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  • 特開-積層構成体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022166772
(43)【公開日】2022-11-02
(54)【発明の名称】積層構成体
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/08 20060101AFI20221026BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20221026BHJP
   B32B 5/18 20060101ALI20221026BHJP
【FI】
B32B15/08 D
B32B27/18 B
B32B5/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021072195
(22)【出願日】2021-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】宇野 拓明
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AB01A
4F100AB10A
4F100AG00C
4F100AK01B
4F100AK03B
4F100AK06B
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100CA08B
4F100CB032
4F100DC11A
4F100DG12C
4F100DJ01B
4F100EC182
4F100EJ051
4F100EJ05B
4F100EJ421
4F100EJ531
4F100GB07
4F100JB16B
4F100JJ07
4F100YY00
4F100YY00A
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】不燃性を有し、かつ高温加熱時の寸法変化を抑制できる積層構成体を提供する。
【解決手段】積層構成体10は、金属シート12及び樹脂体11を備え、金属シート12側から加熱するコーンカロリーメータを用いた発熱性試験において、厚み50mmの試験体が、イグニッションに接触しないで、かつ、着火しないで、20分間の総発熱量が8MJ/m以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属シート及び樹脂体を備え、
イグニッションとの距離が13mmとなるように試験体をセットし、ISO-5660の試験方法に準拠して、放射熱強度50kW/mにて前記金属シート側から加熱するコーンカロリーメータを用いた発熱性試験において、厚み50mmの試験体が、イグニッションに接触しないで、かつ、着火しないで、20分間の総発熱量が8MJ/m以下である積層構成体。
【請求項2】
前記樹脂体を構成する樹脂が、熱可塑性樹脂である請求項1に記載の積層構成体。
【請求項3】
前記樹脂体を構成する樹脂がポリオレフィン系樹脂を含む請求項1又は2に記載の積層構成体。
【請求項4】
前記樹脂体が架橋体である請求項1~3のいずれか1項に記載の積層構成体。
【請求項5】
前記樹脂体が発泡体である請求項1~4のいずれか1項に記載の積層構成体。
【請求項6】
前記樹脂体が難燃剤を含有する請求項1~5のいずれか1項に記載の積層構成体。
【請求項7】
前記金属シートが複数の孔を有する請求項1~6のいずれか1項に記載の積層構成体。
【請求項8】
前記金属シートの開口率が、1~10%である請求項7に記載の積層構成体。
【請求項9】
前記金属シートの厚みが10~100μmである請求項1~8のいずれか1項に記載の積層構成体。
【請求項10】
前記金属シートがアルミニウムシートである請求項1~9のいずれか1項に記載の積層構成体。
【請求項11】
前記金属シートと前記樹脂体の間に配置されるガラスクロスをさらに備える請求項1~10のいずれか1項に記載の積層構成体。
【請求項12】
前記ガラスクロスの目付が20~300g/mである請求項11に記載の積層構成体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築分野などにおいて使用される積層構成体に関する。
【背景技術】
【0002】
建築、土木、電気、車両分野などにおいて、樹脂体は様々な態様にて広く使用されている。例えば建築分野では、断熱材として発泡体が使用されている。近年、断熱材は、安全性に対する要求性能が高くなる傾向になり、不燃性、難燃性が求められることがある。そのため、従来、例えば発泡体に難燃剤を配合させて難燃性を付与することがある(例えば、特許文献1参照)。また、発泡体などの樹脂体は、片面に金属シートが貼り合わされて積層体にすることも検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-145367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のように、発泡体などの樹脂体に難燃剤を配合しただけでは、不燃性を十分に付与できないことが多い。一方で、発泡体などの樹脂体に金属シートを貼り合わせると、不燃性を付与しやすくなるものの、高温加熱時に発泡体から発生したガスが外部に十分に抜けずに、積層体に寸法変化が生じることがある。寸法変化が生じると、火災時に変形して、例えば建築材料の崩落などが生じやすくなる。また、コーンカロリーメータを用いた発熱性試験において、イグニッションに接触して、建築基準法において不燃材料と認定されないという問題もある。
【0005】
そこで、本発明は、金属シートと樹脂体を有する積層構成体において、不燃性を付与し、かつ高温加熱時の寸法変化を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意検討の結果、積層構成体を用いた所定の発熱性試験において、厚み50mmの試験体が、イグニッションに接触しないで、かつ、着火しないで、20分間の総発熱量が8MJ/m以下となることで上記課題を解決できることを見出し、以下の本発明を完成させた。すなわち、本発明は、以下の[1]~[12]を提供することを要旨とする。
[1]金属シート及び樹脂体を備え、
イグニッションとの距離が13mmとなるように試験体をセットし、ISO-5660の試験方法に準拠して、放射熱強度50kW/mにて前記金属シート側から加熱するコーンカロリーメータを用いた発熱性試験において、厚み50mmの試験体が、イグニッションに接触しないで、かつ、着火しないで、20分間の総発熱量が8MJ/m以下である積層構成体。
[2]前記樹脂体を構成する樹脂が、熱可塑性樹脂である上記[1]に記載の積層構成体。
[3]前記樹脂体を構成する樹脂がポリオレフィン系樹脂を含む上記[1]又は[2]に記載の積層構成体。
[4]前記樹脂体が架橋体である上記[1]~[3]のいずれか1項に記載の積層構成体。
[5]前記樹脂体が発泡体である上記[1]~[4]のいずれか1項に記載の積層構成体。
[6]前記樹脂体が難燃剤を含有する上記[1]~[5]のいずれか1項に記載の積層構成体。
[7]前記金属シートが複数の孔を有する上記[1]~[6]のいずれか1項に記載の積層構成体。
[8]前記金属シートの開口率が、1~10%である上記[7]に記載の積層構成体。
[9]前記金属シートの厚みが10~100μmである上記[1]~[8]のいずれか1項に記載の積層構成体。
[10]前記金属シートがアルミニウムシートである上記[1]~[9]のいずれか1項に記載の積層構成体。
[11]前記金属シートと前記樹脂体の間に配置されるガラスクロスをさらに備える上記[1]~[10]のいずれか1項に記載の積層構成体。
[12]前記ガラスクロスの目付が20~300g/mである上記[11]に記載の積層構成体。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、不燃性を有し、かつ高温加熱時の寸法変化を抑制できる積層構成体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】積層構成体の一例を示す。
図2】積層構成体の他の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[積層構成体]
本発明の積層構成体は、金属シート及び樹脂体を備える積層構成体であり、発熱性試験において、厚み50mmの試験体が、イグニッションに接触しないで、かつ、着火しないで、20分間の総発熱量が8MJ/m以下となるものである。
以上の構成を有する積層構成体は、難燃性に優れ、不燃性を有することになる。また、積層構成体は、高温加熱時でもイグニッションに接触しない程度の寸法変化しか生じないので、火災発生時に変形などが生じにくくなる。
なお、発熱性試験は、イグニッションとの距離が13mmとなるように試験体をセットし、ISO-5660の試験方法に準拠して、放射熱強度50kW/mにて金属シート側から加熱するコーンカロリーメータを用いた試験である。具体的な方法は、後述する実施例に記載の通りである。
【0010】
上記発熱性試験における20分間の総発熱量は、高い不燃性を付与する観点から、5MJ/m以下が好ましく、4MJ/m以下が好ましく、3MJ/m以下がさらに好ましい。一方で、上記総発熱量は、低ければ低いほどよく0MJ/m以上であればよいが、実用的には0.5MJ/m以上である。
【0011】
また、上記20分間の加熱後の試験体とイグニッションの距離は、0mmより大きければよいが、この距離は大きければ大きいほどよく、好ましくは2mm以上、より好ましくは3mm以上、さらに好ましくは4mm以上である。また、上記距離は、通常は加熱前の試験体とイグニッションの距離以下となる。したがって、上記距離は通常は13mm以下となる。
【0012】
以下、積層構成体の構成についてより詳細に説明する。
<樹脂体>
樹脂体としては、発泡体であってもよいし、非発泡体であってもよいが、発泡体であることが好ましい。発泡体であると、積層構成体に断熱性を付与できる。また、樹脂体を構成する樹脂は、熱可塑性樹脂であることが好ましい。樹脂体に熱可塑性樹脂を使用することで樹脂体の加工性、施工性などが良好となる。
樹脂体を構成する樹脂としては、特に限定されないが、発泡体に使用できる樹脂を使用することが好ましく、具体的には、ポリ塩化ビニル系樹脂、シリコーン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、エラストマー、スチレン系樹脂などが挙げられる。エラストマーは、熱可塑性エラストマーでもよいし、熱可塑性エラストマー以外のゴム成分でもよい。これらの中では、発泡体への加工性、成形性などの観点からポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0013】
(架橋度)
樹脂体は、架橋体であることが好ましく、架橋発泡体であることがより好ましい。また、樹脂体は、特に電子線により架橋された架橋体であることが好ましい。樹脂体が架橋体である場合、ゲル分率で表される架橋度は、20~70質量%が好ましい。樹脂体の架橋度を上記範囲内とすることで、特に樹脂体が発泡体である場合の機械的強度、柔軟性及び成形性をバランスよく向上させることができ、高温加熱時の寸法安定性なども良好となる。これら観点から、樹脂体の架橋度は、25~60質量%がより好ましく、30~50質量%がさらに好ましい。なお、架橋度の測定方法は、後述する実施例に記載されるとおりである。
【0014】
(見掛け密度)
樹脂体を発泡体とする場合の発泡体の見掛け密度は0.015~0.20g/ccであることが好ましい。見掛け密度を0.015cg/cc以上とすることで、発泡体に一定の機械的強度を付与でき、高温に加熱された場合の寸法安定性も良好となる。また、0.20g/cc以下とすることで、適切な断熱性を付与できる。また、柔軟性なども優れたものとなり施工性なども良好となる。これら観点から、発泡体の見掛け密度は、0.018~0.10g/ccがより好ましく、0.02~0.05g/ccがさらに好ましい。
【0015】
(樹脂体の厚み)
樹脂体の厚みは、特に限定されないが、例えば3~50mmである。厚みを3mm以上とすることで、例えば発泡体とした場合に適切な断熱性を付与できる。また、50mm以下とすることで高温加熱時の寸法安定性が良好となる。また、厚みを上記範囲内とすることで建築材料として好適に使用しやすくなる。これら観点から、樹脂体の厚みは、5~40mmであることが好ましく、10~30mmであることがさらに好ましい。
【0016】
(ポリオレフィン系樹脂)
樹脂体に使用されるポリオレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂等が好ましい。これらの中では、柔軟性、加工性、施工性などの観点から、ポリエチレン系樹脂がより好ましい。また、ポリプロピレン系樹脂とポリエチレン系樹脂とを併用してもよい。
【0017】
(ポリプロピレン系樹脂)
ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレンの単独重合体であるホモポリプロピレン、プロピレンとプロピレン以外のα-オレフィンとの共重合体等が挙げられる。
プロピレンとプロピレン以外のα-オレフィンとの共重合体としては、ブロック共重合体、ランダム共重合体、ランダムブロック共重合体等が挙げられるが、これらの中でも、ランダム共重合体(すなわち、ランダムポリプロピレン)が好ましい。
プロピレン以外のα-オレフィンとしては、炭素数2のエチレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン等の炭素数4~10程度のα-オレフィン等が挙げられるが、これらの中でも、成形性及び耐熱性の観点から、エチレンが好ましい。なお、共重合体において、これらのα-オレフィンは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、ポリプロピレン系樹脂は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0018】
また、プロピレンとプロピレン以外のα-オレフィンとの共重合体においては、プロピレン80質量%以上100質量%未満と、プロピレン以外のα-オレフィン20質量%以下とを共重合させて得られるものが好ましい。ここで、共重合体を構成する全モノマー成分に対して、プロピレンが90~99.5質量%、プロピレン以外のα-オレフィンが0.5~10質量%であることが更に好ましく、プロピレンが95~99質量%、プロピレン以外のα-オレフィンが1~5質量%であることがより更に好ましい。
【0019】
(ポリエチレン系樹脂)
ポリエチレン系樹脂としては、低密度ポリエチレン系樹脂(LDPE,密度:0.930g/cm未満)、中密度ポリエチレン系樹脂(MDPE,密度:0.930g/cm以上0.942g/cm未満)、高密度ポリエチレン系樹脂(HDPE,密度:0.942g/cm以上)、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂(LLDPE)等が挙げられる。これらの中でも、柔軟性、加工性、施工性などの観点から、低密度ポリエチレン系樹脂(LDPE)及び直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂(LLDPE)が好ましく、低密度ポリエチレン系樹脂(LDPE)がより好ましい。
【0020】
直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂は、通常、エチレンを主成分(好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上)とした、エチレンと少量のα-オレフィンの共重合体である。ここで、α-オレフィンとしては、好ましくは炭素数3~12、より好ましくは炭素数4~10のものが挙げられ、具体的には、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン等が挙げられる。なお、共重合体において、これらのα-オレフィンは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、ポリエチレン系樹脂は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0021】
ポリオレフィン系樹脂は、上記した樹脂以外のポリオレフィン系樹脂も使用可能である。そのような樹脂成分としては、具体的には、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アルキルアクリレート共重合体等が挙げられる。これら樹脂成分は、例えば、ポリプロピレン系樹脂及びポリエチレン系樹脂の少なくとも1種が使用された樹脂に対して適宜加えられるとよい。
【0022】
樹脂体を構成する樹脂は、ポリオレフィン系樹脂単独で構成されていてもよいが、本発明の目的を阻害しない範囲であれば、ポリオレフィン系樹脂以外の樹脂成分を含んでいてもよい。ポリオレフィン系樹脂の含有量は、樹脂体を構成する樹脂全量に対して、例えば70質量%以上であり、80~100質量%が好ましく、90~100質量%がより好ましい。
【0023】
(難燃剤)
本発明の樹脂体は、さらに難燃剤を含有することが好ましい。難燃剤としては、リン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤、アンチモン系化合物、金属水酸化物から選択される少なくとも1種であることが好ましい。このような難燃剤を、樹脂体の難燃性を適切に向上させることができる。また、このような難燃剤は後述する発泡剤との関係で樹脂組成物の粘度が高くなりすぎないため、発泡体の見掛け密度を好適な範囲に調整しやすくなる。したがって、上記難燃剤を用いることにより、難燃性と断熱性とを兼ね備えた発泡体を得やすくなる。このような観点から、上記難燃剤としては、リン系難燃剤、ハロゲン系難燃剤及びアンチモン系化合物から選択される少なくとも1種がより好ましく、ハロゲン系難燃剤及びアンチモン系化合物から選択される少なくとも1種がさらに好ましい。
【0024】
<<リン系難燃剤>>
リン系難燃剤としては、リン酸塩、ポリリン酸塩、ホスファゼン系化合物、リン系スピロ化合物等が挙げられる。これらの中でも、発泡性組成物への粘度の影響が小さく、発泡倍率を調整しやすくする観点から、リン酸塩、ポリリン酸塩、及びリン系スピロ化合物から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0025】
リン酸塩としては、オルトリン酸メラミン塩、オルトリン酸ピペラジン塩、ピロリン酸メラミン塩、ピロリン酸ピペラジン塩、リン酸カルシウム、及びリン酸マグネシウム等が挙げられる。
ポリリン酸塩としては、ポリリン酸アンモニウム塩、ポリリン酸メラミン塩、ポリリン酸メラミン・メラム・メレム塩、及びポリリン酸ピペラジン塩等が挙げられる。
また、オルトリン酸塩、ピロリン酸塩、ポリリン酸塩としては、上記以外にも、N,N,N’,N’-テトラメチルジアミノメタン、エチレンジアミン、N,N’-ジメチルエチレンジアミン、N,N’-ジエチルエチレンジアミン、N,N-ジメチルエチレンジアミン、N,N-ジエチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-ジエチルエチレンジアミン、1,2-プロパンジアミン、1,3-プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,7-ジアミノへプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9ージアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、trans-2,5-ジメチルピペラジン、1,4-ビス(2-アミノエチル)ピペラジン、1,4-ビス(3-アミノプロピル)ピペラジン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、アクリルグアナミン、2,4-ジアミノ-6-ノニル-1,3,5-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-ハイドロキシ-1,3,5-トリアジン、2-アミノ-4,6-ジハイドロキシ-1,3,5-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-メトキシ-1,3,5-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-エトキシ-1,3,5-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-プロポキシ-1,3,5-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-イソプロポキシ-1,3,5-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-メルカプト-1,3,5-トリアジン、2-アミノ-4,6-ジメルカプト-1,3,5-トリアジン、アンメリン、フタロジグアナミン、メラミンシアヌレート、ピロリン酸メラミン、ブチレンジグアナミン、ノルボルネンジグアナミン、メチレンジグアナミン、エチレンジメラミン、トリメチレンジメラミン、テトラメチレンジメラミン、ヘキサメチレンジメラミン、1,3-ヘキシレンジメランミンなどとの塩も使用できる。
【0026】
上記の中でも、ピロリン酸メラミン塩、ピロリン酸ピペラジン塩、及びポリリン酸アンモニウム塩から選ばれる1種以上が好ましく、ピロリン酸ピペラジン塩とピロリン酸メラミン塩とを併用することも好ましい。
また、リン系難燃剤としては、イントメッセント系難燃剤として、前記リン酸塩及びポリリン酸塩から選ばれる1種以上と金属酸化物とを混合して用いてもよい。
リン酸塩及びポリリン酸塩から選ばれる1種以上と併用する金属酸化物としては、例えば、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、二酸化ケイ素、酸化チタン、酸化マンガン(MnO、MnO)、酸化鉄(FeO、Fe、Fe)、酸化銅、酸化ニッケル、酸化スズ、酸化アルミニウム、及びアルミン酸カルシウム等が挙げられる。これらの中でも、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、及び酸化カルシウムが好ましい。
リン酸塩及びポリリン酸塩から選ばれる1種以上と、金属酸化物とを混合して用いる場合、これらの質量比は以下のとおりに調整することが好ましい。金属酸化物に対するリン酸塩及びポリリン酸塩から選ばれる1種以上の質量比〔リン酸塩及びポリリン酸塩の合計質量/金属酸化物の質量〕は、難燃性を向上させる観点から、好ましくは4以上100以下、より好ましくは6以上50以下、更に好ましくは10以上35以下である。
【0027】
前記リン酸塩及びポリリン酸塩から選ばれる1種以上を含む難燃剤の市販品としては、
例えば、株式会社ADEKA製「アデカスタブ FP-2100J」、「アデカスタブ
FP-2200S」、「アデカスタブ FP-2500S」、クラリアントジャパン株式
会社製「EXOLIT AP422」、「EXOLIT AP462」等が挙げられる。
【0028】
ホスファゼン系化合物は、分子中に-P=N-結合を有する有機化合物である。ホスファゼン系化合物としては、-P=N-よりなる6員環の環状ホスファゼン骨格を有する化合物が好ましい。ホスファゼン系化合物の例としては、大塚化学社から市販されている「SPB-100」等が挙げられる。
リン系スピロ化合物としては、リン原子を有するスピロ化合物であれば特に限定されない。なお、スピロ化合物とは、二つの環状骨格が一つの炭素を共有した構造を有する化合物であり、リン原子を有するスピロ化合物とは、上記二つの環状骨格を構成する元素の少なくとも一つがリン原子である化合物であり、各環状骨格がリン原子を有することが好ましい。リン系スピロ化合物としては、帝人株式会社「ファイヤガード FCX-210」などが挙げられる。
【0029】
<<ハロゲン系難燃剤>>
ハロゲン系難燃剤は、ガス相におけるラジカルトラップ効果により活性OHラジカルを安定化させる。また、燃焼時、ハロゲン系難燃剤より生成するハロゲン化水素によって燃焼推進役となる活性なOHラジカル、Hラジカルがトラップされ安定化する。さらに、燃焼時、ハロゲン系難燃剤より生成するハロゲン水素は不燃性であるので、希釈効果を生じさせ、さらに酸素遮断効果も生じさせる。
ハロゲン系難燃剤としては、分子構造中にハロゲンを含有する難燃剤であれば特に限定されない。ハロゲン系難燃剤としては、例えば、臭素系難燃剤及び塩素系難燃剤が挙げられ、中でも、臭素系難燃剤が好ましい。
【0030】
臭素系難燃剤としては、分子構造中に臭素を含有する難燃剤であれば特に限定されない。臭素系難燃剤には、例えば、デカブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノールA(TBBA)、TBBAエポキシオリゴマー、TBBAカーボネートオリゴマー、TBBAビス(ジブロモプロピルエーテル)、TBBAビス(アリールエーテル)、ビス(ペンタブロモフェニル)エタン、1,2-ビス(2,4,6-トリブロモフェノキシ)エタン、2,4,6-トリス(2,4,6-チロブロモフェノキシ)-1,3,5-トリアジン、2,6-又は2,4-ジブロモフェノールホモポリマー、臭素化ポリスチレン、ポリ臭素化スチレン、エチレンビステトラブロモフタルイミド、ヘキサブロモシクロドデカン、ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモベンジルアクリレートモノマー、ペンタブロモベンジルアクリレートポリマー等が挙げられる。これらの中でも、難燃性及び発泡性の観点から、ビス(ペンタブロモフェニル)エタンが好ましい。これらの臭素系難燃剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0031】
<<アンチモン系化合物>>
アンチモン系化合物としては、例えば、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン等が挙
げられる。これらの中では、三酸化アンチモンが好ましい。
アンチモン系化合物は、ハロゲン系難燃剤を用いる場合において、併用することも好ましい。アンチモン系化合物は、ハロゲン系難燃剤との相乗効果により、発泡体シートの難燃性を改善できると共に、ハロゲン系難燃剤の含有量を低減できる。アンチモン系化合物を用いると、燃焼時、ハロゲン系難燃剤と反応し、不燃性のハロゲン化アンチモンとなり、これにより、酸素遮蔽効果が生じる。
【0032】
<<金属水酸化物>>
金属水酸化物としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化鉄、水酸化ニッケル、水酸化ジルコニウム、水酸化チタン、水酸化亜鉛、水酸化銅、水酸化バナジウム、水酸化スズ、タルク等が挙げられる。これらのなかでは、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、タルクから選択される少なくとも1種が好ましく、水酸化アルミニウム、及び水酸化マグネシウムから選択される少なくとも1種がより好ましい。
【0033】
樹脂体における難燃剤の含有量は、樹脂体に含有される樹脂100質量部に対して、1~150質量部であることが好ましい。1質量部以上であることで、樹脂体に適切に難燃性を付与できる。150質量部以下とすることで樹脂体、特に発泡体の加工性、機械特性等が良好になる。これら観点から、樹脂体の難燃剤の含有量は、樹脂100質量部に対して、2~40質量部がより好ましく、3~25質量部がさらに好ましく、5~15質量部がよりさらに好ましい。
【0034】
難燃剤としては、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。例えば2種以上併用する場合には、上記の通りハロゲン系難燃剤とアンチモン系化合物の組み合わせが好ましく、中でも臭素系難燃剤と、アンチモン系化合物とを併用することがより好ましい。
ハロゲン系難燃剤とアンチモン系化合物とを併用する場合、アンチモン系化合物の含有量のハロゲン系難燃剤の含有量に対する比(アンチモン系化合物/ハロゲン系難燃剤)は、ハロゲン系難燃剤との相乗効果の観点から、質量比で例えば0.1~1、好ましくは0.2~0.8、より好ましくは0.3~0.7である。
【0035】
(発泡剤)
樹脂体が発泡体である場合には、樹脂体は、ポリオレフィン系樹脂などの上記樹脂成分を含む樹脂組成物を発泡させて得るとよい。樹脂組成物を発泡させる方法としては、化学的発泡法、物理的発泡法がある。化学的発泡法は、樹脂組成物に添加した化合物(発泡剤)の熱分解により生じたガスにより気泡を形成させる方法であり、物理的発泡法は、低沸点液体(発泡剤)を樹脂組成物に含浸させた後、発泡剤を揮発させてセルを形成させる方法である。発泡法は特に限定されないが、均一な独立気泡発泡体を得る観点から、化学的発泡法が好ましい。
化学的発泡法に使用される発泡剤としては、熱分解型発泡剤が使用され、例えば、分解温度が160~270℃程度の有機系熱分解型発泡剤又は無機系熱分解型発泡剤を用いることができる。
【0036】
有機系熱分解型発泡剤としては、アゾジカルボンアミド、アゾジカルボン酸金属塩(アゾジカルボン酸バリウム等)、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のニトロソ化合物、ヒドラゾジカルボンアミド、4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、トルエンスルホニルヒドラジド等のヒドラジン誘導体、トルエンスルホニルセミカルバジド等のセミカルバジド化合物等が挙げられる。
【0037】
無機系熱分解型発泡剤としては、炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、亜硝酸アンモニウム、水素化ホウ素ナトリウム、無水クエン酸モノソーダ等が挙げられる。
これらの中でも、微細な気泡を得る観点、及び経済性、安全面の観点から、有機系熱分解型発泡剤が好ましく、アゾ化合物、ニトロソ化合物がより好ましく、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物が更に好ましく、アゾジカルボンアミドがより更に好ましい。
これらの発泡剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0038】
樹脂組成物中における熱分解型発泡剤の配合量は、樹脂体に含まれる樹脂100質量部に対して2~40質量部が好ましく、10~35質量部がより好ましく、15~32質量部がさらに好ましい。熱分解型発泡剤の配合量がこの範囲内であると、発泡体の発泡性が適切となり、所望する見掛け倍率を有する発泡体を得ることができる。
【0039】
(その他の添加剤)
樹脂体は、さらに上記以外の添加剤を含有してもよい。具体的には、酸化防止剤、分解温度調整剤、架橋助剤、金属害防止剤、帯電防止剤、安定剤、充填剤、顔料等が挙げられる。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、及びアミン系酸化防止剤等が挙げられる。樹脂体における酸化防止剤の含有量は、樹脂100質量部に対して、例えば0.1~10質量部、好ましくは0.2~3質量部である。
また、分解温度調整剤としては、酸化亜鉛、ステアリン酸亜鉛、尿素等が挙げられる。樹脂体における分解温度調整剤の含有量は、樹脂100質量部に対して、例えば0.1~10質量部、好ましくは1~5質量部である。
【0040】
<金属シート>
本発明では、積層構成体が、金属シートを有することで、積層構成体に不燃性を付与できる。また、遮熱効果を発揮し、特に樹脂体が発泡体である場合に積層構成体の断熱性を向上させることができる。金属シートを構成する金属としては、亜鉛、金、銀、クロム、チタン、鉄、アルミニウム、銅、ニッケル、タンタル又はこれらを含む合金などが挙げられ、合金としてはSUSなどのステンレス、黄銅、ベリリウム銅、インコネルなどが挙げられる。これら金属は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中では、アルミニウムが好ましく、したがって、金属シートはアルミニウムシートであることが好ましい。アルミニウムシートを使用することで、積層構成体の柔軟性を確保して、加工性、施工性が良好となる。また、軽量であり、腐食されにくい。
【0041】
金属シートとしては、一般的に金属箔と言われる程度の厚みを有するものを使用してもよく、金属シートの厚みは、例えば5~250μmである。厚みを5μm以上とすることで、金属シートによって積層構成体に不燃性、遮熱性を付与しやすくなる。また、厚みを250μm以下とすることで、金属シートによって積層構成体が必要以上に厚くなることを防止できる。
金属シートの厚みは、好ましくは10~100μmである。厚みを10μm以上とすることで、金属シートの強度が良好になり、施工時に金属シートが破れるなどの不具合が生じにくくなり、施工性が向上する。また、100μm以下とすることで積層構成体全体の柔軟性を確保しやすなり、積層構成体の施工性が良好となる。施工性などの観点から金属シートの厚みは、15~70μmがより好ましい。
【0042】
金属シートは、複数の孔を有することが好ましい。孔は、シートの厚み方向に貫通する貫通孔である。金属シートが複数の孔を有すると、樹脂体が加熱により熱分解した際にガスが発生しても、孔を介してガスが放出される。そのため、高温加熱時、積層構成体が膨張することを防止して寸法変化が生じることを抑制できる。
【0043】
孔の形状は、特に限定されず、円形、楕円形などの輪郭が曲線からなる形状でもよいし、三角形、四角形、五角形、六角形などの多角形でもよいし、輪郭が曲線と直線を組み合わせた形状を有してもよい。また、各孔の直径は、特に限定されないが、例えば0.05~5mm、好ましくは0.1~1mm、より好ましくは0.2~0.8mmである。孔の直径を上記範囲内とすると、高温加熱時に樹脂体で発生したガスを、孔を介して効率的に外部に放出することが可能になる。また、上記上限値以下とすると、孔による空隙によって不燃性、遮熱性などが低下することを防止できる。なお、孔の直径とは、各孔の最大径を意味する。
【0044】
また、孔は、規則的に配列されていてもよいし、不規則的に配列されていてもよい。規則的に配列される場合、孔を縦及び縦方向に等間隔に並べた格子配列としてもよいし、千鳥配列などとしてもよい。また、孔の数は、開口率が後述する範囲となるように適宜調整すればよく特に限定されないが、例えば1~150個/cm、好ましくは3~100個/cm、より好ましくは5~80個/cmである。
【0045】
上記孔を設けたことによる金属シートの開口率は、1~10%であることが好ましい。金属シートの開口率を1%以上とすると、樹脂体から発生したガスが孔から外部に適切に放出され、高温加熱時の積層構成体の寸法変化を適切に抑制できる。また、10%以下とすることで、孔を設けたことによって積層構成体の不燃性、遮熱性などが損なわれることを防止できる。これら観点から、上記開口率は、1~9%がより好ましく、2~8%がさらに好ましい。
【0046】
<ガラスクロス>
本発明の積層構成体は、金属シートと樹脂体の間に配置されるガラスクロスをさらに備えることが好ましい。ガラスクロスを備えることで積層構成体に不燃性を付与しやすくなる。また、ガラスクロスは、適宜空隙を有するので、樹脂体で発生したガスは、ガラスクロス、及び金属シートの孔を介して適切に外部に放出される。ガラスクロスは、特に限定されず、フィラメント径が例えば1~10μm程度のガラス繊維により構成されるとよい。ガラスクロスは、平織り、朱子織り又は綾織り等のいかなる織り方で織られてもよい。
ガラスクロスの目付は、特に限定されないが、好ましくは20~300g/mである。ガラスクロスの目付が上記下限値以上であると、積層構成体に不燃性をより一層付与しやすくなる。また、上記上限値以下であると、ガラスクロスに適切な空隙ができ、樹脂体で発生したガスが外部に抜けやすくなる。ガラスクロスの目付は、以上の観点から、より好ましくは20~280g/m、さらに好ましくは50~250g/mである。
【0047】
<積層構造>
本発明の積層構成体は、図1に示すように、樹脂体11と、樹脂体11の一方の面に積層された金属シート12とから構成される積層構成体10であるとよい。ここで、金属シート12は、樹脂体11に直接積層されてもよいが、樹脂体11に接着層(図示しない)を介して積層されることが好ましい。金属シート12は、樹脂体11に対する接着性を確保しにくいが、接着層を介することで高い接着力で樹脂体11に接着させることができる。
【0048】
また、積層構成体は、図2に示すように、樹脂体11及び金属シート12の間にガラスクロス13が設けられ、樹脂体11、ガラスクロス13、及び金属シート12の順に設けられた積層構成体15であることが好ましい。積層構成体15においても、ガラスクロス13は樹脂体11に直接積層されてもよいが、接着層(図示しない)を介して積層されることが好ましい。同様に、金属シート12は、ガラスクロス13に直接積層されてもよいが、接着層(図示しない)を介して積層されることが好ましい。ガラスクロス13、及び金属シート12それぞれは、接着層を使用することで高い接着力で樹脂体11及びガラスクロス13それぞれに接着させることができる。
【0049】
金属シートと樹脂体、金属シートとガラスクロス、及びガラスクロスと樹脂体を接着させるための接着層としては、公知の接着層を使用することができる。接着層は、ホットメルトフィルムや粘着剤であってもよい。
【0050】
<積層構成体の製造方法>
本発明の積層構成体は、金属シート又は金属シートとガラスクロスの積層体に対して、樹脂体を積層させることで得ることができる。例えば、樹脂体が非発泡体である場合には、金属シート、又は金属シートとガラスクロスの積層体に対して押出成形などにより、樹脂体を成形しながら金属シート又はガラスクロス上に積層してもよい。
また、発泡体又は非発泡体と、金属シート又は金属シートとガラスクロスの積層体を、接着層を介して貼り合わせることで積層構成体を製造してもよい。
【0051】
[発泡体の製造方法]
本発明の好ましい一実施形態に係る発泡体の製造方法としては、例えば、樹脂と、熱分解型発泡剤と、任意で配合される難燃剤などの添加剤を含む樹脂組成物を、押出機により押し出して、その押し出した樹脂組成物を架橋及び発泡する方法が挙げられる。より具体的には、以下の工程(1)~(3)により製造することが好ましい。
工程(1):樹脂と、熱分解型発泡剤と、必要に応じて配合される難燃剤などの添加剤を押出機に供給して、溶融混練した後、押出機から押し出して樹脂組成物を得る工程
工程(2):工程(1)で得た樹脂組成物に電離性放射線を照射して、架橋する工程
工程(3):工程(2)で架橋した樹脂組成物を発泡させ、発泡体を得る工程
【0052】
本製造方法で使用される押出機としては、単軸押出機、二軸押出機等が挙げられる。押出機内部の樹脂温度は、120~195℃が好ましく、130~170℃がより好ましい。また、押出機から押し出された樹脂組成物は、シート状(樹脂シート)であるとよい。
【0053】
工程(2)においては、工程(1)で得た樹脂組成物に電離性放射線を照射して、架橋する。工程(2)において使用できる電離性放射線としては、α線、β線、γ線、電子線等を挙げることができ、これらの中でも、電子線が好ましい。電離性放射線の照射量は、所望の架橋度を得ることができればよいが、1~10Mradが好ましく、3~7Mradがより好ましい。電離性放射線の照射による架橋の進行は、樹脂組成物の組成に影響されるため、架橋度を測定しながら照射量を調整してもよい。
【0054】
工程(3)では、架橋した樹脂組成物を加熱することで発泡させるとよい。発泡させる際の加熱温度は、熱分解型発泡剤の分解温度以上の温度に加熱することが好ましい。具体的な加熱温度は、通常200~290℃であり、220~260℃が好ましい。また、工程(3)においては、発泡体は、発泡後又は発泡中に、MD方向又はCD方向のいずれか一方又は双方に延伸されてもよい。
【0055】
なお、本発明の発泡体の製造方法は上記の製造方法に限定されず、他の製造方法で製造されてもよい。
例えば、電離性放射線によって架橋する代わりに、樹脂組成物に予め有機過酸化物を配合しておき、樹脂組成物を加熱して有機過酸化物を分解させる方法等により架橋してもよい。この際、樹脂組成物を架橋させながら発泡させてもよい。また、発泡体は架橋体でなくてもよく、その場合、工程(2)を省略してもよい。
【0056】
<積層構成体の使用方法>
本発明の積層構成体は、建築物、土木、電子製品、電気製品、自動車などの各種車両などにおいて使用できるが、建築物において使用することが好ましい。
上記した発熱性試験は、建築基準法第2条第九号の認定に係る性能評価試験であり、厚み50mmの試験体が、イグニッションに接触しないで、かつ、着火しないで、20分間の総発熱量が8MJ/m以下であることで、不燃材料として認定される。そのため、本発明の積層構成体は、建築物において、不燃材料として使用でき、建築物の様々な箇所で建築材料として好適に使用できる。具体的には、屋根、壁、床、天井などに使用されてもよいし、これら以外の箇所において使用されてもよい。また、本発明の積層構成体は、樹脂体が発泡体であることで断熱材として使用可能であり、したがって、樹脂体が発泡体である場合に特に建築物に好適に使用できる。
【0057】
また、積層構成体は、単体で使用されてもよいが、他の材料に積層されて使用されてもよい。他の材料としては金属板などの金属材料が挙げられる。すなわち、本発明は、金属板などの金属材料に上記積層構成体を積層した構造物も提供するものである。金属板などの金属材料は、樹脂体の上記金属シートが設けられた面とは反対側の面に設けられるとよい。したがって、金属材料が積層された構造物は、金属シート/樹脂体/金属材料をこの順に有する構造物、金属シート/ガラスクロス/樹脂体/金属材料をこの順に有する構造物などであればよい。
【0058】
本発明では、上記積層構成体が金属板などに積層されて使用されることで、不燃材料としてより好適に使用できる。また、本発明の積層構成体は、金属板などに積層されて使用されると、特に建築物の屋根、壁、床、天井などにおいて好適に使用しやすくなる。
積層構成体が積層された金属板などの金属材料の厚みは、特に限定されないが、例えば0.1~10mm程度、好ましくは0.15~4mm程度、より好ましくは0.2~2mmである。金属材料の材質は、特に限定されないが、亜鉛メッキ鋼板、ガルバニウム鋼板、ステンレスなどの各種鋼材などが挙げられる。
【0059】
また、上記積層構成体は、粘着剤層、又は両面粘着テープなどを介して金属板などの金属材料に接着されればよい。したがって、樹脂体と金属材料の間には、粘着剤層、又は両面粘着テープが設けられてもよい。
両面粘着シートは、基材と、基材の両面に設けられた粘着剤層とを備えるものである。両面粘着シートは、一方の粘着剤層を樹脂体に接着させるとともに、他方の粘着剤層を金属材料に接着させるために使用するとよい。
粘着剤層を構成する粘着剤としては、特に制限はなく、例えば、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤等を用いることができる。各粘着剤層の厚さは、例えば1~100μmであることが好ましく、より好ましくは5~50μmである。
また、基材としては、不織布でもよいし、各種樹脂フィルムであってもよい。基材の目付量は、不燃性、耐火性などの観点から、小さい方がよく、例えば5~100g/m、好ましくは10~50g/m程度であるとよい。
【実施例0060】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0061】
各物性の測定方法、及び発泡体の評価方法は以下のとおりである。
(1)架橋度
発泡体から約100mgの試験片を採取し、試験片の質量A(mg)を精秤する。次に、この試験片を120℃のキシレン30cm中に浸漬して24時間放置した後、200メッシュの金網で濾過して金網上の不溶解分を採取、真空乾燥し、不溶解分の質量B(mg)を精秤する。得られた値から、下記式により架橋度(質量%)を算出した。
架橋度(質量%)=100×(B/A)
(2)密度
発泡体の密度(見かけ密度)はJIS K 7222に準拠して測定したものである。
(3)発泡体の厚み
ダイヤルゲージで計測した。
【0062】
(4)発熱性試験
各実施例、比較例で得られた積層構成体を99mm×99mmに切り出した。切り出した積層構成体の発泡体(樹脂体)側の面に両面粘着テープ(製品名♯570E、積水化学工業社製)を介して厚み0.27mmの亜鉛メッキ鋼板に貼り合わせて試験用構造物を得た。両面粘着テープは、パルプ不織布からなる基材(目付20g/m)の両面にアクリル系粘着剤層(厚み30μm)を有するものであった。この際、試験用構造物が50mmである場合には、試験用構造物をそのまま試験体とした。試験用構造物の厚みが50mmを超える場合には、貼り合わせ前に、金属シート側とは反対側において発泡体を切除して薄くした後に、両面粘着テープを介して亜鉛メッキ鋼板(厚み0.27mm)に貼り合わせて、全体の厚みが50mmとなるように調整された試験用構造物を試験体とした。また、試験用構造物が50mm未満である場合には、亜鉛メッキ鋼板の下側に不燃材料(セラミックファイバー)を配置して、不燃材料と試験用構造物を重ね合わせたものを試験体とした。この際、不燃材料と試験用構造物は、合計厚みが50mmとなるようにした。
【0063】
発熱性試験は、建築基準法第2条第九号の認定に係る性能評価試験と同等の試験を行った。具体的には、上記試験体を金属シート側が上面となるように発熱性試験装置にセットした。この際、試験体とイグニッションの距離は、13mmであった。セットした試験体を、ISO-5660の試験方法に準拠して、放射熱強度50kW/mにて金属シート側から20分間加熱したときの総発熱量をコーンカロリーメータにより測定した。また、本試験においては、加熱により試験体がイグニッションに接触するか否かも確認して、イグニッションに接触する場合は0mmと記録した。また、イグニッションに接触しない場合には、加熱後の試験体とイグニッションの距離(最短距離)を測定した。さらに、試験体に対する着火の有無も確認した。
【0064】
(5)施工性
積層構成体を適当なサイズにカッターナイフでカットし、両面テープを介して金属ダクトの金属面に貼り付けて施工性を評価した。なお、金属ダクトは、曲面部分を有し、それに合わせて積層構成体を曲面形状に変形させた。
A:金属面が破れたり、カーターナイフでうまくカットできなかったりせずに施工性が良好であった。
B:金属面に破れが生じ、または、カッターナイフでうまくカットできず、施工性が良好とではなかった。
【0065】
実施例1
(発泡体の製造)
各実施例及び比較例において、表1の発泡体の欄に示す各成分を、単軸押出機に投入して、120℃にて溶融混練して押し出し、厚さ2mmの樹脂シート(樹脂組成物)を得た。この樹脂シートの両面に加速電圧500kVで電子線を5.5Mradの照射量で照射することにより樹脂シートを架橋した。その後、架橋した樹脂シートを熱風オーブンによって240℃で3分間加熱し、その加熱により発泡させて厚み5mmの発泡体を得た。5mmの発泡体の表面を80℃に加熱し、順次貼り合わせて25mmの発泡体を得た。
【0066】
(積層構成体の製造)
また、直径0.5mmの円形の孔を規則的に多数並列させて設けた厚み18μmのアルミニウムシートと、ガラスクロス(製品名「EGW110TH」、セントラルグラスファイバー社製、目付110g/m)との積層体を用意した。この積層体は、30μmのホットメルトフィルム(製品名「FA-3050」、株式会社森部商店社製)をアルミニウムシート側より120℃に加熱して貼り合わされたものであった。上記積層体のガラスクロス側の面に30μmのホットメルトフィルム(製品名「FA-3050」、株式会社森部商店社製)を配置して、ホットメルトフィルムを介してアルミニウムシート側より120℃に加熱して発泡体と貼り合わせて積層構成体を得た。
【0067】
実施例2、3
発泡体の製造において得られる発泡体の厚みを表1に記載の通りに変更した以外は、実施例1と同様に実施した。
【0068】
実施例4、5
単位面積当たりの孔の数を調整することで開口率を表1に記載の通りに変更した以外は、実施例1と同様に実施した。
【0069】
実施例6、8、9
アルミニウムシートの厚みを表1に記載の通りに変更した以外は、実施例1と同様に実施した。
【0070】
実施例7
ガラスクロスを製品名(製品名「EGW210TH」、セントラルグラスファイバー社製、目付210g/m)に変更した以外は、実施例1と同様に実施した。
【0071】
比較例1
アルミニウムシートとして孔を有さないものを使用した以外は実施例1と同様に実施した。
【0072】
比較例2、3
単位面積当たりの円形の孔の数を調整することで開口率を表1に記載の通りに変更した以外は、実施例1と同様に実施した。
【0073】
各実施例、比較例の発泡体の評価結果を表1に示す。
【表1】
【0074】
表1における各成分の詳細は以下のとおりである。
LDPE:宇部丸善ポリエチレン社製、商品名「522N」
臭素系難燃剤:1,2-ビス(2,3,4,5,6-ペンタブロモフェニル)エタン、アルベマール日本社製、商品名「SAYTEX8010」
三酸化アンチモン:日本精鉱社製、商品名「PATOX-M」
ステアリン酸亜鉛:堺化学社製、商品名「SZ―2000」
酸化防止剤:BASFジャパン社製、商品名「イルガノックス1010」
ADCA:アゾジカルボンアミド、発泡剤
【0075】
以上の各実施例の積層構成体は、アルミニウムシート及び樹脂体を備え、アルミニウムシート側から加熱するコーンカロリーメータを用いた発熱性試験において、厚み50mmの試験体が、イグニッションに接触しないで、かつ、着火しないで、20分間の総発熱量が8MJ/m以下であるものであった。そのため、不燃性を有し、かつ高温加熱時の寸法変化を抑制でき、建築基準法第2条第九号の認定に係る性能評価試験において不燃材料と認定され得るものであった。
それに対して、比較例1の積層構成体は、発熱性試験においてイグニッションに接触することからも明らかなように高温加熱時の寸法変化が大きく、また、比較例2,3では発熱性試験において着火し、又は発熱量が大きくなり不燃性を付与できず、建築基準法第2条第九号の認定に係る性能評価試験において不燃材料と認定されないものとなった。
【符号の説明】
【0076】
10、15 積層構成体
11 樹脂体
12 金属シート
13 ガラスクロス
図1
図2