(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022166758
(43)【公開日】2022-11-02
(54)【発明の名称】水中油型乳化化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/06 20060101AFI20221026BHJP
A61K 8/894 20060101ALI20221026BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20221026BHJP
A61Q 1/02 20060101ALI20221026BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20221026BHJP
【FI】
A61K8/06
A61K8/894
A61K8/34
A61Q1/02
A61Q17/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021072164
(22)【出願日】2021-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 肇
(72)【発明者】
【氏名】西 春佳
(72)【発明者】
【氏名】松井 礼奈
(72)【発明者】
【氏名】直井 香代子
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB051
4C083AB242
4C083AB352
4C083AC101
4C083AC102
4C083AC122
4C083AC342
4C083AC422
4C083AC442
4C083AC472
4C083AC532
4C083AC542
4C083AC852
4C083AD042
4C083AD092
4C083AD152
4C083AD161
4C083AD162
4C083AD352
4C083BB13
4C083BB25
4C083CC12
4C083CC19
4C083DD33
4C083EE01
4C083EE03
4C083EE06
4C083EE07
4C083EE11
4C083EE17
(57)【要約】
【課題】良好な耐水性及びトーンアップ効果を発現させることが可能な、顔料級疎水化処理粒子を含む水中油型乳化化粧料を提供する。
【解決手段】本開示の水中油型乳化化粧料は、水を含む分散媒、及びこの分散媒中に分散している油滴を含み、分散媒は、HLBが10.0超18.0以下の第1のポリエーテル変性シリコーン、低級アルコール、及び顔料級疎水化処理粒子を含み、油滴は、油分、及びHLBが10.0以下の第2のポリエーテル変性シリコーンを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を含む分散媒、及び
前記分散媒中に分散している油滴
を含む、水中油型乳化化粧料であって、
前記分散媒は、HLBが10.0超18.0以下の第1のポリエーテル変性シリコーン、低級アルコール、及び顔料級疎水化処理粒子を含み、
前記油滴は、油分、及びHLBが10.0以下の第2のポリエーテル変性シリコーンを含む、
水中油型乳化化粧料。
【請求項2】
前記第2のポリエーテル変性シリコーンは、ポリオキシエチレン(POE)及びポリオキシプロピレン(POP)からなる群から選択される少なくとも一種を含むポリエーテル変性シリコーンである、請求項1に記載の化粧料。
【請求項3】
前記第2のポリエーテル変性シリコーンが、下記式1で表されるポリエーテル変性シリコーンである、請求項1又は2に記載の化粧料:
【化1】
式1中、
mは、50~1,000の整数であり、
nは、1~40の整数であり、
aは、5~50の整数であり、
bは、5~50の整数である。
【請求項4】
前記顔料級疎水化処理粒子の平均粒子径が、250nm以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の化粧料。
【請求項5】
前記低級アルコールが、化粧料の全量に対し、5.0質量%以上含まれている、請求項1~4のいずれか一項に記載の化粧料。
【請求項6】
前記分散媒が、水溶性増粘剤をさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の化粧料。
【請求項7】
前記第1のポリエーテル変性シリコーンに対する前記顔料級疎水化処理粒子の質量比が、10以上である、請求項1~6のいずれか一項に記載の化粧料。
【請求項8】
耐水試験後の吸光度積分率が、耐水試験前と比較して100%以上を呈する、請求項1~7のいずれか一項に記載の化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水中油型乳化化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧料の分野では、耐水性能を有する水中油型の乳化化粧料などが開発されている。
【0003】
特許文献1には、(A)サクシノグリカンを0.05~2質量%、(B)ナイロン樹脂粉末、ウレタン樹脂粉末、シリコーンゴム粉末、及びシリコーン樹脂粉末から選ばれる一種または二種以上の疎水性粉末を0.1~3質量%、及び(C)疎水化処理粉体を1~50質量%含み、(A)及び(B)成分は外水相に、(C)成分は内油相に含まれる、耐水性能を有する水中油型乳化化粧料が開示されている。
【0004】
特許文献2には、(A)0.1~10質量%のHLB(Si)が5~10のポリエーテル変性シリコーン、(B)5~50質量%以下のエタノール、(C)0.01~3質量%の親水性増粘剤、(D)0.1~15質量%以上のポリオール、及び(E)水溶性美白剤を含有する、耐水性能を有する水中油型乳化化粧料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-286748号公報
【特許文献2】特開2012-072085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
水中油型の乳化化粧料において、疎水化処理された粒子は、一般に、油相(油滴)中に配合される。そして、このような疎水化処理された粒子は、水をはじきやすい性能を有するため、化粧料を肌に適用した場合に耐水性を付与し得る場合がある。
【0007】
また、例えば、肌の色を明るくするトーンアップ効果を発現させる目的で、水中油型乳化化粧料中に配合する疎水化処理粒子として、比較的大きなサイズの顔料級疎水化処理粒子を使用する場合がある。
【0008】
このような疎水化処理された粒子を含む水中油型乳化化粧料を肌に適用すると、疎水化処理粒子を含む油滴は、かかる粒子によって油分が引き寄せられた状態で、表面活性の高い肌の皮丘部又は皮溝部付近に吸着してとどまりやすい。その結果、疎水化処理された粒子(例えば顔料級疎水化処理粒子)を含む油分は、肌上に均一に適用されにくいため、良好な耐水性能が得られない場合があったり、トーンアップむらが生じたりする場合などがあった。
【0009】
したがって、本開示の主題は、良好な耐水性及びトーンアップ効果を発現させることが可能な、顔料級疎水化処理粒子を含む水中油型乳化化粧料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
〈態様1〉
水を含む分散媒、及び
前記分散媒中に分散している油滴
を含む、水中油型乳化化粧料であって、
前記分散媒は、HLBが10.0超18.0以下の第1のポリエーテル変性シリコーン、低級アルコール、及び顔料級疎水化処理粒子を含み、
前記油滴は、油分、及びHLBが10.0以下の第2のポリエーテル変性シリコーンを含む、
水中油型乳化化粧料。
〈態様2〉
前記第2のポリエーテル変性シリコーンは、ポリオキシエチレン(POE)及びポリオキシプロピレン(POP)からなる群から選択される少なくとも一種を含むポリエーテル変性シリコーンである、態様1に記載の化粧料。
〈態様3〉
前記第2のポリエーテル変性シリコーンが、下記式1で表されるポリエーテル変性シリコーンである、態様1又は2に記載の化粧料:
【化1】
式1中、
mは、50~1,000の整数であり、
nは、1~40の整数であり、
aは、5~50の整数であり、
bは、5~50の整数である。
〈態様4〉
前記顔料級疎水化処理粒子の平均粒子径が、250nm以上である、態様1~3のいずれかに記載の化粧料。
〈態様5〉
前記低級アルコールが、化粧料の全量に対し、5.0質量%以上含まれている、態様1~4のいずれかに記載の化粧料。
〈態様6〉
前記分散媒が、水溶性増粘剤をさらに含む、態様1~5のいずれかに記載の化粧料。
〈態様7〉
前記第1のポリエーテル変性シリコーンに対する前記顔料級疎水化処理粒子の質量比が、10以上である、態様1~6のいずれかに記載の化粧料。
〈態様8〉
耐水試験後の吸光度積分率が、耐水試験前と比較して100%以上を呈する、態様1~7のいずれかに記載の化粧料。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、良好な耐水性及びトーンアップ効果を発現させることが可能な、顔料級疎水化処理粒子を含む水中油型乳化化粧料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】(a)は、本開示の一実施態様の水中油型乳化化粧料の模式図であり、(b)は、この化粧料を肌に適用したときの模式図であり、(c)は、肌に適用した化粧料に対して水を接触させた後の模式図である。
【
図2】(a)は、顔料級疎水化処理粒子を含有する油滴を含む水中油型乳化化粧料の模式図であり、(b)は、この化粧料を肌に適用したときの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施の形態について詳述する。本開示は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、発明の本旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0014】
本開示の水中油型乳化化粧料は、水を含む分散媒、及びこの分散媒中に分散している油滴を含み、分散媒は、HLBが10.0超18.0以下の第1のポリエーテル変性シリコーン、低級アルコール、及び顔料級疎水化処理粒子を含み、油滴は、油分、及びHLBが10.0以下の第2のポリエーテル変性シリコーンを含んでいる。
【0015】
原理によって限定されるものではないが、本開示の化粧料が、良好な耐水性及びトーンアップ効果を発現させることができる作用原理は以下のとおりであると考える。
【0016】
疎水化処理した粒子を含む水中油型乳化化粧料を得る場合、疎水化処理した粒子は、疎水性であるため、油相中に配合することが一般的である。また、耐水性を向上させる観点でも、特許文献1に記載されているように、疎水化処理した粒子は、油相中に配合することが一般的である。
【0017】
しかしながら、本発明者は、水中油型乳化化粧料において、顔料級疎水化処理粒子を、特定のHLB値を有する第1のポリエーテル変性シリコーン及び低級アルコールとともに水相中に配合し、かつ、化粧料中の油滴が、油分及び特定のHLB値を有する第2のポリエーテル変性シリコーンを含むと、驚くべきことに、かかる化粧料を肌に適用した場合に、耐水性及びトーンアップ効果が向上することを見出した。さらに、適用した化粧料に対して水を接触させると、耐水性及びトーンアップ効果がより向上することを見出した。
【0018】
本開示の顔料級疎水化処理粒子20は、
図1(a)に示されるように、親水部及び疎水部を有する第1のポリエーテル変性シリコーン10が疎水部を介して粒子20に吸着することによって水中油型乳化化粧料中に分散していると考えている。一方、顔料級疎水化処理粒子を油相中に含む水中油型乳化化粧料では、
図2(a)に示されるように、顔料級疎水化処理粒子20が油相中で密につまった状態で存在していると考えている。
【0019】
顔料級疎水化処理粒子を油相中に含む水中油型乳化化粧料を肌に適用すると、
図2(b)に示されるように、顔料級疎水化処理粒子20と油分40が密につまった状態で、親油的である肌上に吸着して留まると考えている。
【0020】
一方、顔料級疎水化処理粒子を水相中に含む水中油型乳化化粧料では、顔料級疎水化処理粒子20は、第1のポリエーテル変性シリコーン10が立体障害の役目を果たし、相互に離れて存在しているため、かかる化粧料を肌に適用すると、
図1(b)に示されるように、顔料級疎水化処理粒子20は、顔料級疎水化処理粒子を油相中に含む水中油型乳化化粧料に比べ、肌上に均一に吸着して留まりやすいと考えている。その結果、耐水性及びトーンアップ効果に寄与する顔料級疎水化処理粒子が肌上に均一に配置されるため、顔料級疎水化処理粒子を油相中に含む水中油型乳化化粧料に比べて耐水性及びトーンアップ効果が向上すると考えている。
【0021】
また、本開示の化粧料を肌に適用すると、顔料級疎水化処理粒子20に吸着している第1のポリエーテル変性シリコーン10の親水部は外側に配向しているため、
図1(b)に示されるように、油分40は顔料級疎水化処理粒子20に近づきにくく離間して配置されると考えられる。その結果、顔料級疎水化処理粒子20と油分40は、肌上で別々に存在していると考えられる。第1のポリエーテル変性シリコーン10は、第2のポリエーテル変性シリコーンよりもHLBが高く、親水的であるため、
図1(b)の状態で肌上の化粧料に水(例えば汗)が触れると、顔料級疎水化処理粒子20に吸着している第1のポリエーテル変性シリコーン10は、水とともに洗い流され、顔料級疎水化処理粒子20の疎水化処理面がむき出しになると考えられる。その結果、顔料級疎水化処理粒子20と油分40がなじみやすくなり、粒子と油分が相互に引き寄せ合いながら、顔料級疎水化処理粒子20と油分40を含む均一な膜が形成されて肌を覆うため、耐水性及びトーンアップ効果がより向上すると考えている。
【0022】
一方、疎水化処理粒子を油相中に含む水中油型乳化化粧料では、粒子自体が親油的であるため、かかる粒子の分散剤としてのポリエーテル変性シリコーンは必要とせず、化粧料中で粒子と油分が既に相互になじんだ状態で油滴を形成している。そして、かかる化粧料を肌に適用すると、疎水化処理粒子を含む油滴は、
図2(b)に示されるように、表面活性の高い肌の皮丘部又は皮溝部付近に比較的不均一に吸着する傾向を示すと考えている。また、このような状態における粒子は、
図1(b)の場合とは異なり、粒子が既に油分中に含まれているため、水と接触させても均一な膜が形成されることはない。その結果、疎水化処理粒子を油相中に含む水中油型乳化化粧料においては、水と接触させても、耐水性及びトーンアップ効果がより向上することはないと考えている。
【0023】
さらに、いくつかの実施形態では、本開示の水中油型乳化化粧料は、紫外線防御効果(SPF)を向上させ得る。顔料級の大きな粒子、例えば、顔料級の酸化チタン粒子は、A領域の紫外線(UVA)を主に防御し得ることが知られている。本開示の水中油型乳化化粧料の場合には、顔料級の疎水化処理粒子を使用しているにもかかわらず、意外にも、A領域に限らず、B領域の紫外線(UVB)も防御することができる。これは、上述しように、本開示の水中油型乳化化粧料は、顔料級疎水化処理粒子を油相中に含む従来の水中油型乳化化粧料の場合に比べて、肌上で、顔料級疎水化処理粒子が均一に配置され得るため、UVA及びUVBの散乱反射性能が向上したためであると考えている。
【0024】
《水中油型乳化化粧料》
〈分散媒〉
本開示の水中油型乳化化粧料における分散媒(水相)は、水、顔料級疎水化処理粒子、HLBが10.0超18.0以下の第1のポリエーテル変性シリコーン、及び低級アルコールを含む。
【0025】
(水)
水の配合量としては特に制限はなく、例えば、乳化安定性等の観点から、化粧料全量に対し、30質量%以上、40質量%以上、50質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、又は80質量%以上とすることができ、また、90質量%以下、80質量%以下、70質量%以下、又は60質量%以下とすることができる。
【0026】
本開示の水中油型乳化化粧料で使用し得る水としては特に制限はなく、例えば、化粧料、及び医薬部外品において使用される水を使用することができる。例えば、イオン交換水、蒸留水、超純水、及び水道水を使用することができる。
【0027】
(顔料級疎水化処理粒子)
顔料級疎水化処理粒子の配合量としては特に制限はなく、用途に応じた所望の効果(例えば、耐水性、トーンアップ効果、SPF)に基づいて適宜選択することができる。顔料級疎水化処理粒子の配合量としては、例えば、化粧料全量に対して、0.5質量%以上、1.0質量%以上、又は1.5質量%以上とすることができ、また、15質量%以下、12質量%以下、10質量%以下、8.0質量%以下、6.0質量%以下、又は5.0質量%以下とすることができる。
【0028】
顔料級疎水化処理粒子の平均粒子径は、用途に応じた所望の効果(例えば、耐水性、トーンアップ効果、SPF)が得られるように適宜選択することができる。顔料級疎水化処理粒子の平均粒子径としては、例えば、250nm以上、300nm以上、350nm以上、又は400nm以上とすることができる。平均粒子径が300nm以上の顔料級疎水化処理粒子は、肌の色を明るくするトーンアップ効果などを好適に発現させることができる。平均粒子径の上限値については特に制限はなく、例えば、800nm以下、700nm以下、又は600nm以下とすることができる。ここで、本開示における顔料級疎水化処理粒子と、後述する任意成分の疎水化処理微粒子の平均粒子径は、一次粒子又は凝集した二次粒子の大きさであってよく、静的光散乱法によって算出することができる。
【0029】
顔料級疎水化処理粒子の疎水化処理としては特に制限はなく、かかる粒子の表面を有機化合物によって修飾して疎水化する任意の処理、例えば、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン(ジメチコン)、アルキルシラン等によるシリコーン系処理又はシラン系処理;パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルコール等によるフッ素系処理;アルキルチタネート等によるチタネート系処理;N-アシルグルタミン酸等によるアミノ酸処理等が挙げられ、その他、レシチン処理;金属石鹸処理;脂肪酸処理;アルキルリン酸エステル処理が挙げられる。疎水化処理は単独で又は複数組み合わせて使用することができる。また、疎水化処理は疎水化処理剤を用いて実施することができる。
【0030】
疎水化処理剤としてのシリコーンとしては、例えば、メチルハイドロジェンポリシロキサン(ジメチコン/メチコン)コポリマー等の水素-ケイ素結合を有する公知のシリコーン等を挙げることができる。また、反応基としてアルコキシ基-ケイ素結合を有する、トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルジメチコン、トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルヘキシルジメチコンなども挙げることができる。この他に、ジメチルポリシロキサンなども使用することができる。
【0031】
シラン系処理剤としては、例えば、有機基を導入したシリル化剤、シランカップリング剤を挙げることができ、例えば、トリエトキシカプリリルシランを挙げることができる。
【0032】
チタネート系処理剤としては、例えば、アルキルチタネート、ピロリン酸型のチタネート、亜リン酸型のチタネート、アミノ酸型のチタネート等のチタンカップリング剤を挙げることができる。
【0033】
顔料級疎水化処理粒子を構成する粒子の種類としては特に制限はなく、用途に応じた所望の効果(例えば、耐水性、トーンアップ効果、SPF)が得られるように適宜選択することができる。顔料級疎水化処理粒子の例としては、無機粒子、具体的には、無機酸化物粒子、例えば、酸化チタン粒子、酸化亜鉛粒子、酸化セリウム粒子などの白色系の無機酸化物粒子(「無機白色系顔料」と称する場合がある。)などを挙げることができる。この他、一般的に、パール剤(光輝性顔料)又は色材に分類される無機粒子なども、本開示の顔料級疎水化処理粒子として使用することができる。本開示の顔料級疎水化処理粒子として、有機粒子も使用することもできる。顔料級疎水化処理粒子は単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。
【0034】
本開示において「パール剤」とは、色材を包含せず、光輝性を呈する粒子を意図する。パール剤は、典型的には、薄片状又は鱗片状のような平板状の形態を呈している。また、本開示において「色材」とは、白色以外の色を呈し、パール剤を包含せず、化粧料を発色させることができる光輝性を呈しない材料を意図する。例えば、トーンアップ効果の観点から、パール剤を使用する場合には、上述した酸化チタン粒子等の無機酸化物粒子と併用することが好ましく、色材を使用する場合には、上述した酸化チタン粒子等の無機酸化物粒子、及び/又はパール剤を併用することが好ましい。
【0035】
パール剤としては、例えば、雲母チタン(マイカチタン)、酸化鉄被覆雲母チタン、カルミン被覆雲母チタン、カルミン・コンジョウ被覆雲母チタン、酸化鉄・カルミン処理雲母チタン、コンジョウ処理雲母チタン、酸化鉄・コンジョウ処理雲母チタン、酸化クロム処理雲母チタン、黒酸化チタン処理雲母チタン、アクリル樹脂被覆アルミニウム末、シリカ被覆アルミニウム末、酸化チタン被覆マイカ、酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆タルク、着色酸化チタン被覆マイカ、酸化チタン被覆合成マイカ、酸化チタン被覆シリカ、酸化チタン被覆アルミナ、酸化チタン被覆ガラス粉、ポリエチレンテレフタレート・ポリメチルメタクリレート積層フィルム末、オキシ塩化ビスマス、魚鱗箔、マイカを酸化鉄と酸化チタンで被覆したベンガラ酸化チタン被覆マイカ等の酸化鉄酸化チタン被覆マイカ、マイカと酸化チタン被覆層との間にシリカをはさんだ粉体中空状の酸化チタンを挙げることができる。これらは、典型的には、白色、又はそれ以外の色を呈している。
【0036】
パール剤として、無色のパール剤も使用することができる。かかるパール剤としては、透明パール剤(透明光輝性顔料)として知られている公知のものを使用することができる。例えば、ガラス粒子を基材として、その表面に酸化チタン等の高屈折率材料から構成される被膜を成形したパール剤を挙げることができる。
【0037】
色材としては、例えば無機顔料を使用することができる。
【0038】
無機顔料としては、例えば、無機赤色系顔料(例えば、酸化鉄(ベンガラ)、チタン酸鉄等);無機褐色系顔料(例えば、γ-酸化鉄等);無機黄色系顔料(例えば、黄酸化鉄、黄土等);無機黒色系顔料(例えば、黒酸化鉄、低次酸化チタン等);無機紫色系顔料(例えば、マンガンバイオレット、コバルトバイオレット等);無機緑色系顔料(例えば、酸化クロム、水酸化クロム、チタン酸コバルト等);無機青色系顔料(例えば、群青、紺青等);金属粉末(例えば、アルミニウム、金、銀、銅等)を挙げることができる。
【0039】
(第1のポリエーテル変性シリコーン)
第1のポリエーテル変性シリコーンは、顔料級疎水化処理粒子の分散剤として機能し得る。第1のポリエーテル変性シリコーンは、単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。
【0040】
第1のポリエーテル変性シリコーンは、10.0超18.0以下のHLBを有しており、後述する第2のポリエーテル変性シリコーンに比べて親水的な性能を有している。水と接触した後の肌上における、顔料級疎水化処理粒子及び油分を含む膜の均一性(単に「膜の均一性」と称する場合がある。)の観点から、第1のポリエーテル変性シリコーンのHLBは、10.5以上、11.0以上、11.5以上、12.0以上、12.5以上、又は13.0以上であることが好ましく、17.5以下、17.0以下、16.5以下、16.0以下、15.5以下、又は15.0以下であることが好ましい。ここで「HLB」とは、一般に、水及び油への親和性を示す値であって、親水性-親油性バランスとして知られているパラメーターである。第1のポリエーテル変性シリコーン及び後述する第2のポリエーテル変性シリコーンのHLBは、グリフィン法により容易に求めることができる。ここで、グリフィン法によるHLB値は、以下の式2で求めることができる:
HLB値=20×親水部の式量の総和/分子量 …式2
【0041】
第1のポリエーテル変性シリコーンの配合量としては、水相中の顔料級疎水化処理粒子の分散性、及び膜の均一性の観点から、化粧料全量に対し、0.01質量%以上、0.03質量%以上、又は0.05質量%以上とすることができ、また、1.0質量%以下、0.8質量%以下、0.5質量%以下、0.3質量%以下、又は0.2質量%以下とすることができる。
【0042】
水相中の顔料級疎水化処理粒子の分散性、膜の均一性、及び紫外線防御効果等の観点から、第1のポリエーテル変性シリコーンに対する顔料級疎水化処理粒子の質量比としては、例えば、10以上、12以上、14以上、15以上、又は17以上であることが好ましく、また、70以下、65以下、60以下、55以下、50以下、45以下、40以下、35以下、又は30以下であることが好ましい。
【0043】
第1のポリエーテル変性シリコーンの種類としては、特定のHLBを有している限り特に制限はなく、例えば、PEG-9ジメチコン、PEG-10ジメチコン、PEG-12ジメチコン、PEG-10メチルエーテルジメチコン、PEG-11メチルエーテルジメチコン、PEG/PPG-20/20ジメチコン、PEG/PPG-20/23ジメチコン、及びPEG-17ジメチコンを挙げることができる。なかでも、PEG-11メチルエーテルジメチコンが好ましい。
【0044】
(低級アルコール)
本開示の水中油型乳化化粧料は、低級アルコールとともに後述する第2のポリエーテル変性シリコーンを含んでいる。かかる化粧料を皮膚などに適用すると、化粧料中の低級アルコールが蒸発し、それに伴い、皮膚上の化粧料が水中油型から油中水型に転相する(単に「転相乳化」と称する場合がある。)ため、優れた耐水性を発揮させることができる。
【0045】
低級アルコールの配合量としては、転相乳化及びそれに伴う耐水性の観点から、化粧料全量に対し、5.0質量%以上、8.0質量%以上、又は10質量%以上とすることができ、また、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、又は15質量%以下とすることができる。
【0046】
低級アルコールの種類としては特に制限はなく、例えば、炭素原子数が1~5個のアルキル基を有する一価アルコールが好ましく、炭素原子数が1~3個のアルキル基を有する一価アルコールがより好ましい。具体的には、例えば、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、イソブチルアルコール、及びt-ブチルアルコールが挙げられ、なかでも、エタノールが好ましい。低級アルコールは、単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。
【0047】
〈油滴〉
水中油型乳化化粧料における油相又は分散相としての油滴は、油分、及びHLBが10.0以下の第2のポリエーテル変性シリコーンを含んでいる。
【0048】
(油分)
本開示の水中油型乳化化粧料中の油分の含有量としては特に制限はなく、例えば、耐水性、膜の均一性等の観点から、化粧料の全量に対し、1.0質量%以上、2.0質量%以上、3.0質量%以上、5.0質量%以上、7.0質量%以上、10質量%以上、15質量%以上、20質量%以上、25質量%以上、又は30質量%以上とすることができ、また、50質量%以下、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、15質量%以下、又は10質量%以下とすることができる。
【0049】
油分を、例えば、20質量%以上と高度に含む構成の化粧料は、油相中に配合し得る、例えば、紫外線吸収剤、及び後述する任意成分の疎水化処理微粒子の含有割合を増加させることができるため、紫外線防御効果(SPF)をより向上させることができる。
【0050】
油分の種類としては特に制限はなく、例えば、揮発性油及び不揮発性油を使用することができる。油分は単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。ここで、「揮発性」とは、大気圧下、105℃で3時間放置したときの揮発分が5%超を呈するものを意図する。膜の均一性等の観点から、揮発性の指針となる揮発分としては、10%以上、20%以上、40%以上、50%以上、60%以上、80%以上、又は100%であることが好ましい。あるいは、揮発性の指針として、1気圧(101.325kPa)下における沸点を使用することができる。この沸点は、膜の均一性等の観点から、250℃以下、240℃以下、又は230℃以下であることが好ましく、また、80℃以上、100℃以上、120℃以上、150℃以上、又は160℃以上であることが好ましい。また、本開示において「不揮発性」とは、105℃で3時間放置したときの揮発分が5%以下を呈するものを意図する。
【0051】
揮発性油としては特に制限はなく、例えば、揮発性シリコーン油、及び揮発性炭化水素油を挙げることができる。揮発性油は、単独で又は二種以上組み合わせ使用することができる。
【0052】
揮発性シリコーン油としては、例えば、揮発性非環状シリコーン油、及び揮発性環状シリコーン油を挙げることができる。なかでも、揮発性非環状シリコーン油が好ましい。
【0053】
揮発性非環状シリコーン油として、例えば、揮発性直鎖状シリコーン油、及び揮発性分岐状シリコーン油を使用することができる。なかでも、揮発性直鎖状シリコーン油が好ましい。
【0054】
揮発性直鎖状シリコーン油としては、例えば、粘度0.65cStのジメチルポリシロキサン(「ジメチコン」と称する場合がある。)、粘度1cStのジメチルポリシロキサン、粘度1.5cStのジメチルポリシロキサン、粘度2cStのジメチルポリシロキサン等の低分子量の直鎖状ジメチルポリシロキサンが挙げられる。なかでも、膜の均一性等の観点から、粘度1cStのジメチルポリシロキサン、粘度1.5cStのジメチルポリシロキサンが好ましい。ここで、これらの粘度は、25℃雰囲気下における動粘度を意図する。
【0055】
揮発性分岐状シリコーン油としては、例えば、メチルトリメチコン、トリス(トリメチルシリル)メチルシラン、テトラキス(トリメチルシリル)シラン等の低分子量の分岐状シロキサンが挙げられる。
【0056】
揮発性環状シリコーン油としては、例えば、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、及びドデカメチルシクロヘキサシロキサンが挙げられる。
【0057】
揮発性炭化水素油としては、例えば、ヘプタン、イソドデカン、イソヘキサデカン、及びイソデカンを挙げることができる。なかでも、膜の均一性等の観点から、イソドデカンが好ましい。
【0058】
油分中における揮発性油の配合量としては、例えば、油分全体に対し、0質量%以上、5質量%以上、10質量%以上、15質量%以上、20質量%以上、25質量%以上、30質量%以上、35質量%以上、40質量%以上、又は45質量%以上とすることができ、また、90質量%以下、85質量%以下、80質量%以下、75質量%以下、70質量%以下、65質量%以下、60質量%以下、55質量%以下、又は50質量%以下とすることができる。この場合における残部の油分は、不揮発性油とすることができる。
【0059】
油分としては上述した揮発性油以外に、化粧料において一般に使用される油分、例えば、液体油脂、固体油脂、ロウ類、上記以外の炭化水素油、上記以外のシリコーン油、極性油等を挙げることができる。揮発性油とともに、他の油分(例えば不揮発性油)を併用すると、揮発性油が揮発した後に、かかる他の油分が、粒子と皮膚との間のバインダーとして機能し得るため、皮膚に対して粒子を好適に固定化することができる。他の油分は単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。ここで、紫外線吸収剤の中には、油分、特に、極性油として作用するものも存在する。このような紫外線吸収剤も油分とみなすことができる。
【0060】
液体油脂としては、例えば、アボガド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、及びトリグリセリンが挙げられる。
【0061】
固体油脂としては、例えば、カカオ脂、ヤシ油、馬脂、硬化ヤシ油、パーム油、牛脂、羊脂、硬化牛脂、パーム核油、豚脂、牛骨脂、モクロウ核油、硬化油、牛脚脂、モクロウ、及び硬化ヒマシ油が挙げられる。
【0062】
ロウ類としては、例えば、ミツロウ、キャンデリラロウ、綿ロウ、カルナウバロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、鯨ロウ、モンタンロウ、ヌカロウ、ラノリン、カポックロウ、酢酸ラノリン、液状ラノリン、サトウキビロウ、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、還元ラノリン、ジョジョバロウ、硬質ラノリン、セラックロウ、POEラノリンアルコールエーテル、POEラノリンアルコールアセテート、POEコレステロールエーテル、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、及びPOE水素添加ラノリンアルコールエーテルが挙げられる。
【0063】
炭化水素油としては、例えば、流動パラフィン、オゾケライト、スクワラン、プリスタン、パラフィン、セレシン、スクワレン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス、及びオレフィンオリゴマーが挙げられる。
【0064】
シリコーン油としては、例えば、粘度6cSt以上のジメチルポリシロキサン(ジメチコン)、メチルフェニルポリシロキサン(ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン)、メチルハイドロジェンポリシロキサン等の鎖状シリコーンが挙げられる。
【0065】
極性油としては、例えば、IOBが0.10以上の極性油を使用することができる。このような極性油としては、例えば、ミリスチン酸イソプロピル(IOB値=0.18)、パルミチン酸オクチル(IOB値=0.13)、パルミチン酸イソプロピル(IOB値=0.16)、ステアリン酸ブチル(IOB値=0.14)、ラウリン酸ヘキシル(IOB値=0.17)、ミリスチン酸ミリスチル(IOB値=0.11)、オレイン酸デシル(IOB値=0.11)、イソノナン酸イソノニル(IOB値=0.20)、イソノナン酸イソトリデシル(IOB値=0.15)、エチルヘキサン酸セチル(IOB値=0.13)、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル(IOB値=0.35)、コハク酸ジエチルヘキシル(IOB値=0.32)、コハク酸ジオクチル(IOB値=0.36)、ジステアリン酸グリコール(IOB値=0.16)、ジイソステアリン酸グリセリル(IOB値=0.29)、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール(IOB値=0.25)、リンゴ酸ジイソステアリル(IOB値=0.28)、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン(IOB値=0.16)、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル(トリエチルヘキサノイン)(IOB値=0.35)、トリオクタン酸トリメチロールプロパン(IOB値=0.33)、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン(IOB値=0.16)、アジピン酸ジイソブチル(IOB値=0.46)、N-ラウロイル-L-グルタミン酸-2-オクチルドデシルエステル(IOB値=0.29)、アジピン酸2-ヘキシルデシル(IOB値=0.16)、セバシン酸ジイソプロピル(IOB値=0.40)、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル(IOB値=0.28)、パルミチン酸2-エチルヘキシル(IOB値=0.13)、エチルヘキサン酸2-エチルヘキシル(IOB値=0.2)、トリイソステアリン(IOB値=0.16)、ジピバリン酸PPG-3(IOB値=0.52)、及びトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル(IOB値=0.33)が挙げられる。
【0066】
油分とみなすことが可能な紫外線吸収剤としては、例えば、IOBが0.10以上の紫外線吸収剤、具体的には、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、オクトクリレン、ポリシリコーン-15、t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン、エチルヘキシルトリアゾン、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、オキシベンゾン-3、メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール、ホモサレート、サリチル酸エチルへキシル等の有機系の紫外線吸収剤を挙げることができる。これらの紫外線吸収剤は、単独で又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0067】
極性油及び紫外線吸収剤のIOB値は、例えば、0.11以上、0.12以上、又は0.13以上とすることでき、また、0.50以下、0.45以下、又は0.40以下とすることができる。ここで、IOB値とは、Inorganic/Organic Balance(無機性/有機性比)の略であって、無機性値の有機性値に対する比率を表す値であり、有機化合物の極性の度合いを示す指標となるものである。IOB値は、具体的には、IOB値=無機性値/有機性値として表される。「無機性値」、「有機性値」のそれぞれについては、例えば、分子中の炭素原子1個について「有機性値」が20、水酸基1個について「無機性値」が100といったように、各種原子又は官能基に応じた「無機性値」、「有機性値」が設定されており、有機化合物中の全ての原子及び官能基の「無機性値」、「有機性値」を積算することによって、当該有機化合物のIOB値を算出することができる(例えば、甲田善生著、「有機概念図-基礎と応用-」、p.11~17、三共出版、1984年発行参照)。
【0068】
(第2のポリエーテル変性シリコーン)
第2のポリエーテル変性シリコーンは、乳化剤として機能し得る。第2のポリエーテル変性シリコーンは、単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。
【0069】
第2のポリエーテル変性シリコーンは、10.0以下のHLBを有しており、上述した第1のポリエーテル変性シリコーンに比べて親油的な性能を有している。転相乳化、及びそれに伴う耐水性等の観点から、第2のポリエーテル変性シリコーンのHLBは、9.0以下、8.0以下、7.0以下、6.0以下、又は5.0以下であることが好ましい。かかるHLBの下限値としては特に制限はなく、例えば、1.0以上、1.5以上、又は2.0以上とすることができる。
【0070】
第2のポリエーテル変性シリコーンの配合量としては、転相乳化、及びそれに伴う耐水性等の観点から、化粧料全量に対し、0.1質量%以上、0.5質量%以上、1.0質量%以上、1.5質量%以上、又は2.0質量%以上とすることができ、また、10質量%以下、8.0質量%以下、又は5.0質量%以下とすることができる。
【0071】
第2のポリエーテル変性シリコーンとして、例えば、重量平均分子量が50,000以上であり、ポリオキシエチレン(POE)及びポリオキシプロピレン(POP)からなる群から選択される少なくとも一種を含むポリエーテル変性シリコーンを挙げることができる。
【0072】
ポリエーテル変性シリコーンの重量平均分子量としては、50,000以上、55,000以上、60,000以上、65,000以上、又は70,000以上とすることができ、また、500,000以下、400,000以下、300,000以下、200,000以下、又は100,000以下とすることができる。ここで、重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフ測定における、ポリスチレン換算の数平均分子量を意図する。
【0073】
このようなポリエーテル変性シリコーンとして、例えば、下記式1で表されるポリエーテル変性シリコーンを挙げることができる:
【化2】
【0074】
式1中、mは、50~1,000の整数であり、50以上、70以上、100以上、120以上、150以上、又は200以上、1,000以下、800以下、500以下、又は300以下の整数の中から、mの数値範囲を選択することができる。
【0075】
式1中、nは、1~40の整数であり、1以上、3以上、5以上、7以上、又は10以上、40以下、35以下、30以下、25以下、又は20以下の整数の中から、nの数値範囲を選択することができる。
【0076】
mとnの比(m:n)は、200:1~5:1であることが好ましく、60:1~15:1であることが特に好ましい。
【0077】
式1中、aは、5~50の整数であり、5以上、7以上、又は10以上、50以下、45以下、40以下、35以下、30以下、25以下、又は20以下の整数の中から、aの数値範囲を選択することができる。
【0078】
式1中、bは、5~50の整数であり、5以上、7以上、又は10以上、50以下、45以下、40以下、35以下、30以下、25以下、又は20以下の整数の中から、bの数値範囲を選択することができる。
【0079】
式1の分子中におけるポリオキシアルキレン基の含有量は特に限定されないが、転相乳化等の観点から、全分子量中、20質量%以上、20質量%超、又は25質量%以上であることが好ましく、50質量%以下、40質量%以下、35質量%以下、又は30質量%以下であることが好ましい。
【0080】
第2のポリエーテル変性シリコーンとして、具体的には、例えば、PEG/PPG-19/19ジメチコン、PEG/PPG-20/22ブチルエテルジメチコン、PEG/PPG-20/20ジメチコン、及びPEG/PPG-30/10ジメチコンを挙げることができる。
【0081】
〈任意成分〉
本開示の水中油型乳化化粧料は、本開示の効果に影響を及ぼさない範囲で、各種成分を適宜配合することができる。各種成分としては、化粧料に通常配合し得るような添加成分、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、保湿剤、水溶性増粘剤、油溶性増粘剤、水溶性高分子、油溶性高分子、シリコーン化多糖類等の皮膜形成剤、イソステアリン酸等の高級脂肪酸、金属イオン封鎖剤、ステアリルアルコール等の高級アルコール、多価アルコール、各種抽出液、糖、アミノ酸、有機アミン、高分子エマルジョン、キレート剤、上記の紫外線吸収剤以外の他の紫外線吸収剤、pH調整剤、皮膚栄養剤、ビタミン、医薬品、医薬部外品、化粧品等に適用可能な水溶性薬剤、緩衝剤、退色防止剤、防腐剤、分散剤、噴射剤、充填剤、上記のパール剤及び色材で使用し得る顔料以外の他の顔料(例えば有機顔料)、疎水化処理微粒子、染料、色素、香料等を挙げることができる。任意成分は、油相中及び/又は水相中に配合することができ、単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。この中のいくつかの成分について、以下に記載する。
【0082】
(非イオン性界面活性剤)
いくつかの実施形態において、本開示の水中油型乳化化粧料は非イオン性界面活性剤を含む。
【0083】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル、POE硬化ヒマシ油誘導体、POEアルキルエーテル類、POE・POPアルキルエーテル類、PEG脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸エステル類、POEグリセリン脂肪酸エステル類、及びイソステアリン酸PEGグリセリル類を挙げることができる。この他、ジイソステアリン酸ポリグリセリル-2、セスキイソステアリン酸ソルビタンなどの非イオン性界面活性剤なども使用することもできる。非イオン性界面活性剤は、単独で又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0084】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとしては、例えば、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル、及びポリオキシエチレンステアリルエーテルを挙げることができる。
【0085】
ポリアルキレングリコール脂肪酸エステルとしては、例えば、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、及びモノオレイン酸ポリエチレングリコールを挙げることができる。
【0086】
POE硬化ヒマシ油誘導体(PEG水添ヒマシ油)としては、例えば、POE(20~100)硬化ヒマシ油誘導体を挙げることができる。具体的には、POE(20)硬化ヒマシ油誘導体、POE(40)硬化ヒマシ油誘導体、POE(60)硬化ヒマシ油誘導体、及びPOE(100)硬化ヒマシ油誘導体を挙げることができる。
【0087】
POEアルキルエーテル類としては、例えば、POE(2)ラウリルエーテル、POE(4.2)ラウリルエーテル、POE(9)ラウリルエーテル、POE(5.5)セチルエーテル、POE(7)セチルエーテル、POE(10)セチルエーテル、POE(15)セチルエーテル、POE(20)セチルエーテル、POE(23)セチルエーテル、POE(4)ステアリルエーテル、POE(20)ステアリルエーテル、POE(7)オレイルエーテル、POE(10)オレイルエーテル、POE(15)オレイルエーテル、POE(20)オレイルエーテル、POE(50)オレイルエーテル、POE(10)ベヘニルエーテル、POE(20)ベヘニルエーテル、POE(30)ベヘニルエーテル、POE(2)(C12-15)アルキルエーテル、POE(4)(C12-15)アルキルエーテル、POE(10)(C12-15)アルキルエーテル、POE(5)2級アルキルエーテル、POE(7)2級アルキルエーテル、POE(9)アルキルエーテル、及びPOE(12)アルキルエーテルを挙げることができる。
【0088】
POE・POPアルキルエーテル類としては、例えば、POE(1)ポリオキシプロピレン(POP)(4)セチルエーテル、POE(10)POP(4)セチルエーテル、POE(20)POP(8)セチルエーテル、POE(20)POP(6)デシルテトラデシルエーテル、及びPOE(30)POP(6)デシルテトラデシルエーテルを挙げることができる。
【0089】
PEG脂肪酸エステル類としては、例えば、モノラウリン酸ポリエチレングリコール(以下、PEGと略す)(10)、モノステアリン酸PEG(10)、モノステアリン酸PEG(25)、モノステアリン酸PEG(40)、モノステアリン酸PEG(45)、モノステアリン酸PEG(55)、モノステアリン酸PEG(100)、モノオレイン酸PEG(10)、ジステアリン酸PEG、及びジイソステアリン酸PEGを挙げることができる。
【0090】
ポリグリセリン脂肪酸エステル類としては、例えば、モノラウリン酸ヘキサグリセリル、モノミリスチン酸ヘキサグリセリル、モノステアリン酸ヘキサグリセリル、モノオレイン酸ヘキサグリセリル、モノラウリン酸デカグリセリル、モノミリスチン酸デカグリセリル、モノステアリン酸デカグリセリル、モノイソステアリン酸デカグリセリル、モノオレイン酸デカグリセリル、ジステアリン酸デカグリセリル、及びジイソステアリン酸デカグリセリルを挙げることができる。
【0091】
POEグリセリン脂肪酸エステル類としては、例えば、モノステアリン酸ポリオキシエチレン(POE)(5)グリセリル、モノステアリン酸POE(15)グリセリル、モノオレイン酸POE(5)グリセリル、及びモノオレイン酸POE(15)グリセリルを挙げることができる。
【0092】
イソステアリン酸PEGグリセリル類としては、例えば、イソステアリン酸PEG(8)グリセリル、イソステアリン酸PEG(10)グリセリル、イソステアリン酸PEG(15)グリセリル、イソステアリン酸PEG(20)グリセリル、イソステアリン酸PEG(25)グリセリル、イソステアリン酸PEGグリセリル(30)、イソステアリン酸PEG(40)グリセリル、イソステアリン酸PEG(50)グリセリル、及びイソステアリン酸PEG(60)グリセリルを挙げることができる。
【0093】
非イオン性界面活性剤の含有量としては特に制限はなく、例えば、化粧料の全量に対し、0.03質量%以上、0.05質量%以上、0.07質量%以上、又は0.1質量%以上とすることができ、また、3.0質量%以下、2.5質量%以下、2.0質量%以下、1.5質量%以下、1.0質量%以下、又は0.5質量%以下とすることができる。
【0094】
(水溶性増粘剤)
いくつかの実施形態において、本開示の水中油型乳化化粧料は水溶性増粘剤を含む。水溶性増粘剤を含む化粧料は、乳化安定性をより向上させることができる。
【0095】
水溶性増粘剤は、化粧料に使用されるものであれば特に限定されない。例えば、天然の水溶性増粘剤、半合成タイプの水溶性増粘剤、合成タイプの水溶性増粘剤、及び無機系の水溶性増粘剤が挙げられる。
【0096】
天然の水溶性増粘剤としては、例えば、アラビアガム、トラガカントガム、ガラクタン、グアガム、キャロブガム、カラヤガム、カラギーナン、ペクチン、カンテン、クインスシード(マルメロ)、アルゲコロイド(カッソウエキス)、デンプン(コメ、トウモロコシ、バレイショ、コムギ)、グリチルリチン酸等の植物系高分子;キサンタンガム、デキストラン、サクシノグルカン、ブルラン等の微生物系高分子;コラーゲン、カゼイン、アルブミン、ゼラチン等の動物系高分子が挙げられる。
【0097】
半合成タイプの水溶性増粘剤としては、例えば、カルボキシメチルデンプン、メチルヒドロキシプロピルデンプン等のデンプン系高分子;メチルセルロース、ニトロセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロース硫酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)、結晶セルロース、セルロース末等のセルロース系高分子;アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等のアルギン酸系高分子が挙げられる。
【0098】
合成タイプの水溶性増粘剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー(カルボマー)等のビニル系高分子;ポリエチレングリコール(重量平均分子量:1,500、4,000、6,000)等のポリオキシエチレン系高分子;ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体共重合系高分子;ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチルアクリレート、ポリアクリルアミド、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体等のアクリル系高分子;ポリエチレンイミン、カチオンポリマー等が挙げられる。
【0099】
無機系の水溶性増粘剤としては、例えば、ベントナイト、ケイ酸AlMg、ラポナイト、ヘクトライト、及び無水ケイ酸が挙げられる。
【0100】
水溶性増粘剤の配合量としては、例えば、乳化安定性等の観点から、化粧料の全量に対し、0.01質量%以上、0.05質量%以上、0.1質量%以上、又は0.2質量%以上とすることができ、また、3.0質量%以下、2.0質量%以下、又は1.0質量%以下とすることができる。
【0101】
(多価アルコール)
いくつかの実施形態において、本開示の水中油型乳化化粧料は多価アルコールを含む。多価アルコールは、水中油型乳化化粧料の透明性及び安定性を向上させることができる。
【0102】
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、及びダイナマイトグリセリンを挙げることができる。
【0103】
多価アルコールの配合量としては、例えば、乳化安定性等の観点から、化粧料の全量に対し、0.1質量%以上、0.5質量%以上、1.0質量%以上、2.0質量%以上、又は3.0質量%以上とすることができ、また、15質量%以下、10質量%以下、又は7.0質量%以下とすることができる。
【0104】
(疎水化処理微粒子)
いくつかの実施形態において、本開示の水中油型乳化化粧料は疎水化処理微粒子を含む。紫外線防御効果、乳化安定性等の観点から、疎水化処理微粒子は内油相中に配合することが好ましい。ここで、上述した顔料級疎水化処理粒子と、疎水化処理微粒子は、それらの大きさによって区別することができる。つまり、顔料級疎水化処理粒子とは、疎水化処理微粒子よりも大きな粒子径を有する疎水化処理粒子を意図する。
【0105】
疎水化処理微粒子の配合量としては特に制限はなく、用途に応じた所望の効果(例えば紫外線散乱効果)に基づいて適宜選択することができ、例えば、化粧料全量に対して、0.5質量%以上、1.0質量%以上、1.5質量%以上、2.0質量%以上、2.5質量%以上、3.0質量%以上、3.5質量%以上、4.0質量%以上、4.5質量%以上、又は5.0質量%以上とすることができ、また、20質量%以下、17質量%以下、15質量%以下、13質量%以下、10質量%以下、8.0質量%以下、6.0質量%以下、5.0質量%以下、3.0質量%以下、1.0質量%以下、0.5質量%以下、又は0.1質量%以下とすることができる。
【0106】
例えば、平均粒子径が200nm以下の疎水化処理微粒子は、紫外線散乱効果などを発現させることができる。疎水化処理微粒子の平均粒子径は、用途に応じた所望の効果(例えば紫外線散乱効果)に基づいて適宜選択することができ、例えば、200nm以下、180nm以下、150nm以下、120nm以下、100nm以下、又は80nm以下とすることができる。疎水化処理微粒子の平均粒子径の下限値については特に制限はないが、例えば、10nm以上、20nm以上、30nm以上、40nm以上、50nm以上、60nm以上、又は70nm以上とすることができる。
【0107】
疎水化処理微粒子の疎水化処理としては特に制限はなく、例えば、上述した顔料級疎水化処理粒子における疎水化処理と同様の処理を実施することができる。
【0108】
疎水化処理微粒子を構成する粒子の種類としては特に制限はなく、用途に応じた所望の効果(例えば紫外線散乱効果)に基づいて適宜選択することができ、例えば、無機粒子、具体的には、酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、酸化鉄、タルク、マイカ、セリサイト、カオリン、雲母チタン、紺青、酸化クロム、水酸化クロム、シリカ、酸化セリウムなどを挙げることができる。疎水化処理微粒子は単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。疎水化処理微粒子を紫外線散乱剤として使用する場合には、1.5以上の屈折率を有する粒子、例えば、酸化亜鉛粒子、酸化チタン粒子を用いるのが、光学特性等の観点から好ましい。
【0109】
〈化粧料の粘度〉
いくつかの実施態様において、本開示の水中油型乳化化粧料は、後述する実施例に記載される条件及び装置を用いて測定した粘度に関し、化粧料の作製直後において、25,000mPa・s以下、23,000mPa・s以下、20,000mPa・s以下、又は19,000mPa・s以下とすることができ、また、1,000mPa・s以上、3,000mPa・s以上、5,000mPa・s以上、7,000mPa・s以上、又は10,000mPa・s以上とすることができる。このような作製直後の化粧料の粘度は「初期粘度」と称することができる。
【0110】
〈耐水試験後の吸光度積分率〉
いくつかの実施態様において、本開示の水中油型乳化化粧料は、後述する実施例に記載される条件及び装置を用いて測定した耐水試験後の吸光度積分率に関し、耐水試験前と比較して、100%以上、102%以上、105%以上、107%以上、又は110%以上を呈することができる。かかる吸光度積分率の上限値については特に制限はなく、例えば、130%以下、125%以下、又は120%以下とすることができる。
【0111】
化粧料を肌等に適用し、水に接触させた後の膜の均一性は、耐水試験後の吸光度積分率によって間接的に規定することができる。この吸光度積分率は、化粧料を所定の基材に対して塗り広げて乾燥させて調製した試験サンプルの耐水試験前の吸光度の積算値に対する、耐水試験後の試験サンプルの吸光度の積算値の割合である。つまり、この吸光度積分率が上昇するということは、顔料級疎水化処理粒子が、耐水試験後に、肌上により均一に分布していることを意味する。
【0112】
《水中油型乳化化粧料の調製方法》
本開示の水中油型乳化化粧料の調製方法としては特に制限はなく、例えば、分散法、凝集法といった公知の方法により調製することができる。
【0113】
分散法とは、分散相の塊を機械的な力により微細化する方法である。具体的には、乳化機の破砕力を利用して乳化する方法であり、このような方法として、例えば、高圧ホモジナイザーを用いて高剪断力を付加する高圧乳化法を挙げることができる。
【0114】
凝集法とは、界面化学的特性を利用したコロイド調製法であり、一様に溶け合った状態から何らかの手段で過飽和状態にし、分散相となるものを出現させる方法である。具体的な手法として、HLB温度乳化法、転相乳化法、非水乳化法、D相乳化法、液晶乳化法等が知られている。
【0115】
《水中油型乳化化粧料の剤型》
本開示の水中油型乳化化粧料の剤型としては特に制限はなく、例えば、液状、乳液状、クリーム状、ジェル状、スプレー状、ムース状が挙げられる。ここで、本開示において「スプレー」とは、ミストタイプのスプレー、エアゾールタイプのスプレーなどを包含することができる。
【0116】
《水中油型乳化化粧料の用途》
本開示の水中油型乳化化粧料は、顔料級疎水化処理粒子を肌の表面に均一に適用することができ、良好な耐水性及びトーンアップ効果などを発現させることができる。したがって、このような性能を呈し得る本開示の化粧料は、例えば、皮膚等に対して塗り広げて適用される化粧料として使用することができる。本開示の化粧料は、水(例えば汗)と接触すると耐水性及びトーンアップ性がさらに向上するため、例えば、皮膚等に塗った後に、水を適用して使用する化粧料、或いは、水(例えば、汗、唾液、雨水、海水、プールの水)と接触し得る化粧料として使用することが好ましい。ここで、皮膚に適用される化粧料には、皮膚外用剤と呼ばれるものも包含することができる。
【0117】
本開示の化粧料の製品形態としては、特に限定されるものではないが、例えば、化粧水、美容液、乳液、パック等のフェーシャル化粧料;ファンデーション、口紅、アイシャドー等のメーキャップ化粧料;日焼け止め化粧料(サンスクリーン剤);ボディー化粧料;ヘアリキッド、ヘアトニック、ヘアコンディショナー、シャンプー、リンス、育毛料等の毛髪化粧料;軟膏などを挙げることができる。なかでも、本開示の化粧料は、皮膚等に塗った後に、プール又は海などで水の適用を受ける可能性のある日焼け止め化粧料(サンスクリーン剤)、或いは汗若しくは唾液などの水分が付着する可能性のある、フェーシャル化粧料、メーキャップ化粧料、又はボディー化粧料として好適に使用することができる。
【実施例0118】
以下に実施例を挙げて、本開示の水中油型乳化化粧料についてさらに詳しく説明を行うが、本開示の化粧料はこれらに限定されるものではない。なお、以下、特に断りのない限り、配合量は質量%で示す。
【0119】
《実施例1~6及び比較例1~6》
表1に示す処方及び下記に示す製造方法により得た水中油型乳化化粧料について、以下の評価を行い、その結果を表1に示す。ここで、表中の「O/W(水相)」は、顔料級疎水化処理粒子が水相中に含まれている水中油型乳化化粧料を意図し、「O/W」は、粒子を含まない水中油型乳化化粧料を意図し、「O/W(油相)」は、顔料級疎水化処理粒子が油相中に含まれている水中油型乳化化粧料を意図している。
【0120】
〈評価方法〉
(トーンアップの評価)
調製した化粧料を腕に塗布して水分を乾燥させ、化粧料の塗布面を目視で観察し、トーンアップの状態を下記の基準で評価した。ここで、A評価が合格、B~C評価は不合格とみなすことができる。また、このトーンアップ試験は、トーンアップ効果に加え、顔料級疎水化処理粒子が肌表面に対して均一に適用されているか否かを間接的に評価することができる。すなわち、C、B、Aの順に、顔料級疎水化処理粒子が肌表面に対して均一に適用されているといえる。
【0121】
A:明るさにムラがなく、優れたトーンアップ効果が発現していた。
B:明るさに僅かなムラが生じており、良好なトーンアップ効果が得られなかった。
C:明るさに明らかなムラが生じており、良好なトーンアップ効果が得られなかった。
【0122】
(耐水試験後の吸光度積分率)
測定プレート(Sプレート)(5×5cmのV溝PMMA板、SPF MASTER(商標)PA01、株式会社資生堂製)に、調製した化粧料を2mg/cm2の量で滴下し、60秒間指で塗布し、15分間乾燥した後、波長280~400nmの範囲における、その吸光度を株式会社日立製作所社製のU-3500型自記録分光光度計にて測定した。紫外線吸収のないグリセリンをコントロールとし、吸光度を以下の式3より算出した。ここで式3中の、Tはサンプルの透過率、T0はグリセリンの透過率を意味する:
吸光度=-log(T/T0) …式3
【0123】
測定したプレートを硬度50~500の水に十分に浸し、30分間そのまま水中で、スリーワンモーターを用いて300rpmの条件で撹拌した。その後、表面の水滴がなくなるまで15~30分程度乾燥させ、再び吸光度を測定した。水浴前後の吸光度の積算値(合計値)から吸光度積分率(「吸光度変化率」と称する場合もある。)を、以下の式4より算出した。ここで、吸光度積分率が100%以上であると、耐水試験後においても耐水試験前と同等以上の性能を発揮しているため、耐水性に優れているといえる:
吸光度積分率(%)=水浴後の吸光度の積算値×100/水浴前の吸光度の積算値 …式4
【0124】
(ブースト性:紫外線防御効果)
上記の耐水試験後の吸光度積分率は、UVA~UVBの範囲に相当する280~400nmの範囲での測定結果である。この測定結果に基づき、紫外線防御効果の向上性(ブースト性)について下記の基準で評価した。ここで、A~C評価が合格、D評価は不合格とみなすことができる。また、このブースト性の結果は、紫外線防御効果に加え、顔料級疎水化処理粒子が肌表面に均一に適用されているか否かを間接的に評価することができる。すなわち、D、C、B、Aの順に、顔料級疎水化処理粒子が肌表面に対して均一に適用されているといえる。
【0125】
A:吸光度積分率が110%以上であった。
B:吸光度積分率が105%以上110%未満であった。
C:吸光度積分率が100%以上105%未満であった。
D:吸光度積分率が100%未満であった。
【0126】
(粒子分散性の評価)
調製した化粧料を50mLの透明なサンプル管(直径3cm)に入れ、25℃で7日間保管後の顔料級疎水化処理粒子の分散状態を目視で観察し、下記の基準で評価した。
【0127】
A:顔料級疎水化処理粒子の沈殿物は確認されなかった。
B:顔料級疎水化処理粒子の沈殿物がごく僅かに確認された。
C:顔料級疎水化処理粒子の沈殿物が僅かに確認された。
D:顔料級疎水化処理粒子の沈殿物が明らかに確認された。
【0128】
(ローリング安定性評価)
調製した化粧料を50mLの透明なサンプル管(直径3cm)に入れ、25℃の雰囲気下、速度45rpmでサンプル管を4時間回転させ、顔料級疎水化処理粒子の凝集状態を目視で観察し、下記の基準で評価した。
【0129】
A:顔料級疎水化処理粒子の凝集物に伴う色縞模様は観察されなかった。
B:顔料級疎水化処理粒子の凝集物に伴う色縞模様がごく僅かに観察された。
C:顔料級疎水化処理粒子の凝集物に伴う色縞模様が僅かに観察された。
D:顔料級疎水化処理粒子の凝集物に伴う色縞模様が明らかに観察された。
【0130】
(粘度の評価)
化粧料の作製直後の粘度は、ローター番号4、30℃、12rpmの条件で、B型粘度計(TVB形粘度計TVB-10、東機産業株式会社製)を用いて評価した。
【0131】
〈化粧料の製造方法〉
表1に示す処方を用い、以下の方法によって水中油型乳化化粧料を製造した。ここで、以下に示す番号は、表1の処方の成分名を示す左側の番号と一致する。
【0132】
(実施例1)
No.1のイオン交換水の一部に、No.2~No.12の材料を添加して均一に混合して水相パーツを得た。
【0133】
No.20~No.25の材料を均一に混合して油相パーツを得た。
【0134】
No.1の残りのイオン交換水に、No.13、No.16及びNo.17の材料を均一に混合して粉末パーツを得た。
【0135】
水相パーツに油相パーツを徐々に添加した後に、粉末パーツを徐々に添加し、ホモミキサーで均一に分散させて、実施例1の水中油型乳化化粧料を得た。
【0136】
(実施例2~5及び比較例2~5)
表1に示す処方に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2~5及び比較例2~5の水中油型乳化化粧料を得た。
【0137】
(比較例1)
表1に示す処方に変更したこと、及び粉末パーツを使用しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1の水中油型乳化化粧料を得た。
【0138】
(比較例6)
No.1のイオン交換水に、No.2~No.12の材料を添加して均一に混合して水相パーツを得た。
【0139】
No.20~No.26の材料を均一に混合して油相パーツを得た。
【0140】
油相パーツにNo.27の材料を徐々に添加して混合液を調製した。次いで、この混合液を水相パーツに徐々に添加し、ホモミキサーで均一に分散させて、比較例6の水中油型乳化化粧料を得た。
【0141】
【0142】
〈結果〉
表1の結果より、水相に顔料級疎水化処理粒子を含む本開示の構成の実施例1~5の水中油型乳化化粧料は、トーンアップ性及び耐水性に優れることが確認できた。
【0143】
なお、顔料級疎水化処理粒子を含まない比較例1の化粧料と、顔料級疎水化処理粒子を油相中に含む化粧料の耐水試験後の吸光度積分率は、それぞれ97%及び99%となっており、耐水性に関しては比較的良好な結果になっている。これは、これらの化粧料でも、低級アルコール及び第2のポリエーテル変性シリコーンを使用しており、肌に適用した後に耐水性に寄与する転相乳化が発現しているためであると考えられる。したがって、低級アルコールを使用しなかったり、或いは、第2のポリエーテル変性シリコーンに代えて転相乳化をしない他の乳化剤を使用したりした場合には、耐水性能は悪化すると予測される。
【0144】
比較例1、比較例5、比較例6における耐水試験後の吸光度積分率の結果を見ると、顔料級疎水化処理粒子を使用しなかったり、疎水化処理をしていない顔料級粒子を水相中に配合したり、或いは、顔料級疎水化処理粒子を油相中に配合したりした場合には、化粧料に水が適用されても、ブースト性の向上、すなわち、紫外線防御効果が上昇することは確認されなかった。一方、実施例1~5の水中油型乳化化粧料の場合には、化粧料に水が適用されるとブースト性が向上することが確認できた。
【0145】
また、実施例1~5の水中油型乳化化粧料は、ローリング安定性及び粒子分散性にも優れることが分かった。