(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022166832
(43)【公開日】2022-11-02
(54)【発明の名称】錠剤
(51)【国際特許分類】
A61K 36/346 20060101AFI20221026BHJP
A61P 11/10 20060101ALI20221026BHJP
A61P 11/14 20060101ALI20221026BHJP
A61P 11/12 20060101ALI20221026BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20221026BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221026BHJP
A61K 36/535 20060101ALI20221026BHJP
A61K 36/8888 20060101ALI20221026BHJP
A61K 36/9068 20060101ALI20221026BHJP
A61K 9/26 20060101ALI20221026BHJP
A61K 31/136 20060101ALI20221026BHJP
A61K 125/00 20060101ALN20221026BHJP
A61K 127/00 20060101ALN20221026BHJP
A61K 135/00 20060101ALN20221026BHJP
【FI】
A61K36/346
A61P11/10
A61P11/14
A61P11/12
A61P11/00
A61P43/00 121
A61K36/535
A61K36/8888
A61K36/9068
A61K9/26
A61K31/136
A61K125:00
A61K127:00
A61K135:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022068573
(22)【出願日】2022-04-19
(31)【優先権主張番号】P 2021071535
(32)【優先日】2021-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002819
【氏名又は名称】大正製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】阿部 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】鍬 拓晃
【テーマコード(参考)】
4C076
4C088
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA41
4C076BB01
4C076CC15
4C076DD41
4C076EE31
4C076EE32
4C076FF63
4C088AB30
4C088AB38
4C088AB80
4C088AB81
4C088AC05
4C088AC06
4C088AC11
4C088AC13
4C088BA37
4C088MA02
4C088MA35
4C088MA52
4C088NA03
4C088ZA59
4C088ZA62
4C088ZA63
4C088ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA31
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA55
4C206MA72
4C206NA03
4C206ZA59
4C206ZA62
4C206ZA63
4C206ZC75
(57)【要約】
【課題】
アンブロキソール又はその塩と、キキョウを含有する固形製剤において、アンブロキソール又はその塩の含量低下を抑制した優れた固形製剤を提供すること。
【解決手段】
A)アンブロキソール又はその塩、及びB)キキョウ、ショウキョウ、ソヨウ及びハンゲからなる群より選ばれる少なくとも1種の生薬を含有する錠剤であって、
A)アンブロキソール又はその塩とB)キキョウ、ショウキョウ、ソヨウ及びハンゲからなる群より選ばれる少なくとも1種の生薬を異なる層に含有させた錠剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)アンブロキソール又はその塩、及びB)キキョウ、ショウキョウ、ソヨウ及びハンゲからなる群より選ばれる少なくとも1種の生薬を含有する錠剤であって、
A)アンブロキソール又はその塩とB)キキョウ、ショウキョウ、ソヨウ及びハンゲからなる群より選ばれる少なくとも1種の生薬を異なる層に含有させた錠剤。
【請求項2】
A)アンブロキソール又はその塩、及びB)キキョウ、ショウキョウ、ソヨウ及びハンゲからなる群より選ばれる少なくとも1種の生薬を含有する錠剤であって、
以下のi)又はii)のいずれかを満たす錠剤。
i)A)アンブロキソール又はその塩及びB)キキョウ、ショウキョウ、ソヨウ及びハンゲからなる群より選ばれる少なくとも1種の生薬を異なる層に配置した二層以上からなる多層錠
ii)A)アンブロキソール又はその塩、及びB)キキョウ、ショウキョウ、ソヨウ及びハンゲからなる群より選ばれる少なくとも1種の生薬、のいずれか一方を内核錠とし、他方を外層に配置した有核錠
【請求項3】
A)アンブロキソール又はその塩がアンブロキソール塩酸塩であることを特徴とする請求項1又は2に記載の錠剤。
【請求項4】
B)キキョウ、ショウキョウ、ソヨウ及びハンゲからなる群より選ばれる少なくとも1種の生薬の含有量が、A)アンブロキソール又はその塩1質量部に対し、
以下のi)~iv)のいずれかを満たすことを特徴とする請求項1又は2に記載の錠剤。
i)キキョウを含む場合、キキョウを原生薬換算量として2~200質量部含有する
ii)ショウキョウを含む場合、ショウキョウを原生薬換算量として1~150質量部含有する
iii)ソヨウを含む場合、ソヨウを原生薬換算量として3~100質量部含有する
iv)ハンゲを含む場合、ハンゲを原生薬換算量として8~200質量部含有する
【請求項5】
A)アンブロキソール又はその塩とB)キキョウ、ショウキョウ、ソヨウ及びハンゲからなる群より選ばれる少なくとも1種の生薬を含有する錠剤において、
A)アンブロキソール又はその塩とB)キキョウ、ショウキョウ、ソヨウ及びハンゲからなる群より選ばれる少なくとも1種の生薬を異なる層に含有させることを特徴とするA)アンブロキソール又はその塩の含量低下抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンブロキソール又はその塩と、生薬を配合した固形製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
アンブロキソール塩酸塩は、気道粘膜潤滑作用及び粘液溶解作用を有し、優れた去痰作用を有する化合物として広く知られている。またスイッチOTC薬物として認可され、総合感冒薬や咳止め薬に配合されている(非特許文献1)。
【0003】
キキョウは、キキョウPlatycodon grandiflorum A. De Candolle(Companulaceae)の根で、去痰・鎮咳を目的に民間薬や漢方薬として繁用されている(非特許文献2)。キキョウのサポニン性成分プラチコジンDには、去痰作用、鎮咳作用が報告されており、プラチコジンDが、炎症などで過剰に分泌されるムチンの生成と分泌を抑制することで去痰作用を示し、その作用は緩和である(非特許文献3、4)。
ショウキョウは、ショウガZingiber officinale Roscoe(Zingibereaceae)の根茎で、ときに周皮を除いたものであり、去痰・鎮咳を目的に民間薬や漢方薬として繁用されている(非特許文献5)。ショウキョウの成分6-ショウガオールには鎮咳作用が報告されている(非特許文献6)。
ソヨウは、シソ Perilla frutescens Britton var. crispa W. Deane (Labiatae)の葉及び枝先であり、発汗、鎮咳、去痰作用が知られている(非特許文献7)。
ハンゲは、カラスビシャクPinellia ternate Breitenbachのコルク層を除いた塊茎であり、鎮咳・去痰作用があり、漢方処方薬として鎮咳去痰薬とみなされる処方に比較的高頻度で配合されている(非特許文献8、9)。
そのため、これらの有効成分の組合せは去痰・鎮咳を目的とした治療に有用であり、アンブロキソール塩酸塩とキキョウ、アンブロキソール塩酸塩とショウキョウとを共に配合した固形剤が知られている(特許文献1、2)。
【0004】
これまでにアンブロキソール塩酸塩はある種の成分と同時に配合することで、安定性の問題を生じることが知られている。例えば、アンブロキソール塩酸塩とビタミン類を配合すると、アンブロキソール塩酸塩の安定性が低下するため、別顆粒化することにより改善している(特許文献3)。また、特許文献4には、アンブロキソールとバニリン又はシンナムアルデヒド、特許文献5には、アンブロキソールとイブプロフェンを同時配合することで、アンブロキソールの安定性が低下することが記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】OTCハンドブック 2008-09 株式会社学術情報流通センター第235頁
【非特許文献2】医薬ジャーナル 2010 46号5-11頁
【非特許文献3】日本薬局方第十七改正解説書D228-231頁
【非特許文献4】Phytomedicine 2014 21号529-533頁
【非特許文献5】漢方294処方 生薬解説第2版 じほう 12-15頁
【非特許文献6】日本薬局方第十七改正解説書D477-480頁
【非特許文献7】漢方294処方 生薬解説第2版 じほう 17-18頁
【非特許文献8】漢方294処方 生薬解説第2版 じほう 232-234頁
【非特許文献9】日本薬局方第十七改正解説書D798-801頁
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8-337532号公報
【特許文献2】特開平8-337532号公報
【特許文献3】特許4899304号公報
【特許文献4】特開2018-177772号公報
【特許文献5】特許4853818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、アンブロキソール塩酸塩と特定の生薬を含む固形製剤を製造し、鋭意検討したところ、経時的にアンブロキソール塩酸塩の安定性が低下するという課題に直面した。したがって、本発明の目的は、アンブロキソール又はその塩と、特定の生薬を含有する固形製剤において、アンブロキソール又はその塩の含量低下を抑制した固形製剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決すべく種々の検討を行ったところ、アンブロキソール又はその塩と、特定の生薬を含む固形製剤において,アンブロキソール又はその塩と生薬をそれぞれ製剤中で異なる層に含有させた二層以上の多層錠とすることで、アンブロキソール又はその塩の含量低下が抑えられることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は
(1)A)アンブロキソール又はその塩、及びB)キキョウ、ショウキョウ、ソヨウ及びハンゲからなる群より選ばれる少なくとも1種の生薬を含有する錠剤であって、
A)アンブロキソール又はその塩とB)キキョウ、ショウキョウ、ソヨウ及びハンゲからなる群より選ばれる少なくとも1種の生薬を異なる層に含有させた錠剤、
(2)A)アンブロキソール又はその塩、及びB)キキョウ、ショウキョウ、ソヨウ及びハンゲからなる群より選ばれる少なくとも1種の生薬を含有する錠剤であって、
以下のi)又はii)のいずれかを満たす錠剤、
i)A)アンブロキソール又はその塩及びB)キキョウ、ショウキョウ、ソヨウ及びハンゲからなる群より選ばれる少なくとも1種の生薬を異なる層に配置した二層以上からなる多層錠
ii)A)アンブロキソール又はその塩、及びB)キキョウ、ショウキョウ、ソヨウ及びハンゲからなる群より選ばれる少なくとも1種の生薬、のいずれか一方を内核錠とし、他方を外層に配置した有核錠
(3)A)アンブロキソール又はその塩がアンブロキソール塩酸塩であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の錠剤、
(4)B)キキョウ、ショウキョウ、ソヨウ及びハンゲからなる群より選ばれる少なくとも1種の生薬の含有量が、A)アンブロキソール又はその塩1質量部に対し、
以下のi)~iv)のいずれかを満たすことを特徴とする(1)又は(2)に記載の錠剤、
i)キキョウを含む場合、キキョウを原生薬換算量として2~200質量部含有する
ii)ショウキョウを含む場合、ショウキョウを原生薬換算量として1~150質量部含有する
iii)ソヨウを含む場合、ソヨウを原生薬換算量として3~100質量部含有する
iv)ハンゲを含む場合、ハンゲを原生薬換算量として8~200質量部含有する
(5)A)アンブロキソール又はその塩とB)キキョウ、ショウキョウ、ソヨウ及びハンゲからなる群より選ばれる少なくとも1種の生薬を含有する錠剤において、
A)アンブロキソール又はその塩とB)キキョウ、ショウキョウ、ソヨウ及びハンゲからなる群より選ばれる少なくとも1種の生薬を異なる層に含有させることを特徴とするA)アンブロキソール又はその塩の含量低下抑制方法、
である。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、アンブロキソール又はその塩と特定の生薬を含有し、アンブロキソール又はその塩の含量低下を抑制した優れた錠剤の提供が可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の錠剤は、A)アンブロキソール又はその塩(以下、場合により「A成分」とも言う)と、B)キキョウ、ショウキョウ、ソヨウ及びハンゲからなる群より選ばれる少なくとも1種の生薬(以下、場合により「B成分」とも言う)を含有した錠剤において、安定性に優れた錠剤として提供できるものである。
【0012】
本発明に用いられるアンブロキソール又はその塩は、化学式C13H18Br2N2Oで示される化合物又はその塩であり、これらのうちの一種を単独で用いても二種以上を組み合わせて用いてもよい。このようなアンブロキソール又はその塩としては、公知の方法により製造できるほか、市販のものを用いることができる。また、アンブロキソール又はその塩は医薬的に許容されるものであれば特に限定されないが、前記塩とは、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩等の無機酸の塩、及び酢酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、炭酸塩等の有機酸塩等が挙げられ、特に好ましくは塩酸塩である。
【0013】
本発明における生薬とは、自然界における植物を用いて乾燥、粉末化や溶媒を用いて抽出した抽出物等であり、キキョウ(桔梗)、ショウキョウ(生姜)、ソヨウ(蘇葉)、ハンゲ(半夏)である。
【0014】
本発明に用いられるキキョウとは、医薬品に用いられるものであれば特に限定されず、粉末化したもの、抽出物、エキス末等を含み、市販品を用いることもできる。キキョウは、Platycodon grandiflorum A. De Candolle(Campanulaceae)の根を乾燥させたものが使用可能であるが、これを粉砕し粉末化したもの、又はエキス化したものが使用でき、好ましくはエキス末である。
【0015】
本発明に用いられるショウキョウとは、医薬品に用いられるものであれば特に限定されず、粉末化したもの、抽出物、エキス末等を含み、市販品を用いることもできる。ショウキョウは、ショウガZingiber officinale Roscoe(Zingibereaceae)の根茎で、ときに周皮を除いたものが使用可能であるが、これを粉砕し粉末化したもの、又はエキス化したものが使用でき、好ましくはエキス末である。
【0016】
本発明に用いられるソヨウとは、医薬品に用いられるものであれば特に限定されず、粉末化したもの、抽出物、エキス末等を含み、市販品を用いることもできる。ソヨウは、シソ Perilla frutescens Britton var. crispa W. Deane (Labiatae)の葉及び枝先が使用可能であるが、これを粉砕し粉末化したもの、又はエキス化したものが使用でき、好ましくはエキス末である。
【0017】
本発明に用いられるハンゲとは、医薬品に用いられるものであれば特に限定されず、粉末化したもの、抽出物、エキス末等を含み、市販品を用いることもできる。ハンゲは、カラスビシャクPinellia ternate Breitenbachのコルク層を除いた塊茎が使用可能であるが、これを粉砕し粉末化したもの、又はエキス化したものが使用でき、好ましくはエキス末である。
【0018】
また、アンブロキソール又はその塩とキキョウの配合比は、アンブロキソール又はその塩1質量部に対し、キキョウを原生薬換算量として2~200質量部が好ましく、より好ましくは、4.4~150質量部、さらに好ましくは8.9~100質量部、特に好ましくは17.7~88.9質量部である。
【0019】
また、アンブロキソール又はその塩とショウキョウの配合比は、アンブロキソール又はその塩1質量部に対し、ショウキョウを原生薬換算量として1~150質量部が好ましく、より好ましくは、2.2~100質量部、さらに好ましくは4~80質量部、特に好ましくは22.2~66.7質量部である。
【0020】
また、アンブロキソール又はその塩とソヨウの配合比は、アンブロキソール又はその塩1質量部に対し、ソヨウを原生薬換算量として3~100質量部が好ましく、より好ましくは、3.5~75質量部、さらに好ましくは4.4~50質量部、特に好ましくは36~44.4質量部である。
【0021】
また、アンブロキソール又はその塩とハンゲの配合比は、アンブロキソール又はその塩1質量部に対し、ハンゲを原生薬換算量として8~200質量部が好ましく、より好ましくは、9~150質量部、さらに好ましくは11.1~120質量部、特に好ましくは100~111.1質量部である。
【0022】
本発明の錠剤では、A)アンブロキソール又はその塩とB)キキョウ、ショウキョウ、ソヨウ及びハンゲからなる群より選ばれる少なくとも1種の生薬を含むものであり、A成分とB成分が異なる層に配置され、製剤中で実質的に互いに接触することなく存在する。「製剤中で実質的に接触することなく存在する」とは、錠剤中に複数の薬剤等が存在する場合に、薬剤が均一に混合して存在することがなく、すなわち当該薬剤同士が相互作用を発現しない程度に接触しないよう、同一の錠剤中に存在する状態をいう。例えば、薬剤が異なる層に存在する多層錠の形態を有する錠剤や内核と外層を有する有核錠の形態を有する錠剤が挙げられる。
【0023】
本発明の錠剤は、通常、日本薬局方の製剤通則に規定されている錠剤であり、特に2つ以上の層を有する多層錠又は有核錠が好ましい。錠剤に割線や識別性向上のためのマーク、刻印を設けることのほか、糖衣錠、フィルムコーティング錠とすることもできる。また、本製剤の錠剤は、丸錠であってもよいし、異型錠であってもよい。
【0024】
本発明の錠剤中には本発明の効果を損なわない質的、量的範囲で、通常用いられる他の有効成分、賦形剤、崩壊剤、結合剤、流動化剤、滑沢剤、清涼化剤、着色剤(色素)、矯味矯臭剤、香料、コーティング剤などを配合することができる。
【0025】
本発明の錠剤に配合できる他の有効成分としては、例えば、解熱鎮痛剤、抗ヒスタミン剤、鎮咳剤、ノスカピン類、気管支拡張剤、去痰剤、催眠鎮静剤、ビタミン類、抗炎症剤、胃粘膜保護剤、生薬類、漢方処方、カフェイン類等があげられ、これらからなる群より選ばれる1種又は2種以上を含有しても良い。
【0026】
本発明の錠剤に配合できる賦形剤としては、例えば、乳糖、デンプン類、結晶セルロース、ショ糖、糖アルコール、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、リン酸水素カルシウム、無水リン酸水素カルシウム等が挙げられ、崩壊剤としては、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスポビドン、カルメロース、カルメロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、アルファー化デンプン等が挙げられ、結合剤としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、ゼラチン、アルファー化デンプン、ポリビニルピロリドン、プルラン等が挙げられ、流動化剤としては、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素等が挙げられ、滑沢剤としては、ショ糖脂肪酸エステル、硬化油、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム等が挙げられ、清涼化剤としては、メントール、ハッカ油、ユーカリ油等が挙げられる。
【0027】
本発明の錠剤は、A)アンブロキソール又はその塩とB)キキョウ、ショウキョウ、ソヨウ及びハンゲからなる群より選ばれる少なくとも1種の生薬が異なる層に配置されてさえいれば、常法により製造することができ、その方法は特に限定されるものではない。例えば、A成分とB成分を各々別の顆粒に配合し、当該顆粒をそれぞれA成分を含む層(以下、「層a」とも言う)とB成分を含む層(以下、「層b」とも言う)とに、分けて配合した錠剤でもよいし、A成分、或いはB成分を粉末のまま層aと層bに分けて配合した錠剤でもよいし、層aと層bのいずれか一方を顆粒とし、もう一方の層を粉末のまま錠剤としてもよい。
【0028】
本発明の錠剤の調製方法として、直接打錠法により製造しても良く、顆粒を含む錠剤としても良い。顆粒を調製する際、A)アンブロキソール又はその塩を含む顆粒と、B)キキョウ、ショウキョウ、ソヨウ及びハンゲからなる群より選ばれる少なくとも1種の生薬を含む顆粒を個別に調製する場合は、必要により、各々の顆粒に他の薬効成分を配合し、さらに必要に応じて添加剤を添加して、常法に従って調製すればよい。また、例えば、必要に応じてコーティング液を噴霧し、コーティング顆粒としても良い。造粒方法も特に限定されず、湿式造粒法、乾式造粒法又は溶融造粒法などにより製造できるが、好ましくは湿式造粒法である。湿式造粒法には、例えば撹拌造粒法、流動層造粒法、練合造粒法、押し出し造粒法、転動流動造粒法が挙げられる。また、必要により、造粒液として水、アルコール、水とアルコールの混液を用いても良く、さらに必要に応じて造粒液に有効成分や結合剤、賦形剤、流動化剤などを溶解または分散させても良い。得られた造粒物に適宜上記有効成分や賦形剤などの慣用の添加剤を配合してもよい。また、例えば、層aと層bを含む錠剤に、必要に応じてコーティング液を噴霧し、フィルムコーティング錠や糖衣錠としても良い。
【実施例0029】
以下に実施例及び比較例を挙げ、本発明をより詳しく説明するが、本発明はこれら実施例等に限定されるものではない。
【0030】
(比較例1)
アンブロキソール塩酸塩に適量の水/アルコール混液を加え混合した後乾燥し組成物を得た。
(比較例2)
アンブロキソール塩酸塩1質量部に対し、キキョウ乾燥エキス末4質量部を量り取り混合し、これに適量の水/アルコール混液を加え混合した後乾燥し組成物を得た。なお、キキョウ乾燥エキス末1質量部を原生薬換算にすると5質量部である。
(比較例3)
アンブロキソール塩酸塩1質量部に対し、ショウキョウ末4質量部を量り取り混合し、これに適量の水/アルコール混液を加え混合した後乾燥し組成物を得た。
(比較例4)
アンブロキソール塩酸塩1質量部に対し、ソヨウ乾燥エキス末4質量部を量り取り混合し、これに適量の水/アルコール混液を加え混合した後乾燥し組成物を得た。なお、ソヨウ乾燥エキス末1質量部を原生薬換算にすると9質量部である。
(比較例5)
アンブロキソール塩酸塩1質量部に対し、ハンゲ乾燥エキス末4質量部を量り取り混合し、これに適量の水/アルコール混液を加え混合した後乾燥し組成物を得た。なお、ハンゲ乾燥エキス末1質量部を原生薬換算にすると25質量部である。
【0031】
(試験例1)
比較例1~5の組成物を室温にて1日以上保存した後、65℃にて7日間保存し、7日後における組成物中のアンブロキソール塩酸塩の残存率をHPLC法により評価した。
表1に、7日保存後のアンブロキソール塩酸塩残存率(%)を示した。
【0032】
【0033】
(比較例6)
アンブロキソール塩酸塩4.5g、キキョウ乾燥エキス末16g、結晶セルロース10.3g、ヒドロキシプロピルセルロース2gを混合し、乳鉢造粒により造粒物Aを得た。造粒物Aを328mgずつ秤り取り、微量のステアリン酸マグネシウムを外部滑沢した臼杵を取り付けた錠剤成型機で製錠した。
(比較例7)
アンブロキソール塩酸塩4.5g、結晶セルロース10.3g、ヒドロキシプロピルセルロース2gを混合し、乳鉢造粒により造粒物Bを得た。また、キキョウ乾燥エキス末16g、結晶セルロース10.3g、ヒドロキシプロピルセルロース2gを混合し、乳鉢造粒により造粒物Cを得た。造粒物B3.36g、造粒物C5.66gを混合した混合物Dを451mgずつ秤り取り、微量のステアリン酸マグネシウムを外部滑沢した臼杵を取り付けた錠剤成型機で製錠した。
(実施例1)
上記比較例7で調製した造粒物Bを168mg、造粒物Cを283mg、ぞれぞれ秤り取り、微量のステアリン酸マグネシウムを外部滑沢した臼杵を取り付けた錠剤成型機で、造粒物Bと造粒物Cを別の層に配置した二層錠に製錠した。
【0034】
(比較例8)
アンブロキソール塩酸塩0.45g、ショウキョウ末10g、結晶セルロース1.22g、ヒドロキシプロピルセルロース0.75gを混合し、乳鉢造粒後、微量のステアリン酸マグネシウムを添加し造粒物Eを得た。造粒物Eを414mgずつ秤り取り、錠剤成型機で製錠した。
(実施例2)
上記比較例7で調製した造粒物Bに微量のステアリン酸マグネシウムを添加し造粒物Fを得た。また、ショウキョウ末10g、結晶セルロース1.22g、ヒドロキシプロピルセルロース0.75gを混合し、乳鉢造粒後、微量のステアリン酸マグネシウムを添加し造粒物Gを得た。造粒物Fを56mg、造粒物Gを399mg、ぞれぞれ秤り取り、錠剤成型機で、造粒物Fと造粒物Gを別の層に配置した二層錠に製錠した。
【0035】
(試験例2)
比較例6~8及び実施例1~2の錠剤を各々ビンに充填、密栓し、65℃にて7日間保存し、7日後における錠剤中のアンブロキソール塩酸塩の残存率をHPLC法により評価した。各々の比較例及び実施例について、対照として5℃にて7日間保存したサンプルを用いた。結果は、5℃におけるアンブロキソール塩酸塩の残存率を100%として算出した。
表2は、前記実施例1~2及び比較例6~8に記載された方法で得られた錠剤に関し、1日あたりの処方量、及びアンブロキソール塩酸塩の残存率を示した。
【0036】
【0037】
A)アンブロキソール塩酸塩とB)生薬を同一の層に配合した比較例ではアンブロキソールの含量の低下が確認された。一方、A)アンブロキソール塩酸塩とB)生薬を別の層に配合した実施例では、アンブロキソール塩酸塩の含量の低下を抑制することができた。
本発明によれば、A)アンブロキソール又はその塩とB)キキョウ、ショウキョウ、ソヨウ及びハンゲからなる群より選ばれる少なくとも1種の生薬を含有し、安定性が向上した錠剤の提供が可能となり、優れた医薬品を提供できる。