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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022166695
(43)【公開日】2022-11-02
(54)【発明の名称】インパクトレンチ
(51)【国際特許分類】
   B25B 21/02 20060101AFI20221026BHJP
【FI】
B25B21/02 A
B25B21/02 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021072086
(22)【出願日】2021-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】服部 智哉
(57)【要約】
【課題】アンビルの耐久性を向上させる。
【解決手段】インパクトレンチ1は、モータ11と、モータ11により回転するハンマ17と、ハンマ17により回転方向に打撃され、四角孔71を有するソケット70を先端部41Aに装着可能なアンビル4と、ハンマ17を収容するハンマケース16と、を有する。そして、アンビル4におけるハンマ17側には、円筒部40が形成されており、円筒部40には、スリーブ55が一体に外装されて、スリーブ55よりも先端部41A側でアンビル4には、ソケット70の端部が当接する筒状のソケット受け60が回転可能に外装されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
前記モータにより回転するハンマと、
前記ハンマにより回転方向に打撃され、四角孔を有するソケットを先端部に装着可能なアンビルと、
前記ハンマを収容するハンマケースと、を有し、
前記アンビルにおける前記ハンマ側には、円筒部が形成されており、前記円筒部には、スリーブが一体に外装されて、前記スリーブよりも前記先端部側で前記アンビルには、前記ソケットの端部が当接する筒状のソケット受けが回転可能に外装されているインパクトレンチ。
【請求項2】
前記スリーブと前記ソケット受けとは、前記アンビルの軸方向で当接している請求項1に記載のインパクトレンチ。
【請求項3】
前記ソケット受けの内径は、前記スリーブの内径よりも小径である請求項1又は2に記載のインパクトレンチ。
【請求項4】
前記スリーブは、軸受を介して前記ハンマケースへ回転可能に支持されている請求項1乃至3の何れかに記載のインパクトレンチ。
【請求項5】
前記ハンマケースには、前記ソケット受けを抜け止めする抜け止め部材が保持されている請求項1乃至4の何れかに記載のインパクトレンチ。
【請求項6】
前記抜け止め部材は、前記ハンマケースに圧入される筒状のブッシュである請求項5に記載のインパクトレンチ。
【請求項7】
前記ソケット受けには、前記ブッシュが係止するフランジが形成されている請求項6に記載のインパクトレンチ。
【請求項8】
前記先端部は、前記四角孔の各内面にそれぞれ対応する4つの側面を少なくとも有する角柱部となっている請求項1乃至7の何れかに記載のインパクトレンチ。
【請求項9】
前記角柱部は、前記ソケットの装着状態で前記四角孔を越えて前記ソケット受けの内側まで形成されている請求項8に記載のインパクトレンチ。
【請求項10】
前記先端部側の角柱部と、前記ソケット受け側の角柱部とは、同じ横断面形状となっている請求項9に記載のインパクトレンチ。
【請求項11】
前記先端部側の角柱部と、前記ソケット受け側の角柱部との間には、前記ソケットの端部との接触を回避するための逃がし溝が、前記角柱部の軸線周り方向に形成されている請求項9又は10に記載のインパクトレンチ。
【請求項12】
前記角柱部は、前記スリーブの内側まで形成されており、前記スリーブの内面には、前記角柱部の側面と平行に形成され、前記側面と近接又は当接する面取部が形成されている請求項9乃至11の何れかに記載のインパクトレンチ。
【請求項13】
前記スリーブの内側の角柱部の外面には、凹部が形成されている請求項12に記載のインパクトレンチ。
【請求項14】
前記角柱部は、四角柱部である請求項8乃至13の何れかに記載のインパクトレンチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ソケットを装着するアンビルへ回転方向に間欠的なインパクトを発生させるインパクトレンチに関する。
【背景技術】
【0002】
インパクトレンチは、特許文献1に開示されるように、モータから回転伝達されるスピンドルと、スピンドルにカム結合され、コイルバネで前方へ付勢されるハンマと、ハンマと回転方向で係止して前方へ突出するアンビルとを備える。アンビルは、円筒部を有し、円筒部の先端には四角柱部が形成される。四角柱部には、四角孔を有するソケットが装着されて、ソケットにボルトやナットを嵌合させて締め付けが行われる。締め付けが進んでアンビルへのトルクが高まると、ハンマがアンビルに対して係脱を繰り返すことで回転方向へ間欠的な衝撃(インパクト)を発生させる。
このインパクトレンチでは、アンビルの円筒部から四角柱部にかけてスリーブを外装している。スリーブの前端は、アンビルの四角柱部に装着されたソケットの後端が当接可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開2011/0056714号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のインパクトレンチでは、スリーブがアンビルに固定されている場合と、スリーブが軸受(ハンマケース)に固定されている場合とが考えられる。しかし、何れの場合も、四角柱部に装着されたソケットは、四角柱部に対して回転方向に遊び(がたつき)があるため、ソケットの後端面と、ソケットを受けるスリーブの前端面との間では回転方向の摩擦が生じる。この摩擦は、スリーブが軸受に固定されている場合に特に大きくなる。よって、接触部分で摩耗が生じてスリーブがソケットを適正に位置決めできなくなるおそれがある。このため、ソケットがアンビルに接触しやすくなり、接触部分に応力が集中してアンビルに亀裂等が発生し、折損に繋がるおそれがある。
【0005】
本開示は、ソケットを適正に位置決めしてアンビルの耐久性を向上させることができるインパクトレンチを提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本開示は、モータと、
前記モータにより回転するハンマと、
前記ハンマにより回転方向に打撃され、四角孔を有するソケットを先端部に装着可能なアンビルと、
前記ハンマを収容するハンマケースと、を有することが望ましい。
そして、前記アンビルにおける前記ハンマ側には、円筒部が形成されており、前記円筒部には、スリーブが一体に外装されて、前記スリーブよりも前記先端部側で前記アンビルには、前記ソケットの端部が当接する筒状のソケット受けが回転可能に外装されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、ソケットを適正に位置決めしてアンビルの耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】インパクトレンチの一部中央縦断面図である。
図2図1の先端部分の拡大図である。
図3】アンビル及びアンビルの支持部分の分解斜視図である。
図4】アンビルの斜視図である。
図5図5Aはアンビルの側面図、図5Bは平面図、図5Cは正面図である。
図6図6A図5CのC-C線拡大断面図、図6BはD-D線拡大断面図である。
図7図2のA-A線断面図である。
図8図2のB-B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の一実施形態において、スリーブとソケット受けとは、アンビルの軸方向で当接していてもよい。この構成によれば、ソケット受けの位置決めがスリーブによって行われる。
本開示の一実施形態において、ソケット受けの内径は、スリーブの内径よりも小径であってもよい。この構成によれば、ソケット受けが四角孔に近い位置でソケットに当接し、ソケットのがたつきを抑えて角柱部への接触を効果的に防止することができる。
本開示の一実施形態において、スリーブは、軸受を介してハンマケースへ回転可能に支持されていてもよい。この構成によれば、アンビルの回転支持が安定して行える。
本開示の一実施形態において、ハンマケースには、ソケット受けを抜け止めする抜け止め部材が保持されていてもよい。この構成によれば、ソケット受けを設けても軸方向への抜け止めが可能となる。また、アンビルからスリーブが抜けても前方への移動が規制され、アンビルからのスリーブの脱落が阻止される。
本開示の一実施形態において、抜け止め部材は、ハンマケースに圧入される筒状のブッシュであってもよい。この構成によれば、ブッシュをハンマケースに固定できる。
本開示の一実施形態において、ソケット受けには、ブッシュが係止するフランジが形成されていてもよい。この構成によれば、ソケット受けの抜け止めが確実に行える。
【0010】
本開示の一実施形態において、先端部は、四角孔の各内面にそれぞれ対応する4つの側面を少なくとも有する角柱部であってもよい。この構成によれば、ソケットの装着が容易に行える。
本開示の一実施形態において、角柱部は、ソケットの装着状態で四角孔を越えてソケット受けの内側まで形成されていてもよい。この構成によれば、ソケットの後端が角柱部に接触しにくくなる。
本開示の一実施形態において、先端部側の角柱部と、ソケット受け側の角柱部とは、同じ横断面形状であってもよい。この構成によれば、形状がシンプル化して加工が容易となる。
本開示の一実施形態において、先端部側の角柱部と、ソケット受け側の角柱部との間には、ソケットの端部との接触を回避するための逃がし溝が、角柱部の軸線周り方向に形成されていてもよい。この構成によれば、角柱部を延長してもソケットとの干渉を抑制可能となる。
本開示の一実施形態において、角柱部は、スリーブの内側まで形成されており、スリーブの内面には、角柱部の側面と平行に形成され、側面と近接又は当接する面取部が形成されていてもよい。この構成によれば、角柱部とスリーブとの回転方向での一体性が高まる。
本開示の一実施形態において、スリーブの内側の角柱部の外面には、凹部が形成されていてもよい。この構成によれば、角柱部に発生する応力を緩和することができる。
本開示の一実施形態において、角柱部は、四角柱部であってもよい。この構成によれば、ソケットが装着しやすくなる。
【実施例0011】
以下、本開示の実施例を図面に基づいて説明する。
図1は、インパクトレンチの一例を示す一部中央縦断面図である。
インパクトレンチ1は、本体2とハンドル3とを備える。本体2は前後方向に延び、ハンドル3は本体2から下向きに延びる。本体2の内部には、アンビル4の後部が収容されている。アンビル4の前部は、本体2の前端から前方へ突出している。アンビル4の先端部には、ソケット70が着脱可能に装着される。
ハンドル3の上部には、トリガ6を前方へ突出させたスイッチ5が設けられる。スイッチ5の上側には、アンビル4の回転方向の正逆切替ボタン7が設けられている。トリガ6の上方には、アンビル4の前方を照射するライト8が設けられている。ハンドル3の下端には、バッテリ装着部9が形成される。バッテリ装着部9には、電源となるバッテリパック10が装着される。バッテリ装着部9内には、コントローラ(不図示)が収容される。
【0012】
本体2内には、後方から、モータ(ブラシレスモータ)11と、減速機構12と、スピンドル13と、打撃機構14とが備えられる。モータ11は、回転軸15を有する。回転軸15の回転は、減速機構12で減速される。減速された回転は、スピンドル13へ伝わる。
打撃機構14は、本体2の前部に設けられるハンマケース16内に収容される。打撃機構14は、スピンドル13に外装されるハンマ17と、ハンマ17を前方へ付勢するコイルバネ18とを備えている。
ハンマ17は、スピンドル13との間に設けたボール19,19によって回転方向で結合されている。ハンマ17の内周面とスピンドル13の外周面とには、ボール19,19が跨がって嵌合するカム溝20,20が形成されている。コイルバネ18は、スピンドル13に外装されてハンマ17を前方へ付勢する。ハンマ17は、前面に一対の爪21,21を備えている。
【0013】
アンビル4は、ハンマケース16の前筒部22に支持される。ハンマケース16はアルミニウム製である。前筒部22内には、筒状の軸受23が保持されている。軸受23の内周面には、図2及び図3にも示すように、リング状の溝24が形成されている。軸受23の前側には、シール部材25が設けられている。シール部材25は、金属製のリング26内に保持されている。リング26が前筒部22内に圧入されることで、シール部材25の位置決めがなされている。
アンビル4の後端には、一対の腕部27,27が放射状に形成されている。腕部27,27は、ハンマ17の爪21,21と回転方向で係合する。但し、腕部27及び爪21は、3つ以上であってもよい。腕部27及び爪21は、1つずつであってもよい。
前筒部22と腕部27,27との間には、規制ワッシャ28が設けられている。アンビル4は、規制ワッシャ28によって前方への位置決めがなされている。アンビル4の軸心には、後端から有底孔29が形成されている。有底孔29の後端には、スピンドル13の前端に設けた小径部30が挿入されている。
【0014】
有底孔29には、図6に示すように、前方から、先端孔31、前テーパ孔32、前等径孔33、後等径孔34、後テーパ孔35の順で連続形成されている。先端孔31は、最も小さい横断面積の円形孔で、半径方向で後述する円筒部40とオーバーラップしている。さらに先端孔31は、後述する凹溝45の最深部45aとオーバーラップするまで前方へ延びて前端が閉塞されている。前テーパ孔32は、先端孔31の後端から後方へ向かうに従って拡径し、半径方向で円筒部40とオーバーラップしている。前等径孔33は、前テーパ孔32の後端から後方へ等径に延びる円形孔である。前等径孔33は、半径方向で円筒部40及び後述する後繋ぎ部48とオーバーラップしている。後等径孔34は、前等径孔33の後端からやや小径となって後方へ等径に延びる円形孔である。後等径孔34は、半径方向で後繋ぎ部48及び腕部27とオーバーラップしている。後テーパ孔35は、後等径孔34の後端から後方へ向かうに従って拡開し、アンビル4の後面に開口している。
【0015】
アンビル4において、腕部27,27の前方は、図4及び図5にも示すように、横断面円形の円筒部40となっている。円筒部40の前方には、四角柱部41が同軸で形成されている。四角柱部41は、アンビル4の軸線Aと直交する横断面が略正方形状となる。四角柱部41は、4つの側面42,42・・と、各側面42,42の間に位置する4つの角部43,43・・とを有している。角部43には、軸線A方向へ延びる曲面状の面取部44が形成されている。
四角柱部41の後部で各角部43には、面取部44よりも幅広の凹溝45が、それぞれ前後方向に形成されている。四角柱部41の後側には、拡径部46が形成されている。拡径部46は、四角柱部41の4つの側面42,42・・の後端からそれぞれ後方へ向かうに従って径方向外側へ拡がり、後端が円筒部40に繋がるテーパ状となっている。
【0016】
各凹溝45は、軸線A周り方向で円筒部40と同心円の円弧となる曲面形状となっている。各凹溝45は、最深部45aと、前拡径部45bと、後拡径部45cとを有している。最深部45aは、凹溝45の前後方向の中央に形成されて前後方向に延びている。前拡径部45bは、最深部45aの前端から前方へ向かうに従って拡径し、角部43及び角部43を挟む2つの側面42,42に繋がっている。後拡径部45cは、最深部45aの後端から後方へ向かうに従って拡径している。
円筒部40と拡径部46との間には、拡径部46及び各凹溝45と円筒部40とを繋ぐ曲面状の前繋ぎ部47が形成されている。円筒部40と腕部27,27との間には、円筒部40の後端と腕部27,27の前面とを繋ぐ後繋ぎ部48が形成されている。この後繋ぎ部48の径方向内側に有底孔29の前等径孔33が形成されていることで、アンビル4の半径方向の厚みは後繋ぎ部48の位置で最小となっている。
【0017】
四角柱部41の中間部で各側面42には、逃がし溝49がそれぞれ形成されている。逃がし溝49は、ソケット70の後端との接触を防止するためのものである。よって、四角柱部41における逃がし溝49より前方が、ソケット70が装着される先端部41Aとなり、逃がし溝49より後方が延長部41Bとなる。
各逃がし溝49は、底部49aと、前傾斜部49bと、後傾斜部49cとを有している。底部49aは、逃がし溝49の前後方向の中央に形成される最深部である。前傾斜部49bは、底部49aから前方へ向かうに従って軸線Aから離れて先端部41A側の側面42と繋がる傾斜曲面である。後傾斜部49cは、底部49aから後方へ向かうに従って軸線Aから離れて延長部41B側の側面42と繋がる傾斜曲面である。
四角柱部41の前方には、細径部50が設けられている。細径部50は、アンビル4の前端に配置されている。細径部50には、全周に亘ってくびれ部51が形成されている。くびれ部51に、ソケット70を抜け止めするためのCリング状の弾性体52(図1,2)が保持されている。
【0018】
軸受23及びシール部材25の内側でアンビル4には、スリーブ55が外装されている。スリーブ55は、後部に横断面円形の大径孔56を、前部に横断面円形の小径孔57を同軸で有している。スリーブ55は、軸受23によって回転可能に支持される。スリーブ55の大径孔56には、アンビル4の円筒部40が圧入により固定されている。スリーブ55の後端は、アンビル4の腕部27,27に当接している。スリーブ55の前端は、シール部材25よりも前方に突出している。スリーブ55の前端は、アンビル4の凹溝45の最深部45aと前拡径部45bとの境目付近に位置している。小径孔57の内側に、各凹溝45が位置している。
スリーブ55の前面には、図3及び図7に示すように、溝部58が直径方向に形成されている。溝部58は、アンビル4の四角柱部41よりもやや大きい幅で形成されている。溝部58は、四角柱部41の互いに平行な側面42,42と平行な面取部59,59を有している。面取部59,59が側面42,42に近接することで、アンビル4とスリーブ55との相対回転が規制される。
【0019】
スリーブ55の前方でアンビル4には、ソケット受け60が回転可能に外装されている。ソケット受け60は、図8にも示すように、内径が四角柱部41の外接円に略等しくなる円筒状である。ソケット受け60の内径は、スリーブ55の大径孔56よりも小径となっている。ソケット受け60は、後端がスリーブ55の前端に当接している。この当接位置でソケット受け60は、円筒部40より前方で延長部41Bを覆って前筒部22より前方へ突出している。
ソケット受け60の外径は、スリーブ55の外径よりも小径となっている。但し、ソケット受け60の後端には、スリーブ55の外径と同径のフランジ61が周設されている。
スリーブ55の前部からソケット受け60の後部にかけて、ブッシュ62が外装されている。ブッシュ62は、前筒部22に圧入されるリング体である。ブッシュ62の後端には、外周側へ後フランジ部63が形成されている。後フランジ部63は、シール部材325の前側でスリーブ55と前筒部22との間に位置している。ブッシュ62の前端には、内周側へ前フランジ部64が形成されている。前フランジ部64は、ソケット受け60のフランジ61の前側に位置している。
【0020】
前筒部22の前部内面には、図2に示すように、リング状の段部65が形成されている。段部65は、ブッシュ62の後フランジ部63の前方に位置している。前筒部22の前端内面には、リング状の係止部66が形成されている。係止部66は、ブッシュ62の前端外周に係止している。
ブッシュ62は、段部65に後方から圧入されて、係止部66により前方へ抜け止めされた状態で前筒部22に保持されている。ソケット受け60は、ブッシュ62の前フランジ部64により、前方へ抜け止めされた状態で回転可能に保持される。この状態でソケット受け60の前端は、四角柱部41の各逃がし溝49の底部49aの径方向外側に位置している。よって、先端部41Aは、ソケット受け60からさらに前方へ突出した格好となる。
ソケット70は、先端部41Aに装着される。ソケット70は、筒状で、後部には、横断面が略正方形状である四角孔71が形成されている。ソケット70の前部には、略正六角形状である六角孔72が同軸で形成されている。
よって、先端部41Aにソケット70の四角孔71を前方から嵌合させると、ソケット70の後端は、ソケット受け60の前端に当接する。この装着状態で、先端部41Aの各側面42は、四角孔71の各内面73に当接する。
【0021】
以上の如く構成されたインパクトレンチ1においては、ハンドル3を把持した手でトリガ6を押し込み操作する。すると、スイッチ5がONしてバッテリパック10の電源によってモータ11が駆動する。よって、回転軸15が回転して減速機構12を介してスピンドル13が減速回転する。スピンドル13が回転すると、ボール19,19を介してハンマ17が回転する。ハンマ17が回転すると、アンビル4が回転してソケット70によるボルト等の締付が可能となる。
締付が進んでアンビル4のトルクが高まると、ハンマ17がコイルバネ18の付勢に抗して後退する。すなわち、ハンマ17は、ボール19,19をカム溝20,20に沿って後方へ転動させながら後退する。そして、爪21,21が腕部27,27から外れると、ハンマ17は、コイルバネ18の付勢及びカム溝20の案内によって回転しながら前進する。よって、爪21,21が腕部27,27に再係合してアンビル4に回転打撃力(インパクト)を発生させる。このインパクトを間欠的に繰り返すことでさらなる締付が行われる。
【0022】
このとき、ソケット70は、後端がソケット受け60で受けられて後方への位置決めがなされる。図2に示すように、スリーブ55よりも小径のソケット受け60の前端面60aは、ソケット70の後端面70aに当接している。ソケット受け60は、アンビル4に対して相対回転可能であるため、ソケット70が先端部41Aに対して回転方向でがたついても、前端面60aと後端面70aとの摩擦は低減される。よって、ソケット受け60及びソケット70の摩耗が起きにくくなり、ソケット70は適正位置で位置決めされる。従って、ソケット70のがたつきが抑えられる。
また、ソケット受け60の前端面60aは、ソケット70の後端面70aの径方向内側、すなわち四角孔71に近い位置に当接している。よって、ソケット70(特に四角孔71)のがたつきが抑えられる。
こうしてソケット70のがたつきが抑えられることで、アンビル4の四角柱部41にソケット70の四角孔71の後端開口が点接触及び線接触しにくくなる。このため、インパクト発生の際、四角柱部41への応力の集中が回避され、亀裂の発生防止に繋がる。
また、インパクト発生の際、四角柱部41の先端部41Aの側面42とソケット70の四角孔71の内面73との衝突によって先端部41Aに応力が発生する。しかし、四角柱部41には、先端部41Aよりも後方へ延びる延長部41Bが形成されている。このため、先端部41Aでの応力集中が緩和され、延長部41B側に応力が分散する。よって、各角部43に最大応力が発生せず、亀裂が生じにくくなる。
【0023】
このように、上記インパクトレンチ1は、モータ11と、モータ11により回転するハンマ17と、ハンマ17により回転方向に打撃され、四角孔71を有するソケット70を先端部41Aに装着可能なアンビル4と、ハンマ17を収容するハンマケース16と、を有する。そして、アンビル4におけるハンマ17側には、円筒部40が形成されており、円筒部40には、スリーブ55が一体に外装されて、スリーブ55よりも先端部41A側でアンビル4には、ソケット70の端部が当接する筒状のソケット受け60が回転可能に外装されている。
この構成によれば、ソケット受け60によってソケット70の軸方向の位置決めが適正に行われる。このため、ソケット70がアンビル4に接触しにくくなり、インパクト発生の際の先端部41Aへの応力集中が回避される。よって、アンビル4での亀裂の発生が防止され、アンビル4の耐久性が向上する。
また、ソケット受け60は、スリーブ55と別体に設けられる。よって、ソケット受け60が摩耗等してもソケット受け60のみの交換で済む。
さらに、円筒部40に外装されるスリーブ55と四角柱部41との間に隙間が生じても、ソケット受け60によって閉塞される。よって、粉塵等の異物の侵入が防止可能となる。
【0024】
スリーブ55とソケット受け60とは、アンビル4の軸方向で当接している。よって、ソケット受け60の位置決めがスリーブ55によって行われる。
ソケット受け60の内径は、スリーブ55の内径よりも小径である。よって、ソケット受け60が四角孔71に近い位置でソケット70に当接し、ソケット70のがたつきを抑えて四角柱部41への接触を効果的に防止することができる。
スリーブ55は、軸受23を介してハンマケース16へ回転可能に支持されている。よって、アンビル4の回転支持が安定して行える。
ハンマケース16には、ソケット受け60を抜け止めするブッシュ62(抜け止め部材)が保持されている。よって、ソケット受け60を設けても軸方向への抜け止めが可能となる。また、アンビル4からスリーブ55が抜けても前方への移動が規制され、アンビル4からのスリーブ55の脱落が阻止される。
抜け止め部材は、ハンマケース16に圧入される筒状のブッシュ62である。よって、ブッシュ62をハンマケース16に固定できる。
ソケット受け60には、ブッシュ62が係止するフランジ61が形成されている。よって、ソケット受け60の抜け止めが確実に行える。
【0025】
先端部41Aは、四角孔71の各内面73にそれぞれ対応する4つの側面42を少なくとも有する四角柱部41(角柱部)となっている。よって、ソケット70の装着が容易に行える。
四角柱部41は、ソケット70の装着状態で四角孔71を越えてソケット受け60の内側まで形成されている。よって、ソケット70の後端が四角柱部41に接触しにくくなる。
先端部41A(先端部側の角柱部)と延長部41B(ソケット受け側の角柱部)とは、同じ横断面形状となっている。よって、形状がシンプル化して加工が容易となる。
先端部41Aと延長部41Bとの間には、ソケット70の端部との接触を回避するための逃がし溝49が、四角柱部41の軸線A周り方向に形成されている。よって、四角柱部41を後方へ延長してもソケット70との干渉を抑制可能となる。
四角柱部41は、スリーブ55の内側まで形成されており、スリーブ55の内面には、四角柱部41の側面42と平行に形成され、側面42と近接する面取部59が形成されている。よって、四角柱部41とスリーブ55との回転方向での一体性が高まる。
スリーブ55の内側の延長部41Bの外面には、凹溝45(凹部)が形成されている。よって、延長部41Bに発生する応力を緩和することができる。
角柱部は、四角柱部41である。よって、ソケット70が装着しやすくなる。
【0026】
以下、本開示の変更例を説明する。
スリーブの形状は、適宜変更可能である。スリーブは、上記実施例よりも軸方向に長くしたり短くしたりしてもよい。前端の溝部も形状変更可能である。面取部は、角柱部の側面に当接させてもよい。溝部は、省略することができる。
スリーブは、上記実施例の面取部等によって回転方向でアンビルと一体化できれば、アンビルを圧入させなくてもよい。スリーブは、貫通孔を角孔とすることでアンビルと一体化することもできる。
ソケット受けの形状も適宜変更可能である。ソケット受けは、上記実施例よりも軸方向に長くしたり短くしたりしてもよい。フランジは、位置及び形状の変更は勿論、省略も可能である。
ブッシュの形状も適宜変更可能である。ブッシュは、ハンマケースに圧入せずにハンマケースと係合させて位置決めを行ってもよい。ソケット受けの抜け止めは、ブッシュ等の抜け止め部材をなくしてハンマケースにソケット受けを係合させて行ってもよい。
軸受は、メタルでなくボールベアリングやニードルベアリングも採用できる。
【0027】
アンビルの四角柱部の延長部は、上記実施例よりも短く形成して円筒部を長くしてもよい。延長部の断面形状を先端部より大きくしてもよい。
角部の面取部はなくてもよい。凹部の形状も適宜変更できる。
円筒部及び腕部の形状は、適宜変更可能である。細径部も形成されなくてもよい。
角柱部としては四角柱部に限らない。ソケットの四角孔の内面にそれぞれ当接する側面を有していれば、角柱部は、八角柱部等の他の多角柱部であってもよい。
上記実施例では、角柱部を後方へ長く延ばして形成しているが、アンビルの形状はこれに限らない。本開示は、円筒部を前方へ長く形成して、ソケットが装着される先端部のみが角柱部となる従来のアンビルであっても適用できる。この場合、ソケット受けの前端は、円筒部の前端よりも前方に位置させて、円筒部と先端部との間の拡径部にソケットの後端を接触させないようにするのが望ましい。
モータはブラシレスでなくてもよい。減速機構や打撃機構も上記形態に限定されない。バッテリパックを用いないAC機であってもよい。
本開示のインパクトレンチは、スピンドルとアンビルとが直交するアングルインパクトレンチも含まれる。
【符号の説明】
【0028】
1・・インパクトレンチ、2・・本体、3・・ハンドル、4・・アンビル、11・・モータ、13・・スピンドル、14・・打撃機構、15・・回転軸、17・・ハンマ、27・・腕部、40・・円筒部、41・・四角柱部、41A・・先端部、41B・・延長部、42・・側面、43・・角部、44・・面取部、45・・凹溝、46・・拡径部、49・・逃がし溝、55・・スリーブ、58・・溝部、59・・面取部、60・・ソケット受け、61・・フランジ、62・・ブッシュ、64・・前フランジ部、66・・係止部、70・・ソケット、71・・四角孔、72・・六角孔、73・・内面、A・・アンビルの軸線。
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