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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022166804
(43)【公開日】2022-11-02
(54)【発明の名称】受電装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/10 20160101AFI20221026BHJP
【FI】
H02J50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021185431
(22)【出願日】2021-11-15
(31)【優先権主張番号】P 2021072136
(32)【優先日】2021-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100108213
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 豊隆
(72)【発明者】
【氏名】築山 大輔
(72)【発明者】
【氏名】大西 智貴
(72)【発明者】
【氏名】山口 耕作
(57)【要約】
【課題】インバータ装置の出力電圧の正負の切り替えタイミングを精度よくかつ低コストで決定できる受電装置を提案する。
【解決手段】 受電装置30は、送電装置により高周波信号に変換された交流電力を送電装置から電磁誘導により受電する受電コイル31と、高周波信号を全波整流信号に整流する整流回路32と、全波整流信号を交流信号に変換するとともに、交流信号を交流負荷41に供給するインバータ回路34と、全波整流信号の電圧から全波整流信号のゼロクロスポイントを検出する検出回路351を備える。インバータ回路34は、ゼロクロスポイントに基づいて全波整流信号を交流信号に変換する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電装置からワイヤレス受電した交流電力を交流負荷に供給する受電装置であって、
前記送電装置により高周波信号に変換された前記交流電力を前記送電装置から電磁誘導により受電する受電コイルと、
前記高周波信号を全波整流信号に整流する整流回路と、
前記全波整流信号を交流信号に変換するとともに、前記交流信号を前記交流負荷に供給するインバータ回路と、
前記全波整流信号の電圧から前記全波整流信号のゼロクロスポイント付近を検出する検出回路と、を備え、
前記インバータ回路は、前記ゼロクロスポイント付近の検出結果に応じて前記全波整流信号を前記交流信号に変換する、受電装置。
【請求項2】
請求項1に記載の受電装置であって、
前記全波整流信号に重畳されている不要な高周波成分を除去するフィルタ回路であって、リアクトル及びキャパシタを含む、フィルタ回路と、
前記キャパシタに充電されている電荷を放電させる放電経路を導通又は遮断するスイッチであって、前記交流負荷への電力供給が開始される初期の段階で前記放電経路を導通させるスイッチと、
を更に備える、受電装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の受電装置であって、
前記検出回路は、前記全波整流信号の電圧に応じて発光制御される発光素子と、前記発光素子の発光状態に応じて通電状態が制御される受光素子とを備え、
前記検出回路は、前記受光素子の通電状態がオンからオフに切り替わるタイミングで前記クロスポイントを検出する、受電装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の受電装置であって、
前記検出回路は、前記全波整流信号の電圧値が減少から増加に転じるポイント及び前記全波整流信号の電圧値が増加から減少に転じるポイントを、それぞれ、前記ゼロクロスポイントとして検出するマイクロコンピュータを備える、受電装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のうち何れか1項に記載の受電装置であって、
前記受電装置は、移動体に搭載されている、受電装置。
【請求項6】
請求項5に記載の受電装置であって、
前記移動体は、無人搬送機である、受電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は受電装置に関わる。
【背景技術】
【0002】
負荷と電源とを直接接続することなく、電源が出力する電力を非接触で負荷に伝送する技術が開発されている。このような技術は、ワイヤレス給電と呼ばれており、無人搬送機などの給電に応用されている。無人搬送機を給電する場合、無人搬送機に搭載されているバッテリなどの直流負荷を給電することが多いため、従来のワイヤレス給電システムは、商用交流電源からの交流電力を直流電力に変換し、この直流電力を送電していた。一方、無人搬送機に搭載されているバッテリなどの直流負荷に加えて、無人搬送機に搭載されているロボットアームなどの交流負荷にも給電する需要が増加している。このような交流負荷を給電するには、ワイヤレス給電システムの送電装置から送電される直流電力を交流電力に変換するインバータ回路を受電装置に設ける必要がある。ところが、インバータ回路を受電装置に設けると、受電装置の重量増大、寸法拡大、及びコスト増大などの課題が生じる。このような課題を解決するため、特許文献1は、交流電力を送電できるワイヤレス給電システムを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-211565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載のワイヤレス給電システムでは、受電装置側に設けられているインバータ装置の出力電圧の正負の切り替えタイミングを、インバータ装置に入力される電流の値と閾値との比較により決定しているが、閾値が大きい場合には、インバータ装置の出力電圧の正負の切り替え時に大きな電流が残留し、電力損失やノイズの発生を招いてしまう。一方、閾値を小さくすると、温度安定性に優れた高精度の電流センサが必要となり、コストが高くなる。特に、インバータ装置に入力される電流が大きい場合には、広い電流範囲を高い精度で検出する必要があるため、ダイナミックレンジが広くなる。この結果、電流センサのコストが高くなってしまう。
【0005】
そこで、本発明は、このような課題を解決し、インバータ装置の出力電圧の正負の切り替えタイミングを精度よくかつ低コストで決定できる受電装置を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するため、本発明に関わる受電装置は、送電装置からワイヤレス受電した交流電力を交流負荷に供給する受電装置であって、送電装置により高周波信号に変換された交流電力を送電装置から電磁誘導により受電する受電コイルと、高周波信号を全波整流信号に整流する整流回路と、全波整流信号を交流信号に変換するとともに、交流信号を交流負荷に供給するインバータ回路と、全波整流信号の電圧から全波整流信号のゼロクロスポイント付近を検出する検出回路と、を備え、インバータ回路は、ゼロクロスポイント付近の検出結果に応じて全波整流信号を交流信号に変換する。斯かる構成によれば、電流センサを用いることなく、全波整流信号の電圧から全波整流信号のゼロクロスポイント付近を検出することができる。
【0007】
検出回路は、全波整流信号の電圧に応じて発光制御される発光素子と、発光素子の発光状態に応じて通電状態が制御される受光素子とを備えてもよい。検出回路は、受光素子の通電状態がオンからオフに切り替わるタイミングでクロスポイントを検出してもよい。斯かる構成によれば、高精度かつ高コストの電流センサを用いることなく、全波整流信号のゼロクロスポイント付近を精度よく検出することができる。
【0008】
受電装置は、例えば、無人搬送機などの移動体に搭載されてもよい。これにより、受電装置は、無人搬送機などの移動体に搭載されているロボットアームなどの交流負荷に交流信号を供給することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、インバータ装置の出力電圧の正負の切り替えタイミングを精度よくかつ低コストで決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施形態に関わるワイヤレス給電システムの構成の一例を示す図である。
図2】本発明の第1の実施形態に関わる送電装置の回路構成の一例を示す図である。
図3】本発明の第1の実施形態に関わる受電装置の回路構成の一例を示す図である。
図4】本発明の第1の実施形態に関わるインバータ回路及び受電制御回路の回路構成の一例を示す図である。態とスイッチング素子のオン/オフとの関係を示す図である。
図5】本発明の第1の実施形態に関わる駆動回路の回路構成の一例を示す図である。
図6】本発明の第1の実施形態に関わるワイヤレス給電システムを通じて商用交流電源からの電力を負荷に送電する過程におけるワイヤレス給電システムの各部の電圧信号を示す図である。
図7】本発明の第1の実施形態に関わるワイヤレス給電システムを通じて商用交流電源からの電力を負荷に送電する過程におけるワイヤレス給電システムの各部の電圧信号を示す図である。
図8】本発明の第1の実施形態に関わるワイヤレス給電システムを通じて商用交流電源からの電力を負荷に送電する過程におけるワイヤレス給電システムの各部の電圧信号を示す図である。
図9】本発明の第1の実施形態に関わるワイヤレス給電システムを通じて商用交流電源からの電力を負荷に送電する過程におけるワイヤレス給電システムの各部の電圧信号を示す図である。
図10】本発明の第1の実施形態に関わるワイヤレス給電システムを通じて商用交流電源からの電力を負荷に送電する過程におけるワイヤレス給電システムの各部の電圧信号を示す図である。
図11】本発明の第1の実施形態に関わるワイヤレス給電システムを通じて商用交流電源からの電力を負荷に送電する過程におけるワイヤレス給電システムの各部の電圧信号を示す図である。
図12】本発明の第1の実施形態に関わるワイヤレス給電システムを通じて商用交流電源からの電力を負荷に送電する過程におけるワイヤレス給電システムの各部の電圧信号を示す図である。
図13】本発明の第2の実施形態に関わる受電装置の回路構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。ここで、同一符号は同一の構成要素を示すものとし、重複する説明は省略する。
【0012】
図1は本発明の第1の実施形態に関わるワイヤレス給電システム10の構成の一例を示す説明図である。ワイヤレス給電システム10は、商用交流電源50からの電力を高周波信号に変換し、これをワイヤレス送電する送電装置20と、送電装置20からの高周波信号を電磁誘導により受電し、これを負荷41に供給する受電装置30とを備える。受電装置30は、移動体40に搭載されている。負荷41は、移動体40に搭載されているバッテリなどの直流負荷、又は移動体40に搭載されているロボットアームなどの交流負荷である。移動体40は、例えば、無人搬送機である。
【0013】
図2は送電装置20の回路構成の一例を示す説明図である。送電装置20は、力率改善整流回路21と、フィルタ回路22と、インバータ回路23と、送電コイル24と、送電制御回路25とを備える。送電制御回路25は、力率改善整流回路21及びインバータ回路23のスイッチング動作を制御する。
【0014】
力率改善整流回路21は、整流回路211と、整流回路211の出力側に接続する昇圧チョッパ212とを備える。整流回路211は、ブリッジ接続された複数のダイオードD5,D6,D7,D8から構成される単相全波整流回路である。整流回路211は、商用交流電源50からの交流信号を整流する。昇圧チョッパ212は、平滑用リアクトルL1,逆流防止ダイオードD9,及びスイッチング素子Tr5から構成される。昇圧チョッパ212は、平滑用リアクトルL1を流れる入力電流を電圧と同相の全波整流波形と同一に制御することにより、入力電流を電圧と同相の信号波形にする。
【0015】
受電装置30に接続する負荷41が交流負荷である場合、力率改善整流回路21は、商用交流電源50から供給される交流信号を、一定のPWM(Pulse Wide Modulation)幅でスイッチング素子Tr5をスイッチングすることにより、全波整流信号に変換する。このとき、一定のPWM幅の値は、受電装置30から出力される交流電圧の大きさに応じて決定される。力率改善整流回路21は、一定のPWM幅の値を別の一定の値に変更することにより、受電装置30から出力される交流電圧の大きさを調整することができる。一方、受電装置30に接続する負荷41が直流負荷である場合、力率改善整流回路21は、商用交流電源50から供給される交流信号を、可変のPWM幅でスイッチング素子Tr5をスイッチングすることにより、直流信号に変換する。即ち、力率改善整流回路21は、力率改善整流回路21からの出力電圧が一定となるように、PWM幅を可変制御する。
【0016】
なお、スイッチング素子Tr5は、送電制御回路25からの駆動信号に応答してスイッチング制御される。スイッチング素子Tr5のスイッチング周波数は、商用交流電源50の周波数と同一である必要はなく、異なっていてもよい。
【0017】
フィルタ回路22は、キャパシタC1,C2及びリアクトルL2から構成されるπ型LCフィルタである。力率改善整流回路21からの出力信号(全波整流信号又は直流信号)には、力率改善整流回路21のスイッチング素子Tr5のスイッチングに伴う高周波成分が重畳されている。フィルタ回路22は、力率改善整流回路21からの出力信号に重畳されている不要な高周波成分を除去する。
【0018】
インバータ回路23は、複数のスイッチング素子を備えている。インバータ回路23は、フィルタ回路22を通じて力率改善整流回路21から出力される出力信号(全波整流信号又は直流信号)を入力し、インバータ回路23内の各スイッチング素子のスイッチング制御により、この出力信号を正負に切り分けられた高周波信号に変換する。インバータ回路23内の各スイッチング素子は、送電ユニット30と受電ユニット40との間で電磁誘導による電力のワイヤレス送電が行われるように、送電制御回路25からの駆動信号に応答してスイッチング制御される。インバータ回路23内の各スイッチング素子のスイッチング周波数は、力率改善整流回路21内のスイッチング素子Tr5のスイッチング周波数と同一である必要はなく、異なっていてもよい。
【0019】
送電コイル24は、インバータ回路23から出力される高周波信号を高周波磁束に変換する。これにより、送電コイル24は、電磁誘導を通じて、高周波信号を受電装置30にワイヤレス送電することができる。送電コイル24は、例えば、コイル単体でもよく、或いはコイルとキャパシタとが直列接続されている直列共振回路でもよく、コイルとキャパシタとが並列接続されている並列共振回路でもよい。
【0020】
図3は受電装置30の回路構成の一例を示す説明図である。受電装置30は、受電コイル31と、整流回路32と、フィルタ回路33と、インバータ回路34と、受電制御回路35とを備える。受電制御回路35は、インバータ回路34のスイッチング動作を制御する。
【0021】
受電コイル31は、送電コイル24からの高周波磁束を高周波信号に変換する。これにより、受電コイル31は、電磁誘導を通じて、高周波信号を受電することができる。受電コイル31は、例えば、コイル単体でもよく、或いはコイルとキャパシタとが直列接続されている直列共振回路でもよく、コイルとキャパシタとが並列接続されている並列共振回路でもよい。
【0022】
整流回路32は、ブリッジ接続された複数のダイオードD10,D11,D12,D13から構成される単相全波整流回路である。受電装置30に接続する負荷41が交流負荷である場合、整流回路32は、受電コイル31から出力される高周波信号を全波整流信号に整流する。受電装置30に接続する負荷41が直流負荷である場合、整流回路32は、受電コイル31から出力される高周波信号を直流信号に整流する。
【0023】
フィルタ回路33は、リアクトルL3及びキャパシタC3から構成されるLCフィルタである。インバータ回路23から出力される高周波信号には、インバータ回路23内のスイッチング素子のスイッチングに伴う高周波成分が重畳されており、整流回路32から出力される信号(全波整流信号又は直流信号)にもこの高周波成分が重畳されている。フィルタ回路33は、整流回路32から出力される信号(全波整流信号又は直流信号)に重畳されている不要な高周波成分を除去する。
【0024】
インバータ回路34は、複数のスイッチング素子を備えている。受電装置30に接続する負荷41が交流負荷である場合、インバータ回路34は、フィルタ回路33を通じて整流回路32から出力される全波整流信号の電圧がゼロになるタイミングで信号波形の正負が切り替わるように、インバータ回路34内の各スイッチング素子を商用交流電源50の周波数と同じ周波数でスイッチング制御することにより、全波整流信号を交流信号に変換し、この交流信号を負荷41に供給する。受電装置30に接続する負荷41が直流負荷である場合、インバータ回路34は、フィルタ回路33を通じて整流回路32から出力される直流信号を、インバータ回路34内の複数のスイッチング素子のうち特定のスイッチング素子を常時オンにすることにより、そのまま負荷41に供給する。なお、インバータ回路34内の各スイッチング素子は、受電制御回路35からの駆動信号に応答してスイッチング制御される。
【0025】
図4はインバータ回路34及び受電制御回路35の回路構成の一例を示す説明図である。インバータ回路34は、第1のレグ341と、第2のレグ342とを備える。第1のレグ341は、スイッチング素子Tr1及びこれに逆並列に接続されている帰還ダイオードD1から構成される上アームと、スイッチング素子Tr2及びこれに逆並列に接続されている帰還ダイオードD2から構成される下アームとが直列に接続されている。第2のレグ342は、スイッチング素子Tr3及びこれに逆並列に接続されている帰還ダイオードD3から構成される上アームと、スイッチング素子Tr4及びこれに逆並列に接続されている帰還ダイオードD4から構成される下アームとが直列に接続されている。
【0026】
第1のレグ341の上アームと第2のレグ342の上アームとの接続点343、及び第1のレグ341の下アームと第2のレグ342の下アームとの接続点344は、それぞれ、インバータ回路34の入力端子である。第1のレグ341の上アームと下アームとの接続点345、及び第2のレグ342の上アームと下アームとの接続点346は、それぞれ、インバータ回路34の出力端子である。インバータ回路34の出力端子は、負荷41に接続している。
【0027】
受電制御回路35は、検出回路351と、駆動信号生成回路352と、駆動回路353とを備える。受電装置30に接続する負荷41が交流負荷である場合、インバータ回路34には、フィルタ回路33を通じて整流回路32から全波整流信号が入力される。検出回路351は、この全波整流信号の電圧から全波整流信号のゼロクロスポイント付近を検出する。ここで、全波整流信号のゼロクロスポイントとは、全波整流信号の電圧値がゼロになるタイミング(時刻)を意味する。また、全波整流信号のゼロクロスポイント付近とは、全波整流信号の電圧値が閾値電圧未満(すなわち、ゼロ以上かつ閾値電圧未満)になるタイミング(時刻)を意味する。閾値電圧は、例えば、全波整流信号の最大値の数%(例えば、2~3%)程度でよい。
【0028】
検出回路351は、インバータ回路34の入力端子(接続点343,344)に印加される全波整流信号の電圧を分圧する抵抗R1,R2と、抵抗R1,R2により分圧された電圧に応じて発光制御される発光ダイオード(発光素子)D14と、発光ダイオードD14の発光状態に応じて通電状態が制御されるフォトトラジスタ(受光素子)Tr6を備える。発光ダイオードD14のアノードには、抵抗R1,R2により分圧された電圧が印加される。発光ダイオードD14のカソードは、グランドに接続している。フォトトラジスタTr6のコレクタは、抵抗R3を通じて電源Vccに接続している。フォトトラジスタTr6のエミッタは、グランドに接続している。インバータ回路34の入力端子(接続点343,344)に印加される全波整流信号のゼロクロスポイント付近では、発光ダイオードD14のアノードに印加される電圧は、発光ダイオードD14の発光状態がオンからオフになる程度にまで低下する。発光ダイオードD14のアノードに印加される電圧の低下に伴い、発光ダイオードD14の発光状態がオンからオフになると、フォトトラジスタTr6の導通状態は、オンからオフに切り替わる。検出回路351は、フォトトラジスタTr6の通電状態がオンからオフに切り替わるタイミングで全波整流信号のクロスポイントを検出する。フォトトラジスタTr6の通電状態がオンからオフに切り替わると、検出回路351から駆動信号生成回路352に出力される検出信号DETは、ローレベルからハイレベルに切り替わる。なお、フォトトラジスタTr6の通電状態がオンである場合、検出信号DETは、ローレベルにある。フォトトラジスタTr6の通電状態がオフである場合、検出信号DETは、ハイレベルにある。
【0029】
駆動信号生成回路352は、スイッチング素子Tr1,Tr4を駆動する駆動信号VG14と、スイッチング素子Tr2,Tr3を駆動する駆動信号VG23とをそれぞれ検出信号DETから生成する。駆動回路353は、スイッチング素子Tr1を駆動する駆動信号VG1と、スイッチング素子Tr4を駆動する駆動信号VG4とをそれぞれ駆動信号VG14から生成するとともに、スイッチング素子Tr2を駆動する駆動信号VG2と、スイッチング素子Tr3を駆動する駆動信号VG3とをそれぞれ駆動信号VG23から生成する。
【0030】
図5は駆動回路353の回路構成の一例を示す図である。駆動回路353は、スイッチング素子Tr1の駆動信号VG1を生成する絶縁駆動回路3531と、スイッチング素子Tr2の駆動信号VG2を生成する絶縁駆動回路3532と、スイッチング素子Tr3の駆動信号VG3を生成する絶縁駆動回路3533と、スイッチング素子Tr4の駆動信号VG4を生成する絶縁駆動回路3534とを備える。
【0031】
絶縁駆動回路3531は、抵抗R4を通じて入力される駆動信号VG14の電圧により発光制御される発光ダイオード(発光素子)D15と、発光ダイオードD15の発光状態に応じて通電状態が制御されるフォトトラジスタ(受光素子)Tr15を備える。発光ダイオードD15のカソードは、グランドに接続している。フォトトラジスタTr15のコレクタは、電源Vccに接続している。フォトトラジスタTr15のエミッタは、グランドに接続している。フォトトラジスタTr15のコレクタ電圧が抵抗R5,R6により分圧された電圧が駆動信号VG1として絶縁駆動回路3531からスイッチング素子Tr1のゲートに出力される。
【0032】
絶縁駆動回路3532は、抵抗R7を通じて入力される駆動信号VG23の電圧により発光制御される発光ダイオード(発光素子)D16と、発光ダイオードD16の発光状態に応じて通電状態が制御されるフォトトラジスタ(受光素子)Tr16を備える。発光ダイオードD16のカソードは、グランドに接続している。フォトトラジスタTr16のコレクタは、電源Vccに接続している。フォトトラジスタTr16のエミッタは、グランドに接続している。フォトトラジスタTr16のコレクタ電圧が抵抗R8,R9により分圧された電圧が駆動信号VG2として絶縁駆動回路3532からスイッチング素子Tr2のゲートに出力される。
【0033】
絶縁駆動回路3533は、抵抗R10を通じて入力される駆動信号VG23の電圧により発光制御される発光ダイオード(発光素子)D17と、発光ダイオードD17の発光状態に応じて通電状態が制御されるフォトトラジスタ(受光素子)Tr17を備える。発光ダイオードD17のカソードは、グランドに接続している。フォトトラジスタTr17のコレクタは、電源Vccに接続している。フォトトラジスタTr17のエミッタは、グランドに接続している。フォトトラジスタTr17のコレクタ電圧が抵抗R11,R12により分圧された電圧が駆動信号VG3として絶縁駆動回路3533からスイッチング素子Tr3のゲートに出力される。
【0034】
絶縁駆動回路3534は、抵抗R13を通じて入力される駆動信号VG14の電圧により発光制御される発光ダイオード(発光素子)D18と、発光ダイオードD18の発光状態に応じて通電状態が制御されるフォトトラジスタ(受光素子)Tr18を備える。発光ダイオードD18のカソードは、グランドに接続している。フォトトラジスタTr18のコレクタは、電源Vccに接続している。フォトトラジスタTr18のエミッタは、グランドに接続している。フォトトラジスタTr18のコレクタ電圧が抵抗R14,R15により分圧された電圧が駆動信号VG4として絶縁駆動回路3534からスイッチング素子Tr4のゲートに出力される。
【0035】
次に、負荷41が交流負荷である場合に、ワイヤレス給電システム10を通じて商用交流電源50からの電力を負荷41に送電する過程におけるワイヤレス給電システム10の各部の電圧信号の遷移について、図8乃至図11を参照しながら説明する。
【0036】
図6において、符号901は、商用交流電源50からの交流信号を整流回路211により全波整流することにより得られる電圧信号を示す。符号902は、力率改善整流回路21からの出力信号に重畳されている不要な高周波成分をフィルタ回路22により除去することにより得られる電圧信号を示す。符号903は、商用交流電源50の半周期に相当する期間を示す。
【0037】
図7において、符号101は、インバータ回路23から出力される高周波信号の電圧波形を示す。符号102は、商用交流電源50の半周期に相当する期間を示す。
【0038】
図8において、符号121は、整流回路32からの出力信号に重畳されている不要な高周波成分をフィルタ回路33により除去することにより得られる電圧信号を示す。符号122は、商用交流電源50の半周期に相当する期間を示す。
【0039】
図9において、符号131は、インバータ回路34から出力される交流信号の電圧波形を示す。符号132は、商用交流電源50の一周期に相当する期間を示す。
【0040】
次に、負荷41が直流負荷である場合に、ワイヤレス給電システム10を通じて商用交流電源50からの電力を負荷41に送電する過程におけるワイヤレス給電システム10の各部の電圧信号の遷移について、図12乃至図14を参照しながら説明する。
【0041】
図10において、符号141は、商用交流電源50からの交流信号の電圧波形を示す。符号142は、商用交流電源50からの交流信号を整流回路211により全波整流することにより得られる電圧信号を示す。
【0042】
図11において、符号151は、力率改善整流回路21から出力される電圧信号を示す。符号152は、力率改善整流回路21からの出力信号に重畳されている不要な高周波成分をフィルタ回路22により除去することにより得られる電圧信号を示す。
【0043】
図12において、符号181は、受電コイル31から出力される高周波信号を整流回路32により全波整流することにより得られる電圧信号を示す。符号191は、整流回路32からの出力信号に重畳されている不要な高周波成分をフィルタ回路33により除去することにより得られる電圧信号を示す。インバータ回路34は、フィルタ回路33を通じて整流回路32から出力される直流信号を、インバータ回路34内の複数のスイッチング素子のうち特定のスイッチング素子(例えば、スイッチング素子Tr1,Tr4)を常時オンにすることにより、そのまま負荷41に供給する。
【0044】
なお、上述のスイッチング素子Tr1~Tr5,Tr15~Tr18は、例えば、IGBT(InsulatedGateBipolarTransistor)、バイポーラトランジスタ、MOSトランジスタ(MetalOxideSemiconductorFieldEffectTransistor)などの半導体スイッチである。
【0045】
力率改善整流回路21は、入力電源電圧よりも高い電圧を出力する昇圧チョッパ方式に限られるものではなく、例えば、入力電源電圧よりも低い電圧を出力する降圧コンバータ方式、又は入力電源電圧よりも高い電圧或いは低い電圧を出力する昇降圧コンバータ方式でもよい。力率改善整流回路21は、整流回路211を備えるものに限られるものではなく、例えば、ブリッジレス方式でもよい。
【0046】
力率改善整流回路21のスイッチングノイズを除去する必要がない場合、フィルタ回路22は、キャパシタのみでもよい。インバータ回路23の回路構成として、例えば、フルブリッジ回路、ハーフブリッジ回路、E級インバータ、プッシュプル方式などを用いることができる。整流回路32は、ダイオードブリッジ整流回路に限られるものではなく、スイッチング素子を用いた同期整流回路、或いはセンタータップを用いた整流回路でもよい。
【0047】
全波整流信号の電圧から全波整流信号のゼロクロスポイント付近を検出する検出回路351は、上述のフォトカプラ方式に限られるものではなく、例えば、デジタルアイソレータを用いる方式、又は全波整流信号の電圧と基準電圧とを比較するコンパレータを用いる方式でもよい。
【0048】
本発明の第1の実施形態によれば、負荷41に応じて直流電力及び交流電力を選択的に送電することができる。また、本発明の第1の実施形態によれば、受電装置30から出力される交流電圧の大きさを、力率改善整流回路21のスイッチング制御により、任意に調整することができる。また、本発明の第1の実施形態によれば、インバータ装置34の出力電圧の正負の切り替えタイミングを精度よくかつ低コストで決定することができる。
【0049】
次に、本発明の第2の実施形態に関わるワイヤレス給電システム10について説明する。第2の実施形態に関わる送電装置20の構成は、第1の実施形態に関わる送電装置20の構成と同一であるため、以下の説明においては、第2の実施形態に関わる受電装置30の構成と第1の実施形態に関わる受電装置30の構成との相違点を中心に説明する。
【0050】
図13は本発明の第2の実施形態に関わる受電装置30の回路構成の一例を示す説明図である。第2の実施形態に関わる受電装置30は、受電コイル31と、整流回路32と、フィルタ回路33と、インバータ回路34と、受電制御回路36と、スイッチSW1とを備える。受電制御回路36は、インバータ回路34のスイッチング動作を制御する。
【0051】
フィルタ回路33は、リアクトルL3及びキャパシタC3から構成されるLCフィルタであり、整流回路32から出力される信号(全波整流信号又は直流信号)に重畳されている不要な高周波成分を除去する。キャパシタC3には、放電経路37が並列接続されている。放電経路37は、キャパシタC3に充電されている電荷を放電させるための経路である。放電経路37に沿って、抵抗R21、及びスイッチSW1が直列に接続されている。
【0052】
受電制御回路36は、検出回路361と、駆動信号生成回路362と、駆動回路363と、制御回路364とを備える。受電装置30に接続する負荷41が交流負荷である場合、インバータ回路34には、フィルタ回路33を通じて整流回路32から全波整流信号が入力される。検出回路361は、この全波整流信号の電圧から全波整流信号のゼロクロスポイント付近を検出する。
【0053】
検出回路361は、例えば、実施形態1に関わる検出回路351と同様の回路構成(発光ダイオードとフォトトラジスタとを用いて全波整流信号のゼロクロスポイント付近を検出する回路構成)を備えてもよく、或いは、マイクロコンピュータを用いて全波整流信号のゼロクロスポイント付近を検出する回路を備えてもよい。
【0054】
検出回路361のマイクロコンピュータは、インバータ回路34の入力端子(接続点343,344)に印加される全波整流信号をA/D変換し、デジタル信号に変換された全波整流信号の電圧値を検出する。全波整流信号のサンプリング周期は、商用周波数よりも短い周期(例えば、10kHz)が望ましい。マクロコンピュータは、全波整流信号の電圧値が減少から増加に転じるポイント及び全波整流信号の電圧値が増加から減少に転じるポイントを、それぞれ、ゼロクロスポイントとして検出してもよい。マクロコンピュータは、全波整流信号の電圧値がその最低電圧よりも若干高い閾値電圧を下回るポイントを、全波整流信号の電圧値が減少から増加に転じるゼロクロスポイントとして検出してもよい。マクロコンピュータは、全波整流信号の電圧値がその最高電圧よりも若干低い閾値電圧を上回るポイントを、全波整流信号の電圧値が増加から減少に転じるゼロクロスポイントとして検出してもよい。
【0055】
マクロコンピュータは、ゼロクロスポイントを検出すると、ゲートパルス信号を出力する。商用周波数が50Hzの場合、ゲートパルス信号は、マイクロコンピュータから10ms間隔で出力される。商用周波数が60Hzの場合、ゲートパルス信号は、マイクロコンピュータから8.3ms間隔で出力される。
【0056】
駆動信号生成回路362は、インバータ回路34のスイッチング素子Tr1,Tr4を駆動する駆動信号VG14と、インバータ回路34のスイッチング素子Tr2,Tr3を駆動する駆動信号VG23とをそれぞれゲートパルス信号から生成する。駆動回路363は、スイッチング素子Tr1を駆動する駆動信号VG1と、スイッチング素子Tr4を駆動する駆動信号VG4とをそれぞれ駆動信号VG14から生成するとともに、スイッチング素子Tr2を駆動する駆動信号VG2と、スイッチング素子Tr3を駆動する駆動信号VG3とをそれぞれ駆動信号VG23から生成する。
【0057】
制御回路364は、スイッチSW1の導通(オン)及び遮断(オフ)を制御する。制御回路364は、放電経路37を遮断させるときに、遮断信号をスイッチSW1に送信する。スイッチSW1は、制御回路364から遮断信号を受信していないときに、放電経路37を導通させ、制御回路364から遮断信号を受信すると、放電経路37を遮断する。スイッチSW1は、例えば、遮断信号を受信していないときに、常時、オンになるように設計された半導体スイッチ(例えば、IGBT、バイポーラトランジスタ、MOSトランジスタなど)である。
【0058】
負荷41への電力供給が開始される初期の段階では、スイッチSW1は、制御回路364から遮断信号を受信していないため、放電経路37を導通させている。キャパシタC3の充電電荷は、放電経路37を通じて放電されるため、フィルタ回路33を通過する全波整流信号は、キャパシタC3による平滑作用を受けずに、脈流信号としてインバータ回路34に供給される。これにより、検出回路361は、全波整流信号の電圧から全波整流信号のゼロクロスポイント付近を検出することができる。
【0059】
なお、負荷41への電力供給が開始される初期の段階では、インバータ回路34のスイッチング素子Tr1,Tr2,Tr3,Tr4は、全てオフの状態の状態にあり、受電コイル31から見た負荷41は、開放状態にあるものと考えられる。受電装置30が放電経路37を備えていない場合、整流回路32から出力される全波整流信号がフィルタ回路33を通過すると、キャパシタC3による平滑作用により、全波整流信号は、直流波形となってしまう。このような場合、検出回路361によるゼロクロスポイントの検出が困難になる。
【0060】
制御回路364は、スイッチSW1の下流に接続されている抵抗R22を流れる電流を検出すると、遮断信号をスイッチSW1に出力する。このような構成によれば、キャパシタC3に充電された電荷が放電経路37を通じて放電する期間は、負荷41への電力供給が開始された初期の僅かな期間のみとすることができるため、不要な電力損失を最小限に抑えることができる。
【0061】
なお、上述の説明では、制御回路364が、放電経路37上の抵抗R22を流れる電流の検出に応答して、遮断信号を出力する例を示したが、例えば、制御回路364は、検出回路361によるゼロクロスポイントの検出に応答して、遮断信号を出力してもよく、或いは、放電経路37上の抵抗R22を流れる電流の検出と検出回路361によるゼロクロスポイントの検出との両方に応答して、遮断信号を出力してもよい。
【0062】
検出回路361は、ゼロクロスポイントの検出の成否を示す信号を制御回路364に送信してもよい。制御回路364は、ゼロクロスポイントの検出が不可であることを示す信号を検出回路361から受信すると、スイッチSW1への遮断信号の出力を停止する。これにより、スイッチSW1は、遮断状態から導通状態へと変化し、キャパシタC3の充電電荷は、放電経路37を通じて放電される。これにより、検出回路361は、全波整流信号の電圧から全波整流信号のゼロクロスポイント付近を検出することができる。
【0063】
本発明の第2の実施形態によれば、キャパシタC3に無負荷直流電圧が供給されたままの状態を防止し、負荷41への交流電力の供給が開始される初期の段階における検出回路361による全波整流信号のゼロクロスポイントの検出を可能にできる。
【0064】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更又は改良され得るととともに、本発明にはその等価物も含まれる。すなわち、実施形態に当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。また、実施形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも、本発明の特徴を含む限り、本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0065】
10…ワイヤレス給電システム 20…送電装置 21…力率改善整流回路 22…フィルタ回路 23…インバータ回路 24…送電コイル 25…送電制御回路 30…受電装置 31…受電コイル 32…整流回路 33…フィルタ回路 34…インバータ回路 36…受電制御回路 37…放電経路 40…移動体 41…負荷 50…商用交流電源
図1
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