(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022166828
(43)【公開日】2022-11-02
(54)【発明の名称】ロジンエステル、粘接着剤及び粘接着シート
(51)【国際特許分類】
C07C 69/753 20060101AFI20221026BHJP
C09J 193/04 20060101ALI20221026BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20221026BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20221026BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20221026BHJP
C08L 93/04 20060101ALI20221026BHJP
【FI】
C07C69/753 Z CSP
C09J193/04
C09J11/06
C09J7/38
C08L101/00
C08L93/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022066786
(22)【出願日】2022-04-14
(31)【優先権主張番号】P 2021071534
(32)【優先日】2021-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000168414
【氏名又は名称】荒川化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】梅田 拓未
(72)【発明者】
【氏名】柴地 功基
(72)【発明者】
【氏名】中谷 隆
【テーマコード(参考)】
4H006
4J002
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB99
4H006BA25
4H006BE20
4H006BJ30
4H006KA06
4H006KA31
4J002AA00W
4J002AF02X
4J002BB00W
4J002BG00W
4J002BP01W
4J002GH00
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4J004AA04
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4J004CE01
4J004FA08
4J040BA201
4J040GA05
4J040HB11
4J040LA01
4J040NA05
4J040NA06
4J040NA10
4J040NA12
4J040NA15
(57)【要約】
【課題】ロジンエステル、粘接着剤及び粘接着シートを提供すること。
【解決手段】本開示は、ロジンエステルであって、前記ロジンエステルはロジンと再生可能資源由来化合物との反応物であり、水酸基価が7mgKOH/gより大きく、前記再生可能資源由来化合物は、(ポリ)ペンタエリスリトールを含む、ロジンエステルに関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロジンエステルであって、
前記ロジンエステルはロジンと再生可能資源由来化合物との反応物であり、
水酸基価が7mgKOH/gより大きく、
前記再生可能資源由来化合物は、下記構造式で表される(ポリ)ペンタエリスリトールを含む、ロジンエステル。
【化1】
(式中、nは0以上の整数である。)
【請求項2】
重量平均分子量(Mw)が800~10000である、請求項1に記載のロジンエステル。
【請求項3】
ベースポリマー及び請求項1又は2に記載のロジンエステルを含む、粘接着剤。
【請求項4】
請求項3に記載の粘接着剤からなる粘接着層及び基材を含む、粘接着シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ロジンエステル、粘接着剤及び粘接着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
ロジン系樹脂は、様々な分野において用いられている。ロジン系樹脂の用途は、例えば、ホットメルト接着剤、感圧型接着剤等の粘接着剤用粘着付与剤、ゴム用改質剤、プラスチック用改質剤、合成ゴム用乳化剤、チューインガム用ベース材料、道路標示塗料用バインダー樹脂、インク用バインダー樹脂、製紙用サイズ剤等が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、バイオマス原料等の再生可能資源由来化合物を用いることが求められている。当然、再生可能資源由来化合物を用いて製造したロジンエステルであっても、従来の枯渇性資源由来化合物(石油資源由来化合物)を用いて製造したロジンエステルと同様の物性が求められる。
【0005】
しかし、一般に、再生可能資源由来化合物を用いた製品は、枯渇性資源由来化合物を用いた製品と比較して、性能が劣る傾向が知られている。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、枯渇性資源由来化合物(石油資源由来化合物)を用いて製造したロジンエステルが有する接着力に対して、同等以上の良好な接着力を有する粘接着剤を製造できるロジンエステルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定のロジンエステルにより、上記課題が解決されることを見出した。
【0008】
本開示により以下の項目が提供される。
(項目1)
ロジンエステルであって、
前記ロジンエステルはロジンと再生可能資源由来化合物との反応物であり、
水酸基価が7mgKOH/gより大きく、
前記再生可能資源由来化合物は、下記構造式で表される(ポリ)ペンタエリスリトールを含む、ロジンエステル。
【化2】
(式中、nは0以上の整数である。)
(項目2)
重量平均分子量(Mw)が800~10000である、上記項目に記載のロジンエステル。
(項目3)
ベースポリマー及び上記項目のいずれか1項に記載のロジンエステルを含む、粘接着剤。
(項目4)
上記項目に記載の粘接着剤からなる粘接着層及び基材を含む、粘接着シート。
【0009】
本開示において、上述した1又は複数の特徴は、明示された組み合わせに加え、さらに組み合わせて提供され得る。
【発明の効果】
【0010】
本開示のロジンエステルを用いれば、枯渇性資源由来化合物(石油資源由来化合物)を用いて製造したロジンエステルが有する接着力に対して、同等以上の良好な接着力を有する粘接着剤を製造できる。本開示のロジンエステルはロジンと再生可能資源由来化合物との反応物である。そのため、本開示のロジンエステルは地球環境保全の点から従来のロジンエステルよりも好適に用いられる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の全体にわたり、各物性値、含有量等の数値の範囲は、適宜(例えば下記の各項目に記載の上限及び下限の値から選択して)設定され得る。具体的には、数値αの上限及び下限がA3、A2、A1(A3>A2>A1とする)である場合、数値αの範囲は、例えば、A3以下、A2以下、A3未満、A2未満、A1以上、A2以上、A1より大きい、A2より大きい、A1~A2(A1以上A2以下)、A1~A3、A2~A3、A1以上A3未満、A1以上A2未満、A2以上A3未満、A1より大きくA3未満、A1より大きくA2未満、A2より大きくA3未満、A1より大きくA3以下、A1より大きくA2以下、A2より大きくA3以下等が挙げられる。
【0012】
本開示において、各成分、条件、数値等は、明細書中の記載に限定されるわけではない。本発明が解決しようとする課題が解決される限りにおいて、各成分、条件、数値等は、特に限定されない。
【0013】
[ロジンエステル]
本開示は、ロジンエステルであって、
前記ロジンエステルはロジンと再生可能資源由来化合物との反応物であり、
水酸基価が7mgKOH/gより大きく、
前記再生可能資源由来化合物は、下記構造式で表される(ポリ)ペンタエリスリトールを含む、ロジンエステルに関する。
【化3】
(式中、nは0以上の整数である。)
【0014】
<ロジン>
ロジンは、単独又は2種以上で使用され得る。
【0015】
本開示において、「ロジン」は、松から得られる琥珀色かつ無定形の樹脂及び当該樹脂から精製されたジテルペン樹脂酸を意味する。
【0016】
ロジンの松種は、例えば、馬尾松(Pinus massoniana)、スラッシュ松(Pinus elliottii)、メルクシ松(Pinus merkusii)、カリビア松(Pinus caribaea)、思茅松(Pinus kesiya)、テーダ松(Pinus taeda)及び大王松(Pinus palustris)等が挙げられる。
【0017】
ロジンは、例えば、天然ロジン、精製ロジン、変性ロジン等が挙げられる。「未変性ロジン」は、変性されていないロジンを意味する。未変性ロジンは、例えば、天然ロジン、精製ロジン等が挙げられる。
【0018】
(天然ロジン)
天然ロジンは、例えば、ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジン等が挙げられる。
【0019】
天然ロジンの産地は、例えば、中国、ベトナム、インドネシア、ブラジル等が挙げられる。
【0020】
(精製ロジン)
精製手段は、例えば、蒸留法、抽出法、再結晶法、吸着法等が挙げられる。
【0021】
蒸留法は、例えば、上記天然ロジンを200℃~300℃、0.01kPa~3kPaで蒸留する方法等が挙げられる。
【0022】
抽出法は、例えば、上記天然ロジンのアルカリ水溶液を作製する工程、アルカリ水溶液中の不ケン化物を有機溶媒により抽出する工程、抽出後の水層を中和する工程を含む方法等が挙げられる。
【0023】
再結晶法は、例えば、上記天然ロジンを良溶媒に溶解させる工程、良溶媒を留去して濃厚溶液とする工程、濃厚溶液に貧溶媒を添加する工程を含む方法等が挙げられる。
【0024】
良溶媒は、例えば、芳香族炭化水素溶媒、塩素化炭化水素溶媒、低級アルコール溶媒、ケトン溶媒、酢酸エステル溶媒等が挙げられる。芳香族炭化水素溶媒は、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。塩素化炭化水素溶媒は、例えば、クロロホルム等が挙げられる。ケトン溶媒は、例えば、アセトン等が挙げられる。酢酸エステル溶媒は、例えば、酢酸エチル等が挙げられる。
【0025】
貧溶媒は、例えば、n-ヘキサン、n-ヘプタン、シクロヘキサン、イソオクタン等が挙げられる。
【0026】
吸着法は、例えば、溶融状態の未変性ロジン又は有機溶媒に溶解させた溶液状の未変性ロジンを、多孔質吸着剤に接触させる方法等が挙げられる。
【0027】
多孔質吸着剤は、例えば、活性炭、金属酸化物、アルミナ、ジルコニア、シリカ、モレキュラーシーブス、ゼオライト、微細孔の多孔質クレー等が挙げられる。
【0028】
ジテルペン樹脂酸は、例えば、アビエタン型ジテルペン樹脂酸、ピマラン型ジテルペン樹脂酸、デヒドロ型ジテルペン樹脂酸、ラブダン型ジテルペン樹脂酸等が挙げられる。
【0029】
アビエタン型ジテルペン樹脂酸は、例えば、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラスリトリン酸、レポピマル酸等が挙げられる。
【0030】
ピマラン型ジテルペン樹脂酸は、例えば、ピマル酸、イソピマル酸、サンダラコピマル酸等が挙げられる。
【0031】
デヒドロ型ジテルペン樹脂酸は、例えば、デヒドロアビエチン酸等が挙げられる。
【0032】
ラブダン型ジテルペン樹脂酸は、例えば、コムン酸、ジヒドロアガチン酸等が挙げられる。
【0033】
(変性ロジン)
変性ロジンは、例えば、水素化ロジン、不均化ロジン、α,β-不飽和カルボン酸変性ロジン、重合ロジン等が挙げられる。
【0034】
変性ロジンの精製は、必要に応じて、上述の精製手段により行われ得る。
【0035】
本開示において、「水素化ロジン」は、水素付加反応に付したロジンを意味する。
【0036】
水素圧は、好ましくは、2MPa~20MPaが挙げられ、より好ましくは、5MPa~20MPaが挙げられる。
【0037】
水素化反応の温度は、好ましくは、100℃~300℃が挙げられ、より好ましくは、150℃~300℃が挙げられる。
【0038】
水素化触媒は、例えば、担持触媒、金属粉末等が挙げられる。
【0039】
担持触媒は、例えば、パラジウム-カーボン、ロジウム-カーボン、ルテニウム-カーボン、白金-カーボン等が挙げられる。
【0040】
金属粉末は、例えば、ニッケル、白金等が挙げられる。1つの実施形態において、上記未変性ロジンの水素化率が高くなり、水素化時間が短くなる観点から、水素化触媒は、好ましくは、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、白金系触媒が挙げられる。
【0041】
ロジン100質量部に基づくと、水素化触媒の使用量は、好ましくは、0.01質量部~5質量部が挙げられ、より好ましくは、0.01質量部~2質量部が挙げられる。
【0042】
上記水素化は、必要に応じて、ロジンを溶媒に溶解した状態で行われ得る。水素化反応に使用する溶媒(水素化反応溶媒)は、反応に不活性で原料、生成物が溶解しやすい溶媒であればよい。水素化反応溶媒は、例えば、シクロヘキサン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、デカリン、テトラヒドロフラン、ジオキサン等が挙げられる。水素化反応溶媒は、単独又は2種以上で使用され得る。
【0043】
ロジンに対する不揮発分に基づくと、水素化反応溶媒の使用量は、好ましくは、10質量%以上が挙げられ、より好ましくは、10質量%~70質量%が挙げられる。
【0044】
本開示において、「不均化ロジン」は、不均化反応に付したロジンを意味する。本開示において、「不均化」は、二分子のロジンが反応し、共役二重結合を持った二分子のアビエチン酸が、一方は芳香族構造を有する分子になり、もう一方は単独二重結合を有する分子になる変性を意味する。
【0045】
不均化触媒は、例えば、担持触媒、金属粉末、ヨウ素系触媒等が挙げられる。担持触媒は、例えば、パラジウム-カーボン、ロジウム-カーボン、白金-カーボン等が挙げられる。金属粉末は、例えば、ニッケル粉末、白金粉末等が挙げられる。ヨウ素系触媒は、例えば、ヨウ素、ヨウ化鉄等が挙げられる。
【0046】
ロジン100質量部に基づくと、不均化触媒の使用量は、好ましくは、0.01質量部~5質量部が挙げられ、より好ましくは、0.01質量部~1質量部が挙げられる。
【0047】
不均化反応の反応温度は、好ましくは、100℃~300℃が挙げられ、より好ましくは、150℃~290℃が挙げられる。
【0048】
本開示において、「α,β-不飽和カルボン酸変性ロジン」は、付加環化反応に付したロジンを意味する。
【0049】
α,β-不飽和カルボン酸は、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、ムコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水ムコン酸、マレイン酸ハーフエステル、フマル酸ハーフエステル、イタコン酸ハーフエステル等が挙げられる。1つの実施形態において、α,β-不飽和カルボン酸は、好ましくは、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸が挙げられる。
【0050】
ロジン100質量部に基づくと、α,β-不飽和カルボン酸の使用量は、好ましくは、乳化性の点から、1質量部~20質量部が挙げられ、より好ましくは、1質量部~3質量部が挙げられる。
【0051】
上記α,β-不飽和カルボン酸変性ロジンの製造方法は、例えば、加熱下で溶融させたロジンに、α,β-不飽和カルボン酸を加えて、180℃~240℃で、1時間~9時間反応させる方法等が挙げられる。上記反応は、必要に応じて、密閉した反応系内に窒素等の不活性ガスを吹き込みながら行われ得る。
【0052】
付加環化反応触媒は、例えば、ルイス酸、ブレンステッド酸等が挙げられる。ルイス酸は、例えば、塩化亜鉛、塩化鉄、塩化スズ等が挙げられる。ブレンステッド酸は、例えば、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等が挙げられる。
【0053】
ロジン100質量部に基づくと、付加環化反応触媒の使用量は、好ましくは、0.01質量部~10質量部が挙げられる。
【0054】
得られたα,β-不飽和カルボン酸変性ロジンは、未変性ロジン由来の樹脂酸を含み得る。α,β-不飽和カルボン酸変性ロジン100質量%に基づくと、未変性ロジン由来の樹脂酸の含有量は、好ましくは、10質量%未満が挙げられる。
【0055】
本開示において、「重合ロジン」は、二量化反応に付したロジンを意味する。
【0056】
上記重合ロジンの製造方法は、例えば、ロジン及び重合ロジン製造触媒を含む溶媒中、40~160℃で、1~5時間反応させる方法等が挙げられる。重合ロジン製造触媒は、例えば、硫酸、フッ化水素、塩化アルミニウム、四塩化チタン等が挙げられる。溶媒は、例えば、トルエン、キシレン等が挙げられる。
【0057】
重合ロジンの製品は、例えば、原料としてガムロジンを使用した重合ロジン(商品名「重合ロジンB-140」、新洲(武平)林化有限公司製)、トール油ロジンを使用した重合ロジン(商品名「シルバタック140」、アリゾナケミカル社製)、ウッドロジンを使用した重合ロジン(商品名「ダイマレックス」、イーストマンケミカル社製)等が挙げられる。
【0058】
重合ロジンに対して、水素化、不均化、α,β-不飽和カルボン酸変性等の処理は、必要に応じて、行われ得る。各種処理は、単独又は2種以上で使用され得る。
【0059】
<再生可能資源由来化合物>
再生可能資源由来化合物は、単独又は2種以上で使用され得る。
【0060】
本開示において、「再生可能資源由来化合物」は、用いることにより二酸化炭素排出量削減に寄与できる化合物を意味する。
【0061】
再生可能資源由来化合物は、例えば、バイオマス由来化合物、バイオマス由来化合物と枯渇性資源由来化合物(石油資源由来化合物)との反応物等が挙げられる。
【0062】
再生可能資源由来化合物は、例えば、再生可能資源由来(ポリ)ペンタエリスリトール、再生可能資源由来グリセリン等が挙げられる。
【0063】
(ポリ)ペンタエリスリトールは、下記構造式で表される。
【化4】
(式中、nは0以上の整数である。nは、好ましくは、0、1又は2が挙げられ、より好ましくは、0又は1が挙げられ、さらに好ましくは、0が挙げられる。)
【0064】
再生可能資源由来(ポリ)ペンタエリスリトールは、例えば、バイオマスペンタエリスリトール等が挙げられる。
【0065】
再生可能資源由来(ポリ)ペンタエリスリトールの市販品は、例えば、Voxtar M40、M100、D100、D40(Perstorp社)等が挙げられる。
【0066】
再生可能資源由来化合物不揮発分100質量%に基づくと、再生可能資源由来(ポリ)ペンタエリスリトールの含有量の上限及び下限は、例えば、100、95、90、85、80質量%等が挙げられる。1つの実施形態において、上記含有量は、好ましくは、80~100質量%が挙げられる。
【0067】
再生可能資源由来化合物不揮発分100質量%に基づくと、再生可能資源由来グリセリンの含有量の上限及び下限は、例えば、20質量%、15質量%、10質量%、5質量%、0質量%等が挙げられる。1つの実施形態において、上記含有量は、好ましくは、0質量%~20質量%が挙げられる。
【0068】
再生可能資源由来化合物のOH基/ロジンのCOOH基(当量比)の上限及び下限は、例えば、3、2.5、2、1.5、1、0.9、0.8、0.5等が挙げられる。1つの実施形態において、ロジンエステルの製造効率向上の観点から、上記当量比は、好ましくは、0.5~3が挙げられる。
【0069】
<ロジンエステルの物性等>
ロジンエステルの水酸基価の上限及び下限は、例えば、250、240、230、220、212.1、212、210、200、190、180、170、160、156、155、150、140、130、120、110、100、98.6、90、80、70、60、50.2、50、49、46.1、40.3、40、34.9、30、29、28、27、26.7、26.5、25.3、25、24.1、24、23、22、21、20.7、20、15.4、15.3、15、10、9、8、7.5、7.4、7.3、7.2、7.1mgKOH/g等が挙げられる。1つの実施形態において、上記水酸基価は、好ましくは、7mgKOH/gより大きいことが挙げられ、より好ましくは、7mgKOH/gより大きく250mgKOH/g以下であることが挙げられる。
【0070】
上記水酸基価は、JIS K0070(電位差滴定法)に準拠する方法により測定される。
【0071】
ロジンエステルの重量平均分子量の上限及び下限は、例えば、23000、22000、21000、20000、19000、18000、17000、16000、15000、14000、13000、12000、11000、10000、9000、8000、7000、6000、5000、4000、3100、3000、2220、2000、1900、1850、1800、1790、1740、1700、1600、1550、1500、1200、1180、1140、1120、1000、900、880、800、780、750、700等が挙げられる。1つの実施形態において、上記重量平均分子量は、好ましくは、700~23000が挙げられ、より好ましくは、800~15000が挙げられ、さらに好ましくは、昇温クリープ、透過率を良好とする観点から、800~10000が挙げられる。
【0072】
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により適切な溶媒下で測定したポリスチレン換算値として求められ得る。重量平均分子量の測定条件は、例えば、下記のような条件等が挙げられる。
装置:HLC-8320GPC、東ソー(株)製
使用カラム:TSKguardcolumnH-H+TSKgel Super HM-L×3
展開溶媒:テトラヒドロフラン
サンプル側流速:0.6mL/min
リファレンス側流速:0.3mL/min
測定温度:40℃
検出器:RI、UV(254nm)
検量線標準資料:ポリスチレン
サンプル濃度:30mg/5ml
【0073】
ロジンエステルの酸価の上限及び下限は、例えば、30、26.8、25、20、19.6、19、18.3、17.4、17.3、17、16.2、16、15.2、15、14.9、14.3、14、13.3、13.7、13、12.4、12.1、12、11、10.3、10.1、10、9、7、6.7、5mgKOH/g等が挙げられる。1つの実施形態において、上記酸価は、好ましくは、5~30mgKOH/gが挙げられ、より好ましくは、透過率を良好とする観点から7~30mgKOH/gが挙げられる。
【0074】
上記酸価は、JIS K0070(中和滴定法)に準拠する方法により測定される。
【0075】
ロジンエステルの軟化点の上限及び下限は、例えば、200、190、180、170、160、157、150、140、136、130、126、125、120、115、110、105、104、103、101、100、99、97、95、90、85、80℃等が挙げられる。1つの実施形態において、上記軟化点は、好ましくは、80~200℃が挙げられる。
【0076】
上記軟化点は、JIS K5902(環球法)に準拠する方法により測定される。
【0077】
ロジンエステルのバイオマス度の上限及び下限は、例えば、100、99.9、99.8、99.7、99.6、99.5、99.4、99.2、99.1、99、98、97、96、95%等が挙げられる。1つの実施形態において、ロジンエステルのバイオマス度は、好ましくは、95%以上が挙げられ、より好ましくは、97%以上が挙げられ、さらに好ましくは、99%以上が挙げられ、よりさらに好ましくは、99.5%以上が挙げられ、特に好ましくは、99.7%以上が挙げられる。
【0078】
本開示において、「バイオマス度」は、下記式により算出される値を意味する。
バイオマス度=(バイオマス由来成分の不揮発分質量/全不揮発分質量)×100
【0079】
本開示において、「不揮発分」は、有機溶剤及び水以外の成分の合計質量を意味する。1つの実施形態において、「対象物Aの不揮発分」は、対象物A 1gを130℃で加熱して恒量に達した時点で残存した成分の合計質量を意味する。
【0080】
<ロジンエステルの製造方法>
ロジンエステルの反応温度は、好ましくは、150~300℃が挙げられる。ロジンエステルの反応時間は、好ましくは、1~24時間が挙げられる。
【0081】
上記ロジンエステルの製造方法において、触媒が使用され得る。触媒は、単独又は2種以上で使用され得る。上記触媒は、例えば、酸触媒、金属水酸化物触媒、金属酸化物触媒、その他の触媒等が挙げられる。酸触媒は、例えば、パラトルエンスルホン酸、酢酸、メタンスルホン酸、次亜リン酸、硫酸等が挙げられる。金属水酸化物触媒は、例えば、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。金属酸化物触媒は、例えば、酸化カルシウム、酸化マグネシウム等が挙げられる。その他の触媒は、例えば、塩化鉄、ギ酸カルシウム等が挙げられる。
【0082】
エステル化反応において生成した水の除去は、必要に応じて、行われ得る。得られるロジンエステルの色調を低くする観点から、エステル化反応は、好ましくは、不活性ガス気流下で反応を行う手法が挙げられる。エステル化反応は、必要に応じて、加圧下で行われ得る。
【0083】
上記ロジンエステルの製造方法において、非反応性有機溶媒が使用され得る。非反応性有機溶媒は、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン等が挙げられる。なお、非反応性有機溶媒を使用した場合、非反応性有機溶媒及び/又は未反応原料の減圧留去は、必要に応じて、行われ得る。
【0084】
得られたロジンエステルに対して、上記精製、上記変性等の処理は、必要に応じて、行われ得る。上記処理は、必要に応じて、単独又は2種以上で行われ得る。
【0085】
[粘接着剤]
本開示は、ベースポリマー及び上記ロジンエステルを含む、粘接着剤に関する。
【0086】
本開示において、「粘接着剤」は、粘着剤及び接着剤からなる群から選択される1つ以上を意味する。
【0087】
粘接着剤不揮発分100質量%に基づくと、ロジンエステル不揮発分の含有量の上限及び下限は、例えば、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10、5質量%等が挙げられる。1つの実施形態において、上記含有量は、好ましくは、5~85質量%が挙げられる。
【0088】
<ベースポリマー>
ベースポリマーは、単独又は2種以上で使用され得る。
【0089】
ベースポリマーは、例えば、アクリル系重合体、スチレン-共役ジエン系ブロック共重合体、エチレン系共重合体等が挙げられる。
【0090】
(アクリル系重合体)
アクリル系重合体は、例えば、アルキル(メタ)アクリレートを含む原料モノマーのアクリル系重合体等が挙げられる。
【0091】
アルキル(メタ)アクリレートは、単独又は2種以上で使用され得る。アルキル(メタ)アクリレートは、上述の化合物等が挙げられる。
【0092】
アルキル(メタ)アクリレート以外のアクリル系重合体の原料モノマーは、単独又は2種以上で使用され得る。
【0093】
アクリル系重合体の原料モノマー100質量%に基づくと、アルキル(メタ)アクリレートの含有量の上限及び下限は、例えば、100、95、90、85、80、75、70、65、60質量%等が挙げられる。1つの実施形態において、上記含有量は、好ましくは、60~100質量%が挙げられる。
【0094】
アルキル(メタ)アクリレート以外のアクリル系重合体の原料モノマー(その他モノマー)は、例えば、不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸又はその無水物、(メタ)アクリルアミド基含有化合物、(メタ)アクリロニトリル、不飽和アルコール、アミノアルキル(メタ)アクリレート、エポキシ基含有モノマー、ケト基含有モノマー、複素環含有モノマー、アルコキシシリル基含有モノマー、多官能モノマー等が挙げられる。
【0095】
アクリル系重合体の原料モノマー100質量%に基づくと、その他モノマーの含有量は、例えば、10質量%以下、9質量%以下、8質量%以下、7質量%以下、6質量%以下、5質量%以下、4質量%以下、3質量%以下、2質量%以下、1質量%以下、0質量%等が挙げられる。
【0096】
アクリル系重合体におけるアクリル系重合体の重量平均分子量(Mw)の上限及び下限は、例えば、200万、175万、150万、125万、100万、90万、75万、50万、40万、30万、20万、10万等が挙げられる。1つの実施形態において、上記重量平均分子量は、好ましくは、10万~200万が挙げられ、より好ましくは、20万~150万が挙げられ、さらに好ましくは、30万~100万が挙げられる。
【0097】
アクリル系重合体の製造方法は、例えば、バルク重合法、溶液重合法、懸濁重合法等が挙げられる。アクリル系重合体の重合形式は、例えば、ラジカル重合等が挙げられる。
【0098】
ラジカル重合開始剤は、例えば、アゾ系重合開始剤、過酸化物系重合開始剤等が挙げられる。
【0099】
反応温度は、好ましくは、50~85℃程度が挙げられる。反応時間は、好ましくは、1~8時間程度が挙げられる。アクリル系重合体の溶媒は、例えば、酢酸エチル、トルエン等の極性溶剤等が挙げられる。溶液の濃度は、好ましくは、40~60重量%程度が挙げられる。
【0100】
ベースポリマーがアクリル系重合体である場合、架橋剤が使用され得る。
【0101】
架橋剤は、例えば、ポリイソシアネート、ポリアミン、メラミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。架橋剤は、好ましくは、ポリイソシアネートが挙げられる。
【0102】
ポリイソシアネートは、例えば、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
【0103】
アクリル系重合体100質量部に基づくと、架橋剤の含有量の上限及び下限は、例えば、5、4、3、2、1、0.9、0.7、0.5、0.3、0.2、0.1、0質量部等が挙げられる。1つの実施形態において、上記含有量は、好ましくは、0~5質量部が挙げられる。
【0104】
(スチレン-共役ジエン系ブロック共重合体)
スチレン-共役ジエン系ブロック共重合体は、例えば、スチレン化合物と共役ジエンとを共重合させたブロック共重合体が挙げられる。
【0105】
スチレン化合物は、例えば、スチレン、メチルスチレン等が挙げられる。
【0106】
共役ジエンは、例えば、ブタジエン、イソプレン等が挙げられる。
【0107】
スチレン化合物と共役ジエンとの質量比(スチレン化合物/共役ジエン)の上限及び下限は、例えば、1、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.43、0.4、0.3、0.2、0.11等が挙げられる。1つの実施形態において、上記質量比は、好ましくは、0.11~1が挙げられる。
【0108】
1つの実施形態において、スチレン-共役ジエン系ブロック共重合体は、好ましくは、SBS型ブロック共重合体(スチレン化合物と共役ジエンとの質量比:0.11~1)、SIS型ブロック共重合体(スチレン化合物と共役ジエンとの質量比:0.11~0.43)が挙げられる。
【0109】
スチレン-共役ジエン系ブロック共重合体は、例えば、上記ブロック共重合体の共役ジエン成分を水素化した水素化スチレン-共役ジエン系ブロック共重合体等が挙げられる。水素化スチレン-共役ジエン系ブロック共重合体は、例えば、いわゆるSEBS型ブロック共重合体、SEPS型ブロック共重合体等が挙げられる。
【0110】
(エチレン系共重合体)
エチレン系共重合体は、例えば、エチレンと、エチレンと共重合可能な単量体との共重合体が挙げられる。
【0111】
エチレンと共重合可能な単量体は、例えば、酢酸ビニル等が挙げられる。
【0112】
エチレン系共重合体100質量%に基づくと、酢酸ビニルの含有量は、例えば、45、40、35、30、25、20質量%等が挙げられる。1つの実施形態において、上記含有量は、好ましくは、20~45質量%が挙げられる。
【0113】
エチレン系共重合体の分子量は、好ましくは、メルトインデックス(190℃、荷重2160g、10分間)が10~400g/10分程度が挙げられる。
【0114】
粘接着剤不揮発分100質量%に基づくと、ベースポリマー不揮発分の含有量の上限及び下限は、例えば、98、95、90、85、80、75、70、65、60、55、50、45、40、35、30、25、20、15、10質量%等が挙げられる。1つの実施形態において、上記含有量は、好ましくは、10~98質量%が挙げられ、より好ましくは、50~90質量%が挙げられる。
【0115】
粘接着剤の不揮発分濃度の上限及び下限は、例えば、70、65、60、55、50、45、40質量%等が挙げられる。1つの実施形態において、粘接着剤の不揮発分濃度は、好ましくは、40~70質量%が挙げられ、より好ましくは、55~70質量%が挙げられる。
【0116】
<添加剤>
上記組成物は、添加剤として、上記ロジンエステル、ベースポリマー、架橋剤、溶媒のいずれにも該当しない剤を含み得る。
【0117】
添加剤は、例えば、脱水剤、結晶核剤、流動性改良剤、耐候剤、架橋剤、消泡剤、粘度調整剤、無機充填剤、有機充填剤、酸化防止剤、耐水化剤、造膜助剤、防腐剤、pH調整剤(アンモニア水、重曹等)、レベリング剤、剥離調整剤、可塑剤、軟化剤、着色剤(顔料、染料等)、界面活性剤、帯電防止剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、光安定剤、滑剤、硫黄、ケイ素等が挙げられる。
【0118】
1つの実施形態において、粘接着剤100質量部に基づくと、添加剤の含有量は、例えば、1質量部未満、0.1質量部未満、0.01質量部未満、0質量部等が挙げられる。また、ロジンエステル、ベースポリマー、溶媒のいずれか100質量部に基づくと、添加剤の含有量は、例えば、1質量部未満、0.1質量部未満、0.01質量部未満、0質量部等が挙げられる。
【0119】
上記粘接着剤は、上記ロジンエステル、及び必要に応じてベースポリマー、溶媒及び添加剤が、各種公知の手段により分散・混合されることにより製造され得る。なお、各成分の添加順序は特に限定されない。分散・混合手段は、例えば、乳化分散機、超音波分散装置等が挙げられる。
【0120】
[粘接着シート]
本開示は、上記粘接着剤からなる粘接着層及び基材を含む、粘接着シートに関する。
【0121】
上記粘接着シートは、例えば、基材付き粘接着シート、基材レス粘接着シート等が挙げられる。基材付き粘接着シートの形態は、例えば、粘接着層を基材の片面又は両面に有する形態等が挙げられる。基材レス粘接着シートの形態は、例えば、剥離ライナーに保持された形態等が挙げられる。粘接着シートは、例えば、粘接着ラベル、粘接着フィルム等が挙げられる。
【0122】
用途によって異なるものの、粘接着層の厚み(乾燥後の厚み)は、好ましくは、5~200μmが挙げられる。
【0123】
上記基材の材料は、例えば、プラスチック、紙、布、ゴム、発泡体、金属、これらの複合体等が挙げられる。プラスチックは、例えば、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート等)、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、フッ素系樹脂、セロハン類等が挙げられる。紙は、例えば、和紙、クラフト紙、グラシン紙、上質紙、合成紙、トップコート紙等が挙げられる。布は、例えば、各種繊維の単独又は混紡等による織布、不織布等が挙げられる。上記繊維は、例えば、天然繊維、半合成繊維、合成繊維等が挙げられる。上記繊維の材料は、例えば、綿、スフ、マニラ麻、パルプ、レーヨン、アセテート、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリオレフィン等が挙げられる。ゴムは、例えば、天然ゴム、ブチルゴム等が挙げられる。発泡体は、例えば、発泡ポリウレタン、発泡ポリクロロプレンゴム等が挙げられる。金属は、例えば、アルミニウム、銅等が挙げられる。
【0124】
基材は、例えば、無延伸基材、延伸基材等が挙げられる。延伸基材は、例えば、1軸延伸基材、2軸延伸基材等が挙げられる。
【0125】
基材の形態は、例えば、単層、積層等が挙げられる。
【0126】
基材に対して、添加剤の配合は、必要に応じて、行われ得る。添加剤は、例えば、上述の添加剤等が挙げられる。
【0127】
(特に、ポリマー層側の)基材の表面処理は、例えば、物理的処理、化学的処理等が挙げられる。物理的処理は、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理等が挙げられる。化学的処理は、例えば、下塗り処理、背面処理等が挙げられる。
【0128】
上記粘接着シートの製造方法は、例えば、基材の片面又は両面に上記粘接着剤を塗工して塗工層を形成する塗工工程、塗工層を加熱及び/又は乾燥させて粘接着層を形成する粘接着層形成工程を含む方法等が挙げられる。
【0129】
塗工方法は、例えば、ロールコーター法、コンマコーター法、ダイコーター法、リバースコーター法、シルクスクリーン法、グラビアコーター法等が挙げられる。
【0130】
粘接着層の厚み等に基づいて、粘接着層形成工程における条件設定は、必要に応じて、行われ得る。粘接着層形成工程の温度は、好ましくは、10~120℃が挙げられる。粘接着層形成工程の時間は、好ましくは、0.1~10時間が挙げられる。
【実施例0131】
以下、実施例及び比較例を通じて本発明を具体的に説明する。但し、上述の説明及び以下の実施例は、本発明を限定する目的で記載されていない。従って、本発明の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、特許請求の範囲のみにより限定される。以下特に説明がない限り、部、%等の数値は質量基準である。
【0132】
実施例1-1:ロジンエステルの製造
(1)精製
酸価170.0mgKOH/g、軟化点78℃、色調(ガードナー色数)6の未精製ロジン(中国産ガムロジン)を窒素シール下に400Paの減圧下で蒸留し、主留を精製ロジンとした。当該精製ロジンは、酸価178.4mgKOH/g、軟化点(環球法)88℃、色調(ガードナー色数)3であった。
【0133】
(2)エステル化反応
温度計、攪拌機、窒素導入管および減圧装置を備えた反応装置に、(1)で得られた精製ロジン1,200g、再生可能資源由来化合物としてペンタエリスリトール(製品名Voxtar M40、Perstorp社製)135g及びグリセリン(製品名「食品添加物グリセリン」、阪本薬品工業(株)製)7gを仕込み、窒素気流下250℃で2時間および280℃で10時間エステル化反応を行い、酸価19.8mgKOH/g、軟化点98℃、色調(ガードナー色数)6のロジンエステルを得た。
【0134】
(3)水素化反応
ついでオートクレーブ反応装置に、(2)で得たロジンエステル150g、水素化触媒として5%パラジウム-カーボン(含水率50%)1.5g、およびシクロヘキサン150gを仕込み、系内の酸素を除去した後、系内を水素にて5MPaに加圧後、攪拌下に240℃まで昇温、昇温後水素圧を9MPaに昇圧して同温度にて3時間水素化反応を行い、水酸基価50.2mgKOH/g、重量平均分子量1000、酸価19.6mgKOH/g、軟化点95℃、色調(ハーゼン色数)120のロジンエステルを得た。
【0135】
特段言及がない限り、実施例1以外の実施例及び比較例は、下記表のように変更した以外は、実施例1-1と同様にして行った。
【0136】
【0137】
<表中の説明>
ジペンタエリスリトール:製品名Voxtar D40、Perstorp社製
フマル酸の量が0ではない実施例は、(2)エステル化反応前にロジンをフマル化変性(α,β-不飽和カルボン酸変性)させた実施例である。
実施例1-13では、トール油ロジンを使用している。実施例1-14では、中国産湿地松ロジンを使用している。
色調Gはガードナー色数であり、色調Hはハーゼン色数である。
精製、水素化反応「あり」は、それぞれ実施例1-1と同様の精製、水素化反応を行ったことを意味する。精製、重合、水素化、不均化「なし」は、それぞれ精製、重合、水素化、不均化反応を行わなかったことを意味する。例えば、精製、重合、水素化、不均化反応がいずれも「なし」である実施例はエステル化反応しか行っていないという意味である。
【0138】
重合「あり」としている実施例は下記手法により重合を行った。
温度計、攪拌機、窒素導入管および減圧装置を備えた反応装置に、ロジン900g、キシレン900g、塩化亜鉛40gおよび硫酸6.0gを仕込み、窒素気流下100℃で6時間、重合反応を行なった。反応生成物のキシレン溶液1845.9gを濃塩酸7gおよび温水500gを加えて洗浄した後、更に各500gの温水にて2回洗浄した。洗浄後のキシレン溶液は液温200℃未満、減圧度1300Paの条件下でキシレンを留去した後、更に液温200~275℃、減圧度400Paの条件下で精製ロジンの分解物及び未反応精製ロジン計70gを留去して、酸価135.3mgKOH/g、軟化点146℃、色調(ガードナー色数)9の重合ロジン471gを得た。
【0139】
不均化「あり」としている実施例は下記手法により不均化を行った。
温度計、攪拌機、窒素導入管および減圧装置を備えた反応装置に、未精製中国産ガムロジン1000g、触媒として5%パラジウムカーボン(含水率50%)0.3gを加え、窒素シール下、280℃で4時間攪拌して不均化反応を行ない、不均化ロジンを得た。
【0140】
実施例及び比較例のロジンエステルを用いて下記手順により評価を行った。
【0141】
実施例2-1:粘接着剤の製造
ベースポリマーとしてSKダイン1451(綜研化学(株)製、アクリル酸ブチルと2-ヒドロキシエチルアクリレートとの共重合体)を80部(不揮発分)、実施例1のロジンエステルの50%酢酸エチル溶液を20部(不揮発分)加えた。さらに架橋剤としてコロネートHX(商品名、東ソー(株)製)0.3部(不揮発分)を添加し、混合することにより粘接着剤を得た。
【0142】
特段言及がない限り、実施例2-1以外の実施例及び比較例は、下記表のように変更した以外は、実施例2-1と同様にして行った。
【0143】
【0144】
<粘接着シートの製造>
得られた粘接着剤を厚さ38μmのポリエステルフィルムに150μmアプリケーターにて膜厚が30μm程度となるよう塗工し、23℃65%Rhの条件で1週間養生させて粘接着シートを得た。この粘接着シートを用いて以下の評価を実施した。
【0145】
<接着力>
JIS Z 0237法に準じ、粘接着シートを、2kgのゴムローラーを用いて、被着体(ステンレス基材)に接着面積25mm×125mmで圧着後、20℃で24時間放置した。その後テンシロン引張り試験機で5℃にて剥離速度300mm/分で180°剥離試験を行い幅25mmあたりの接着力(N/25mm)を測定した。評価基準は下記のとおりである。
◎・・・10N/25mm以上
〇・・・7N/25mm以上10N/25mm未満
×・・・7N/25mm未満
【0146】
【0147】
粘接着シートを用いて接着力以外に下記についても評価を行った。
【0148】
<耐溶剤性>
#150メッシュ金網に剥離紙に塗工した粘着剤を包み、酢酸エチルに25℃で1週間浸漬後、105℃で2時間乾燥後、残分からゲル分率を下記式に基づいて算出した。
ゲル分率(質量%)=(G2/G1)×100
上記式中、各符号は以下のパラメータを示す。
G1:酢酸エチルで抽出する前の粘着剤の質量
G2:酢酸エチルによる抽出および乾燥後の粘着剤の質量
〇・・・40%以上
×・・・40%未満
【0149】
<相溶性>
粘接着剤を製造する際に、ベースポリマーの量を90部(不揮発分)、ロジンエステルの量を10部(不揮発分)に変更したことを除き、実施例2と同様の手法で、粘接着剤、粘接着シートを製造した。
製造した粘接着シートに分光光度計((株)日立製作所製、商品名「U-3210形自記分光光度計」)を用いて500nmの光を照射し、透過率(%)を測定した。評価基準は下記のとおりである。透過率が高いほど、ロジンエステルがベースポリマーへの相溶性に優れているといえる。
〇・・・75%以上
×・・・75%未満
【0150】