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特開2022-166698タイヤ溝計測装置およびタイヤ溝計測方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022166698
(43)【公開日】2022-11-02
(54)【発明の名称】タイヤ溝計測装置およびタイヤ溝計測方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/22 20060101AFI20221026BHJP
   B60C 19/00 20060101ALI20221026BHJP
【FI】
G01B11/22 H
B60C19/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021072090
(22)【出願日】2021-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】任 思怡
(72)【発明者】
【氏名】前川 貴哉
(72)【発明者】
【氏名】ラシキア ジョージ
【テーマコード(参考)】
2F065
3D131
【Fターム(参考)】
2F065AA04
2F065AA25
2F065AA53
2F065CC13
2F065DD03
2F065FF05
2F065HH05
2F065HH06
2F065HH07
2F065JJ05
2F065JJ09
2F065MM06
2F065PP22
2F065QQ31
2F065SS13
2F065SS15
2F065UU03
3D131EB11V
3D131EB11X
3D131LA21
(57)【要約】
【課題】タイヤ溝の深さの計測精度を向上することができるタイヤ溝計測装置およびタイヤ溝計測方法を提供する。
【解決手段】タイヤ溝計測装置100は、カメラ1、算出部としての正対算出部63aおよび判定部63bを備える。カメラ1は、タイヤに対して計測用の模様を投光する投光部2、およびタイヤ溝が延びる方向と同じ方向に並べられた2つの撮像部3を有する。正対算出部63aは、撮像部3によって撮影された映像に基づいてタイヤの外表面とカメラ1との正対関係を算出する。判定部63bは、正対算出部63aによる算出結果に基づいてタイヤの外表面とカメラ1が正対しているか否かを判定する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤに対して計測用の模様を投光する投光部、およびタイヤ溝が延びる方向と同じ方向に並べられた2つの撮像部を有するカメラと、
前記撮像部によって撮影された映像に基づいてタイヤの外表面と前記カメラとの正対関係を算出する算出部と、
前記算出部による算出結果に基づいてタイヤの外表面と前記カメラが正対しているか否かを判定する判定部と、
を備えるタイヤ溝計測装置。
【請求項2】
前記判定部は、タイヤの外表面と前記カメラとの間の距離が所定範囲にあるか否かを判定する請求項1に記載のタイヤ溝計測装置。
【請求項3】
前記判定部が正対していると判定した場合に、タイヤ溝の計測が可能である旨を外部へ報知する報知部を更に備える請求項1または2に記載のタイヤ溝計測装置。
【請求項4】
前記カメラを一端部に設けた棒状の支持体と、
前記カメラに通信可能に接続された計測部と、
を備える請求項1から3のいずれか1項に記載のタイヤ溝計測装置。
【請求項5】
タイヤに対して計測用の模様を投光する投光部および2つの撮像部を有するカメラにおける前記撮像部がタイヤ溝と同じ方向に並ぶように配置され、前記投光部から投光して前記撮像部によってタイヤの外表面を撮影する撮影ステップと、
前記撮影ステップによって撮影された映像に基づいてタイヤの外表面と前記カメラとの正対関係を算出する算出ステップと、
前記算出ステップによる算出結果に基づいてタイヤの外表面と前記カメラが正対しているか否かを判定する判定ステップと、
を備えるタイヤ溝計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ溝計測装置およびタイヤ溝計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、タイヤは走行状態や走行距離等に応じて摩耗が進行する。タイヤは、トレッド部に設けられたタイヤ溝の深さを計測することによって、摩耗の進行度合いを検査し、所定以上に摩耗が進行すると交換や再生等の処理が施される。
【0003】
特許文献1には従来のタイヤ溝の摩耗状態を計測する装置が記載されている。この従来の装置は、計測対象であるタイヤの一部を照らすように設計された少なくとも1台の照明装置と、照明装置により照らされたタイヤの一部の画像を検出するようにそれぞれ設計されている少なくとも2台のカメラと、カメラから受信したタイヤの画像を補間するよう設計された電子ユニットとを備える。この装置により、タイヤ溝の摩耗状態、ランアウトまたはテーパのようなタイヤの幾何学的形状等のパラメータの測定が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-198672号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の計測装置では、タイヤ幅方向に並べた2台のカメラでステレオ視して、タイヤ溝などの幾何学的形状を測定可能であることが示されている。この従来の計測装置では、タイヤ溝の深さ寸法が大きく、カメラの配置がタイヤに近いような場合に、カメラが撮影した映像においてタイヤ溝の底部に死角が生じ、タイヤ溝の深さの計測誤差が生じてしまうという問題点があった。
【0006】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、タイヤ溝の深さの計測精度を向上することができるタイヤ溝計測装置およびタイヤ溝計測方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様はタイヤ溝計測装置である。タイヤ溝計測装置は、タイヤに対して計測用の模様を投光する投光部、およびタイヤ溝が延びる方向と同じ方向に並べられた2つの撮像部を有するカメラと、前記撮像部によって撮影された映像に基づいてタイヤの外表面と前記カメラとの正対関係を算出する算出部と、前記算出部による算出結果に基づいてタイヤの外表面と前記カメラが正対しているか否かを判定する判定部と、を備える。
【0008】
本発明の別の態様はタイヤ溝計測方法である。タイヤ溝計測方法は、タイヤに対して計測用の模様を投光する投光部および2つの撮像部を有するカメラにおける前記撮像部がタイヤ溝と同じ方向に並ぶように配置され、前記投光部から投光して前記撮像部によってタイヤの外表面を撮影する撮影ステップと、前記撮影ステップによって撮影された映像に基づいてタイヤの外表面と前記カメラとの正対関係を算出する算出ステップと、
前記算出ステップによる算出結果に基づいてタイヤの外表面と前記カメラが正対しているか否かを判定する判定ステップと、を備えるタイヤ溝計測方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、タイヤ溝の深さの計測精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係るタイヤ溝計測装置を用いた使用状態について説明するための模式図である。
図2】実施形態に係るタイヤ溝計測装置の外観図である。
図3】タイヤ溝計測装置の機能構成を示すブロック図である。
図4図4(a)はタイヤとカメラとの位置関係をタイヤの側面から見た模式図であり、図4(b)はタイヤとカメラとの位置関係をタイヤの断面で見た模式図である。
図5】対比例として撮像部をタイヤ幅方向に並べた配置状態を示す模式図である。
図6】タイヤ溝計測装置によるタイヤ溝の深さ計測の処理手順を示すフローチャートである。
図7】変形例に係るタイヤ溝計測装置の外観を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図1から図7を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0012】
(実施形態)
図1は実施形態に係るタイヤ溝計測装置100を用いた使用状態について説明するための模式図であり、図2は実施形態に係るタイヤ溝計測装置100の外観図である。タイヤ溝計測装置100は、車両8に装着されたタイヤ9のトレッド部9aに設けられたタイヤ溝90の深さを計測する。タイヤ溝90は、タイヤ周方向に延びるように形成されている。
【0013】
タイヤ溝計測装置100は、カメラ1、支持体5および計測部6等を備える。カメラ1は、タイヤ9に向けて所定のパターンで構成された光を測定用の模様として投光する投光部2、および2つの撮像部3を有する。2つの撮像部3は、間隔を空けて配置されている。撮像部3は、投光部2から測定用の模様をタイヤ9のトレッド部9aへ投光した状態で、トレッド部9aを撮影する。
【0014】
支持体5は、棒状であり、一端部にカメラ1が取り付けられている。作業者は支持体5の他端側を手で持ち、支持体5の一端部に設けたカメラ1をタイヤ9に正対させ、タイヤ溝90の深さを計測する。
【0015】
計測部6は、カメラ1に有線または無線によって通信可能に接続されており、カメラ1によって出力される映像データを取得し、映像データに基づいてタイヤ溝90の深さを算出する。図2では、計測部6が支持体5と別体として設けられ、信号ケーブル6aによってカメラ1に接続されている例を示すが、例えば計測部6が支持体5の他端部に取り付けられていてもよい。また信号ケーブル6aを設けずに、無線によってカメラ1と計測部6とが通信接続されるものであってもよい。
【0016】
図3は、タイヤ溝計測装置100の機能構成を示すブロック図である。タイヤ溝計測装置100のカメラ1は、上述のように投光部2および2つの撮像部3を有し、投光部2から測定用の模様をタイヤ9のトレッド部9aへ投光した状態で、撮像部3によりトレッド部9aを撮影する。
【0017】
計測部6は、報知部61、操作部62および制御部63を有する。計測部6における各部は、ハードウェア的には、コンピュータのCPUをはじめとする電子素子や機械部品などで実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラムなどによって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろな形態で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0018】
報知部61は、例えば液晶ディスプレイ等の表示装置であり、作業者に対して表示装置への表示によって、タイヤ溝90の深さの測定結果等の測定に関する情報や、作業者の操作などに関する案内情報を報知する。報知部61は、撮影しているタイヤ9のトレッド部9aの映像を表示してもよい。
【0019】
また報知部61は、タイヤ溝90の計測が可能である旨を作業者へ報知する。報知部61は、例えば、表示装置に円形状等による色付きのマークを表示し、当該マークの色が測定可能を示す色に変化することによって、タイヤ溝90の計測が可能である旨を作業者へ報知する。タイヤ溝90の計測が可能であることは、後述するように制御部63の判定部63bによって判定されており、報知部61は、判定部63bによる判定結果に基づいてタイヤ溝90の計測が可能であることを報知する。
【0020】
報知部61は、表示装置への表示のほか、スピーカ等を有して音声によってタイヤ溝90の計測が可能である旨を作業者へ報知するようにしてもよい。報知部61によるタイヤ溝90の計測が可能である旨の報知は、表示装置による表示やスピーカによる音声出力に限られるものではない。
【0021】
操作部62は、例えばタッチパネルやスイッチなどの操作可能な入力装置である。操作部62は、作業者による操作に基づいてタイヤ溝90の深さの計測に関する操作入力を受け付ける。操作部62は、受け付けた操作入力を制御部63へ出力する。
【0022】
制御部63は、正対算出部63a、判定部36bおよび溝深さ算出部63cを有する。制御部63は、カメラ1から撮影されたタイヤ9のトレッド部9aの映像データを取得し、当該映像データに基づいてタイヤ溝90の深さを算出する。
【0023】
正対算出部63aは、カメラ1の2つの撮像部3によって撮影された映像データからトレッド部9aの外表面とカメラ1との正対関係を算出する。図4(a)はタイヤ9とカメラ1との位置関係をタイヤ9の側面から見た模式図であり、図4(b)はタイヤ9とカメラ1との位置関係をタイヤ9の断面で見た模式図である。図4(b)では、タイヤ9の回転軸を含む断面を示している。カメラ1の2つの撮像部3はタイヤ9の周方向に間隔を空けて並ぶようにカメラ1が配置されている。尚、正対算出部63aは本発明における算出部に相当する。
【0024】
各撮像部3は、投光部2から測定用の模様が投光されたタイヤ9のトレッド部9aを撮影している。正対算出部63aは、カメラ1の2つの撮像部3によって撮影された映像データに基づいて、ステレオカメラの原理によってトレッド部9aの外表面の3次元的な位置(外表面の幾何学的な形状)を算出する。正対算出部63aにおいてトレッド部9aの外表面の3次元的な位置を算出する手法については、ステレオカメラの原理に基づく距離測定などの公知の技術を用いることができる。
【0025】
図4(b)において2つの撮像部3は紙面に垂直な方向に並んで配置されていることから、少なくとも撮像部3から見て正面方向にあるタイヤ溝90には、撮像部3から見た死角の部分が低減されるか、または全く死角がない状態となる。2つの撮像部3がタイヤ周方向に間隔を空けて並ぶように配置されていることで、タイヤ溝90の底部91における撮像部3から見た死角が低減された状態で撮影される状態となっている。
【0026】
図5は対比例として撮像部3をタイヤ幅方向に並べた配置状態を示す模式図である。この場合、2つの撮像部3からそれぞれタイヤ溝90を見た場合に底部91に死角が現れてしまう状態となる。2つの撮像部3から見た底部91に死角が現れてしまうことによって、タイヤ溝90の立体的形状を正しく算出することが困難となり、タイヤ溝90の深さの算出精度が低下する要因となっていた。
【0027】
正対算出部63aは、カメラ1の正面方向に対するトレッド部9aの外表面の法線方向のずれ量を算出することで、タイヤ9の外表面とカメラ1との正対関係を算出する。正対算出部63aは、トレッド部9aの外表面の法線方向のずれ量を判定部63bへ出力する。
【0028】
また正対算出部63aは、トレッド部9aの外表面の3次元的な位置を算出することによって、カメラ1の正面方向におけるカメラ1とトレッド部9aの外表面との間の距離を算出することができ、算出した当該距離を判定部63bへ出力する。
【0029】
判定部63bは、タイヤ9の外表面とカメラ1との正対関係、即ちカメラ1の正面方向に対するトレッド部9aの外表面の法線方向のずれ量に基づいて、タイヤ溝90の深さが計測可能であるか否かを判定する。判定部63bは、カメラ1の正面方向に対するトレッド部9aの外表面の法線方向のずれ量が所定値(例えば1度~10度程度の値)よりも小さい場合にタイヤ溝90の深さが計測可能であると判定する。
【0030】
判定部63bは、カメラ1の正面方向に対するトレッド部9aの外表面の法線方向のずれ量を、タイヤ幅方向へのずれ量およびタイヤ周方向へのずれ量の2成分に分解し、それぞれについて所定値と比較して判定するようにしてもよい。この場合、タイヤ幅方向へのずれ量およびタイヤ周方向へのずれ量を判定するための所定値をそれぞれ異なる値としてもよい。
【0031】
判定部63bは、正対関係に加えて、カメラ1の正面方向におけるカメラ1とトレッド部9aの外表面との間の距離に基づいて、タイヤ溝90の深さが計測可能であるか否かを判定するようにしてもよい。判定部63bは、カメラ1とトレッド部9aの外表面との間の距離が所定範囲(例えば10cm~30cm程度の範囲等)にある場合にタイヤ溝90の深さが計測可能であると判定する。
【0032】
判定部63bは、判定結果がタイヤ溝90の深さが計測可能であることを報知部61へ出力する。報知部61は、上述のようにタイヤ溝90の深さが計測可能であることを表示装置に表示されるマーク等によって外部へ報知する。操作部62は、作業者による計測開始の操作入力を受け付け、溝深さ算出部63cへ出力する。尚、操作部62は、判定部63bがタイヤ溝90の深さが計測可能であると判定するまで、作業者による計測開始の操作入力を受け付けないようにしてもよい。
【0033】
溝深さ算出部63cは、作業者による計測開始の操作入力をトリガとして、正対算出部63aにおいて算出されたトレッド部9aの外表面の3次元的な位置に基づいてタイヤ溝90の深さを算出する。溝深さ算出部63cは、カメラ1の正面方向にあるタイヤ溝90の一部について深さを算出してもよいし、カメラ1の正面方向の周辺における複数の箇所について深さを算出し、平均化してタイヤ溝90の深さとして算出してもよい。
【0034】
溝深さ算出部63cは算出したタイヤ溝90の深さを報知部61へ出力し、報知部61は計測されたタイヤ溝90の深さを表示装置等に表示し、作業者に報知する。
【0035】
つぎに、タイヤ溝計測装置100の動作について説明する。図6は、タイヤ溝計測装置100によるタイヤ溝90の深さ計測の処理手順を示すフローチャートである。タイヤ溝計測装置100は、カメラ1の2つの撮像部3がタイヤ溝90が延びる方向と同じ方向に並ぶように配置される(S1)。カメラ1の投光部2は測定用の模様をタイヤ9のトレッド部9aの外表面に投光する(S2)。
【0036】
トレッド部9aの外表面には投光部2は測定用の模様が現れ、2つの撮像部3によってタイヤ9のトレッド部9aの外表面を撮影する(S3)。撮像部3によって撮影されたタイヤ9のトレッド部9aの外表面の映像データは、制御部63の正対算出部63aに入力される。
【0037】
正対算出部63aは、入力された映像データに基づいて、ステレオカメラの原理によってトレッド部9aの外表面の3次元的な位置を算出する。正対算出部63aは、カメラ1の正面方向に対するトレッド部9aの外表面の法線方向のずれ量を算出することによって、タイヤ9の外表面とカメラ1との正対関係を算出する(S4)。
【0038】
判定部63bは、タイヤ9の外表面とカメラ1とが正対しているか否かを判定する(S5)。ステップS5では、判定部63bは、タイヤ9の外表面とカメラ1との正対関係である、カメラ1の正面方向に対するトレッド部9aの外表面の法線方向のずれ量が、所定値よりも小さいか否かを判定する。
【0039】
ステップS5による判定結果が否である場合(S5:NO)、ステップS1に戻って再びステップS1からステップS4によるタイヤ9の外表面とカメラ1との正対関係を算出する処理を繰り返す。ステップS5による判定結果が否である場合に、判定部63bは、正対していないことを報知部61から報知し、カメラ1の配置および姿勢の変更を作業者に促すようにしてもよい。
【0040】
ステップS5による判定結果がタイヤ9の外表面とカメラ1とが正対しているとする場合(S5:YES)、溝深さ算出部63cは、トレッド部9aの外表面の3次元的な位置に基づいてタイヤ溝90の深さを算出し(S6)、処理を終了する。
【0041】
タイヤ溝計測装置100は、タイヤ9の外表面とカメラ1とが正対していると判定された場合に、タイヤ溝90の深さを算出する。これによって、タイヤ溝計測装置100は、カメラ1の正面方向とトレッド部9aの外表面の法線方向とが大きくずれている場合に生じるタイヤ溝90の深さの算出誤差を低減することができる。また、タイヤ溝計測装置100は、タイヤ溝90が延びる方向と同じ方向に並ぶように配置された2つの撮像部3が撮影した映像データを用いることによって、タイヤ溝90の底部91の死角を低減し、タイヤ溝90の深さの計測精度を向上することができる。
【0042】
判定部63bは、ステップS5による判定によって正対していると判定した場合に、更にカメラ1の正面方向におけるカメラ1とトレッド部9aの外表面との間の距離が所定範囲内にあるかを判定し、所定範囲内にある場合にタイヤ溝90の深さが計測可能であるとしてよい。タイヤ溝計測装置100は、カメラ1とトレッド部9aの外表面との間の距離が適正な範囲内にあることで、トレッド部9aの外表面の立体的な位置を精度良く算出することができる。
【0043】
タイヤ溝計測装置100は、判定部63bによる判定結果を受けて報知部61によってタイヤ溝90の深さが計測可能である旨を報知することで、作業者にタイヤ溝90の深さが計測可能になったことを知得させることができる。作業者は、報知部61によるタイヤ溝90の深さが計測可能である旨の報知に基づいて操作部62を操作してタイヤ溝90の深さを計測することができる。また作業者は、タイヤ溝90の深さが計測可能である旨の報知がない場合には、カメラ1の配置および姿勢を変更し、タイヤ溝90の深さが計測可能となるように調整することができる。
【0044】
タイヤ溝計測装置100は、棒状の支持体5の一端部にカメラ1が取り付けられており、支持体5の他端部を手で持ち、支持体5の一端部側がタイヤ9のトレッド部9aの正面に配置されるように使用することで、タイヤ溝90の深さの計測作業を容易化することができる。
【0045】
(変形例)
図7は変形例に係るタイヤ溝計測装置100の外観を示す模式図である。変形例に係るタイヤ溝計測装置100は、車両8の走行によって移動するタイヤ9のトレッド部9aが接触して通過する上面を有する本体部4を備える。タイヤ溝計測装置100の本体部4は、車両8が走行する地面に設置されている。
【0046】
タイヤ溝計測装置100におけるカメラ1は、本体部4に配置されている。カメラ1は、本体部4の上面をタイヤ9が接触して通過する際にタイヤ9のトレッド部9aの外表面を投光部2および撮像部3が臨むように設けられている。またカメラ1は、2つの撮像部3が車両の走行方向に間隔を空けて設けられている。
【0047】
タイヤ溝計測装置100は、本体部4の上面にタイヤ9が接触し、カメラ1の投光部2および撮像部3が臨んでいる状態で、2つの撮像部3によりトレッド部9aの外表面を撮影する。タイヤ溝計測装置100は、上述の実施形態と同様に、2つの撮像部3が出力する映像データに基づいて、タイヤ9の外表面とカメラ1とが正対しているかを判定し、正対している場合にタイヤ溝90の深さを算出する。
【0048】
上述の実施形態では、タイヤ溝計測装置100がタイヤ9のトレッド部9aにおける主たるタイヤ溝である周方向に延びるタイヤ溝90の深さを計測する例を示したが、タイヤ9の周方向に交差する方向に延びるタイヤ溝に対しても適用可能である。
【0049】
またタイヤ溝計測装置100のカメラ1は、2つの撮像部3の間に投光部2が設けられている例を示したが、2つの撮像部3と投光部2との位置関係は、これに限られるものではない。
【0050】
また支持体5は、長手方向において伸縮できるように構成されていてもよいし、折り曲げてコンパクトにできるような構成となっていてもよい。また、計測部6は支持体5の他端部(カメラ1が一端部に設けられている)に着脱可能に構成されていてもよい。
【0051】
次に実施形態に係るタイヤ溝計測装置100およびタイヤ溝計測方法の特徴について説明する。
実施形態に係るタイヤ溝計測装置100は、カメラ1、算出部としての正対算出部63aおよび判定部63bを備える。カメラ1は、タイヤ9に対して計測用の模様を投光する投光部2、およびタイヤ溝90が延びる方向と同じ方向に並べられた2つの撮像部3を有する。正対算出部63aは、撮像部3によって撮影された映像に基づいてタイヤ9の外表面とカメラ1との正対関係を算出する。判定部63bは、正対算出部63aによる算出結果に基づいてタイヤ9の外表面とカメラ1が正対しているか否かを判定する。これにより、タイヤ溝計測装置100は、タイヤ溝90の深さの算出誤差を低減することができる。
【0052】
また判定部63bは、タイヤ9の外表面とカメラ1との間の距離が所定範囲にあるか否かを判定する。これにより、タイヤ溝計測装置100は、カメラ1とタイヤ9の外表面との間の距離が適正な範囲内にあることで、タイヤ9の外表面の立体的な位置を精度良く算出することができる。
【0053】
またタイヤ溝計測装置100は、判定部63bが正対していると判定した場合に、タイヤ溝90の計測が可能である旨を外部へ報知する報知部61を更に備える。これにより、タイヤ溝計測装置100は、タイヤ溝90の深さが計測可能になったことを作業者に知得させることができる。
【0054】
またタイヤ溝計測装置100は、カメラ1を一端部に設けた棒状の支持体5と、カメラ1に通信可能に接続された計測部6とを備える。これにより、タイヤ溝計測装置100は、タイヤ溝90の深さの計測作業を容易化することができる。
【0055】
タイヤ溝計測方法は、撮影ステップ、算出ステップおよび判定ステップを備える。撮影ステップは、タイヤ9に対して計測用の模様を投光する投光部2および2つの撮像部3を有するカメラ1における撮像部3がタイヤ溝と同じ方向に並ぶように配置され、投光部2から投光して撮像部3によってタイヤ9の外表面を撮影する。算出ステップは、撮影ステップによって撮影された映像に基づいてタイヤ9の外表面とカメラ1との正対関係を算出する。判定ステップは、算出ステップによる算出結果に基づいてタイヤ9の外表面とカメラ1が正対しているか否かを判定する。このタイヤ溝計測方法によれば、タイヤ溝90の深さの算出誤差を低減することができる。
【0056】
以上、本発明の実施の形態をもとに説明した。これらの実施の形態は例示であり、いろいろな変形および変更が本発明の特許請求範囲内で可能なこと、またそうした変形例および変更も本発明の特許請求の範囲にあることは当業者に理解されるところである。従って、本明細書での記述および図面は限定的ではなく例証的に扱われるべきものである。
【符号の説明】
【0057】
1 カメラ、 2 投光部、 3 撮像部、 5 支持体、 6 計測部、
61 報知部、 63a 正対算出部(算出部)、 63b 判定部、
9 タイヤ、 90 タイヤ溝、 100 タイヤ溝計測装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7