(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022166787
(43)【公開日】2022-11-02
(54)【発明の名称】トラクターの保安装置
(51)【国際特許分類】
A01B 59/043 20060101AFI20221026BHJP
【FI】
A01B59/043 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021072215
(22)【出願日】2021-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000171746
【氏名又は名称】株式会社ササキコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100130823
【弁理士】
【氏名又は名称】三浦 誠一
(72)【発明者】
【氏名】天間 修一
(72)【発明者】
【氏名】田中 健
(72)【発明者】
【氏名】甲地 重春
【テーマコード(参考)】
2B041
【Fターム(参考)】
2B041AA13
2B041AB05
2B041AC03
2B041CA03
2B041HA29
(57)【要約】
【課題】 作業機付きトラクターの公道走行を可能にするために移設又は増設する灯火器類の位置調整を容易するトラクターの保安装置を提供する。
【解決手段】 トラクターの保安装置10は、灯火器類12を支持する支持部材14を1本のリンク16dとするリンク機構16を一対設け、一対のリンク機構16を同時に制御する連結部材18を動作させることにより、左右の灯火器類12の位置を同時に調整するものである。これにより、一方の灯火器類12の位置調整を行うと同時に他方の灯火器類12の位置調整も行うことができる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラクターの左右に灯火器類を配置するものであって、灯火器類を支持する支持部材を1本のリンクとするリンク機構を一対設け、一対のリンク機構を同時に制御する連結部材を動作させることにより、左右の灯火器類の位置を同時に調整することを特徴とするトラクターの保安装置。
【請求項2】
一対のリンク機構を水平方向に設け、連結部材を隔てて対峙させることを特徴とする請求項1に記載のトラクターの保安装置。
【請求項3】
一対のリンク機構を鉛直方向に設け、連結部材を隔てて対峙させることを特徴とする請求項1に記載のトラクターの保安装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、公道を走行するトラクターの保安装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一定の条件の下において、作業機(直装式農作業機)付きトラクターの公道走行が可能である(農林水産省HP「作業機付きトラクターの公道走行について」より)。
【0003】
一の条件として、作業機の装着により、トラクターや作業機に元々備わっている灯火装置が視認不能となる場合は、他の交通からの灯火装置の被視認性を確保するため、保安基準に準じた位置に灯火装置等を新たに装着(灯火装置の移設又は増設)する必要がある(たとえば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の連結装置は、作業機付きトラクターに灯火器を増設又は移設できるものである。
連結装置の本体は、トラクターへの作業機の取付けを簡単にするオートヒッチ(フレーム)である。連結装置の本体には、本体に固定され、左右に伸びるフレームが設けられている。フレームの先端部には、灯火器が取り付けられている。フレームは伸縮可能なものであり、フレームを伸縮させることにより、灯火器を好ましい位置に配置できるようになっている。
【0006】
しかし、特許文献1の連結装置のフレームを伸縮させる場合、一方の灯火器の位置調整をした後、他方の灯火器の位置調整も行う必要があり、不便であった。
【0007】
本発明は、上記問題を解決するものであり、作業機付きトラクターの公道走行を可能にするために移設又は増設する灯火器類の位置調整を容易するトラクターの保安装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のトラクターの保安装置は、トラクターの左右に灯火器類を配置するものであって、灯火器類を支持する支持部材を1本のリンクとするリンク機構を一対設け、一対のリンク機構を同時に制御する連結部材を動作させることにより、左右の灯火器類の位置を同時に調整するようにしたものである。
また、一対のリンク機構を水平方向に設け、連結部材を隔てて対峙させるようにしたものである。
また、一対のリンク機構を鉛直方向に設け、連結部材を隔てて対峙させるようにしたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のトラクターの保安装置は、灯火器類を支持する支持部材を1本のリンクとするリンク機構を一対設け、一対のリンク機構を同時に制御する連結部材を動作させることにより、左右の灯火器類の位置を同時に調整するものである。これにより、一方の灯火器類の位置調整を行うと同時に他方の灯火器類の位置調整、も行うことができ、左右の灯火器類の位置調整を別々に行う煩わしさを解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明のトラクターの保安装置の設置状態を表わすトラクターの側面図である。
【
図2】
図1の背面図(トラクターの後方から視た図)である。
【
図3】
図1のトラクターの保安装置の平面図である。
【
図4】本発明のトラクターの保安装置の他の実施形態の背面図である
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のトラクターの保安装置は、移設又は増設するトラクターの灯火器類の位置調整を実現するものである。
【実施例0012】
本発明のトラクターの保安装置について、図に基づいて説明する。
図1は、本発明のトラクターの保安装置の設置状態を表わすトラクターの側面図である。
図2は、
図1の背面図(トラクターの後方から視た図)である。
図3は、
図1のトラクターの保安装置の平面図であり、
図3(a)はトラクターの保安装置の展開状態を表わす図、
図3(b)はトラクターの保安装置の格納状態を表わす図である。
本発明のトラクターの保安装置10は、トラクターの左右に灯火器類12(12a,12b)を配置するものであって、灯火器類12を支持する支持部材14を1本のリンクとするリンク機構16を一対設け、一対のリンク機構16を同時に制御する連結部材18を動作させることにより、左右の灯火器類12(12a,12b)の位置を同時に調整するものである。
また、
図1乃至
図3においては、一対のリンク機構16は水平方向に設けられ、連結部材18を隔てて対峙するように配置されている。
【0013】
灯火器類12は、支持部材14に固定され、トラクターの車体上に支持されている(
図1)。灯火器類12とは、ヘッドランプ、車幅灯、テールランプ、ブレーキランプ、バックランプ、ウインカー、後部反射器等である。
図1のトラクターの保安装置10は、トラクター後部に取り付けられているものであり、
図1の左右の灯火器類12(12a,12b)は、トラクターのヘッドランプを除く灯火器類である。
【0014】
図1乃至
図3における支持部材14は、1本のフレームであり、外側の端部に灯火器類12が固定されている。支持部材14の内側の端部には、リンク支点軸19が設けられており、リンク支点軸19にリンク機構16の2本のリンク16b,16c(2本のアーム)の一方の端部が取り付けられている(
図3)。また、
図3において、リンク16b,16c(2本のアーム)の他方の端部は、基部材20に設けられるリンク支点軸19に取り付けられている(
図3)。
【0015】
リンク機構16は、4本のリンク(部材16a,16b,16c,16d)を対偶(リンク支点軸19、ジョイント)でつなぎ合わせたものである。基部材20であるリンク16aは固定された状態にあり、それぞれのリンクが対偶の周囲を回転できるようになっている。
図3に示すリンク機構16は、4節リンクの対向するリンクの長さを同じにした平行クランク機能である。リンク機構16において、支持部材14であるリンク16dは、リンク16a(基部材20)に対して平行に動くようになっている。
【0016】
リンク機構16は、一対(2つ)設けられている。
図1乃至
図3において、一対のリンク機構16は、水平方向に設けられ、連結部材18を隔てて対峙するように配置されている(
図3)。
【0017】
連結部材18は、1本のアームからなるものである。アームの両端には、クランク22(22a,22b)が設けられている。各クランク22(22a,22b)は、一対のリンク機構16のリンク16cと連結している(
図3)。連結部材18は、クランク22(22a,22b)を介して、一対のリンク機構16に連結している。
また、連結部材18を動作させると、クランク22(22a,22b)を介して、一対のリンク機構16のリンク16dすなわち支持部材14がそれぞれ反対方向に動くようになっている。
一方の灯火器類12(12a又は12b)を展開し(
図3(a))、また、格納すると(
図3(b))、一方の灯火器類12の支持部材14が移動し、支持部材14を1本のリンクとする一方のリンク機構16が連結部材18を動作させる。連結部材18の動作により、他方のリンク機構16が回転するため、他方の灯火器類12(12b又は12a)も連動して展開され、また、格納される(
図3)。
本発明のトラクターの保安装置10によると、左右の灯火器類12(12a,12b)の位置を同時に調整することができる。
【0018】
トラクターの保安装置10は、基部材20に設けた取付部24を介してトラクターに取り付ける。
図1及び
図2において、トラクターの保安装置10は作業機の上方に設けられている。
【0019】
次に、本発明のトラクターの保安装置の他の実施形態について、
図4及び
図5に基づいて説明する。
図4は、本発明のトラクターの保安装置の他の実施形態の背面図(トラクターの後方から視た図)であり、
図4(a)はトラクターの保安装置の展開状態を表わす図、
図4(b)はトラクターの保安装置の格納状態を表わす図である。
図5(a)(b)は、
図4(a)(b)の平面図である。
上述のトラクターの保安装置10は、一対のリンク機構16を水平方向に設け、連結部材18を隔てて対峙するように配置したものであり、灯火器類12や支持部材14は格納・展開時に前後方向に移動する(
図3)。灯火器類12や支持部材14が移動するところに作業機がある場合、作業機との干渉のおそれがある。本発明のトラクターの保安装置の他の実施形態は、上記干渉を回避するものである。
【0020】
図4及び
図5のトラクターの保安装置26は、トラクターの左右に灯火器類12(12a,12b)を配置するものであって、灯火器類12を支持する支持部材14を1本のリンクとするリンク機構28を一対設け、一対のリンク機構28を同時に制御する連結部材30を動作させることにより、左右の灯火器類12(12a,12b)の位置を同時に調整するものである。
また、
図4及び
図5において、一対のリンク機構28は鉛直方向に設けられ、連結部材30を隔てて対峙するように配置されている。
なお、灯火器類12及び支持部材14は、前述のトラクターの保安装置10において説明した灯火器類12及び支持部材14と同じものであり、詳細な説明は省略する。
【0021】
鉛直方向に設けられる一対のリンク機構28は、前述の一対のリンク機構16と同様、4本のリンク(部材28a,28b,28c,28d)を対偶(リンク支点軸19、ジョイント)でつなぎ合わせたものである。また、基部材32であるリンク28aは固定された状態にあり、それぞれのリンクが対偶の周囲を回転できるようになっている。
図4及び
図5に示すリンク機構28は、4節リンクの対向するリンクの長さを同じにした平行クランク機能である。リンク機構28においても、支持部材14であるリンク28dは、リンク28a(基部材32)に対して平行に動くようになっている。
図4及び
図5において、基部材32は支持部材14の下方に配置されている。
【0022】
また、
図4及び
図5において、一方のリンク機構28の2本のリンク28b,28c(2本のアーム)は、基部材32の対向する側面の一方に取り付けられている。他方のリンク機構28の2本のリンク28b,28c(2本のアーム)は、基部材32の対向する側面の他方に取り付けられている。基部材32は、所定の幅を有する部材であり、一対(2つ)のリンク機構28は、基部材32を挟んで向かい合うように設けられている(
図5)。
【0023】
連結部材30は、1本の直線状のアームからなるものである。アームの内側には、他の部材が摺動する2種類のガイド孔34、36が設けられている。
ガイド孔34は、アームの中心部に形成されており、単一径のガイド軸34aが摺動可能な孔である。ガイド軸34aは、下方に配置される基部材32に立設されている。
ガイド孔36は、摺動軸14aが摺動(移動)可能な隙間であり、ガイド孔34を中心に左右に形成されている(
図5)。摺動軸14aは、支持部材14の内側の端部の上面に設けられている。
左右のガイド孔36に左右の支持部材14の摺動軸14aをそれぞれ装着し、ガイド孔34にガイド軸34aを摺動可能な状態に設ける(
図5)。連結部材30は、ガイド軸34aを軸に回転可能なものであり、上下方向への移動も可能なものである。
ガイド軸34aは、支持部材14の左右移動を連結部材30の回転動作に変換させるものである。一方の支持部材14を移動させると、その支持部材14の摺動軸14aがガイド孔36を摺動(移動)し、連結部材30がガイド軸34aを軸に回転する(
図5(a)(b))。連結部材30が回転動作すると、他方の支持部材14の摺動軸14aがガイド孔36を摺動(移動)する。すなわち、一方の支持部材14の動作を他方の支持部材14に伝えることができる。したがって、トラクターの保安装置26によると、左右いずれか一方の灯火器類12(12a又は12b)を展開し(
図4(a)、
図5(a))、また、格納すると(
図4(b)、
図5(b))、他方の灯火器類12(12b、12a)も連動して動作させることができ、左右の灯火器類12を同時に展開又は格納することができる。
また、支持部材14の移動により、一対のリンク機構28のリンク28b,28c(2本のアーム)が回転すると、灯火器類12及び支持部材14は上下方向に移動し(
図4)、前後には移動しない。これにより、灯火器類12及び支持部材14の前後に近接して配置されている作業機やトラクターの部品との干渉を回避できる。
【0024】
灯火器類12を格納状態(
図4(b))から展開状態(
図4(a))に変化させる場合、左右の支持部材14は、リンク機構28を構成するアーム(リンク28b,28c)の回転を伴って上方に移動しながら、それぞれ左右方向に移動する。展開状態において、支持部材14は格納時より高い位置に配置できるため、支持部材14が支持する灯火器類12を後方から視認し易い位置に配置することができる。
【0025】
また、灯火器類12を格納した状態では、左右の支持部材14は基部材32を隔てて重なり合う(
図4(b)、
図5(b))。これにより、格納時の保安装置26の左右の幅を前述のトラクターの保安装置10より縮小させることができる。また、展開時においては、保安装置26の左右幅を前述のトラクターの保安装置10より拡大させることができる。
【0026】
基部材32に、リンク機構28を構成するアーム(リンク28b,28c)の回転を規制する回転規制ピン(図示せず)を取り付ける規制孔36を設けても良い。規制孔36は、リンク機構28の移動を規制するものである。回転規制ピンを設けることにより、格納時のトラクターの保安装置26の姿勢を固定でき、展開位置の位置決めを行うことができる。
規制孔36は、ガイド軸34aに設けてもよい(図示せず)。連結部材30は、格納状態から展開状態の動作の間、ガイド軸34aを中心にした回転を伴いながら上下に移動するものである。ガイド軸34aに連結部材30の上下移動を規制する規制ピンを設けることにより、左右のアーム(一対のリンク機構28のリンク28b,28c)の動作を同時に規制でき、作業者にとって取り扱いが容易である。
【0027】
以上のように、本発明のトラクターの保安装置10,26は、灯火器類12を支持する支持部材14を1本のリンク16d,28dとするリンク機構16,28を一対設け、一対のリンク機構16,28を同時に制御する連結部材18,30を動作させることにより、左右の灯火器類12の位置を同時に調整するものである。これにより、一方の灯火器類12の位置調整を行うと同時に他方の灯火器類12の位置調整も行うことができ、左右の灯火器類12の位置調整を別々に行う煩わしさを解消することができる。