(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022166734
(43)【公開日】2022-11-02
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20221026BHJP
G03G 21/00 20060101ALI20221026BHJP
G03G 21/14 20060101ALI20221026BHJP
【FI】
G03G15/20 510
G03G21/00 370
G03G21/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021072138
(22)【出願日】2021-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096426
【弁理士】
【氏名又は名称】川合 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100116207
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 俊明
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 哲哉
【テーマコード(参考)】
2H033
2H270
【Fターム(参考)】
2H033AA03
2H033BA11
2H033BA25
2H033BA27
2H033BB01
2H033BB28
2H033CA02
2H033CA27
2H033CA43
2H270KA35
2H270LA25
2H270LC02
2H270LC04
2H270LD01
2H270LD08
2H270MA35
2H270MC44
2H270MD17
2H270ZC03
2H270ZC04
2H270ZC08
(57)【要約】
【課題】多様な印刷条件に応じてヒータを適正に制御することができ、画像品位を向上させることができるようにする。
【解決手段】ベルト部材と、ベルト部材を加熱するヒータHtと、ヒータHtの裏面側に配設された第1の温度検出部と、ベルト部材の外周面と対向させて配設された第2の温度検知部と、第1、第2の温度検出部によって検出された検出温度に基づいて、前記ヒータHtを制御する加熱制御処理部Pr2とを有する。該加熱制御部処理部Pr2は、定着部を搬送される媒体の搬送速度及び媒体の厚さに応じて、第1、第2の温度検出部によって検出された検出温度の各重みを変更してヒータHtを制御する。多様な印刷条件に応じてヒータHtを適正に制御することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ベルト部材と、
(b)該ベルト部材内に配設され、ベルト部材を加熱するヒータと、
(c)前記ベルト部材内において前記ヒータの裏面側に配設された第1の温度検出部と、
(d)前記ベルト部材外においてベルト部材の外周面と対向させて配設された第2の温度検出部と、
(e)前記第1、第2の温度検出部によって検出された検出温度に基づいて前記ヒータを制御する加熱制御処理部とを有するとともに、
(f)該加熱制御処理部は、定着部を搬送される媒体の搬送速度及び媒体の厚さに応じて、前記第1の温度検出部によって検出された検出温度、及び前記第2の温度検出部によって検出された検出温度の各重みを変更して前記ヒータを制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記加熱制御処理部は、前記ヒータの目標温度と前記第1の温度検出部によって検出された検出温度との偏差、及び前記ベルト部材の目標温度と前記第2の温度検出部によって検出された検出温度との偏差に基づいてヒータを制御する請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
(a)前記第1の温度検出部によって検出された検出温度の重みは、前記ヒータの目標温度と第1の温度検出部によって検出された検出温度との偏差に基づいて算出される第1のデューティ値に乗算される第1の係数であり、
(b)前記第2の温度検出部によって検出された検出温度の重みは、前記ベルト部材の目標温度と第2の温度検出部によって検出された検出温度との偏差に基づいて算出される第2のデューティ値に乗算される第2の係数である請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記加熱制御処理部は、第1のデューティ値に第1の係数を乗算した値と第2のデューティ値に第2の係数を乗算した値とを加算して、ヒータをオン・オフさせるためのオンデューティを算出する請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
(a)前記第1の係数は、媒体が高速で搬送される場合に小さく、媒体が低速で搬送される場合に大きくされ、
(b)前記第2の係数は、媒体が高速で搬送される場合に大きく、媒体が低速で搬送される場合に小さくされる請求項3又は4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
(a)前記第1の係数は、媒体として薄紙が使用される場合に大きく、媒体として厚紙が使用される場合に小さくされ、
(b)前記第2の係数は、媒体として薄紙が使用される場合に小さく、媒体として厚紙が使用される場合に大きくされる請求項3~5のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記ヒータの目標温度は、媒体が高速で搬送される場合に高く、媒体が低速で搬送される場合に低くされる請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記ヒータの目標温度は、媒体として厚紙が使用される場合に高く、媒体として薄紙が使用される場合に低くされる請求項3又は7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記ベルト部材の目標温度は、媒体が高速で搬送される場合に高く、媒体が低速で搬送される場合に低くされる請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記ベルト部材の目標温度は、媒体として厚紙が使用される場合に高く、媒体として薄紙が使用される場合に低くされる請求項3又は9に記載の画像形成装置。
【請求項11】
(a)前記第1の温度検出部は、前記ヒータの裏面に当接させて配設された接触式の温度検出部であり、ヒータの温度を検出し、
(b)前記第2の温度検出部は、定着装置における媒体の入口側に配設された非接触式の温度検出部であり、ベルト部材の温度を検出する請求項1~10のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プリンタ、複写機、ファクシミリ装置、複合機等の画像形成装置、例えば、電子写真式のプリンタにおいては、画像形成部において、感光体ドラムの表面にトナー像が形成され、該トナー像が、媒体としての用紙に転写され、定着装置としての定着器において用紙に定着させられて画像が形成され、印刷が行われるようになっている。
【0003】
ところで、ベルト式の定着器は、走行自在に配設され、内側にヒータが配設された定着ベルトを備えた加熱ユニット、及び回転自在に配設され、定着ベルトを介してヒータに押し付けられる加圧ローラを備える。そして、前記定着器においては、定着ベルトの外周面と対向させて配設された定着サーミスタによって定着ベルトの温度が検出され、ヒータに当接させて配設されたヒータサーミスタによってヒータの温度が検出され、定着ベルトの温度及びヒータの温度に基づいてヒータの制御が行われる(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の定着器においては、多様な印刷条件、例えば、定着ベルトと加圧ローラとの間の定着部を搬送される用紙の搬送速度、用紙の厚さ等に応じてヒータを適正に制御することができず、画像品位が低下してしまう。
【0006】
本発明は、前記従来の定着器の問題点を解決して、多様な印刷条件に応じてヒータを適正に制御することができ、画像品位を向上させることができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そのために、本発明の画像形成装置においては、ベルト部材と、該ベルト部材内に配設され、ベルト部材を加熱するヒータと、前記ベルト部材内において前記ヒータの裏面側に配設された第1の温度検出部と、前記ベルト部材外においてベルト部材の外周面と対向させて配設された第2の温度検出部と、前記第1、第2の温度検出部によって検出された検出温度に基づいて前記ヒータを制御する加熱制御処理部とを有する。
【0008】
そして、該加熱制御処理部は、定着部を搬送される媒体の搬送速度及び厚さに応じて、前記第1の温度検出部によって検出された検出温度、及び前記第2の温度検出部によって検出された検出温度の各重みを変更して前記ヒータを制御する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、画像形成装置においては、ベルト部材と、該ベルト部材内に配設され、ベルト部材を加熱するヒータと、前記ベルト部材内において前記ヒータの裏面側に配設された第1の温度検出部と、前記ベルト部材外においてベルト部材の外周面と対向させて配設された第2の温度検出部と、前記第1、第2の温度検出部によって検出された検出温度に基づいて前記ヒータを制御する加熱制御処理部とを有する。
【0010】
そして、該加熱制御処理部は、定着部を搬送される媒体の搬送速度及び厚さに応じて、前記第1の温度検出部によって検出された検出温度、及び前記第2の温度検出部によって検出された検出温度の各重みを変更して前記ヒータを制御する。
【0011】
この場合、定着部を搬送される媒体の搬送速度及び厚さに応じて、第1の温度検出部によって検出された検出温度、及び第2の温度検出部によって検出された検出温度の各重みが変更されるので、多様な印刷条件に対応させてヒータを適正に制御することができる。その結果、画像品位を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施の形態におけるプリンタの制御ブロック図である。
【
図2】本発明の実施の形態におけるプリンタの概念図である。
【
図3】本発明の実施の形態における定着器の詳細図である。
【
図4】参考例のプリンタにおける制御部の動作を示すフローチャートである。
【
図5】参考例のプリンタにおいて第1の印刷形態で印刷を行ったときの画像品位を説明するためのタイムチャートである。
【
図6】参考例のプリンタにおいて第2の印刷形態で印刷を行ったときの画像品位を説明するためのタイムチャートである。
【
図7】参考例のプリンタにおいて第3の印刷形態で印刷を行ったときの画像品位を説明するためのタイムチャートである。
【
図8】本発明の実施の形態における制御部の動作を示すフローチャートである。
【
図9】本発明の実施の形態における加熱制御用テーブルの例を示す図である。
【
図10】本発明の実施の形態における第1の印刷形態で印刷を行ったときの画像品位を説明するためのタイムチャートである。
【
図11】本発明の実施の形態における第2の印刷形態で印刷を行ったときの画像品位を説明するためのタイムチャートである。
【
図12】本発明の実施の形態における第3の印刷形態で印刷を行ったときの画像品位を説明するためのタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。この場合、画像形成装置としてのプリンタについて説明する。
【0014】
図2は本発明の実施の形態におけるプリンタの概念図、
図3は本発明の実施の形態における定着器の詳細図である。
【0015】
図2において、10はプリンタ、Csは該プリンタ10の外装である筐体、Wtは頂壁、Bdはプリンタ10の本体、すなわち、装置本体である。
【0016】
該装置本体Bdの下部には、媒体収容部としての用紙カセット11が配設され、該用紙カセット11に媒体としての用紙Pが収容され、前記用紙カセット11の前端に繰出部材としてのホッピングローラ13が配設される。該ホッピングローラ13が回転させられると、用紙Pは、1枚ずつ分離させられて媒体搬送路としての用紙搬送路Rt1に繰り出される。
【0017】
該用紙搬送路Rt1には、ホッピングローラに隣接させて第1の搬送部材としての給紙ローラ対m1が配設され、該給紙ローラ対m1より下流側に、画像が形成される前の用紙Pの位置を検出する第1の媒体検出部としての書出センサs1が配設され、該書出センサs1より下流側に第2の搬送部材としてのレジストローラ対m2が配設される。そして、用紙搬送路Rt1における前記レジストローラ対m2より下流側に画像形成部Q1が配設される。
【0018】
該画像形成部Q1は、画像形成ユニット16、露光装置としてのLEDヘッドHd、転写部材としての転写ローラ18等から成り、画像形成ユニット16に、現像剤としてのトナーを収容する現像剤収容部としてのトナーカートリッジCt、像担持体としての感光体ドラム21、帯電装置としての後述される帯電ローラ22(
図1)、現像剤担持体としての後述される現像ローラ23等が配設される。
【0019】
用紙搬送路Rt1における前記画像形成部Q1より下流側には、定着装置としての定着器31が配設される。該定着器31は、第1の定着部材としての加熱ユニット34、及び該加熱ユニット34と対向させて配設された第2の定着部材としての加圧ローラ35を備え、画像形成部Q1から送られた用紙P上の現像剤像としてのトナー像を用紙Pに定着させる。
【0020】
また、前記用紙搬送路Rt1における定着器31より上流側には、定着器31に隣接させて、第2の媒体検出部としての入口センサs2が、定着器31より下流側には、定着器31に隣接させて、第3の媒体検出部としての出口センサs3が配設される。入口センサs2は、定着器31においてトナー像が定着させられる直前の用紙Pの前端の位置を、出口センサs3は、定着器31においてトナー像が定着させられた直後の用紙Pの後端の位置を検出する。
【0021】
そして、用紙搬送路Rt1における前記出口センサs3より下流側には、第3の搬送部材としての搬送ローラ対m3が配設され、該搬送ローラ対m3より下流側には、用紙Pを装置本体Bd外に排出するための第4の搬送部材としての排出ローラ対m4が配設される。また、該排出ローラ対m4に隣接させて排出口h1が形成され、前記頂壁Wtには、排出口h1から排出された用紙Pを積載するためのスタッカskが形成される。
【0022】
次に、定着器31について説明する。
【0023】
図3において、31は定着器、34は前記装置本体Bd内において固定させて配設された加熱ユニット、35は前記装置本体Bd内において回転自在に配設された加圧ローラ、50はプリンタ10の全体の制御を行う制御部である。
【0024】
前記加熱ユニット34は、加熱体としてのヒータ(面状ヒータ)Ht、該ヒータHtより加圧ローラ35側においてヒータHtの表面Saに当接させて配設された熱拡散部材3
7、ヒータHtの裏面Sb側に配設された第1の温度検出部としてのヒータサーミスタs4、並びにヒータHt、熱拡散部材37及びヒータサーミスタs4を包囲して走行自在に配設されたベルト部材としての定着ベルト32を備える。
【0025】
前記ヒータHtは、定着ベルト32内において用紙Pの幅方向に延在させて配設された面状発熱体から成り、ステンレス製の基板に、電気絶縁層、抵抗発熱体、電極及び保護層を順に積層することによって形成される。前記電極に電源49が接続され、該電源49から前記抵抗発熱体に所定の電力が供給されることによって、抵抗発熱体の発熱部が発熱する。該発熱部は、Letter縦サイズ(幅215.9〔mm〕)の用紙Pに対して印刷を行うことができるように、長手方向の寸法が224〔mm〕にされる。
【0026】
前記熱拡散部材37は、ステンレス鋼によって形成され、定着ベルト32内において用紙Pの幅方向に延在させて配設された板材から成り、ヒータHtの発熱に伴い発生させられた熱を、長手方向のムラを少なくして定着ベルト32に伝達する。
【0027】
該定着ベルト32は、筒状の形状を有する樹脂製のフィルム材料から成り、両端が図示されない所定の支持部材によって支持され、加圧ローラ35が回転させられるのに伴って連れ回りで走行させられる。本実施の形態においては、定着ベルト32がフィルム材料によって形成されるが、定着ベルト32を、ゴム材料、SUS(ステンレス鋼)等によって形成することもできる。定着ベルト32の走行に伴って、熱拡散部材37と定着ベルト32の内周面とが摩擦させられるので、熱拡散部材37の表面には図示されないグリスが塗布され、熱拡散部材37と定着ベルト32との摺動性が高くされる。
【0028】
前記ヒータサーミスタs4は、接触式の温度検出部であり、定着ベルト32内の、ヒータHtの長手方向における所定の箇所において、ヒータHtの裏面Sbに当接させて配設され、ヒータHtの温度を検出する。
【0029】
前記加圧ローラ35は、定着用の駆動部としての後述される定着モータM3(
図1)によって駆動され、矢印A方向に回転させられる。また、加圧ローラ35は、図示されない加圧機構によって定着ベルト32を介してヒータHt及び熱拡散部材37に押し付けられ、定着ベルト32との間に定着部としてのニップ部Npを形成する。
【0030】
そして、前記定着器31は、用紙搬送路Rt1における定着器31より上流側、すなわち、定着器31の入口側に、定着ベルト32の外周面と対向させて配設され、定着ベルト32の表面の温度を検出するための第2の温度検出部としての定着サーミスタs5を備える。該定着サーミスタs5は、非接触式の温度検出部であり、定着ベルト32外において、定着ベルト32の外周面との間に所定の距離を置いて配設され、定着ベルト32の表面から放射される赤外線を受光し、赤外線の光量を温度に変換する。
【0031】
なお、定着サーミスタs5を、定着ベルト32内においてヒータHtの裏面Sbに当接させて配設すると、ヒータHtの表面Saから裏面Sbへの熱伝導性が低いので、定着ベルト32の表面の温度を精度良く検出するのが困難になってしまう。また、定着サーミスタs5を、定着ベルト32内において定着ベルト32の内周面に当接させて配設すると、定着サーミスタs5と定着ベルト32の内周面とが接触することによって、定着ベルト32の内周面に塗布されたグリスのムラが生じたり、定着ベルト32の内周面に接触痕が生じたりして、画像に帯筋状のムラが生じてしまう。
【0032】
さらに、定着サーミスタs5を、用紙Pの搬送方向における定着器31より下流側に配設すると、定着に伴って、用紙Pから発生する水蒸気が定着ベルト32に付着することがあり、その場合、定着ベルト32の外周面から放射される赤外線の光量が変化し、定着ベルト32の外周面の温度を精度良く検出することができなくなってしまう。
【0033】
次に、前記プリンタ10の動作について説明する。
【0034】
搬送用の駆動部としての後述される搬送モータM2が駆動され、前記ホッピングローラ13が回転させられると、用紙Pは1枚ずつ分離させられて用紙搬送路Rt1に繰り出される。
【0035】
繰り出された用紙Pは、給紙ローラ対m1によって搬送され、レジストローラ対m2によって斜行が矯正された後、画像形成部Q1に送られる。
【0036】
このとき、書出センサs1が用紙Pの位置を検出すると、画像形成用の駆動部としての後述される駆動モータM1が駆動され、画像形成部Q1において、感光体ドラム21が回転させられ、帯電ローラ22が感光体ドラム21の表面を一様に帯電させる。そして、LEDヘッドHdが画像データに従って感光体ドラム21を露光すると、感光体ドラム21の表面に潜像としての静電潜像が形成され、現像ローラ23によって静電潜像にトナーが付着させられて、静電潜像が現像され、トナー像が形成される。
【0037】
続いて、用紙Pは感光体ドラム21と転写ローラ18との間を搬送され、その間に、トナー像が用紙Pに転写される。
【0038】
そして、トナー像が転写された用紙Pが、定着器31に送られ、定着ベルト32と加圧ローラ35との間のニップ部Npを搬送される間に、用紙P上に弱い静電気力で付着させられているトナー像が、定着ベルト32によって加熱され、溶融させられ、加圧ローラ35よって加圧されて用紙Pに定着させられる。このようにして、用紙Pに画像が形成される。
【0039】
画像が形成された用紙Pは、搬送ローラ対m3によって搬送され、排出ローラ対m4によって排出口h1から装置本体Bd外に排出され、スタッカskに積載される。
【0040】
次に、プリンタ10の制御装置について説明する。
【0041】
図1は本発明の実施の形態におけるプリンタの制御ブロック図である。
【0042】
図において、10はプリンタ、PCは、有線又は無線のLAN等によってプリンタ10と接続された上位装置としてのホストコンピュータである。
【0043】
また、50は制御部、IFは、プリンタ10をホストコンピュータPCと接続し、ホストコンピュータPCから印刷データを受信して印刷要求を受けたり、プリンタ10のステータス情報をホストコンピュータPCに送信したりする通信部としてのインタフェース部、53は第1の記憶部としてのROM、54は第2の記憶部としてのRAMである。本実施の形態においては、ROM53として、書換え可能なフラッシュROM等が使用される。
【0044】
前記制御部50は、図示されない演算装置としてのCPU、入出力ポート、タイマ等を備え、所定の制御周期、本実施の形態においては、0.1〔秒〕ごとにプリンタ10の全体の制御を行うとともに、ROM53に記録されたプログラムに基づいて各種の処理を行う。ROM53には、前記プログラムのほかに、制御部50が前記各種の処理を行うために必要な設定値、閾値等が記録される。また、本実施の形態においては、ROM53に、後述されるオンデューティDtyを算出するための加熱制御用テーブルTb1(
図9)が配設される。
【0045】
前記RAM54には、前記印刷データに基づいて生成され、印刷を行うための画像データのほかに、各種の制御用のデータが一時的に記録される。なお、前記RAM54は、前記CPUが演算を行う際にワークエリアとして機能する。
【0046】
そして、43は帯電ローラ22に帯電電圧を印加するための電源、44は現像ローラ23に現像電圧を印加するための電源、45は転写ローラ18に転写電圧を印加するための電源、M1は、感光体ドラム21、現像ローラ23等を回転させるための駆動モータ、46は該駆動モータM1を駆動するための電源、M2は、給紙ローラ対m1、レジストローラ対m2、搬送ローラ対m3、排出ローラ対m4等を回転させるための搬送モータ、47は該搬送モータM2を駆動するための電源、M3は加圧ローラ35を回転させるための定着モータ、48は該定着モータM3を駆動するための電源、49は前記ヒータHtに電力を供給するための電源、HdはLEDヘッドである。
【0047】
また、s1は書出センサ、s2は入口センサ、s3は出口センサ、s4はヒータサーミスタ、s5は定着サーミスタである。
【0048】
前記制御部50は、印刷処理部Pr1、加熱制御処理部Pr2等を有する。
【0049】
印刷処理部Pr1は、印刷処理を行い、ホストコンピュータPCから印刷データを受信し、印刷要求を受けると、印刷データを画像データに変換し、該画像データに基づいてLEDヘッドHdを駆動し、用紙Pに画像を形成し、印刷を行う。
【0050】
加熱制御処理部Pr2は、加熱制御処理を行い、ヒータサーミスタs4によって検出された温度、すなわち、検出温度Ts1、及び定着サーミスタs5によって検出された温度、すなわち、検出温度Ts2に基づいてヒータHtを制御する。そのために、加熱制御処理部Pr2は、ニップ部Npを搬送される用紙Pの搬送速度及び厚さの印刷条件に応じて、検出温度Ts1、Ts2の各重み、本実施の形態においては、後述される第1、第2の係数ε1、ε2を変更し、オンデューティDtyを算出し、ヒータHtをオン・オフさせる。
【0051】
次に、参考例のプリンタ10において印刷条件を異ならせた印刷形態で印刷を行ったときの画像について説明する。
【0052】
まず、参考例のプリンタ10の動作について説明する。
【0053】
図4は参考例のプリンタにおける制御部の動作を示すフローチャートである。
【0054】
参考例のプリンタ10において、図示されない電源がオンにされると、加熱制御処理部Pr2は、定着モータM3を駆動し、加圧ローラ35を回転させ、定着ベルト32を走行させるとともに、定着ベルト32の目標温度Teを、例えば、160〔℃〕としてヒータHtの制御を開始する(ステップS1)。
【0055】
そのために、加熱制御処理部Pr2は、ホストコンピュータPCから印刷データを受信して印刷要求を受けるのを待機し(ステップS2)、印刷要求を受けると、定着サーミスタs5によって検出された検出温度Ts2を読み込み、検出温度Ts2が前記目標温度TeになるようにヒータHtを制御する。
【0056】
そして、加熱制御処理部Pr2は、検出温度Ts2が印刷可能温度範囲に収まるのを待機する(ステップS3)。該印刷可能温度範囲は、印刷を良好に行うことができるように設定された温度の範囲であり、例えば、目標温度Teが160〔℃〕である場合、目標温度Teに対して±10〔℃〕の範囲、すなわち、150~170〔℃〕にされる。
【0057】
加熱制御処理部Pr2は、検出温度Ts2が印刷可能温度範囲より低い場合、ヒータHtをオンにし、検出温度Ts2が印刷可能温度範囲より高い場合、ヒータHtをオフにする。
【0058】
検出温度Ts2が印刷可能温度範囲に収まると、印刷処理部Pr1は印刷を開始する(ステップS4)。そのために、印刷処理部Pr1は、搬送モータM2を駆動し、ホッピングローラ13を回転させて給紙を行い、給紙ローラ対m1、レジストローラ対m2等を回転させて用紙Pを画像形成部Q1に送り、該画像形成部Q1においてトナー像を用紙Pに転写する。
【0059】
次に、加熱制御処理部Pr2は、制御部50の制御周期ごとに目標温度Teと検出温度Ts2との偏差ΔT2を算出し、PID計算を行い、ヒータHtをオン・オフさせるためのオンデューティDyを算出する(ステップS5)。該オンデューティDyは、制御周期においてヒータHtがオンになる時間が占める割合を表すものであり、偏差ΔT2が大きいほど大きく、偏差ΔT2が小さいほど小さい。
【0060】
続いて、加熱制御処理部Pr2は、前記オンデューティDyに基づいてヒータHtをオン・オフさせる(ステップS6)。
【0061】
そして、印刷処理部Pr1は、印刷データについての印刷が終了したかどうかを判断し(ステップS7)、印刷が終了した場合、処理を終了し、印刷が終了しなかった場合、加熱制御処理部Pr2は、残りの印刷データについて印刷を行うために再びオンデューティDyを算出する(ステップS5)。なお、定着ベルト32に用紙Pが張り付いたりして異常が発生した場合も、印刷処理部Pr1は処理を終了する。
【0062】
次に、フローチャートについて説明する。
ステップS1 加熱制御処理部Pr2はヒータHtの制御を開始する。
ステップS2 加熱制御処理部Pr2は印刷要求を受けるのを待機する。印刷要求を受けた場合はステップS3に進む。
ステップS3 加熱制御処理部Pr2は検出温度Ts2が印刷可能温度範囲に収まるのを待機する。検出温度Ts2が印刷可能温度範囲に収まった場合はステップS4に進む。
ステップS4 印刷処理部Pr1は印刷を開始する。
ステップS5 加熱制御処理部Pr2はヒータHtをオン・オフさせるためのオンデューティDyを算出する。
ステップS6 加熱制御処理部Pr2はオンデューティDyに基づいてヒータHtをオン・オフさせる。
ステップS7 印刷処理部Pr1は印刷が終了したかどうかを判断する。印刷が終了した場合は処理を終了し、印刷が終了しなかった場合はステップS5に戻る。
【0063】
ところで、用紙Pがニップ部Npを通過する際に、定着ベルト32の熱が用紙Pに奪われ、定着ベルト32の実際の温度である実温度Trが変化し、低下するが、実温度Trが低下した部分が定着サーミスタs5と対向する箇所に移動するまで、定着サーミスタs5は低下した実温度Trを検出することができず、検出遅れが生じる。
【0064】
例えば、前記定着ベルト32の外径が30〔mm〕であり、ニップ部Npの下流側の端部(出口端)から定着ベルト32の走行方向における下流側に63〔mm〕離れた位置において定着サーミスタs5が定着ベルト32と対向させて配設されている場合において、用紙Pが、210〔mm/s〕のような高速で搬送される場合は、検出遅れが短く、約0.3〔秒〕であるのに対して、用紙Pが、72〔mm/s〕のような低速で搬送される場合は、検出遅れが長く、約0.9〔秒〕である。
【0065】
さらに、定着サーミスタs5自体の熱応答時間、定着ベルト32からの放熱量、定着ベルト32の熱拡散量等を考慮すると、定着サーミスタs5は低下した実温度Trを一層検出することができなくなってしまう。
【0066】
すなわち、定着サーミスタs5の検出温度Ts2は用紙Pの搬送速度によって異なる。
また、用紙Pが薄紙である場合は、用紙Pの熱容量が小さく、用紙Pに奪われる熱が少ないので、定着ベルト32の実温度Trが低下する値が小さいのに対して、用紙Pが厚紙である場合は、用紙Pの熱容量が大きく、用紙Pに奪われる熱が多いので、定着ベルト32の実温度Trが低下する値が大きい。
【0067】
したがって、定着サーミスタs5の検出温度Ts2は用紙Pの厚さによっても異なる。
このように、定着サーミスタs5の検出温度Ts2が、用紙Pの搬送速度及び厚さの印刷条件によって異なるので、定着サーミスタs5によって定着ベルト32の外周面の温度を一律に検出すると、定着ベルト32の実温度Trを精度良く検出することができない。
【0068】
次に、前記参考例のプリンタ10において印刷条件の異なる印刷形態で画像を形成したときの画像品位について説明する。
【0069】
図5は参考例のプリンタにおいて第1の印刷形態で印刷を行ったときの画像品位を説明するためのタイムチャート、
図6は参考例のプリンタにおいて第2の印刷形態で印刷を行ったときの画像品位を説明するためのタイムチャート、
図7は参考例のプリンタにおいて第3の印刷形態で印刷を行ったときの画像品位を説明するためのタイムチャートである。
【0070】
この場合、第1の印刷形態では薄紙の用紙Pを高速で搬送して印刷を行い、第2の印刷形態では厚紙の用紙Pを低速で搬送して印刷を行い、第3の印刷形態では薄紙の用紙Pを低速で搬送して印刷を行った。また、各タイムチャートに、ヒータサーミスタs4によって検出された検出温度Ts1、定着サーミスタs5によって検出された検出温度Ts2、制御周期ごとに出口センサs3によって検出された用紙Pの有無を表すオン・オフ、用紙Pに形成された画像の光沢度を表すグロス値、及び制御周期ごとに算出されたオンデューティDyの推移を示した。
【0071】
なお、用紙Pを高速で搬送するときの搬送速度を210〔mm/s〕に、紙間を60〔mm〕にし、用紙Pを低速で搬送するときの搬送速度を72〔mm/s〕に、紙間を200〔mm〕にした。また、用紙Pとして薄紙を使用するときの坪量を80〔g/m2〕にし、厚紙を使用するときの坪量を250〔g/m2〕にした。
【0072】
画像のグロス値に基づいて画像品位を評価すると、第1の印刷形態においては、1〔ページ〕の画像のグロス値はほぼ安定しているが、第2、第3の印刷形態においては、検出温度Ts1、Ts2が変動するのに伴って、1〔ページ〕の画像のグロス値が同じ周期で変動することが分かる。
【0073】
これは、前述されたように、定着サーミスタs5が定着ベルト32の実温度Trを精度良く検出していないことを表している。
【0074】
なお、ヒータサーミスタs4によって検出される検出温度Ts1だけに基づいてヒータHtを制御することが考えられるが、ヒータサーミスタs4は、反通紙側に配設され、ヒータHtを介して定着ベルト32の温度を検出するので、ヒータサーミスタs4が定着ベルト32の実温度Trを検出するまでの時間が長くなり、検出遅れが生じる。また、ヒータサーミスタs4自体の熱応答時間によっても検出遅れが生じる。したがって、ヒータサーミスタs4だけでは定着ベルト32の実温度Trを精度良く検出することができない。
【0075】
次に、本実施の形態におけるプリンタ10の制御装置の動作について説明する。
【0076】
図8は本発明の実施の形態における制御部の動作を示すフローチャート、
図9は本発明の実施の形態における加熱制御用テーブルの例を示す図である。
【0077】
プリンタ10において、電源がオンにされると、印刷処理部Pr1はホストコンピュータPCから印刷データが送信されるのを待機し、印刷データが送信されると、加熱制御処理部Pr2は印刷データから、用紙Pの搬送速度及び厚さの印刷条件を読み出す。
【0078】
次に、加熱制御処理部Pr2は、定着モータM3を駆動し、加圧ローラ35を回転させ、定着ベルト32を走行させるとともに、
図9に示される、ROM53の加熱制御用テーブルTb1を参照し、用紙Pの搬送速度及び厚さに対応する定着ベルト32の目標温度Te2を設定し、ヒータHtの制御を開始する(ステップS11)。例えば、印刷が行われる用紙Pが薄紙であり、搬送速度が210〔mm/s〕である場合、定着ベルト32の目標温度Te2は160〔℃〕に設定される。なお、定着ベルト32の検出温度Ts2が目標温度Teに到達するまで、ヒータHtは連続してオンにされる。
【0079】
次に、加熱制御処理部Pr2は、ホストコンピュータPCから印刷要求を受けるのを待機し(ステップS12)、印刷要求を受けると、検出温度Ts2が印刷可能温度範囲に収まるのを待機する(ステップS13)。該印刷可能温度範囲は、目標温度Te2に対して±10〔℃〕の範囲にされ、目標温度Te2が160〔℃〕である場合、印刷可能温度範囲は150~170〔℃〕にされる。加熱制御処理部Pr2は、検出温度Ts2が印刷可能温度範囲より低い場合、ヒータHtをオンにし、検出温度Ts2が印刷可能温度範囲より高い場合、ヒータHtをオフにする。
【0080】
そして、検出温度Ts2が印刷可能温度範囲に収まると、印刷処理部Pr1は印刷を開始する(ステップS14)。そのために、印刷処理部Pr1は、前記搬送速度を読み込み、搬送モータM2を駆動し、ホッピングローラ13を回転させて用紙カセット11から用紙Pを繰り出して給紙を行い、給紙ローラ対m1、レジストローラ対m2等を回転させて用紙Pを画像形成部Q1に送り、該画像形成部Q1においてトナー像を用紙Pに転写する。
【0081】
続いて、加熱制御処理部Pr2は、前記加熱制御用テーブルTb1を参照し、用紙Pが薄紙であるか厚紙であるかの別、及び用紙Pの搬送速度に対応するヒータHtの目標温度Te1を読み出すとともに、ヒータサーミスタs4によって検出された検出温度Ts1を読み込み、該検出温度Ts1に基づいて、制御部50の制御周期ごとに、目標温度Te1と検出温度Ts1との偏差ΔT1を算出し、PID計算を行い、第1のデューティ値Dy1を算出する(ステップS15)。該第1のデューティ値Dy1は、ヒータサーミスタs4による温度の検出に基づいて算出された、制御周期においてヒータHtがオンになる時間が占める割合を表すものであり、偏差ΔT1が大きいほど大きく、偏差ΔT1が小さいほど小さくされる。
【0082】
また、加熱制御処理部Pr2は、定着サーミスタs5によって検出された検出温度Ts2を読み込み、該検出温度Ts2に基づいて、制御部50の制御周期ごとに、目標温度Te2と検出温度Ts2との偏差ΔT2を算出し、PID計算を行い、第2のデューティ値Dy2を算出する(ステップS16)。該第2のデューティ値Dy2は、定着サーミスタs5による温度の検出に基づいて算出された、制御周期においてヒータHtがオンになる時間が占める割合を表すものであり、偏差ΔT2が大きいほど大きく、偏差ΔT2が小さいほど小さい。
【0083】
なお、本実施の形態においては、用紙Pを高速で搬送するときの搬送速度を210〔mm/s〕に、紙間を60〔mm〕にし、用紙Pを低速で搬送するときの搬送速度を72〔mm/s〕に、紙間を200〔mm〕にした。また、用紙Pとして薄紙を使用するときの坪量を80〔g/m2〕にし、厚紙を使用するときの坪量を250〔g/m2〕にした。
【0084】
さらに、薄紙の用紙Pを高速で搬送するときのヒータHtの目標温度Te1を205〔℃〕にし、厚紙の用紙Pを高速で搬送するときの目標温度Te1を230〔℃〕にし、薄紙の用紙Pを低速で搬送するときの目標温度Te1を155〔℃〕にし、厚紙の用紙Pを低速で搬送するときの目標温度Te1を180〔℃〕にした。また、薄紙の用紙Pを高速で搬送するときの定着ベルト32の目標温度Te2を160〔℃〕にし、厚紙の用紙Pを高速で搬送するときの目標温度Te2を175〔℃〕にし、薄紙の用紙Pを低速で搬送するときの目標温度Te2を135〔℃〕にし、厚紙の用紙Pを低速で搬送するときの目標温度Te2を145〔℃〕にした。
【0085】
続いて、加熱制御処理部Pr2は、プリンタ10における印刷形態に基づいて、第1、第2のデューティ値Dy1、Dy2の重み付けを行い、ヒータHtをオン・オフさせるためのオンデューティDtyを算出する(ステップS17)。そのために、加熱制御処理部Pr2は、前記加熱制御用テーブルTb1を参照し、用紙Pの搬送速度及び厚さに対応する検出温度Ts1、Ts2の各重み、すなわち、第1、第2の係数ε1、ε2を読み出し、第1のデューティ値Dy1に第1の係数ε1を乗算した値と第2のデューティ値Dy2に第2の係数ε2を乗算した値とを加算して、オンデューティDty
Dty=Dy1×ε1+Dy2×ε2
を算出する(ステップS17)。
【0086】
なお、本実施の形態においては、ヒータHtをオン・オフさせるのに伴って、発生させられる熱量が不足したり過剰になったりすることがないように、第1、第2の係数ε1、ε2の和が1にされるが、検出温度Ts1、Ts2が安定し、画像品位を保持することができるようになった後においては、第1、第2の係数ε1、ε2の和を1にする必要がない。
【0087】
そして、加熱制御処理部Pr2は、オンデューティDtyに基づいてヒータHtをオン・オフさせる(ステップS18)。
【0088】
続いて、印刷処理部Pr1は、印刷データについての印刷が終了したかどうかを判断し、印刷が終了した場合、処理を終了し、印刷が終了しなかった場合、加熱制御処理部Pr2は、残りの印刷データについて印刷を行うために再びオンデューティDtyを算出する(ステップS15)。
【0089】
次に、フローチャートについて説明する。
ステップS11 加熱制御処理部Pr2はヒータHtの制御を開始する。
ステップS12 加熱制御処理部Pr2は印刷要求を受けるのを待機する。印刷要求を受けた場合はステップS13に進む。
ステップS13 加熱制御処理部Pr2は検出温度Ts2が印刷可能温度範囲に収まるのを待機する。検出温度Ts2が印刷可能温度範囲に収まった場合はステップS14に進む。
ステップS14 印刷処理部Pr1は印刷を開始する。
ステップS15 加熱制御処理部Pr2はヒータサーミスタs4によって検出された検出温度Ts1に基づいて第1のデューティ値Dy1を算出し、ステップS17に進む。
ステップS16 加熱制御処理部Pr2は定着サーミスタs5によって検出された検出温度Ts2に基づいて第2のデューティ値Dy2を算出する。
ステップS17 加熱制御処理部Pr2はオンデューティDtyを算出する。
ステップS18 加熱制御処理部Pr2はオンデューティDtyに基づいてヒータHtをオン・オフさせる。
ステップS19 印刷処理部Pr1は印刷が終了したかどうかを判断する。印刷が終了した場合は処理を終了し、印刷が終了しなかった場合はステップS15に戻る。
【0090】
次に、本実施の形態のプリンタ10において印刷条件の異なる印刷形態で画像を形成したときの画像品位について説明する。
【0091】
図10は本発明の実施の形態における第1の印刷形態で印刷を行ったときの画像品位を説明するためのタイムチャート、
図11は本発明の実施の形態における第2の印刷形態で印刷を行ったときの画像品位を説明するためのタイムチャート、
図12は本発明の実施の形態における第3の印刷形態で印刷を行ったときの画像品位を説明するためのタイムチャートである。
【0092】
この場合、第1の印刷形態では薄紙の用紙Pを高速で搬送して印刷を行い、第2の印刷形態では厚紙の用紙Pを低速で搬送して印刷を行い、第3の印刷形態では薄紙の用紙Pを低速で搬送して印刷を行った。また、各タイムチャートに、ヒータサーミスタs4によって検出された検出温度Ts1、定着サーミスタs5によって検出された検出温度Ts2、制御周期ごとに出口センサs3によって検出された用紙Pの有無を表すオン・オフ、用紙Pに形成された画像のグロス値、及び制御周期ごとに算出されたオンデューティDtyの推移を示した。
【0093】
グロス値に基づいて画像品位を評価すると、第1~第3の印刷形態のいずれにおいても、1〔ページ〕の画像のグロス値が安定していることが分かる。
【0094】
このように、本実施の形態においては、ニップ部Npを搬送される用紙Pの搬送速度及び厚さに応じて、ヒータサーミスタs4によって検出された検出温度Ts1、及び定着サーミスタs5によって検出された検出温度Ts2の各重みが変更されるので、多様な印刷条件に対応させてヒータHtを適正に制御することができる。その結果、画像品位を向上させることができる。
【0095】
なお、本実施の形態においては、第1の温度検出部としてのヒータサーミスタs4がヒータHtに当接させて配設されるようになっているが、ヒータHtの近傍においてヒータHtの温度を検出することができれば、第1の温度検出部をヒータHtに当接させて配設する必要はない。
【0096】
本実施の形態においては、プリンタ10について説明したが、本発明を複写機、ファクシミリ装置、複合機等の画像形成装置に適用することができる。
【0097】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【符号の説明】
【0098】
10 プリンタ
32 定着ベルト
Ht ヒータ
Np ニップ部
P 用紙
Pr2 加熱制御処理部
Sb 裏面
s4 ヒータサーミスタ
s5 定着サーミスタ
Ts1、Ts2 検出温度