(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022166707
(43)【公開日】2022-11-02
(54)【発明の名称】排水管の洗浄工法
(51)【国際特許分類】
E03C 1/308 20060101AFI20221026BHJP
B65H 75/38 20060101ALI20221026BHJP
【FI】
E03C1/308
B65H75/38 R
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021072105
(22)【出願日】2021-04-21
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】393023536
【氏名又は名称】フジクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(72)【発明者】
【氏名】大津 芳永
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 淳一
(72)【発明者】
【氏名】崎口 清富
【テーマコード(参考)】
2D061
3F068
【Fターム(参考)】
2D061AA04
2D061AA05
2D061AC07
2D061AD06
2D061AE03
3F068AA06
3F068BA05
3F068CA02
3F068DA05
3F068EA07
3F068FA06
3F068HA03
3F068HA08
3F068HB11
(57)【要約】
【課題】特に下層階における個別の宅内に対して、排水管の洗浄による泥水が逆流するのを確実に防止させることができる排水管の洗浄工法を提供すること。
【解決手段】立管2の上部から、送水ホース6に取り付けられた立管洗浄用ノズル5を、高圧水の無噴射の状態で立管の下底部に挿入する第1工程と、第1工程の実行と同時に又は前後して、横引き管3の下流側から送水ホース8に取り付けられた横引き管洗浄用ノズル7を、高圧水を噴射させながら、立管の下底部に向かって進行させる第2工程と、立管の下底部に位置させた立管洗浄用ノズル5から高圧水を噴射させながら、立管内で引上げることで、立管内を洗浄する第3工程と、第3工程の実行中において、横引き管洗浄ノズル7から高圧水を噴射させながら、横引き管洗浄ノズル7を、立管の下底部から横引き管の下流側に向かって移動させる第4工程が実施される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物に垂直方向に敷設された立管と、この立管の下底部に連通する水平方向に敷設された横引き管からなる排水管の管内を洗浄する排水管の洗浄工法であって、
前記立管の上部から、送水ホースの先端部に取り付けられた立管洗浄用高圧水噴射ノズルを挿入し、当該立管洗浄用高圧水噴射ノズルを、高圧水の無噴射の状態で前記立管の下底部に至るまで、前記送水ホースを挿入する第1工程と、
前記第1工程の実行と同時に、もしくは前後して行なわれ、前記横引き管の下流側から送水ホースの先端部に取り付けられた横引き管洗浄用高圧水噴射ノズルを挿入し、当該横引き管洗浄用高圧水噴射ノズルから高圧水を噴射させながら、横引き管洗浄用高圧水噴射ノズルを前記立管の下底部に向かって進行させることで、横引き管内を洗浄する第2工程と、
前記第1工程において、前記立管の下底部に位置させた立管洗浄用高圧水噴射ノズルから高圧水を噴射させながら、立管洗浄用高圧水噴射ノズルを立管内で引上げることで、立管内を洗浄する第3工程と、
前記第3工程の実行中において、前記横引き管洗浄用高圧水噴射ノズルから高圧水を噴射させながら、当該横引き管洗浄用高圧水噴射ノズルを、前記立管の下底部から横引き管の下流側に向かって移動させる動作を、一回もしくはノズルの往復により複数回行なう第4工程と、
を実行することを特徴とする排水管の洗浄工法。
【請求項2】
前記立管洗浄用高圧水噴射ノズルには、高圧水の噴射による反作用により回転駆動されるロータがノズル本体に具備され、前記ロータの回転に伴い、前記送水ホースを介して送られる高圧水を、前記ノズル本体の周方向に回転させつつ噴射させる回転ノズルが用いられることを特徴とする請求項1に記載の排水管の洗浄工法。
【請求項3】
前記回転ノズルは、前記立管内を洗浄する前記第3工程の実行中において、前記ロータが90rpm乃至5000rpmの範囲で回転されることを特徴とする請求項2に記載の排水管の洗浄工法。
【請求項4】
前記横引き管洗浄用高圧水噴射ノズルには、前記送水ホース側から見た斜め後方に高圧水を噴射するノズル開口を有し、前記送水ホースを介して送られる高圧水を、後方噴射による推進力により、前記横引き管内を下流側から前記立管の下底部に向かって、管内を洗浄しながら進行させる前記第2工程を実行することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の排水管の洗浄工法。
【請求項5】
フレームと、前記フレームの上部に配置されて回転可能に軸支されたドラムと、前記フレームに搭載されて前記ドラムに対して正転及び逆転の駆動力を与える原動機とを備えたホース引上げ装置が用意され、
前記立管内を洗浄する前記第3工程において、前記ホース引上げ装置の前記ドラムに、立管洗浄用高圧水噴射ノズルの送水ホースを周回させて、前記立管洗浄用高圧水噴射ノズルを立管内において引上げることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の排水管の洗浄工法。
【請求項6】
前記ホース引上げ装置によって、前記立管洗浄用高圧水噴射ノズルを、20mm/秒乃至300mm/秒の範囲の定速度で、立管内において引上げることを特徴とする請求項5に記載の排水管の洗浄工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、集合住宅等に敷設された排水管内に付着した食品残渣や油脂等による固形物を、高圧水の噴射ノズルを利用して除去する排水管の洗浄工法に関する。
【背景技術】
【0002】
土地の有効活用の観点から、都市部やその近郊において、高層ビル形式の集合住宅が多数建設されている。このビル形式の集合住宅から排出される生活排水(汚水)は、個別の宅内に敷設された専用排水管から、ビル内部に敷設された共用の排水管(立管とも言う。)を介して、屋外の横引き管に排出され、これにより良好な生活環境が維持されるようになされている。
【0003】
ところで、この生活排水には多量の食品残渣や油脂等が含まれているために、この残渣や油脂等が共用排水管(立管および横引き管)の管壁に固形物となって付着し、相当の期間の経過により排水管を閉塞させることもある。また、この固形物から悪臭が放され、生活環境を悪化させることがある。このような生活環境の悪化を防止し、良好な生活環境を維持するために、一定期間ごとに共用排水管の清掃が必要となる。
【0004】
従来より、このように排水管内に付着した固形物を洗浄して除去する一つの方法として、高圧水噴射洗浄法が採用されている。この高圧水噴射洗浄法は、送水ホースの先端に取り付けられた洗浄ノズルから排水管内に付着した固形物に向けて高圧水を噴射し、前記固形物を除去するものである。
【0005】
これには、例えばビルの屋上に設けられた立管の上端開口部から、前記した洗浄ノズルを先端部に取り付けた送水ホースを挿入して、排水管の洗浄が行われる。
この場合、ビル屋上の立管の上端開口部より洗浄ノズルを挿入し、高圧水を噴射させない状態で送水ホースを繰り出して、先端の洗浄ノズルを立管最下部の前記した横引き管に至るまで降ろす。この状態で高圧水を洗浄ノズルより噴射させつつ、送水ホースを順次引上げることで、排水管内を洗浄することができる。
【0006】
前記した排水管の洗浄工法によれば、送水ホースの引き上げに多大な労力が必要となり、特に超高層化された集合住宅での作業は、送水ホースの長さが増大して重量も嵩むことになり、その洗浄作業はかなりの重労働となる。
そこで本出願人は、モータ等の原動機によって定速回転されるドラムを備え、このドラムに前記送水ホースを1~2周程度周回させることによるドラムと送水ホースとの間の摩擦力によって、ホースを容易に引上げることができるホース引上げ装置と、これを用いた排水管の洗浄方法について提案をしており、これは特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、高圧水の噴射ノズルを利用して、前記した立管内の洗浄を行なうにあたっては、立管内の洗浄に伴って立管から剥離された固形物が、立管の下底部につながる前記した横引き管との接続部(立管の立上がり部)に蓄積して、排水管内を塞ぐという問題が発生する。この状態で、なおも立管の洗浄を継続すると、洗浄ノズルから吐出した洗浄排水に前記した固形物を含む汚水が立管内に溜まり、特に建物の下層における個別の宅内に敷設された専用排水管を介して前記した汚水が逆流し、溢れた汚水によって室内を汚すという問題を招くことになる。
【0009】
この発明は、前記した例に示す集合住宅等の建物に敷設された排水用の立管と、これに続く横引き管とを、個別にそれぞれ専用の高圧水噴射ノズルを用いて洗浄しようとするものであり、その洗浄に用いる立管洗浄用高圧水噴射ノズルと、横引き管洗浄用高圧水噴射ノズルの操作タイミングを考慮することで、特に下層階における個別の宅内への泥水の逆流を確実に防止することができる排水管の洗浄工法を提供することを主要な課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記した課題を解決するためになされたこの発明に係る排水管の洗浄工法は、建物に垂直方向に敷設された立管と、この立管の下底部に連通する水平方向に敷設された横引き管からなる排水管の管内を洗浄する排水管の洗浄工法であって、
前記立管の上部から、送水ホースの先端部に取り付けられた立管洗浄用高圧水噴射ノズルを挿入し、当該立管洗浄用高圧水噴射ノズルを、高圧水の無噴射の状態で前記立管の下底部に至るまで、前記送水ホースを挿入する第1工程と、
前記第1工程の実行と同時に、もしくは前後して行なわれ、前記横引き管の下流側から送水ホースの先端部に取り付けられた横引き管洗浄用高圧水噴射ノズルを挿入し、当該横引き管洗浄用高圧水噴射ノズルから高圧水を噴射させながら、横引き管洗浄用高圧水噴射ノズルを立管の下底部に向かって進行させることで、横引き管内を洗浄する第2工程と、
前記第1工程において、前記立管の下底部に位置させた立管洗浄用高圧水噴射ノズルから高圧水を噴射させながら、立管洗浄用高圧水噴射ノズルを立管内で引上げることで、立管内を洗浄する第3工程と、
前記第3工程の実行中において、前記横引き管洗浄用高圧水噴射ノズルから高圧水を噴射させながら、当該横引き管洗浄用高圧水噴射ノズルを、前記立管の下底部から横引き管の下流側に向かって移動させる動作を、一回もしくはノズルの往復により複数回行なう第4工程とを実行することを特徴とする。
【0011】
この場合、前記立管洗浄用高圧水噴射ノズルには、高圧水の噴射による反作用により回転駆動されるロータがノズル本体に具備され、前記ロータの回転に伴い、前記送水ホースを介して送られる高圧水を、前記ノズル本体の周方向に回転させつつ噴射させる回転ノズルが用いられることが望ましい。
【0012】
そして、前記回転ノズルは、前記立管内を洗浄する前記第3工程の実行中において、好ましくは前記ロータが90rpm乃至5000rpmの範囲で回転されることで、前記立管内の洗浄が行なわれる。
【0013】
一方、前記横引き管洗浄用高圧水噴射ノズルには、前記送水ホース側から見た斜め後方に高圧水を噴射するノズル開口を有し、前記送水ホースを介して送られる高圧水を、後方噴射による推進力により、前記横引き管内を下流側から前記立管の下底部に向かって、管内を洗浄しながら進行させる前記第2工程が実行される。
【0014】
さらに、この発明に係る排水管の洗浄工法においては、フレームと、前記フレームの上部に配置されて回転可能に軸支されたドラムと、前記フレームに搭載されて前記ドラムに対して正転及び逆転の駆動力を与える原動機とを備えたホース引上げ装置が用意される。 そして、前記立管内を洗浄する前記第3工程においては、前記ホース引上げ装置のドラムに、立管洗浄用高圧水噴射ノズルの送水ホースを周回させて、前記立管洗浄用高圧水噴射ノズルを立管内において引上げる操作が行なわれる。
【0015】
この場合、前記ホース引上げ装置によって、前記立管洗浄用高圧水噴射ノズルを、20mm/秒乃至300mm/秒の範囲の定速度で、立管内において引上げることが望ましい。
【発明の効果】
【0016】
この発明に係る排水管の洗浄工法によると、第1工程において立管洗浄用高圧水噴射ノズルが高圧水の無噴射の状態で立管の下底部に下ろされ、これと同時にもしくはこれに前後する第2工程において、横引き管の下流側から高圧水を噴射させながら、横引き管洗浄用高圧水噴射ノズルが、立管の前記下底部に向かって進行し、これにより先ずは横引き管の管内の洗浄が実施される。
続いて、第3工程において立管洗浄用高圧水噴射ノズルから高圧水を噴射させながら、このノズルを立管内で引上げることで、立管内の洗浄が実施されると同時に、第4工程において横引き管洗浄用高圧水噴射ノズルから高圧水を噴射させながら、この横引き管洗浄用高圧水噴射ノズルを、前記立管の下底部から横引き管の下流側に向かって移動させる動作が、一回もしくは複数回のノズルの往復により行なわれる。
【0017】
したがって、第3工程における立管内の洗浄に伴って、立管から剥離されて立管の下底部に落とされる固形物等は、高圧水を噴射しながら横引き管の下流側に向かう横引き管洗浄用高圧水噴射ノズルの移動に伴って、すでに管内の洗浄がなされた横引き管を介して、公共の下水管等に向けて、早急に流し出すことができる。
前記した立管の下底部から横引き管の下流側に向かう横引き管洗浄用高圧水噴射ノズルの移動動作は、必要に応じて複数回のノズルの往復により行なわれ、これにより、立管の下底部(立上がり部)に蓄積しようとする固形物等を横引き管を介して効果的に排除させることができる。それ故、特に建物の下層における個別の宅内に汚水が逆流し、溢れた汚水によって室内を汚す問題を確実に防止することができる。
【0018】
この場合、横引き管洗浄用高圧水噴射ノズルとして、送水ホース側から見た斜め後方に高圧水を噴射するノズル開口を有する洗浄ノズルを利用することで、高圧水の後方噴射による推進力により、横引き管内を前進しつつ横引き管の管内を洗浄することができる。
そして、このノズルが立管の下底部から横引き管の下流側に向かって引き戻される場合には、後方噴射される高圧水によって、立管の下底部に蓄積しようとする前記固形物等を、横引き管の下流側に向かって、より効率的に流し出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】この発明に係る排水管の洗浄工法を説明する模式図である。
【
図2】この洗浄工法に用いられるホース引上げ装置の例を示した正面図である。
【
図4】立管洗浄用高圧水噴射ノズルの軸方向の上半部を断面図で示した透視図である。
【
図5】
図4に示す噴射ノズルを先端部側から見たノズル開口部分の透視図である。
【
図6】横引き管洗浄用高圧水噴射ノズルのノズル開口部分を透視状態で示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
この発明に係る排水管の洗浄工法について、図に基づいて説明する。
図1は、ビル形式による集合住宅における排水管の敷設状況の例、並びに高圧水噴射洗浄法による排水管の洗浄工法を実施する例について模式的に示したものである。
図1に示すA…Xは、集合住宅の各階における個別の宅内を示しており、各宅内A…Xの各台所、洗面所、洗濯パン、浴室などからの生活排水は、それぞれ各宅内A…Xの床下部分に水平方向に敷設された専用排水管1a…1xに排出され、これらは集合住宅に垂直方向に敷設された共用の立管2に集合され、外部の横引き管3を経由して、図示せぬ公共の下水管等に向けて流される。
【0021】
前記した立管2の上部は、一般に集合住宅の屋上において、立管の掃除口2aとして開口されており、立管2の下底部は横引き管3に対して、ほぼ直交した状態で接続されている。なお、この立管2と横引き管3との接続部は、立上がり部2bとも呼んでいる。
そして、地上における横引き管3の下流側における前記した公共の下水管への接続部付近には、横引き管の掃除口4が敷設されている。
【0022】
前記した立管2と横引き管3からなる共用の排水管を洗浄するこの発明に係る排水管の洗浄工法を実施するには、一例として
図1に示すように集合住宅の屋上における立管の掃除口2aから立管2内に、送水ホース6の先端部に取り付けられた立管洗浄用高圧水噴射ノズル(以下、単に立管用洗浄ノズルとも呼ぶ。)5が挿入される。
また、地上の前記した横引き管の下流側に敷設された横引き管掃除口4からは、送水ホース8の先端部に取り付けられた横引き管洗浄用高圧水噴射ノズル(以下、単に横引き管用洗浄ノズルとも呼ぶ。)7が、横引き管3内に挿入される。
【0023】
集合住宅の屋上における立管の掃除口2a付近には、ホース引上げ装置11が配置されると共に、このホース引上げ装置11を利用して、立管用洗浄ノズル5によって立管2内を洗浄する洗浄作業員P1も配置される。
一方、地上における横引き管掃除口4付近には、横引き管用洗浄ノズル7によって横引き管3内を洗浄する洗浄作業員P2が配置される。
【0024】
図2及び
図3は、立管2の上部の掃除口2a付近に配置される前記したホース引上げ装置11の好ましい一例を示している。
このホース引上げ装置11は、フレーム12と、このフレームの上部に配置されて回転可能に軸支されたドラム13aを有するドラムユニット13と、前記フレーム12に搭載されて前記ドラム13aに対して、正転及び逆転の駆動力を与える原動機14が備えられている。
【0025】
ホース引上げ装置11を構成する前記フレーム12は、アングル材などの鋼材を利用した一対の支柱材12aが、
図2における右側の前後に立設されており、筐体状に形成されたドラムフレーム12bが、一対の支柱材12aに対向するようにして左側に立設されている。
そして、一対の支柱材12aと、これに対向するドラムフレーム12bとの間には、水平方向に連結するアングル材による連結材12c,12dが取り付けられて、四辺形の枠状に結合されている。
【0026】
また、一対の支柱材12aとドラムフレーム12bの下端部には、矩形状に形成されたベース枠12eが結合されて、立体構造のフレーム12を構成している。
そして、前記したフレーム12の下底部に配置された矩形状のベース枠12eには、その底面側の隅角部にそれぞれブレーキ付きのキャスター12fが取り付けられている。これにより、前記キャスター12fを利用してフレーム12、すなわちホース引上げ装置11の全体を搬送することができる。
【0027】
前記したドラムフレーム12bは、鉛直方向に長く構成されて、フレーム12の上部に突出しており、この突出部がドラムユニット13の支持体としての機能を果たしている。 すなわち、ドラムユニット13は、前記したフレーム12の上部に突出したドラムフレーム12bに取り付けられている。このドラムユニット13には、立管用洗浄ノズル5を先端部に取り付けた送水ホース6が周回されるドラム13aが備えられる。
【0028】
そして、ドラム13aの軸方向の両側には、ドラム13aよりも径の大きな一対の鍔部13bが対向して配置されており、この一対の鍔部13bは、ドラム13aに周回される送水ホース6の外れ防止として機能する。
このドラム13aは、ドラムフレーム12bの上部に水平方向に配置された回転軸13cに取り付けられており、この回転軸13cにはドラムフレーム12b内において、スプロケット13dが取り付けられている。
【0029】
また、フレーム12の底部に配置されたベース枠12e上には、原動機としてのギヤードモータ14が搭載されている。このギヤードモータ14の駆動軸は、ドラムフレーム12bの下部に位置し、このギヤードモータ14の駆動軸には、ドラムフレーム12b内において、モータ側スプロケット14aが取り付けられている。
そして、モータ側スプロケット14aと、その上部のドラム側スプロケット13dとの間には、ドラムフレーム12b内において、図示せぬチェーンがかけ渡されており、この構成により、前記ドラム13aには、前記モータ14により正転および逆転の駆動力が与えられる。
【0030】
なお、前記したモータ14の上部には、配電ボックス15が取り付けられており、この配電ボックス15には、図示せぬフットスイッチなどの接続端子などが配置されている。 洗浄作業者P1は、前記フットスイッチを利用して、前記モータ14ヘの駆動電流のオン・オフおよびモータ14の正転・逆転操作、モータ14の回転速度の制御などを行うことができる。
【0031】
図4及び
図5は、この発明に係る排水管の洗浄工法において、好適に利用し得る立管用洗浄ノズル5の一例を示しており、
図4は立管用洗浄ノズル5の軸方向の上半部を断面図で示した透視図、
図5は立管用洗浄ノズル5を先端部側から見たノズル開口部分の透視図である。
この立管用洗浄ノズル5は、ノズル本体5Aと、ロータ5Bとにより構成され、これらノズル本体5Aとロータ5Bは、それぞれ金属素材により形成されている。
ノズル本体5Aには、先端部側の頭部5aと後端部側のホース接続口5bとの間に円筒状の中央軸5cが形成されており、この中央軸5cに、円環状に形成された前記ロータ5Bが軸回転が可能に取り付けられている。そして、ホース接続口5bには図示せぬ金属金具を介して、送水ホース6の先端部が取り付けられる。
【0032】
ノズル本体5Aには、前記中央軸5cの軸心に沿って、ホース接続口5bより供給される高圧水の送水空間5dが形成されており、この送水空間5dより、前記ロータ5Bの内周面に沿って形成された環状の給水路5eに対して高圧水が供給される。
ロータ5Bには、前記した環状の給水路5eに連通してノズル開口5gが施されており、このノズル開口5gは、
図4に示すようにロータ5Bの180度対向した位置に、軸心に対してそれぞれ直交する方向に形成されている。
【0033】
そして、この2つのノズル開口5gの高圧水の吐出口は、
図5に示されているように、ロータ5Bの回転軸心を対称として、それぞれ同方向に若干のオフセットが施された状態で形成されている。したがって、ノズル開口5gより吐出される高圧水の噴射の反作用により、前記ロータ5Bは、
図5に矢印Rで示した方向に回転駆動を受ける。
これにより、図に示す立管用洗浄ノズル5は、送水ホース6を介して送られる高圧水を、ノズル本体の周方向に回転させつつ噴射させる回転ノズルを構成している。
【0034】
次に
図6は、この発明に係る排水管の洗浄工法において好適に利用し得る横引き管用洗浄ノズル7の一例を、ノズル開口部分を透視状態で示している。
この横引き管用洗浄ノズル7は、金属素材により形成され、その先端部側の頭部7aは、ほぼ半球状に成形されている。そして、後端部側のホース接続口7bには、図示せぬ金属金具を介して、送水ホース8の先端部が取り付けられる。
【0035】
横引き管用洗浄ノズル7の中央部には、ホース接続口7bより供給される高圧水の貯留空間7cが形成されており、この貯留空間7cに連通してノズル開口7dが施されている。このノズル開口7dは、送水ホース8を介して送られる高圧水を、ホース8側から見た斜め後方に向かって噴射するように形成されている。
【0036】
なお、この例に示す横引き管用洗浄ノズル7においては、当該横引き管用洗浄ノズル7の軸心に対して、いずれも45度程度の傾斜角をもって斜め後方に向かって噴射する6本のノズル開口7dが、周方向に沿ってほぼ等間隔に施されている。
この横引き管用洗浄ノズル7によると、高圧水の後方噴射による推進力により、
図1に基づいて説明した横引き管3内を、管内を洗浄しながら前進することができる。
【0037】
以下において、前記したホース引上げ装置11、立管用洗浄ノズル5、横引き管用洗浄ノズル7を用いたこの発明に係る排水管の洗浄工法について、主に
図1を用いて工程ごとに順に説明する。
先ず第1工程では、立管2の上部、すなわち
図1に示す例においては、立管掃除口2aから、送水ホース6の先端部に取り付けられた立管用洗浄ノズル5を挿入し、当該立管用洗浄ノズル5を、高圧水の無噴射の状態で、前記立管2の下底部(立上がり部2b)に至るまで、送水ホース6を挿入する。
この場合、ホース引上げ装置11のドラム13aに、送水ホース6を例えば1~2周程度周回させた状態で、ドラム13aを回転駆動させる。これにより、送水ホース6をドラム13aを介して繰り出すことができ、立管用洗浄ノズル5を立管2の下底部(立上がり部2b)まで、定速度で下ろすことができる。
【0038】
第2工程は、前記した第1工程の実行と同時に、もしくはこれに前後して行なわれる。 この第2工程においては、横引き管3の下流側、すなわち
図1に示す横引き管掃除口4から送水ホース8の先端部に取り付けられた横引き管用洗浄ノズル7を挿入し、この横引き管用洗浄ノズル7から高圧水を噴射させながら、横引き管用洗浄ノズル7を、立管2の下底部(立上がり部2b)に向かって進行させることで、横引き管7内を洗浄する。
【0039】
この場合、先に説明したとおり横引き管用洗浄ノズル7は、送水ホース8側から見て斜め後方に向かって高圧水を噴射するので、高圧水の後方噴射による推進力により、横引き管用洗浄ノズル7は、横引き管3内を高圧水の噴射により管内を洗浄しながら前進することができる。
なお、この横引き管用洗浄ノズル7の前進に伴う送水ホース8の繰り出し操作時に、送水ホース8に対して往復する軸回転を与えることで、横引き管3内を前進する横引き管用洗浄ノズル7に対して、同様に往復する軸回転を与えることができる。
【0040】
これにより、横引き管用洗浄ノズル7の斜め後方に向かって噴射する高圧水の噴射軸に回転作用を与えることができる。したがって、横引き管3の内周面の全周にわたって高圧水の噴射による洗浄作用を与えることが可能となり、前記した第2工程において、横引き管3内が先に洗浄される。
【0041】
第3工程においては、前記した第1工程において、立管2の下底部(立上がり部2b)まで下ろした立管用洗浄ノズル5から、高圧水を噴射させながら、立管用洗浄ノズル5を立管2内で引上げることで、立管2内を洗浄する操作が行なわれる。
この場合、ホース引上げ装置11のドラム13aに、前記した第1工程とは逆方向に回転駆動を与える。これにより、送水ホース6及びホース先端部の立管用洗浄ノズル5を、ドラム13aの回転を利用して引上げることができる。したがって、洗浄作業員P1に加わる負担を大幅に軽減させることができる。
【0042】
前記したとおり立管用洗浄ノズル5は、ノズル開口5gからの洗浄水の噴射により、ロータ5Bが回転する回転ノズルが採用されており、立管2の洗浄にあたっては、前記ロータ5Bが90rpm乃至5000rpmの範囲で回転されるように、立管用洗浄ノズル5に加わる水圧が調整される。
加えて、立管用洗浄ノズル5は前記したホース引上げ装置11によって、立管2内を20mm/秒乃至300mm/秒の範囲の定速度で引上げられることが、より高い洗浄効果を得るために望ましい。
前記したロータ5Bの回転速度、並びに立管用洗浄ノズル5の引上げ速度の組み合わせにより、管内において固形物が螺旋状に取り残される度合いを、より低減し得る洗浄効果をもたらすことができると共に、洗浄時間を短縮させることにも寄与できる。
【0043】
第4工程においては、前記した第3工程の実行中において、横引き管用洗浄ノズル7から高圧水を噴射させながら、当該横引き管用洗浄ノズル7を、立管の下底部(立上がり部2b)から、横引き管3の下流側に向かって移動させる動作を、一回もしくは洗浄ノズル7の往復により複数回行なわれる。
前記した横引き管用洗浄ノズル7には、送水ホース8側から見た斜め後方に高圧水を噴射するノズル開口7dが施されており、この横引き管用洗浄ノズル7を横引き管3の下流側に向かって移動させる(送水ホース8を、横引き管掃除口4側に引き戻す)ことで、ノズル開口7dから後方(下流側)に向かって噴射される洗浄水により、立管2から剥離された固形物等を含む洗浄水を、効果的に横引き管3の下流側に押し流すことができる。
【0044】
この場合、前記した第3工程における立管2の洗浄によって、立管2の立上がり部2dに蓄積する固形物などを含む洗浄排水の量に応じて、横引き管用洗浄ノズル7をゆっくり引き戻す動作(第1モード)、又は横引き管用洗浄ノズル7を速く引き戻す動作(第2モード)、さらにノズル7の往復により複数回引き戻す動作(第3モード)が、選択的に実施される。
【0045】
なお、前記した立上がり部2dに蓄積する固形物などを含む洗浄排水の量は、横引き管掃除口4付近の洗浄作業員P2は、その溜まり具合を音の変化で聞き分けることができ、これにより、前記した第1~第3モードの引き戻し動作を、適切に選択して実施することになる。
この第4工程の実施により、前記した固形物を含む汚水が立管内に溜まり、特に建物の下層における個別の宅内に敷設された専用排水管を介して、前記した汚水が逆流するのを未然に防ぐことができる。
【0046】
以上説明した第1~第4工程の実施により、この発明に係る排水管の洗浄工法における主要な工程は終了するが、前記した第3工程における立管2の洗浄が終了しても、状況に応じて洗浄排水が横引き管3から流れ出るまで、第4工程でなされる横引き管用洗浄ノズル7の引戻し動作を継続させることが望ましい。
なお、前記した第3工程における立管2の洗浄工程が終了した時点において、立管2から引上げられる送水ホース6の汚れ状態により、洗浄後の立管2の汚れ状態を把握することができる。したがって、送水ホース6の汚れ具合によって立管2の洗浄が不足であると判断される場合には、前記した第1~第4工程を含む排水管の洗浄工法を再度繰り返すことが望ましい。
【0047】
以上の説明で明らかなとおり、この発明に係る排水管の洗浄工法によると、前記した第3工程と、これと同時に第4工程とが実施されることで、立管2から剥離された固形物等を含む洗浄排水を、効果的に横引き管3の下流側に押し流すことができる。
これにより、特に建物の下層における個別の宅内に汚水が逆流し、溢れた汚水によって室内を汚す問題を確実に防止することができるなど、前記した発明の効果の欄に記載した作用効果を得ることができる。
【0048】
なお、図に示した実施の形態においては、横引き管用洗浄ノズル7として、送水ホース側から見た斜め後方に対して高圧水を噴射するノズル開口7dを備えた固定ノズルを利用している。しかし、横引き管用洗浄ノズル7は固定ノズルに代えて、
図4及び
図5に示したような回転ノズルを用いることもできる。
この横引き管用洗浄ノズル7に利用される回転ノズルとしては、一例として
図4及び
図5に示すロータ5Bにおけるノズル開口5gが、斜め後方に向かって施される。そして、
図5に示すようにノズル開口5gの高圧水の吐出口を、ロータ5Bの回転軸心を対称として、それぞれ同方向に若干のオフセットを施した状態に設定することで、横引き管用洗浄用回転ノズルとして好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1a…1x 専用排水管
2 立管
2a 立管掃除口
2b 立上がり部(立管下底部)
3 横引き管
4 横引き管掃除口
5 立管洗浄用高圧水噴射ノズル(立管用洗浄ノズル)
5A ノズル本体
5B ロータ
5c 中央軸
5g ノズル開口
6 送水ホース(立管用)
7 横引き管洗浄用高圧水噴射ノズル(横引き管用洗浄ノズル)
7d ノズル開口
8 送水ホース(横引き管用)
11 ホース引上げ装置
12 フレーム
13 ドラムユニット
13a ドラム
13b 鍔部
14 原動機(ギヤードモータ)
15 配電ボックス
A…X 個別の宅内
P1,P2 洗浄作業員