(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022166723
(43)【公開日】2022-11-02
(54)【発明の名称】表裏同調グロスマット化粧シート
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20221026BHJP
【FI】
B32B27/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021072126
(22)【出願日】2021-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】吉田 佳奈
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AK01C
4F100AK01E
4F100AK03C
4F100AK15C
4F100AK41C
4F100AK42C
4F100AR00A
4F100AR00B
4F100AR00D
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10D
4F100BA10E
4F100CB00G
4F100EJ65
4F100GB07
4F100HB00A
4F100HB00D
4F100JK08C
4F100JL10E
4F100JN21A
4F100JN26B
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】原反層の伸びによる見当ズレを抑制することの可能な表裏同調グロスマット化粧シートを提供する。
【解決手段】透明熱可塑性樹脂層6と、透明熱可塑性樹脂層6の一方の面に順に積層された艶消層7及び光沢ネガ絵柄層8と、他方の面に設けられた絵柄層5と、を備え、光沢ネガ絵柄層8と透明熱可塑性樹脂層6と絵柄層5とが同調し、透明熱可塑性樹脂層6は、厚みが、0.060mm以上0.100mm以下であり、JIS K 7161に基づく引張り試験時の伸び率が長手方向及び幅方向共に100%以上200%以下の層からなる。透明熱可塑性樹脂層6の、厚みと伸び率とを限定しているため、絵柄層5を印刷する際のテンション変動の影響により生じる透明熱可塑性樹脂層6の伸びが抑制され、絵柄層5と透明熱可塑性樹脂層6と光沢ネガ絵柄層8との見当ズレを抑制することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明熱可塑性樹脂層と、
前記透明熱可塑性樹脂層の一方の面に順に積層された艶消層及び光沢ネガ絵柄層と、
前記透明熱可塑性樹脂層の他方の面に設けられた絵柄層と、を備え、前記光沢ネガ絵柄層と前記透明熱可塑性樹脂層と前記絵柄層とが同調し、
前記透明熱可塑性樹脂層は、厚みが、0.060mm以上0.100mm以下であり、JIS K 7161に基づく引張り試験時の伸び率が長手方向及び幅方向共に100%以上200%以下の層からなることを特徴とする表裏同調グロスマット化粧シート。
【請求項2】
前記絵柄層の前記透明熱可塑性樹脂層とは逆側の面に、接着剤層を介して着色樹脂層が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の表裏同調グロスマット化粧シート。
【請求項3】
前記着色樹脂層の前記接着剤層とは逆側の面に、プライマー層が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の表裏同調グロスマット化粧シート。
【請求項4】
前記透明熱可塑性樹脂層は、ポリオレフィン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエステル樹脂、及びポリ塩化ビニル樹脂のいずれか一種であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の表裏同調グロスマット化粧シート。
【請求項5】
前記長手方向の前記伸び率と、前記幅方向の前記伸び率との差が20%以下であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の表裏同調グロスマット化粧シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表裏同調グロスマット化粧シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、介護老人保健施設、シニアレジデンス等における化粧シートとして、木目柄や抽象柄といった化粧シートが用いられている。このような化粧シートとして、表裏同調を行い、本物の木に近い意匠を有する化粧シートが提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-199313号公報
【特許文献2】特開2016-101663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来の化粧シートにおいては、表裏同調を行う際に、原反層の伸びによって、見当合わせが極めて困難であるという問題がある。
本発明はこのような問題を解決するためになされたものであり、原反層の伸びによる見当ズレを抑制することの可能な表裏同調グロスマット化粧シートを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願発明の一態様によれば、透明熱可塑性樹脂層と、透明熱可塑性樹脂層の一方の面に順に積層された艶消層及び光沢ネガ絵柄層と、透明熱可塑性樹脂層の他方の面に設けられた絵柄層と、を備え、光沢ネガ絵柄層と透明熱可塑性樹脂層と絵柄層とが同調し、透明熱可塑性樹脂層は、厚みが、0.060mm以上0.100mm以下であり、JIS K 7161に基づく引張り試験時の伸び率が長手方向及び幅方向共に100%以上200%以下の層からなる、表裏同調グロスマット化粧シートが提供される。
ここでいう引張り試験時の伸び率とは、速度200mm/分で引張り試験対象物としての透明熱可塑性樹脂層を引っ張り、破断したときの試験対象物の伸び率であり、破断したときの試験対象物の長さをL、試験前の試験対象物の長さをL0としたとき、次式(1)で表される値である。
伸び率(%)=100×(L-L0)/L0 ……(1)
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、原反層の伸びによる見当ズレを抑制することができ、意匠性に優れた表裏同調グロスマット化粧シートを作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施形態に係る表裏同調グロスマット化粧シートの一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
ここで、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各厚みの比率などは現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状などが下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0009】
<構成>
図1は、本発明に係る表裏同調グロスマット化粧シート1の一例を示す断面図であって、表裏同調グロスマット化粧シート1は、透明熱可塑性樹脂層6と、透明熱可塑性樹脂層6の一方の面に順に積層された艶消層7及び光沢ネガ絵柄層8と、透明熱可塑性樹脂層6の他方の面に設けられた絵柄層5と、を備える。また、光沢ネガ絵柄層8と透明熱可塑性樹脂層6と絵柄層5とが同調している。透明熱可塑性樹脂層6は、厚みが、0.060mm以上0.100mm以下であり、JIS K 7161に基づく引張り試験時の伸び率が長手方向及び幅方向共に100%以上200%以下である。
【0010】
また、絵柄層5の透明熱可塑性樹脂層6とは逆側の面に、接着剤層4を介して着色樹脂層3が設けられている。
さらに、着色樹脂層3の接着剤層4とは逆側の面に、プライマー層2が設けられている。
透明熱可塑性樹脂層6は、ポリオレフィン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエステル樹脂、及びポリ塩化ビニル樹脂のいずれか一種であることが好ましい。
【0011】
図1において、プライマー層2は、本発明の表裏同調グロスマット化粧シート1を貼り合わせる基板(図示せず)への接着に使用される接着剤との密着性を向上させるために、必要に応じて施されるものである。
基板として最も一般的な木質基材などへの接着剤としては、例えば酢酸ビニルエマルジョン系や2液硬化型ウレタン系などの接着剤が汎用されているので、プライマー層2はこれら汎用接着剤に合わせた樹脂設計とすることが望ましい。
【0012】
プライマー層2としては、具体的には、例えばウレタン系、アクリル系、エチレン-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体系、ポリエステル系等を挙げることができ、中でもポリエステルポリオールとイソシアネート化合物との配合による2液硬化型ウレタン系のプライマー剤などが有効である。また、例えばシリカや硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の無機質粉末を添加すると、巻取保存時のブロッキングの防止や、投錨効果による接着力の向上などに有効である。
【0013】
着色樹脂層3は、熱可塑性樹脂からなり、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-α-オレフィン共重合体、プロピレン-α-オレフィン共重合体等のポリオレフィン樹脂や、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体、エチレン-不飽和カルボン酸共重合体金属中和物(アイオノマー)等のオレフィン系共重合体樹脂などのポリオレフィン系樹脂や、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート-イソフタレート共重合体、1,4-シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリカーボネート等のポリエステル樹脂、ポリ(メタ)アクリロニトリル、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、ポリアクリルアミド等のアクリル系樹脂、6-ナイロン、6,6-ナイロン、6,10-ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂等のスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール等のビニル系樹脂、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフロロエチレン、エチレン-テトラフロロエチレン共重合体、エチレン-パーフロロアルキルビニルエーテル共重合体等のフッ素系樹脂等、或いはそれらの2種以上の混合物、共重合体、複合体、積層体等を使用することができる。
【0014】
上記の各種の熱可塑性樹脂の中でも、近年の環境問題に対する社会的な関心の高まりに鑑みれば、ポリ塩化ビニル樹脂等の様な塩素(ハロゲン)を含有する樹脂の採用は望ましいものではなく、非ハロゲン系の熱可塑性樹脂を採用することが望ましい。中でも各種物性や加工性、汎用性、経済性等の面からは、ポリオレフィン系樹脂またはポリエステル樹脂(非晶質又は二軸延伸)を使用することが最も望ましい。
【0015】
上記ポリオレフィン系樹脂としては、既に列挙した様に多くの種類のものが知られており、それらの中から光輝性化粧シートの使用目的等に応じて適宜選択して使用すれば良いが、中でも一般的な用途に最も好適なのは、ポリプロピレン系樹脂、すなわちプロピレンを主成分とする単独または共重合体であり、具体的には、例えばホモポリプロピレン樹脂、ランダムポリプロピレン樹脂、ブロックポリプロピレン樹脂等を単独または適宜配合したり、それらにさらにアタクチックポリプロピレンを適宜配合した樹脂等を使用することができる。また、プロピレン以外のオレフィン系単量体を含む共重合体であってもよく、例えば、ポリプロピレン結晶部を有し、且つプロピレン以外の炭素数2~20のα-オレフィン、好ましくはエチレン、ブテン-1、4-メチルペンテン-1、ヘキセン-1またはオクテン-1、のコモノマーの1種または2種以上を15モル%以上含有するプロピレン-α-オレフィン共重合体などを例示することができる。また、通常ポリプロピレン系樹脂の柔軟化に用いられている低密度ポリエチレン、エチレン-α-オレフィン共重合体、エチレン-プロピレン共重合ゴム、エチレン-プロピレン-非共役ジエン共重合ゴム、スチレン-ブタジエン共重合体またはその水素添加物等の改質剤を適宜添加することもできる。
【0016】
着色樹脂層3には、更に、ポリブチレンテレフタレート樹脂、共重合タイプのポリエステル樹脂(通称PET-G)、アモルファスポリエステル樹脂(通称A-PET)などの樹脂が使える。これらの樹脂は、燃焼時の発熱量がオレフィン系樹脂より低いので不燃申請用途で使うことができる。
【0017】
着色樹脂層3には、必要に応じて例えば着色剤、充填剤(シリカ、タルク、酸化チタン、硫酸バリウム等)紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤(ステアリン酸、金属石けん等)、難燃剤、抗菌剤、防黴剤、減摩剤、光散乱剤、艶調整剤等の各種の添加剤から選ばれる1種以上が添加されていても良い。なお、着色樹脂層3は、光輝性化粧シートを貼り合わせる基板などの表面の色のばらつきや欠陥等を隠蔽するために、隠蔽性の不透明に着色されたものが用いられる場合が多いが、基板の表面の質感を活かすために、透明乃至半透明のものが用いられる場合もある。着色樹脂層3の厚みは、用途などによるが、50~100μm程度が好ましい。特に、不燃申請を行う場合は、樹脂系や厚み、発熱量等を考慮する。
【0018】
本発明における接着剤層4としては、着色樹脂層3と絵柄層5とを接着させるために、必要に応じて設けられるものであり、他の層が有する接着性を利用可能な場合には省略も可能である。接着剤層4に使用する接着剤の種類には特に制限はないが、イソシアネート系硬化剤を使用する2液硬化型ウレタン系接着剤を使用することが最も望ましい。具体的には、主剤としては例えばポリエステルポリオールまたはポリエーテルポリオール等、硬化剤としてはトリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等を使用することができる。
【0019】
本発明における絵柄層5としては、絵柄による意匠性を付与するために透明熱可塑性樹脂層6の一方の面に設けられるものである。着色ベタインキや光輝性顔料インキからなるベタ層を設けてもよい。また、染料または顔料等の着色剤を適当なバインダー樹脂と共に適当な希釈溶媒中に溶解または分散してなる印刷インキまたは塗料等を使用して、例えばグラビア印刷法またはオフセット印刷法等の各種印刷法や、グラビアコート法またはロールコート法等の各種塗工法などによって形成されるのが一般的である。バインダー樹脂としては、例えばウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、塩化酢酸ビニル系樹脂、ポリイミド系樹脂、硝化綿等またはそれらの混合物等がよく使用されるが、勿論これらに限定されるものではない。絵柄の種類は、例えば木目柄、石目柄、布目柄、抽象柄、幾何学模様、文字または記号、それらの組み合わせ等、所望により任意であり、単色無地であっても良い。
【0020】
透明熱可塑性樹脂層6に使用するものとしては、基本的には従来の一般の化粧シートに使用されていたものと同様のものを使用することができる。樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-α-オレフィン共重合体、プロピレン-α-オレフィン共重合体等のポリオレフィン樹脂や、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体、エチレン-不飽和カルボン酸共重合体金属中和物(アイオノマー)等のオレフィン系共重合体樹脂などのポリオレフィン系樹脂や、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート-イソフタレート共重合体、1,4-シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリカーボネート等のポリエステル樹脂、ポリ(メタ)アクリロニトリル、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、ポリアクリルアミド等のアクリル系樹脂、6-ナイロン、6,6-ナイロン、6,10-ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂等のスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール等のビニル系樹脂、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフロロエチレン、エチレン-テトラフロロエチレン共重合体、エチレン-パーフロロアルキルビニルエーテル共重合体等のフッ素系樹脂等、或いはそれらの2種以上の混合物、共重合体、複合体、積層体等を使用することができる。
【0021】
上記の各種の熱可塑性樹脂の中でも、近年の環境問題に対する社会的な関心の高まりに鑑みれば、ポリ塩化ビニル樹脂等の様な塩素(ハロゲン)を含有する樹脂の採用は望ましいものではなく、非ハロゲン系の熱可塑性樹脂を採用することが望ましい。中でも各種物性や加工性、汎用性、経済性等の面からは、ポリオレフィン系樹脂またはポリエステル樹脂(非晶質又は二軸延伸)を使用することが最も望ましい。これらのうちポリオレフィン系樹脂は、従来よりポリ塩化ビニル樹脂を代替する光輝性化粧シート用材料として採用が進んでいたものの、切削加工性の悪さが目立つことが指摘されて来たが、本発明によって切削加工性の格段の改善が可能となり、本発明の効果が最も顕著に発現する素材である。
【0022】
上記ポリオレフィン系樹脂としては、既に列挙した様に多くの種類のものが知られており、それらの中から光輝性化粧シートの使用目的等に応じて適宜選択して使用すれば良いが、中でも一般的な用途に最も好適なのは、ポリプロピレン系樹脂、すなわちプロピレンを主成分とする単独または共重合体であり、具体的には、例えばホモポリプロピレン樹脂、ランダムポリプロピレン樹脂、ブロックポリプロピレン樹脂等を単独または適宜配合したり、それらにさらにアタクチックポリプロピレンを適宜配合した樹脂等を使用することができる。
【0023】
また、プロピレン以外のオレフィン系単量体を含む共重合体であってもよく、例えば、ポリプロピレン結晶部を有し、且つプロピレン以外の炭素数2~20のα-オレフィン、好ましくはエチレン、ブテン-1、4-メチルペンテン-1、ヘキセン-1またはオクテン-1、のコモノマーの1種または2種以上を15モル%以上含有するプロピレン-α-オレフィン共重合体などを例示することができる。また、通常ポリプロピレン系樹脂の柔軟化に用いられている低密度ポリエチレン、エチレン-α-オレフィン共重合体、エチレン-プロピレン共重合ゴム、エチレン-プロピレン-非共役ジエン共重合ゴム、スチレン-ブタジエン共重合体またはその水素添加物等の改質剤を適宜添加することもできる。
【0024】
透明熱可塑性樹脂層6には、必要に応じて例えば充填剤(シリカ、タルク、酸化チタン、硫酸バリウム等)紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、滑剤(ステアリン酸、金属石けん等)、難燃剤、抗菌剤、防黴剤、減摩剤、光散乱剤、艶調整剤等の各種の添加剤から選ばれる1種以上が添加されていても良い。
透明熱可塑性樹脂層6の厚みは、0.060mm以上0.100mm以下であることが好ましい。また、透明熱可塑性樹脂層6は、JIS K 7161に基づく引張り試験時の伸び率が長手方向及び幅方向共に100%以上200%以下であることが好ましい。さらに、長手方向の伸び率と幅方向の伸び率との差が20%以下であることがより好ましい。このように、透明熱可塑性樹脂層6の厚み及び伸び率を限定することで、絵柄層5と透明熱可塑性樹脂層6と光沢ネガ絵柄層8との見当ズレを抑制するようにしている。
【0025】
艶消層7としては、表面の光沢を調整するためのものであり、各種の透明熱可塑性樹脂層6との接着の汎用性、多層光沢化粧シートを導管溝内へ彎曲させる際の変形追従性、及び耐擦傷性の点から、その樹脂成分(バインダー樹脂)として2液硬化型ウレタン樹脂を選択し、これに、所望の艶に応じて艶調整剤(マット剤或いは艶消剤とも呼称される)を添加或いは無添加とした組成物を塗工して得られる。表面を高光沢とする場合には、艶調整剤を無添加とする。また、低光沢とする場合には、添加する。
【0026】
艶調整剤としてはシリカ、アルミナ(α-アルミナ等)、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、カオリナイト、アルミノシリケート等の無機物、或いはポリカーボネート、ナイロン、ウレタン樹脂等の有機物(樹脂)の微粒子が挙げられる。艶調整剤の平均粒径は、1~10μm程度が好ましく、添加量は所望の光沢に応じて適宜選択するが、通常は最大で30質量%程度である。
【0027】
2液硬化型ウレタン樹脂としては、ポリオールを主体とし、イソシアネートを架橋剤(硬化剤)とするウレタン樹脂である。ポリオールとしては、分子中に2個以上の水酸基を有するもので、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール等が用いられる。また、イソシアネートとしては、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する多価イソシアネートが用いられる。
【0028】
例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、或いは、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂肪族(乃至は脂環式)イソシアネートが用いられる。或いはまた、上記各種イソシアネートの付加体又は多量体を用いることができる。例えば、トリレンジイソシアネートの付加体、トリレンジイソシアネート3量体(trimer)等がある。
【0029】
なお、上記イソシアネートに於いて脂肪族(乃至は脂環式)イソシアネートは耐候性、耐熱黄変性も良好に出来る点で好ましく、具体的には例えば1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートなどが使用できる。前記透明艶調整層の無機系顔料の粒径が2~3μmの粒径と3~4μmの粒径、且つ凸部の無機系顔料の粒径が10~15μmからなるとよりリアル感がでる。
前記各艶調整剤を添加して、マット部分の艶は反射光沢係数値で3から5程度とするのが意匠的に好ましい。
【0030】
光沢ネガ絵柄層8としては、絵柄層5の絵柄と同調させることが望ましい。光沢ネガ絵柄層8は、透明熱可塑性樹脂層6の、絵柄層5とは逆側の面に、絵柄層5と同調する光沢差を有し印刷された透明絵柄からなる。
光沢ネガ絵柄層8の材料の電離放射線硬化型樹脂としては、電磁波又は荷電粒子線の中で分子を架橋、重合させ得るエネルギー量子を有するもの、すなわち、紫外線又は電子線などを照射することにより、架橋、硬化する樹脂組成物を指す。具体的には、従来又は電離放射線もしくは紫外線硬化性樹脂組成物として慣用されている重合性モノマー及び重合性オリゴマーないしはプレポリマーの中から適宜選択して用いることができる。
【0031】
更に、不燃材料の申請に合格する化粧シートの場合には、表裏同調グロスマット化粧シート1が、加熱開始後20分間の総発熱量が、7.2MJ/m2以下、発熱速度が10秒以上継続して200kW/m2を超えない条件とすることにより、裏面に達する割れや防火上有害な変形が生じることがない表裏同調グロスマット化粧シート1を得ることができる。
【0032】
代表的には、重合性モノマーとして、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレート系モノマーが好適であり、中でも多官能性(メタ)アクリレートが好ましい。なお、ここで「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート又はメタクリレート」を意味する。多官能性(メタ)アクリレートとしては、分子内にエチレン性不飽和結合を2個以上有する(メタ)アクリレートであればよく、特に制限はない。具体的にはエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ( メタ) アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ) アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの多官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
本発明においては、前記多官能性(メタ)アクリレートとともに、その粘度を低下させるなどの目的で、単官能性(メタ)アクリレートを、本発明の目的を損なわない範囲で適宜併用することができる。単官能性(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの単官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
次に、重合性オリゴマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つオリゴマー、例えばエポキシ(メタ)アクリレート系、ウレタン(メタ)アクリレート系、ポリエステル(メタ)アクリレート系、ポリエーテル(メタ)アクリレート系などが挙げられる。ここで、エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。また、このエポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーを部分的に二塩基性カルボン酸無水物で変性したカルボキシル変性型のエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーも用いることができる。ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリエーテル(メタ)アクリレート系オリゴマーは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
【0035】
さらに、重合性オリゴマーとしては、他にポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリレート基をもつ疎水性の高いポリブタジエン(メタ)アクリレート系オリゴマー、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーン(メタ)アクリレート系オリゴマー、小さな分子内に多くの反応性基をもつアミノプラスト樹脂を変性したアミノプラスト樹脂(メタ)アクリレート系オリゴマー、あるいはノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族ビニルエーテル、芳香族ビニルエーテル等の分子中にカチオン重合性官能基を有するオリゴマーなどがある。
【0036】
<作製方法>
まず、透明熱可塑性樹脂層6として、厚みが、0.060mm以上0.100mm以下であり、JIS K 7161に基づく引張り試験時の伸び率が長手方向及び幅方向共に100%以上200%以下であるフィルム層を用意する。この透明熱可塑性樹脂層6の一方の面に、絵柄層5となる絵柄を印刷する。
次に、透明熱可塑性樹脂層6の他方の面に、艶消層7を塗工する。
次に、艶消層7の上に、絵柄層5の絵柄と同調するように光沢ネガ絵柄層8を例えばグラビア印刷塗工する。
【0037】
次に、着色樹脂層3として例えばフィルム層を用意し、着色樹脂層3の一方の面に、プライマー層2をグラビア塗工する。
次に、着色樹脂層3のプライマー層2を塗工した面とは逆側の面と、透明熱可塑性樹脂層6の絵柄層5側との間に、接着剤層4となる接着剤を塗工し、ドライラミネートすることにより、表裏同調グロスマット化粧シート1を得る。
【0038】
<効果>
透明熱可塑性樹脂層6の一方の面に絵柄層5を印刷する工程時等には、テンション変動の影響により透明熱可塑性樹脂層6に少なからず伸びが発生する。このように、透明熱可塑性樹脂層6に伸びが生じた場合、その後の光沢ネガ絵柄層8を印刷する工程において、見当ズレが生じ、意匠性が低下する。
本実施形態に係る表裏同調グロスマット化粧シート1は、透明熱可塑性樹脂層6の、厚みと伸び率とを限定している。そのため、透明熱可塑性樹脂層6の伸びを抑制することができ、結果的に、絵柄層5と透明熱可塑性樹脂層6と光沢ネガ絵柄層8との見当ズレを抑制することができる。
【0039】
また、このように、絵柄層5と透明熱可塑性樹脂層6と光沢ネガ絵柄層8との見当ズレを抑制することができるため、光沢ネガ絵柄層8の上に盛り上げ樹脂層を形成した場合でも、絵柄層5と透明熱可塑性樹脂層6と光沢ネガ絵柄層8と盛り上げ樹脂層との見当ズレを抑制することができる。そのため、より意匠性に優れた、不燃材料からなる表裏同調グロスマット化粧シート1を実現することができ、例えばより本物の木材に近いリアル感のある表裏同調グロスマット化粧シート1を提供することができる。
そのため、これまで木目意匠に拘っていたユーザに対しても販路を拡大することができ、工業製品である木目印刷シートの拡販に結びつけることができる。
【0040】
また、木材に替えて、表裏同調グロスマット化粧シート1を利用した木目印刷シートを用いることによって、木材資源の節約にもつながる。また、耐汚染性にも優れるため、耐久消費財として省資源化にもつながる。
特に、介護老人保健施設や、シニアレジデンス市場等では、木目柄等の化粧シートが多様されているため、本実施形態に係る不燃材料からなり、意匠性に優れたよりリアル感のある化粧シートを用いることによって、より安らぎ感のある防火性に優れた空間を提供することができる。
【実施例0041】
透明熱可塑性樹脂層6としての材質及び厚みの異なるフィルムについて、長さ方向(MD)及び幅方向(CD)のそれぞれの伸び率を測定した。伸び率は、JIS K-7161にしたがって引張り試験を行い、引張り速度200mm/分、測定温度23±2℃の環境下で、試験対象物としてのフィルムを引っ張り、試験対象物が破断したときの伸び率を測定した。伸び率は、前記(1)式により算出される。引張り試験機としては、例えば、テンシロン万能材料試験機などを用いることができる。
【0042】
実施例1~4、比較例1~4における透明熱可塑性樹脂層6としてのフィルムの材質、厚み、及び伸び率は表1に示す通りである。
次に、実施例1~4、比較例1~4に示す特性を有するフィルムを透明熱可塑性樹脂層6として用い、表裏同調グロスマット化粧シート1を作製した。透明熱可塑性樹脂層6として使用するフィルムが異なること以外は同一条件で表裏同調グロスマット化粧シート1を作製した。
作製した表裏同調グロスマット化粧シート1について、絵柄層5と透明熱可塑性樹脂層6と光沢ネガ絵柄層8との見当ズレを測定した。測定結果を表1に示す。
【0043】
実施例1~4及び比較例1~4のフィルムを用いて作製した表裏同調グロスマット化粧シート1について、見当ズレの評価を行った。測定した見当ズレが0.5mm未満であるとき「○」、0.5mm以上であるとき「△」、1.0mm以上であるとき「×」、として評価を行った。その結果を表1に示す。
【0044】
【0045】
表1に示すように、透明熱可塑性樹脂層6をなすフィルムとして、通常ポリプロピレン系樹脂の柔軟化に用いられている低密度ポリエチレンLDPE(比較例3)からなり厚みが0.060mmのフィルムを用いた場合には、引張り試験による伸び率が、MDが600%、CDが720%であり、見当ズレは3.0mmであった。
【0046】
また、通常透明熱可塑性樹脂層として用いられる、ポリオレフィン樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエステル樹脂、及びポリ塩化ビニル樹脂のいずれかを透明熱可塑性樹脂層6として用いた場合には、低密度ポリエチレン(比較例3)の場合よりも見当ズレを低減することができるが、伸び率(MD,CD)が比較的大きい場合(MD480%、CD500%)(比較例1 PP)或いは、厚みが比較的大きい場合(0.150mm)(比較例2 PP)の場合には、見当ズレが0.5mm以上となり、ややズレが大きい。また、厚みが比較的小さく(0.020mm)、伸び率がMD210%、CD210%である場合(比較例4 PET)には、見当ズレが0.6mmとなりややズレが大きい。
【0047】
これに対し、厚みが0.060mm以上0.100mm以下であり、伸び率がMD,CDともに100%以上200%以下であれば(実施例1~4)、見当ズレが0.5mm未満となり、許容範囲のズレとなることが確認された。なお、実施例1では透明熱可塑性樹脂層6として、PBTを用い、実施例2ではPETを用い、実施例3、4ではポリ塩化ビニル樹脂を用いた。
【0048】
以上、本発明の実施形態及び実施例を説明したが、本発明の表裏同調グロスマット化粧シート1は、上記の実施形態及び実施例に限定されるものではなく、発明の特徴を損なわない範囲において種々の変更が可能である。