、算出される距離の精度が向上する。
【0071】
〔実施形態4〕
本発明の実施形態4について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、実施形態1~3にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0072】
本実施形態では、実施形態3と同様、光センサ1aは、対象物(物体)2が存在し得る範囲に関する範囲関連情報を取得する情報取得部(取得部)30をさらに備えている。そして、光センサ1aの演算部26は、対象物2が存在し得る範囲に関する情報に応じた歪み係数を用いて、距離を算出する。これにより、算出される距離の精度が向上する。
【0073】
光センサ1aは、通常、光センサ1aから延びる中心軸を備える検出範囲を有している。この検出範囲は、略円錐形で表される場合もあれば、光センサ1上に設けられた窓の形状により略立体の形状で表される場合もある。対象物2および非対象物3に光センサ1aを近づけた場合、接近前と比べて光センサ1aの検出範囲が限定され、検出範囲内における非対象物3と対象物2の混在物体が占める空間の割合が増える。このように、光センサ1aと対象物2とが接近状態にあるときに、演算部26が距離を演算する際の歪補正量が増えるよう歪み係数を設定することで、実距離に近い解が得られる。
【0074】
一例として、対象物2が非対象物3の上に配置される場合において、情報取得部30は、範囲関連情報として、光センサ1aと非対象物3との距離を取得し、演算部26は、光センサ1と非対象物3との距離が閾値未満である場合には、上述した式(2)のKをK1に設定し、光センサ1aと非対象物3との距離が閾値以上である場合には、上述した式(2)のKをK2(K1>K2)に設定してもよい。すなわち、演算部26は、対象物2が存在し得る範囲が光センサ1aに近いほど、歪み係数が高くなるように歪み係数を設定することができる。演算部26は、対象物2が存在し得る範囲が光センサ1aに近いほど、歪み係数を2段階以上の段階的に変化させてもよいし、歪み係数を漸増させてもよい。演算部26によって設定される歪み係数の値は、例えば、実験的に求めてもよい。
【0075】
〔実施形態5〕
本発明の実施形態5について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、実施形態1~4にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0076】
本実施形態では、光センサ1は、信号光受光部21として、異なる検出角度を有する複数の受光素子を備えている。従って、当該複数の受光素子は、対象物2および非対象物3からの信号光を、異なる検出角度ごとに検出する。
【0077】
上記の構成によれば、対象物2および非対象物3からの信号光を、異なる検出角度ごとに検出することにより、高精度に、光センサ1と、対象物2との間の距離を算出することができる。また、発光素子13、または、信号光受光部21が異なる入射角度、または、検出角度を有していることにより、選択的に検出距離の精度を上げることが可能である。
【0078】
本実施形態を用いた対象物2の縁検知を例とする。当該対象物2の位置関係は固定されておらず、光センサ1に対する対象物2の位置も拘束されていない状態において、光センサ1が異なる検出角度を有する信号光受光部21を備えることにより、適切に対象物2を捉えた受光素子の信号を活用した、距離の算出が可能になる。これにより、対象物2の位置変動に対する耐性の向上を図ることができる。換言すれば、光センサ1が異なる検出角度を有する複数の受光素子を備えているため、対象物2の位置が変動したとしても、何れかの受光素子が適切な角度で受光し、その受光素子の信号を用いるので、距離算出の高精度を維持することができる。また、本実施形態の構成は、単一角度の受光素子を備える構成よりも、高精度に距離を算出可能な、対象物2の範囲が広くなるので、非常に有効である。
【0079】
〔実施形態6〕
本発明の実施形態6について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、実施形態1~5にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0080】
本実施形態は、例えば、光センサ1bを備える電子機器に適用される。電子機器は、一例として、対象物が所定距離以内にある場合に、特定の動作を行う浄水器や測量機器などが挙げられるが、これらの電子機器に限定されない。
【0081】
図9は、本実施形態に係る光センサ1bの構成を示すブロック図である。図1と、図9とを比較すると分かるように、光センサ1bは、光センサ1に対して、判定部27をさらに備える。判定部27は、演算部(第2演算部)26により算出された、光センサ1bと対象物2との間の距離と、当該距離の閾値とを比較して、対象物2を検出したか否かを判定する。詳細には、判定部27は、光センサ1bと、対象物2との間の距離が閾値以下である場合に、対象物2を検出する。
【0082】
図10は、本実施形態に係る光センサ1bと対象物2との間の距離の違いによる、光センサ1bが検出する信号量の変化を示す図である。図10に示すように、光センサ1bと、対象物2とが近付くほど、信号量は増加する。一方、光センサ1bと、対象物2とが遠ざかるほど、信号量は減少する。信号量が減少すると、信号光と、周辺のノイズ光との差が小さくなるので、ノイズ光を無視することができなくなる。光センサ1bが検出する信号量は、対象物2および非対象物3の反射率の大小によっても、変動しうる。
【0083】
このような特性があるため、演算部(第1演算部)26は、対象物2からの反射光の強度に応じて、距離の閾値を調整するようにしてもよい。例えば、検出信号量が多い(反射光が強い)場合には、SN比がよいことになるので、演算部26は、所定の動作を行うに適した理想距離に近い閾値を設定する。一方、検出信号量が少ない(反射光が弱い)場合、ノイズ光の影響により、そのノイズ光の光源までの距離分だけ距離を長く算出してしまう可能性があるため、演算部26は、閾値を上述した理想距離よりも大きく設定する。これにより、ノイズ光への耐性の向上を図ることができる。
【0084】
(光センサ1bの処理)
図11は、本実施形態に係る光センサ1bの処理を示すフローチャートである。図11に従って、光センサ1bの処理を説明する。
【0085】
(ステップS61)
対象物2が移動する前に、光センサ1bにおいて、ヒストグラム生成部25は、光センサ1b外部の信号光を受光する信号光受光部21からの信号に基づいて、ヒストグラムを生成する。また、ヒストグラム生成部25は、光センサ1b内部の参照光を受光する参照光受光部23からの信号に基づいて、ヒストグラムを生成する。そして、演算部26は、生成された、信号光に基づくヒストグラムの重心位置から、参照光に基づくヒストグラムの重心位置を減算する。これにより、移動前のヒストグラム1において、原点位置を設定することができる。
【0086】
(ステップS62)
対象物2が移動した後に、光センサ1bにおいて、ヒストグラム生成部25は、光センサ1b外部の信号光を受光する信号光受光部21からの信号に基づいて、ヒストグラムを生成する。また、ヒストグラム生成部25は、光センサ1b内部の参照光を受光する参照光受光部23からの信号に基づいて、ヒストグラムを生成する。そして、演算部26は、生成された、信号光に基づくヒストグラムの重心位置から、参照光に基づくヒストグラムの重心位置を減算する。これにより、移動後のヒストグラム2において、原点位置を設定することができる。
【0087】
(ステップS63)
演算部26は、ステップS61で得られたヒストグラム1、および、ステップS62で得られた結果のヒストグラム2の信号量に応じて、検出判定用の距離値である閾値を調整する。なお、演算部26は、信号量だけでなく、光センサ1bの高さ(または、移動量)にも応じて閾値を調整してもよい。この場合、光センサ1bは、情報取得部30をさらに備える。そして、演算部26は、情報取得部30から光センサ1bの高さ(または、光センサ1bの移動量)を取得する。そして、演算部26は、光センサ1bの位置が想定されるノイズ光の光源(例えば、反射光の光源となる床面)から遠いほど、閾値が大きくなるように調整する。
【0088】
(ステップS64)
演算部26は、実施形態1の式(1)を用いて、ステップS61で得られたヒストグラム1、および、ステップS62で得られた結果のヒストグラム2から、それぞれ歪度を算出する。
【0089】
(ステップS65)
演算部26は、ステップS62で得られたヒストグラム2から、ステップS61で得られたヒストグラム1を減算し、信号取り出し用のヒストグラム3を生成する。
【0090】
(ステップS66)
演算部26は、ステップS64において算出された歪度と、所定の歪み係数とを用いて、ステップS65において生成された信号取り出し用のヒストグラム3の歪みを補正して、当該ヒストグラム3から、光センサ1bと、対象物2との間の距離値を算出する。
【0091】
(ステップS67)
判定部27は、ステップS66で算出された距離値と、ステップS63で調整された閾値とを比較して、対象物2の検出または非検出を判定する。
【0092】
詳細には、判定部27は、ステップS66で算出された距離値が、ステップS63で調整された閾値以下であるか否かを判定する。距離値が閾値以下の場合に、判定部27は、対象物2を検出したと判定する。距離値が閾値より大きい場合に、判定部27は、対象物2を検出していないと判定する。なお、距離値が閾値以下になった場合でも、対象物2との距離が小さくなっていれば、光の距離二乗則により信号が大きくなるはずにもかかわらず、ヒストグラム2の信号量<ヒストグラム1の信号量となっていた場合、判定部27は、対象物2の検出を無効としてもよい。
【0093】
<実施例3>
本実施形態の効果をより具体的に説明するために、対象物2と非対象物3とが混在する環境において、異なる材料からなる対象物2の先端検出を行った事例を説明する。
【0094】
図12は、異なる材料からなる対象物2に対して光センサ1bが移動しているときの信号量の変化と、算出される距離値の変化と示す図である。図12において、一点鎖線で示される距離が算出されることが理想である。また、材料2は、材料1に比べて反射率が高い物質である。なお、対象物2の材料以外に、色や形状によっても、対象物2の反射率は変化する。
【0095】
光センサ1bと対象物2とが近付いている場合には、ノイズの影響が少なく、光センサ1bは、対象物2のより正確な距離値を算出しやすい。図12の破線のグラフで示すように、光センサ1bと対象物2とが近付く(横軸の距離が小さくなる)ほど、二乗に近い形で信号量が増えていくので、ノイズなどの影響が少なく、対象物2から反射光を捉えられていることが分かる。
【0096】
それに対して、光センサ1bと対象物2とが遠ざかっている場合や、対象物2の材料(素材)が異なっている場合には、ノイズの影響が大きく、光センサ1bは、非対象物3の影響が大きい距離値を算出しやすい。図12の白丸のプロットマークが付されているグラフに示すように、反射率の低い材料1では、反射率の高い材料2と比較して、距離が短い位置になってからでなければ信号量の立ち上がりが起きないことから、ノイズの影響が大きいことが分かる。また、図12の白三角のプロットマークが付されているグラフに示すように、反射率の高い材料2であっても、距離が長い位置における信号量の変化が二乗の形になっていないことから、ノイズの影響が大きいことが分かる。
【0097】
このため、光センサ1bが受け取る信号量に応じて検出距離の閾値を調整することにより、対象物2をより適切に検出している場合と、検出していない場合との検出距離の切り替えとして機能し、ノイズに強く素材の違いに左右されない適切位置での物体検出が可能になる。
【0098】
図12に示すように、反射率の低い材料1における算出距離の変化(図中の丸付き実線)は、反射率の高い材料2における算出距離の変化(図中の三角付き実線)と比較して、直線的でない推移となっている。そして、実際の距離が同じであっても、材料1と材料2とで異なる算出距離を示している。
【0099】
そこで、対象物2に応じて信号量の大小があることから、演算部26は、信号量の大小に応じて閾値を切り替えてもよい。一態様において、演算部26は、算出距離値に対する閾値として、信号量が所定量以上である場合、信号量が所定量未満である場合よりも短い閾値を用いてもよい。
【0100】
例えば、図12に示す例において、演算部26が、(i)信号量が300未満の場合には、算出距離値に対する閾値を72mmに設定し、(ii)信号量が300以上の場合には、算出距離値に対する閾値を55mmに設定する場合、判定部27は、(i)反射率の低い材料1の対象物2について、実際には55mmという距離にあるときに算出距離が閾値を越えたと判定し、(ii)反射率の高い材料2の対象物2について、実際には60mmという距離にあるときに算出距離が閾値を越えたと判定することになる。これにより、判定部27が算出距離が閾値を越えたと判定したときの実際の距離の差異を、一定の閾値を用いた場合に比べて小さくすることができる。従って、光センサ1bは、異なる素材の対象物2に対して、素材が異なっても近い距離で算出距離が閾値を越えたと判定することが可能になる。
【0101】
〔ソフトウェアによる実現例〕
光センサ1、1a、1b(以下、「光センサ」と呼ぶ)の機能は、当該光センサとしてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該光センサの各制御ブロック(特に、ヒストグラム生成部25、演算部26、および、判定部27)としてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。
【0102】
この場合、上記光センサは、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記プログラムを実行することにより、上記各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0103】
上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0104】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0105】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る光センサは、光センサであって、物体が存在する領域に光を照射する発光素子と、前記物体からの反射光を受光する受光素子と、前記発光素子が前記光を照射してから前記受光素子が前記反射光を受光するまでの時間と、前記受光素子が受光した前記反射光の強度との関係を示すヒストグラムを生成する生成部と、前記ヒストグラムの歪度を算出する第1演算部と、前記ヒストグラムおよび前記歪度を参照して、前記光センサと前記物体との間の距離を算出する第2演算部と、を備える。
【0106】
前記の構成によれば、ヒストグラムおよび歪度を参照するので、複数の物体が存在する場合であっても、物体との距離を高精度に算出することができる。
【0107】
本発明の態様2に係る光センサは、上記態様1において、前記第2演算部が、前記ヒストグラムの重心と、前記歪度に歪み係数を乗じた値とを用いて、前記距離を算出することとしてもよい。
【0108】
前記の構成によれば、ヒストグラムの重心と、歪度に歪み係数を乗じた値とを用いるので、物体との距離をさらに高精度に算出することができる。
【0109】
本発明の態様3に係る光センサは、上記態様1または2において、前記生成部が、移動する前の前記物体に対応する第1のヒストグラムと、移動した後の前記物体に対応する第2のヒストグラムとを、それぞれ生成し、前記第2演算部が、前記第1のヒストグラムと、前記第2のヒストグラムとの間の差分を参照して前記距離を算出することとしてもよい。
【0110】
前記の構成によれば、光センサが移動した場合に、移動前後のヒストグラムの間の差分を参照することにより、物体の反射光成分のうち、光センサに近い物体の成分の大方を残し、光センサから離れた物体の成分をほぼ相殺することができるので、光センサに近い、測定対象となる物体との距離を高精度に算出することができる。
【0111】
本発明の態様4に係る光センサは、上記態様1から3の何れかにおいて、前記物体が存在し得る範囲に関する情報を取得する取得部を備え、前記第1演算部は、前記物体が存在し得る範囲に関する情報を参照して、前記歪度を算出することとしてもよい。
【0112】
前記の構成によれば、物体が存在し得る範囲を参照して歪度を算出するため、歪度が適切に求められるので、当該歪度を用いて補正される距離の精度が向上する。
【0113】
本発明の態様5に係る光センサは、上記態様2において、前記物体が存在し得る範囲に関する情報を取得する取得部を備え、前記第2演算部は、前記物体が存在し得る範囲に関する情報に応じた前記歪み係数を用いることとしてもよい。
【0114】
前記の構成によれば、物体が存在し得る範囲に応じた歪み係数を用いて距離を算出するので、距離の精度が向上する。
【0115】
本発明の態様6に係る光センサは、上記態様1から3の何れかにおいて、異なる検出角度を有する複数の受光素子からなることとしてもよい。
【0116】
前記の構成によれば、複数の受光素子が異なる検出角度を有することにより、選択的に検出距離の精度を上げることができる。
【0117】
本発明の態様7に係る光センサは、上記態様1から3の何れかにおいて、前記第2演算部により算出された前記距離と、当該距離の閾値とを比較して、前記物体を検出したか否かを判定する判定部を備えることとしてもよい。
【0118】
前記の構成によれば、例えば、距離が閾値以下である場合に、物体を検出したという判定を行うことができる。
【0119】
本発明の態様8に係る光センサは、上記態様7において、前記第1演算部が、前記反射光の強度に応じて前記閾値を調整することとしてもよい。
【0120】
前記の構成によれば、反射光の強度に応じて距離の閾値を調整するので、ノイズ光への耐性の向上を図ることができる。
【0121】
本発明の態様9に係る電子機器は、上記態様1から8の何れかにおける光センサを備える。
【0122】
前記の構成によれば、ヒストグラムおよび歪度を参照するので、複数の物体が存在する場合であっても、物体との距離を高精度に算出することができる。
【0123】
本発明の態様10に係る距離算出方法は、物体が存在する領域に光を照射する発光素子と、前記物体からの反射光を受光する受光素子と、を備えた光センサの距離算出方法であって、前記発光素子が前記光を照射してから前記受光素子が前記反射光を受光するまでの時間と、前記受光素子が受光した前記反射光の強度との関係を示すヒストグラムを生成する生成ステップと、前記ヒストグラムの歪度を算出する第1演算ステップと、前記ヒストグラムおよび前記歪度を参照して、前記光センサと前記物体との間の距離を算出する第2演算ステップと、を含む。
【0124】
前記の構成によれば、ヒストグラムおよび歪度を参照するので、複数の物体が存在する場合であっても、物体との距離を高精度に算出することができる。
【0125】
本発明の各態様に係る光センサは、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを上記光センサが備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより上記光センサをコンピュータにて実現させる光センサの制御プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【0126】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【符号の説明】
【0127】
1、1a、1b 光センサ
13 発光素子
2 対象物(物体)
3 非対象物
21 信号光受光部(受光素子)
23 参照光受光部(受光素子)
25 ヒストグラム生成部(生成部)
26 演算部(第1演算部、第2演算部)
27 判定部
30 情報取得部(取得部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12