(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022166773
(43)【公開日】2022-11-02
(54)【発明の名称】自動車の巡航制御システム
(51)【国際特許分類】
B60W 10/02 20060101AFI20221026BHJP
B60W 10/04 20060101ALI20221026BHJP
F16H 59/24 20060101ALI20221026BHJP
【FI】
B60W10/00 102
B60W10/04
B60W10/02
F16H59/24
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021072196
(22)【出願日】2021-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】592173434
【氏名又は名称】株式会社日本ビデオセンター
(74)【代理人】
【識別番号】100090239
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 始
(74)【代理人】
【識別番号】100100859
【弁理士】
【氏名又は名称】有賀 昌也
(72)【発明者】
【氏名】近藤 忠美
【テーマコード(参考)】
3D241
3J552
【Fターム(参考)】
3D241AA23
3D241AC01
3D241AC06
3D241AD04
3D241AD51
3D241AE02
3D241AE14
3J552MA02
3J552MA13
3J552NA01
3J552NB01
3J552NB05
3J552PA39
3J552RB11
3J552RB12
3J552TB01
3J552UA07
3J552VC03W
(57)【要約】
【課題】運転操作に一定の負担をかけて判断力の低下を防止すると共に、目標車速を維持するのに影響の少ない状況で適切に慣性走行を行うことで、燃費を向上させることができるようにした巡航制御システムを提供する。
【解決手段】車両10の制御部14は、アクセルペダルの操作によって車内通信網14aへ出力されたスロットル開度に係る開度信号に基づいて、制御信号を形成する。アクセルペダルを所定の位置で所定時間維持したとき、制御部は、車両の走行モードを通常モードから巡航モードへ切り替える。さらに、アクセルペダルを戻したとき、制御部は、巡航モードからドライブトレイン上の回転動力を遮断し、車両を慣性で走行させる巡航慣性モードへ切り替える。このようなアクセルペダルの操作によって走行モードを切り替えることで、判断力の低下を防止し、燃費を向上させることができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン或いはモータのいずれか一方又は双方を備え、車両を駆動させる所定の回転動力を出力する駆動源と、
当該駆動源と接続され、前記回転動力を駆動輪へ伝達するドライブトレインと、
ドライバーが踏み込み操作可能なアクセルペダルと、当該アクセルペダルの踏み込み量に応じたスロットル開度を検出する開度センサを備えたスロットル装置と、
当該スロットル装置が出力した前記スロットル開度に係る開度信号に基づいて、前記駆動源を制御して、前記自動車を一定の速度で巡航走行させる巡航制御手段を備えた制御部を有し、
前記スロットル開度が所定時間、一定に維持されていることを前記開度センサが検出して、前記スロットル装置から前記スロットル開度が所定時間、一定に維持されている情報を含む第1開度信号が前記制御部へ入力されたとき、
前記巡航制御手段は、前記車両が通常の動力走行を行っていることを示す通常モードを、前記車両が前記巡航走行であることを示す巡航モードへ切り替えるようにし、
当該巡航モード中に前記アクセルペダルが戻されて、前記開度センサが検出した前記スロットル開度が、前記第1開度信号に係る前記スロットル開度よりも小さくなっている情報を含む第2開度信号が前記制御部へ入力されたとき、
前記巡航制御手段は、前記回転動力を前記ドライブトレイン上で遮断して、前記車両を慣性で走行させる巡航慣性モードへ切り替えるようにし、
当該巡航慣性モード中に前記アクセルペダルが戻されて、前記開度センサが検出した前記スロットル開度が、前記第1開度信号及び前記第2開度信号に係る前記スロットル開度よりも小さくなっている情報を含む第3開度信号が前記制御部へ入力されたとき、
前記巡航制御手段は、前記ドライブトレイン上で遮断されていた前記回転動力を接続して、前記巡航モード又は前記巡航慣性モードを前記通常モードへ切り替えるようにし、
前記巡航モード又は前記巡航慣性モード中に前記アクセルペダルが踏み込まれて、前記開度センサが検出した前記スロットル開度が、前記第2開度信号及び前記第3開度信号に係る前記スロットル開度よりも大きく、前記第1開度信号に係る前記スロットル開度が略同じかまたはそれ以上となっている情報を含む第4開度信号が前記制御部へ入力されたとき、
前記巡航制御手段は、前記巡航モード又は前記巡航慣性モードを前記通常モードへ切り替えるようにして、
前記アクセルペダルの戻し操作又は踏み込み操作に応じて、前記通常モード、前記巡航モード、又は前記巡航慣性モードを任意に切り替えるようにしたことを特徴とする巡航制御システム。
【請求項2】
前記通常モードから前記巡航モードへ切り替えられたときの車速を第1車速とし、
当該第1車速に対して所定の割合で定まる車速を第2車速とすると共に、単位時間あたりで減速する所定の比率を減速率とした場合に、
前記巡航慣性モード中に、前記減速率に沿って、前記第1車速が前記第2車速まで減速したとき、
前記巡航制御手段は、前記巡航慣性モードから前記巡航モードへ切り替えて、前記第1車速までの速度回復を図る処理を行い、
当該第1巡航速度まで速度が回復したとき、前記巡航制御手段は、前記巡航モードを前記巡航慣性モードへ切り替えるようにして、
前記巡航慣性モードと前記巡航モードが自動的に交互に切り替わるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の巡航制御システム。
【請求項3】
前記巡航慣性モード中に、前記減速率を上回って、前記車両が急激に減速したとき、
前記巡航制御手段は、前記巡航慣性モードを前記巡航モードへ瞬時に切り替えると共に、前記車速を前記第1車速まで速やかに回復させる処理を行うようにしたことを特徴とする請求項2に記載の巡航制御システム。
【請求項4】
前記巡航慣性モード中に、前記車両が増速又は加速して、前記車速が前記第1車速よりも速くなったとき、
前記巡航制御手段は、前記巡航慣性モードを前記巡航モードへ瞬時に切り替えると共に、前記車速を前記第1車速まで速やかに減速させる処理を行うようにしたことを特徴とする請求項2に記載の巡航制御システム。
【請求項5】
前記ドライブトレインに、前記駆動源側の前記回転動力を伝達する主ロータと、当該主ロータにしたがって前記駆動輪へ前記回転動力を伝達可能な従ロータを備えたクラッチ装置と、
互いに離合自在な複数個の歯車を組み合せた歯車群を備えた変速装置を設け、
前記巡航制御手段が、前記巡航慣性モードへ切り替えたとき、
前記クラッチ装置の前記主ロータと前記従ロータを離隔し、又は前記変速装置の前記歯車が互いに空転するニュートラル状態にして、前記ドライブトレイン上で前記回転動力を遮断するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の巡航制御システム。
【請求項6】
前記巡航制御手段が、前記巡航慣性モードへ切り替えたとき、
前記駆動源の前記エンジンが停止又はアイドリング状態へ移行するか、若しくは前記モータが停止又は当該モータを用いて発電するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の巡航制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車が一定の速度で巡航走行しているとき、当該巡航走行を制御する自動車の巡航制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、排気ガスが環境へ与える負担を考慮して燃料消費を抑えるべく、燃費の向上が図られた自動車が日々開発されている。
ここで、当該自動車が高速道路又はバイパス道路のような快走路上を走行する場合、燃料消費を抑えて燃費を向上させる最も経済的な走行方法は、一定の速度を維持して走行する巡航走行であることが知られている。そこで、ドライバーは自らアクセルペダルを操作して、つまり、アクセルペダルの踏み込み量を調整することによって、エンジンの回転数を上げて加速させたり、エンジンブレーキを利用して減速させたりと細かく加減速を繰り返して、巡航走行を維持している。
このドライバーによるアクセルの開閉操作を、当該ドライバーに代わって制御する技術が、オートクルーズと呼ばれるものである。
【0003】
オートクルーズ制御は、常にエンジンの駆動状態を検知し、それをフィードバックして自動車の速度を一定に保つように制御している。すなわち、常にエンジンの回転数とエンジンに対する燃料供給を制御して、燃料供給を増やし、エンジンの回転数を上げて加速させたり、燃料供給をカットし、エンジンのフリクション、いわゆるエンジンブレーキを利用して減速したりと、エンジンの回転数と燃料供給を、ドライバーによるアクセルペダルの操作よりも細かく制御して巡航走行を維持すると共に燃費抑制を図っている。これによって大幅に燃費を改善することができるようになった。
ここで、オートクルーズ制御中にエンジンブレーキが効いたとき、オートクルーズで設定された巡航速度から大きく減速してしまう場合がある。このとき、大きく減速してしまった速度を設定にしたがって巡航速度まで速やかに回復する制御が行われる。このとき、オートクルーズ制御は自動車を大きく加速させる制御を行う。当該加速制御は、燃料消費を増大させる原因となる。そのため、かえって燃費が悪化してしまう場合がある。
また、オートクルーズ制御中は、エンジンの回転数が、アイドリング状態またはニュートラル状態のときよりも高く維持される場合が多く、制御されているとはいえ、燃料が常にエンジンへ供給されているので、同時間アイドリング状態またはニュートラル状態を行ったときよりも燃料消費が増えてしまうおそれがある。
【0004】
そこで、特開2016-117368号公報に開示されている車両の走行制御装置は、オートクルーズ制御と、クラッチを遮断し、又は変速機をニュートラルにして、エンジンから駆動輪に伝達する動力を遮断する慣性走行制御を補助ブレーキスイッチと紐付けて選択可能に組み合わせて、場合によってはエンジンブレーキを効かせないように制御している。これによって、オートクルーズ制御中に目標車速を維持するとともに、走行の負荷を低減し、エンジンブレーキによる不要な減速を回避して燃費の向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のオートクルーズ、また当該オートクルーズと同様な自動運転状態では、高速道路、又はバイパス道路を長時間に亘って巡航走行する場合、ドライバーの負担が軽減され、運転操作が楽になるという大きなメリットがある。
しかしながら、一方では、上記オートクルーズ中、長時間に亘って運転操作をせずに進行方向を見つめているドライバーは、注意力が散漫になり、判断力が低下するおそれがある。これによって、居眠り運転が誘発され、たとえば、進行方向上で発生したトラブルに気づいたとき、回避操作が遅れて重大な事故を起こしてしまうおそれがある。
【0007】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、運転操作に一定の負担をかけて判断力の低下を防止すると共に、当該運転操作と慣性走行の切り替えを紐付けて、巡航走行中に適切な慣性走行を行うことで、燃費を向上させることができるようにした巡航制御システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の巡航制御システムは、エンジン或いはモータのいずれか一方又は双方を備え、車両を駆動させる所定の回転動力を出力する駆動源と、
当該駆動源と接続され、前記回転動力を駆動輪へ伝達するドライブトレインと、
ドライバーが踏み込み操作可能なアクセルペダルと、当該アクセルペダルの踏み込み量に応じたスロットル開度を検出する開度センサを備えたスロットル装置と、
当該スロットル装置が出力した前記スロットル開度に係る開度信号に基づいて、前記駆動源を制御して、前記自動車を一定の速度で巡航走行させる巡航制御手段を備えた制御部を有し、
前記スロットル開度が所定時間、一定に維持されていることを前記開度センサが検出して、前記スロットル装置から前記スロットル開度が所定時間、一定に維持されている情報を含む第1開度信号が前記制御部へ入力されたとき、
前記巡航制御手段は、前記車両が通常の動力走行を行っていることを示す通常モードを、前記車両が前記巡航走行であることを示す巡航モードへ切り替えるようにし、
当該巡航モード中に前記アクセルペダルが戻されて、前記開度センサが検出した前記スロットル開度が、前記第1開度信号に係る前記スロットル開度よりも小さくなっている情報を含む第2開度信号が前記制御部へ入力されたとき、
前記巡航制御手段は、前記回転動力を前記ドライブトレイン上で遮断して、前記車両を慣性で走行させる巡航慣性モードへ切り替えるようにし、
当該巡航慣性モード中に前記アクセルペダルが戻されて、前記開度センサが検出した前記スロットル開度が、前記第1開度信号及び前記第2開度信号に係る前記スロットル開度よりも小さくなっている情報を含む第3開度信号が前記制御部へ入力されたとき、
前記巡航制御手段は、前記ドライブトレイン上で遮断されていた前記回転動力を接続して、前記巡航モード又は前記巡航慣性モードを前記通常モードへ切り替えるようにし、
前記巡航モード又は前記巡航慣性モード中に前記アクセルペダルが踏み込まれて、前記開度センサが検出した前記スロットル開度が、前記第2開度信号及び前記第3開度信号に係る前記スロットル開度よりも大きく、前記第1開度信号に係る前記スロットル開度が略同じかまたはそれ以上となっている情報を含む第4開度信号が前記制御部へ入力されたとき、
前記巡航制御手段は、前記巡航モード又は前記巡航慣性モードを前記通常モードへ切り替えるようにして、
前記アクセルペダルの戻し操作又は踏み込み操作に応じて、前記通常モード、前記巡航モード、又は前記巡航慣性モードを任意に切り替えるようにしたことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の巡航制御システムによれば、請求項1に記載の発明において、前記通常モードから前記巡航モードへ切り替えられたときの車速を第1車速とし、
当該第1車速に対して所定の割合で定まる車速を第2車速とすると共に、単位時間あたりで減速する所定の比率を減速率とした場合に、
前記巡航慣性モード中に、前記減速率に沿って、前記第1車速が前記第2車速まで減速したとき、
前記巡航制御手段は、前記巡航慣性モードから前記巡航モードへ切り替えて、前記第1車速までの速度回復を図る処理を行い、
当該第1巡航速度まで速度が回復したとき、前記巡航制御手段は、前記巡航モードを前記巡航慣性モードへ切り替えるようにして、
前記巡航慣性モードと前記巡航モードが自動的に交互に切り替わるようにしたことを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の巡航制御システムは、請求項2に記載の発明において、前記巡航慣性モード中に、前記減速率を上回って、前記車両が急激に減速したとき、
前記巡航制御手段は、前記巡航慣性モードを前記巡航モードへ瞬時に切り替えると共に、前記車速を前記第1車速まで速やかに回復させる処理を行うようにしたことを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の巡航制御システムは、請求項2に記載の発明において、前記巡航慣性モード中に、前記車両が増速又は加速して、前記車速が前記第1車速よりも速くなったとき、
前記巡航制御手段は、前記巡航慣性モードを前記巡航モードへ瞬時に切り替えると共に、前記車速を前記第1車速まで速やかに減速させる処理を行うようにしたことを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の巡航制御システムは、請求項1に記載の発明において、前記ドライブトレインに、前記駆動源側の前記回転動力を伝達する主ロータと、当該主ロータにしたがって前記駆動輪へ前記回転動力を伝達可能な従ロータを備えたクラッチ装置と、
互いに離合自在な複数個の歯車を組み合せた歯車群を備えた変速装置を設け、
前記巡航制御手段が、前記巡航慣性モードへ切り替えたとき、
前記クラッチ装置の前記主ロータと前記従ロータを離隔し、又は前記変速装置の前記歯車が互いに空転するニュートラル状態にして、前記ドライブトレイン上で前記回転動力を遮断するようにしたことを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の巡航制御システムは、請求項1に記載の発明において、前記巡航制御手段が、前記巡航慣性モードへ切り替えたとき、
前記駆動源の前記エンジンが停止又はアイドリング状態へ移行するか、若しくは前記モータが停止又は当該モータを用いて発電するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の巡航制御システムによれば、アクセルペダルの戻し操作又は踏み込み操作に応じて、通常の動力走行に係る通常モードと、所定時間一定の速度で走行する巡航を維持する巡航モード、さらには、ドライブトレイン上で回転動力を遮断して慣性で巡航する巡航慣性モードを任意に切り替えることができるようにした。
これによって、巡航モード中では、速度を一定に維持することができ、さらには、巡航慣性モード中では、回転動力を遮断して慣性で走行させ、その遮断中にエンジン又はモータを停止することによって、燃料又は電力の消費を抑えて燃費の改善を図ることができる。また、巡航中にアクセルペダルを操作可能にしておくことによって、長時間の巡航において、ドライバーの判断力、注意力の低下を防止し、居眠り運転を防止することができる。
【0015】
そして、第1車速と第2車速、さらには減速率を定めて、車両の速度を監視することで、巡航モードと巡航慣性モードが自動的に切り替わり、長時間の巡航においては、巡航モードと巡航慣性モードが交互に切り替わって、間欠的に慣性走行させるようにした。
これによって、巡航モードから巡航慣性モードへ切り替えられたとき、車体に対する空気抵抗、タイヤに対する転がり抵抗等からなる車両に対する走行抵抗によって第2車速まで減速した場合に、自動的に速度を回復する処理を行うことができる。
さらに、ドライバーが頻繁にアクセルペダルを操作して巡航モードと巡航慣性モードを細かく切り替えなくとも、巡航モードから巡航慣性モードへ切り替えられた後は、第1車速と第2車速の間で速度を維持して、燃費を抑えつつ巡航距離を稼ぐことができる。
【0016】
また、巡航慣性モード中に車両が所定の減速率を上回って急激に減速したとき、若しくは、当該巡航慣性モード中に、車両が急激に加速したとき、回転動力が遮断されている巡航慣性モードから動力走行を行う巡航モードへ瞬時に切り替わるようにした。
これによって、第1車速を目標値として急激な速度変化を収束させて、巡航速度を維持すると共に、巡航慣性モードと巡航モードの切り替えを自動的に管理して、燃費を抑えつつ巡航距離を稼ぐことができる。
【0017】
さらにまた、巡航モードから巡航慣性モードへ切り替えられたとき、ドライブトレイン上に設けた変速装置をニュートラル状態に、又はクラッチ装置のクラッチを切断するようにした。
これによって、巡航慣性モード中は、駆動源のエンジン又はモータに負荷がかからないようにすることができる。そして、当該巡航慣性モード中は、駆動源のエンジンを停止又はアイドリング状態にし、若しくはモータを停止又は当該モータで発電するようにした。
これによって、燃料消費又は電力消費を抑えることができるので、燃費を良くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1実施例に係る巡航制御システムの構成の概略を示すブロック図である。
【
図2】第1実施例に係る巡航制御システムの制御部の構成の概略を示すブロック図である。
【
図3】第1実施例に係る巡航制御システムに関するアクセル装置の構成の概略を示す説明図である。
【
図4】第1実施例に係る巡航制御システムの慣性走行のタイミングを示すチャート図である。
【実施例0019】
本発明の巡航制御システムに係る実施例を添付した図面にしたがって説明する。
図1は、本実施例に係る巡航制御システムの構成の概略を示すブロック図である。
本実施例の巡航制御システムが搭載される車両10は、
図1に示すように、駆動機関11と、ドライブトレイン12と、駆動輪13、及び駆動機関11とドライブトレイン12を制御する制御部14とから構成される駆動系を有している。
さらに、制御部14は、スロットル装置15が接続され、当該スロットル装置15には、アクセル装置16が接続されている。
【0020】
駆動機関11は、
図1に示すように、エンジン20又はモータ21のいずれか一方又は双方を有し、ドライブトレイン12へ連結される出力軸11aから回転動力を出力可能に構成されている。すなわち、本実施例に係る巡航制御システム10を有する自動車とは、たとえば、エンジン20を駆動機関11とするガソリン車又はディーゼル車、モータ21を駆動機関11とする電気自動車、若しくはエンジン20とモータ21を駆動機関11とするハイブリッド車を想定しており、特に本実施例においては、
図1に示すように、ハイブリッド車を例にとって以下説明する。
また、本実施例に係る自動車は、ガソリン、軽油又は電気をエネルギー源とする上記の車に限定されず、他のエネルギー源、たとえば、水素、天然ガス、燃料電池等を使用するものであっても良い。
【0021】
エンジン20は、高回転で最高馬力が出るように形成されており、モータ21は、低回転で最大トルクが出るように形成されている。すなわち、車両10は、低速度域ではモータ21を主として用い、高速度域ではエンジン20を主として用いるように構成されている。これによって、市街地のような中低速度域を多用するエリアでは、モータ21を中心に使用して、排ガスの発生を抑制するとともに、低燃費走行を行うことができる。
本実施例に係るエンジン20は、ガソリン、又は軽油をエネルギー源とする一般的な内燃機関であれば良い。なお、これらに限定されず、他のエネルギー源、たとえば、水素、天然ガス、LPガス等を使用するものであっても良い。
また、本実施例に係るモータ21は、バッテリ21aを有し、当該バッテリ21aから給電されるように構成されている。なお、これに限定されず、燃料電池から給電されるものであったり、架線から給電されるものであったりしても良い。
【0022】
ドライブトレイン12は、
図1に示すように、駆動機関11側から順にクラッチ装置25と変速装置26、及びドライブシャフト12aが配置されて構成されている。これによって、駆動機関11で発生した回転動力は、駆動輪13へ伝達される。
クラッチ装置25は、駆動機関11側の主ロータ27と変速装置26側の従ロータ28を有している。主ロータ27と従ロータ28は互いに接離自在に形成されている。
これによって、主ロータ27と従ロータ28が圧接されたとき、駆動機関11で発生した動力が変速装置26側へ伝達され、主ロータ27と従ロータ28が離隔されたとき、駆動機関11側から変速機26側へ伝達される動力は遮断されるように構成されている。
なお、クラッチ装置25は、上記のように機械的に主ロータ27と従ロータ28を互いに接離させる構造に限定されず、たとえば、粘性の高いオイルを封入したケース内で主ロータ27と従ロータ28を対向配置し、主ロータ27を回転させたときに、その回転にしたがって従ロータ28が回転するいわゆるトルクコンバータ装置であっても良い。
また、ドライブトレイン12は、ドライブシャフト12a上に円盤状のフライホイール22を有している。当該フライホイール22は、ドライブシャフト12aの回転が急激に変化しないように慣性力で当該ドライブシャフト12aの回転を維持するように構成されている。
【0023】
変速装置26は、複数本の軸に大小様々な複数個の歯車を配置し、当該歯車を組み合わせて構成した歯車群(図示略)を有している。当該歯車群内の歯車は互いに離合自在に形成されている。変速装置26は、歯車群内の歯車を適宜組み合わせて駆動機関11の出力軸の回転動力に係る回転速度を低速から高速まで調節して、駆動輪13側へ回転動力を伝達する変速機能を有している。当該変速機能は、低速から高速まで複数段に分割しても良いし、無段階であっても良い。そして、変速装置26内で適宜組み合わされている複数個の歯車のうち、少なくとも一の歯車が離隔したとき、ドライブシャフトへ伝達される回転動力が遮断される、いわゆるニュートラルシフトとなり、ドライブトレイン12上を伝達する動力を遮断することができる。
【0024】
駆動輪13は、
図1に示すように、ドライブトレイン12を介して駆動機関11から出力された動力によって駆動可能に構成されている。
【0025】
制御部14は、車内通信網14aを備えている。車内通信網14aには、駆動機関11をはじめとして、スロットル装置15、アクセル装置16、ドライブトレイン12のクラッチ装置25、変速装置26等、車両10が備える各装置が接続され、互いに通信可能に構成されている。これによって、たとえば、制御部14が、スロットル装置15から送信された開度信号を受信し、当該開度信号に基づいて形成した出力制御信号を送信して、駆動機関11の出力を制御することができる。
【0026】
スロットル装置15は、スロットル本体15aと、当該スロットル本体15aの開き具合をスロットル開度として検出可能な開度センサ31を有している。当該開度センサ31は、検出したスロットル本体15aのアナログ的なスロットル開度の大きさをデジタル変換して、電子的な開度信号を形成するように構成されている。形成された当該開度信号は、スロットル装置15から車内通信網14aへ出力される。
【0027】
制御部14は、車内通信網14a上を伝送している開度信号を取り込み、当該開度信号に基づいて駆動機関11のエンジン20又はモータ21の出力を制御する出力制御信号を形成するように構成されている。形成された出力制御信号は、制御部14から車内通信網14aへ出力される。
【0028】
アクセル装置16は、ドライバーによる入力操作に応じて起倒自在なアクセルペダル30を有している。
ここで、アクセルペダル30が踏み込まれる操作を、アクセル装置16の開操作とし、これによってアクセルペダル30が進む方向を順方向とする。一方、アクセルペダル30が戻される操作を、アクセル装置16の閉操作とし、これによってアクセルペダル30が戻る逆方向とする。
アクセル装置16は、上記のアクセルペダル30に係る開閉操作に応じて入力信号を形成するように構成されている。形成された入力信号は、車内通信網14aへ随時出力される。
【0029】
スロットル装置15は、車内通信網上を伝送している入力信号を取り込み、当該入力信号に基づいて、スロットル本体15aを所定のスロットル開度で開閉するように構成されている。当該スロットル開度を検出した開度センサ31は上記のように適切な開度信号を形成し、当該開度信号に基づいて制御部14は上記のように駆動機関11に対する出力制御信号を形成する。
このようにして、アクセルペダル30が踏み込まれ、又は戻された操作量に応じて、入力信号が形成され、当該入力信号に基づいて開閉するスロットル本体15aの開度信号が形成され、制御部14は当該開度信号に基づいて駆動機関11の出力の増減に係る出力制御信号を形成するように構成されている。
【0030】
駆動機関11は、車内通信網上を伝送する出力制御信号を取り込み、当該出力制御信号に基づいてエンジン20へ供給する所定量の燃料を要求し、又はモータ21へ供給される所定量の電力を要求する要求信号を形成するように構成されている。形成された要求信号は駆動機関11から車内通信網14aへ出力される。車内通信網14a上を伝送している当該要求信号を取り込んだ燃料供給装置(図示略)又は電力供給装置(図示略)は、要求信号に応じて所定量の燃料又は電力を駆動機関11へ供給するように構成されている。
【0031】
要求信号が供給量を増やすものであった場合は、エンジン20へ供給される燃料、又はモータ21へ供給される電力が増やされる。これによって、駆動機関11の出力を上げる処理が行われ、出力軸11aの回転出力を上げることができる。
要求信号が供給量を減らすものであった場合は、エンジン20へ供給される燃料、又はモータ21へ供給される電力が減らされ、或いはカットされる。これによって、駆動機関11の出力を下げる処理が行われ、出力軸11aの回転出力を下げることができる。
そして、燃料又は電力の供給量が減り、或いはカットされて回転出力が下がったとき、たとえば、エンジン20では、フリクションによるエンジンブレーキ効果の発生が促される。また、モータ21では、エンジン21による出力軸11aの回転動力を利用する回生ブレーキ効果で発電が促される。
このように、本実施例に係る巡航制御システムに係る車両10は、制御部14が備える車内通信網14a上で様々な信号を伝送させて、各装置は目的に合った信号を取り込み、また信号を出力する世に構成されており、制御部14は、各種信号に基づいて総合的に各装置を制御することによって、車両の走行を制御するように構成されている。
【0032】
ここで、制御部14は、
図2に示すように、車両10の通常走行に係る走行を制御する走行制御手段105と、車両10が所定の時間、一定の速度を維持しながら走行する、いわゆる巡航走行に係る走行を制御する巡航制御手段110を有している。さらに、制御部14は、走行制御手段105と巡航制御手段110を所定の条件下で切り替えるように構成されており、当該条件に基づいてどちらの制御手段を起動させるか判定する判定手段100も有している。
走行制御手段105から巡航制御手段110へ切り替わったとき、主に駆動機関11を制御する出力制御信号が、車両10の車速を一定に維持して巡航走行させるように駆動機関11を制御する巡航制御信号に切り替わるように構成されている。
さらに、巡航制御手段110は、車両10が一定の出力に基づいて巡航走行するときの制御を行う通常巡航制御手段115と、巡航状態下で車両10を慣性で走行させるときの制御を行う慣性巡航制御手段120を有している。
ここで、慣性走行とは、駆動機関11から出力軸11aを介して出力される回転動力を、ドライブトレイン12上で遮断して、駆動輪13を慣性で回すことによる走行状態を言う。
以下、出力制御信号に基づいて通常走行する状態を通常モード、巡航制御信号に基づいて巡航走行する状態を巡航モード、車両10を慣性走行させて巡航する状態を巡航慣性モードと称する。
【0033】
本実施例に係る巡航制御システムについて、上記の構成を有する車両10が通常モードから巡航モードへ切り替わる所定の条件、および巡航モードにおける各装置の動作について、以下、添付した図面にしたがって説明する。
【0034】
まず、巡航モードへ切り替わるためには、車両10が巡航状態であると判定されなければならない。
言い換えると、通常モードにおいて、出力制御信号が所定時間一定である場合に巡航モードへ切り替わり、本実施例に係る巡航制御システムが起動する。
当該出力制御信号が形成されるためには、上記のように、制御部14が、所定の開度が所定量で一定に維持されていることを示す開度信号を車内情報網14aから取り込まなければならない。このときの開度信号を第1開度信号とする。
【0035】
ここで、
図3は、アクセルペダル30の踏み込み位置を示す説明図である。O点は、アクセルペダル30に負荷がかかっていない初期位置、点aは、通常モードから巡航モードへ切り替える通常/巡航切替ポイント、点bは、巡航モード下で、車両10を慣性で走行させる巡航慣性モードへ切り替える巡航慣性モード切替ポイント、点cは、巡航モード及び巡行慣性モードを通常モードへ切り替える巡航/通常切替ポイントである。
すなわち、巡航モード及び巡行慣性モードは点a-点c間で行われ、点aより順方向に踏み込んだとき、また点cより逆方向へ戻したときは、巡航モード及び巡航慣性モードは解除されて通常モードに戻るように構成されている。
【0036】
点aの通常/巡航切替ポイントは、判定手段100が、走行制御手段105を巡航制御手段110へ切り替えるか否かを判定するポイントである。
ドライバーがアクセルペダル30を点aまで踏み込み、その後その位置をキープして、アクセルペダル30の踏み込み量を所定時間一定に保持して、所定の巡航速度を維持しているとき、アクセル装置16は、車内通信網14aへ一定の入力信号を出力する処理を行う。
【0037】
当該入力信号を車内通信網14aから取り込んだスロットル装置15は、一定の入力信号に応じて、スロットル本体15aのスロットル開度を一定に保持する処理を行うとともに、当該スロットル開度をデジタル変換した第1開度信号を形成し、当該第1開度信号を車内通信網14aへ出力する処理を行う。
制御部14は、車内通信網14aから第1開度信号を取り込んで、当該第1開度信号に基づく出力制御信号を車内通信網14aへ出力する処理を行う。そして、当該出力制御信号を車内通信網14aから取り込んだ駆動機関11が出力軸11aの出力を一定に保持することによって、車両10は、所定時間一定の速度で走行することができる。
このときの一定に保持された速度を巡航速度という。当該巡航速度は、アクセルペダル30の踏み込み量でドライバーが任意に調整することができる速度であって、たとえば、高速道路では最低速度50km/h~制限速度100km/hの間で任意に調整でき、またバイパス道路では制限速度60km/h以下で任意に調整可能な速度である。
【0038】
制御部14が第1開度信号を車内通信網14aから取り込んだとき、判定手段100は、当該第1開度信号が所定の時間以上維持されている場合に、車両10が巡航走行中であると判定し、走行制御手段105を巡航制御手段110へ切り替える処理を行う。
走行制御手段105が第1開度信号に基づいて出力制御信号を出力していたのに対して、巡航制御手段110は、当該出力制御信号に応じた巡航速度を維持するように、第1開度信号に基づく巡航制御信号を車内通信網14aへ出力する処理を行う。なお、巡航制御信号は、巡航制御手段110が有する通常巡航制御手段115によって、車内通信網14aへ出力される。
また、巡航制御手段110は、判定手段100が巡航制御手段110へ切り替えたアクセルペダル30の点aと、その時の速度とを紐付ける処理を行う。ここで点aにおける巡航速度、すなわち、第1開度信号に基づく巡航速度を第1車速とする。当該第1車速は以後の速度変化に対する基準速度となる。
【0039】
点bの巡航慣性モード切替ポイントは、巡航制御手段110ののうち、通常巡航制御手段115の制御による巡航モードを、慣性巡航制御手段120の制御による巡航慣性モードへ切り替えるポイントである。
点bは、巡航によって点aが定まったとき、当該点aの位置に応じて自動的に設定されるポイントであって、たとえば、アクセルペダル30を点aから1割~2割、逆方向へ戻した位置である。
ドライバーが点aから点bまでアクセルペダル30を戻したとき、アクセル装置16から車内通信網14aへ出力される入力信号には、点aから点bまでアクセルペダル30を戻したという情報が重畳される。これによって、当該入力信号を取り込んだスロットル装置15は、当該入力信号に含まれた情報に応じて、スロットル本体15aのスロットル開度を閉じる操作が行われるとともに、第1開度信号よりも、スロットル開度が閉じた情報を含んだ第2開度信号を、スロットル装置15から車内通信網14aへ出力する処理が行われる。
【0040】
第2開度信号を車内通信網14aから取り込んだ制御部14は、巡航制御手段110を、通常巡航制御手段115から慣性巡航制御手段120へ切り替える処理を行う。
なお、点a点b間では、通常巡航制御手段115による巡航走行が維持されるので、ドライバーはある程度アクセルペダル30を動かすことができる。
慣性走行へ切り替えたとき、慣性巡航制御手段120は、駆動機関11の出力軸11aから駆動輪13に伝達される回転動力を、ドライブトレイン12上で遮断させる遮断制御信号を車内通信網14aへ出力する処理を行う。
このような動力遮断処理によって、たとえば、第一の例として、クラッチ装置25が、車内通信網14aから遮断制御信号を取り込んだとき、当該遮断制御信号に基づいてクラッチ装置25が、主ロータ27と従ロータ28を離隔させてクラッチを切断する処理であり、また第二の例として、変速装置26が車内通信網14aから遮断制御信号を取り込んだとき、当該遮断制御信号に基づいて変速装置26の有する複数個の歯車のうち、少なくとも一の歯車を隔離して、ニュートラルシフトへチェンジする処理である。これら第一処理方法と第二処理方法のいずれか一方又は双方を適宜組み合わせて、慣性巡航制御手段120は、駆動機関11から駆動輪13へ伝達される回転動力をドライブトレイン12上で遮断することができる。これによって、駆動輪13に動力が伝達されなくなり、当該駆動輪13は慣性で回転し、車両10は慣性で走行する。
なお、通常巡航制御手段115から慣性巡航制御手段120へ切り替えられたとき、巡航速度は通常巡航制御手段が維持していた第1車速であるから、慣性走行の初速は第1車速である。
【0041】
また、慣性巡航制御手段120が車内通信網14aへ出力した遮断制御信号が、駆動機関11へ取り込まれたとき、駆動機関11は、当該遮断制御信号に基づいてエンジン20又はモータ21を停止させる処理を行う。これによって、エンジン20への燃料供給を遮断し、又はモータ21への電力供給を遮断することができ、燃料又は電力の消費を抑え、燃費を向上させることができる。
なお、エンジン20を停止させずアイドリング状態まで回転を落とすようにしても良い。この場合は、慣性巡航制御手段120から通常巡航制御手段115へ切り替えられたとき、新たにエンジンを始動させずに済むので、エンジン始動時の燃料消費及び有害ガスの発生を抑え、速やかに速度回復を行うことができる。さらに、アイドリング状態で回転しているエンジン20を利用して、電力供給が遮断されて停止しているモータ21を回して発電するようにしても良い。発電された電力を車載バッテリ21aへ充電することによって、モータ21を回生ブレーキのように働かせて、モータ21が通常走行または巡航走行中に消費した電力を補うことができる。
【0042】
また、ドライブトレイン12は、上記したようにドライブシャフト12aの回転動力を維持するフライホイール22を有している。すなわち、上記のように駆動機関11からの回転動力が遮断された場合であってもドライブシャフト12aの回転数が急激に落ちないように構成されている。
そして、慣性巡航制御手段120が制御する慣性走行下では、車体に対する空気抵抗、タイヤの転がり抵抗等からなる走行抵抗によって走行中に速度が漸次低下する。これに対して、後述するような所定の条件が満たされたとき、慣性走行から通常走行又は巡航走行へ切り替えて第1速度まで速度回復が図られる。このとき、フライホイール22がドライブシャフト12aの回転を維持していることにより、駆動機関11の出力軸11aとドライブトレイン12を接続したときに駆動輪13側から受ける衝撃を緩和させることができる。
【0043】
点cの巡航/通常切替ポイントは、巡航制御手段110から走行制御手段105へ切り替えて、巡航モード又は巡航慣性モードから通常走行モードへ切り替えるポイントである。点cは、点bと同様に、巡航によって点aが定まったとき、当該点aの位置に応じて自動的に設定されるポイントであって、たとえば、アクセルペダル30を点aから1割~2割、逆方向へ戻した位置に点bが設定されたとき、さらにそこから1割乃至2割戻した位置が点cとして設定される。
ドライバーが点bから点cまでアクセルペダル30を戻したとき、アクセル装置16から車内通信網14aへ出力される入力信号には、点bから点cまでアクセルペダル30を戻したという情報が重畳される。これによって、当該入力信号を取り込んだスロットル装置15は、当該入力信号に含まれた情報に応じて、スロットル本体15aのスロットル開度を閉じる操作が行われるとともに、第2開度信号よりも、スロットル開度が閉じた情報を含んだ第3開度信号を、スロットル装置15から車内通信網14aへ出力する処理が行われる。
【0044】
第3開度信号を車内通信網14aから取り込んだ制御部14は、巡航制御手段110から走行制御手段105へ切り替える処理を行う。これによって、巡航モード及び巡行慣性モードは終了し、走行制御手段105によって制御される通常モードに切り替える処理操作が行われる。
通常モードへ切り替わったとき、車内通信網14aから第3開度信号を取り込んだ制御部14の走行制御手段105は、出力制御信号を車内通信網14aへ出力する処理を行う。
【0045】
ここで、点b点c間では、慣性巡航制御手段120による巡航慣性モードが維持されるので、ドライバーはある程度アクセルペダル30を動かすことができる。
一方、アクセルペダル30を踏み込む場合は、点bを超えて踏み込んでも巡航慣性モードは維持される。すなわち、点a点c間で、巡航慣性モードを維持しながらドライバーはアクセルペダル30を操作することができ、これによって、長く慣性走行を維持することができ、ドライバーの足首にかかる負担を軽減させることができる。
【0046】
上記のような巡航慣性モード中に、アクセルペダル30が踏み込まれ、点aを超えたときもまた、巡航制御手段110から走行制御手段105へ切り替わり、巡航モード又は巡航慣性モードから通常走行モードへ切り替わるように構成されている。
ドライバーが点aを超えてアクセルペダル30を踏み込んだとき、アクセル装置16から車内通信網14aへ出力される入力信号には、点aを超えてアクセルペダル30を踏み込んだという情報が重畳される。これによって、当該入力信号を取り込んだスロットル装置15は、当該入力信号に含まれた情報に応じて、スロットル本体15aのスロットル開度を開く操作が行われるとともに、第2開度信号、第3開度信号よりも、スロットル開度が開いた情報を含んだ第4開度信号を、スロットル装置15から車内通信網14aへ出力する処理が行われる。
【0047】
第4開度信号を車内通信網14aから取り込んだ制御部14は、当該第4開度信号を、当該制御部14に記録していた第1開度信号と判定手段で比較判定するように構成されている。判定手段100が第4開度信号に含まれているスロットル開度が、第1開度信号に含まれているスロットル開度と同じか、もしくはそれ以上の場合、巡航制御手段110から走行制御手段105へ切り替える処理が行われる。これによって、巡航モード及び巡行慣性モードは終了し、走行制御手段105によって制御される通常モードに切り替える処理操作が行われる。
通常モードへ切り替わったとき、車内通信網14aから第4開度信号を取り込んだ制御部14の走行制御手段105は、出力制御信号を車内通信網14aへ出力する処理を行う。
出力制御信号を取り込んだ駆動機関11は、エンジン20又はモータ21を駆動させて、通常モードで車両10を走行させる処理を行う。
【0048】
本実施例に係る巡航制御システムによれば、
図2に示すアクセル装置16のアクセルペダル30の位置によって、走行モードを切り替えることができ、点aでは、通常モードから巡航モードへ、点bでは、逆方向にアクセルペダル30が戻されると巡航モードから巡航慣性モードへ切り替わり、点a点c間では巡航モード又は巡航慣性モードが維持され、点a点c間の範囲外では、巡航モード又は巡航慣性モードが通常走行モードへ切り替わるようにした。
これによって、たとえば巡航モード又は巡航慣性モードのときに、登坂路に差し掛かって車速が著しく低下した場合であってもドライバーは速やかに巡航モード又は巡航慣性モードを通常モードへ切り替えて、速度回復を図ることができる。そして速度が回復した後は、アクセルペダル30を一定に保持する操作を行って巡航させることによって、また速やかに巡航モードへ切り替え、さらにアクセルペダル30を所定量戻して点bを通過させることで巡航慣性モードへ容易に切り替えることができる。
そして、急遽動力が必要な時にアクセルペダル30を踏み込む又は戻す操作によって点a点c間の範囲外で通常モードへ容易に戻すことができるので、急激な速度変化や運転中の回避行動に対して十分に対処することができる。
【0049】
このように、本実施例に係る巡航制御システムは、単純なアクセルペダル30に対する踏み込み入力操作によって、走行モードを自在に切り替えられるようにした。
これによって、オートクルーズのような半自動制御で運転操作が行われる場合と異なり、ドライバーは運転の操作、アクセルペダル30の操作に対して能動的に関与することができる。したがって、たとえば、高速道路又はバイパス道路で長時間に亘って自動車を巡航させるとき、散漫になりがちな注意力を維持することができ、事故防止に非常に高い効果が期待できる。
【0050】
さらに、本実施例に係る巡航制御システムは、長時間に亘って巡航慣性モードで慣性走行した場合に慣性巡航制御手段120が巡航慣性モードと巡航モードを自在に切り替えて、慣性走行で低下した速度を自動的に回復させる処理を行うように構成されている。
図4は、車両10の車速に対して、巡航モードと巡航慣性モードとの切り替えタイミングを示した説明図である。
【0051】
巡航モード下では、上記のように巡航速度は、第1開度信号に係る巡航制御信号に基づいて第1車速が基準速度に設定されている。
ここで、巡航制御手段110は、第1車速に対して80%~98%の速度を第2車速として設定する処理を行い、第1車速に係る第1車速信号と、第2車速に係る第2車速信号を車内通信網14aへ出力する処理を行う。
第2車速は、第1車速で巡航モードから巡航慣性モードへ切り替わった後、車両10が走行抵抗によって減速したとき、道路上で車の流れを阻害し、周囲の車に迷惑がかからないと範囲の速度であれば良い。
第2車速を80%より小さい値に設定した場合、第1車速に対する速度差が大きくなるため、慣性走行によって第2車速まで減速したとき、道路上で車の流れを阻害するおそれがあり、また、ドライバーが周囲の自動車と自車との間の速度差に違和感を覚えるおそれがある。
一方、第2車速を98%より大きい値に設定した場合、少しでも車速が減速すると巡航慣性モードが巡航モードへ切り替わることから、このような切り替え処理が頻繁に行われることとなる。このように頻繁に切り替え処理が行われた場合、巡航慣性モードによる燃費改善効果が期待できず、かえって燃費が悪化するおそれがある。
【0052】
つまり、巡航モード又は巡航慣性モードの基準速度である第1車速に対し、慣性走行による減速が許容できる範囲の第2車速を設定することによって、車両10が走行抵抗で減速して第2車速へ到達するまで可能な限り長く巡航慣性モードを維持することができ、燃費を向上させることができる。
【0053】
また、高速道路或いはバイパス道路等の走行環境の違い、若しくはそれらの走行環境でも空いている時間と、混雑し、渋滞気味になる時間と時間帯によって巡航速度は異なる。そのような巡航速度が異なる場合であっても、アクセルペダル30を所定時間一定に保持した位置を点aとして、その位置における車速を巡航モード又は巡航慣性モードの基準速度である第1車速と定め、さらには当該第1車速に対して、減速が許容され得る第2車速が自動的に定まるようにした。
これによって、走行環境また時間帯に左右されず、あらゆる場面で巡航モード又は巡航慣性モードで車両10を走行させることができ、さらに自動的に巡航モードと巡航慣性モードを切り替えることによって、慣性走行の距離を伸ばすことができ、燃費を向上させることができる。
【0054】
車両10に設けた車速センサが随時車内通信網14aへ出力している速度信号が、制御部14に取り込まれ、判定手段100が当該速度信号と第2車速信号が同じであると判定したとき、すなわち、車両が第2車速まで減速したとき、巡航制御信号が車内通信網14aへ出力される。
巡航制御信号を取り込んだドライブトレイン12は、クラッチ装置25又は変速装置26を接続して、駆動機関11から出力軸11aを通じて出力される回転動力を駆動輪13へ伝達する処理を行う。これによって、第2車速から第1車速までの速度回復処理が行われる。
速度信号が判定手段100で第1車速信号と同じであると判定されたとき、すなわち、第1車速まで車速が回復したとき、通常巡航制御手段115から慣性巡航制御手段120に切り替わって、遮断制御信号が車内通信網14aへ出力される。
遮断制御信号を取り込んだドライブトレイン12は、クラッチ装置25のクラッチを切り離し、又は変速装置26をニュートラルへシフトして回転動力を遮断する処理操作が行われる。これによって、車両10は、巡航モードから再び巡航慣性モードへ切り替えられ、慣性走行へ移行する。このように第1車速と第2車速間で自動的に速度回復処理が行われるようにしたことによって、長時間に亘っ巡航する場合、巡航モードと巡航慣性モードが次々と互い違いに繰り返されるように形成されている。換言すれば、長時間に亘って巡航する場合に、動力走行する巡航モードへ周期的に切り替えることによって、慣性走行する巡航慣性モードを間欠的に行うようにした。これによって、動力走行する巡航モードのみで走行する場合よりも、燃料消費を抑え、燃費を向上させることができる。
【0055】
そして、巡航制御手段110は、基準速度の第1車速が設定され、さらに当該第1車速に基づいて第2車速を設定する処理を行ったとき、同時に減速率を設定する処理を行うように形成されている。
減速率は、単位時間あたりに所定の割合で減速する比率であって、第1車速から第2車速へ減速するとき、ドライバーや周囲の車が違和感を覚えず、自然に速度が落ちていくような理想的な比率が好ましく、さらには空気抵抗、タイヤの転がり抵抗等の走行抵抗、さらには高速道路、バイパス道路といった道路の種別、上り坂下り坂であるかといった走行状況を総合的に加味して任意に設定される。
【0056】
そして、巡航制御手段110は、車両10が第1車速から当該減速率に沿って減速しているか否か車速を監視して増速するか又は減速するか制御可能に構成されている。
平坦な道路若しくは緩やかに下っている道路を慣性走行しているとき、車速センサが車内通信網14aへ出力している速度信号には、緩やかに減速していく情報が含まれている。当該速度信号を車内通信網14aから取り込んで車速を監視している巡航制御手段110が、その減速していく情報に基づいて、車速が所定の減速率以下で減速していると判定したとき、巡航制御手段110は、慣性巡航制御手段120が巡航慣性モードで車両10の慣性走行を制御するように処理する。これによって、巡航慣性モード下で、車両10は第1車速から第2車速に至るまで自然に減速し、長時間に亘って慣性走行することができ、燃費を向上させることができる。
【0057】
一方、急激な下り坂を走行しているとき、車速センサが車内通信網14aへ出力している速度信号には、急激に増速する情報が含まれている。当該速度信号を車内通信網14aから取り込んで車速を監視している巡航制御手段110が、その急激な増速情報に基づいて、車速が所定の減速率を超えて増速、加速していると判定したとき、巡航制御手段110は、慣性巡航制御手段120から通常巡航制御手段115へ切り替え、巡航慣性モードから回転動力を接続する巡航モードへ切り替えるように処理する。
このとき、通常巡航制御手段115は、車速を巡航基準速度である第1車速に制限する情報が含まれた巡航制御信号を、車内通信網14aへ出力する処理を行う。当該巡航制御信号を車内通信網14aから取り込んだ駆動機関11は、エンジン20のエンジンブレーキ又はモータ21の回生ブレーキによって制動を掛ける処理操作を行う。
なお、必要であれば、当該巡航制御信号をブレーキ装置(図示略)が取り込んで増速しすぎた車速をブレーキで第1車速を限度に制動するようにしても良い。
これによって、巡航モード又は巡航慣性モードの基準速度である第1車速を超えて車両10が加速することを防止することができ、当該第1車速を上限に車速を維持することによって、車両10を安全に走行させることができる。
【0058】
次に、登坂路を登っているとき、或いは巡航慣性モード下でトラブルを回避するためにブレーキを踏んだとき等、車速センサが車内通信網14aへ出力している速度信号には、急激に減速する情報が含まれている。当該速度信号を車内通信網14aから取り込んで車速を監視している巡航制御手段110が、その急激な減速情報に基づいて、車速が所定の減速率を超えて減速していると判定したとき、巡航制御手段110は、慣性巡航制御手段120から通常巡航制御手段115へ切り替え、巡航慣性モードから回転動力を接続する巡航モードへ切り替えるように処理する。
このとき、通常巡航制御手段115は、車速を巡航基準速度である第1車速まで回復する情報が含まれた巡航制御信号を、車内通信網14aへ出力する処理を行う。当該巡航制御信号を車内通信網14aから取り込んだドライブトレイン12は、クラッチ装置25又は変速機26を接続させて、駆動機関11の回転動力を駆動輪13へ伝達する処理操作を行う。
これによって、巡航慣性モード下で登坂しているとき、或いは急ブレーキしたとき、急激に減速した車速を巡航基準速度である第1車速まで速やかに回復させることができる。そして、第1車速まで車速が回復されたとき、巡航制御手段110は、慣性巡航制御手段120から通常巡航制御手段115へ切り替えて、巡航モードを巡航慣性モードへ切り替えるように構成されている。
上記のように、所定の減速率を定め、巡航制御手段110が当該減速率に基づいて車速変化を監視して、走行状況を判定して、速度回復又は速度抑制に係る車速制御を行い、適宜巡航モードと巡航慣性モードを自動的に切り替えることによって、長時間、長距離に亘って燃料消費を抑えて車両10を走行させることができる。
【0059】
上記の巡航慣性モードを主とし、当該巡航慣性モードの合間に適宜巡航モードを組み込んで車速を第1車速へ収束させると共に、長時間に亘って巡航慣性モードを行う場合について、車両10の車速に対して、巡航モードと巡航慣性モードとの切り替えタイミングを示した説明図である
図4にしたがって説明する。
【0060】
図4に示す点Aは、巡航モードに切り替わるポイントである。このとき、巡航制御手段110は、点PAにおける巡航速度を第1車速として設定し、当該第1車速に対して80%~98%の速度を第2車速として設定する処理を行い、第1車速に係る第1車速信号と、第2車速に係る第2車速信号を車内通信網14aへ出力する処理を行う。
点Bは、アクセルペダル30が
図3に示す点bに至り巡航モードから巡航慣性モードへ切り替わるポイントである。巡航制御手段110は、
図4のB-C間に示すように、車両10が走行抵抗等によって所定の減速率に沿って緩やかに第2車速まで減速しているときには、巡航慣性モードを維持する。
点Cは、車速が第2車速に到達したポイントである。このとき、巡航制御手段110が巡航慣性モードから巡航モードへ切り替え、点C-D間に示したように第1車速までの速度回復処理が行われる。
点Dは、車速が第1車速まで回復されたことを巡航制御手段110が判定して巡航モードを巡航慣性モードへ切り替えるポイントである。
巡航慣性モードに切り替わった後は、
図4に示すように、再び第2車速に到達するまで減速率に沿っているか監視し、第2車速に到達したときは第1車速まで速度回復が図られる。
このように、本実施例に係る巡航制御システムによれば、巡航慣性モードの合間に、適宜速度回復を行うことができる巡航モードを組み込むようにした。すなわち、車両10は、巡航慣性モードの合間に適宜巡航モードへ切り替えながら、長時間に亘って慣性走行を間欠的に行いながら巡航することができる。これによって、当該巡航中は、駆動機関11の燃料消費又は電力消費を抑えて燃費を向上させることができる。
【0061】
図4に示す点E-点F間は、巡航慣性モード下において、図中の一点鎖線で示した減速率を上回って車速が急激に減速している区間を示している。具体的には、たとえば、急激な登坂路に差し掛かった場合、又は急ブレーキを踏んだ場合等である。このとき、車速を監視している巡航制御手段110は、所定の減速率を上回る減速に対して、早急に第1車速まで速度回復を図る処理を行う。すなわち、第2車速に到達する前に巡航制御手段110は、巡航慣性モードを巡航モードへ切り替える処理を行う。その切替ポイントが点Fである。そして、巡航モードで点Fから点G間で第1車速までの速度回復を行い、点Gで巡航モードから巡航慣性モードへ切り替えられる。
これによって、所定の減速率を上回る急激な減速、たとえば、高速道路又はバイパス道路上で、平坦な道からサグのような上り坂における速度低下を防止することができ、渋滞の起因となることを防止することができる。
【0062】
図4に示す点G-点H間は、巡航慣性モード下において、車速が第1車速を超えて急激に増速、加速している区間を示している。具体的には、たとえば、急激な下り坂に差し掛かった場合等である。このとき、車速を監視している巡航制御手段110は、急激な増速、加速に対して、早急に第1車速まで速度を抑制する処理を行う。すなわち、巡航制御手段110は、巡航慣性モードを巡航モードへ切り替える処理を行う。その切替ポイントが点Hである。そして、巡航モードで点Hから点I間で第1車速まで減速させて、点Iで巡航モードから巡航慣性モードへ切り替えられる。
点Hで巡航モードに切り替えたとき、巡航制御手段110は、第1車速まで減速させる情報を含んだ巡航制御信号を、車内通信網14aへ出力する。当該巡航制御信号を車内通信網14aから取り込んだ駆動機関11は、たとえば、エンジン20のフリクションによるエンジンブレーキを効かせたり、モータ21の回生ブレーキを効かせたりする処理操作を行う。また、急激すぎる加速を抑制する必要がある場合は、巡航制御信号を取り込んだブレーキ装置が、ブレーキを効かせて第1車速まで減速する処理操作を行うようにしても良い。そのような減速処理を行っている区間が、点H-点I間である。そして、点Iは、巡航時の基準速度である第1車速まで減速させたポイントであって、当該ポイントにおいて、巡航制御手段110は、巡航モードから巡航慣性モードへ切り替える処理を行う。
巡航慣性モードに移行した後は、上記で説明したように、巡航慣性モードと巡航モードが適宜交互に切り替わり、動力走行と慣性走行を交互に行うことができる。
【0063】
図4に示した各ポイントでは、上記したように巡航モードと巡航慣性モードが切り替わっている。このとき、ドライバーに切り替わったことを報知する報知手段(図示略)を制御部14に設けても良い。
当該報知手段は、切り替わるタイミングで車内通信網14aへ報知信号を出力するように構成されている。車内通信網14aから取り込んだ車両の各装置は触覚的、視覚的、聴覚的な処理操作によってドライバーに切り替わったことを報知する処理操作を行う。触覚的な処理操作とは、たとえば、ステアリングホイール又はアクセルペダル30を所定のパターンで振動させたり、押し戻したりして、手や足裏の感覚に訴えるような処理操作をいう。また、視覚的な処理操作とは、たとえば、メータパネル内、或いは視認容易な場所に設けたランプ又は表示灯を点灯させ、或いは所定のパターンで点滅させる処理操作をいう。さらに、聴覚的な処理操作とは、たとえば、ブザー又はスピーカを通じて警報音を鳴らし、又は音声で案内する処理操作をいう。これらの処理操作を単独で、若しくは適宜組み合わせて使用することが好ましい。
これによって、ドライバーは運転中に巡航モードと巡航慣性モードが随時切り替わっていることを容易に知ることができ、運転に対してさらに集中することができる。
【0064】
なお、本実施例に係る巡航制御システムは、上記のようにアクセルペダル30を利用して、通常の動力走行に係る通常モードと、巡航時に係る特殊な条件下で巡航を維持する巡航モードとを切り替えるようにすると共に、巡航モードでもさらに、動力をカットして慣性で走行させる巡航慣性モードを設けて所定の条件下で慣性走行を行うようにした。さらには、巡航慣性モード中に走行環境、道路状況が変化したとき、自動的に動力走行を行う巡航モードに切り替えて速度回復又は速度抑制に係る処理操作を行うようにした。これによって、アクセルペダル30の操作一つで走行モードを容易に切り替えると共に、燃料消費を抑制して燃費を改善する走行を任意に行うことができる。
なお、本実施例に係る巡航制御システムでは、アクセルペダル30を踏み込んだり戻したりする簡単な操作によって、通常モードから巡航モードへ切り替え、さらに巡航モードから巡航慣性モードへ切り替えられるようにした。このように、従来の装置を流用することによって、違和感なく運転操作に組み込むことができるので、容易に導入することができる。
【0065】
また、本実施例においてはアクセルペダル30の踏み込み量で走行モードが切り替わる態様を説明したがこれに限定されるものでは無い。たとえば、アクセルペダル30の代わりとして従来のオートクルーズ制御と同様に、ステアリング近傍に配したスイッチで、通常モードと巡航モードの切り替え操作を行っても良い。そして、ステアリング近傍のスイッチで通常モードと巡航モードとを切り替えるように構成した場合、巡航基準速度である第1車速で巡航中に、当該スイッチによって巡航慣性モードへ任意に切り替える処理操作を行うようにしても良い。さらには、当該スイッチを操作することによって、ドライバー自身が巡航の基準速度となる第1車速を任意に設定できるようにしても良い。
このように、従来のオートクルーズ制御に係る装置を流用することによって、車両10の制御プログラムの書き換え等をするだけで容易に本実施例に係る巡航制御システムを導入することができ、またドライバーは、アクセルペダル30の踏み方を変えずに運転することができるので、違和感を覚えることなく本実施例に係る巡航制御システムを運転操作に支障を来たすことなく受け入れることができる。
【0066】
本実施例に係る巡航制御システムによれば、車両10を自動的に巡航させる従来のオートクルーズ制御とは異なるアプローチによって車両10を半自動的に巡航させるようにした。すなわち、巡航モード下でドライバーがアクセルペダル30を操作して、巡航モードと巡航慣性モードを切り替え、また巡航慣性モード下で、適宜動力走行する巡航モードに切り替えて、巡航に係る第1車速を目標値とした自動速度制御を行えるようにした。これによって、注意力が散漫になりがちな長時間の巡航中に、度々アクセルペダル30の操作を取り入れることで、ドライバーは緊張感を持って運転操作することができ、事故防止または居眠り運転防止に高い効果を期待することができる。
【0067】
さらに、本実施例に係る巡航制御システムは、従来のオートクルーズ機構と協働させるようにしても良い。ここで、常に駆動機関11を制御して巡航速度を維持するようにしたオートクルーズ制御はいわば巡航モードで巡航を制御しているようなものである。ここに本実施例に係る巡航制御システムにおける巡航慣性モード、すなわち、ドライブトレイン12で回転動力を遮断して慣性走行させる遮断させる走行制御を組み込むことで、オートクルーズ中に車両10を取り巻く走行環境、走行条件の変化に応じて巡航モードと巡航慣性モードとを自動的に切り替えることができる。これによって、燃料消費を抑えてさらに燃費を向上させることができる。
10…巡航制御システム、11…駆動源、11a…出力軸、12…ドライブトレイン、12a…ドライブシャフト、13…駆動輪、14…制御部、14a…車内通信網、15…スロットル装置、15a…スロットル本体、16…アクセル装置
20…エンジン、21…モータ、21a…バッテリ、22…フライホイール、
25…クラッチ装置、26…変速装置、27…主ロータ、28…従ロータ、
30…アクセルペダル、31…開度センサ、
100…判定手段、105…走行制御手段、110…巡航制御手段、115…通常巡航制御手段、120…慣性巡航制御手段。