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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022166714
(43)【公開日】2022-11-02
(54)【発明の名称】積層体及び物品
(51)【国際特許分類】
   B32B 7/023 20190101AFI20221026BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20221026BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20221026BHJP
【FI】
B32B7/023
B32B27/00 E
B32B9/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021072113
(22)【出願日】2021-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 太一
(72)【発明者】
【氏名】中島 一裕
(72)【発明者】
【氏名】尾▲崎▼ 真由
(72)【発明者】
【氏名】米澤 秀行
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AA12E
4F100AA21D
4F100AA21E
4F100AA25D
4F100AA32E
4F100AK25A
4F100AK25C
4F100AK42B
4F100AK42D
4F100AT00B
4F100AT00D
4F100BA05
4F100BA07
4F100CB05A
4F100CB05C
4F100HB31E
4F100JN00E
4F100JN06D
4F100JN18E
(57)【要約】
【課題】押圧に対する変形を抑制し、意匠性に優れた積層体を提供する。
【解決手段】第1の粘着剤層、第1の基体、第2の粘着剤層、及び第2の基体をこの順に備え、第2の粘着剤層は着色粘着剤からなり、第1の基体の少なくとも一方の面に光学機能層を有し、第1の粘着剤層と、前記第1の基体又は前記光学機能層との間の少なくとも一部に印刷層を有する積層体。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の粘着剤層、第1の基体、第2の粘着剤層、及び第2の基体をこの順に備え、
前記第2の粘着剤層は着色粘着剤からなり、
前記第1の基体の少なくとも一方の面に光学機能層を有し、
前記第1の粘着剤層と、前記第1の基体又は前記光学機能層との間の少なくとも一部に印刷層を有する積層体。
【請求項2】
前記光学機能層が高屈折率層である請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記高屈折率層がNbOx、SiNx、及びTiOより選択される少なくとも一種を含む、請求項2に記載の積層体。
【請求項4】
前記第1の粘着剤層の厚みが15μm以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項5】
前記第2の基体が光拡散層である、請求項1~4のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項6】
前記光拡散層が酸化亜鉛粒子、又は酸化チタン粒子を含む、請求項5に記載の積層体。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の積層体を透明な成形体に貼り合せた物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体及び該積層体を透明な成形体に貼り合わせた物品に関する。
【背景技術】
【0002】
ロールトゥロールプロセスによる一貫ラインで加飾用積層フィルムを作製した上で、任意の透明な成形体のサイズに加飾用積層フィルムを裁断して貼り合わせることにより、安価で任意のサイズの加飾フィルムを提供することが検討され、加飾フィルムと透明な成形体を積層した貼付品の開発が進められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、透明ガラス板の表面の外縁部分に白色の加飾領域を形成した、ディスプレイ用前面基板や白色の背面カバーガラスとして好適なカバーガラスが記載されており、酸化チタンを含有する白色のポリエチレンテレフタレートフィルム等の樹脂フィルムとガラス板とを粘着層を介して固着したカバーガラスが記載されている。そして、カバーガラスの白色度を向上させる白色の樹脂フィルムが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-145074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
加飾フィルムは安価で大面積化が容易である一方で、押圧変形に弱いという問題が生じていた。例えば、加飾フィルムを透明部材に貼付後、加飾フィルム側からの接触や他部材を押し当てた際に生じる押圧衝撃に弱く、加飾フィルムが容易に変形してしまうため、透明部材を介した加飾フィルムの見栄えが劣化してしまうという問題点が生じていた。
【0006】
本課題の対策として、加飾フィルムを構成する膜の厚みを厚くすれば押圧に対する変形は改善されるが、加飾フィルムが厚くなると加飾された物品の薄型化や小型化が困難になる。
また、従来の加飾フィルムにおいては、単色の色相しか表現できず、複数色の意匠を1枚のフィルムで表現することができないため、複数色の意匠を表現するには複数のフィルムを用いたり、別途印刷を施す必要があり、物品の薄型化や小型化、工程が増えることによるコストの増加等の課題があった。
しかしながら、近年ではさらに薄型化が可能で簡便に使用でき、意匠性に富んだ加飾フィルムが求められており、1枚のフィルムで複数色のデザインを付与し得る加飾フィルムが望まれている。
【0007】
そこで、押圧に対する変形を抑制し、1枚のフィルムで複数色のデザインを付与し得る意匠性に優れた加飾フィルムが求められていた。
【0008】
本願発明は上記に鑑みてなされたものであり、その課題は、押圧に対する変形を抑制し、意匠性に優れた積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、積層体に着色粘着剤層と、印刷層を設けることにより、簡便に複数色の意匠を表現し得ることを見出した。そして、第1の粘着剤層、第1の基体、第2の粘着剤層、及び第2の基体をこの順に備え、第2の粘着剤層を着色粘着剤とし、第1の基体の少なくとも一方の面に光学機能層を有し、第1の粘着剤層と、第1の基体又は光学機能層との間の少なくとも一部に印刷層を有する積層体とすることにより、押圧に対する変形を抑制し、意匠性に優れた積層体が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明は、下記の構成を有する。
〔1〕
第1の粘着剤層、第1の基体、第2の粘着剤層、及び第2の基体をこの順に備え、
前記第2の粘着剤層は着色粘着剤からなり、
前記第1の基体の少なくとも一方の面に光学機能層を有し、
前記第1の粘着剤層と、前記第1の基体又は前記光学機能層との間の少なくとも一部に印刷層を有する積層体。
〔2〕
前記光学機能層が高屈折率層である〔1〕に記載の積層体。
〔3〕
前記高屈折率層がNbOx、SiNx、及びTiOより選択される少なくとも一種を含む、〔2〕に記載の積層体。
〔4〕
前記第1の粘着剤層の厚みが15μm以上である、〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載の積層体。
〔5〕
前記第2の基体が光拡散層である、〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載の積層体。
〔6〕
前記光拡散層が酸化亜鉛粒子、又は酸化チタン粒子を含む、〔5〕に記載の積層体。
〔7〕
〔1〕~〔6〕のいずれか1項に記載の積層体を透明な成形体に貼り合せた物品。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、押圧に対する変形を抑制し、意匠性に優れた積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の一実施形態による積層体の概略断面図である。
図2図2は、本発明の一実施形態による積層体の概略断面図である。
図3図3は、本発明の一実施形態による積層体の製造方法を説明するための概略断面図である。
図4図4は、本発明の一実施形態による積層体の製造方法を説明するための概略断面図である。
図5図5は、本発明の一実施形態による積層体を透明部材に貼付した物品の概略断面図である。
図6図6は、比較例の積層体の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の一つの好適な実施形態について説明する。以下においては、説明の便宜のために本発明の好適な実施形態のみを示すが、勿論、これによって本発明を限定しようとするものではない。
なお、以下の説明において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0014】
[積層体]
本発明の実施形態にかかる積層体は、第1の粘着剤層、第1の基体、第2の粘着剤層、及び第2の基体をこの順に備え、
前記第2の粘着剤層は着色粘着剤からなり、
前記第1の基体の少なくとも一方の面に光学機能層を有し、
前記第1の粘着剤層と、前記第1の基体又は前記光学機能層との間の少なくとも一部に印刷層を有する。
【0015】
本実施形態の積層体は、第1の粘着剤層の第1の基体側とは反対側の面を、例えば、透明な成形体等の部材に貼付して用いることができる。
本実施形態の積層体は、印刷層を、第1の粘着剤層と、前記第1の基体又は前記光学機能層との間の少なくとも一部に設けることにより、積層体を第1の粘着剤層15側から視認した際に、印刷層が着色粘着剤からなる第2の粘着剤層(着色粘着剤層)よりも視認側に位置するため、着色粘着剤層の色の影響を受けない。そのため印刷層が視認しやすく、複数色の優れた外観を部材に付与し得る、意匠性に優れた積層体とすることができる。
また、本実施形態の積層体1は、光学機能層を第1の基体の少なくとも一方の面に有することにより、第2の基体側からの接触等による押圧を第2の粘着剤層が吸収し、押圧による変形を抑制することができる。
【0016】
図1に、本発明の一実施形態にかかる積層体の概略断面図を示す。
【0017】
本発明の実施形態にかかる積層体1は、第1の基体の少なくとも一方の面に光学機能層を有する必要があり、図1に示すように、光学機能層12を第1の基体14と第2の粘着剤層13との間に有していてもよい。また、本発明の実施形態にかかる積層体1は、印刷層を第1の粘着剤層と、第1の基体又は光学機能層との間の少なくとも一部に有する必要があり、図1に示すように、印刷層16を第1の粘着剤層と、第1の基体14との間の少なくとも一部に有していてもよい。
【0018】
図1においては、積層体1は、第1の粘着剤層15、第1の基体14、光学機能層12、第2の粘着剤層13、及び第2の基体11をこの順に備え、第1の基体14と、第1の粘着剤層15との間の少なくとも一部に印刷層16を有している。
この構成によれば、印刷層16は第1の基体14に形成されるため、印刷層の主剤と相性が良い基体を用いることで密着性を確保できる利点がある。
【0019】
本発明の実施形態にかかる積層体1は、第1の基体の少なくとも一方の面に光学機能層を有する必要があり、図2に示すように、光学機能層12を第1の基体14と第1の粘着剤層15との間に有していてもよい。また、本発明の実施形態にかかる積層体1は、印刷層を第1の粘着剤層と、第1の基体又は光学機能層との間の少なくとも一部に有する必要があり、図2に示すように、印刷層16を第1の粘着剤層と、光学機能層12との間の少なくとも一部に有していてもよい。
【0020】
図2においては、積層体1は、第1の粘着剤層15、光学機能層12、第1の基体14、第2の粘着剤層13、及び第2の基体11をこの順に備え、第1の粘着剤層15と、光学機能層12との間の一部に印刷層16を有している。
この構成によれば、印刷層16は光学機能層12に形成されるため、印刷層の主剤と相性が良い光学機能層を用いることで密着性を確保できる利点がある。
【0021】
<第1の基体>
本実施形態にかかる積層体において、第1の基体14を構成する材料としては、電波透過性の観点から、樹脂、ガラス、セラミックス等が挙げられる。
第1の基体14は、透明であることが好ましく、基材フィルム、樹脂成型物基体、ガラス基体、又は加飾を付与すべき物品のいずれかであってよく、基材フィルムであることが好ましい。
より具体的には、基材フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート(PC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリスチレン、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン、ポリシクロオレフィン、ポリウレタン、アクリル(PMMA)、ABSなどの単独重合体や共重合体からなる透明フィルムを用いることができる。
【0022】
これらの基材フィルムによれば、透明で光学吸収は少なく、光輝性や視認性に影響を与えることもない。但し、後に第1の基体14上に種々の層を形成する観点から、蒸着やスパッタ等の高温に耐え得るものであることが好ましく、従って、上記材料の中でも、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、アクリル、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ABS、ポリプロピレン、ポリウレタンが好ましい。なかでも、耐熱性とコストとのバランスがよいことからポリエチレンテレフタレートやシクロオレフィンポリマー、ポリカーボネート、アクリルが好ましい。
【0023】
基材フィルムは、単層フィルムでもよいし積層フィルムでもよい。
加工のし易さ等から、厚さは、例えば、6μm~250μm程度が好ましい。厚さの下限値は、より好ましくは15μm以上である。また、厚さの上限値は、より好ましくは200μm以下、更に好ましくは150μm以下である。また、基材フィルム上に形成される層との付着力を強くするために、プラズマ処理や易接着処理などが施されてもよい。
【0024】
基材フィルムには、必要に応じて平滑性、或いは防眩性ハードコート層が形成されていてもよい。ハードコート層が設けられることにより、擦傷性を向上させる事ができる。平滑性ハードコート層が設けられることにより、意匠性が増し、防眩性ハードコート層によるギラツキを防止する事が出来る。ハードコート層は、硬化性樹脂を含有する溶液を塗布する事により形成できる。
【0025】
硬化性樹脂としては、熱硬化型樹脂、紫外線硬化型樹脂、電子線硬化型樹脂等が挙げられる。硬化性樹脂の種類としてはポリエステル系、アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、アミド系、シリコーン系、シリケート系、エポキシ系、メラミン系、オキセタン系、アクリルウレタン系等の各種の樹脂が挙げられる。これら硬化性樹脂は、一種または二種以上を、適宜に選択して使用できる。これらの中でも、硬度が高く、紫外線硬化が可能で生産性に優れることから、アクリル系樹脂、アクリルウレタン系樹脂、およびエポキシ系樹脂が好ましい。
【0026】
基材フィルムの厚みは、例えば、23μm以上、好ましくは、50μm以上であり、また、生産性の観点から例えば、250μm以下、好ましくは、150μm以下である。基体の厚みは、例えば、膜厚計(ダイヤルゲージ)を用いて測定することができる。
【0027】
第1の粘着剤層15は、第1の基体14上に形成することができ、第1の基体14の表面の一部に形成してもよく、第1の基体14の表面の全てに形成してもよい。
【0028】
<第1の粘着剤層>
第1の粘着剤層15を形成する第1の粘着剤は25℃における弾性率が1.0×10Pa以上であることが好ましく、例えばアクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、エポキシ系粘着剤、及びポリエーテル系粘着剤のいずれかを単独で、或いは、2種類以上を組み合わせて使用することができる。透明性、加工性及び耐久性などの観点から、アクリル系粘着剤を用いることが好ましい。
【0029】
第1の粘着剤層15は、被着部材に貼付される際まで剥離ライナーにより保護されていることが好ましい。
【0030】
第1の粘着剤層はベースポリマーを含有する第1の粘着剤組成物(以下、単に「粘着剤組成物」と称する場合がある)により形成されることが好ましい。ベースポリマーとしては、粘着剤に用いられる公知のポリマーを用いることが可能である。ここで、ベースポリマーとは、第1の粘着剤組成物に含まれるポリマーの主成分をいう。また、この明細書において「主成分」とは、特記しない場合、50質量%を超えて含まれる成分を指す。
【0031】
(1-1)第1の粘着剤組成物
第1の粘着剤組成物は、ベースポリマーとして(メタ)アクリル系ポリマーを含むことが好ましい。なお、(メタ)アクリレートはアクリレート及び/又はメタクリレートをいう。
【0032】
本発明の実施形態における(メタ)アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル酸アルキルおよび水酸基含有モノマーをモノマー単位として含有する水酸基含有(メタ)アクリル系ポリマーであることが好ましい。水酸基を導入する手法は特に制限されないが、例えば、水酸基含有モノマーを共重合する手法が容易におこなうことができる。
【0033】
なお、本発明の実施形態における(メタ)アクリル系ポリマーとは、アクリル系ポリマーおよび/またはメタクリル系ポリマーをいい、また(メタ)アクリレートはアクリレートおよび/またはメタクリレートをいい、また(メタ)アクリル酸アルキルはアクリル酸アルキルおよび/またはメタクリル酸アルキルをいう。
【0034】
(メタ)アクリル酸アルキルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルなどをなどが挙げられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0035】
前記水酸基含有モノマーとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12-ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、(4-ヒドロキシメチルシクロへキシル)メチルアクリレート、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、ビニルアルコール、アリルアルコール、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテルなどが挙げられる。これらのモノマーは単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0036】
前記水酸基含有モノマーは、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量は(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して、1~10質量部であることが好ましく、2~6質量部であることがより好ましい。水酸基含有モノマーを共重合することにより、架橋などによる反応点が付与された水酸基含有(メタ)アクリル系ポリマーとすることとなる。
【0037】
本発明の実施形態に用いられる(メタ)アクリル系ポリマーは、重量平均分子量が30万~250万程度であることが望ましい。重量平均分子量が30万より小さい場合は、粘着剤組成物の凝集力が小さくなることにより糊残りを生じる傾向がある。重量平均分子量はGPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定して得られたものをいう。
【0038】
また、粘着性能のバランスが取りやすい理由から、前記(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移温度(Tg)が0℃以下(通常-100℃以上)、好ましくは-10℃以下であることが好ましい。ガラス転移温度が0℃より高い場合、ポリマーが流動しにくくなる。なお、(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、用いるモノマー成分や組成比を適宜変えることにより前記範囲内に調整することができる。
【0039】
また、前記モノマー以外のその他の重合性モノマーは、(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移点や剥離性を調整するための重合性モノマーなどを、本発明の効果を損なわない範囲で使用することができる。
【0040】
(メタ)アクリル系ポリマーにおいて用いられるその他の重合性モノマーとしては、例えば、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、シアノ基含有モノマー、ビニルエステルモノマー、芳香族ビニルモノマーなどの凝集力・耐熱性向上成分や、酸無水物基含有モノマー、アミド基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、N-アクリロイルモルホリン、ビニルエーテルモノマーなどの接着力向上や架橋化基点として働く官能基を有す成分を適宜用いることができる。これらのモノマー化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0041】
前記シアノ基含有モノマーとしては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどが挙げられる。
【0042】
前記ビニルエステルモノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ラウリン酸ビニルなどが挙げられる。
【0043】
前記芳香族ビニルモノマーとしては、例えば、スチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、α-メチルスチレンなどが挙げられる。
【0044】
前記アミド基含有モノマーとしては、例えば、アクリルアミド、ジエチルアクリルアミドなどが挙げられる。
【0045】
前記アミノ基含有モノマーとしては、例えば、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N-(メタ)アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリル酸アルキルアミノアルキルエステルなどが挙げられる。
【0046】
前記エポキシ基含有モノマーとしては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0047】
前記ビニルエーテルモノマーとしては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテルなどが挙げられる。
【0048】
本発明の実施形態において、その他の重合性モノマーは、単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量は(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して、0~300質量部であることが好ましく、0~150質量部であることがより好ましい。
【0049】
なお、(メタ)アクリル系ポリマーの重合法は特に制限されず、例えば、溶液重合、UV重合等の活性エネルギー線重合、塊状重合、乳化重合等の各種ラジカル重合などが挙げられる。また、得られる共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体など何れでもよい。
【0050】
ラジカル重合に用いられる重合開始剤、連鎖移動剤、乳化剤などの添加剤としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な添加剤を採用し得る。
【0051】
溶液重合などに用い得る重合溶媒としては、例えば、酢酸エチル、トルエンなどが挙げられる。重合溶媒は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0052】
溶液重合は、例えば、窒素などの不活性ガス気流下で、重合開始剤を加え、通常、50℃~70℃程度で、5時間~30時間程度の反応条件で行われる。
【0053】
溶液重合などに用い得る重合開始剤としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な熱重合開始剤を採用し得る。重合開始剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。このような重合開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス-2-メチルブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチル、4,4’-アゾビス-4-シアノバレリアン酸、アゾビスイソバレロニトリル、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2’-アゾビス[2-(5-メチル-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2’-アゾビス(N,N’-ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]ハイドレート(VA-057、和光純薬工業(株)製)などのアゾ系開始剤;過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ-sec-ブチルパーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ヘキシルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシピバレート、ジラウロイルパーオキシド、ジ-n-オクタノイルパーオキシド、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ(4-メチルベンゾイル)パーオキシド、ジベンゾイルパーオキシド、t-ブチルパーオキシイソブチレート、1,1-ジ(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、t-ブチルハイドロパーオキシド、過酸化水素などの過酸化物系開始剤;過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムの組み合わせ、過酸化物とアスコルビン酸ナトリウムの組み合わせなどの過酸化物と還元剤とを組み合わせたレドックス系開始剤;などが挙げられる。
【0054】
重合開始剤の使用量は、効果的に重合反応を進行させ得る等の点で、単量体成分の全量100質量部に対して、好ましくは1質量部以下であり、より好ましくは0.005質量部~1質量部であり、さらに好ましくは0.01質量部~0.7質量部であり、特に好ましくは0.02質量部~0.5質量部である。
【0055】
連鎖移動剤としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な連鎖移動剤を採用し得る。連鎖移動剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。このような連鎖移動剤としては、例えば、ラウリルメルカプタン、グリシジルメルカプタン、メルカプト酢酸、2-メルカプトエタノール、α-チオグリセロール、チオグリコール酸、チオグルコール酸2-エチルヘキシル、2,3-ジメルカプト-1-プロパノールなどが挙げられる。
【0056】
連鎖移動剤の使用量は、効果的に重合反応を進行させ得る等の点で、単量体成分の全量100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以下である。
【0057】
乳化剤としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な乳化剤を採用し得る。乳化剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。このような乳化剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウムなどのアニオン系乳化剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックポリマーなどのノニオン系乳化剤;などが挙げられる。
【0058】
乳化剤の使用量は、重合安定性や機械的安定性の観点から、単量体成分の全量100質量部に対して、好ましくは5質量部以下であり、より好ましくは0.3質量部~5質量部であり、さらに好ましくは0.4質量部~3質量部であり、特に好ましくは0.5質量部~1質量部である。
【0059】
アクリル系ポリマーは、好ましくは、UV重合、電子線重合などの活性エネルギー線重合によって製造し得る。アクリル系ポリマーは、より好ましくは、UV重合によって製造し得る。
【0060】
UV重合を行う場合には、好ましくは、光重合開始剤を使用する。
【0061】
光重合開始剤としては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な光重合開始剤を採用し得る。光重合開始剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。このような光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、α-ケトール系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、ケタール系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤などが挙げられる。
【0062】
ベンゾインエーテル系光重合開始剤としては、具体的には、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(市販品としては、例えば、商品名「イルガキュア651」、BASF社製)、アニソールメチルエーテルなどが挙げられる。
【0063】
アセトフェノン系光重合開始剤としては、具体的には、例えば、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(市販品としては、例えば、商品名「イルガキュア184」、BASF社製)、4-フェノキシジクロロアセトフェノン、4-t-ブチル-ジクロロアセトフェノン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン(市販品としては、例えば、商品名「イルガキュア2959」、BASF社製)、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(市販品としては、例えば、商品名「ダロキュア1173」、BASF社製)、メトキシアセトフェノンなどが挙げられる。
【0064】
α-ケトール系光重合開始剤としては、具体的には、例えば、2-メチル-2-ヒドロキシプロピオフェノン、1-[4-(2-ヒドロキシエチル)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オンなどが挙げられる。
【0065】
芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤としては、具体的には、例えば、2-ナフタレンスルホニルクロライドなどが挙げられる。
【0066】
光活性オキシム系光重合開始剤としては、具体的には、例えば、1-フェニル-1,1-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)-オキシムなどが挙げられる。
【0067】
ベンゾイン系光重合開始剤としては、具体的には、例えば、ベンゾインなどが挙げられる。
【0068】
ベンジル系光重合開始剤としては、具体的には、例えば、ベンジルなどが挙げられる。
【0069】
ベンゾフェノン系光重合開始剤としては、具体的には、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、ポリビニルベンゾフェノン、α-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどが挙げられる。
【0070】
ケタール系光重合開始剤としては、具体的には、例えば、ベンジルジメチルケタールなどが挙げられる。
【0071】
チオキサントン系光重合開始剤としては、具体的には、例えば、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、ドデシルチオキサントンなどが挙げられる。
【0072】
アシルフォスフィン系光重合開始剤としては、具体的には、例えば、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)(2,4,4-トリメチルペンチル)ホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-n-ブチルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-(2-メチルプロパン-1-イル)ホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-(1-メチルプロパン-1-イル)ホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-t-ブチルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)シクロヘキシルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)オクチルホスフィンオキシド、ビス(2-メトキシベンゾイル)(2-メチルプロパン-1-イル)ホスフィンオキシド、ビス(2-メトキシベンゾイル)(1-メチルプロパン-1-イル)ホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジエトキシベンゾイル)(2-メチルプロパン-1-イル)ホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジエトキシベンゾイル)(1-メチルプロパン-1-イル)ホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジブトキシベンゾイル)(2-メチルプロパン-1-イル)ホスフィンオキシド、ビス(2,4-ジメトキシベンゾイル)(2-メチルプロパン-1-イル)ホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)(2,4-ジペントキシフェニル)ホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)ベンジルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2-フェニルプロピルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2-フェニルエチルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)ベンジルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2-フェニルプロピルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2-フェニルエチルホスフィンオキシド、2,6-ジメトキシベンゾイルベンジルブチルホスフィンオキシド、2,6-ジメトキシベンゾイルベンジルオクチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-2,5-ジイソプロピルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-2-メチルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-4-メチルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-2,5-ジエチルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-2,3,5,6-テトラメチルフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-2,4-ジ-n-ブトキシフェニルホスフィンオキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)イソブチルホスフィンオキシド、2,6-ジメチトキシベンゾイル-2,4,6-トリメチルベンゾイル-n-ブチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-2,4-ジブトキシフェニルホスフィンオキシド、1,10-ビス[ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド]デカン、トリ(2-メチルベンゾイル)ホスフィンオキシドなどが挙げられる。
【0073】
光重合開始剤の使用量は、良好な重合性を発現させる等の観点から、単量体成分の全量100質量部に対して、好ましくは5質量部以下であり、より好ましくは0.01質量部~5質量部であり、さらに好ましくは0.05質量部~3質量部であり、特に好ましくは0.05質量部~1.5質量部であり、最も好ましくは0.1質量部~1質量部である。
【0074】
UV重合を行う場合には、好ましくは、多官能(メタ)アクリレートを使用する。
【0075】
多官能(メタ)アクリレートとしては、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切な多官能(メタ)アクリレートを採用し得る。多官能(メタ)アクリレートは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。このような多官能(メタ)アクリレートとしては、具体的には、例えば、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2-エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート等の多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化合物;アリル(メタ)アクリレート;ビニル(メタ)アクリレート;ジビニルベンゼン;エポキシアクリレート;ポリエステルアクリレート;ウレタンアクリレート;ブチルジ(メタ)アクリレート;ヘキシルジ(メタ)アクリレート;などが挙げられる。
【0076】
多官能(メタ)アクリレートの使用量は、良好な架橋性を発現させる等の観点から、単量体成分の全量100質量部に対して、好ましくは5質量部以下であり、より好ましくは0.01質量部~5質量部であり、さらに好ましくは0.05質量部~3質量部であり、特に好ましくは0.05質量部~1.5質量部であり、最も好ましくは0.1質量部~1質量部である。
【0077】
UV重合の方法は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の適切なUV重合の方法を採用し得る。このようなUV重合の方法としては、例えば、単量体成分に、光重合開始剤、必要に応じて多官能(メタ)アクリレートを配合し、紫外線を照射する。
【0078】
本発明の実施形態において、架橋剤としてはイソシアネート系架橋剤を用いることが好ましい。イソシアネート系架橋剤は密着性および凝集性を付与するため用いられる。
【0079】
イソシアネート系架橋剤としては、多官能イソシアネート化合物が用いられ、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する種々の化合物が含まれる。
【0080】
イソシアネート化合物としては、例えば、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの低級脂肪族ポリイソシアネート類、シクロペンチレンジイソシアネート、シクロへキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族イソシアネート類、2,4-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族イソシアネート類、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート3量体付加物(商品名コロネートL、日本ポリウレタン工業社製)、トリメチロールプロパン/へキサメチレンジイソシアネート3量体付加物(商品名コロネートHL、日本ポリウレタン工業社製)、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(商品名コロネートHX、日本ポリウレタン工業社製)などのイソシアネート付加物などが挙げられる。なかでも、イソシアヌレート環を有するものが特に好ましく、例えば、長鎖アルキレンジオール変性のイソシアヌレート環を有するポリイソシアネート(大日本インキ化学工業社製、バーノックDN-995)、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(商品名コロネートHX、日本ポリウレタン工業社製)などが挙げられる。これらの化合物は単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。
【0081】
本発明の実施形態に用いられる架橋剤の含有量は、粘着物性に影響を及ぼさない程度で配合すればよいが、通常(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対し、0.2~10質量部含有され、0.5~8質量部含有されていることが好ましく、1~6質量部含有されていることがより好ましい。
【0082】
なお、アクリル系粘着剤には、前記例示した以外の架橋剤(ポリアミン化合物、メラミン樹脂、アジリジン誘導体、尿素樹脂)、粘着付与剤、可塑剤、シランカップリング剤、着色剤、顔料などの粉体、染料、界面活性剤、表面潤滑剤、レベリング剤、軟化剤、酸化防止剤、帯電防止剤、老化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、無機または有機の充填剤、金属粉、粒子状、箔状物等を適宜に使用することもできる。これらの成分は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0083】
(1-2)第1の粘着剤層の形成方法
本発明の実施形態にかかる積層体は、第1の粘着剤層、第1の基体、第2の粘着剤層、及び第2の基体をこの順に備える。また、第1の基体と記第1の粘着剤層又は第2の粘着剤層との間の少なくとも一部に印刷層を有する。
第1の粘着剤層は、例えば、第1の基体の少なくとも一部に印刷層を設けた後に、印刷層を設けた面、又は印刷層を設けた面と反対側の面に、上記粘着剤組成物により形成した粘着剤層と剥離フィルムとの積層体の粘着剤層側の面とを貼り合せることにより形成してもよい。
また、第1の粘着剤層は、例えば、第1の基体の少なくとも一部に印刷層を設けた後に、印刷層を設けた面、又は印刷層を設けた面と反対側の面に、上記粘着剤組成物を透明無機層上に塗布し、溶剤等を乾燥除去することにより形成することもできる。粘着剤組成物の塗布にあたっては、適宜に一種以上の溶剤を加えてもよい。
【0084】
第1の粘着剤組成物の塗布方法としては、各種方法が用いられる。具体的には、例えば、ロールコート、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、ディップロールコート、バーコート、ナイフコート、エアーナイフコート、カーテンコート、リップコート、ダイコーター等による押出しコート法等の方法が挙げられる。
【0085】
前記加熱乾燥温度は、30℃~200℃程度が好ましく、40℃~180℃がより好ましく、80℃~160℃がさらに好ましい。加熱温度を上記の範囲とすることによって、優れた粘着特性を有する第1の粘着剤層を得ることができる。乾燥時間は、適宜、適切な時間が採用され得る。上記乾燥時間は、5秒~20分程度が好ましく、30秒~10分がより好ましく、1分~8分がさらに好ましい。
【0086】
前記粘着剤組成物が、活性エネルギー線硬化型粘着剤の場合には、紫外線等の活性エネルギー線を照射することにより第1の粘着剤層を形成することができる。紫外線照射には、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、ケミカルライトランプ等を用いることができる。
【0087】
第1の粘着剤層15の厚みは、粘着力及び生産性の観点から例えば、好ましくは3μm以上、より好ましくは5μm以上であり、更に好ましくは10μm以上であり、また、薄型化の観点から、例えば、好ましくは150μm以下、更に好ましくは100μm以下である。第1の粘着剤層15の厚みは、例えば、膜厚計(ダイヤルゲージ)を用いて測定することができる。
【0088】
<第2の基体>
本実施形態にかかる積層体において、第2の基体11としては、電波透過性の観点から、樹脂、ガラス、セラミックス等が挙げられる。
第2の基体の材料としては、好ましくは、樹脂が挙げられる。
樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル樹脂、例えば、ポリメタクリレートなどの(メタ)アクリル樹脂(アクリル樹脂および/またはメタクリル樹脂)、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマーなどのオレフィン樹脂、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリアリレート樹脂、メラミン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、セルロース樹脂、ポリスチレン樹脂、ノルボルネン樹脂などが挙げられる。これら樹脂は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0089】
樹脂は、耐熱性、機械特性などの観点から、好ましくは、ポリエステル樹脂が挙げられ、より好ましくは、PETが挙げられ、更に好ましくは白色PETが挙げられる。
【0090】
第2の基体は光拡散層であってもよい。第2の基体を光拡散層とすることにより、拡散反射に優れる積層体を得ることができる。
【0091】
光拡散層は、樹脂(バインダー樹脂)と、光拡散性粒子とを含んでいてもよい。光拡散性粒子は、バインダー樹脂中に分散していることが好ましい。
【0092】
上記バインダー樹脂の屈折率は、好ましくは1.2~2.4であり、より好ましくは1.4~2.0である。このような屈折率を有するバインダー樹脂を用いれば、光拡散性に優れる光拡散層を得ることができる。
【0093】
1つの実施形態においては、バインダー樹脂の屈折率は、好ましくは1.4~1.6であり、より好ましくは1.4~1.55である。このような屈折率を有するバインダー樹脂は、例えば、空隙を有している光拡散性粒子と組み合わせて用いられ得る。空隙を有している光拡散性粒子の屈折率は、例えば、1~1.4(好ましくは1~1.2)である。
【0094】
また、別の実施形態においては、バインダー樹脂の屈折率は、好ましくは1.6~2.4であり、より好ましくは1.6~2.0である。このような屈折率を有するバインダー樹脂は、例えば、光拡散性粒子と組み合わせて用いられ得る。
光拡散性粒子の屈折率は、例えば、1.2~2(好ましくは1.4~1.6)である。このような範囲であれば、光拡散性に優れる光拡散層を得ることができる。
【0095】
上記バインダー樹脂の屈折率と、光拡散性粒子の屈折率との差の絶対値は、好ましくは0.02~0.7であり、より好ましくは0.05~0.5である。このような範囲であれば、光拡散性に優れる光拡散層を得ることができる。
【0096】
上記光拡散性粒子としては、有機系粒子を用いてもよく、無機系粒子を用いてもよい。好ましくは無機系粒子が用いられる。
有機系粒子としては、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、アクリル-スチレン共重合体、メラミン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ベンゾグアナミン-メラミンホルムアルデヒド、シリカ等が挙げられる。なかでも好ましくは、ポリメチエルメタクリレートである。
無機系粒子としては、例えば、金属酸化物、金属フッ化物が挙げられる。金属酸化物の具体例としては、酸化ジルコニウム(ジルコニア)(屈折率:2.19)、酸化アルミニウム(屈折率:1.56~2.62)、酸化亜鉛(屈折率:1.9~2.0)、酸化チタン(屈折率:2.49~2.74)、酸化ケイ素(屈折率:1.25~1.46)が挙げられる。金属フッ化物の具体例としては、フッ化マグネシウム(屈折率:1.37)、フッ化カルシウム(屈折率:1.40~1.43)が挙げられる。
無機系粒子の屈折率は、好ましくは1.40以下または1.60以上であり、さらに好ましくは1.40以下または1.70~2.80であり、特に好ましくは1.40以下または2.00~2.80である。
本実施形態にかかる積層体においては、第2の基体が光拡散層であることが好ましく、光拡散層が酸化亜鉛粒子、又は酸化チタン粒子を含むことが好ましい。第2の基体としては、具体的には白色PET等が挙げられる。
【0097】
上記光拡散性粒子の数平均粒径は、好ましくは0.1μm~3μmであり、より好ましくは0.3μm~2μmであり、さらに好ましくは0.3μm~1.5μmであり、よりさらに好ましくは0.5μm~1.5μmである。このような光拡散性粒子を有する光拡散層を備える積層体を用いれば、拡散反射に優れた物品を得ることができる。なお、本明細書において、光拡散層中の光拡散性粒子の平均粒径は、顕微鏡を用いて、光拡散層の断面を観察することにより測定される。
【0098】
上記光拡散性粒子が空隙を有する粒子である場合、該粒子の平均空隙サイズ径は、好ましくは0.1μm~3μmであり、より好ましくは0.3μm~2μmであり、さらに好ましくは0.3μm~1.5μmであり、よりさらに好ましくは0.5μm~1.5μmである。このような光拡散性粒子を有する光拡散層を備える積層体を用いれば、拡散反射に優れる物品を得ることができる。なお、本明細書において、平均空隙サイズ径は、顕微鏡を用いて、光拡散層の断面を観察することにより測定することができる。
【0099】
上記光拡散性粒子の含有割合は、上記樹脂バインダー100質量部に対して、好ましくは1質量部~60質量部であり、より好ましくは2質量部~50質量部であり、さらに好ましくは5質量部~40質量部である。
【0100】
第2の基材の厚みは、耐押圧変形の観点から、例えば、23μm以上、好ましくは、50μm以上であり、また、生産性の観点から、例えば、250μm以下、好ましくは、150μm以下である。第2の基材の厚みは、例えば、膜厚計(ダイヤルゲージ)を用いて測定することができる。
【0101】
<遮光性層>
第2の基体11の第2の粘着剤層13側の面とは反対側の面には、積層体1を貼付する部材への遮光性の観点から可視光透過性を有さない遮光性層を備えてもよい。遮光性層を備えることで、例えば、本実施形態の積層体1を電子機器の筐体の装飾に用いた場合に、積層体1を通して筐体内部の回路が視認されてしまうことを防ぐことができる。
【0102】
遮光性層の材質は特に限定されず、例えば、先述の第2の基体11に用いることができる材料として例示した材料に色素や顔料、染料を添加し、黒色等に着色して用いることができる。
また、第2の基体11に遮光印刷等により遮光層を設けてもよく、遮光テープや遮光フィルムを用いてもよい。
【0103】
<光学機能層>
本発明の実施形態にかかる積層体は、第1の基体の少なくとも一方の面に光学機能層を含む必要がある。
光学機能層12は、印刷層16への影響の観点から第1の基体14と第2の粘着剤層13との間に設けることが好ましい。
光学機能層12を第1の基体14と第2の粘着剤層13との間に設けることにより、印刷層16の背面側が光学機能層12となるため、印刷層へ色相の影響を与えず、第2の基体の色相のみ影響を与える利点がある。
光学機能層12は、光学的な特徴を有する層であることが好ましく、高屈折率層、又は金属層を含んでいてもよい。光学機能層を形成する材料に特に限定はなく、金属及び樹脂を含んでいてもよい。
本発明の実施形態に係る積層体1は、光学機能層12を備えることにより正反射光の作用により意匠性に優れた加飾フィルムとすることができる。
【0104】
光学機能層12は、金属酸化物及び/又は金属窒化物からなる層であることが好ましい。なお、ここでいう金属酸化物、金属窒化物に含有される金属元素には、Si等の半金属元素が包含される。また、金属酸化物及び/又は金属窒化物には、金属酸窒化物が包含される。また、金属酸化物は、単独の金属元素の酸化物(単独酸化物)であってもよく、複数の金属元素の酸化物(複合酸化物)であってもよい。同様に、金属窒化物は、単独の金属元素の窒化物(単独窒化物)であってもよく、複数の金属元素の窒化物(複合窒化物)であってもよい。
金属元素としては、例えば、Ce、Nb、Si、Sb、Ti、Ta、Zr、Znなどが挙げられる。
【0105】
光学機能層12の材料として、より具体的には、例えば、CeO(2.30)、NbO(2.33)、Nb(2.15)、Nb(2.20)、SiO(1.46)、SiN(2.03)、Sb(2.10)、TiO(2.35)、Ta(2.10)、ZrO(2.05)、ZnO(2.10)、ZnS(2.30)などが挙げられる(上記各材料の括弧内の数値は屈折率である)。
特に、光学機能層12は、Nb、Si、Tiより選択される少なくとも一種を含むことが好ましく、例えばNbOx、SiO、TiOより選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。
【0106】
光学機能層12の厚みは、10nm~1000nmであることが好ましい。コストの観点から、800nm以下であることがより好ましく、500nm以下であることが更に好ましい。また、色味の観点から、15nm以上であることが好ましく、20nm以上であることがより好ましく、30nm以上であることが更に好ましい。
光学機能層12の厚みは、例えば、表面に垂直方向(厚み方向)の断面を露出させたうえ、透過型電子顕微鏡を用いて測定することができる。
【0107】
光学機能層12の屈折率は1.9以上が好ましく、2.0以上がより好ましい。また、厚み制御性の観点から、光学機能層12の屈折率は3.5以下が好ましく、3.0以下がより好ましい。
【0108】
また、光学機能層12は、高屈折率層を含むことが好ましく、屈折率の異なる層の積層体であってもよく、低屈折率層と高屈折率層とを備えていてもよい。
屈折率1.35~1.55程度の低屈折率層は、低屈折率材料として、例えば、酸化ケイ素、フッ化マグネシウム等を含有することが好ましく、酸化ケイ素を含有することがより好ましい。また、屈折率1.80~2.40程度の高屈折率層は、高屈折率材料として、酸化チタン(TiO)、酸化ニオブ(NbOx)、酸化ジルコニウム、スズドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、窒化ケイ素(SiNx)等を含有することが好ましく、NbOx、SiNx、及びTiOより選択される少なくとも一種を含有することがより好ましく、NbOxを含有することが更に好ましい。
また、低屈折率層と高屈折率層に加えて、屈折率1.50~1.85程度の中屈折率層として、例えば、酸化チタンや、上記低屈折率材料と高屈折率材料の混合物(酸化チタンと酸化ケイ素との混合物等)からなる薄膜を形成してもよい。
【0109】
なお、積層体1は光学機能層12を複数層備えてもよい。
例えば、酸化物によっては、酸化ニオブのように、粘着剤と積層された状態で紫外光を受けると還元される物質もあり、還元作用を防ぐために、更に保護層として酸化ケイ素の層を積層していても良い。
【0110】
<第2の粘着剤層>
本発明の実施形態に係る積層体1は、図1及び図2に示されるように、第1の基体14と第2の基体との間に第2の粘着剤層13を備える。第2の粘着剤層は着色粘着剤からなる。第2の粘着剤層には印刷層とは同色又は異なる色を付すことができ、着色粘着剤からなる第2の粘着剤層(着色粘着剤層)を設けることにより、本発明の実施形態に係る積層体1に複数の色を付すことができ意匠性に優れる。
【0111】
また、本発明の実施形態に係る積層体1は、印刷層16を第1の粘着剤層15と、第1の基体14又は前記光学機能層12との間の少なくとも一部に設けるため、積層体1の第1の粘着剤層側の面を透明な成形体に貼り合せて物品とした際には、印刷層16が着色された第2の粘着剤層13(着色粘着剤層)よりも視認側に近い位置となる。この場合、着色粘着剤層は、印刷層16の設けられていない部分のみ視認される。それにより、印刷層16と着色粘着剤との境界が明確となり印刷層16と着色粘着剤とがそれぞれはっきりと視認しやすくなるため、微細なデザインを表現することが可能となる。そして、印刷層16と、第2の粘着剤層13とを異なる色とした場合、複数の色を用いた意匠を発現することができる。
【0112】
印刷層16よりも着色粘着剤層が視認側に近い位置にある場合は、着色粘着剤層と印刷層16を重ねて視認することとなり、印刷層16がはっきりと視認できなくなる。また、印刷層16の色と着色粘着剤層の色が重なり、印刷層16の色が異なる色として視認され、意匠性に劣る。
【0113】
通常、複数色で着色されたデザインを発現させる場合には、別途着色のための加飾フィルムを用いるため、工程や全体の厚みは増加する。しかし、本発明の実施形態に係る積層体1によれば、工程や厚みの増加を伴わずに複数色で着色された意匠を表現することができる。
【0114】
さらに、本発明の実施形態に係る積層体1は、着色粘着剤層を第2の基体と、第1の基体又は光学調整層との間に有するため、第2の基体側からの押圧を第2の粘着剤層が吸収し、押圧による光学機能層及び第1の基体の変形を抑制することができる。
【0115】
着色粘着剤は、例えば、通常用いられる粘着剤を着色したものであってもよく、上述の第1の粘着剤組成物を着色した着色粘着剤組成物により形成したものであってもよい。
粘着剤を着色する方法は特に限定されないが、例えば粘着剤組成物に色素を微量添加することにより着色することができる。
【0116】
第2の粘着剤層の上には透明な成形体に貼付する際まで第2の粘着剤層を保護するために、剥離ライナーを設けることが好ましい。
【0117】
第2の粘着剤層13の厚みは、粘着力及び生産性の観点から例えば、好ましくは3μm以上、より好ましくは5μm以上であり、更に好ましくは10μm以上であり、また、薄型化の観点から例えば、好ましくは150μm以下、更に好ましくは100μm以下である。第2の粘着剤層13の厚みは、例えば、膜厚計(ダイヤルゲージ)を用いて測定することができる。
【0118】
第2の粘着剤層の上には透明な成形体に貼付する際まで第2の粘着剤層を保護するために、剥離ライナーを設けることが好ましい。
【0119】
<印刷層>
本実施形態にかかる積層体1は、印刷層を第1の粘着剤層と、第1の基体又は光学機能層との間の少なくとも一部に備える。
本実施形態にかかる積層体1は、印刷層が第1の粘着剤層と接していることが好ましく、例えば、図1に示すように、印刷層16を第1の基体14と、第1の粘着剤層15との間の少なくとも一部に有していてもよい。また、図2に示すように、印刷層16を光学機能層12と、第1の粘着剤層15との間の少なくとも一部に有していてもよい。
印刷層16が第1の粘着剤層15と接していることにより、印刷層の表面凹凸を粘着剤層が埋めることにより、表面凹凸が見えにくくなり意匠性が向上する利点がある。
【0120】
印刷層は、一般的に行なわれるスクリーン印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷、レーザープリンターなどにより形成することができる。また、印刷層に用いられるインクは、通常、顔料と、油脂類、天然樹脂、合成樹脂などを溶剤に溶かしてなるワニスを主剤とし、これに任意の滑剤や硬化剤などの添加物を加えたものなどが挙げられる。印刷層に用いられるインクの色相は、積層体の用途によって適宜決定することができる。
本実施形態にかかる積層体1は、印刷層16を第1の基体14と、第1の粘着剤層15との間の少なくとも一部に有し、印刷層16は第1の粘着剤層15と接していることが好ましい。
また、印刷層の厚みとしては、特に限定されないが、擦れやムラを生じることなく均一な印刷層を形成するためには、上限が好ましくは20.0μm、より好ましくは15.0μmであり、また、下限が好ましくは0.1μm、より好ましくは0.5μmである。
【0121】
<その他の層>
本実施形態の積層体には、本発明の効果を奏する限りにおいて上述の第1の粘着剤層、第1の基体、第2の粘着剤層、印刷層、及び第2の基体の他に、用途に応じてその他の層を設けてもよい。その他の層としては耐湿性や耐擦傷性等の耐久性を向上させるための保護層(耐擦傷性層)、バリア層(腐食防止層)、易接着層、ハードコート層、反射防止層、光取出し層、アンチグレア層等が挙げられる。
【0122】
<積層体の製造>
本実施形態にかかる積層体1の製造方法の一例について、説明する。
【0123】
本発明の実施形態係る積層体の製造方法は、特に限定されないが、下記(I)~(IV)の工程を含むことが好ましい。
(I)第1の基体上に光学機能層を形成し第1の積層体を得る工程
(II)第1の積層体の少なくとも一方の面の少なくとも一部に印刷層を形成し、第1の積層体の印刷層を形成した面に第1の粘着剤層を形成し第2の積層体を得る工程
(III)前記第2の積層体における前記第1の粘着剤層側の面とは反対側の面に、第2の粘着剤層を形成し、第3の積層体を得る工程
(IV)前記第3の積層体における前記第2の粘着剤層側の面と、第2の基体とを貼着する工程
【0124】
(I)第1の基体上に光学機能層を形成し第1の積層体を得る工程
第1の基体14上に光学機能層12を形成するにあたっては、例えば、真空蒸着、スパッタリング等の方法を用いることができる。
【0125】
(II)第1の積層体の少なくとも一方の面の少なくとも一部に印刷層を形成し、第1の積層体の印刷層を形成した面に第1の粘着剤層を形成し第2の積層体を得る工程
印刷層は、第1の粘着剤層と、第1の基体又は前記光学機能層との間の少なくとも一部に設ける必要がある。
例えば、図1に示すように、本発明の実施形態に係る積層体1が光学機能層12を第1の基体14と、第2の粘着剤層13との間に有する場合は、図3に示すように、第1の積層体における第1の基体14側の面の少なくとも一部に印刷層16を形成した後、第1の基体14の印刷層16を形成した側の面に上記の方法により第1の粘着剤層15を形成したものを第2の積層体(積層体4)としてもよい。
また、図2に示すように、本発明の実施形態に係る積層体1が光学機能層12を第1の基体14と、第1の粘着剤層15との間に有する場合は、図4に示すように、第1の積層体における光学機能層12側の面の少なくとも一部に印刷層16を形成した後、第1の基体14の印刷層16を形成した側の面に上記の方法により第1の粘着剤層15を形成したものを第2の積層体(積層体6)としてもよい。
【0126】
印刷層は、上記の方法により形成することができる。
【0127】
第1の積層体における印刷層を形成した面に、第1の粘着剤層を形成するにあたっては、例えば、支持体上に第1の粘着剤組成物を塗布し、溶剤等を乾燥除去し、また、必要に応じて架橋処理を施して粘着剤層を形成し、第1の積層体における印刷層を形成した面に上に、第1の粘着剤層15を転写してもよく、第1の積層体における印刷層を形成した面上に直接第1の粘着剤組成物を塗布して、第1の粘着剤層15を形成してもよい。
【0128】
第1の粘着剤層15を第1の積層体における印刷層を形成した面上に直接設ける場合は、例えば、第1の粘着剤組成物を第1の基体14上に塗布し、溶剤等を乾燥除去することにより第1の粘着剤層15を形成することができる。第1の粘着剤組成物の塗布にあたっては、適宜に一種以上の溶剤を加えてもよい。また、第1の粘着剤組成物が活性エネルギー線硬化型である場合、第1の粘着剤組成物の一部を重合したプレポリマーを作製し、第1の積層体における印刷層を形成した面上に塗布し、当該塗布層に紫外線等の活性エネルギー線を照射することにより第1の粘着剤層を形成することができる。
【0129】
支持体としては、例えば、剥離処理したシートを用いることができる。剥離処理したシートとしては、シリコーン剥離ライナー(セパレータ)が好ましく用いられる。
【0130】
第1の粘着剤組成物の塗布方法としては、各種方法が用いられる。具体的には、例えば、ロールコート、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、ディップロールコート、バーコート、ナイフコート、エアーナイフコート、カーテンコート、リップコート、ダイコーター等による押出しコート法等の方法が挙げられる。
【0131】
前記加熱乾燥温度は、30℃~200℃程度が好ましく、40℃~180℃がより好ましく、80℃~160℃がさらに好ましい。加熱温度を上記の範囲とすることによって、優れた粘着特性を有する第1の粘着剤層を得ることができる。乾燥時間は、適宜、適切な時間が採用され得る。上記乾燥時間は、5秒~20分程度が好ましく、30秒~10分がより好ましく、1分~8分がさらに好ましい。
【0132】
前記第1の粘着剤組成物が、活性エネルギー線硬化型粘着剤の場合には、紫外線等の活性エネルギー線を照射することにより第1の粘着剤層を形成することができる。紫外線照射には、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、ケミカルライトランプ等を用いることができる。
【0133】
第2の積層体における第1の粘着剤層15側の表面には、使用に供するまでの間、第1の粘着剤層15を保護するために、剥離ライナーを設けてもよい。
【0134】
(III)第2の積層体における第1の粘着剤層側の面とは反対側の面に、第2の粘着剤層を形成し、第3の積層体を得る工程
第2の積層体における前記第1の粘着剤層側の面とは反対側の面に第2の粘着剤層13を形成するにあたっては、例えば、支持体上に第2の粘着剤組成物を塗布し、溶剤等を乾燥除去し、また、必要に応じて架橋処理を施して第2の粘着剤層13を形成し、第2の積層体における第1の粘着剤層側の面とは反対側の面に、第2の粘着剤層13を転写してもよく、第2の積層体における第1の粘着剤層側の面とは反対側の面上に直接第2の粘着剤組成物を塗布して、第2の粘着剤層13を形成し第3の積層体を得てもよい。
【0135】
第2の粘着剤層13を第2の積層体における第1の粘着剤層側の面上に直接設ける場合は、例えば、第2の粘着剤組成物を第2の積層体における第1の粘着剤層側の面上に塗布し、溶剤等を乾燥除去することにより第2の粘着剤層13を形成することができる。
第2の粘着剤組成物の塗布にあたっては、適宜に一種以上の溶剤を加えてもよい。また、第2の粘着剤組成物が活性エネルギー線硬化型である場合、第2の粘着剤組成物の一部を重合したプレポリマーを作製し、塗布し、当該塗布層に紫外線等の活性エネルギー線を照射することにより第2の粘着剤層13を形成し第3の積層体を得ることができる。
【0136】
第3の積層体における第2の粘着剤層13側の表面には、使用に供するまでの間、第2の粘着剤層13を保護するために、剥離ライナーを設けてもよい。
【0137】
(IV)第3の積層体における第2の粘着剤層側の面と、第3の積層体とを貼着する工程
図1に示すように、本発明の実施形態に係る積層体1が光学機能層12を第1の基体14と、第2の粘着剤層13との間に有する場合は、図3に示すように、第1の粘着剤層15、印刷層16、第1の基体14、及び光学機能層12を積層した積層体4(第2の積層体)の光学機能層12側の面と、第2の粘着剤層13とを貼り合わせ、第2の粘着剤層13側の面と、第2の基体11とを貼り合わせることにより、図1に示す積層体1を形成してもよい。
また、第1の粘着剤層15、印刷層16、第1の基体14、及び光学機能層12を積層した積層体4(第2の積層体)の光学機能層12側の面と、第2の基体11上に第2の粘着剤層13を形成した積層体(図示せず)の第2の粘着剤層13側の面とを貼り合わせることにより貼着し、図1に示す積層体1を形成してもよい。
【0138】
図2に示すように、本発明の実施形態に係る積層体1が光学機能層12を第1の基体14と、第1の粘着剤層15との間に有する場合は、図4に示すように、第1の粘着剤層15、印刷層16、光学機能層12、及び第1の基体14を積層した積層体6(第2の積層体)の第1の基体14側の面と、第2の粘着剤層13とを貼り合わせ、第2の粘着剤層13側の面と、第2の基体11とを貼り合わせることにより、図2に示す積層体1を形成してもよい。
また、第1の粘着剤層15、印刷層16、光学機能層12、及び第1の基体14を積層した積層体6(第2の積層体)の第1の基体14側の面と、第2の基体11上に第2の粘着剤層13を形成した積層体(図示せず)の第2の粘着剤層13側の面とを貼り合わせることにより貼着し、図2に示す積層体1を形成してもよい。
【0139】
<物品>
本実施形態に係る物品は、本実施形態に係る積層体を透明な成形体に貼り合せたものである。
図5は、本発明の一実施形態による物品の概略断面図である。物品10は、図5に示す構成の積層体1が透明な成形体である透明部材20に貼付されている。図5では積層体1が透明部材20の視認される側(以下、外側ともいう)の面とは反対側(以下、内側ともいう)の面に対して第1の粘着剤層15を介して貼付されており、透明部材20及び第1の粘着剤層15を通して印刷層16が視認される。また、印刷層16が形成されない部分においては、透明部材20、第1の粘着剤層15及び第1の基体14を通して第2の粘着剤層13が視認される。すなわち、本実施形態の積層体1は、第2の粘着剤層13を介さずに印刷層16を視認できるため、印刷層16及び第2の粘着剤層13をそれぞれ明確に視認することが可能となった。また、本実施形態の物品10は、積層体1を透明部材20の内側に貼付して得られるため傷つきにくい。また、透明部材20の質感をそのまま活かしつつ透明部材20を装飾することができる。
【0140】
透明部材としては、透明性の観点から、ガラスやプラスチックからなる部材を使用することができる。
【0141】
透明部材の厚さは、その用途により適宜選択されるものであるが、100μm~2000μmであることが好ましい。
【0142】
積層体1を透明部材20に貼付する方法は特に限定されないが、例えば真空成形により貼付することができる。真空成形とは、積層体1を加熱軟化しつつ展張し、積層体1の透明部材側の空間を減圧し、必要に応じ反対側の空間を加圧することにより、積層体1を透明部材の表面の三次元立体形状に沿って成形しつつ貼付積層する方法である。
積層体1としては、上述の説明をそのまま援用し得る。
【0143】
<物品の用途>
本実施形態の積層体及び物品の用途としては、例えば、電子機器の筐体、車両用構造部品、車両搭載用品、家電機器の筐体、構造用部品、機械部品、種々の自動車用部品、電子機器用部品、家具、台所用品等の家財向け用途、医療機器、建築資材の部品、その他の構造用部品や外装用部品等が挙げられる。
電子機器および家電機器としてより具体的には、冷蔵庫、洗濯機、掃除機、電子レンジ、エアコン、照明機器、電気湯沸かし器、テレビ、時計、換気扇、プロジェクター、スピーカー等の家電製品類、パソコン、携帯電話、スマートフォン、デジタルカメラ、タブレット型PC、携帯音楽プレーヤー、携帯ゲーム機、充電器、電池等電子情報機器等が挙げられる。
車両関係では、インスツルメントパネル、コンソールボックス、ドアノブ、ドアトリム、シフトレバー、ペダル類、グローブボックス、バンパー、ボンネット、フェンダー、トランク、ドア、ルーフ、ピラー、座席シート、ステアリングホイール、ECUボックス、電装部品、エンジン周辺部品、駆動系・ギア周辺部品、吸気・排気系部品、冷却系部品等が挙げられる。
【実施例0144】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。
【0145】
(耐押圧変形評価)
積層体を透明な成形体(透明部材:ガラス)に貼り合わせた物品(サンプル)の加飾フィルム側に圧縮用ロードセル(ELM-10N)が接触するように治具を取付けた。治具に取り付けられているボルトを締めながら、加飾フィルムに加わる荷重を0.4Nに調整した。
また、荷重はロードセルに接続したアンプ(EZT)により測定値を検出した。
【0146】
(外観評価)
積層体を透明な成形体(透明部材)に貼り合わせた物品の透明部材側から光線を当て、押圧変形の有無を透明部材側から目視にて観察し、下記の判断基準により評価した。
〇:押圧変形は認められず、反射光線に歪みが無かった
×:押圧変形が認められ、反射光線に歪みがあった
【0147】
〔実施例1〕
(プレポリマー組成物Aの重合)
モノマー成分としてのn-ブチルアクリレート(BA)57部、シクロヘキシルアクリレート(CHA)16部、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)23部、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)7部、光重合開始剤としての商品名「イルガキュア651」(BASF社製)0.075部および商品名「イルガキュア184」(BASF社製)0.075部を配合した後、このモノマー混合物を窒素雰囲気下で紫外線に曝露して部分的に光重合させることにより、プレポリマー組成物A(重合率約10%)を得た。
(粘着剤組成物Aの調製)
得られたプレポリマー組成物A100部に、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(商品名「KAYARAD DPHA」、日本化薬社製)0.14部、シランカップリング剤(商品名「KBM-403」、信越化学工業社製)0.3部を添加して均一に混合し、粘着剤組成物Aを得た。ゲル分率は84%であった。
【0148】
〔第1の粘着剤層の作製〕
表面にシリコーン系離型層が設けられた厚み75μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(三菱ケミカル製「ダイアホイルMRF75」)を第二剥離フィルム(重剥離フィルム)として、第二剥離フィルム上に上記の粘着剤組成物Aを厚み20μmになるように塗布して塗布層を形成した。この塗布層上に、第一剥離フィルム(軽剥離フィルム)として片面がシリコーン剥離処理された厚み75μmのPETフィルム(三菱ケミカル製「ダイアホイルMRE75」)貼り合わせた。この積層体に、第一剥離フィルム側から、ランプ直下の照射面における照射強度が5mW/cmになるように位置調節したブラックライトにより、紫外線を照射して光硬化を行い、厚み20μmの粘着剤層A(第1の粘着剤層)を備えた粘着シート1を得た。
【0149】
〔ハードコート組成物の調製〕
紫外線硬化型ウレタンアクリレート樹脂(アイカ工業製「アイカアイトロン Z844-22HL」)をメチルイソブチルケトンに溶解し、固形分比率25%のハードコート組成物を調製した。
【0150】
〔ハードコート層付き基材フィルムの作製〕
第1の基体としての厚み50μmの基材フィルム(ポリエチレンテレフタラート基材(PET)三菱ケミカル株式会社製)の一方の面に、ハードコート組成物を塗布し、100℃で1分間乾燥した。その後、紫外線照射により硬化処理を行い、厚み1.5μmのハードコート層を形成しハードコート層付き基材フィルムを得た。
【0151】
〔光学機能層付き基材フィルムの作製〕
交流スパッタリング装置(AC:40kHz)にNbターゲット(大同特殊鋼株式会社製)を取り付けて、ArガスとOガスを導入しながらスパッタリングする事で、上記で得られたハードコート層付き基材フィルムのハードコート層上に光学機能層として膜厚60nmのNb層を成膜した。
上記手法により、光学機能層付き基材フィルムを作製した。
【0152】
〔印刷層の形成〕
ニューロング精密工業社製スクリーン印刷機とセイコーアドバンス社製インクを用いて、厚み5μmになるように印刷版を用いて上記で得られた光学機能層付き基材フィルムの光学機能層を形成した面とは反対側の面の一部に印刷層を形成して、積層体Aを作製した。
【0153】
上記で作製した粘着シート1の軽剥離フィルムを剥離し、上記で作成した積層体Aの印刷層を形成した側の面に貼り合わせ、積層体B(図3における積層体4)を作製した。
【0154】
〔粘着シート2の作製〕
(プレポリマー組成物Aの重合)
モノマー成分としてのn-ブチルアクリレート(BA)57部、シクロヘキシルアクリレート(CHA)16部、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)23部、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)7部、光重合開始剤としての商品名「イルガキュア651」(BASF社製)0.075部および商品名「イルガキュア184」(BASF社製)0.075部を配合した後、このモノマー混合物を窒素雰囲気下で紫外線に曝露して部分的に光重合させることにより、プレポリマー組成物A(重合率約10%)を得た。
(着色粘着剤組成物Bの調製)
得られたプレポリマー組成物A100部に、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(商品名「KAYARAD DPHA」、日本化薬社製)0.14部、シランカップリング剤(商品名「KBM-403」、信越化学工業社製)0.3部、分散剤(商品名「アジスパーPB821」、味の素ファインテクノ社製)0.04質量部、黄色顔料(商品名「Dalamar Yellow」Oakwood Chemical社製)0.21質量部を添加して均一に混合し、着色粘着剤組成物Bを得た。ゲル分率は84%であった。
【0155】
(粘着シート2の作製)
表面にシリコーン系離型層が設けられた厚み75μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(三菱ケミカル製「ダイアホイルMRF75」)を第二剥離フィルム(重剥離フィルム)として、第二剥離フィルム上に上記の着色粘着剤組成物Bを厚み20μmになるように塗布して塗布層を形成した。この塗布層上に、第一剥離フィルム(軽剥離フィルム)として片面がシリコーン剥離処理された厚み75μmのPETフィルム(三菱ケミカル製「ダイアホイルMRE75」)を貼り合わせた。この積層体に、第一剥離フィルム側から、ランプ直下の照射面における照射強度が5mW/cmになるように位置調節したブラックライトにより、紫外線を照射して光硬化を行い、厚み20μmの粘着剤層B(第2の粘着剤層)を備えた粘着シート2を得た。
【0156】
<積層体及び物品の製造>
上記で作製した粘着シート2の、軽剥離フィルムを剥離した面に、上記で作成した積層体Bの光学機能層側の面を貼り合わせ、重剥離フィルムを剥離した面に第2の基体として厚さ38μmの酸化チタン粒子含有の白色ポリエチレンテレフタラートフィルム(東レ株式会社製 「ルミラーE―20」)を貼り合わせ、実施例1の積層体を作製した。
【0157】
実施例1の積層体の第1の粘着剤層側の重剥離フィルムを剥離し、透明な成形体(透明部材)に貼付し、実施例1の物品を得た。透明部材としては、厚み1.3mmのガラスを用いた。試験片サイズは45mm×50mmである。
【0158】
本発明の実施形態に係る積層体は、様々な用途に使用し得るが、積層体を加飾フィルムとして、第1の粘着剤層15を介して透明な成形体である透明部材20に貼り合わせて加飾部材とすることができる。
【0159】
〔比較例1〕
実施例1と同様に粘着シート1及びハードコート層付き基材フィルムを作製し、厚み50μmの基材フィルム(ポリエチレンテレフタラート基材(PET)三菱ケミカル株式会社製)の上に印刷層を形成し積層体Cを作製した。
【0160】
実施例1と同様に作製した粘着シート1の軽剥離フィルムを剥離し、上記で作製した積層体Cの印刷層を形成した側の面に貼り合わせ、積層体Dを作製した。
【0161】
第2の基体として厚さ38μmの酸化チタン粒子含有の白色ポリエチレンテレフタラートフィルム(東レ株式会社製 「ルミラーE―20」)の一方の面に、ハードコート組成物を塗布し、100℃で1分間乾燥した。その後、紫外線照射により硬化処理を行い、厚み1.5μmのハードコート層を形成しハードコート層付き白色ポリエチレンテレフタラートフィルム(白色PETフィルム)を得た。
【0162】
交流スパッタリング装置(AC:40kHz)にNbターゲット(大同特殊鋼株式会社製)を取り付けて、ArガスとOガスを導入しながらスパッタリングする事で、上記で得られたハードコート層付き白色PETフィルムのハードコート層上に光学機能層として膜厚60nmのNb層を成膜し積層体Eを得た。
【0163】
実施例1と同様に作製した粘着シート2の、軽剥離フィルムを剥離した面に、上記で作成した積層体Dの基材フィルム側の面を貼り合わせ、重剥離フィルムを剥離した面に、上記で作製した積層体Eの光学機能層側の面を貼り合わせ、比較例1の積層体を作製した。
【0164】
実施例1における積層体を比較例1の積層体へ変更した以外は実施例1と同様にして比較例1の物品を作製した。
【0165】
以下の表1に、評価結果を示す。
【0166】
【表1】
【0167】
表1から明らかなように、実施例1の積層体では、透明部材に貼り合わせた物品の透明部材側から光を照射した場合においても、表面形状の変位による反射像に歪みが無く、良好な外観が得られた。
【0168】
一方、比較例1の積層体は、表面形状の変位により反射像が歪み、外観の見栄えが劣化する結果となった。
【0169】
本発明は上記実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0170】
本発明に係る積層体及び物品は、優れた外観を有し、本発明に係る積層体又は物品を備えた可飾部材は、様々な装置や部品等に使用することができる。例えば、携帯電話、スマートフォン、パソコン等の電子機器の筐体、車両用構造部品、車両搭載用品、家電機器の筐体、構造用部品、機械部品、種々の自動車用部品、電子機器用部品、家具、台所用品等の家財向け用途、医療機器、建築資材の部品、その他の構造用部品や外装用部品等、意匠性とコストの抑制が要求される様々な用途にも利用できる。
【符号の説明】
【0171】
1 積層体
10 物品
11 第2の基体
12 光学機能層
13 第2の粘着剤層
14 第1の基体
15 第1の粘着剤層
16 印刷層
図1
図2
図3
図4
図5
図6