(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022166817
(43)【公開日】2022-11-02
(54)【発明の名称】オーディオ処理回路
(51)【国際特許分類】
H03F 3/217 20060101AFI20221026BHJP
【FI】
H03F3/217
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022046464
(22)【出願日】2022-03-23
(31)【優先権主張番号】110114380
(32)【優先日】2021-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】502081468
【氏名又は名称】瑞▲いー▼半導體股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Realtek Semiconductor Corporation
【住所又は居所原語表記】No. 2, Innovation Road II, Hsinchu Science Park, Hsinchu 300, Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】莊 宗朋
【テーマコード(参考)】
5J500
【Fターム(参考)】
5J500AA02
5J500AA27
5J500AA41
5J500AA51
5J500AA66
5J500AC27
5J500AC46
5J500AC91
5J500AC92
5J500AF02
5J500AF17
5J500AF18
5J500AF20
5J500AH39
5J500AK33
5J500AK34
5J500AK41
5J500AK49
5J500AK53
5J500AK62
5J500AM13
5J500AS05
5J500AT01
5J500WU01
(57)【要約】
【課題】 本発明は、オーディオ処理回路を開示する。
【解決手段】 オーディオ処理回路が、処理中の信号が小信号であると判定したとき、出力段は、電圧レギュレータによって提供されるレギュレートされた供給電圧を使用し、出力段は、開ループ構造を用いて出力オーディオ信号のノイズを低減させる。オーディオ処理回路が、処理中の信号が大信号であると判定したとき、出力段は、レギュレートされた供給電圧を使用せずに、供給電圧を直接的に使用し、出力段は、閉ループ構造を用いて出力オーディオ信号の全高調波歪みを低減させる。本発明を使用することにより、オーディオ処理回路は、小チップ面積設計で良好な性能指標を持つことができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタルオーディオ信号を処理して、処理された信号を生成するように構成された、デジタル信号処理回路と、
前記処理された信号に従って、変調された信号を生成するように構成された、デジタル変調回路と、
前記変調された信号に従って、出力オーディオ信号を生成するように構成された、出力段と、
供給電圧を受けて、レギュレートされた供給電圧を生成するように構成された、電圧レギュレータと、
前記デジタルオーディオ信号及び/又は前記処理された信号の信号強度を検出して、前記出力オーディオ信号を生成するのに前記供給電圧又は前記レギュレートされた供給電圧を使用するように前記出力段を制御するための第1の制御信号を生成するように構成された、信号検出回路と、
を有するオーディオ処理回路。
【請求項2】
前記信号検出回路が、前記デジタルオーディオ信号及び/又は前記処理された信号の前記信号強度を検出し、前記信号検出回路が、前記デジタルオーディオ信号及び/又は前記処理された信号が小信号であると判定したとき、前記信号検出回路は、前記第1の制御信号を生成して、前記レギュレートされた供給電圧を使用するように前記出力段を制御し、前記信号検出回路が、前記デジタルオーディオ信号及び/又は前記処理された信号が大信号であると判定したとき、前記信号検出回路は、前記第1の制御信号を生成して、前記レギュレートされた供給電圧を使用せずに前記供給電圧を使用するように前記出力段を制御する、請求項1に記載のオーディオ処理回路。
【請求項3】
前記供給電圧を前記出力段又は前記電圧レギュレータに選択的に接続するように構成された、スイッチング回路、
を更に有し、
前記信号検出回路が、前記デジタルオーディオ信号及び/又は前記処理された信号が小信号であると判定したとき、前記信号検出回路は、前記第1の制御信号を生成して、前記供給電圧を前記電圧レギュレータに接続するように前記スイッチング回路を制御し、前記出力段は前記供給電圧を受けず、
前記信号検出回路が、前記デジタルオーディオ信号及び/又は前記処理された信号が大信号であると判定したとき、前記信号検出回路は、前記第1の制御信号を生成して、前記供給電圧を前記出力段に接続するように前記スイッチング回路を制御し、前記電圧レギュレータは、前記出力段への前記レギュレートされた供給電圧を生成しない、
請求項2に記載のオーディオ処理回路。
【請求項4】
前記出力オーディオ信号に対してアナログ-デジタル変換処理を実行してデジタル信号を生成するように構成された、アナログ-デジタル変換器(ADC)と、
前記デジタル信号をフィルタリングしてフィードバック信号を生成するように構成された、フィルタと、
を更に有し、
前記信号検出回路は、前記デジタルオーディオ信号及び/又は前記処理された信号の前記信号強度を検出して、前記変調された信号を生成するために前記デジタル変調回路が前記フィードバック信号を参照するかどうかを制御するための第2の制御信号を生成する、
請求項1に記載のオーディオ処理回路。
【請求項5】
前記信号検出回路が、前記デジタルオーディオ信号及び/又は前記処理された信号の前記信号強度を検出し、前記信号検出回路が、前記デジタルオーディオ信号及び/又は前記処理された信号が小信号であると判定したとき、前記信号検出回路は、前記第2の制御信号を生成して、前記変調された信号を生成するために前記フィードバック信号を参照しないように前記デジタル変調回路を制御し、前記信号検出回路が、前記デジタルオーディオ信号及び/又は前記処理された信号が大信号であると判定したとき、前記信号検出回路は、前記第2の制御信号を生成して、前記変調された信号を生成するために前記フィードバック信号を参照するように前記デジタル変調回路を制御する、請求項4に記載のオーディオ処理回路。
【請求項6】
前記フィルタを前記デジタル変調回路に選択的に接続するように構成された、スイッチング回路、
を更に有し、
前記信号検出回路が、前記デジタルオーディオ信号及び/又は前記処理された信号が小信号であると判定したとき、前記信号検出回路は、前記第2の制御信号を生成して、前記フィルタと前記デジタル変調回路との間の経路を切断し、前記信号検出回路が、前記デジタルオーディオ信号及び/又は前記処理された信号が大信号であると判定したとき、前記信号検出回路は、前記第2の制御信号を生成して、前記フィルタを前記デジタル変調回路に接続するように前記スイッチング回路を制御する、請求項5に記載のオーディオ処理回路。
【請求項7】
前記出力段はD級増幅器である、請求項1に記載のオーディオ処理回路。
【請求項8】
デジタルオーディオ信号を処理して、処理された信号を生成するように構成された、デジタル信号処理回路と、
前記処理された信号に従って、変調された信号を生成するように構成された、デジタル変調回路と、
前記変調された信号に従って、出力オーディオ信号を生成するように構成された、出力段と、
前記出力オーディオ信号に対してアナログ-デジタル変換処理を実行してデジタル信号を生成するように構成された、アナログ-デジタル変換器(ADC)と、
前記デジタルオーディオ信号及び/又は前記処理された信号の信号強度を検出して、前記変調された信号を生成するために前記デジタル変調回路がフィードバック信号を参照するかどうかを制御するための制御信号を生成するように構成された、信号検出回路であり、前記フィードバック信号は前記デジタル信号に従って生成される、信号検出回路と、
を有するオーディオ処理回路。
【請求項9】
前記信号検出回路が、前記デジタルオーディオ信号及び/又は前記処理された信号の前記信号強度を検出し、前記信号検出回路が、前記デジタルオーディオ信号及び/又は前記処理された信号が小信号であると判定したとき、前記信号検出回路は、前記制御信号を生成して、前記変調された信号を生成するために前記フィードバック信号を参照しないように前記デジタル変調回路を制御し、前記信号検出回路が、前記デジタルオーディオ信号及び/又は前記処理された信号が大信号であると判定したとき、前記信号検出回路は、前記制御信号を生成して、前記変調された信号を生成するために前記フィードバック信号を参照するように前記デジタル変調回路を制御する、請求項8に記載のオーディオ処理回路。
【請求項10】
前記デジタル信号をフィルタリングして前記フィードバック信号を生成するように構成された、フィルタと、
前記フィルタを前記デジタル変調回路に選択的に接続するように構成された、スイッチング回路と、
を更に有し、
前記信号検出回路が、前記デジタルオーディオ信号及び/又は前記処理された信号が小信号であると判定したとき、前記信号検出回路は、前記制御信号を生成して、前記フィルタと前記デジタル変調回路との間の経路を切断し、前記信号検出回路が、前記デジタルオーディオ信号及び/又は前記処理された信号が大信号であると判定したとき、前記信号検出回路は、前記制御信号を生成して、前記フィルタを前記デジタル変調回路に接続するように前記スイッチング回路を制御する、請求項9に記載のオーディオ処理回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はオーディオ処理回路に関する。
【背景技術】
【0002】
D級出力増幅器(パワーアンプ)は、オーディオ処理回路において一般的に使用されている技術であり、音を再生するためにスピーカを駆動する出力オーディオ信号を生成する効率が高く、それ故に、パーソナルコンピュータ内のエレクトロニクス製品、消費者向けエレクトロニクス製品、自動車用エレクトロニクス製品に広く使用されている。D級パワーアンプは通常、例えば全高調波歪み+ノイズ(THD+N)、相互変調歪み(IMD)又は電源除去比(PSRR)などの性能指標を向上させるよう、供給電圧によって引き起こされるノイズ及び当該パワーアンプ自身の非線形現象を除去するための閉ループ構造を持つ。
【0003】
受信される入力オーディオ信号のフォーマットの違いを考慮して、オーディオ処理回路は、一般に、デジタル入力タイプとアナログ入力タイプとに分けられることができる。半導体プロセスのますますの進歩に伴い、デジタル入力タイプのオーディオ処理回路が、チップ面積の点でいっそう良好な性能を持つようになる。また、オーディオ処理回路内の回路の大部分をデジタル回路によって実装することができれば、製品全体を更に競争力あるものにすることができる。しかしながら、D級パワーアンプが閉ループ構造を持つことを考えると、オーディオ処理回路内の変調回路がデジタル回路によって実装される場合、フィードバック経路内にアナログ-デジタル変換器(ADC)を置く必要がある。アナログ回路を持つものであるADCは、進歩した半導体プロセスの利益を享受することができず、すなわち、チップ面積を効果的に減らすことができない。さらに、D級パワーアンプの性能を維持するためには、より良い性能をフィードバック信号に持たせるために、より大きい面積のADCを設計する必要があるが、大面積のADCは、オーディオ処理回路のチップ面積を更に縮小させることを妨げることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/0321116号明細書
【特許文献2】米国特許第10658988号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2018/0205347号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2019/0386626号明細書
【発明の概要】
【0005】
従って、本発明の一目的は、背景技術にて説明した問題を解決するよう、小さいチップ面積で良好な性能を持つことができるオーディオ処理回路を提供することである。
【0006】
本発明の一実施形態によれば、デジタル信号処理回路と、デジタル変調回路と、出力段と、電圧レギュレータと、信号検出回路と、を有するオーディオ処理回路が開示される。デジタル信号処理回路は、デジタルオーディオ信号を処理して、処理された信号を生成するように構成される。デジタル変調回路は、上記処理された信号に従って、変調された信号を生成するように構成される。出力段は、上記変調された信号に従って、出力オーディオ信号を生成するように構成される。電圧レギュレータは、供給電圧を受けて、レギュレートされた供給電圧を生成するように構成される。信号検出回路は、上記デジタルオーディオ信号及び/又は上記処理された信号の信号強度を検出して、上記出力オーディオ信号を生成するのに上記供給電圧又は上記レギュレートされた供給電圧を使用するように上記出力段を制御するための第1の制御信号を生成するように構成される。
【0007】
本発明の一実施形態によれば、デジタル信号処理回路と、デジタル変調回路と、出力段と、ADCと、信号検出回路と、を有するオーディオ処理回路が開示される。デジタル信号処理回路は、デジタルオーディオ信号を処理して、処理された信号を生成するように構成される。デジタル変調回路は、上記処理された信号に従って、変調された信号を生成するように構成される。出力段は、上記変調された信号に従って、出力オーディオ信号を生成するように構成される。ADCは、上記出力オーディオ信号に対してアナログ-デジタル変換処理を実行してデジタル信号を生成するように構成される。信号検出回路は、上記デジタルオーディオ信号及び/又は上記処理された信号の信号強度を検出して、上記変調された信号を生成するために上記デジタル変調回路がフィードバック信号を参照するかどうかを制御するための制御信号を生成するように構成され、上記フィードバック信号は上記アナログ信号に従って生成される。
【0008】
様々な図及び図面に示される好適実施形態の以下の詳細な説明を読んだ後、本発明のこれら及び他の目的が当業者に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に従ったオーディオ処理回路を示す図である。
【
図2】小信号モードで動作するオーディオ処理回路の図である。
【
図3】大信号モードで動作するオーディオ処理回路の図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明の一実施形態に従ったオーディオ処理回路100を示す図である。
図1に示すように、オーディオ処理回路100は、入力インタフェース110、信号検出回路120、デジタル信号処理回路130、デジタルフィルタ140、デジタル変調回路150、出力段として機能するD級増幅器(アンプ)160、ADC170、フィルタ180、電圧レギュレータ190、及び2つのスイッチング回路102、104を含む。この実施形態において、オーディオ処理回路100は、デジタルオーディオ信号Dinを受信し、そして、音を再生するようにスピーカを制御すべく、スピーカへの出力オーディオ信号Voutを生成するために使用される。この実施形態のオーディオ処理回路100は、音を再生する必要のある任意のエレクトロニクス装置に組み込まれることができる。
【0011】
オーディオ処理回路100の動作において、先ず、入力インタフェース110がデジタルオーディオ信号Dinを受信し、ここで、入力インタフェース110は、I2S仕様、パルス密度変調(PDM)、又は任意の他のデジタルオーディオ信号タイプに従う信号を受信することが可能とし得る。次いで、デジタル信号処理回路130が、デジタルオーディオ信号Dinに対して、例えば音量調節やイコライゼーションなどのデジタル信号処理を実行して、処理された信号Din’を生成することができ、そして、デジタルフィルタ140が、処理された信号Din’をフィルタリングして、フィルタリングされた信号Din”を生成する。次いで、デジタル変調回路150が、フィルタリングされた信号Din”を変調して、変調された信号Dmodを生成し、すなわち、デジタル変調回路150が、フィルタリングされた信号Din”を、出力オーディオ信号Voutを生成するためにD級アンプ160を駆動するパルス幅変調(PWM)信号又はパルス密度変調(PDM)信号へとエンコードする。
【0012】
上述した入力インタフェース110、デジタル信号処理回路130、デジタルフィルタ140、デジタル変調回路150、及びD級アンプ160の動作は、既に当業者によく知られており、それ故にここでは詳細な動作は省略する。
【0013】
D級アンプ160を含むオーディオ処理回路100では、全高調波歪み+ノイズ(THD+N)が重要な性能指標である。しかしながら、オーディオ処理回路100が大きな音の出力オーディオ信号Voutを生成する必要があるとき、この性能指標(THD+N)は全高調波歪みによって支配され、ノイズはこの性能指標に対して小さい影響しか持たない。他方で、オーディオ処理回路100が低音量の出力オーディオ信号Voutを生成する必要があるときには、この性能指標(THD+N)はノイズによって支配され、全高調波歪みはこの性能指標に対して小さい影響しか持たない。従って、この実施形態のオーディオ処理回路100は、現在処理している信号の強度/音量に従ってオーディオ処理回路100が異なる動作モードを採ることができるように、追加で信号検出回路120、ADC170、フィルタ180、電圧レギュレータ190、及び2つのスイッチング回路102、104を設計する。
【0014】
具体的には、信号検出回路120は、デジタルオーディオ信号Dinの信号強度(例えば、デジタルオーディオ信号によって示される音量レベル)及び/又は処理された信号Din’の信号強度を検出して、制御信号Vc1及びVc2を生成することができる。一例において、信号検出回路120は、デジタルオーディオ信号Dinの信号強度のみを検出し得る。他の一例において、デジタル信号処理回路130がデジタルオーディオ信号Dinの音量を調節することがあり、従って、信号検出回路120は、処理された信号Din’の信号強度のみを検出することができ、あるいは、デジタルオーディオ信号Din及び処理された信号Din’の信号強度を総合的に考慮して、制御信号Vc1及びVc2を生成することができる。
【0015】
制御信号Vc1は、D級アンプ160が、供給電圧VDDによって直接的に電力供給されたり、電圧レギュレータ190によって提供されるレギュレートされた供給電圧VDD’によって電力供給されたりすることができるように、スイッチング回路102を制御するために使用される。制御信号Vc2は、D級アンプ160が開ループ構造を有したり、閉ループ構造を有したりするように、スイッチング回路104を制御するために使用される。
【0016】
具体的には、
図2を参照するに、例えばD級アンプ160に対応する電力消費が100ミリワット未満であるときなど、信号検出回路120が、現在デジタルオーディオ信号Din及び/又は処理された信号Din’の信号強度が小信号であると判定したとき、信号検出回路120は、スイッチング回路102が供給電圧VDDを電圧レギュレータ190に接続するように、制御信号Vc1を生成することができる。電圧レギュレータ190は、低ドロップアウトレギュレータ(LDO)を用いることによって実装されることができ、供給電圧VDDを処理してレギュレートされた供給電圧VDD’を生成し、そして、D級アンプ160は、電圧レギュレータ190からのレギュレートされた供給電圧VDD’のみを受け、すなわち、D級アンプ160は、供給電圧VDDによって電力供給されない。さらに、信号検出回路120は、制御信号Vc2を生成して、フィルタ180とデジタル変調回路150との間の経路を切断する。すなわち、D級アンプ160は開ループ構造を持ち、このとき、ADC170及びフィルタ180は、デジタル変調回路150に対して、フィルタリングされた信号Din”を調整するためのフィードバック信号を生成しない。
【0017】
図2に示す小信号モードで動作するオーディオ処理回路100では、電圧レギュレータ190が、供給電圧VDDにおける電力ノイズを抑制して減衰させるので、レギュレートされた供給電圧VDD’によって電力供給されるD級アンプ160は、より少ない電源ノイズにより、いっそう良好な性能を持つことになる。さらに、D級アンプ160が開ループ構造を持つので、ADC170のノイズが出力オーディオ信号Voutに影響を及ぼすことがなく、それ故に、D級アンプ160の性能を維持することができる。上述したように、オーディオ処理回路100は、性能指標(THD+N又はSNR)を向上させるよう、小信号(低音量)の場合に低いノイズレベルを持つことができる。
【0018】
他方で、
図3を参照するに、例えばD級アンプ160に対応する電力消費が100mWを超えるときなど、信号検出回路120が、現在デジタルオーディオ信号Din及び/又は処理された信号Din’の信号強度が大信号であると判定したとき、信号検出回路120は、スイッチング回路102が供給電圧VDDを直接的にD級アンプ160に接続するように制御信号Vc1を生成することができ、このとき、電圧レギュレータ190は無効にされることができる。さらに、信号検出回路120は、制御信号Vc2を生成して、フィルタ180とデジタル変調回路150との間の経路を接続する。すなわち、D級アンプ160は閉ループ構造を持ち、ADC170が、出力オーディオ信号Voutに対してアナログ-デジタル変換処理を実行してデジタル信号を生成し、該デジタル信号がフィルタ180によって処理されることで、フィルタリングされた信号Din”を調節するために使用されるものであるフィードバック信号Vfbを生成する。
【0019】
図3に示す大信号モードで動作するオーディオ処理回路100では、D級アンプ160は、閉ループ構造を持つので、それ自身の非線形現象、及び供給電圧VDDによって生じるノイズを除去することができる。さらに、大信号(大容量)の場合、D級アンプ160の性能指標は全高調波歪みによって支配され、従って、ADC170によって生成されるノイズは性能指標に対して殆ど影響を持たない。
【0020】
上述のオーディオ処理回路100の動作を参照するに、ADC170は大信号モードにおいてのみ動作される必要があり、且つ大信号モードにおけるD級アンプ160の性能指標は全高調波歪みによって支配されるので、ADC170は、それ自身によって生成されるノイズをあまり考慮することなく、より小さいチップ面積で設計されることができる。さらに、大信号モードではD級アンプ160が供給電圧VDDによって直接的に電力供給され、且つ電圧レギュレータ190は小信号モードにおいてのみ使用されるので、電圧レギュレータ190も、より大きい電流をサポートする回路構造を設計する必要なく、より小さいチップ面積で設計されることができる。加えて、信号検出回路120はデジタル回路を用いて実装され、それ故に、それも小さいチップ面積を持つ。要するに、この実施形態のオーディオ処理回路100は、小さいチップ面積を持ちながら良好な性能指標を維持することができる。
【0021】
なお、オーディオ処理回路100が大信号モードと小信号モードとの間で繰り返し切り換わって、出力オーディオ信号Voutに何らかの不一致を生じさせることを防止するため、信号検出回路120は跳ね返り抑制(デバウンス)機構を有してもよい。例えば、信号検出回路120は、ある期間の時間にわたるデジタルオーディオ信号Din及び/又は処理された信号Din’の平均信号強度を検出して、それが小信号モードであるべきか大信号モデルであるべきかを決定するようにし得る。他の一例において、信号検出回路120は、デジタルオーディオ信号Din及び/又は処理された信号Din’の信号強度が第1閾値よりも高いときにのみ、小信号モードから大信号モードに切り換わることができ、また、デジタルオーディオ信号Din及び/又は処理された信号Din’の信号強度が第2閾値よりも低いときにのみ、大信号モードから小信号モードに切り換わることができ、ここで、第1閾値は第2閾値よりも高い。なお、上述の小信号モードと大信号モードとの間の切り換え機構は、本発明の限定ではなく、説明のための例に過ぎない。
【0022】
簡潔にまとめるに、本発明のオーディオ処理回路において、処理された信号が小信号であるとオーディオ処理回路が判定したとき、出力段は、電圧レギュレータによって提供されるレギュレートされた供給電圧を電源に使用し、また、出力段は、開ループ構造を用いて出力オーディオ信号のノイズを低減させる。処理された信号が大信号であるとオーディオ処理回路が判定したとき、出力段は供給電圧を直接使用し、また、出力段は、閉ループ構造を用いて出力オーディオ信号の全高調波歪みを低減させる。本発明のオーディオ処理回路を使用することにより、オーディオ処理回路は、小さいチップ面積で良好な性能指標を持つことができる。
【0023】
当業者が直ちに気付くことには、発明の教示を保持しながら装置及び方法の数多くの変更及び改変が為され得る。従って、以上の開示は、添付の請求項の境界範囲によってのみ限定されると解釈されるべきである。